特許第5981087号(P5981087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981087平角銅線及びその製造方法、並びに太陽電池用平角銅線及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981087
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】平角銅線及びその製造方法、並びに太陽電池用平角銅線及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20160818BHJP
【FI】
   H01L31/04 570
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2010-112605(P2010-112605)
(22)【出願日】2010年5月14日
(65)【公開番号】特開2011-243659(P2011-243659A)
(43)【公開日】2011年12月1日
【審査請求日】2013年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
(72)【発明者】
【氏名】高澤 司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩一
【審査官】 小林 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−027096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
H01L 31/18−31/20
H01L 51/42−51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を形成するシリコンウェハをはんだ接続するのに用いる太陽電池用平角銅線であって、タフピッチ銅または無酸素銅から成り、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下で、前記シリコンウェハの熱膨張率3.5×10-6/Kに対応し前記平角銅線の熱膨張と逆方向の残留応力を有し、少なくとも当該太陽電池用平角銅線の一表面の最表面がSn系はんだ層である、
太陽電池用平角銅線。
【請求項2】
前記Sn系はんだ層は、Pb、In、Bi、Ag、Cuのいずれかを0.1質量%以上含む、
請求項1に記載の太陽電池用平角銅線。
【請求項3】
前記Sn系はんだ層は、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Inのいずれである、
請求項2に記載の太陽電池用平角銅線。
【請求項4】
体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下のタフピッチ銅または無酸素銅の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に冷間加工により0.5〜1%の伸び率を付与して製造された状態の平角銅線の少なくともその一表面にはんだ合金融点+50℃以下のはんだ浴槽温度においてはんだ層が設けられた太陽電池用平角銅線の製造方法。
【請求項5】
体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下のタフピッチ銅または無酸素銅の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に0〜15%加工率の冷間圧延又は冷間伸線加工を施し、冷間圧延又は冷間伸線加工が施された銅素線に冷間加工により0.5〜1%の伸び率を付与して製造された平角銅線の少なくともその一表面にはんだ層を施す太陽電池用平角銅線の製造方法。
【請求項6】
前記太陽電池はシリコンで形成されている、
請求項4または5に記載の太陽電池用平角銅線の製造方法。
【請求項7】
体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下のタフピッチ銅または無酸素銅の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に0〜15%の加工率の冷間圧延又は冷間伸線加工を施し、この冷間圧延又は冷間伸線加工を施した状態の平角銅線の少なくともその一表面にはんだ合金融点+50℃以下のはんだ浴槽温度においてはんだ層が設けられた平角銅線に冷間加工により0.5〜1%の伸び率を付与する太陽電池用平角銅線の製造方法。
【請求項8】
体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下のタフピッチ銅または無酸素銅の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に冷間加工により0.5〜1%の伸び率を付与した状態の平角銅線とし、この平角銅線の少なくとも一表面にはんだ層を施し、当該はんだ層が施された平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与する太陽電池用平角銅線の製造方法。
【請求項9】
体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下のタフピッチ銅または無酸素銅の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に0〜15%の加工率の冷間圧延又は冷間伸線加工を施し、この冷間圧延又は冷間伸線加工を施した状態の銅素線に冷間加工により0.5〜1%の伸び率を付与した平角銅線とし、この平角銅線の少なくとも一表面にはんだ層を施し、当該はんだ層を施した平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与する太陽電池用平角銅線の製造方法。
【請求項10】
前記太陽電池はシリコンで形成されている、
請求項7〜9のいずれかに記載の太陽電池用平角銅線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平角銅線及び太陽電池に接続するリード線として好適な太陽電池用平角銅線、並びにそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は主にシリコンウェハが使用され、十分な起電力を得るために複数のシリコンウェハをリード線によって直列に接続している。図1は複数のシリコンウェハ2を平角線1(リード線)によって接続している状態を示している。このリード線は一般にはんだめっきした平角線が使用されている。
【0003】
ところで、太陽電池のコストはシリコンウェハがその大半を占めており、近年製造コストを低減するためシリコンウェハの薄肉化が進められている。しかし、シリコンウェハは薄くなると強度が低下し、シリコンウェハはんだめっき層4を介して平角線によって接続した際、シリコンウェハに反りが発生するおそれがある。即ち、平角線としては主に銅線が使用されているが、この銅線とシリコンウェハとは表1に示すように熱膨張率が異なるため、平角銅線1に形成されたはんだめっき層4を溶融してシリコンウェハと接続した場合、はんだ接続時点は図2(A)に示すようにシリコンウェハ2に反りは発生しないが、はんだ接続温度から室温に冷却される際に収縮量に差が生じ、図2(B)に示すようにシリコンウェハ2に反りが発生し、最悪の場合にはシリコンウェハが破損することがある。なお、図中4ははんだめっき層である。
【0004】
また同様に、太陽電池使用時の熱サイクルによっても熱応力が生じシリコンウェハが破損する可能性もある。このためシリコンウェハとの間に生じる熱応力が小さいリード線(平角線)のニーズが高まっている。
【0005】
【表1】
【0006】
シリコンウェハとの間に生じる熱応力(熱膨張率の差)が小さいリード線(平角線)としてこれまでに、Fe−36mass%Niを芯材とし、その両面を銅で積層したクラッド材が提案されている(特許文献1参照)。
また、純銅を焼鈍により耐力を低下させることで銅線を降伏させ熱応力を軽減させる方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法は製造コストを低く抑え、発電効率を高くする効果が見込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−15937号公報
【特許文献2】特開2006−54355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているクラッド材からなるリード線は、シリコンウェハとの間で熱膨張差を小さくし熱応力を軽減するという効果はあるが、銅線と比較して体積抵抗率の大きいFe−Ni合金を使用しているため太陽電池の発電効率を低下させるおそれがある。
また、特許文献2に記載されている熱処理を施した銅線は、太陽電池を形成しているシリコンウェハをはんだ接続した時の引張負荷が残留した状態で昼間と夜間の熱サイクルを受けるため、ウェハ(セル)の寿命が短くなるという問題があり、太陽電池の寿命をより長く維持できるリード線が求められている。
【0009】
本発明は銅素線に圧延若しくは伸線(引抜き)、引張り等の冷間加工を加え、太陽電池を形成するシリコンウェハ(セル)と銅線との間に生じる熱膨張の差と、はんだ接続時の応力を緩和した平角銅線を提供することにある。
また、本発明は前記平角銅線でシリコンウェハを接続することにより、太陽電池を形成するシリコンウェハ(セル)に長期間にわたりクラックの発生を防止し、発電効率が改良され、長寿命となる優れた太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、太陽電池を形成するシリコンウェハをはんだ接続するのに用いる太陽電池用平角銅線であって、タフピッチ銅または無酸素銅から成り、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下で、前記シリコンウェハの熱膨張率3.5×10-6/Kに対応し前記平角銅線の熱膨張と逆方向の残留応力を有し、少なくとも当該太陽電池用平角銅線の一表面の最表面がSn系はんだ層である、太陽電池用平角銅線が提供される。
【0011】
そのような銅素線としては、たとえば、無酸素銅(OFC)、りん脱酸銅、タフピッチ銅(TPC)、高純度銅(純度99.9999%以上)等の銅素材が好適である。
以下、上記銅素線、または、上記平角銅線は、たとえば、無酸素銅、タフピッチ銅などを意味する。
【0012】
本発明の平角銅線は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下で、300〜800℃で焼鈍処理が施された銅素線に、0.5〜1%の伸び率を付与した平角銅線である。
【0013】
本発明の平角銅線の製造方法は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に0.5〜1%の伸び率を付与する平角銅線の製造方法である。
【0014】
本発明の平角銅線は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下で、300〜800℃で焼鈍処理が施された銅素線に、加工率0〜15%の冷間圧延又は冷間伸線加工が施され、冷間圧延又は冷間伸線加工が施された銅素線に0.5〜1%の伸び率を付与した平角銅線である。
【0015】
本発明の平角銅線の製造方法は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に0〜15%加工率の冷間圧延又は冷間伸線加工を施し、冷間圧延又は冷間伸線加工が施された銅素線に0.5〜1%の伸び率を付与する平角銅線の製造方法である。
【0016】
本発明の太陽電池用平角銅線は、前記いずれかの平角銅線の少なくともその一表面にはんだ層が設けられている太陽電池用平角銅線である。
【0017】
本発明の太陽電池用平角銅線の製造方法は、前記いずれかの平角銅線の製造方法で製造された平角銅線の少なくともその一表面にはんだ層を施す太陽電池用平角銅線の製造方法である。
【0018】
本発明の太陽電池用平角銅線は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下で、300〜800℃で焼鈍処理が施された銅素線に、加工率0〜15%の冷間圧延又は冷間伸線加工が施された平角銅線の少なくともその一表面にはんだ層が施され、はんだ層が施された平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与した太陽電池用平角銅線である。
【0019】
本発明の太陽電池用平角銅線の製造方法は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に0〜15%加工率の冷間圧延又は冷間伸線加工を施し、この冷間圧延又は冷間伸線加工を施した平角銅線にはんだ層を設け、はんだ層を設けた平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与する太陽電池用平角銅線の製造方法である。
【0020】
本発明の太陽電池用平角銅線は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下で、300〜800℃で焼鈍処理が施された銅素線に、0.5〜1%の伸び率を付与した平角銅線の少なくともその一表面にはんだ層が施され、はんだ層が施された平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与した太陽電池用平角銅線である。
【0021】
本発明の太陽電池用平角銅線の製造方法は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に0.5〜1%の伸び率を付与して平角銅線とし、この平角銅線の少なくとも一表面にはんだ層を施し、はんだ層が施された平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与する太陽電池用平角銅線の製造方法である。
【0022】
本発明の太陽電池用平角銅線は体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下で、300〜800℃で焼鈍処理が施された銅素線に、加工率0〜15%冷間圧延又は冷間伸線加工が施され、冷間圧延又は冷間伸線加工が施された銅素線に0.5〜1%の伸び率を付与した平角銅線の少なくともその一表面にはんだ層が施され、はんだ層が施された平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与した太陽電池用平角銅線である。
【0023】
本発明の太陽電池用平角銅線の製造方法は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下の銅素線を300〜800℃で焼鈍処理し、この焼鈍した銅素線に0〜15%加工率の冷間圧延又は冷間伸線加工を施し、冷間圧延又は冷間伸線加工を施した銅素線に0.5〜1%の伸び率を付与した平角銅線とし、この平角銅線の少なくとも一表面にはんだ層を施し、はんだ層を施した平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与する太陽電池用平角銅線の製造方法である。
【0024】
なお、本発明で「圧延加工」、「伸線加工」(伸線加工には「引き抜き加工」を含む)は銅素線を3次元的に加工する工程を意味する。
また、「伸びを付与する」とは「引張り加工」によるものを含み、銅素線、または平角銅線を長手方向に1次元的に加工する工程を意味する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は銅線に圧延、伸線(引抜き)、引張り等の冷間加工を加え、シリコンウェハと銅線との間の熱膨張率の差に起因する熱膨張の差と応力を緩和した平角銅線を提供することができる。
また、本発明は前記平角銅線で太陽電池を形成するシリコンウェハ(セル)を接続することにより、シリコンウェハに長期間にわたりクラックの発生を防止し、発電効率が改良され、長寿命となる優れた太陽電池を提供することができる。
さらに、本発明の平角銅線は、銅素線に簡単な加工を加えるだけなので低コストで製造し、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1はシリコンウェハと平角銅線との接続状態を示す説明図である。
図2図2はシリコンウェハと平角銅線との接続状態を示すものであり、(A)は接続直後の状態を示す説明図、(B)はシリコンウェハと平角銅線の熱収縮量の相違によるウェハの反りを説明する説明図である。
図3図3は本発明の一実施形態を示すはんだ層を設けた平角銅線を示す断面図である。
図4図4はウェハの反りを計測する方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
先ず本発明の平角銅線とその製造方法につき、具体的に説明する。
【0028】
実施形態1;
本実施形態1において、複数のシリコンウェハ(セル)を接続するリード線(平角銅線)の体積抵抗率は2.5μΩ・cm以下とする。体積抵抗率が2.5μΩ・cmより大きくなると太陽電池の発電効率が低下するため、体積抵抗率は2.5μΩ・cm以下の銅素線を使用する。
本発明においては体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下のインゴット又は荒引線に冷間加工を施して銅素線とし、この銅素線に300〜800℃の温度で10秒〜1時間の焼鈍処理を施し、その後5〜15%の加工率で冷間圧延又は冷間伸線加工(以下実施形態において冷間圧延と冷間伸線加工とを特に区別して表現する必要がないときは単に「冷間加工」と云うことがある)を施し、平角銅線とする。
【0029】
本発明で使用する銅(合金を含む)素線は体積抵抗率2.5μΩ・cm以下のものである。体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の材料としては、無酸素銅(OFC)、りん脱酸銅、タフピッチ銅(TPC)、高純度銅(純度99.9999%以上)等の銅素材が好適である。
【0030】
前記銅素材のインゴット又は荒引線から圧延、伸線等の加工により銅素線を製造する。次いでこの銅素線を焼鈍処理する。焼鈍処理は300〜800℃で10秒〜1時間をかけて行う。焼鈍温度が300℃より低い場合は再結晶が十分に進まず好ましくない。また、焼鈍時間が10秒より短い場合も再結晶が十分に進まず好ましくない。
【0031】
焼鈍処理された銅素線は次に5〜15%加工率冷間加工を施して平角銅線に成形する。冷間加工の加工率は5〜15%とする。加工率が5%未満だと加工率が不十分であるため効果が十分得られず、加工率が15%を超えると平角銅線のヤング率、強度が上がってしまうため好ましくない。特にこの平角銅線表面にはんだ層を設け、このはんだ層を介してシリコンウェハ(セル)をはんだ接続すると、はんだ接続時に熱応力が大きくなってしまいシリコンウェハを破壊するおそれがあるため、加工率を15%より大きくすることは好ましくない。
【0032】
本実施形態1は、焼鈍処理した銅素線に加工率5〜15%の冷間加工を施し平角銅線としたことで、この平角銅線は、表1に例示した太陽電池を形成するシリコンウェハとの熱膨張率の差に起因する熱膨張の差を緩和してシリコンウェハにかかる応力を低減することができる。従って、本発明によれば、複数のシリコンウェハ(セル)を接続するのに優れた平角銅線を提供することができる。
【0033】
実施形態2;
本実施形態2においては、前記実施形態1と同様、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下の銅素材を使用し、この銅素材に冷間加工を施して銅素線とし、この銅素線に実施形態1と同じ焼鈍処理を施す。次いで焼鈍処理した銅素線に冷間引張加工により0.5〜1%の伸びを与え平角銅線とする。
【0034】
本実施形態2は、焼鈍処理した銅素線に0.5〜1%の伸びを付与し平角銅線としたことで、この平角銅線内に残留応力が発生する。
焼鈍処理した銅素線に伸び率0.5〜1%の冷間引張加工を施すのは平角銅線に熱膨張とは逆方向の残留応力を付与するためで、伸び率0.5%未満の冷間引張り加工では十分な残留応力を付与することができず、伸び率1%を超える冷間引張り加工では塑性域となり好ましくない。
このように平角銅線内に付与された残留応力は、複数のシリコンウェハ(セル)をはんだ接続する時の平角銅線の熱膨張と逆方向の残留応力として働き、シリコンウェハと平角銅線との間の熱膨張の差を緩和し、シリコンウェハにかかる応力を軽減してシリコンウェハの反り量を軽減することができる。従って、シリコンウェハ(セル)の割れを防止することができる優れた平角銅線を提供することができる。
【0035】
実施形態3;
本実施形態3は、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下の焼鈍処理した銅素線に加工率0〜15%の冷間圧延又は冷間伸線加工を加え、さらに冷間引張加工により0.5〜1%の伸び率を与えた平角銅線である。
【0036】
本実施形態3においては、体積抵抗率が2.5μΩ・cm以下の銅素材を使用し、この銅素材に冷間加工を施して銅素線とし、この銅素線に前記実施形態1と同様、焼鈍処理を施した後に加工率5〜15%の冷間圧延又は冷間伸線加工を施し、平角銅素線とする。次いでこの平角銅素線に冷間引張加工により0.5〜1%の伸び率を与え平角銅線とする。
【0037】
本実施形態3は、焼鈍処理した銅素線に加工率5〜15%の冷間加工を施し平角銅素線としたことで、表1に例示した太陽電池を形成するシリコンウェハとの熱膨張率の差に起因する熱膨張の差を緩和してシリコンウェハにかかる応力を低減することができる。次いで0.5〜1%の伸び率で冷間引張加工を施し平角銅線とすることで、この平角銅線内に残留応力を発生させる。従って、複数のシリコンウェハ(セル)を接続するとき、シリコンウェハと平角銅線との熱膨量が近似し、かつ、平角銅線の熱膨張とは逆方向に働く残留応力が付与されているので、シリコンウェハと平角銅線との間の熱膨張の差を緩和し、シリコンウェハの反り量を軽減する。従って、シリコンウェハに割れを生じさせない優れた平角銅線を提供することができる。
【0038】
次に太陽電池用平角銅線とその製造方法につき、具体的に説明する。
【0039】
実施形態4;
本実施形態4は前記平角銅線にはんだ層を設けた太陽電池用平角銅線である。
本実施形態4の平角銅線は上記実施形態1〜3で製造した平角銅線を採用する。はんだ層は平角銅線の全面に施してもよく、シリコンウェハ(セル)と接続する面のみに設けてもよい。
【0040】
はんだ層は平角銅線の所要位置に、例えば、めっき法、ディップ法等で施すことができる。はんだ層を形成する「はんだ」としてはSn系はんだを用いることができる。なお、第2成分としてPb、In、Bi、Ag、Cuを0.1質量%以上添加したはんだを用いることが好ましい。特に、環境汚染防止のためには、PbフリーのSn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Cu、Sn−Ag−Inなどのはんだを使用することが望ましい。
【0041】
本実施形態4−1;
焼鈍処理した銅素線に加工率5〜15%の冷間圧延又は、冷間伸線加工を施して平角銅線とし、この平角銅素線にはんだ層を設ける。このはんだ層付き平角銅線はシリコンウェハの熱膨張率に近い熱膨張率に仕上げた平角銅線にはんだ層を設けているので、平角銅線は、表1に例示した太陽電池を形成するシリコンウェハとの熱膨張率の差に起因する熱膨張の差を緩和してシリコンウェハにかかる応力を低減することができ、はんだ層を介して複数のシリコンウェハ(セル)を接続した場合、セルを経年破損することなく接続することができる優れた効果を有するものである。
【0042】
実施形態4−2;
また、焼鈍処理した銅素線に伸び率0.5〜1%の冷間引張加工を施し、平角銅線内に残留応力を残した平角銅線にはんだ層を設ける。この平角銅線内に残留応力が残る平角銅線で複数のシリコンウェハ(セル)をはんだ接続すると、残留応力が平角銅線の熱膨張と逆方向の応力として働き、シリコンウェハと平角銅線との間の熱膨張の差を緩和し、シリコンウェハ(セル)の反り量を軽減し、割れを防止することができる優れた効果を有するものである。
【0043】
実施形態4−3;
更に、焼鈍処理した銅線に0〜15%の加工率で冷間圧延又は冷間伸線加工を加え、さらに冷間引張加工により0.5〜1%の伸びを与えた平角銅線にはんだ層を設ける。この平角銅線は、表1に例示した太陽電池を形成するシリコンウェハとの熱膨張率の差に起因する熱膨張の差を緩和してシリコンウェハにかかる応力を低減することができる。さらに、平角銅線の熱膨張とは逆方向に働く残留応力が付与されているので、はんだ層を介して複数のシリコンウェハ(セル)を接続するとき、シリコンウェハと平角銅線との間の熱膨張の差が緩和され、シリコンウェハの反り量を軽減し、経年ウェハに割れを生じさせない優れた効果を有するものである。
【0044】
実施形態5;
本実施形態5の太陽電池用平角銅線は上記実施形態1で製造した平角銅線にはんだ層を施し、次いで0.5〜1%の伸びを付与した太陽電池用平角銅線である。はんだ層は平角銅線の全面に施してもよく、ウェハと接続する面のみに設けてもよい。
【0045】
本実施形態5の太陽電池用平角銅線は、焼鈍処理が施され体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の銅素線に、0〜15%加工率冷間圧延又は冷間伸線加工を施し平角銅線とする。この平角銅線の少なくともその一表面にはんだ層を施し、次いではんだ層が施された平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与する。
【0046】
平角銅線にはんだ層を設けた後に0.5〜1%の伸び率を与えるのは、平角銅線の反りを低減するためで、反りが発生していない平角銅線であればこの伸びを付与する工程は省略できるが、平角銅線に反りが見られる場合ははんだ層を設けた後に適宜な伸びを付与する。
付与する伸び率は、その伸び率が0.5%未満の場合は反りを軽減するのに十分な効果が得られず、また、1%を超える伸び率を付与すると材料の伸びが失われるため好ましくない。
はんだ層を設けた後に引張加工を施すのははんだ層をめっき等で形成するときの熱で平角銅線に反りが発生する場合があるためで、はんだ層形成時に反りが発生しなければ、この工程は省略することができる。
【0047】
実施形態6;
本実施形態6の太陽電池用平角銅線は上記実施形態2で製造した平角銅線にはんだ層を施し、次いで0.5〜1%の伸び率を付与した太陽電池用平角銅線である。はんだ層は平角銅線の全面に施してもよく、ウェハと接続する面のみに設けてもよい。
【0048】
本実施形態6の太陽電池用平角銅線は、焼鈍処理が施された体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の平角銅素線に0〜15%加工率を付与し、次いでその平角銅線の少なくとも一表面にはんだ層が施され、はんだ層が施された平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与した太陽電池用平角銅線である。
はんだ層を設けた後に0.5〜1%の伸び率を付与するのは実施形態5と同様はんだ層を設ける際の熱で平角銅線に発生する反りを修正するためである。その伸び率が0.5%未満の場合は反りを修正するのに十分な効果が得られず、また、1%を超える伸び率を付与すると材料の伸びが失われるため好ましくない。
【0049】
実施形態7;
本実施形態7の太陽電池用平角銅線は上記実施形態3で製造した平角銅線にはんだ層を施し、次いで0.5〜1%の伸び率を付与した太陽電池用平角銅線である。はんだ層は平角銅線の全面に施してもよく、ウェハと接続する面のみに設けてもよい。
【0050】
本実施形態7の太陽電池用平角銅線は、焼鈍処理が施された体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の銅素線に0〜15%加工率冷間加工を施し、冷間加工が施された素線に0.5〜1%の伸び率を付与し、次いでこの平角銅線の少なくとも一表面にはんだ層を施し、次いではんだ層が施された平角銅線に0.5〜1%の伸び率を付与した太陽電池用平角銅線である。
はんだ層を設けた後に0.5〜1%の伸び率を付与するのは実施形態5と同様はんだ層を設ける際の熱で平角銅線に発生する反りを修正するためである。伸び率が0.5%未満の場合は反りを修正するのに十分な効果が得られず、また、1%を超える伸び率を付与すると材料の伸びが失われるため好ましくない。
【実施例】
【0051】
次に本発明の平角銅線及び太陽電池用平角銅線の製造方法について実施例に基づき詳細に説明する。
【0052】
平角銅線の製造;
本発明で使用する銅(合金を含む)素線は体積抵抗率2.5μΩ・cm以下のものを採用する。体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の材料としては、無酸素銅(OFC)、りん脱酸銅、タフピッチ銅(TPC)、高純度銅(純度99.9999%以上)等の銅素線である。
【0053】
平角銅線の製造は、先ず、体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の銅素材から銅荒引線を製造する。銅荒引線の製造方法としてベルト&ホイール法、双ベルト法、ディップフォーミング法、熱間押出法、アップキャスト法等がある。
この荒引線を伸線、圧延し断面平角形状に加工する(圧延方式)。この圧延方式は連続して均一な平角銅線を製造するのに適している。
なお、種々な幅の平角銅線を製造するには、体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の銅素材(インゴット)を条形状の銅板に圧延し、この銅条をスリット加工して平角銅線とする方式を採用することもできる。
【0054】
これらの平角銅線を通電方式もしくはバッチ式で焼鈍処理を行う。連続して焼鈍を行う場合は通電方式の方が効率的で好ましい。ここで、焼鈍処理は300〜800℃の温度で10秒〜1時間である。
【0055】
焼鈍処理後この平角銅線に冷間加工を施す。加工方法は冷間圧延或いは冷間伸線、これらの組み合わせがある。所望する材質および形状に仕上げる加工方法を選択する。
平角銅線の形状が決まっている場合は圧延加工或いは伸線加工に変えて伸び(引張り加工)を付与する。冷間引張り加工は例えばレベラーによる方式で行う。
【0056】
このようにして製造された平角銅線をめっき浴槽に浸漬し、はんだめっき層を被覆する。はんだ合金については前述したが、本実施例ではSn系はんだ(Sn−Pb、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Cu等)を使用する。はんだ浴槽温度は高すぎると平角銅線に施した前記加工が焼鈍効果により消失するおそれがあるので、はんだ合金融点+50℃以下、望ましくは+20℃以下とし、浸漬時間も短時間とする。
【0057】
実施例1〜3
体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の銅素材としてタフピッチ銅を使用し、ベルト&ホイール法で銅荒引線に伸線加工し、次いで通電加熱により、400℃で焼鈍処理した後加工率5〜15%の冷間圧延を施し、幅2.0mm、厚さ0.16mmの平角銅線を得た(以下めっき前平角線という)。このめっき前平角銅線を250℃に保たれたSn−3%Ag−0.5%Cuの浴槽に浸漬し、約40μm厚さのはんだめっき層を平角銅線全体に設け、太陽電池用平角銅線を作成した。
【0058】
作成した太陽電池用平角銅線の評価は下記のようにして行った。
(1)熱収縮量の測定
長さ150mmのめっき前平角銅線を250℃まで加熱したときの長さとその後室温まで冷却した時の長さ(熱収縮量)を測定し、その差を表2に記載した。
【0059】
(2)シリコンウェハの反り量と割れの測定
次に種々のはんだめっき平角線を150×150×0.2mmのシリコンウェハにはんだ接続し、室温まで冷却した時のシリコンウェハ2の反り量と割れについて調べた。
反り量は図4に示すようにウェハの両端を水平面に置いた時のシリコンウェハの反りの最大値とし、レーザー変位計等で測定した。結果を表2に記載した。
ウェハの割れの評価は、割れが発生しなかったものを「良」と判定して表に「○」印を付し、割れが発生したものを「不可」と判定して表に「×」印を付した。結果を表2に記載した。
【0060】
(3)シリコンウェハの寿命の判定
ウェハの寿命は、25℃⇔100℃で10,000サイクルの熱疲労試験によって評価した。
判定は、割れが発生しなかったものを「良」と判定して表に「○」印を付し、割れが発生したもの、又は評価不能のものを「不可」と判定して表に「×」印を付し、ウェハ表面にクラックがはいったものを「不可(クラック発生)」と判定して「△」印を付した。結果を表2に記載した。
【0061】
実施例4〜6
体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の銅素材として無酸素銅を使用し、ベルト&ホイール法で銅荒引線に伸線加工し、通電加熱による400℃で熱処理を行って焼鈍した後5〜15%の冷間圧延を施し、幅2.0mm、厚さ0.16mmのめっき前平角銅線を得た。このめっき前平角銅線を浴槽が250℃に保たれたSn−3%Ag−0.5%Cuの浴槽に浸漬し、約40μm厚さのはんだめっき層を平角銅線全体に設け、太陽電池用平角銅線を作成した。
【0062】
作成した太陽電池用平角銅線の評価は前記実施例と同様、熱収縮量、反り、シリコンウェハの割れと寿命をそれぞれ測定、評価し、結果を表2に記載した。
【0063】
比較例7〜10
実施例1と同じタフピッチ銅を使用し、冷間圧延加工率を2%、3%、20%、30%とした他は実施例1と同じ工程で平角銅線を作成し、実施例1と同じ条件でめっき層を設け、実施例1と同じ測定、評価を行った。結果を表2に併記した。
【0064】
比較例11〜14
実施例4と同じ無酸素銅を使用し、冷間圧延加工率を2%、3%、20%、30%とした他は実施例4と同じ工程で平角銅線を作成し、実施例4と同じ条件でめっき層を設け、実施例4と同じ評価を行った。結果を表2に併記した。
【0065】
従来例15
実施例1と同じタフピッチ銅を使用して平角銅線を作成し、焼鈍処理することなく冷間圧延加工率を99%とした平角銅線を作成し、実施例1と同じ条件でめっき層を設け、実施例1と同じ測定、評価を行った。結果を表2に併記した。
【0066】
従来例16
実施例1と同じタフピッチ銅を使用して平角銅線を作成し、実施例1と同じ焼鈍処理を施して平角銅線を作成し、実施例1と同じ条件でめっき層を設け、実施例1と同じ測定、評価を行った。結果を表2に併記した。
【0067】
従来例17
実施例4と同じ無酸素銅を使用して平角銅線を作成し、焼鈍処理することなく冷間圧延加工率を99%とした平角銅線を作成し、実施例4と同じ条件でめっき層を設け、実施例4と同じ測定、評価を行った。結果を表2に併記した。
【0068】
従来例18
実施例4と同じ無酸素銅を使用して平角銅線を作成し、実施例4と同じ焼鈍処理を施して平角銅線を作成し、実施例4と同じ条件でめっき層を設け、実施例4と同じ測定、評価を行った。結果を表2に併記した。
【0069】
表2から明らかなように、実施例1〜6の平角銅線は焼鈍処理した銅素線に加工率5〜15%の冷間圧延加工を施している。このように、銅素線に所定量の加工率が付与されているので、熱処理後に冷間圧延加工を行わない従来例16、18に対しては熱収縮量が小さくなっている。
また、これらの平角銅線を使用したはんだめっき被覆平角銅線は、焼鈍処理を行わず、かつ、所定量以上の加工率が付与された従来例15、17に比較してシリコンウェハと接続した際のウェハの反りが小さく、ウェハに割れが発生しなかった。
また、ウェハにかかる負荷も小さいため熱サイクルに対する寿命も良好であった。
【0070】
一方、比較例9、10、13、14は加工率が15%より大きい冷間圧延加工が施されたもので、何れも熱収縮量は小さくなったが、付加される応力が大きいためウェハに割れが発生した。また加工率が5%未満の冷間圧延加工が施された比較例7、8、11、12は、はんだ接続時にウェハに割れは発生しなかったものの熱サイクルに対してはウェハ表面に微細なクラックが発生し、何れも本発明の目的を満足するものではなかった。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例20〜22
体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の銅素材としてタフピッチ銅を使用し、ベルト&ホイール法で銅荒引線に伸線加工し、通電加熱による400℃で熱処理を行って焼鈍した後加工率5〜15%の冷間伸線加工を施し、幅2.0mm、厚さ0.16mmのめっき前平角銅線を得た。このめっき前平角銅線を浴槽が250℃に保たれたSn−3%Ag−0.5%Cuの浴槽に浸漬し、約40μm厚さのはんだめっき層を平角銅線全体に設け、太陽電池用平角銅線を作成した。
【0073】
作成した太陽電池用平角銅線の測定、評価を実施例1と同様に行い、結果を表3に記載した。
【0074】
実施例23〜25
体積抵抗率2.5μΩ・cm以下の銅素材として無酸素銅を使用し、ベルト&ホイール法で銅荒引線に伸線加工し、通電加熱による400℃で熱処理を行って焼鈍した後加工率5〜15%の冷間伸線加工を施し、幅2.0mm、厚さ0.16mmのめっき前平角銅線を得た。このめっき前平角銅線を浴槽が250℃に保たれたSn−3%Ag−0.5%Cuの浴槽に浸漬し、約40μm厚さのはんだめっき層を平角銅線全体に設け、太陽電池用平角銅線を作成した。
【0075】
作成した太陽電池用平角銅線の測定、評価は実施例1と同様、熱収縮量、反り、シリコンウェハの割れと寿命をそれぞれ測定、評価し、結果を表3に記載した。
【0076】
比較例26〜29
実施例20と同じタフピッチ銅を使用し、冷間伸線加工率を2%、3%、20%、30%とした他は実施例20と同じ工程で平角銅線を作成し、実施例20と同じ条件でめっき層を設け、実施例20と同じ測定、評価を行った。結果を表3に併記する。
【0077】
比較例30〜33
実施例23と同じ無酸素銅を使用し、冷間伸線加工率を2%、3%、20%、30%とした他は実施例23と同じ工程で平角銅線を作成し、実施例23と同じ条件でめっき層を設け、実施例23と同じ測定、評価を行った。結果を表3に併記する。
【0078】
従来例34〜37
表2に示す従来例15〜18の冷間圧延加工に変えて冷間伸線加工を施した以外は従来例15〜18と同じ加工処理、測定、評価を行った。結果を表3に併記する。
【0079】
表3から明らかなように、実施例20〜25の平角銅線は焼鈍処理した銅素材に5〜15%の冷間伸線加工を施している。このように、銅素材に所定量の加工率が付与されているので、熱処理後に冷間伸線加工を行わない従来例35、37に比較して熱収縮量が小さくなっている。
また、これらの平角銅線を使用したはんだめっき被覆平角銅線は、焼鈍処理を行わず、かつ、所定量以上の加工率が付与された従来例34、36に比較してシリコンウェハと接続した際のウェハの反りが小さく、ウェハに割れが発生しなかった。
また、ウェハにかかる負荷も小さいため熱サイクルに対する寿命も良好であった。
【0080】
一方、比較例28、29、32、33は加工率15%より大きい冷間伸線加工が施されたもので、何れも熱収縮量は小さくなった。しかし、付加される応力が大きいためウェハに割れが発生した。また加工率5%未満の冷間伸線加工を施した比較例26、27、30、31は、はんだ接続時にウェハに割れは発生しなかったものの熱サイクルに対しては微細なクラックが表面に発生し、何れも本発明の目的を満足するものではなかった。
【0081】
【表3】
【0082】
実施例40〜63
タフピッチ銅をベルト&ホイール法で製造した銅荒引線を伸線加工し、通電加熱により400℃で熱処理を行って焼鈍した後、加工率0〜15%の冷間圧延加工を施し平角銅線とした。この平角銅線に、はんだめっき前に0.5〜1%の伸び率を与える引張加工を施して後はんだめっきし、または、はんだめっき後に0.5〜1%の伸び率を与える引張加工を施し、最終断面形状が幅2.0mm、厚さ0.16mmの太陽電池用平角銅線を製作した。はんだ層は250℃に保持したSn−3%Ag−0.5%Cuのはんだ浴槽に浸漬させることで約40μmの厚さに施した。
【0083】
実施例40〜63の条件で製作した太陽電池用平角銅線に実施例1と同じ測定、評価を行い、その結果を表4に記載した。
【0084】
実施例64〜87
無酸素銅をベルト&ホイール法で製造した銅荒引線を伸線加工し、通電加熱により400℃で熱処理を行って焼鈍した後、加工率0〜15%の冷間圧延加工を施し平角線とした。この平角銅線に、はんだめっき前に0.5〜1%の伸び率を与える引張加工を施して後はんだめっきし、または、はんだめっき後に0.5〜1%の伸び率を与える引張加工を施し、最終断面形状が幅2.0mm、厚さ0.16mmの太陽電池用平角銅線を製作した。はんだ層は250℃に保持したSn−3%Ag−0.5%Cuのはんだ浴槽に浸漬させることで約40μmの厚さに施した。
【0085】
実施例64〜87の条件で製作した太陽電池用平角銅線に実施例1と同じ測定、評価を行い、その結果を表4に記載した。
【0086】
比較例88〜115
タフピッチ銅又は無酸素銅をベルト&ホイール法で製造した銅荒引線を伸線加工し、通電加熱により400℃で熱処理を行って焼鈍した後、加工率0〜18%の冷間圧延加工を施し平角銅線とした。この平角銅線に、はんだめっき前に0.5%より小さい伸び率、又は1%より大きい伸び率を与える引張加工を施して後はんだめっきし、または、はんだめっき後に0.5%より小さい伸び率、又は1%より大きい伸び率を与える引張加工を施し、最終断面形状が幅2.0mm、厚さ0.16mmの太陽電池用平角銅線を製作した。加工条件は表4に記載した。また、はんだ層は250℃に保持したSn−3%Ag−0.5%Cuのはんだ浴槽に浸漬させることで約40μmの厚さに施した。
比較例88〜115の条件で製作した太陽電池用平角銅線に実施例1と同じ測定、評価を行い、その結果を表4に併記した。
【0087】
従来例116〜119
従来例116〜119は銅素線に従来例15〜18と同じ加工を施し、実施例1と同じ測定、評価を行い、その結果を表4に併記した。
【0088】
表4から明らかなように、焼鈍処理した銅素材に加工率0〜15%の冷間圧延加工を施し、次いで伸び率0.5〜1%の引張加工が施された実施例40〜87の平角銅線は、銅素材に所定量の加工率を付与せず、かつ、引張加工が施されていない従来例117、119に比較して熱収縮量が小さくなっている。
また、これらの平角銅線を使用したはんだめっき被覆平角銅線は、熱処理を行わず、かつ、所定量以上の加工率が付与され、引張加工が施されていない従来例116、118に比較してシリコンウェハと接続した際のウェハの反りが小さく、ウェハに割れが発生しなかった。
また、ウェハにかかる負荷も小さいため熱サイクルに対する寿命も良好であった。
【0089】
表4に示すように伸び率0.5〜1%の引張加工を施した平角銅線は熱収縮量が小さくなっている。これらの銅線を使用したはんだめっき平角銅線(試料40〜87)で接続した複数のシリコンウェハは反りが小さく、割れが発生せず、さらに従来例と比較してシリコンウェハにかかる負荷も小さい。このため熱サイクルに対する寿命も良好であった。また、焼鈍処理した導体をそのまま使用した場合(試料40〜45、64〜69)と導体に冷間圧延若しくは冷間伸線加工を施した場合(試料46〜63、70〜87)を比較すると冷間圧延若しくは冷間伸線加工を加えた方が反り量は低減する傾向にある。
【0090】
一方、伸び率が0.5%より小さい引張加工を施した比較例88、89、92、93・・・等は、何れも引張り加工が不十分なため、また、伸び率が1%より大きい引張加工を施した比較例90、91、94、95・・・等は、引張加工が過剰なため伸びが大きくなり、何れも反り量の改善とならず、ウェハとのはんだ接続に支障が生じ、割れの発生、寿命も本発明の目的を満足するものではなかった。
【0091】
【表4】
【0092】
実施例120〜143
タフピッチ銅をベルト&ホイール法で製造した銅荒引線を伸線加工し、通電加熱により400℃で熱処理を行って焼鈍した後、加工率0〜15%の冷間伸線加工を施し平角銅線とした。この平角銅線に、はんだめっき前に伸び率0.5〜1%与える引張加工を施して後はんだめっきし、または、はんだめっき後に0.5〜1%の伸び率を与える引張加工を施し、最終断面形状が幅2.0mm、厚さ0.16mmの太陽電池用平角銅線を製作した。はんだ層は250℃に保持したSn−3%Ag−0.5%Cuのはんだ浴槽に浸漬させることで約40μmの厚さに施した。
【0093】
実施例120〜143の条件で製作した太陽電池用平角銅線に実施例1と同じ測定、評価を行い、その結果を表5に記載した。
【0094】
実施例144〜167
無酸素銅をベルト&ホイール法で製造した銅荒引線を伸線加工し、通電加熱により400℃で熱処理を行って焼鈍した後、加工率0〜15%の冷間伸線加工を施し平角銅線とした。この平角銅線に、はんだめっき前に0.5〜1%の伸び率を与える引張加工を施して後はんだめっきし、または、はんだめっき後に0.5〜1%の伸び率を与える引張加工を施し、最終断面形状が幅2.0mm、厚さ0.16mmの太陽電池用平角銅線を製作した。はんだ層は250℃に保持したSn−3%Ag−0.5%Cuのはんだ浴槽に浸漬させることで約40μmの厚さに施した。
【0095】
実施例144〜167の条件で製作した太陽電池用平角銅線に実施例1と同じ評価を行い、その結果を表5に記載した。
【0096】
比較例168〜185
タフピッチ銅又は無酸素銅をベルト&ホイール法で製造した銅荒引線を伸線加工し、通電加熱により400℃で熱処理を行って焼鈍した後、加工率0〜18%の冷間伸線加工を施し平角銅線とした。この平角銅線に、はんだめっき前に0.5%より小さい伸び率、又は1%より大きい伸び率を与える引張加工を施して後はんだめっきし、または、はんだめっき後に0.5%より小さい伸び率、又は1%より大きい伸び率を与える引張加工を施し、最終断面形状が幅2.0mm、厚さ0.16mmの太陽電池用平角銅線を製作した。加工条件は表5に記載した。また、はんだ層は250℃に保持したSn−3%Ag−0.5%Cuのはんだ浴槽に浸漬させることで約40μmの厚さに施した。
【0097】
比較例168〜185の条件で製作した太陽電池用平角銅線に実施例1と同じ測定、評価を行い、その結果を表5に併記した。
【0098】
従来例196〜199
従来例196〜199は銅素線に従来例34〜37と同じ加工を施し、実施例1と同じ測定、評価を行い、その結果を表5に併記した。
【0099】
表5から明らかなように、熱処理した銅素材に加工率0〜15%の冷間伸線加工を施し、次いで0.5〜1%の引張加工が施された実施例120〜167の平角銅線は、銅素材に所定量の加工率を付与せず、かつ、伸線加工が施されていない従来例197、199に比較して熱収縮量が小さくなっている。
また、これらの平角銅線を使用したはんだめっき被覆平角銅線は、焼鈍処理を行わず、かつ、所定量以上の加工率が付与され、伸線加工が施されていない従来例196、198に比較してシリコンウェハと接続した際のウェハの反りが小さく、ウェハに割れが発生しなかった。
また、ウェハにかかる負荷も小さいため熱サイクルに対する寿命も良好であった。
【0100】
表5に示すように伸び率0.5〜1%の引張加工を施した平角銅線は熱収縮量が小さくなった。これらの銅線を使用したはんだめっき平角銅線(試料120〜167)で接続した複数のシリコンウェハは反りが小さく、割れが発生せず、さらに従来例と比較してシリコンウェハにかかる負荷も小さい。このため熱サイクルに対する寿命も良好であった。
また、熱処理した導体をそのまま使用した場合(試料120〜125、144〜149)と導体に冷間圧延若しくは冷間伸線加工を施した場合(試料126〜143、150〜167)を比較すると、冷間圧延若しくは冷間伸線加工を加えた方が反り量は低減する傾向にある。
【0101】
【表5】
【0102】
本発明は銅線に圧延、伸線、引張り等の冷間加工を加え、シリコンウェハと平角銅線との間に生じる熱膨張の差と応力を緩和した平角銅線を提供することができる。
また、本発明は前記平角銅線でシリコンウェハを接続することにより、長期間にわたりシリコンウェハにクラックを発生させず、発電効率が良好で、長寿命となる優れた太陽電池を提供することができる。
さらに、銅線に簡単な加工を加えるだけなので低コストで製造することができる。
【符号の説明】
【0103】
1.太陽電池用はんだめっき平角銅線
2.シリコンウェハ
3.太陽電池用平角導体(平角線)
4.はんだめっき層
図1
図2
図3
図4