特許第5981033号(P5981033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981033
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】油中水型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20160818BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20160818BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20160818BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   A61K8/27
   A61K8/06
   A61K8/29
   A61K8/31
   A61K8/35
   A61K8/49
   A61K8/81
   A61K8/89
   A61K8/891
   A61K8/894
   A61Q17/04
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-517042(P2015-517042)
(86)(22)【出願日】2014年5月7日
(86)【国際出願番号】JP2014062281
(87)【国際公開番号】WO2014185316
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-103487(P2013-103487)
(32)【優先日】2013年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】青木 美菜子
(72)【発明者】
【氏名】阪口 博之
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/065643(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/065644(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/098249(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/002278(WO,A1)
【文献】 特開2012−211114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを表面に有する表面処理粉体と、
少なくとも1種のカロテノイドと、
少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルと、
少なくとも1種のポリエーテル変性シリコーンと、
皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、
を含む油中水型化粧料。
【請求項2】
ポリエーテル変性シリコーンが、直鎖又は分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーンである請求項1に記載の油中水型化粧料。
【請求項3】
ポリエーテル変性シリコーンが、分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーンである請求項1又は請求項2に記載の油中水型化粧料。
【請求項4】
ソルビタン脂肪酸エステルが、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン及びセスキイソステアリン酸ソルビタンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の油中水型化粧料。
【請求項5】
ポリエーテル変性シリコーンが、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の油中水型化粧料。
【請求項6】
皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体等からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリル酸アルキル/ジメチコン コポリマー及びアクリル酸アルキルコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の油中水型化粧料。
【請求項7】
皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の総含有量が、0.1質量%〜15質量%である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の油中水型化粧料。
【請求項8】
カロテノイドが、リコピン及びアスタキサンチン並びにそれらの誘導体から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の油中水型化粧料。
【請求項9】
カロテノイドがアスタキサンチンである請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の油中水型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に紫外線防止効果を付与するために種々の有機系紫外線吸収剤が用いられており、特に、無機粉体に、有機化合物である紫外線吸収剤を複合化した紫外線遮蔽粉体が知られている。
例えば、国際公開第2010/098249号パンフレットには、基材となる粉体表面に、紫外線吸収能を有する有機化合物をコーティングしてなる複合粉体が開示されている。国際公開第2010/098249号パンフレットには、この複合粉体は、紫外線吸収能を有する有機化合物と紫外線散乱能を有する無機系顔料とを複合させたものであり、化粧料への配合が安定的に可能な粉末であって、高い紫外線吸収効果を維持し、分散性の良好な有機系紫外線吸収剤であると記載されている。このような複合粉体として、国際公開第2010/098249号パンフレットには、微粒子酸化チタンの表面にブチルメトキシジベンゾイルメタンをコーティングした複合粉体が開示されている。
【0003】
一方、種々の機能を発揮し得る天然由来成分としてカロテノイドを含有する化粧料が数多く知られている。カロテノイドは、光等により分解しやすいという性質を有するために、カロテノイドを安定的に化粧料に含有させることが求められている。
例えば、特開2012−211114号公報には、ジメチルポリシロキサン処理酸化チタン等の疎水化処理無機粉体と、特定のシリコーン系界面活性剤と、シリコーン油と、トリグリセライドと、アスタキサンチンとを配合した油中水型乳化化粧料が開示されている。この油中水型乳化化粧料は、粉体を配合した際にも伸び広がりがよく、粉体成分との共存下でもアスタキサンチンの経時での安定性に優れるものであると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブチルメトキシベンゾイルメタンを表面に有する粉体を乳化物に配合すると、肌の凹凸が目立つ等の使用感が損なわれることがある。また、ブチルメトキシベンゾイルメタンを表面に有する粉体の存在下におけるカロテノイドの経時安定性についても、改善の余地がある。このため、優れた使用感を有し、良好な紫外線遮蔽能と良好なカロテノイドの経時安定性との両立に対する要求が高まっている。
本発明は、良好な紫外線遮蔽効果と、カロテノイドの優れた経時安定性と、良好な使用感とを備える油中水型化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のとおりである。
[1] 酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを表面に有する表面処理粉体と、少なくとも1種のカロテノイドと、少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルと、少なくとも1種のポリエーテル変性シリコーンと、皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含む油中水型化粧料。
[2] ポリエーテル変性シリコーンが、直鎖又は分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーンである[1]に記載の油中水型化粧料。
[3] ポリエーテル変性シリコーンが分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーンである[1]又は[2]に記載の油中水型化粧料。
[4] ソルビタン脂肪酸エステルが、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン及びセスキイソステアリン酸ソルビタンからなる群より選択される少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の油中水型化粧料。
[5] ポリエーテル変性シリコーンが、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群より選択される少なくとも1種である[1]〜[4]のいずれか1つに記載の油中水型化粧料。
[6] 皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリル酸アルキル/ジメチコン コポリマー及びアクリル酸アルキルコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれか1つに記載の油中水型化粧料。
[7] 皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の総含有量が、0.1質量%〜15質量%である[1]〜[6]のいずれか1つに記載の油中水型化粧料。
[8] カロテノイドが、リコピン及びアスタキサンチン並びにそれらの誘導体から選択される少なくとも1種である[1]〜[7]のいずれか1つに記載の油中水型化粧料。
[9] カロテノイドがアスタキサンチンである[1]〜[8]のいずれか1つに記載の油中水型化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、良好な紫外線遮蔽効果と、カロテノイドの優れた経時安定性と、良好な使用感とを備える油中水型化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の油中水型化粧料は、(a)酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを表面に有する表面処理粉体と、(b)少なくとも1種のカロテノイドと、(c)少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルと、(d)少なくとも1種のポリエーテル変性シリコーンと、(e)皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含む。
【0008】
本発明の油中水型化粧料では、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを表面に有する所定の表面処理粉体と、少なくとも1種のカロテノイドと、少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルと、少なくとも1種のポリエーテル変性シリコーンと、皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを組み合わせて含むことにより、良好な紫外線遮蔽効果と、カロテノイドの優れた経時安定性と、良好な使用感とが得られる。
即ち、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを表面に有する特定の表面処理粉体は、良好な紫外線遮蔽能を有する表面処理粉体であると共に、カロテノイドの経時安定性向上に寄与することが見い出された。また、ソルビタン脂肪酸エステルと、ポリエーテル変性シリコーンと、皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を更に油中水型化粧料に配合することによって、この特定の表面処理粉体の分散性が高まり、これに伴って、油中水型化粧料の使用感が高まり、加えて、カロテノイドの経時安定性が更に高まると推測される。ただし、本発明は特定の理論に拘束されない。
【0009】
一般に、表面処理粉体を含む油中水型の化粧料は、肌への塗布時に表面処理粉体によって重たく感じられることが多い。表面処理粉体を含む油中水型の化粧料は、塗布面への塗り方又は手等の動きによって表面処理粉体の広がりに偏りが生じて、油中水型化粧料の塗布面において表面処理粉体が局在化し、紫外線遮蔽効果が落ちる場合もある。これに対して、本発明では、表面処理粉体に、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリエーテル変性シリコーンを組み合わせることによって、表面処理粉体の分散性が格段に上昇し、その結果、塗布時の重たさが感じられず、良好な使用感を有する油中水型化粧料を提供することができると考えられる。本発明では、上記成分に加えて更に、皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体の少なくとも一方が含まれることにより、表面処理粉体の分散性が更に良好となり、塗布対象、例えば肌上においても、表面処理粉体が偏りなく広がり、時間が経過しても紫外線遮蔽効果が落ちにくいという効果も得ることができると推測される。ただし、本発明は特定の理論に拘束されない。
【0010】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の効果が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「油相成分」とは、油中水型化粧料を調製する際に、油剤と組み合わせることで油相組成物を調製することができる成分であって、油中水型化粧料の連続相中に分散又は溶解して存在し得る成分(水滴は含まれない)を意味する。
本明細書において「水相成分」とは、油中水型化粧料を調製する際に、水等の水性媒体と組み合わせることで水相組成物を調製することができる成分であって、油中水型化粧料の水滴中に分散又は溶解して存在し得る成分を意味する。
本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の双方、又は、いずれかを表す。
以下、本発明について説明する。
【0011】
本発明の油中水型化粧料は、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを表面に有する表面処理粉体と、少なくとも1種のカロテノイドと、少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルと、少なくとも1種のポリエーテル変性シリコーンと、皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含み、必要に応じて他の成分を含む。
【0012】
(a)表面処理粉体
本発明における表面処理粉体は、酸化チタン(TiO)及び酸化亜鉛(ZnO)からなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを表面に有する表面処理粉体(以下、単に「表面処理粉体」と称する場合がある。)である。表面処理粉体は、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを含むので、良好な紫外線遮蔽能を有する。
【0013】
表面処理粉体は、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含み、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンと紫外線遮蔽波長領域が異なることによる紫外線防護効果の観点から、表面処理粉体は、酸化チタンであることが好ましい。本明細書においては、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種を総称して「無機粉体」を称する場合がある。
酸化チタンの結晶型は、アナタース、ルチル、ブルカイト等の何れでもよい。酸化チタンの結晶型は、ルチル型であることが好ましい。酸化チタンの結晶型がルチル型である場合には、紫外線をより有効に遮蔽できるため好ましい。
酸化亜鉛としては、ウルツ鉱型結晶構造を有するものであることが好ましい。
無機粉体は、化粧品に対して一般に使用されるものであれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造などにより、特に限定されず用いることができる。
【0014】
無機粉体の平均一次粒子径は、紫外線遮蔽能の観点から、200nm以下であることが好ましい。無機粉体の平均一次粒子径は、化粧料の透明性及び使用感の観点から、1nm〜90nmであることが好ましく、5nm〜50nmであることがより好ましい。無機粉体の平均一次粒子径は、無機粉体を分散後、透過型電子顕微鏡で1000個以上撮影し、撮影された個々の粒子を画像解析式粒度分布測定装置で画像処理を行い、円相当径を測定した平均値とする。市販品を用いる場合には、無機粉体の平均一次粒子径は、市販品における平均一次粒子径をそのまま適用することができる。
【0015】
無機粉体としては、例えば、無機粉体の表面活性を抑えるために、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等の無機物で表面処理されたもの、ステアリン酸等の有機物で表面処理されたものなども使用することができる。無機粉体としては、無機物で表面処理された無機粉体又は有機物で表面処理された無機粉体に、更に、シリコーン処理、脂肪酸処理、金属石鹸処理、フッ素処理等の疎水化処理又はポリアクリル酸処理等の親水化処理を行って得られるものも使用することができる。
【0016】
表面処理粉体は、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを表面に有する。表面処理粉体は、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを最表面の全体に有していることが好ましい。ただし、表面処理粉体の最表面には、本発明の効果を損なわない範囲で、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを有していない部分があってもよい。表面処理粉体の表面(無機粉体が更に無機物又は有機物で表面処理されている場合には、表面に配置されている無機物又は有機物)と、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンとの結合様式は、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンと無機粉体とが一体的に挙動するものであれば特に制限はない。結合様式は、共有結合等の化学結合であってもよく、吸着等の非化学結合であってもよい。
なお、表面処理粉体の表面に4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンが存在することは、表面処理粉体にエタノールを加えて攪拌し、上澄み液の355nm波長における吸光度を、分光光度計を用いて測定することにより確認することができる。
【0017】
表面処理粉体の平均粒子径は、1μm未満であることが好ましい。表面処理粉体の平均粒子径が1μm未満であれば、表面処理粉体自体による化粧料の着色が抑えられ、所謂白浮きも生じない傾向があると考えられる。表面処理粉体の平均粒子径は、紫外線遮蔽能及び使用感の観点から、1nm〜500nmであることがより好ましく、3nm〜100nmであることが更に好ましい。
表面処理粉体の平均粒子径は、前述の平均一次粒子径と同様の方法により測定することができる。
【0018】
表面処理粉体としては、例えば、国際公開第2010/098249号パンフレット等に開示されたものを挙げることができる。表面処理粉体としては、市販品として入手可能な、HXMT−100ZA(テイカ社製)、HXMT−10EXA(テイカ社製)、HXLT−02(テイカ社製)等を用いることができる。
【0019】
本発明の油中水型化粧料における、表面処理粉体の含有量は、特に限定されるものではなく、0.1質量%〜30質量%が好ましい。表面処理粉体をこの範囲内の含有量で用いると、塗布時の伸び広がり等の使用感、油中水型化粧料の経時安定性及びカロテノイドの経時安定性がより良好な油中水型化粧料を得ることができる。
【0020】
表面処理粉体の含有量は、使用感及びカロテノイドの経時安定性の観点から、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1質量%〜30質量%であることがより好ましく、2質量%〜20質量%であることが更に好ましく、3質量%〜10質量%であることが最も好ましい。
【0021】
表面処理粉体の含有量は、カロテノイドの経時安定性の観点から、質量基準でカロテノイドの含有量の1倍〜400000倍であることが好ましく、10倍〜40000倍であることがより好ましく、100倍〜4000倍であることが更に好ましい。表面処理粉体の含有量が、質量基準でカロテノイドの含有量の400000倍以下であれば、カロテノイドの経時安定性をより向上させる傾向がある。
【0022】
表面処理粉体は、油中水型化粧料の油相又は水相に含まれる。化粧料の安定性の観点から、表面処理粉体は、油相に含まれていることが好ましい。表面処理粉体が油相に含まれていれば、表面処理粉体を、より多く用いる場合、特に油型化粧料の20質量%以上となる含有量で用いる場合に、より安定して配合することができる傾向がある。
【0023】
油中水型化粧料が表面処理粉体を油相に含む場合、例えば、シリコーン油等の揮発性油分を分散媒として用いて、表面処理粉体を含むスラリーを調製し、スラリーの形態で他の成分と配合してもよい。
スラリーにおける表面処理粉体の含有量は、特に制限されないが、一般に、スラリーの全質量の10質量%〜80質量%とすることが好ましく、20質量%〜60質量%とすることがより好ましい。スラリーにおける表面処理粉体の含有量が、スラリーの全質量の10質量%以上であれば、油中水型化粧料に表面処理粉体をより安定に配合することができるため好ましい。スラリーにおける表面処理粉体の含有量が、スラリーの全質量の20質量%〜60質量%であれば、油中水型化粧料に表面処理粉体を更に安定に配合することができるため好ましい。
【0024】
(b)カロテノイド
本発明の油中水型化粧料は、少なくとも1種のカロテノイドを含有する。カロテノイドは、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリアに由来するカロテノイドを、その例として挙げることができる。カロテノイドは、天然由来のカロテノイドに限定されず、常法に従って得られるカロテノイドであれば、いずれのカロテノイドであってもよい。
【0025】
本発明におけるカロテノイドとしては、具体的には、リコピン、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、δ−カロテン、アクチニオエリスロール、ビキシン、カンタキサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、キサントフィル類(例えば、アスタキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン、β−クリプトキサンチン、ビオラキサンチン、ビオレリトリン等)、及びこれらのヒドロキシル誘導体又はカルボキシル誘導体が挙げられる。カロテノイドは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、アスタキサンチン及びリコピンが好ましく、特に、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、及び美白効果が認められているアスタキサンチンが好ましい。
【0026】
油中水型化粧料におけるカロテノイドの総含有量としては、カロテノイドの有する機能の効率よい発現と、肌なじみよく、白浮きを防ぐ効果をより効率よく得られるという観点から、0.000001質量%〜1質量%が好ましく、0.00001質量%〜0.1質量%がより好ましく、0.0001質量%〜0.05質量%が更に好ましい。
【0027】
(c)ソルビタン脂肪酸エステル
本発明の油中水型化粧料は、少なくとも1種のソルビタン脂肪酸エステルを含有する。本発明の油中水型化粧料は、ソルビタン脂肪酸エステルを含有することにより、ソルビタン脂肪酸エステルが油溶性の乳化剤成分として作用し、カロテノイドの経時安定性が向上する。
【0028】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、12以上のソルビタン脂肪酸エステルがより好ましい。
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキカプリル酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ジグリセロールソルビタン、ペンタ−2−エチルヘキサン酸ジグリセロールソルビタン、ヤシ脂肪酸ソルビタン等を挙げることができる。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、カロテノイドの経時安定性及び使用感の観点から、モノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン又はこれらの1種以上の組み合わせであることが特に好ましい。本発明においては、これらのソルビタン脂肪酸エステルを、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
ソルビタン脂肪酸エステルの総含有量は、表面処理粉体の分散性及び使用感の観点から、化粧料全質量の0.01質量%〜20質量%とすることが好ましく、0.01質量%〜15質量%とすることがより好ましく、0.05質量%〜10質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜5質量%であることが更により好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの総含有量が、化粧料全質量の0.01質量%以上であれば、表面処理粉体の分散性が高まり、油中水型化粧料の分散性がより向上する傾向があり、20質量%以下であれば、油中水型化粧料の使用感をより良好に保つことができる傾向がある。
【0030】
また、ソルビタン脂肪酸エステルの総含有量は、表面処理粉体の総含有量に対して質量基準で0.0001倍〜150倍であることが好ましく、0.0005倍〜50倍であることがより好ましく、0.001倍〜5倍であることが更に好ましく、0.001倍〜1倍であることが更により好ましく、0.001倍〜0.5倍であることが特に好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの総含有量が、表面処理粉体の総含有量に対して質量基準で0.0001倍以上であれば、表面処理粉体の分散性が更に高まり、カロテノイドの経時安定性を更に向上させる傾向があり、150倍以下であれば、表面処理粉体の分散性を更に向上させる傾向がある。
【0031】
(d)ポリエーテル変性シリコーン
本発明の油中水型化粧料は、少なくとも1種のポリエーテル変性シリコーンを含む。本発明の油中水型化粧料がポリエーテル変性シリコーンを含有することにより、油中水型乳化組成物の油相にポリエーテル変性シリコーンが含まれて、カロテノイドの経時安定性が向上する。
【0032】
ポリエーテル変性シリコーンは、シリコーン鎖と、変性により導入されたポリエーテル鎖とを有するポリマーである。ポリエーテル鎖としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。
シリコーン鎖としては、直鎖状のシリコーン鎖であってよく、分岐鎖を有するシリコーン鎖であってもよい。シリコーン鎖が有することができる分岐鎖としては、炭素数8〜22のアルキル鎖、炭素数8〜22のアルケニル鎖、重合度1〜50のポリエチレングリコール(PEG)鎖等を挙げることができる。シリコーン鎖は、これらの分岐鎖を1種又は2種以上有していてもよい。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、化粧料の経時安定性の観点から、分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーンであることが好ましく、分岐鎖としてはPEG鎖であることがより好ましい。
【0033】
ポリエーテル変性シリコーンのHLBとしては、1〜10であることが好ましく、2〜8であることがより好ましい。ポリエーテル変性シリコーンのHLBが10以下であれば、油型化粧料の乳化安定性がより向上する。
【0034】
HLBが1〜10であるポリエーテル変性シリコーンとしては、PEG−11メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG−20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG/PPG−19/19ジメチコン、PEG−9ジメチコン、PEG−9メチルエーテルジメチコン、PEG−10ジメチコン、PEG−21メチルエーテルジメチコン、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等を挙げることができる。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、これらを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて油中水型化粧料に用いることができる。
ポリエーテル変性シリコーンは、市販品としても入手可能であり、例えば、信越化学工業株式会社製のシリコーンKF−6011、KF−6011P、KF−6012、KF−6013、KF−6015、KF−6016、KF−6017、KF−6017P、KF−6043、PK−6004、KF−6028、KF−6028P、KF−06038等を挙げることができる。
【0035】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、化粧料の経時安定性の観点から、分岐鎖を有するポリエーテル変性シリコーンが好ましく、例えば、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。なかでも、ポリエーテル変性シリコーンとしては、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0036】
油中水型化粧料におけるポリエーテル変性シリコーンの総含有量は、化粧料の経時安定性の観点から、化粧料全質量の0.01質量%〜10質量%とすることが好ましく、0.1質量%〜8質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜6質量%であることがより好ましい。ポリエーテル変性シリコーンの総含有量が、化粧料全質量の0.01質量%以上であれば、表面処理粉体の分散性が高まり、カロテノイドの経時安定性がより向上する傾向がある。
【0037】
(e)皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
本発明の油中水型化粧料は、皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以下、単に「e成分」と総称する場合がある。)を含む。油中水型化粧料が皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことにより、表面処理粉体の凝集を防ぐことができ、油中水型化粧料の経時安定性を高めることができる。
【0038】
皮膜形成シリコーンポリマーとしては、シリコーン樹脂等が挙げられる。皮膜形成シリコーンポリマーとしては、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ コポリマー、アクリル酸アルキル/ジメチコン コポリマー、ポリプロピルシルセスキオキサン、アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ コポリマー等を挙げることができる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて油中水型化粧料に用いることができる。なかでも、表面処理粉体の分散性の観点から、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリル酸アルキル/ジメチコン コポリマー等が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキル重合体としては、アクリル酸アルキルコポリマー、メタクリル酸メチルクロスポリマー、メタクリル酸メチル/ジメタクリル酸グリコール クロスポリマー、アクリル酸ブチル/ジメタクリル酸グリコール クロスポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル コポリマー等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸アルキル重合体に共重合成分として含有可能なアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基を挙げることができ、表面処理粉体の分散性の観点から炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキル重合体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて油中水型化粧料に用いることができる。中でも、表面処理粉体の分散性と化粧料の経時安定性の観点から、アクリル酸アルキルコポリマーが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基を有するアクリル酸アルキルコポリマーであることがより好ましい。
【0040】
皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物としては、表面処理粉体の分散性と化粧料を塗布した後の皮膜形成のしやすさとの観点から、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリル酸アルキル/ジメチコン コポリマー及びアクリル酸アルキルコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0041】
油中水型化粧料における皮膜形成シリコーンポリマー及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の総含有量は、経時安定性の観点から、化粧料全質量の0.01質量%〜30質量%とすることが好ましく、0.05質量%〜20質量%とすることが好ましく、0.1質量%〜15質量%であることがより好ましい。e成分の総含有量が、化粧料全質量の0.05質量%以上であれば、化粧料を塗布した後に皮膜形成がしやすくなる傾向があり、15質量%以下であれば、表面処理粉体の分散安定性が得られる傾向がある。
【0042】
(f)水
本発明の油中水型化粧料は水を含有する。
本発明の油中水型化粧料が含有する水としては、化粧料に適用し得る水であれば特に制限されない。本発明の化粧料において水は、水相を構成する水相組成物に含有される成分の一つとして含まれる。
【0043】
本発明の油中水型化粧料における水の含有量としては、化粧料の全質量に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、10質量%〜80質量%がより好ましく、30質量%〜70質量%が更に好ましい。
水相組成物の全質量に対する水の含有量としては、30質量%〜95質量%が好ましく、40質量%〜90質量%がより好ましく、45質量%〜85質量%が更に好ましい。
【0044】
(g)その他の成分
本発明の油中水型化粧料は、上記の成分以外に、ソルビタン脂肪酸エステル以外の界面活性剤、親油性増粘剤等の油相成分、水溶性増粘剤等の水相成分を、必要に応じて含有することができる。
【0045】
(親油性増粘剤)
本発明の油中水型化粧料は、表面処理粉体を油相に含む場合、親油性増粘剤を含むことが好ましい。親油性増粘剤を含有することにより、油中水型化粧料の油相の安定性をより向上させることができる。親油性増粘剤を、カロテノイドと同一の油相に併存させることにより、カロテノイドの経時安定性をより高めることができる。親油性増粘剤とは、油相に分散して紫外線散乱剤及び/又は水を抱え込み、安定的に分散を補助する作用を有し、更に油相側に粘度を付与することができる成分を指す。
【0046】
親油性増粘剤の形態は、粒子状、ペースト状、スラリー状、ガム状、液状、結晶状等のいずれであってもよく、化粧料の経時安定性の観点から、粒子状、ペースト状、又はスラリー状であることが好ましく、粒子状であることがより好ましい。ここで粒子状とは、最大径が100μm以下の、球状、板状、不定形等を含み、多孔質又は無孔質であってもよい。
【0047】
親油性増粘剤が粒子状である場合には、親油性増粘剤の体積平均粒子径は、0.005μm〜30μmが好ましく、0.01μm〜30μmがより好ましく、0.1μm〜30μmが更に好ましい。親油性増粘剤の体積平均粒子径が0.005μm以上であれば、使用時の肌のきしみ感が感じられることもなく、使用感が更に向上する。親油性増粘剤の体積平均粒子径が30μm以下であれば、親油性増粘剤の単位重さ当たりの表面積が小さくなりすぎることもなく、肌への付着性が損なわれない傾向がある。親油性増粘剤の体積平均粒子径は、市販の種々の粒度分布計等で計測可能である。親油性増粘剤の体積平均粒子径の計測は、粒径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法を適用することが好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
【0048】
本発明における親油性増粘剤の体積平均粒子径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))を用いて測定した値であり、具体的には、以下のように計測した値を採用する。
即ち、親油性増粘剤の体積平均粒子径の測定方法は、親油性増粘剤の濃度が1質量%になるようにジメチコンで希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。親油性増粘剤の粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.000(ジメチコン)、及び分散媒の粘度としてジメチコンの粘度を設定したときの体積平均粒子径として求めることができる。
【0049】
親油性増粘剤としては、有機変性粘土鉱物、シリカ粉体、多孔質シリカ粉体、架橋型シリコーン粉体、ポリメタクリル酸メチル粉体、とうもろこしでんぷん、デキストリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。親油性増粘剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
有機変性粘土鉱物としては、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリナイトクレー等を挙げることができる。
シリカ粉体としては、シリカ、シリル化シリカ、ジメチルシリル化シリカ、ジメチコンケイ酸シリカ粉体を挙げることができる。
多孔質シリカ粉体としては、多孔質のシリカ、シリル化シリカ、ジメチルシリル化シリカ、ジメチコンケイ酸シリカ等が挙げられ、粘度安定化の観点より、好ましくはシリカが挙げられる。多孔質シリカ粉体の市販品としては、サンスフェアH−31/H−32/H−33/H−51/H−52/H−53/H−121/H−122/H−201(旭硝子社製)、VM−2270 Aerogel Fine Particle(東レ・ダウコーニング社製)HDK(登録商標) H2000、HDK(登録商標) H15、HDK(登録商標) H18、HDK(登録商標) H20、HDK(登録商標) H30(旭化成ワッカーシリコーン社製)、サイロピュア(富士シリシア社製)、トクシール(徳山曹達社製)、マイクロビーズシリカゲル(富士デヴィソン社製)等が挙げられる。
【0051】
架橋型シリコーン粉体としては、シリコーンゲル粉体、シリコーンゴム粉体、シリコーンレジン粉体、シリコーンエラストマー等が挙げられ、これらは区別なく使用可能である。架橋型シリコーン粉体としては、化粧料の分散性の観点よりジメチコン/ビニルジメチコン クロスポリマー、ジメチコン/ビス−イソブチルPPG−20 クロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン(PEG−10) クロスポリマー、PEG−10/ラウリルジメチコン クロスポリマー、PEG−10ジメチコン/ビニルジメチコン クロスポリマー、ジメチコン(PEG−10/15) クロスポリマー、PEG−15/ラウリルジメチコン クロスポリマー、PEG−15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン クロスポリマー、ポリグリセリル−3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン クロスポリマー、ジメチコン/ポリグリセリン−3 クロスポリマー、ラウリルジメチコン/ポリグリセリン−3 クロスポリマー、ポリグリセリル−3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン クロスポリマー、ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン クロスポリマー、ジメチコン/ビスイソブチルPPG−20 クロスポリマー、ジメチコン/ビニルトリメチルシロキシケイ酸 クロスポリマー、ジメチコン/フェニルビニルジメチコン クロスポリマー、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン クロスポリマー、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン クロスポリマー、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビスビニルジメチコン クロスポリマー等が好ましい。
【0052】
シリコーンゲル粉体の市販品としては、KSG−15/16/1610、KSG−18A、KSG−41、KSP−100/101/102/105、KSP−300、441/411、KSG−41/42/43/44、KSG−240/310/320/330/340/710/320Z/350Z(信越化学工業社製)が挙げられる。シリコーンゴム粉体の市販品としては、トレフィルE−506C、E−508、9701Cosmetic Powder、9702Powder、9027/9040/9041/9045/9046/9041/9546 Silicone Elastomer Blend、EP−9215/EP−9216 TI/EP−9289 LL/EP−9293 AL、EL−8040 ID Silicone Organic Blend(東レ・ダウコーニング社製)、Wacker−Belsil(登録商標) RG 100(旭化成ワッカーシリコーン社製)、NIKKOL SILBLEND−91(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0053】
ポリメタクリル酸メチル(以下、単に「PMMA」ともいう。)粉体としては、PMMAの他に、メタクリル酸メチルクロスポリマー、メタクリル酸メチル/ジメタクリル酸グリコール クロスポリマー、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル コポリマー、ポリメタクリル酸メチル/ジメチルポリシロキサングラフトアクリル樹脂 コポリマー、アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸メチル コポリマー等の粉体も包含される。PMMAの市販品としては、テクポリマー(積水化成社製)、マツモトマイクロスフィアー(松本油脂社製)等が挙げられる。
とうもろこしでんぷんとしては、DRY FLO PURE(アクゾノーベル社製)等を使用できる。
デキストリン脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸/ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等が挙げられる。
【0054】
また、親油性増粘剤としては、スチレン/ステアリルメタクリレート/ジビニルベンゼン等からなる多孔質ポリマー、水添(スチレン/イソプレン)コポリマー、ブチレン/エチレン/スチレン コポリマー、スチレン/アクリルアミド コポリマー、エチレン/プロピレン/スチレン コポリマー、粘土鉱物、ベントナイト、合成金雲母、ポリアミド樹脂、薄片状酸化チタンなども、使用することができる。親油性増粘剤の市販品としては、ルクセレンD(日本光研社製)、タイペークCR−50(石原産業社製)、パイオニア ゲル 12 PAO(Hansen & Rosenthal KG)、Jojoba Glaze HV/LV(日光ケミカルズ社製)、ヨドゾール GH41F(アクゾノーベル社製)、クニピアーF/G(クニミネ工業社製)等が挙げられる。
【0055】
親油性増粘剤としては、カロテノイドの経時安定性、化粧料の経時安定性及び化粧料の使用感の向上という観点から、ジメチコン/ビニルジメチコン クロスポリマー、及びビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン クロスポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0056】
親油性増粘剤は、表面処理粉体が油相に含まれる場合、表面処理粉体を含む油相に含まれていてもよく、表面処理粉体を含む油相と異なる油相に含まれていてもよい。親油性増粘剤が表面処理粉体を含む油相に含まれている場合には、表面処理粉体の分散性を向上させるという利点を有する。また親油性増粘剤が表面処理粉体を含む油相と異なる油相に含まれている場合には、油相を安定化し、化粧料全体を安定化するという利点を有する。
【0057】
油中水型化粧料における親油性増粘剤の総含有量は、化粧料の経時安定性向上の点で、化粧料全質量の0.005質量%〜30質量%とすることが好ましく、0.01質量%〜20質量%とすることが好ましく、0.05質量%〜15質量%であることがより好ましい。親油性増粘剤の総含有量が、化粧料全質量の0.005質量%以上であれば油相の分散性が向上する傾向があり、30質量%以下であれば、化粧料を塗布した時の使用感が良く、化粧料の伸び広がりが向上する傾向がある。
【0058】
(界面活性剤)
本発明にかかる化粧料は、ソルビタン脂肪酸エステル等の上記成分以外の界面活性剤を含有することができる。
ソルビタン脂肪酸エステル以外の界面活性剤(以下、特に断らない限り、単に「界面活性剤」と称する。)としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のイオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とのいずれであってもよい。イオン性界面活性剤の例としては、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、モノアルキルリン酸塩、レシチン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を挙げることができる。これらの中でも、表面処理粉体の分散性向上の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、例えば、重合度が2以上15以下のポリグリセリンと炭素数6〜22の直鎖又は分岐を有する脂肪酸とのエステルがより好ましい。
【0059】
界面活性剤の含有量は、化粧料全質量の0.01質量%〜30質量%とすることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。界面活性剤の含有量が、化粧料全質量の0.01質量%以上であれば油中水型化粧料の経時安定性を良化する傾向があり、30質量%以下であれば、使用感が更に向上する傾向がある。
【0060】
(4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン以外の紫外線吸収剤)
油中水型化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン以外の紫外線吸収剤を含有することができる。
このような他の紫外線吸収剤としては、油溶性又は水溶性の公知のもののいずれも使用することができる。
【0061】
油溶性紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル、メトキシケイ皮酸オクチル、メトキシケイ皮酸エトキシエチル、メトキシケイ皮酸へチルヘキシル、ジメトキシケイ皮酸モノエチルヘキサン酸グリセリル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ブチルメトキシベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン等を挙げることができる。
【0062】
水溶性紫外線吸収剤として、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸およびその塩、フェニレンビスベンゾイミダゾールテトラスルホン酸およびその塩等のベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤;ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2,2−(1,4−フェニレン)ビス−(1H−ベンズイミダゾール−4,6−ジスルホン酸)、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸などが挙げられる。
【0063】
4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン以外の他の紫外線吸収剤の含有量は、紫外線防御性能を補う点で、化粧料全質量の0.001質量%〜30質量%とすることが好ましく、0.01質量%〜20質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン以外の他の紫外線吸収剤を本発明の効果を損なわない範囲で使用する場合、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンに対する他の紫外線吸収剤の割合は、0.01質量%〜20質量%とすることができ、0.1質量%〜10質量%とすることができる。
油中水型化粧料中の紫外線吸収剤の総量としては、使用感の点で、化粧料全質量の0.001質量%〜50質量%とすることが好ましく、0.01質量%〜30質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
【0064】
(揮発性油分)
油中水型化粧料は、揮発性油分を溶剤として含むことができる。揮発性油分を溶剤として含むことによりベタツキの感触を低減させることができる。
揮発性油分は、常圧における沸点が60℃〜260℃の範囲である成分を意味するものとする。本発明で用いられる揮発性油分としては、揮発性のシリコーンベース油、炭化水素ベース油等が挙げられる。
【0065】
揮発性シリコーンベース油として、例えば、ジメチルポリシロキサン(1.5cs[1.5×10−6/s])、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン等の環状ポリシロキサン、カプリリルメチコン等が例示される。これらの商品例としては、KF96L−0.65、KF96L−1、KF96L−1.5、KF995(信越化学工業社製)、SH200−1cs、SH200−1.5cs、SH200−2cs、2−1184Fluid、SH245Fluid、DC246Fluid、DC345Fluid、SS3408(東レ・ダウコーニング社製)、TSF404、TSF405、TSF4045(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0066】
揮発性の炭化水素ベース油として、直鎖状及び分岐状からなる群より選択される揮発性の炭化水素ベース油を用いてもよい。このような揮発性の炭化水素ベース油としては、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン等のC〜C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)等が例示される。これらの商品例としては、例えば、アイソパー(登録商標)A、アイソパー(登録商標)C、アイソパー(登録商標)D、アイソパー(登録商標)E、アイソパー(登録商標)G、アイソパー(登録商標)H、アイソパー(登録商標)K、アイソパー(登録商標)L、アイソパー(登録商標)M(エクソン社)、シェルゾール(登録商標)71(シェル社)、ソルトロール(登録商標)100、ソルトロール130、ソルトロール(フィリップ社)、アイソゾール(登録商標)400(日本石油化学社製)、パールリーム(登録商標)4(日油社製)、IPソルベント(登録商標)1620、IPソルベント(登録商標)2028(出光石油化学社製)、イソヘキサデカン、テトライソブタン90(バイエル社製)、パーメチル(登録商標)99A、パーメチル(登録商標)101A、パーメチル(登録商標)102A(プレスパース社製)等が挙げられる。
【0067】
揮発性油分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
揮発性油分の含有量は、使用感の点で、化粧料全質量の0.001質量%〜60質量%とすることが好ましく、0.01質量%〜40質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
【0068】
(多価アルコール)
油中水型化粧料は、多価アルコールを含むことができる。多価アルコールを含むことにより、使用感(保湿性)を更に向上させることができる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、多糖類、還元水あめ、ショ糖、エリスリトール、キシリトール、グルコース、ガラクトース、ソルビトール、マルトトリオース、トレハロース等を挙げることができる。多価アルコールは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
多価アルコールの含有量は、保湿性を付与することができる点で、化粧料全質量の0.01質量%〜20質量%とすることが好ましく、0.05質量%〜15質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。
【0070】
(他の成分)
油中水型化粧料は、用途に基づいて、通常化粧料に用いられる他の成分を含有することができる。このような他の成分としては、例えば、エタノール等の水溶性有機溶剤、キレート剤、美白剤、イソノナン酸トリイソデシル等のエモリエント剤、保湿剤、酸化防止剤、親水性増粘剤、色剤、防腐剤、香料、各種の油性成分、各種の水性成分などを挙げることができる。
【0071】
(製造方法)
油中水型化粧料は、上述した各成分を含む油相組成物と、水相組成物とを混合し、常法により乳化することを含む製造方法により、製造することができる。
表面処理粉体を油相成分として配合する際には、表面処理粉体を他の油相成分と組み合わせて油相組成物を調製し、得られた油相組成物と水相組成物とを組み合わせて油中水型化粧料を製造することができる。
【0072】
表面処理粉体を水相成分として配合する場合は、表面処理粉体を他の水相成分と組み合わせて水相組成物を調製し、得られた水相組成物と油相組成物とを組み合わせて、油中水型化粧料を製造することができる。又は、表面処理粉体を含まない水相組成物を調製し、得られた水相組成物を油相組成物と組み合わせ、表面処理粉体を含まない予備的な油中水型組成物を調製し、得られた予備的な油中水型組成物の水相に表面処理粉体を添加することにより、油中水型化粧料を製造することができる。予備的な油中水型組成物の水相に表面処理粉体を添加する際には、表面処理粉体を単独で添加してもよく、他の水相成分と組み合わせて水相組成物を調製し、得られた水相組成物の一成分として表面処理粉体を添加してもよい。
【0073】
油相組成物と水相組成物とを組み合わせて油中水型乳化物としての油中水型化粧料を得る際の乳化方法としては、特に制限はなく、常法に従って行うことができる。
乳化物を調製する際の油相組成物と水相組成物との比率(質量)は、特に限定されるものではなく、油相/水相比率(質量%)として5/95〜90/10が好ましく、10/90〜80/20がより好ましく、15/85〜70/30が更に好ましい。
【0074】
(形態)
油中水型化粧料の形態には特に制限はなく、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、スプレー、軟膏、ボディクリ−ム等のスキンケア化粧料、化粧下地等のメイクアップ化粧料、リーブオンエッセンス等の頭皮用化粧料などを例示することができる。
本発明の油中水型化粧料は、良好な紫外線遮蔽能と良好な使用感とを有することから、日焼け止め化粧料として用いられることが特に好ましい。
【0075】
(カロテノイドの経時安定性)
本発明の油中水型化粧料は、カロテノイドの経時安定性が高い。カロテノイドの経時安定性は、試験試料10gに対して、耐光試験機(Q−LAB社、Q−Sun Xe−3)にて、50W/mの強度のモデル太陽光を20cmの距離から120分間照射し、分光光度計にて吸光度(480nm)を測定することにより評価することができる。
具体的には、試験試料にモデル太陽光を照射する前の吸光度、照射5分後の吸光度、及び照射120分後の吸光度をそれぞれ測定して、照射前の吸光度に対する照射5分後の吸光度又は照射120分後の吸光度の割合をカロテノイドの残存率とする。照射5分後の残存率が50%以上、かつ、照射120分後の残存率が10%以上であれば、カロテノイドの経時安定性が高いと評価する。油中水型化粧料のカロテノイドの経時安定性としては、好ましくは、照射5分後の残存率が60%以上、かつ、照射120分後の残存率が30%以上であり、より好ましくは、照射5分後の残存率が70%以上、かつ、照射120分後の残存率が50%以上である。
【0076】
(化粧料の経時安定性)
本発明の油中水型化粧料は、好ましくは、優れた経時安定性を示す。油中水型化粧料の経時安定性とは、油中水型化粧料を製造し、時間を経過させた場合、油中水型化粧料の物性の変化が抑制されることを意味する。例えば、本発明における物性の変化としては、表面処理粉体の凝集、又は乳化物における相分離及び/又はゲル化が挙げられる。
【0077】
(使用感)
本発明の油中水型化粧料は、良好な使用感を示す。本発明において使用感とは、例えば、仕上がりの良さを意味する。油中水型化粧料を顔に塗布後、しわ、毛穴等といった肌の不均一要素による凹凸の目立ちが少ないことを目視にて評価する。肌の不均一要素がカバーされ、均一に見える場合に、仕上がりが良好であると判断する。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
【0079】
[実施例1〜実施例4]
下記表1の最終濃度(質量%)となるように、a成分、b成分、c成分、d成分、e成分及びその他の各成分を用いて油相組成物及び水相組成物を調製し、得られた油相組成物及び水相組成物を用いて、常法により乳化を行い、油中水型化粧料を得た。表1の各成分の詳細については後述する。
なお、実施例1及び実施例2では、a成分を、シクロペンタシロキサンにディスパー混合し、他の油相成分を組み合わせて油相組成物を調製した。その後、油相:水相=28.5:71.5の比率(質量比)で油相組成物と水相組成物と組み合わせて25℃でホモミキサー6000rpm、5分の条件にて乳化を行い、油中水型化粧料を得た。実施例1及び実施例2の油中水型化粧料では、a成分は油相に配合されている。
実施例3及び実施例4では、a成分を、精製水と1,3−ブチレングリコール(BG)とにディスパー混合し、他の水相成分を組み合わせて水相組成物を調製した。その後、油相:水相=22.5:77.5の比率(質量比)で水相組成物と油相組成物とを組み合わせて25℃でホモミキサー6000rpm、5分の条件にて乳化を行い、油中水型化粧料を得た。実施例3及び実施例4の油中水型化粧料では、a成分は水相に配合されている。
【0080】
[比較例1及び比較例2]
a成分の代わりに、シリコーン被覆酸化チタン及び4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン(比較例1)又はシリコーン被覆酸化チタンのみ(比較例2)を使用し、シリコーン被覆酸化チタン及び4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンをそれぞれ油相に配合した以外は実施例1と同様にして油中水型化粧料を得た。
【0081】
[比較例3及び比較例4]
a成分の代わりに、シリカ被覆酸化チタン及び4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン(比較例3)又はシリカ被覆酸化チタンのみ(比較例4)を使用し、シリカ被覆酸化チタンを水相に、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを油相に配合した以外は、実施例3と同様にして油中水型化粧料を得た。
【0082】
[実施例5〜実施例16、比較例5〜比較例10]
各成分の種類及び含有量を表2及び表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、油中水型乳化物を得た。なお、表2及び表3中の各成分の詳細については後述する。
【0083】
[実施例17〜実施例28、比較例11〜比較例16]
各成分の種類及び含有量を表4及び表5に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして、油中水型乳化物を得た。なお、表4及び表5中の各成分の詳細については後述する。
【0084】
[実施例29〜実施例31]
各成分の種類及び含有量を表6に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、油中水型乳化物を得た。なお、表6中の各成分の詳細については後述する。
【0085】
[実施例32〜実施例34]
各成分の種類及び含有量を表6に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして、油中水型乳化物を得た。なお、表6中の各成分の詳細については後述する。
【0086】
[評価]
上記で得られた実施例1〜実施例34、比較例1〜比較例16の各試験試料に対して以下の評価を行い、結果を表1〜表6に示す。表1のUV性能に関する評価において「−」は、評価を行っていないことを意味する。なお、総合評価としては、乳化物の経時安定性以外の評価において、C評価及びD評価のないものを「合格」、即ち、使用上、問題ないレベル以上であるとした。
【0087】
(1) カロテノイドの経時安定性
実施例1〜実施例34、比較例1〜比較例16の各試験試料10gを、φ(直径)35mmガラスベースディッシュに入れ、耐光試験機(Q−LAB社、Q−Sun Xe−3)にて、25℃の環境下で50W/mの強度のモデル太陽光を20cmの距離から120分間照射した。照射前、照射5分後,照射120分後に分光光度計の積分球にて吸光度(480nm)を測定し、照射前の吸光度に対する照射5分後の吸光度又は照射120分後の吸光度の割合を、照射5分後又は照射120分後のカロテノイドの残存率とした。カロテノイドの経時安定性は、得られたカロテノイドの残存率に基づき、以下の指標に基づき評価した。
A:照射5分後の残存率60%以上、かつ照射120分後の残存率が30%以上
B:照射5分後の残存率50%以上60%未満、かつ照射120分後の残存率が10%以上30%未満
C:照射5分後の残存率50%以上60%未満、又は照射120分後の残存率が10%以上30%未満
D:照射5分後の残存率50%未満、及び/又は、照射120分後の残存率が10%未満
【0088】
(2)分散性(乳化物の初期安定性)
実施例1〜実施例34、比較例1〜比較例16の調製後の各試験試料5mgを、スライドガラスに挟み、光学顕微鏡にて観察し(350倍)、凝集物の有無及び乳化状態を、以下の指標に基づき目視評価した。
以下の指標において、視野の中に10μm以上の黒い塊が複数確認できた場合に「凝集物が認められる」と判断し、黒い塊のサイズが10μm〜50μmの場合に「わずかな凝集物が認められる」と判断し、黒い塊のサイズが50μmを超える場合に「大きな凝集物が認められる」と判断する。
また、視野の中に、(長径)1μm未満の乳化粒子が偏りなく分散している場合に「均一な乳化状態」と判断し、サイズにバラつきがある乳化粒子がある場合、もしくは乳化粒子の分散に大きな偏りがある場合に「不均一な乳化状態」と判断する。
A:凝集物がなく、均一な乳化状態である。
B:わずかな凝集物が認められるが、均一な乳化状態である。
C:わずかな凝集物が認められ、不均一な乳化状態である。
D:大きな凝集物が認められる。
【0089】
(3)乳化物の経時安定性(ゲル化)
実施例1〜実施例34、比較例1〜比較例16の各試験試料をバイヤル瓶に50g取り、50℃ の恒温槽にて1ヶ月の加速試験を行った。試験に供した試料について、乳化物の安定性評価として、ゲル化と相分離の有無を、試験を開始してから1週間後(以下、単に「1週間後」と称する。)と1ヶ月後(以下、単に「1ヶ月後」と称する。)にそれぞれ確認し、以下の指標に基づき評価した。
ゲル化の有無は、試料をスパチュラですくい、試料が固まっているかについて目視で観察し、評価した。
相分離は、試料の上面を瓶の外側から目視観察し、試料の上面から液体が染み出ていないか、もしくはバイヤル瓶を傾けたときに、試料が分離せずに一体として流れるかを目視で観察し、評価した。
A:ゲル化及び相分離は、1週間後及び1ヶ月後に観察されなかった
B:ゲル化は1週間後及び1ヶ月後に観察されなかった。相分離は1週間後に観察されなかったが、1ヶ月後に観察された。
C:ゲル化及び相分離は、1週間後に共に観察されなかったが、1ヶ月後に共に観察された。
D:ゲル化及び相分離は1週間後に共に観察された。
【0090】
(4)紫外線遮蔽評価
ISO24443のin vitro測定方法に基づき、実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例4の各試料32.5mgを、PMMAプレート(HELIOPLATE HD6)に均一の厚みになるように指で塗布し、SPFアナライザー(Labsphere社製、UV−2000S)を用いて透過率測定し、UVB及びUVAの防御効果について、以下の基準で評価した。
(4−1)〔UVB防御効果評価基準〕
A:SPF値が20以上
B:SPF値が15以上20未満
C:SPF値が10以上15未満
D:SPF値が10未満
(4−2)〔UVA防御効果評価基準〕
A:400nmでの透過率が40%未満
B:400nmでの透過率が40%以上70%未満
C:400nmでの透過率が70%以上90%未満
D:400nmでの透過率が90%以上
【0091】
(5)仕上がり
実施例1〜実施例34、比較例1〜比較例16の各試料0.3gを、化粧料評価専門パネル20人に、半顔に塗布してもらい、塗布した側のしわ、小じわ、及び毛穴による肌の凹凸の目立ち具合を、塗布しなかった側と比較し、下記の基準で評価した。
AA:全く目立たない
A:殆ど目立たない
B:あまり目立たない
C:どちらとも言えない
D:はっきり目立つ
【0092】
表1〜表6に示された各成分は以下のものを用いた。なお、表1〜表6中、各成分に関する数値は質量%を意味する。
(表面処理粉体)
・4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン被覆酸化チタン:HXMT−10EXA、テイカ社製(一次平均粒子径:10μm)
【0093】
・シリコーン被覆酸化チタン:MTY−02、テイカ社製(一次平均粒子径:10μm)
・シリカ被覆酸化チタン:MT−05、テイカ社製(一次平均粒子径:10μm)
・アスタキサンチン:ASTOTS−S、武田紙器社
・リコピン:Lyc−o−Mate、ライコレッド社
・PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン:KF−6028P、信越化学工業社製、HLB:4.0
・ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン:KF−6038、信越化学工業社製、HLB:3.0
・PEG/PPG−19/19ジメチコン:BY11−030、東レ・ダウコーニング社製
・PEG−10ジメチコン:KF−6017P、信越化学工業社製
・ジメチコン/(PEG−10/15) クロスポリマー:KSG−240、信越化学工業社製
・ジメチコン/ポリグリセリル−3 クロスポリマー:KSG−710、信越化学工業社製
・トリメチルシロキシケイ酸:X−21−5249、信越化学工業社製
【0094】
・オレイン酸ソルビタン:NIKKOL SO−10V、日光ケミカルズ社製
・イソステアリン酸ソルビタン:NIKKOL SI−10RV、日光ケミカルズ社製
・セスキオレイン酸ソルビタン:NIKKOL SO−15V、日光ケミカルズ社製
・ステアリン酸グリセリル:NIKKOL MGS−AV、日光ケミカルズ社製
・ポリメチルシルセスキオキサン:KMP−590、信越化学工業社製
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】
表1〜表6に示されるように、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン被覆酸化チタン又は4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン被覆酸化亜鉛と、カロテノイドとしてアスタキサンチン又はリコピンと、ソルビタン脂肪酸エステルと、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン又はラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと、トリメチルシロキシケイ酸又はナイロン−12と、を組み合わせた油中水型化粧料はいずれも、良好な紫外線遮蔽能を有し、かつカロテノイドの経時安定性及び使用感が良好なものであり、総合評価で合格と評価できた。
【0102】
実施例によるこれらの効果は、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタンを単独で用いた場合(比較例1及び比較例3)、シリコーン被覆酸化チタン又はシリカ被覆酸化チタンを用いた場合(比較例2及び比較例4)、並びに、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン、皮膜形成シリコーンポリマー、及び(メタ)アクリル酸アルキル重合体の少なくともいずれかを含まない場合(比較例5〜比較例16)では得られないことがわかった。
【0103】
[実施例35]日焼け止めローションスプレー(窒素充填)
以下の処方に従って、常法により日焼け止めローションスプレー(窒素充填)を調製する。以下の数値は、処方の全質量に対する質量%を意味する。なお、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン被覆酸化チタンは、実施例1と同様にして配合することにより、油相に含まれる。
<組成> (質量%)
・プロパンジオール 0.6
・オレイン酸ソルビタン 0.5
・メチルパラベン 0.6
・エタノール 1.5
・フェニルメチコン 1.5
・イソノナン酸イソトリデシル 1.5
・PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.6
・4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン被覆
酸化チタン 15.0
・アスタキサンチン 0.001
・シクロペンタシロキサン 15.0
・メチコン 0.9
・ポリメチルシルセスキオキサン 15.0
・トリメチルシロキシケイ酸 0.6
・ジメチコン 1.5
・香料 適量
・LPG 75.0
・精製水 残量
【0104】
[実施例36]日焼け止めローションスプレー(窒素充填)
以下の処方に従って、常法により日焼け止めローションスプレー(窒素充填)を調製する。以下の数値は処方の全質量に対する質量%を意味する。なお、4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン被覆酸化チタンは、実施例1と同様にして配合することにより、油相に含まれる。
<組成> (質量%)
・プロパンジオール 0.6
・オレイン酸ソルビタン 0.5
・メチルパラベン 0.6
・エタノール 1.5
・フェニルメチコン 1.5
・イソノナン酸イソトリデシル 1.5
・PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.6
・4−tert−ブチル−4−メトキシベンゾイルメタン被覆
酸化チタン 15.0
・リコピン 0.001
・シクロペンタシロキサン 15.0
・メチコン 0.9
・ポリメチルシルセスキオキサン 15.0
・トリメチルシロキシケイ酸 0.6
・ジメチコン 1.5
・香料 適量
・LPG 75.0
・精製水 残量
【0105】
このように、本発明によれば、良好な紫外線遮蔽効果と、カロテノイドの優れた経時安定性と、良好な使用感とを備える油中水型化粧料を提供することができる。
【0106】
日本出願2013−103487の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的に、かつ、個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。