特許第5981312号(P5981312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981312
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】オレフィン樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/00 20060101AFI20160818BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20160818BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20160818BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20160818BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   C08F6/00
   C08F2/44 B
   C08L23/00
   C08K5/521
   C08K5/20
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-247826(P2012-247826)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-95046(P2014-95046A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】川本 尚史
(72)【発明者】
【氏名】綾部 敬士
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敦史
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼口 哲哉
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−220208(JP,A)
【文献】 特開2012−057101(JP,A)
【文献】 特開2004−115624(JP,A)
【文献】 特表2004−514775(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/027793(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/008589(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/045288(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/031407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/44
C08F4/60−4/70
C08F6/00−6/28
C08J3/22
C08L23/00−23/36
C08K5/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合前又は重合中に、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させた造核剤を配合してオレフィンモノマーを重合して得られるオレフィン重合体に対して、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを接触させる工程を備え
前記造核剤が、下記一般式(1)、または(3)、
(式中、R〜Rは各々独立して、水素原子又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、Mは、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。)
(式中、Xは分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、R〜R10は、各々、独立して、ハロゲン原子、置換基を有してもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、及び置換されていてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基よりなる群から選択されるものを表し、p、q、r、sは各々独立して、0〜3の整数(ただし、pおよびsは0ではない)を表す。)で表される化合物であり、
前記オレフィンモノマーを重合する際に、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分からなるチーグラー・ナッタ触媒を用いることを特徴とするオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
重合前又は重合中に、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させた造核剤を供給してオレフィンモノマーを重合してなるオレフィン重合体に対して、水分又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを押出機内に圧入してオレフィン重合体を溶融混練する工程を備え
前記造核剤が、下記一般式(1)、または(3)、
(式中、R〜Rは各々独立して、水素原子又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、Mは、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。)
(式中、Xは分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、R〜R10は、各々、独立して、ハロゲン原子、置換基を有してもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、及び置換されていてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基よりなる群から選択されるものを表し、p、q、r、sは各々独立して、0〜3の整数(ただし、pおよびsは0ではない)を表す。)で表される化合物であり、
前記オレフィンモノマーを重合する際に、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分からなるチーグラー・ナッタ触媒を用いることを特徴とするオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記有機アルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウムである請求項1または2記載のオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶剤が、脂肪族炭化水素化合物及び芳香族炭化水素化合物から選択されるものである請求項1〜3のいずれか一項記載のオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記プロトン供与性物質が、メタノール及びエタノールから選択されるものである請求項1〜4のいずれか一項記載のオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記オレフィン重合体が、ポリプロピレンである請求項1〜5のいずれか一項記載のオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン樹脂組成物の製造方法に関し、詳しくは、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させた造核剤を供給してオレフィンモノマーを重合して得られるオレフィン重合体において、オレフィン重合体に含まれる造核剤を工業的に簡便且つ効果的に再生することにより、透明性と加工性に優れたオレフィン樹脂組成物を製造する方法に関する。
【0002】
オレフィン樹脂は、安価で、透明性、耐熱性、表面光沢性、耐油性、力学的特性などの諸特性が良好であることから、工業材料、自動車材料、家電材料、包装材料など幅広い分野に用いられている。安価な製品であるため、他の樹脂材料の代替え検討が進められている。
【0003】
オレフィン樹脂は成形後の結晶化速度が遅いため、成形サイクルが低く、また、加熱成形後の結晶化の進行具合によっては大きな結晶が生成し、成形品の透明性や強度が不足する欠点があった。これらの欠点は、全て、オレフィン樹脂の結晶性に由来するものであり、オレフィン樹脂の結晶化温度を高め、微細な結晶を急速に生成させることができれば解消されることが知られている。
【0004】
オレフィンモノマーの重合前又は重合中に造核剤を添加する方法として、例えば、特許文献1では、プロピレンの予備重合後に、造核剤としてアルミニウム−ビス(p−第三ブチル安息香酸)ヒドロキシ又は安息香酸ナトリウム塩を添加して二段階の重合を行う方法が提案されている。重合前又は重合中に造核剤を添加する方法は、重合後の押出加工等の溶融混練による造核剤の配合工程を省略できる利点が得られるが、造核剤が重合触媒の触媒活性を低下させたり、重合触媒の金属との相互作用によって重合体を着色させたりする問題が指摘されており、重合条件の選定、管理が煩雑になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3044259号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の方法は、造核剤の均一分散と、それによる重合体の剛性の改善を目的とするが、二段階重合による重合方法であって、プロピレンの一段階重合後に造核剤を添加する方法である。特許文献1には、造核剤が重合活性に影響を与えうること、造核剤をマスキングすること、および、造核剤をマスキングすることにより触媒活性に対する悪影響を防ぐこと、のいずれについても開示されていない。また、特許文献1記載の方法では、造核剤を重合触媒に直接接触させる一段階重合においては効果が得られない。また、特許文献1に記載の造核剤は、有機アルミニウム化合物及び有機溶媒には溶解せず、重合活性を損ねるものであった。
【0007】
一般的に、造核剤単体では流動性に乏しく、溶媒でスラリー化する必要があるが、溶液拡散性に乏しく、経時で造核剤が沈殿して濃度が不均一になるためバッチ式の重合方法で重合したオレフィン重合体は造核作用効果にムラが生じる問題がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、透明性及び加工性に優れたオレフィン樹脂組成物を製造できるオレフィン樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題の解決のために鋭意検討をした結果、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に造核剤を溶解させたものを供給してオレフィンモノマーを重合する方法に想到した。
さらに、本発明者等は、マスキングされた造核剤がオレフィン重合体に配合されたままでは、造核剤の作用効果を十分に発揮できず、オレフィン重合体を成形した成形品の透明性が損なわれる場合があることを見出した。この点について検討を重ねたところ、水分又はプロトン供与性物質を含む窒素ガス、あるいは、スチームを適用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明者等の検討したところによれば、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させた造核剤の再生は、水分やプロトン供与性物質との接触により行うことができる。水処理工程で重合触媒を分解させる手法を採用する場合、水処理によって造核剤の再生を行うことも期待できるが、処理水の量が増えるとオレフィン重合体中の水分量も増加する。水分量が多いオレフィン重合体を成形した場合、成形品の透明性が低下したり、成形品に気泡が生じたりする等の問題がある。さらに、水処理工程の増大は、水とオレフィン重合体の分離又は乾燥工程に要するエネルギーも増大し、工業的に不利である。従って、水分又はプロトン供与性物質を含む窒素ガス、あるいは、スチームを適用することで、工業的に有利な方法で、透明性と加工性に優れたオレフィン樹脂組成物を製造することが可能となる。
【0010】
すなわち、本発明のオレフィン樹脂組成物の製造方法は、重合前又は重合中に、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させた造核剤を配合してオレフィンモノマーを重合して得られるオレフィン重合体に対して、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを接触させる工程を備え、
前記造核剤が、下記一般式(1)、または(3)、
(式中、R〜Rは各々独立して、水素原子又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、Mは、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。)
(式中、Xは分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、R〜R10は、各々、独立して、ハロゲン原子、置換基を有してもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、及び置換されていてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基よりなる群から選択されるものを表し、p、q、r、sは各々独立して、0〜3の整数(ただし、pおよびsは0ではない)を表す。)で表される化合物であり、
前記オレフィンモノマーを重合する際に、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分からなるチーグラー・ナッタ触媒を用いることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のオレフィン樹脂組成物の製造方法は、重合前又は重合中に、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させた造核剤を供給してオレフィンモノマーを重合してなるオレフィン重合体に対して、水分又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを押出機内に圧入してオレフィン重合体を溶融混練する工程を備え、
前記造核剤が、下記一般式(1)、または(3)、
(式中、R〜Rは各々独立して、水素原子又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、Mは、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。)
(式中、Xは分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、R〜R10は、各々、独立して、ハロゲン原子、置換基を有してもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、及び置換されていてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基よりなる群から選択されるものを表し、p、q、r、sは各々独立して、0〜3の整数(ただし、pおよびsは0ではない)を表す。)で表される化合物であり、
前記オレフィンモノマーを重合する際に、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分からなるチーグラー・ナッタ触媒を用いることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の製造方法においては、上記有機アルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウムであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の製造方法においては、上記有機溶剤が、脂肪族炭化水素化合物及び芳香族炭化水素化合物から選択されるものであることが好ましい。
【0016】
本発明においては、上記プロトン供与性物質が、メタノール及びエタノールから選択されるものであることが好ましい。
【0017】
また、本発明はオレフィン重合体が、ポリプロピレンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、透明性と加工性に優れたオレフィン樹脂組成物を製造できるオレフィン樹脂組成物の製造方法、それにより製造されたオレフィン樹脂組成物および成形品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のオレフィン樹脂組成物の製造方法について、以下に詳述する。
本発明のオレフィン樹脂組成物の製造方法は、重合前又は重合中に、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させた造核剤を配合してオレフィンモノマーを重合して得られるオレフィン重合体を用いる。
【0022】
本発明に用いられる造核剤成分としては、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解する造核剤が挙げられる。溶解しないものは樹脂中への分散性が悪く本発明の効果が得られない場合がある。造核剤成分の溶解性については、本発明の製造方法を実施する前にあらかじめ確認しておく必要がある。溶解するか否かは、造核剤を、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させ、残存物が発生するかを目視により確認することで判断できる。
具体的な化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物、リチウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩、アミド化合物等が挙げられるが、有機アルミニウム化合物によって分解する造核剤は重合体を着色させたり、重合活性を阻害する場合があるため、本発明の製造方法においては採用することができない。
【0023】
本発明においては、上記造核剤は下記一般式(1)、
(式中、R〜Rは各々独立して、水素原子又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1又は2を表し、mが1の場合、Mは水素原子又はアルカリ金属原子を表し、mが2の場合、Mは、二族元素、Al(OH)又はZnを表す。)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0024】
上記一般式(1)中の、R、R、R及びRで表される、炭素原子数1〜9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基が挙げられるが、これらの中でも特に、メチル基、第三ブチル基、第三ヘプチル基であるものが好ましい。
【0025】
上記一般式(1)中のMで表される第二族元素としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが挙げられ、これらの中でも、マグネシウム、カルシウムであるものが、造核剤成分の核剤効果が顕著であるので好ましい。
【0026】
本発明で用いられる造核剤成分としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。但し、本発明は下記の化合物により制限を受けるものではない。
【0027】
本発明における上記アミド化合物としては、例えば、下記一般式(2)、
(式中、Rは水素原子、分岐を有してもよく、置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表し、複数あるRは各々異なるものであってもよい)で表されるカルバメート構造が炭素原子数1〜10の炭化水素基を介して少なくとも4つ以上連結した構造を有する化合物、
下記一般式(3)、
(式中、Xは分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、R〜R10は、各々、独立して、ハロゲン原子、置換基を有してもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、及び置換されていてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基よりなる群から選択されるものを表し、p、q、r、sは各々独立して、0〜3の整数(ただし、pおよびsは0ではない)を表す)で表される化合物、
下記一般式(4)、
(式中、R11及びR12は各々独立して、分岐及び/又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表し、X及びXは、各々独立して、単結合手、または、分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基を表す。ただし、上記置換基は水酸基を除く)で表される化合物、
下記一般式(5)、
(式中、R13及びR14は各々独立して、水素原子、分岐および/または置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Xは、分岐および/または置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキレン基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリーレン基を表す。なお、R13およびR14が互いに結合して縮合環構造を形成してもよい)で表される化合物、
下記一般式(6)、
(式中、R15は、水素原子、分岐および/または置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Xは、分岐および/または置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキレン基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリーレン基を表す)で表される化合物、
下記一般式(7)、
(式中、R16及びR17は各々独立して、分岐を有してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基を表す)で表される化合物、脂肪酸アミド化合物等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(2)で表されるカルバメート構造が結合する炭素原子数1〜10の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子で構成される官能基を表し、その分子構造は、アルカン、アルケン、シクロアルカン、芳香族炭化水素等が挙げられ、かかる炭化水素基の少なくとも4個の水素原子がカルバメート構造で置換されたものを表す。上記炭化水素基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基又はアリール基で中断されていてもよく、炭化水素基中の水素原子が下記の置換基で置換されたものであってもよい。これら中断又は置換は組み合わされていてもよい。
【0029】
上記一般式(2)中のRで表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、第三ペンチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。中でもヘキシル基、オクチル基が好ましい。
これらアルキル基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基又は下記のアリール基で中断されていてもよく、アルキル基中の水素原子が下記の置換基で置換されていてもよく、これら中断または置換は組み合わされていてもよい。
【0030】
上記一般式(2)中のアルキル基が有してもよい置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基等の鎖状脂肪族基、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、モルホリン、2H−ピラン、4H−ピラン、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピロリジン、ピリンジン、インドリン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、又はシクロアルキル基等の環状脂肪族基が挙げられる。
【0031】
上記一般式(2)中のRで表される、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられ、シクロヘキシル基が好ましい。シクロアルキル基中の水素原子が、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトリル基又はシアノ基で置換されていてもよい。
【0032】
上記一般式(2)中のRで表される、置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基としては、アリール基中の水素原子が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルカノイルオキシ基、又はアルコキシカルボニル基で置換されていてもよく、これらのアリール基としては、例えば、フェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−第三ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0033】
上記一般式(2)で表される化合物のうち、下記一般式(8)、
(式中、R18は、上記一般式(2)中のRと同じものを表し、kは2〜10の整数を表し、複数あるR18は各々異なるものであってもよい)で表される化合物、又は、下記一般式(9)、
(式中、R19は、上記一般式(2)中のRと同じものを表し、複数あるR19は各々異なるものであってもよい)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0034】
本発明における上記一般式(2)で表される化合物の具体的な構造としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物に制限されるものではない。
【0035】
上記一般式(3)中におけるXの分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基等が挙げられ、これらのアルキレン基中の−CH−は、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていてもよく、またアルキレン基中の水素原子が、ハロゲン原子、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アリール基又は飽和脂肪族環で置換されていてもよい。
【0036】
上記一般式(3)中におけるR〜R10の置換基を有してもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基等が挙げられ、これらアルキル基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基又は上記のアリール基で中断されていてもよく、アルキル基中の水素原子が上記の置換基で置換されていてもよく、これら中断または置換は組み合わされていてもよい。
【0037】
上記一般式(3)中におけるR〜R10の置換されていてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。これらアルコキシ基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基又は上記のアリール基で中断されていてもよく、アルコキシ基中の水素原子が上記の置換基で置換されていてもよく、これら中断または置換は組み合わされていてもよい。
【0038】
本発明における上記一般式(3)で表される化合物の具体的な構造としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物に制限されるものではない。
【0039】
上記一般式(3)で表される化合物の中でも、一般式(3)中のR及びR10がベンゼン環のオルト位にある化合物が好ましく用いられる。
【0040】
また、上記一般式(3)中のp及びsが1かつqおよびrが2である化合物が好ましく用いられる。
【0041】
上記一般式(4)中のR11又はR12で表される、分岐及び/又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、第三ペンチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基等が挙げられ、これらアルキル基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基又は上記のアリール基で中断されていてもよく、アルキル基中の水素原子が上記の置換基で置換されていてもよく、これら中断または置換は組み合わされていてもよい。
【0042】
上記一般式(4)中のR11又はR12で表される、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基としては、上記一般式(2)中のRと同じものが挙げられる。
【0043】
上記一般式(4)中のR11又はR12で表される、置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基としては、上記一般式(2)中のRと同じものが挙げられる。
【0044】
上記一般式(4)中のX又はXで表される、分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基とは、上記一般式(3)中のXと同じものが挙げられる。
【0045】
上記一般式(4)で表される化合物のうち、下記一般式(10)〜(12)、
(式中、R20は、上記一般式(4)中のR11と同じものを表し、R21は、上記一般式(4)中のR12と同じものを表し、tは、0又は1を表す)のいずれかで表される化合物を好ましく用いることができる。
【0046】
本発明における上記一般式(4)で表される化合物の具体的な構造としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物に制限されるものではない。
【0047】
上記一般式(5)中のR13及びR14又は上記一般式(6)中のR15で表される、分岐を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基としては、上記一般式(2)中のRと同じものが挙げられる。
【0048】
上記一般式(5)中のR13及びR14又は上記一般式(6)中のR15で表される、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基としては、上記一般式(2)中のRと同じものが挙げられる。
【0049】
上記一般式(5)中のR13及びR14又は上記一般式(6)中のR15で表される、
置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基としては、上記一般式(2)中のRと同じものが挙げられる。
【0050】
上記一般式(5)又は(6)中のX及びXで表される、分岐を有してもよく置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,2−ジメチルプロピレン基、1,3−ジメチルプロピレン基、1−メチルブチレン基、2−メチルブチレン基、3−メチルブチレン基、1,3−ジメチルブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられる。これらアルキレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基又は上記のアリール基で中断されていてもよく、アルキレン基中の水素原子が上記の置換基で置換されていてもよく、これら中断または置換は組み合わされていてもよい。
【0051】
上記一般式(5)又は(6)中のX及びXで表される、置換基を有してもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキレン基としては、1,2−シクロプロピレン基、1,3−シクロヘプチレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基等が挙げられる。これらシクロアルキレン基中の水素原子が上記の置換基で置換されていてもよい。
【0052】
上記一般式(5)又は(6)中のX及びXで表される、置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリーレン基としては、例えば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,6−フェナレン基、1,6−フェナントレン基、2,7−フェナントレン基、2,6−アントラセン基等が挙げられる。これらアリーレン基の水素原子が上記の置換基で置換されていてもよい。
【0053】
また、上記一般式(5)中のR13及びR14又は、上記一般式(6)中のR15がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数が長くなると、オレフィン重合体の造核剤としての作用効果を示すものの、化合物自身の耐熱性が低下し、オレフィン重合体の成形加工の際に、分解して成形品に悪影響を及ぼす場合があるので、本発明において、R13、R14、又はR15が表すアルキル基の炭素原子数は1〜8の範囲内が好ましく、1〜5の範囲内が特に好ましい。
【0054】
本発明における上記一般式(5)で表される化合物の具体的な構造としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物に制限されるものではない。
【0055】
本発明における上記一般式(6)で表される化合物の具体的な構造としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物に制限されるものではない。
【0056】
上記一般式(7)におけるR16及びR17で表される、分岐を有してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、第三ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0057】
上記一般式(7)で表される化合物のうち、下記一般式(13)、
(式中、R22は、一般式(7)中のR16と同じものを表し、R23は一般式(7)中のR17と同じものを表す)、
又は、下記一般式(14)、
(式中、R24は、一般式(7)中のR16と同じものを表し、R25は、一般式(7)中のR17と同じものを表す)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0058】
本発明における上記一般式(7)で表される化合物の具体的な構造としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物に制限されるものではない。
【0059】
上記脂肪酸アミド化合物としては、例えば、エチレンビスステアロアミド、エチレンビス(12−ヒドロキシステアロアミド)、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0060】
また、上記したもの以外のアミド化合物として、例えば、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−イソプロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−イソプロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−イソプロピルシクロヘキシルアミド)、 1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−イソブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−イソブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−イソブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−第二ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−第二ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−第二ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−第三ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−第三ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−第三ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−イソプロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−イソプロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−イソプロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−イソブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−イソブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−イソブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−第二ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−第二ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−第二ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−第三ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−第三ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−第三ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(ベンジルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(シクロヘプチルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3,4−ジメチルフェニルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(シクロドデシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(第三オクチルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(S(+)−1−シクロヘキシルエチルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(R(−)−1−シクロヘキシルエチルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(シクロオクチルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(シクロオクチルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(n−ブチルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(1,1,3,3−テトラメチルブチルアミド)、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロピオンアミド)ベンゼン等が挙げられる。
【0061】
上記造核剤成分の使用量の範囲は、重合により得られるオレフィン重合体100質量部に対して、0.001〜0.5質量部の範囲が好ましく、0.005〜0.3質量部の範囲がより好ましい。0.001質量部より少ないと、核剤の作用効果が得られない場合があり、0.5質量部以上の配合は、本発明の製造方法により得られるオレフィン樹脂組成物単独で成形加工した場合、添加効果が得られない場合があり不経済である。
【0062】
本発明の製造方法で用いられるオレフィン重合体を重合するに当たって、上記造核剤成分が有機アルミニウム化合物、又は有機アルミニウム及び有機溶剤に溶解されたものをオレフィンモノマーの重合前又は重合中に添加されるが、添加箇所としては特に限定されず、例えば、重合系、触媒系、配合管のいずれにも添加することができる。
【0063】
上記造核剤成分をオレフィンモノマーの重合前又は重合中に添加する場合は、造核剤成分及び有機アルミニウム化合物を混合したものであってもよく、有機溶媒中に上記造核剤を分散させてから有機アルミニウム化合物を加えて、造核剤成分を溶解させたものであってもよい。これにより造核剤成分が、有機アルミニウム化合物によりマスキングされると考えられる。
【0064】
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハイドライド等が使用できるが、アルキルアルミニウムが好ましく、特に好ましくは、トリアルキルアルミニウムであり、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−へキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等が挙げられる。上記有機アルミニウム化合物はいずれも混合物として使用することができる。また、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミニウムハイドライドと水との反応によって得られるアルミノキサンも同様に使用することができる。
【0065】
上記オレフィン重合体を得るに当たって、有機アルミニウム化合物でマスキング処理されたものを水、アルコール、酸等の水素供与性化合物で処理することにより、再生可能となるような有機アルミニウム化合物を用いることが好ましい。
【0066】
上記造核剤成分と有機アルミニウム化合物の混合比としては、造核剤成分と有機アルミニウム化合物のアルミニウム分のモル比が、1/1000〜1/0.3が好ましい。1/0.3より造核剤成分が多いと、過剰な造核剤成分がオレフィンモノマーの重合活性に悪影響を及ぼす問題があり、1/1000より造核剤成分が少ないと重合後に有機アルミニウム化合物がオレフィン重合体に残留し、オレフィン重合体の物性が低下したり、触媒金属の成分に影響して所望の重合を行えない場合がある。
【0067】
上記有機溶剤としては、脂肪族及び芳香族炭化水素化合物が挙げられる。脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン及び精製ケロシン等の飽和炭化水素化合物、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の環状飽和炭化水素化合物等が挙げられ、芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレンなどの化合物が挙げられる。これら有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記有機溶媒のうち、n−ヘキサン、又は、n−ヘプタンが好ましく用いられる。有機溶媒中の有機アルミニウム化合物の濃度は、0.001〜0.5mol/lの範囲が好ましく、特に好ましくは、0.01〜0.1mol/lである。
【0068】
オレフィン重合体を得るために用いられるオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロアルカン、スチレンあるいはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0069】
本発明におけるオレフィン重合体とは、上記オレフィンモノマーの単独重合、又はオレフィンモノマーを含む共重合によって得られるものであり、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体等のポリプロピレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、シクロオレフィンなどが挙げられる。
【0070】
本発明の製造方法は、上記オレフィンモノマーの重合前又は重合中に、造核剤を有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶剤に溶解させたものを配合して、オレフィンモノマーを重合して得られるオレフィン重合体を用いるものである。オレフィンモノマーと造核剤成分の比率としては、オレフィンモノマーを重合して得られるオレフィン重合体100質量部に対して、造核剤成分が0.001〜0.5質量部となるように調整して行われる。
【0071】
オレフィン重合体に対して、造核剤成分を上記の配合量に調整する方法としては、造核剤成分を加えずに重合した場合の重合活性を求め、得られる重合体に対して、所望の配合量の造核剤成分になるように、造核剤を有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶媒に溶解させたものを加えて、造核剤成分を加えなかった場合と同一条件で重合する方法を採用することができる。また、各成分の添加量を調整する機器を重合設備に導入して、造核剤成分が上記配合量になるように調整して重合するものであってもよい。
【0072】
オレフィンモノマーの重合は、重合触媒の存在下で、窒素等の不活性ガス雰囲気中にて行うことができるが、上記の有機溶剤中で行ってもよい。また、重合を阻害しない範囲で、活性水素化合物、微粒子状担体、有機アルミニウム化合物、イオン交換性層状化合物、無機珪酸塩を添加してもよい。
【0073】
上記重合触媒は、特に限定されるものではなく、公知の重合触媒を利用可能であり、例えば、周期表第3〜11族の遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、鉄、ニッケル、鉛、白金、イットリウム、サマリウム等)の化合物があげられ、代表的なものとしては、チーグラー触媒、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分からなるチーグラー・ナッタ触媒、少なくとも一個のシクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物と助触媒成分からなるメタロセン触媒、クロム系触媒等を用いることができる。
【0074】
オレフィンモノマーの重合方法としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ガソリン留分、水素化ジーゼル留分などの不活性溶媒中での重合であるスラリー重合法、重合を気相中で実施する気相重合法、オレフィンモノマー自体を溶媒として使用するバルク重合法、ポリマーを液状で生成させる溶液重合法、若しくはこれらを組み合わせた重合法、一段重合法又は多段重合法によって、オレフィンモノマーを重合して、オレフィン単独重合体を製造する方法や、プロピレンと、炭素原子数2〜12のオレフィン単位からなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン(プロピレンを除く)単位を共重合して共重合体を製造する方法の重合方法が挙げられ、また、バッチ式、連続式の生産方式がある。
【0075】
本発明においては、バルク重合法、気相重合法又はこれらの組合せを有する重合設備においては、従来の重合設備のまま本発明を適用可能であるため、好ましく用いられ、連続式であるものは工業的に有利であるので好ましい。また、スラリー重合法、溶液重合法等でも、本発明を利用可能であるが、これらの重合法はオレフィン重合体の乾燥工程を要するため、省力化の観点からは好ましくない。
【0076】
本発明の製造方法は、上述のようにして得られるオレフィン重合体に対して、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを接触させる工程を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の他の製造方法は、上述のようにして得られるオレフィン重合体に対して、水分又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを押出機内に圧入してオレフィン重合体を溶融混練する工程を備えることを特徴とするものである。
これにより、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物と有機溶媒に溶解した造核剤を再生させることができると考えられる。
【0077】
本発明の製造方法において、水またはプロトン供与性物質を含んだ窒素ガスを使用する際は、好ましくは、窒素1に対して容積比1.0×10−6〜2.5×10−2、より好ましくは、1.0×10−3〜1.5×10−2の水を含んでなる窒素ガスが好ましい。窒素1に対する容積比が、1.0×10−6より少ないと、造核剤を再生するのに時間を要し、2.5×10−2より多いと、得られるオレフィン重合体の水分含有量が高くなってしまい、成形加工の際、発泡する場合がある。
【0078】
上述のようにして得られるオレフィン重合体に対して、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを接触させる工程を、連続式の生産方式に対応させる場合には、オレフィン重合体が間欠的に、又は、連続して供給される槽において、上記窒素ガス又はスチームをオレフィン重合体に接触させることができる設備を用いればよい。例えば、円筒状のカラムにおいて間欠的または連続的にカラムの上方からオレフィン重合体が供給され、カラムの底部から窒素ガス又はスチームが供給されるタイプ、あるいは槽の上方からオレフィン重合体が供給され、下方から上記窒素ガスが供給されるタイプなど、再生された造核剤を含有するオレフィン重合体を排出できるものであればよい。具体的な槽としては、パージカラム、スチーマーなどが挙げられる。
【0079】
上記プロトン供与性物質としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコールや、フェノール性物質、塩酸、硫酸等の鉱酸が挙げられるが、本発明においては、メタノール、エタノールが好ましく用いられる。
【0080】
上記のようにして得られたオレフィン重合体を押出機で溶融混練する際に、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを押出機内に圧入する工程を備えることを特徴とするオレフィン樹脂組成物の製造方法では、オレフィン重合体を溶融混練する際に、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームをオレフィン重合体に接触させることにより、オレフィン重合体に含まれる造核剤成分を再生することが可能となる。上記オレフィン重合体を必要に応じて他の添加剤と混合して押出機で溶融混練する押出機を設置し、押出機内に、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、あるいは、スチームを導入するものが、特に新規の設備投資の必要がないので好ましい。
【0081】
上記押出機は、単軸、二軸、多軸等の押出方式の区別なく用いることができ、オレフィン重合体を溶融して混練でき、スチームを押出機に導入できるものであればよい。
【0082】
本発明のオレフィン樹脂組成物の製造方法において、得られたオレフィン樹脂組成物に含まれる水分量が、オレフィン重合体100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
水分量が、オレフィン重合体100質量部に対して0.1質量部より少ないと、造核剤の再生が十分でない場合があり、5質量部より多いと、オレフィン樹脂組成物の成形加工時に発泡が発生し、成形品の外観を損ねる場合がある。
【0083】
本発明において重合に悪影響を与えない範囲において、必要に応じてさらに、オレフィン樹脂に通常使用される他の添加剤をオレフィンモノマーの重合時に添加することができる。オレフィンモノマーの重合時に添加する場合において、その他の添加剤、造核剤及び有機アルミニウム化合物を混合・撹拌したものを用いてもよい。また、添加剤と溶媒を混合して懸濁状態(スラリー化)したものを供給する方法を用いることができる。溶媒は特に限定されず、例えば、上記したものが挙げられる。添加剤は、重合後に配合してもよい。
【0084】
尚、この方法による反応において、副生した化合物が重合物へ影響しない場合はそのまま用いることができるが、副生した化合物が重合物へ悪影響を与える場合は、該化合物を減圧留去等により取り除いてから用いることが好ましい。
【0085】
また、その他の添加剤が、直接添加すると重合に悪影響があるものであっても、有機アルミニウム化合物でマスキングすることによって、重合に対する影響を抑制できる場合は、本発明のオレフィン樹脂組成物の製造方法に用いることができる。
【0086】
上記その他の添加剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、重金属不活性化剤、造核剤、難燃剤、金属石鹸(脂肪族カルボン酸金属塩)、ハイドロタルサイト、充填剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、可塑剤等が挙げられる。
【0087】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−第三ブチル−4−エチルフェノール、2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−チオビス−(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−メチル−4,6−ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、2,2’−オキサミド−ビス[エチル−3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−エチルヘキシル−3−(3’,5’−ジ−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−エチレンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸及びC13−15アルキルのエステル、2,5−ジ−第三アミルヒドロキノン、ヒンダードフェノールの重合物(アデカパルマロール社製商品名AO.OH998)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2−第三ブチル−6−(3−第三ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−第三ペンチルフェニルアクリレート、6−[3−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−第三ブチルベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフォビン、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[モノエチル(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネートカルシウム塩、5,7−ビス(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2(3H)−ベンゾフラノン、とo−キシレンとの反応生成物、2,6−ジ−第三ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、DL−a−トコフェノール(ビタミンE)、2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、ビス[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−フェニル)ブタン酸]グリコールエステル、2,6−ジ−第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、ステアリル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、パルミチル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ミリスチル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、ラウリル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド等の3−(3,5−ジアルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸誘導体等が挙げられる。
【0088】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、ヘプタキストリホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジイソオクチルフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジオレイルヒドロゲンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(トリデシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジノニルフェニルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピルグリコールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−第三ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールとステアリン酸カルシウム塩との混合物、アルキル(C10)ビスフェノールAホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニル−テトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、ビス(2,4−ジ−第三ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、(1−メチル−1―プロパニル−3−イリデン)トリス(2−1,1−ジメチルエチル)−5−メチル−4,1−フェニレン)ヘキサトリデシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−第三ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス−第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、3,9−ビス(4−ノニルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスフェススピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6−トリ−第三ブチルフェニル−2−ブチル−2エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、ポリ4,4’−イソプロピリデンジフェノールC12−15アルコールホスファイト、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ−第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
【0089】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス[メチレン−3−(ラウリルチオ)プロピオネート]メタン、ビス(メチル−4−[3−n−アルキル(C12/C14)チオプロピオニルオキシ]5−第三ブチルフェニル)スルファイド、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリル/ステアリルチオジプロピオネート、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−チオビス(6−第三ブチル−p−クレゾール)、ジステアリル−ジサルファイドが挙げられる。
【0090】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩、又は金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、又はキレート類等が挙げられる。
【0091】
上記難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、及び、臭素化スチレン等の臭素系難燃剤等が挙げられる。
【0092】
上記脂肪族カルボン酸金属塩としては、例えば、下記一般式(15)、
(式中R26は、分岐鎖を有してもよく、ヒドロキシル基及びシクロアルキル基から選ばれる1種以上の置換基を有してもよい炭素原子数1〜30の脂肪族基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、1〜4の整数であって、Mの金属原子の価数を表す)で表される化合物が挙げられる。
【0093】
上記一般式(15)において、R26は、炭素原子数1〜30の脂肪族基であり、ヒドロキシル基を有するものでもよく、シクロアルキル基を有するものでもよく、分岐を有してもよい。脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、2つ以上の不飽和結合が導入されたアルキル基等の炭化水素基が挙げられる。上記一般式(15)で表される脂肪族カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、2−エチルヘキサン酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリル酸、ネオデシル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、パルミトレイン酸、ミリストレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、γ−リノレン酸、リノレン酸、リシノール酸、ナフテン酸、アビエチン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、2−メチル−β−ヒドロキシプロピオン酸、α−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、モノメチロールプロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数12〜22の脂肪族基であるものが、オレフィン樹脂の物性改善効果が高くなるので好ましく、特に、ミリスチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が好ましい。
【0094】
上記一般式(15)において、Mで表される金属原子とは、アルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、バリウム又はハフニウム等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属が好ましく、特に、ナトリウム及びリチウムがオレフィン重合体の結晶化温度が良好となるので好ましく用いられる。
【0095】
上記ハイドロタルサイトとは、天然物や合成物として知られるマグネシウム、アルミニウム、水酸基、炭酸基および任意の結晶水からなる複合塩化合物である。具体的には、例えば、下記式(16)で表されるハイドロタルサイトが挙げられる。また、式(17)で表されるAl−Li系のハイドロタルサイトも用いることができる。
(式中、aおよびbは各々下記式で表される条件を満たす数を表し、uは0または正の数を表す。
0≦b/a<10,2≦a+b≦20である。)
(式中、Aq−は、q価のアニオンを表し、uは0または正の数を表す。)
上記ハイドロタルサイトは、結晶水を脱水したものであってもよく、ステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックス等で被覆されたものであってもよい。
【0096】
上記のハイドロタルサイトは、天然物であってもよく、また合成品であってもよい。該化合物の合成方法としては、特公昭46−2280号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129合公報、特公平3−36839号公報、特開昭61−174270号公報、特開平5−179052号公報等に記載されている公知の方法が挙げられる。また、上記ハイドロタルサイトは、その結晶構造、結晶粒子等に制限されることなく使用することができる。
【0097】
ハイドロタルサイトの金属塩を用いる場合は、リチウム塩、ナトリウム塩であるものが、成形品の透明性が良好なものが得られるので好ましく用いられる。
【0098】
上記充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス粉末、ガラス繊維、クレー、ドロマイト、マイカ、シリカ、アルミナ、チタン酸カリウムウィスカー、ワラステナイト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート等が好ましい。これらの充填剤において、平均粒径(球状乃至平板状のもの)又は平均繊維径(針状乃至繊維状)が5μm以下のものが好ましい。
【0099】
上記滑剤は、成形体表面に滑性を付与し傷つき防止効果を高める目的で加えられる。滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0100】
上記帯電防止剤は、成形品の帯電性の低減化や、帯電による埃の付着防止の目的で加えられる。帯電防止剤としては、カチオン系、アニオン系、非イオン系等が挙げられる。好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルアミンやポリオキシエチレンアルキルアミドが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
上記添加剤の好ましい使用量の範囲は、効果が発現される量から添加効果の向上が見られなくなる範囲である。オレフィン重合体100質量部に対する各添加剤の使用量は、可塑剤が、0.1〜20質量部、充填剤が、1〜50質量部、表面処理剤が、0.001〜1質量部、フェノール系酸化防止剤が0.001〜10質量部、リン系酸化防止剤が、0.001〜10質量部、チオエーテル系酸化防止剤が、0.001〜10質量部、紫外線吸収剤が、0.001〜5質量部、ヒンダードアミン化合物が、0.01〜1質量部、難燃剤が、1〜50質量部、脂肪族カルボン酸金属塩が、0.001〜10質量部、ハイドロタルサイトが、0.001〜5質量部、滑剤が、0.03〜2質量部、帯電防止剤が、0.03〜2質量部であることが好ましい。尚、上記に示した使用量とは、本発明の製造方法で作製されたオレフィン樹脂組成物を成形した成形品中の各添加剤の使用量を示すものである。
【0102】
本発明の製造方法で得られたオレフィン樹脂組成物に対して、上記その他の添加剤を配合する場合、オレフィン重合体と上記その他の添加剤を混合した後に、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機などの加工機器で溶融混練する方法が挙げられ、操作性の面で単軸押出機、二軸押出機が好ましい。二軸押出機を用いる場合は、スクリュー回転方向が同方向、異方向の区別無く用いることができる。また、品質や作業環境の改善のために不活性ガスによる置換や一段及び多段ベントで脱気することが好ましい。
【0103】
本発明の製造方法で得られたオレフィン樹脂組成物は、押出成形、射出成形、中空成形、ブロー成形、圧縮成形等の公知の成形方法で成形することができ、食品用容器、化粧品・衣料用容器、食品用ボトル、飲料用ボトル、食用油ボトル、調味料ボトル等のボトル、食品用包装材、ラッピング材、輸送用包装材等の包装材料、シート・フィルム、繊維、日用雑貨、玩具等の成形品を容易に得ることができる。また、ガラス繊維、カーボン繊維等を配合して繊維強化プラスチックとしてもよい。
【実施例】
【0104】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって何ら制限されるものではない。
【0105】
(固体触媒成分の調製)
無水塩化マグネシウム4.76g(50mmol)、デカン25ml及び2−エチルへキシルアルコール23.4ml(150mmol)を加えて、130℃で2時間加熱反応を行い均一溶液とした後、さらに無水フタル酸1.11g(7.5mmol)を添加し、130℃を維持しながら1時間撹拌して、無水フタル酸を該均一溶液に溶解させた。次に、均一溶液を室温に冷却し、−20℃に保持された四塩化チタン200ml(1.8mol)中に1時間にわたって全量滴下装入した。装入終了後、4時間かけて110℃まで昇温した。110℃に到達後、ジブチルフタレート2.68ml(12.5mmol)を加え、110℃を維持しながら2時間撹拌して反応させた。反応終了後、熱時ろ過にて残渣を採取し、該残渣を200mlの四塩化チタンにて再懸濁させた後、再び110℃まで加熱して2時間反応させた。反応終了後、再び熱時ろ過で残渣を採取し、110℃のデカン及びヘキサンにて、洗液中に遊離しているチタン化合物が検出されなくなるまで充分に洗浄して固体触媒成分を得た。この固体触媒成分の一部をサンプリングして乾燥し、触媒組成を分析したところ、チタン3.1重量%、塩素56.0重量%、マグネシウム17.0重量%及びジブチルフタレート20.9重量%であった。
【0106】
(予備重合)
オレフィン重合体中の造核剤の配合量を調整するために、造核剤溶液を添加しなかった場合の重合活性を求めた。重合条件は下記にて行った。
【0107】
(重合条件)
窒素置換したオートクレーブにヘプタン600ml、トリエチルアルミニウム303mg、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.26mmol及び上記の方法で製造した固体触媒成分のヘプタンスラリー(Ti換算で0.013mmol)を順次加え、撹拌した。オートクレーブ内をプロピレン雰囲気に置換し、プロピレンで1kgf/cmGの圧力をかけ、50℃で5分間プレ重合した。プロピレンをパージした後、水素340ml(23℃)を吹き込み、70℃まで昇温し、オートクレーブ内にプロピレンで6kgf/cmGの圧力をかけ、70℃で1時間重合反応を行った。窒素ガスで系内を置換してから40℃でエタノール5mlを加え重合反応を停止させた後、50℃で減圧脱溶媒を行ない、次いで、真空中、40℃でポリマーを5時間乾燥することにより、重合体を得た。得られた重合体の重合活性は、触媒1gあたり、8.0kgであった。
【0108】
(造核剤成分の溶液の調製)
窒素置換したフラスコに、表1に記載の配合で、造核剤成分にヘプタンを加え、撹拌しながらトリエチルアルミニウムを滴下して、造核剤成分が20mg/mlの造核剤成分の溶液を調製した。P−2は、上記で例示した結晶核剤成分の具体例の1つである。
【0109】
【表1】
(1)化合物1:下記構造の化合物
(2)Na−Bz:安息香酸ナトリウム塩
【0110】
(重合)
上記予備重合の重合条件において、固体触媒成分のヘプタンスラリーを加える直前に、重合によって得られるオレフィン重合体100質量部に対して、造核剤成分溶液を表2に記載の配合量になるように加え、オートクレーブ中の溶液が全体で600mlになるようヘプタンの量を添加した以外は、上記の予備重合と同一条件で重合した。エタノールは未添加であった。
ただし、混合物Cをオレフィンモノマーの重合に供給した場合、重合活性が低く、成形加工に必要な量のオレフィン重合体が得られなかった。
【0111】
〔実施例1−1〕
市販の高純度窒素ガスを水に通し、水分量が窒素1に対して容積比で1.2×10−3である窒素ガスを得た。次に、上記の製造方法で得られたそれぞれのオレフィン重合体を、溶媒を含んだままパージカラムに移送し、溶媒は窒素雰囲気下でフレアラインに移送し、脱溶剤した。脱溶剤したオレフィン重合体に対して、円筒容器の底部から上記窒素ガスを100ml/minの流量で2時間流し、オレフィン重合体に含まれる造核剤成分の再生処理を実施した。
【0112】
〔実施例1−2〕
上記実施例1−1において、水分量が窒素1に対して容積比で1.2×10−3である窒素ガスを、水分量が窒素1に対して容積比で1.0×10−2である窒素ガスに代えた以外は、上記実施例1と同様に実施した。
【0113】
〔実施例1−3〕
上記実施例1−1において、水をメタノールに代えた以外は、上記実施例1と同様に実施した。
【0114】
〔実施例1−4〕
上記実施例1−1において、水をエタノールに代えた以外は、上記実施例1と同様に実施した。
【0115】
〔実施例1−5〕
上記製造例1−1で得たオレフィン重合体を、溶媒を含んだままパージカラムに移送し、溶媒は窒素下でフレアラインに移送して脱溶剤した。次に、パージカラムの円筒上のカラム下方から、5kPaのスチームを100ml/minの流量で2時間流し、オレフィン重合体に接触させた。
【0116】
〔比較例1−1〕
上記実施例1−1において、窒素ガスを水に通さずそのまま用いた以外は、上記実施例1と同様に実施した。
【0117】
〔比較例1−2〕
上記実施例1−1において、水分を含んだ窒素ガスの代わりに、水(スチームではない)を用いた以外は、上記実施例1−1と同様に実施した。
【0118】
(評価)
得られたそれぞれのオレフィン重合体100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05質量部、リン系酸化防止剤として、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト0.05質量部、ハイドロタルサイトとして、協和化学工業株式会社製商品名:DHT−4A0.05質量部、脂肪族カルボン酸金属塩として、ステアリン酸ナトリウム塩0.08質量部を配合し、各添加剤を添加・混合し、ラボ用小型射出成形機(DSM Xplore社製Compounder15,Injection molder 12)にて230℃で溶融混練してストランドを得た。ストランドをペレタイズした後、上記ラボ用小型射出成形機を用いて、射出温度230℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、50mm×50mm×2mmの平板状試験片を得た。
【0119】
(白濁)
得られた平板状試験片の状態を目視で観察した。これらの結果について、それぞれ下記表2に示す。
【0120】
(揮発量)
得られたストランドを切り取って、5mgに秤量し、測定試料とした。揮発量は、株式会社リガク製サーモプラス2/(TG−DTAシリーズ)を用いて、窒素雰囲気下(流量:200ml/min)、測定試料:5mg、昇温速度:50℃/minの条件で、室温から150℃に到達したときの重量減少量を測定し、下記式により、揮発量(%)を算出した。
揮発量(%)=(重量減少量)/(測定試料重量−重量減少量)×100
これらの結果について、それぞれ下記表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
表2の比較例1−1より、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、並びに、スチームを導入しなかった場合、造核剤の再生が不十分であり、成形品の透明性は十分なものではなかった。また、比較例1−2より、オレフィン重合体を、スチームではない水で処理した場合、成形品の透明性は改善したものの、オレフィン重合体の含水量が多く、成形加工時に発泡現象が発生して成形加工が安定しなかった。
【0123】
これらに対し、実施例1−1及び1−2より、水を含んだ窒素ガスをオレフィン重合体と接触させる本発明の方法で製造したオレフィン樹脂組成物の成形品は、透明性に優れ、成形加工時に発泡現象は確認されなかった。また、実施例1−3及び1−4より、水の代わりに、メタノール、エタノールのプロトン供与性物質を用いた場合も本発明の効果が得られることを確認した。また、実施例1−5より、スチームをオレフィン重合体に接触させた場合も、本発明の効果が得られることが確認出来た。
【0124】
〔実施例2−1〕
重合時に有機アルミニウム化合物でP−2を溶解させたものを表3の配合量になるように供給して、オレフィンモノマーを重合して得たオレフィン重合体100質量部に対し、フェノール系酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05質量部、リン系酸化防止剤として、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト0.05質量部、ハイドロタルサイトとして、協和化学工業株式会社製商品名:DHT−4Aを0.05質量部、脂肪族カルボン酸金属塩として、ステアリン酸ナトリウム塩0.08質量部を配合し、各添加剤を添加・混合し、二軸押出機(株式会社池貝製PCM−30、押出温度:230℃、スクリュー回転速度50rpm)で造粒した。造粒の際に、オレフィン重合体を二軸押出機にフィードするまで窒素下で行い、さらに二軸押出機のヘッド部分と、スクリューの中央部付近で、ベントの引き込みを行いながら、オレフィン重合体のフィード口からベントまでの間に、スチームを15kPaの圧力、100ml/minの流量でバレル内に圧入し、ペレットを得た。
【0125】
〔実施例2−2〕
実施例2−1において、スチーム導入の代わりに、水分が窒素1に対する容積比で、1.0×10−3の窒素ガスを100ml/minの流量で導入した以外は、実施例2−1と同様に実施してペレットを得た。
【0126】
〔実施例2−3〕
上記実施例2−1において、造核剤がP−2の代わりに化合物1であるオレフィン重合体に変更した以外は、上記実施例2−1と同様に実施してペレットを得た。
【0127】
〔実施例2−4〕
上記実施例2−2において、造核剤がP−2の代わりに化合物1であるオレフィン重合体に変更した以外は、上記実施例2−2と同様に実施した。
【0128】
〔比較例2−1〕
上記実施例2−1において、オレフィン重合体の造粒の際に、スチームの導入及びベントの引き込みを行わなかった以外は、上記実施例2−1と同様に実施してペレットを得た。
【0129】
〔比較例2−2〕
上記実施例2−3において、オレフィン重合体の造粒の際に、スチームの導入及びベントの引き込みを行わなかった以外は、上記実施例2−3と同様に実施してペレットを得た。
【0130】
〔評価〕
上記各実施例、比較例で得られたペレットについて、ラボ用小型射出成形機(DSC Xplore社製Compounder15,Injection molder 12)にて射出温度230℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、50mm×50mm×2mmの平板状試験片を得た。
【0131】
得られた平板状試験片において、白濁の有無確認を行った。これらの結果について、それぞれ表3に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
表3の比較例2−1及び2−2より、本発明の製造方法を用いなかったオレフィン重合体の成形品は、充分な透明性が得られなかった。これらに対し、実施例2−1〜2−4より、本発明の製造方法で得たオレフィン重合体を用いた成形品は、良好な透明性が得られることが確認できた。
【0134】
以上より、本発明はオレフィン重合体を造粒加工する際に、水又はプロトン供与性物質を含んだ窒素ガス、或いは、スチームを押出機内に圧入することによって、優れた透明性を示す成形品が得られることが確認できた。