特許第5980964号(P5980964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5980964
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】性能に優れたリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20160818BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20160818BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20160818BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20160818BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20160818BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M10/0566
   H01M4/485
   H01M4/505
   H01M4/525
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-560869(P2014-560869)
(86)(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公表番号】特表2015-513773(P2015-513773A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】KR2013003260
(87)【国際公開番号】WO2013157854
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2014年9月8日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0039449
(32)【優先日】2012年4月17日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヒュン・リム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジヒュン・キム
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−065993(JP,A)
【文献】 特開2011−081931(JP,A)
【文献】 特開2009−231245(JP,A)
【文献】 特開2009−076468(JP,A)
【文献】 特開2011−113961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052、10/0566、10/0587、
4/485、4/505、4/525、4/131
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体上に正極合剤層が形成されている正極、負極集電体上に負極合剤層が形成されている負極、前記正極と前記負極との間に配置される分離膜で構成された電極組立体、及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記負極が、負極活物質としてリチウムチタン酸化物(Lithium Titanium Oxide:LTO)を含んでおり、
前記正極合剤層の4面の長さが前記負極合剤層の4面の長さと同一またはより長いので、前記正極合剤層の面積が前記負極合剤層の面積と同一またはより大きく、
前記リチウム二次電池は、3.3〜4Vの範囲の充電カットオフ電圧(cut-off voltage)を有し、前記充電カットオフ電圧に到達した時に、負極の電位は、正極の電位が4.95Vを超えない範囲で0.75〜1.545Vであり、かつ
前記リチウムチタン酸化物(LTO)は下記の化学式1で表され、かつ前記正極は正極活物質として下記の化学式2で表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物を含むことを特徴とする、リチウム二次電池。
LiTi (1)
化学式1中で、0.5≦a≦3、1≦b≦2.5である。
LiMn2−y4−z (2)
化学式2中で、0.9≦x≦1.2、0<y<2、0≦z<0.2であり、
Mは、Al、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Ti、Cu、B、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、W、Ti及びBiからなる群から選択される一つ以上の元素であり、
Aは、−1または−2価の一つ以上の陰イオンである。
【請求項2】
前記リチウム二次電池のカットオフ電圧(cut-off voltage)は3.3〜3.5Vであり、前記カットオフ電圧に到達した時に、前記負極の電位は、正極の電位が4.95Vを超えない範囲で1.2〜1.545Vであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記リチウムチタン酸化物は、Li1.33Ti1.67またはLiTiであることを特徴とする、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記化学式2で表されるリチウムマンガン複合酸化物は、下記化学式3で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物であることを特徴とする、請求項に記載のリチウム二次電池。
LiNiMn2−y (3)
前記化学式3中で、0.9≦x≦1.2、0.4≦y≦0.5である。
【請求項5】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、LiNi0.5Mn1.5またはLiNi0.4Mn1.6であることを特徴とする、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記負極合剤層の面積が、前記正極合剤層の面積を基準として80〜100%であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記負極合剤層の面積が、前記正極合剤層の面積を基準として90〜100%であることを特徴とする、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記負極の容量は、前記正極の容量と同一またはより小さいことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記負極の容量が、前記正極の容量を基準として80〜100%であることを特徴とする、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記負極の容量が、前記正極の容量を基準として90〜100%であることを特徴とする、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
請求項1に記載のリチウム二次電池を単位電池として含むことを特徴とする、電池モジュール。
【請求項12】
請求項11に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする、電池パック。
【請求項13】
請求項12に記載の電池パックを含むことを特徴とする、デバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、または電力貯蔵用システムであることを特徴とする、請求項13に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性能に優れたリチウム二次電池に係り、より詳細には、正極集電体上に正極合剤層が形成されている正極、負極集電体上に負極合剤層が形成されている負極、前記正極と前記負極との間に配置される分離膜で構成された電極組立体、及び電解液を含むリチウム二次電池であって、前記負極が、負極活物質としてリチウムチタン酸化物(Lithium Titanium Oxide:LTO)を含んでおり、前記正極合剤層の4面の長さが前記負極合剤層の4面の長さと同一またはより長いので、前記正極合剤層の面積が前記負極合剤層の面積と同一またはより大きいことを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発及び需要が増加するに伴い、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急増しており、そのような二次電池の中でも、高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0003】
また、最近は、環境問題への関心が高まるにつれて、大気汚染の主要原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両などの化石燃料を使用する車両を代替し得る電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などに対する研究が多く行われている。このような電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としては、主にニッケル水素金属(Ni−MH)二次電池が使用されているが、高いエネルギー密度、高い放電電圧及び出力安定性のリチウム二次電池を使用する研究が活発に行われており、一部は商用化されている。
【0004】
リチウム二次電池は、電流集電体上にそれぞれ活物質が塗布されている正極と負極との間に多孔性の分離膜が介在された電極組立体に、リチウム塩を含む非水系電解質が含浸されている構造となっている。
【0005】
電極組立体は、長いシート状の集電体ホイル(foil)の両面に電極活物質を塗布した正極と負極を、分離膜を介在させた状態で丸く巻き取ったジェリーロール型と、一定の単位サイズの集電体ホイルの両面に電極活物質を塗布した多数の正極と負極を、分離膜を介在させた状態で順次積層したスタック型と、に区分される。
【0006】
スタック型の場合、正極と負極を一層ずつ交互に積層し、このとき、正極面と負極面を正確に合わせることが難しいため、正極と負極とがずれた面積の分だけリチウムの移動速度の減少及び反応に参加する面積が減少して、セル容量が減少するという問題がある。
【0007】
負極活物質は、主に炭素系物質からなっており、正極活物質は、主にリチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物、リチウムニッケル系酸化物、リチウム複合酸化物などからなっている。
【0008】
このうち、LiCoOは、良好な電気伝導度、高い出力電圧及び優れた電極特性を示し、現在商業化されて市販されている代表的な正極電極物質であるが、埋蔵量及び材料コストによる経済性と環境的な面、すなわち、人体に有害であるという短所を有している。LiNiOは、比較的安価であり、高い放電容量の電池特性を示しているが、合成しにくく、充電状態の熱的安全性の問題点を有している。また、LiMn、LiMnOなどのマンガン系電極物質は、合成することも容易であり、安価であり、電気化学的放電特性が良く、環境に対する汚染も少ないので、活物質への応用可能性が高いが、伝導性及び理論容量が小さく、作動電圧が高いため、電解質が分解されるおそれがあるという問題点を有している。
【0009】
その他に、高電圧正極を使用する場合、電解液の酸化電位に到達して電解液が酸化し、それに伴うガス放出及び副産物の発生により電池性能の低下及び抵抗の増加という問題が生じ、結果的に、電池の安全性の面でも深刻な問題が生じ得る。
【0010】
したがって、このような問題を誘発せずに高電圧条件で作動することができる二次電池に対する必要性が高いのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0012】
本出願の発明者らは、鋭意研究と様々な実験を重ねた結果、後述するように、負極活物質としてLTOを含み、正極合剤層の面積を負極合剤層の面積よりも4面全てにおいて大きくする場合、所望の効果を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、正極集電体上に正極合剤層が形成されている正極、負極集電体上に負極合剤層が形成されている負極、前記正極と前記負極との間に配置される分離膜で構成された電極組立体、及び電解液を含むリチウム二次電池であって、前記負極が、負極活物質としてリチウムチタン酸化物(Lithium Titanium Oxide:LTO)を含んでおり、前記正極合剤層の4面の長さが、前記負極合剤層の4面の長さと同一またはより長いので、前記正極合剤層の面積が、前記負極合剤層の面積と同一またはより大きいことを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【0014】
上記のように、正極合剤層の4面の長さを前記負極合剤層の4面の長さと同一またはより長くして、前記正極合剤層の面積を前記負極合剤層の面積と同一またはより大きく製造する場合、組立工程を良くするだけでなく、従来、製造過程において正極と負極とがずれて全ての負極が正極と反応できないことによって生じる容量減少の問題を解決することができる。
【0015】
前記負極合剤層の面積が小さすぎる場合には、容量が著しく減少して所望の容量を得ることができないため、詳細には、前記負極合剤層の面積が、前記正極合剤層の面積を基準として80〜100%であってもよく、より詳細には、90〜100%であってもよい。
【0016】
一つの具体的な例において、前記リチウム二次電池は、3.3〜4Vの範囲の充電カットオフ電圧(cut-off voltage)を有し、前記カットオフ電圧に到達した時に、負極の電位は、正極の電位が4.95Vを超えない範囲で0.75〜1.545Vであってもよい。
【0017】
本発明に係る前記充電カットオフ電圧は、カットオフ発生時の正極の電位と負極の電位との差を意味し、このような充電カットオフ電圧は、高電圧で電解液の酸化を防止するために設定される。
【0018】
したがって、一つの具体的な例において、電解液の酸化をより効率的に防止するために、前記カットオフ電圧は、詳細には3.3〜3.5Vであってもよい。この場合、カットオフ電圧に到達した時に、負極の電位は、正極の電位が4.95Vを超えない範囲で1.2〜1.545Vであることが好ましい。
【0019】
本出願の発明者らは、高電圧の正極を使用する場合、容易に電解液の酸化電位に到達して電解液が酸化し、それに伴うガス放出及び副産物の発生により電池性能の低下及び抵抗の増加という問題があることを見出し、鋭意研究と様々な実験を重ねた結果、リチウム二次電池が前記条件を満たす場合には、高電圧正極の使用にもかかわらず、電解液の酸化を防止できることを見出した。すなわち、充電カットオフ電圧が前記範囲の値を有し、負極の電位が前記範囲を満たす場合、正極の電位が電解液が酸化する電位まで上昇する前にカット−オフ電圧に到達することによって、電解液の酸化を防止することができる。
【0020】
一つの具体的な例において、前記負極活物質としてリチウムチタン酸化物は下記化学式1で表すことができ、具体的にLi0.8Ti2.2、Li2.67Ti1.33、LiTi、Li1.33Ti1.67、Li1.14Ti1.71などであってもよいが、これらに限定されるものではなく、より詳細には、充放電時に結晶構造の変化が少なく、可逆性に優れたスピネル構造のLi1.33Ti1.67またはLiTiであってもよい。
【0021】
LiTi(1)
【0022】
上記式中で、0.5≦a≦3、1≦b≦2.5である。
【0023】
前記リチウムチタン酸化物の高い電位に対応して、一つの具体的な例において、前記正極は高電圧正極であってもよく、正極活物質として、高電位酸化物であるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物を使用することができ、前記リチウムマンガン複合酸化物は、下記化学式2で表すことができる。
【0024】
LiMn2−y4−z(2)
【0025】
上記式中で、0.9≦x≦1.2、0<y<2、0≦z<0.2であり、
Mは、Al、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Ti、Cu、B、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、W、Ti及びBiからなる群から選択される一つ以上の元素であり、
Aは、−1または−2価の一つ以上の陰イオンである。
【0026】
詳細には、前記リチウムマンガン複合酸化物は、下記化学式3で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物であってもよく、より詳細には、LiNi0.5Mn1.5またはLiNi0.4Mn1.6であってもよい。
【0027】
LiNiMn2−y(3)
【0028】
上記式中で、0.9≦x≦1.2、0.4≦y≦0.5である。
【0029】
前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LNMO)は、特にLTOの高い電位によって、相対的に高電位を有するスピネル構造の複合酸化物であり、3.5〜4.3Vの電圧特性を有する既存の正極と比較するとき、4.7Vという高電圧特性を有する物質であるので、本発明は、このような電池の適用にさらに効果的である。
【0030】
一方、従来、負極活物質として炭素系物質を使用する場合、負極表面にリチウム化合物が生成されることによる可逆容量の減少という問題により、負極の容量を正極の容量に比べて大きくしなければならなかったが、LTOを使用することによって、リチウムプレーティングを防止できるようになって負極容量制限のセル設計が可能となった。
【0031】
したがって、一つの具体的な例において、前記負極の容量は、正極の容量と同一またはより小さくすることができる。負極の容量が小さすぎる場合には、容量が著しく減少して所望の容量を得ることができないため、詳細には、前記負極の容量が、前記正極の容量を基準として80〜100%であってもよく、より詳細には、90〜100%であってもよい。
【0032】
本発明によって負極合剤層の面積を正極合剤層の面積と同一またはより小さくする場合には、上記で言及した効果以外に、上記のように、負極の容量を正極の容量と同一またはより小さくする効果も得ることができる。
【0033】
このように、負極の容量を正極の容量と同一またはより小さくすることは、本発明による効果を発揮することができる一つの例となり得る。
【0034】
本発明に係るリチウム二次電池のその他の成分については、以下で説明する。
【0035】
前記正極は、正極集電体上に正極活物質、導電材及びバインダーの混合物を塗布した後、乾燥及びプレスして製造され、必要によっては、前記混合物に充填剤をさらに添加することもある。
【0036】
前記正極集電体は、一般に3〜500μmの厚さに製造する。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態が可能である。
【0037】
前記正極活物質は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LNMO)の他に、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2−x(ここで、xは0〜0.33である。)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01〜0.3である。)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01〜0.1である。)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどを使用することができ、共に使用してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記導電材は、通常、正極活物質を含んだ混合物全体の重量を基準として1〜50重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。
【0039】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準として1〜50重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などを挙げることができる。
【0040】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0041】
反面、前記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥及びプレスして製造され、必要に応じて、上述したような導電材、バインダー、充填剤などを選択的にさらに含むことができる。
【0042】
前記負極集電体は、一般に3〜500μmの厚さに製造される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0043】
前記負極活物質は、リチウムチタン酸化物(LTO)の他に、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料;チタン酸化物などを共に使用してもよい。
【0044】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在し、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。一般に、分離膜の気孔径は0.01〜10μmで、厚さは5〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0045】
前記電解液は、リチウム塩を含有しており、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使用することができる。
【0047】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使用することができる。
【0048】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0049】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解しやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを使用することができる。
【0050】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善の目的で、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもでき、FEC(Fluoro−Ethylene Carbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含ませることができる。
【0051】
一つの具体的な例において、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(SOCFなどのリチウム塩を、高誘電性溶媒であるECまたはPCの環状カーボネートと、低粘度溶媒であるDEC、DMCまたはEMCの線状カーボネートとの混合溶媒に添加して、リチウム塩含有非水系電解質を製造することができる。
【0052】
本発明はまた、前記リチウム二次電池を単位電池として含む電池モジュールを提供し、前記電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0053】
前記電池パックは、高温安定性、長いサイクル特性及び高いレート特性などが要求されるデバイスの電源として使用することができる。
【0054】
前記デバイスの具体的な例としては、電気的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E−bike)、電気スクーター(E−scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】実験例2に係る寿命特性の比較グラフである。
図2】実験例3に係るガス発生量の比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に係る実施例を参照してさらに詳細に説明するが、本発明の範疇がそれによって限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
負極活物質(Li1.33Ti1.67)、導電材(Denka black)、バインダー(PVdF)を90:5:5の重量比でNMPに入れ、ミキシングして負極合剤を製造し、20μmの厚さのアルミニウムホイルに前記負極合剤をコーティングした後、圧延及び乾燥して、負極を製造した。
【0058】
また、LiNi0.5Mn1.5を正極活物質として使用し、導電材(Denka black)、バインダー(PVdF)をそれぞれ90:5:5の重量比でNMPに入れ、ミキシングして正極合剤を製造し、20μmの厚さのアルミニウムホイルに前記正極合剤をコーティングした後、圧延及び乾燥して、正極を製造した。
【0059】
このとき、負極合剤層の4面の長さが正極合剤層の4面の長さよりも小さい範囲において、正極合剤層に対する負極合剤層の面積の比が89.3%になるように、負極合剤層の面積を12cm、正極合剤層の面積を13.44cmになるように製造した。このとき、ローディング量は、正極及び負極のいずれも1mAh/cmで同一である。
【0060】
このように製造された負極と正極との間に分離膜(厚さ:20μm)を介在させて電極組立体を製造した。このように製造された電極組立体をパウチ型電池ケースに収納した後、エチルカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートが体積比を基準として1:1:1で混合されており、リチウム塩として1MのLiPFを含んでいるリチウム非水系電解液を注入した後、密封してリチウム二次電池を組み立てた。
【0061】
<実施例2>
上記実施例1において、負極合剤層の4面の長さを正極合剤層の4面の長さと同一にして、正極合剤層に対する負極合剤層の面積の比が100%になるように、負極合剤層の面積を12cm、正極合剤層の面積を12cmになるように製造したこと以外は、実施例1と同様にリチウム二次電池を製造した。
【0062】
<比較例1>
上記実施例1において、正極合剤層に対する負極合剤層の面積の比が112%になるように、負極合剤層の面積を13.44cm、正極合剤層の面積を12cmになるように製造したこと以外は、実施例1と同様にリチウム二次電池を製造した。
【0063】
<実験例1>
上記実施例1、2及び比較例1に係る二次電池のカットオフ電圧を3.5Vに設定し、カットオフ電圧に到達した時に、負極の電位及び正極の電位をそれぞれ測定した。これを下記表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1を参照すると、実施例1及び2に係る二次電池は、カットオフ電圧に到達した時に負極の電位が1.3V、1.4Vであるので、正極の電位が4.8V、4.9Vとなって、正極の電位が電解液の酸化電位に到達する前にカットオフ電圧に到達する一方、比較例1に係る二次電池は、カットオフ電圧に到達した時に負極の電位が1.55Vであるため、正極の電位が5.0Vとなって電解液の酸化電位に到達するようになることがわかる。
【0066】
<実験例2>
二次電池の寿命特性の評価
上記実施例1、2及び比較例1の二次電池を1C、10mAで2〜3.35Vの範囲で充放電を進行し、これを常温で50サイクル反復実施しながら電池の充電容量の変化を測定し、その結果を下記図1に示す。
【0067】
図1を参照すると、本発明に係る実施例1及び2の電池は、比較例1の電池に比べて、充放電を繰り返しても充電容量の減少が少ないことがわかる。
【0068】
<実験例3>
二次電池のガス発生量の測定
上記実施例1、2及び比較例1の二次電池を、1C、10mAで2〜3.35Vの範囲で充放電を進行し、これを常温で50サイクル反復実施した後、50サイクル下でガス発生量を測定して、下記図2に示す。
【0069】
図2を参照すると、実施例1及び2の電池は、比較例1の電池に比べてガス発生量が少なく、特にカットオフ電圧到達時に負極の電位がさらに低い実施例1の場合、ガス発生量がさらに減少することがわかる。
【0070】
このことから、本発明に係る二次電池を使用する場合、電池内のガス発生を抑制して電池が膨張することを防止し、寿命特性が向上するという効果があることを確認することができる。
【0071】
本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、上記内容に基づいて本発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明に係るリチウム二次電池は、LTO負極を使用することによって、リチウムプレーティング(Li plating)を防止しながら、正極合剤層の面積を前記負極合剤層の面積と同一またはより大きくすることによって、積層時に正極と負極とがずれる面を補完できるので、全ての負極が正極と反応できるようにし、高電圧正極の使用時にも、正極の電位が電解液の酸化電位以上に上がることを防止して、電解液の酸化を防ぐことによって、二次電池の性能を向上させるという効果がある。
図1
図2