特許第5980751号(P5980751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980751
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   B41J2/01 125
   B41J2/01 129
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-190741(P2013-190741)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-54503(P2015-54503A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】北條 洋明
【審査官】 下村 輝秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−192596(JP,A)
【文献】 特開2004−34643(JP,A)
【文献】 特開2006−240009(JP,A)
【文献】 特開2003−191452(JP,A)
【文献】 特開2001−58398(JP,A)
【文献】 特開平11−348247(JP,A)
【文献】 特開2013−29268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインク滴を付与して画像を記録する描画手段と、
前記描画手段より搬送方向下流側に設けられ、前記記録媒体上のインク滴を乾燥させる乾燥手段と、
前記描画手段より搬送方向下流側に設けられ、乾燥手段外部の装置内の雰囲気温度を検出する検出手段と、
前記乾燥手段外部の装置内の雰囲気温度を制御し、前記雰囲気温度が目標範囲に至ると、前記乾燥手段の設定温度を待機時の目標値とする待機モードから、前記乾燥手段の設定温度を記録時の目標値とする記録モードへ移行させる制御手段と、
を備えたインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記検出手段が、前記描画手段から前記乾燥手段までの間に設けられている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記検出手段が、前記乾燥手段よりも搬送方向下流側に設けられている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録モードに移行した後の昇温動作中も前記雰囲気温度を検出し、前記雰囲気温度が目標範囲に入ったのち、記録動作を開始する請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録装置内の雰囲気温度を上昇させるヒータが設けられている請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記装置内へ外気を吸入する吸気手段と、
前記装置内から外部へ排気する排気手段と、の少なくとも一方を備え、
前記雰囲気温度が目標範囲にない場合、前記制御手段は前記吸気手段による吸気量および前記排気手段による排気量の少なくとも一方を制御する請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記乾燥手段より搬送方向下流側に設けられ、UV照射による定着処理を行う定着手段を備え、
前記制御手段は前記雰囲気温度が目標範囲にあれば、前記定着手段の設定強度を待機時の目標値とする待機モードから、前記定着手段の設定強度を記録時の目標値とする記録モードへ移行する請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記検出手段が、前記定着手段よりも搬送方向下流側に設けられている請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記雰囲気温度が目標範囲にない場合、前記制御手段は、前記乾燥手段の設定温度および前記定着手段の設定強度の少なくとも一方を制御する請求項7又は請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
画像が記録された最後の前記記録媒体が前記乾燥手段、あるいは前記定着手段から搬送されると、前記制御手段は前記乾燥手段の設定温度および前記定着手段の設定強度を待機モード時の設定へ変更する請求項7〜請求項9の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインク滴を付与し、画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置内の記録部周辺の雰囲気温度を一定に保つことで、ノズル内のインク粘度の変動を防止する画像記録装置がある(特許文献1参照)。また加熱定着部内の記録媒体の通過面近傍の雰囲気温度を、発熱素子のオン/オフ状態及び発熱量制御するする画像記録装置がある(特許文献2参照)。さらに紫外線硬化インクを吐出する記録ヘッドを搭載したキャリッジを覆うチャンバールーム内の雰囲気温度を検出し、電熱器やファンを制御することで雰囲気温度を制御する画像記録装置がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240009号公報
【特許文献2】特開2004−034643号公報
【特許文献3】特開2012−192596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では記録部以降の環境温度の影響については、考慮されていない。また特許文献2に記載の構成は加熱定着部内での雰囲気温度を制御するものであり、それ以外の箇所の雰囲気温度は考慮されていない。さらに特許文献3に記載の構成は記録部周辺の温度を管理することで、インク粘度を適切に保つものであり、記録部以降の装置内環境温度の影響については、考慮されていない。
【0005】
すなわち記録装置内の雰囲気温度、特に熱源のある乾燥部・定着部内部以外の箇所の雰囲気温度は制御下になく、一定には保たれないため、記録媒体のインク乾燥性が変動する問題があった。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、記録媒体のインク乾燥性を一定に保つインクジェット記録装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るインクジェット記録装置は、記録媒体にインク滴を付与して画像を記録する描画手段と、描画手段より搬送方向下流側に設けられ、記録媒体上のインク滴を乾燥させる乾燥手段と、描画手段より搬送方向下流側に設けられ、乾燥手段外部の装置内の雰囲気温度を検出する検出手段と、乾燥手段外部の装置内の雰囲気温度を制御し、雰囲気温度が目標範囲に至ると、乾燥手段の設定温度を待機時の目標値とする待機モードから、乾燥手段の設定温度を記録時の目標値とする記録モードへ移行させる制御手段と、を備える。
【0008】
上記の発明によれば、検出手段が検出した装置内の雰囲気温度を制御手段が制御し、乾燥手段内部、および定着手段内部以外の雰囲気温度が、一定の目標範囲内にある場合に装置を記録動作可能な状態へと移行することで、インク付与後の記録媒体のインク乾燥性を一定に保つことができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係るインクジェット記録装置は、検出手段が、描画手段から乾燥手段までの間に設けられている。
【0010】
上記の発明によれば、検出手段が検出した描画手段から乾燥手段までの間で検出された装置内の雰囲気温度を制御手段が制御することで、インク付与後の記録媒体のインク乾燥性を一定に保つことができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係るインクジェット記録装置は、検出手段が、乾燥手段よりも搬送方向下流側に設けられている。
【0012】
上記の発明によれば、検出手段が検出した乾燥手段より下流の装置内雰囲気温度を制御手段が制御することで、乾燥処理後の記録媒体のインク乾燥性を一定に保つことができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係るインクジェット記録装置は、記録モードに移行した後の昇温動作中も雰囲気温度を検出し、雰囲気温度が目標範囲に入ったのち、記録動作を開始する。
【0014】
上記の発明によれば、サイクルアップ時に熱源(乾燥手段など)の放出熱量が増大することにより装置内の雰囲気温度が記録モード移行完了時に目標温度を超過してしまうオーバーシュートを防止し、インク付与後の記録媒体のインク乾燥性を一定に保つことができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係るインクジェット記録装置は、インクジェット記録装置内の雰囲気温度を上昇させるヒータが設けられている。
【0016】
上記の発明によれば、乾燥手段など熱源の放出熱量によらず装置内の雰囲気温度を上昇させることができるので、熱源の加熱を防止しつつ、記録媒体の乾燥性を一定に保つことができる。
【0017】
本発明の第6の態様に係るインクジェット記録装置は、インクジェット記録装置内へ外気を吸入する吸気手段と、インクジェット記録装置内から外部へ排気する排気手段と、の少なくとも一方を備え、雰囲気温度が目標範囲にない場合、制御手段は吸気手段による吸気量および排気手段による排気量の少なくとも一方を制御する。
【0018】
上記の発明によれば、雰囲気温度が目標範囲よりも高い場合、吸気手段と排気手段の少なくとも一方で装置内部の換気を行って雰囲気温度を低下させ、雰囲気温度が目標範囲よりも低い場合、吸気手段と排気手段の少なくとも一方の風量を低下させて装置内の熱を保持して雰囲気温度を上昇させ、インク付与後の記録媒体のインク乾燥性を一定に保つことができる。
【0019】
本発明の第7の態様に係るインクジェット記録装置は、乾燥手段より搬送方向下流側に設けられ、UV照射による定着処理を行う定着手段を備え、制御手段は雰囲気温度が目標範囲にあれば、定着手段の設定強度を待機時の目標値とする待機モードから、定着手段の設定強度を記録時の目標値とする記録モードへ移行する。
【0020】
上記の発明によれば、描画手段よりも下流側において装置内の雰囲気温度が制御された状態で定着処理を行うので、記録媒体の乾燥性を一定に保つことができる。
【0021】
本発明の第8の態様に係るインクジェット記録装置は、検出手段が、定着手段よりも搬送方向下流側に設置されている。
【0022】
上記の発明によれば、検出手段が検出した定着手段から下流で検出された装置内雰囲気温度を制御手段が制御することで、定着処理後の記録媒体のインク乾燥性を一定に保つことができる。
【0023】
本発明の第9の態様に係るインクジェット記録装置は、雰囲気温度が目標範囲にない場合、制御手段は、乾燥手段の設定温度および定着手段の設定強度の少なくとも一方を制御する。
【0024】
上記の発明によれば、雰囲気温度が目標範囲にない場合、乾燥手段と定着手段の少なくとも一方で装置内部の設定温度あるいは加熱強度の制御を行い、雰囲気温度が目標範囲より低ければ熱源の設定温度あるいは設定強度を上げて昇温させ、目標温度より高ければ熱源の設定温度あるいは設定強度を下げて降温させ、インク付与後の記録媒体のインク乾燥性を一定に保つことができる。
【0025】
本発明の第10の態様に係るインクジェット記録装置は、画像が記録された最後の前記記録媒体が前記乾燥手段、あるいは前記定着手段から搬送されると、制御手段は乾燥手段の設定温度および定着手段の設定強度を待機モード時の設定へ変更する。
【0026】
上記の発明によれば、最後の記録媒体が処理を終えた後の乾燥手段の設定温度および定着手段の設定強度を待機モード時の設定とすることで装置内部の温度を低下させ、余分な熱が装置内に滞留することを防ぎ、雰囲気温度の上昇を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は上記構成としたので、記録媒体の乾燥性を一定に保つインクジェット記録装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置を示す側面図である。
図2図1に示すインクジェット記録装置の画像形成部、加熱乾燥処理部およびUV照射処理部付近を拡大して示す断面図である
図3】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の動作シーケンスを示すフロー図である。
図4図3に示す動作シーケンスの一部であるサブルーチンの詳細を示すフロー図である。
図5】(A)は比較例のインクジェット記録装置の動作シーケンスの一部を示すフロー図であり、(B)は本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置の動作シーケンスの一部を示すフロー図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置の動作シーケンスを示すフロー図である。
図7】比較例のインクジェット記録装置の動作シーケンスを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
【0030】
(全体構成)
【0031】
図1は、本発明に係る画像記録装置としてのインクジェット記録装置の第1実施形態を示す全体構成図である。
【0032】
上記インクジェット記録装置10は、枚葉の用紙(記録媒体)Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置であり、主として、用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(描画面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像形成部18と、画像形成部18で画像が記録された用紙Pを次に説明する加熱乾燥処理部20へ搬送する渡し部19と、画像形成部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行う加熱乾燥処理部20と、加熱乾燥処理部20で乾燥処理された用紙Pに紫外光(UV光)を照射して画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部24と、を備えている。
【0033】
また上記の給紙部12、処理液付与部14、処理液乾燥処理部16、画像形成部18、渡し部19、加熱乾燥処理部20、UV照射処理部22、および排紙部24を制御する制御手段90が図2のように設けられ、インクジェット記録装置10の制御を行うと共にオペレータの操作による装置の起動、操作、設定および停止を行う。制御手段90の設置箇所は特に限定されないが、電子部品を実装した基板で構成されているため、加熱乾燥処理部20、UV照射処理部22などの熱源の近傍や、あるいは装置の上端など温度の高い場所を避け、且つアクセスし易い背面板や床板などの直近に設けることが望ましい。
【0034】
(給紙部)
【0035】
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙手段の一例としての給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成されている。
【0036】
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
【0037】
記録媒体としての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
【0038】
給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正された後、給紙ドラム40に受け渡される。そして給紙ドラム40によって処理液付与部14へと搬送される。
【0039】
(処理液付与部)
【0040】
処理液付与部14は、用紙Pの表面(描画面)に所定の処理液を付与する。上記処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成されている。
【0041】
給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。上記搬送過程で塗布ローラ44Aが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
【0042】
ここで、上記用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像形成部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。上記のような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0043】
(処理液乾燥処理部)
【0044】
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。上記処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成されている。
【0045】
処理液付与部14の処理液付与ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
【0046】
(画像形成部)
【0047】
画像形成部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。上記画像形成部18は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出する吐出ヘッドの一例としてのインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62とで構成されている。
【0048】
画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、加熱乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、上記グリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、上記グリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、加熱乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、周面に多数の吸着孔(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、上記吸着孔から吸着されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平滑性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0049】
処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパ52Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着孔から吸着されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、上記の状態で搬送されて、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が画像内容に応じて記録媒体表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等の画像故障を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。描画処理の後、用紙Pは、吸着が解除された後、以下に説明する渡し部61を介して加熱乾燥処理部20へと受け渡される。
【0050】
(渡し部)
【0051】
渡し部61は、画像記録後の用紙Pを画像形成部18から受け取り、加熱乾燥処理部20へ渡す役目を有している。渡し部61は、主として、画像が記録された用紙Pを搬送する搬送手段の一例としてのチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンション(張力)を作用させるバックテンション付与機構66とを含んで構成されている。
【0052】
チェーングリッパ64は、渡し部61、加熱乾燥処理部20、UV照射処理部22、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像形成部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
【0053】
第1スプロケット64Aに接続されたモータ(図示せず)を駆動すると、チェーン64Cが走行する。チェーン64Cは、画像記録ドラム52の周速度と同じ速度で走行する。また、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pが、各グリッパ78で受け取れるようにタイミングが合わせられる。
【0054】
バックテンション付与機構66は、チェーングリッパ64によって先端を把持されながら搬送される用紙Pにバックテンション(張力)を付与する。上記バックテンション付与機構66は、主として、渡し搬送経路69に設置される搬送面としての渡しガイドプレート71と、加熱乾燥処理部20に配置される搬送面としての第1ガイドプレート72(吸着ボード)と、UV照射処理部22に配置される第2ガイドプレート82と、を備えている。
【0055】
渡しガイドプレート71は、渡し搬送経路69を走行するチェーン64Cに沿って配設され、第1ガイドプレート72は、第1水平搬送経路70Aを走行するチェーン64Cに沿って配設され、第2ガイドプレート82は、第2水平搬送経路70Bを走行するチェーン64Cに沿って配設されるので、渡し搬送経路69,第1水平搬送経路70A、及び第2水平搬送経路70Bを搬送されている間、用紙Pにはバックテンションが付与される。
【0056】
図1に示すように、第1ガイドプレート72は、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路(=チェーンの走行経路)に沿って配設され、用紙Pの搬送面となる。具体的には、第1水平搬送経路70Aを走行するチェーン64Cに沿って配設され、チェーン64Cから所定距離だけ離間して配設されている。また、第2ガイドプレート82も、第2水平搬送経路70Bを走行するチェーン64Cに沿って配設され、チェーン64Cから所定距離だけ離間して配設されている。チェーングリッパ64によってチェーン64Cの外周側で搬送される用紙Pは、下面が第1ガイドプレート72の上面72A及び第2ガイドプレート82の上面82Aに吸着されて、引き摺られながら搬送される。
【0057】
図2に示すように、渡しガイドプレート71上の渡し搬送経路69近傍、すなわち画像形成部18と加熱乾燥処理部20との間には、周囲の雰囲気温度を検出するセンサ101が設けられている。センサ101は空気の温度を検出できれば特定の種類に限定されるものではなく、加熱乾燥処理部20からの熱に耐えられるものであれば熱電対、サーミスタ、測温抵抗体など種々の測温手段をセンサ101として使用できる。
【0058】
図2に示すようにセンサ101で検出された装置内の雰囲気温度は制御手段90に送られ、制御手段90は雰囲気温度のデータをもとに後述する動作シーケンスに従ってインクジェット記録装置10の待機モードと記録モードの切り替えや、記録動作開始の可否を判断する。
【0059】
センサ101の設置個所としては、用紙Pが搬送される空間と明確な仕切りがない、連続した空間内部が好ましい。さらに、他の部材や搬送経路と干渉しない範囲で用紙Pの表面となるべく近い箇所で、且つ用紙Pの表面の任意の一点とセンサ101を直線で結んだときに、直線上に遮蔽物がないような空間に設置するのが好ましい。上記の条件を満足することで、用紙Pの表面が通過する雰囲気温度をより正確に検出できる。
【0060】
図2に示すように、画像形成部18と加熱乾燥処理部20との間に装置外の空気を送り込む為の吸気ファン108Aが設けられている。吸気ファン108Aは通常の軸流ファンでも遠心ファンでも、あるいは他の形式でもよい。吸気ファン108Aは画像形成部18と加熱乾燥処理部20との間に近い箇所のインクジェット記録装置10の側壁に設けられていてもよいが、図2に示すように吸気ファン108Aから画像形成部18と加熱乾燥処理部20との間まで送風ダクト109Aを設け、矢印103のように送風してもよい。
【0061】
(加熱乾燥処理部)
【0062】
図1に示すように、加熱乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。加熱乾燥処理部20は、主として、画像が記録された用紙Pを搬送する搬送手段の一例としてのチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンション(張力)を作用させるバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pへ光を照射して加熱乾燥する光照射手段の一例としての赤外線ヒータ68、下方に向けて(搬送される用紙Pへ向けて)乾燥風を送風する乾燥風送風ノズル118とで構成されている。
【0063】
赤外線ヒータ68は、チェーン64Cの内周側(図中上方)に設置されており、図示しない光源と、光源より上方に設けられ光源の上半分を囲んで配置された反射板とで構成されている。本実施形態では、光源の一例として、石英管の内部にフィラメントを備えたランプを用いているが、石英管に限らず、赤外光を発光できる光源であれば、構成は特に限定されない。
【0064】
図2に示すように、赤外線ヒータ68と乾燥風送風ノズル118を装置内で覆う乾燥器カバー21が設けられ、装置内部に赤外線ヒータ68からの輻射熱や対流熱が影響することを防ぐ構造とされている。乾燥器カバー21は例えば略箱型とされ、用紙Pの搬送面(第1水平搬送経路70A)に干渉せず、赤外線ヒータ68と乾燥風送風ノズル118の装置内上方向を覆いながら第1水平搬送経路70Aとの間に間隙を保つ構造とされている。乾燥器カバー21の素材としては、赤外線ヒータ68と乾燥風送風ノズル118の熱に耐えられる程度の耐熱性を備えていれば特に限定はされないが、SUS(Steel Use Stainless)などの金属が好適に使用できる。
【0065】
画像形成部18の画像記録ドラム52から受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、用紙Pの先端部をグリッパ78で把持し、平面状の第1ガイドプレート72に用紙Pの後端側を吸着させた状態で搬送する。チェーングリッパ64に受け渡された用紙Pは、まず、第1水平搬送経路70Aを搬送される。上記第1水平搬送経路70Aを搬送される過程で、用紙Pへ赤外線ヒータ68から赤外光が照射されると共に、乾燥風送風ノズル118から乾燥風が送風され、赤外線ヒータ68の輻射熱、及び乾燥風によって加熱乾燥処理が施される。用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンション(張力)が付与されながら乾燥処理が施される。
【0066】
なお、本実施形態では、赤外線ヒータ68から赤外光を照射して用紙Pを加熱乾燥する構成としたが、これに限らず、赤外光以外の光を照射して用紙Pを加熱乾燥してもよく、例えば、遠赤外線や、紫外光(UV)などを用いて加熱乾燥してもよい。
【0067】
前述のセンサ101が設けられる加熱乾燥処理部20に属する箇所は、加熱乾燥処理部20の乾燥器カバー21内部の空間全域、乾燥器カバー21、乾燥器カバー21直下の第1水平搬送経路70Aを指す。より具体的には、赤外線ヒータ68等の熱源、乾燥風送風ノズル118自体と、これらの部品を包括して覆っている乾燥器カバー21を構成する板金等の部材の内面はもちろん、外面(熱源の影響で熱くなるため)も含む。また、赤外線ヒータ68の直下、熱風を噴出する乾燥風送風ノズル118開口部の直下を含む。
【0068】
ここで用紙Pが搬送される第1水平搬送経路70Aには、赤外線ヒータ68や乾燥風送風ノズル118の直下であるかに関わらず、用紙Pを搬送するチェーングリッパ64及び用紙Pが通過する空間が必要なため、センサ101を設置することはできない。また加熱乾燥処理部20の入口と出口の第1水平搬送経路70A周辺は、上記のように用紙Pを搬送する空間が必要なため、明確に加熱乾燥処理部20の内部と外部との仕切りが存在しないが、加熱乾燥処理部20の熱気を帯びた風が吹き出てくるような箇所にセンサ101を設置するのは好ましくない。
【0069】
(UV照射処理部)
【0070】
UV照射処理部22は、水性UVインクが吐出された用紙Pへ紫外光を照射して、UVインクで形成された画像を定着させる。上記UV照射処理部22は、図1に示すように、主として、用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外光を照射するUV照射手段の一例としてのUV照射ユニット74とで構成されている。
【0071】
UV照射ユニット74は、加熱乾燥処理部20の用紙搬送方向下流側のチェーン64Cの内周側に設置され、第2水平搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に紫外光を照射する。このUV照射ユニット74は、UVランプ120と、UVランプ120の側方及び上方を覆い、かつ下方が開放されたUVランプカバー122とを備えており、第2水平搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に向けて紫外光を照射する。
【0072】
UVランプカバー122には、ダクト124が取り付けられている。ダクト124は、図示しない吸引ファンに接続されており、UVランプカバー122の下側の開口部分から空気を吸い込んで、UVランプ120の冷却を行う。
【0073】
チェーングリッパ64に搬送されて加熱乾燥処理部20で乾燥処理が施された用紙Pは、UV照射ユニット74を搬送される。第2水平搬送経路70Bでは、チェーングリッパ64は、用紙Pの先端をグリッパ78で把持して、第2ガイドプレート82に沿わせて用紙Pを搬送する。上記第2水平搬送経路70Bを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたUV照射ユニット74によりUV照射処理が施される。すなわち、UV照射ユニット74から表面に向けて紫外光が照射される。用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながらUV照射処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながらUV照射処理を施すことができる。
【0074】
チェーングリッパ64に搬送されてUV照射処理部22で紫外光が照射された用紙Pは、傾斜搬送経路70Cを搬送される。傾斜搬送経路70Cでは、チェーングリッパ64が用紙Pの先端をグリッパ78で把持して、チェーン64Cの下側にチェーン64Cに沿って配置される傾斜ガイドプレート126に沿わせて用紙Pを搬送する。
【0075】
図1に示すように、第2ガイドプレート82から傾斜ガイドプレート126にかけて、第2水平搬送路70Bの下流端すなわちUV照射処理部22の搬送方向下流には、周囲の雰囲気温度を検出するセンサ102が設けられている。センサ102はセンサ101と同様、空気の温度を検出できれば特定の種類に限定されるものではなく、UV照射処理部22からの熱に耐えられるものであれば熱電対、サーミスタ、測温抵抗体など種々の測温手段をセンサ102として使用できる。
【0076】
センサ101で検出された装置内の雰囲気温度は図2に示す制御手段90に送られ、制御手段90は雰囲気温度のデータをもとに後述する動作シーケンスに従ってインクジェット記録装置10の待機モードと記録モードの切り替えや、記録動作開始の可否を判断する。
【0077】
図2に示すように、UV照射処理部22の下流側に装置外の空気を送り込む為の吸気ファン108Bが設けられている。吸気ファン108BはUV照射処理部22に近い箇所のインクジェット記録装置10の側壁に設けられていてもよいが、図2に示すように吸気ファン108BからUV照射処理部22の下流側まで送風ダクト109Bを設け、矢印103のように送風してもよい。
【0078】
センサ102が設けられるUV照射処理部22に属する箇所は、UVランプカバー122内部の空間全域、UVランプ120、およびUVランプ120直下の第2水平搬送経路70Bが属す。具体的にはUVランプ120、UVランプカバー122、ダクト124、UV用や耐熱用フィルタが設けられている場合はUVランプ120の開口部直下に設置されるフィルタガラスやフィルタ枠等が挙げられる。
【0079】
ここで用紙Pが搬送される第2水平搬送経路70Bには、センサ101の場合と同様にUV照射ユニット74の直下であるかに関わらず、用紙Pを搬送するチェーングリッパ64及び用紙Pが通過する空間が必要なため、センサ102を設置することはできない。またUV照射処理部22の上流側と下流側の第2水平搬送経路70B周辺は、上記のように用紙Pを搬送する空間が必要である点も相まって、明確にUV照射処理部22の内部と外部との仕切りが存在しないが、ダクト124の排気が吹き出てくるような箇所にセンサ102を設置することもまた好ましくない。
【0080】
図2に示すように、加熱乾燥処理部20からUV照射処理部22にかけて、装置内の空気をインクジェット記録装置10の外へ排出する排気ファン106が設けられている。排気ファン106の設置個所は特に限定されるものではないが、望ましくはインクジェット記録装置10の加熱乾燥処理部20からUV照射処理部22に対応する底面、背面などに設けられる。対応する底面、背面とは用紙Pの第1水平搬送経路70A、第2水平搬送経路70Bにおいて前述のセンサ101、センサ102が設けられている箇所に対して、最も近いインクジェット記録装置10の背面、底面を指す。ここではインクジェット記録装置10の外形を形成するパネルなどにおいてセンサ101、センサ102に最も近い個所に排気ファン106が設けられる。ただし吸気ファン108Bと同様、ダクトを設けて排気を誘導する場合はこれに限定せず自由な箇所に排気ファン106を設置できる。
【0081】
排気ファン106は軸流ファンでも、遠心ファンでも、あるいは他の形式でもよい。排気ファン106を設ける場所としては、加熱乾燥処理部20からUV照射処理部22にかけて均等に減圧するように複数個を設けてもよく、あるいは雰囲気温度の上がり易さによって加熱乾燥処理部20またはUV照射処理部22のどちらか一方の近傍から重点的に排気するため、より多くを一方に設けても、あるいは一方にのみ設けられていてもよい。
【0082】
排気ファン106により、矢印104のように加熱乾燥処理部20およびUN照射処理部22近傍の加熱された空気を装置外へ排出することで装置内を減圧し、装置内よりも低温の空気が外部から流入することでセンサ101およびセンサ102近傍の雰囲気温度を低下させる。
【0083】
(排紙部)
【0084】
排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。上記排紙部24は、主として、UV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とで構成されている。
【0085】
上記のように、チェーングリッパ64は、加熱乾燥処理部20及びUV照射処理部22と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
【0086】
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。上記排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。さらに排紙台76、あるいは排紙台76の搬送方向上流側に冷却ファンなどの冷却手段を設け、回収される用紙Pを冷却する構成とされていてもよい。上述のように用紙Pは温度が高いほど傷付き易く、また両面印刷時には印字面同士の固着等も生じ易くなるため、処理終了後の用紙Pは冷却することが望ましい。
【0087】
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
【0088】
(動作シーケンス)
【0089】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置10の動作シーケンスについて詳しく説明する。
【0090】
図3は、インクジェット記録装置10の記録動作の動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0091】
ステップ201では、インクジェット記録装置10の電源が投入され、スタンバイ状態である待機モードとなる。ステップ202では、図示しない操作手段を介してオペレータにより制御手段90に印刷指令が伝達され、ステップ203へ進む。
【0092】
ステップ203では装置内に設けられたセンサ101が検出した雰囲気温度が目標範囲内にあるか否かを判断する。ここで、センサ101に代えてセンサ102を用いてもよい。あるいはセンサ101とセンサ102の両方の検出温度を用いてもよい。センサ101とセンサ102の両方の検出温度を用いる場合は両方の検出した温度が目標範囲内にあるか否かを判断する。
【0093】
ここでいう雰囲気温度の目標範囲としては、センサ101が設けられた画像形成部18と加熱乾燥処理部22との間では25〜40℃の範囲、より望ましくは30〜35℃の範囲であることが望ましい。すなわち発明者らは実験によってセンサ101の設置箇所の雰囲気温度が上記の範囲にあれば良好な品質が得られるという知見を得ている。具体的には、雰囲気温度が25℃未満である場合は用紙Pの乾燥性が変動する虞があり、また雰囲気温度が40°を超えると画像形成部18が過剰に高温となり、インクジェットヘッド56内のインクと周囲との温度差によってヘッド面で結露を生じ、吐出性に影響するなどの虞がある。
【0094】
さらにセンサ102が設けられたUV照射処理部22の搬送方向下流でも25〜40℃の範囲、より望ましくは30〜35℃の範囲であることが望ましい。すなわち発明者らは実験によってセンサ102の設置箇所の雰囲気温度が上記の範囲にあれば良好な品質が得られるという知見を得ている。具体的には、雰囲気温度が25℃未満である場合は用紙Pの乾燥性が変動する虞があり、また雰囲気温度が40°を超えると排紙部24において用紙Pが過剰に高温となり、積層された用紙P同士がブロッキングを生じる虞がある。
【0095】
ステップ203で、センサ101(またはセンサ102、あるいは両方)によって検出された雰囲気温度が目標範囲にない場合はサブルーチン204(雰囲気温度目標内調整サブルーチン)へ進む。サブルーチン204では、検出された装置内の雰囲気温度値を制御手段90にフィードバックし、目標範囲内に収める。雰囲気温度を目標範囲内に収める方法としては以下のような方法が挙げられる。
【0096】
図4に示すように、ステップ250ではセンサ101で検出された雰囲気温度が目標範囲より高すぎるか否かを判定する。センサ101で検出された雰囲気温度が目標範囲より高い場合は、ステップ252に進み図2に示す吸気ファン108A、排気ファン106を起動し(既に起動している場合は風量を上げ)、あるいは熱源である加熱乾燥処理部20の加熱強度を下げて雰囲気温度を下げることによって、目標範囲に雰囲気温度を収める。ヒートパイプなど他の放熱手段を備え、併用してもよい。
【0097】
センサ101で検出された雰囲気温度が高すぎないと判定されるとステップ254へ進み、雰囲気温度が低すぎないか否か判定される。センサ101で検出された雰囲気温度が目標範囲より低すぎる場合は、熱源である加熱乾燥処理部20の加熱強度(設定温度)を上げて昇温させ、周囲の雰囲気温度を上昇させてもよく、また排気ファン106、吸気ファン108Aが起動している場合は風量を下げ、あるいは停止する等の方法を使用できる。あるいは雰囲気温度調節用のヒータを別途設け加熱してもよく、または上記の方法を複数併用してもよい。
【0098】
ステップ254で、センサ101で検出された雰囲気温度が低すぎないと判定されると次にステップ258でセンサ102にて検出された雰囲気温度が目標範囲より高すぎるか否かを判定する。センサ102で検出された雰囲気温度が目標範囲より高い場合は、ステップ260に進み図2に示す吸気ファン108B、排気ファン106を起動し(既に起動している場合は風量を上げ)、あるいは熱源であるUV照射処理部22の設定強度を下げて雰囲気温度を下げることによって、目標範囲に雰囲気温度を収める。ヒートパイプなど他の放熱手段を備え、併用してもよいのはセンサ101と同様である。尚、ここでいうUV照射処理部22の設定強度とはUVランプ120の出力(W/cm)、光量(J/cm2)、照度(W/cm2)のいずれか、あるいは複数を指す。
【0099】
センサ102で検出された雰囲気温度が高すぎないと判定されるとステップ262へ進み、雰囲気温度が低すぎないか否か判定される。センサ102で検出された雰囲気温度が目標範囲より低すぎる場合は、熱源であるUV照射処理部22の設定強度を上げて昇温させ、周囲の雰囲気温度を上昇させてもよく、また排気ファン106、吸気ファン108Bが起動している場合は風量を下げ、あるいは停止する等の方法を使用できる。あるいは雰囲気温度調節用のヒータを別途設け加熱してもよく、または上記の方法を複数併用してもよい。
【0100】
ステップ203とサブルーチン204とを繰り返し、雰囲気温度が目標範囲に収まったらステップ205に移行する。ステップ205ではインクジェット記録装置10全体を待機モードから記録モードに移行する。これによりステップ206で後述する記録モードへの移行(サイクルアップ)を開始する。具体的には、待機モード時では加熱乾燥処理部20の熱源温度とUV照射処理部22の加熱強度(設定強度)を待機時の目標値(スタンバイ温度)であった状態から、記録モード時には加熱乾燥処理部20の熱源温度とUV照射処理部22の出力強度を記録時の目標値である実働温度に移行し、インクジェット記録装置10を記録動作可能な状態とする。
【0101】
次いでステップ207では熱源(加熱乾燥処理部20、UV照射処理部22)の温度が目標に到達したか否かを判定し、目標温度に未達であればステップ208に移行、制御手段90に熱源温度値をフィードバックする。制御手段90にて熱源が目標温度に達したと判断されるまでステップ208を繰り返す。
【0102】
熱源温度が目標温度に達するとステップ209へ移行、インクジェット記録装置10は記録動作を開始可能となる。この状態からオペレータの操作により記録動作が行われ、前述のプロセスを経て記録動作は終了する。
【0103】
上記の動作シーケンスを図7に示す比較例、すなわち本実施形態を採用していない動作シーケンスと比較すると、比較例がステップ602で印刷指令を受け、直接ステップ603へ進み記録モードに移行するため、装置内の雰囲気温度にかかわらずステップ604でサイクルアップを開始し、さらに熱源の温度が目標温度に達すればステップ607で記録動作を開始してしまう。
【0104】
このため、加熱乾燥処理部20やUV照射処理部22のような熱源から比較的遠い位置にある箇所の装置内雰囲気温度は制御部の制御下にないため、検出、制御はされておらず一定ではない。例えば、図2に示したように、センサ101の設置個所(画像形成部18〜加熱乾燥処理部20の間)、センサ102の設置個所(UV照射処理部22〜排紙部24)は、装置の稼働状況(例えば装置立ち上げ直後で装置内がまだ冷えている、装置の稼動が長時間にわたり、装置内に熱気がこもっている等)、季節による温度変化(例えば冬場は室温が低い、夏場は室温が高い等)等による影響を受け易い。
【0105】
特にセンサ101の設置個所は用紙Pへのインク描画直後の乾燥手前のエリアであり、この部分の雰囲気温度はインク付与後の用紙Pの初期乾燥性に影響を与え易い。またセンサ102の設置個所は用紙PがUV照射処理部22での処理を終えたのち、温度が高い状態で通過するエリアであるが、この部分の雰囲気温度は用紙Pが高温状態を維持する時間(冷える度合い)に影響し、乾燥性に影響する。
【0106】
用紙Pの乾燥性を一定に維持するため、センサ101、センサ102の両方が設けられ、雰囲気温度が制御される構成が最も望ましいが、装置内の雰囲気温度の変動幅および変動速度によってはセンサ101、あるいはセンサ102のどちらか一方だけを設け、これによって雰囲気温度を制御してもよい。
【0107】
(作用効果)
【0108】
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の作用並びに効果について説明する。
【0109】
本実施形態に係る動作シーケンスでは、装置内雰囲気温度(より具体的にはセンサ101とセンサ102の設置個所の雰囲気温度)を目標範囲内に収めて記録動作を開始することで、用紙Pの乾燥性の変動を防止できる。すなわち、センサ101設置個所の雰囲気温度を一定に保つことで、画像形成部18が過剰に高温になり、インクジェットヘッド56内のインク温度と画像形成部18との温度差が原因で生じる、ヘッド面での結露を防止することができる。一方、センサ102設置個所の雰囲気温度を一定に保つことで、排紙部24で用紙Pが過剰に高温になることを防止し、積層された用紙Pのブロッキングを防止することができる。
【0110】
(第2実施形態)
【0111】
図5(A)は、本実施形態を採用していない比較例のインクジェット記録装置の記録動作の動作シーケンスのうち一部を示すフローチャートであり、図5(B)は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置10の記録動作の動作シーケンスのうち一部を示すフローチャートである。ここでは記録動作開始までのステップは省略する。
【0112】
図5(B)に示すステップ401では、記録モードへの移行(サイクルアップ)を終了しインクジェット記録装置10の記録動作が行われる。オペレータが操作を終了し、ステップ402へと移行する。このステップ402では、現在処理中の用紙Pの最後の一枚が加熱乾燥処理部20またはUV照射処理部22を通過したか否かを判定する。
【0113】
用紙Pが通過し終えたらステップ403へ移行する。すなわち加熱乾燥処理部20またはUV照射処理部22の設定温度(出力強度)を記録時の目標値から待機時の目標値へと下げる。これによって加熱乾燥処理部20またはUV照射処理部22が発する熱は(最後の用紙Pが処理中であっても)低下し、装置内への放熱量も減少する。次いでステップ404へ移行し、記録動作を終了すると装置全体をサイクルダウンし、待機モードへと戻る。
【0114】
このシーケンスにおいては、図5(A)に示す比較例のシーケンスでステップ301の記録動作開始からステップ302の記録動作終了まで、用紙Pが排紙部24に排出され終わるまで記録モードのまま熱源(加熱乾燥処理部20またはUV照射処理部22)の温度を維持し続けるのに比較して、用紙Pの最後の1枚が熱源を通過すると、処理中であっても熱源の熱源温度、出力強度を記録時の目標値から待機時の目標値に下げる点が異なっている。
【0115】
すなわち図5(A)に示す動作シーケンスでは、用紙Pが熱源の直下を通過してから実際に印刷動作が終了するまでの間(例えば、用紙Pが排紙部24に到達するまでの間)、多少のタイムラグが生じる。その間の熱源からの熱は用紙Pに付与されず、装置内に滞留することになるので、雰囲気温度が上がり易くなる。
【0116】
これに対して図5(B)に示す本実施形態に係る動作シーケンスでは、記録動作を完全に終了する前に、用紙Pの最後の1枚が熱源(加熱乾燥処理部20またはUV照射処理部22)を通過直後ただちに、加熱乾燥処理部20の熱源温度、及びUV照射処理部22の出力強度の目標値を、記録時の設定から待機時の設定に戻すことで、余分な(用紙Pに伝わらない)熱が装置内に滞留することを防ぐことができる。
【0117】
(第3実施形態)
【0118】
図6は、本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置10の記録動作の動作シーケンスを示すフローチャートである。ステップ504では図4に示すサブルーチン204と同様の処理を行う。なおステップ506(サイクルアップ)までは第1実施形態と同様なので省略する。
【0119】
図6に示すステップ506でサイクルアップを行い、加熱乾燥処理部20の熱源温度とUV照射処理部22の出力強度(温度設定)を待機時の目標値(スタンバイ温度)から記録時の目標値である実働温度に移行し、インクジェット記録装置10を記録動作可能な状態とする。
【0120】
次いでステップ507へ移行し、センサ101(またはセンサ102、あるいは両方)で検出された雰囲気温度が目標範囲内にあるか否かを判定する。雰囲気温度が目標範囲にない場合はステップ508に移行し、雰囲気温度値を制御手段90にフィードバックし目標範囲内に収める。雰囲気温度を目標範囲内に収める方法としては前述のように種々の方法が考えられる。なお、制御方法としては図4に示すサブルーチン204と同様なので省略する。
【0121】
雰囲気温度が目標範囲内に収まったと判定されると、ステップ509へ移行し記録動作が開始される。以降は第1実施形態と同様である。
【0122】
本実施形態に係る動作シーケンスの効果は以下の通りである。すなわちインクジェット記録装置10が待機モードから記録モードに移行する際、サイクルアップ動作で加熱乾燥処理部20の熱源温度およびUV照射処理部22の出力強度を待機時の目標値から、記録時の目標値に上昇させるが、その際、上記熱源からの放出熱量は当然増加する。
【0123】
そのため、待機モード時において装置内の雰囲気温度が目標内に収まっていても、記録モードへの移行完了時にサイクルアップ動作で装置内の雰囲気温度が目標範囲の上限を超過してしまう、いわゆるオーバーシュートとなる場合が考えられる。
【0124】
本実施形態に係る動作シーケンスでは、サイクルアップ動作中においても、センサ101(またはセンサ102あるいは両方)で装置内の雰囲気温度を検出し、雰囲気温度が目標範囲に納まらないうちは記録動作を開始しないように制御手段90が制御する。このため用紙Pは目標範囲内の雰囲気温度下で記録処理され、用紙Pの乾燥性の変動を防止することができる。
【0125】
<その他の変形例>
【0126】
以上、本発明の第1実施形態〜第3実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0127】
たとえば、各実施形態のシーケンスを併合した内容の動作シーケンスで記録動作を行う構成であってもよいし、センサ101、102近傍など装置内の任意の箇所や、吸気ファン108に図示しない雰囲気温度用ヒータを備え、雰囲気温度を昇温させる場合は雰囲気温度用ヒータをON、降温させる場合はOFFにするなどの構成としてもよい。ヒータによる昇温で雰囲気温度を制御すれば、加熱乾燥処理部20およびUV照射処理部22からの熱によらず雰囲気温度を制御できるので、冬場など雰囲気温度が上昇しにくい際であっても加熱乾燥処理部20およびUV照射処理部22が加熱する虞はない。
【0128】
あるいはセンサの設置個所を画像形成部18と加熱乾燥処理部20との間、およびUV照射処理部22の下流側に限定せず、さらにこれ以外の箇所に雰囲気温度を検出するセンサを設け雰囲気温度を制御し、用紙Pの乾燥性を一定に維持する構成としてもよい。例えば画像形成部18の上流側で雰囲気温度を検出および制御しても、あるいは排紙部24の雰囲気温度を検出および制御してもよい。
【符号の説明】
【0129】
10 インクジェット記録装置
18 画像形成部(描画手段)
20 加熱乾燥処理部(乾燥手段)
22 UV照射処理部(定着手段)
90 制御手段
101 センサ(検出手段)
102 センサ(検出手段)
106A 排気ファン(排気手段)
106B 排気ファン(排気手段)
108A 吸気ファン(吸気手段)
108B 吸気ファン(吸気手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7