特許第5981406号(P5981406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5981406-電源供給装置 図000002
  • 特許5981406-電源供給装置 図000003
  • 特許5981406-電源供給装置 図000004
  • 特許5981406-電源供給装置 図000005
  • 特許5981406-電源供給装置 図000006
  • 特許5981406-電源供給装置 図000007
  • 特許5981406-電源供給装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981406
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】電源供給装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20160818BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B60R16/02 645Z
   B60R16/03 S
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-205047(P2013-205047)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67224(P2015-67224A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】津田 隆太
(72)【発明者】
【氏名】杉村 竹三
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−034442(JP,A)
【文献】 特開2003−237501(JP,A)
【文献】 特開2007−109993(JP,A)
【文献】 特開2000−125443(JP,A)
【文献】 特開2012−044757(JP,A)
【文献】 米国特許第05075821(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと複数の電気負荷を搭載した車両に用いられる電源供給装置であって、
前記電気負荷の少なくとも1つに接続されて前記バッテリからの電力を供給する、メタルコア基板上に形成された負荷電源供給部と、
前記負荷電源供給部に接続された前記電気負荷の少なくとも1つに供給する電力の電圧を昇圧または降圧して安定化させる、前記メタルコア基板とは別体の基板上に形成された電圧変換部と、を備え、
さらに、前記電圧変換部と前記負荷電源供給部との間で熱伝達を行わせるための熱結合構造部を備えており、
前記熱結合構造部は、前記メタルコア基板と、該メタルコア基板とは別体の前記基板と、を熱的かつ電気的に接続するコネクタである
ことを特徴とする電源供給装置。
【請求項2】
前記電圧変換部は、前記車両のエンジン始動時に前記バッテリの電圧が所定値以下に変動すると、前記電気負荷に供給する電力の電圧を所定の電圧範囲に安定化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の電源供給装置。
【請求項3】
前記負荷電源供給部は、接続先の前記電気負荷に供給する負荷電流が所定値以上に高いときは、前記電圧変換部を作動させないで前記接続先の電気負荷に電力を供給する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電源供給装置。
【請求項4】
前記負荷電源供給部の温度を測定する温度センサーと、
前記温度センサーから前記温度測定値を入力して前記電圧変換部の動作可否または動作制限を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に従って前記電圧変換部を動作させる、または停止させる、または所定の動作範囲で動作させる、のいずれかの制御を行う制御部と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電源供給装置。
【請求項5】
前記負荷電源供給部の負荷電流を測定する電流センサーと、
前記電流センサーから前記電流測定値を入力して前記電圧変換部の動作可否または動作制限を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に従って前記電圧変換部を動作させる、または停止させる、または所定の動作範囲で動作させる、のいずれかの制御を行う制御部と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電源供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリから電気負荷に電力を供給する電源供給装置に関し、特に電気負荷への供給電圧を安定化させる電圧変換装置を備えた電源供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、ECU等の制御ユニットや、照明器具、ディスプレイ、モータ、ソレノイド等の各種電気負荷が搭載されており、各電気負荷に安定した電圧で電力を供給する必要がある。そこで、負荷に安定した電圧の電力が供給されるように制御する電圧変換装置として、従来からDC/DCコンバータが用いられており、DC/DCコンバータで電圧を昇降圧させて電圧を安定化させている。
【0003】
また、EPSや電動エアコンなど搭載機器の電動化、大容量化に対応して、バッテリの電圧をDC/DCコンバータで昇圧してモータのインバータに電力を供給することが行われている。あるいは、42V系の主バッテリと14V系の副バッテリを備えた42V自動車電源システムでは、2つのバッテリ間にDC/DCコンバータを接続して電圧変換(昇降圧)している。さらに、車両が信号待ち等で一時停車したときにエンジンを一時的に自動停止させるアイドリングストップシステム(ISS)を搭載した車両では、エンジン再始動時にバッテリからスタータに大電流が供給されて電圧が低下することから、DC/DCコンバータで昇圧して各電気負荷に電力を供給するようにしている。
【0004】
ところで、DC/DCコンバータは電圧変換のためにインダクタ等を備えていることから、これが作動すると熱が発生して比較的大きな電力損失が生じるといった問題があった。そのため、作動時の熱を放熱することを目的に、放熱板や放熱ケースなどの放熱部品をDC/DCコンバータに設置しているが、これによりDC/DCコンバータが大型化している。
【0005】
DC/DCコンバータでの電力損失を低減するために、特許文献1では、バッテリ電圧が低下していると想定されるときにDC/DCコンバータで昇圧して負荷に電力供給する一方、十分な高さのバッテリ電圧を負荷に印加できる場合には、スイッチ手段を通じてDC/DCコンバータを介することなく給電するように電源装置が構成されている。
【0006】
また特許文献2には、アイドリングストップシステムを搭載した車両において、電圧変換装置としての電圧補償手段を用いてアイドリングストップを安定的に行う制御方法が記載されている。ここでは、所定のエンジン始動条件が成立してスタータ手段を作動させたのち、バッテリ電圧が所定の設定値以下に低下すると電圧補償手段を作動させて電圧を安定化させるようにしている。また、エンジン停止から所定時間が経過したとき、またはスタータ手段を作動させても始動完了しないときに、上記電圧補償手段の作動を禁止するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−237501号公報
【特許文献2】特開2002−38984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の電源装置では、DC/DCコンバータを用いる必要がないときはこれを介することなく負荷に給電できるように、DC/DCコンバータをバイパスさせるためのスイッチ手段が必要となるが、スイッチ手段が作動すると発熱するといった問題が生じる。DC/DCコンバータで発生した熱とスイッチ手段で発生した熱を十分に放熱できるようにするためには、DC/DCコンバータとスイッチ手段の各々の発熱に対して放熱部品を配置する必要があり、電源装置が全体として大型化してしまうといった問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載のアイドリングストップシステムを搭載した車両では、アイドリングストップ時にバッテリが甚だしく消耗した状況では、電圧補償手段の作動が禁止される旨が記載されている。しかしながら、電圧補償手段の作動を時間的に禁止するのみでは、電圧補償手段が作動する場合の放熱性能を考慮すると、放熱部品を小型化することはできず、電源供給装置の小型化には結びつかない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電気負荷に安定した電圧で電源供給するとともに、高い放熱性を有しかつ小型化が容易な電源供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の電源供給装置の第1の態様は、バッテリと複数の電気負荷を搭載した車両に用いられる電源供給装置であって、前記電気負荷の少なくとも1つに接続されて前記バッテリからの電力を供給する、メタルコア基板上に形成された負荷電源供給部と、前記負荷電源供給部に接続された前記電気負荷の少なくとも1つに供給する電力の電圧を昇圧または降圧して安定化させる、前記メタルコア基板とは別体の基板上に形成された電圧変換部と、を備え、さらに、前記電圧変換部と前記負荷電源供給部との間で熱伝達を行わせるための熱結合構造部を備えており、前記熱結合構造部は、前記メタルコア基板と、該メタルコア基板とは別体の前記基板と、を熱的かつ電気的に接続するコネクタであることを特徴とする。
【0012】
本発明の電源供給装置の他の態様は、前記電圧変換部は、前記車両のエンジン始動時に前記バッテリの電圧が所定値以下に変動すると、前記電気負荷に供給する電力の電圧を所定の電圧範囲に安定化させることを特徴とする。
【0014】
本発明の電源供給装置の他の態様は、前記負荷電源供給部は、接続先の前記電気負荷に供給する負荷電流が所定値以上に高いときは、前記電圧変換部を作動させないで前記接続先の電気負荷に電力を供給することを特徴とする。
【0015】
本発明の電源供給装置の他の態様は、前記負荷電源供給部の温度を測定する温度センサーと、前記温度センサーから前記温度測定値を入力して前記電圧変換部の動作可否または動作制限を判定する判定部と、前記判定部による判定結果に従って前記電圧変換部を動作させる、または停止させる、または所定の動作範囲で動作させる、のいずれかの制御を行う制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の電源供給装置の他の態様は、前記負荷電源供給部の負荷電流を測定する電流センサーと、前記電流センサーから前記電流測定値を入力して前記電圧変換部の動作可否または動作制限を判定する判定部と、前記判定部による判定結果に従って前記電圧変換部を動作させる、または停止させる、または所定の動作範囲で動作させる、のいずれかの制御を行う制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気負荷に安定した電圧で電源供給するとともに、高い放熱性を有しかつ小型化が容易な電源供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る電源供給装置の構成の一例を示す平面図及び断面図である。
図2】第1実施形態に係る電源供給装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る電源供給装置の構成の一例を示す平面図及び断面図である。
図4】第2実施形態に係る電源供給装置の構成を示すブロック図である。
図5】第3実施形態に係る電源供給装置の構成を示すブロック図である。
図6】従来の電源供給装置におけるワイヤハーネスの接続状態を示すブロック図である。
図7】第1実施形態に係る電源供給装置におけるワイヤハーネスの接続状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態における電源供給装置について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。本発明は、車両に搭載されたバッテリから複数の電気負荷に電力を供給する電源供給装置に係るものであり、特にアイドリングストップシステムのように、バッテリ電圧を大きく変動させる電気負荷を搭載した車両に好適な電源供給装置を提供するものである。アイドリングストップシステムを搭載した車両では、エンジンの再始動時にバッテリ電圧が大きく変動するため、安定した電圧で電源供給される必要のある電気負荷に対しては、短時間に大きな電流を流して電圧を安定化させる電圧変換装置が用いられている。電圧変換装置は、短時間に大きな電流を流したときに大きな発熱を伴う。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る電源供給装置を、図1、2を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の電源供給装置100の構成の一例を示す平面図及び断面図である。同図(b)に示す断面図は、同図(a)に示す平面図のA−A断面で切断したときの断面図である。また図2は、電源供給装置100の構成を示すブロック図である。電源供給装置100は、バッテリ10から所定の電気負荷20に電力を供給するための負荷電源供給部110と、電気負荷20への供給電圧を安定化させるための電圧変換装置120を備えており、電圧変換装置120が熱結合構造部130を介して負荷電源供給部110に接続されている。
【0022】
負荷電源供給部110は、例えばバッテリ10と電気負荷20との間に配置されたジャンクションボックス(J/B)であり、以下の説明では単にJ/B110とする。本実施形態では、J/B110の基板111に放熱性の高いものを用いている。ここでは、基板111として、中心に熱伝導性の高い金属板(メタルコア)111aを配置して樹脂で挟んだ構造のメタルコア基板を用いている。基板111はこれに限定されず、例えばバスバーや厚銅箔を備えた基板等であってもよい。
【0023】
電圧変換装置120は、バッテリ電圧が大きく変動した場合に、電気負荷20へ供給する電力の電圧(給電電圧)を所定の電圧範囲内に安定化させる必要があるとき、給電電圧を昇圧または降圧させるものであり、例えばDC/DCコンバータが用いられる。以下では、電圧変換装置120としてDC/DCコンバータを用いた場合について説明するものとし、DC/DCコンバータ120とする。
【0024】
アイドリングストップシステムを搭載した車両では、アイドリングストップ後にエンジンを再始動させるために、スタータに大きな電流が供給される。その結果、バッテリ電圧が一時的に大きく降下する。一方、安定した電圧で電力供給される必要のある電気負荷20に対しては、降下したバッテリ電圧をDC/DCコンバータ120により所定の電圧まで昇圧させて電源供給している。なお、DC/DCコンバータ120は、バッテリ電圧を昇圧させるだけでなく、降圧させる、あるいは昇圧と降圧の両方を行うものであってもよい。
【0025】
エンジンを再始動させたときにバッテリ電圧が一時的に大きく降下すると、電圧を安定化させるためにDC/DCコンバータ120にも一時的に大きな電流が流される。DC/DCコンバータ120にはインダクタ等の発熱部品121が用いられていることから、一時的に大きな電流が流されると発熱部品121で短時間だけ大きな熱が発生する。
【0026】
本実施形態の電源供給装置100では、DC/DCコンバータ120で発生した熱を均熱化して効率的に放熱させるために、熱結合構造部130を用いてDC/DCコンバータ120の発熱をJ/B110に伝熱させるようにしている。これにより、DC/DCコンバータ120の発熱が、J/B110にも均熱化されて放熱することが可能となる。図1では、DC/DCコンバータ120の基板122にもメタルコア基板を用いているが、この場合には基板122のメタルコア122aからJ/B110側の基板111のメタルコア111aに効率的に熱伝達されるように熱結合構造部130を構成するのがよい。
【0027】
図1では、DC/DCコンバータ120の基板122にメタルコア基板を用いた一例を示しているが、これに限定されず、発熱部品121における発熱を伝達する別の熱伝達手段がDC/DCコンバータ120に設けられていてもよい。その場合には、熱結合構造部130をDC/DCコンバータ120の別の熱伝達手段に接続すればよい。
【0028】
熱結合構造部130は、DC/DCコンバータ120とJ/B110との間で熱伝達を良好に行わせるような構造を有している。良好な熱伝達が行える熱結合構造部130として、例えばヒートパイプを用いることができる。あるいは、熱伝導性樹脂材料を用いて形成してもよい。
【0029】
熱結合構造部130は、DC/DCコンバータ120とJ/B110との間で良好な熱伝達を行うとともに、DC/DCコンバータ120とJ/B110とを電気的に接続するように構成することも可能である。その場合、熱結合構造部130としてコネクタを用いることができ、熱伝達特性を高めたコネクタとすることができる。一例として、導体部分を厚くした(導体の断面積を大きくした)コネクタとすることができる。あるいは、金属で形成された熱結合部を備えたコネクタとすることも可能である。このようなコネクタを用いることにより、DC/DCコンバータ120をJ/B110に電気的に接続するとともに、熱的にも両者を接続して均熱化を容易にすることができる。
【0030】
本実施形態の電源供給装置100は、DC/DCコンバータ120を用いて電気負荷に安定した電圧で電源供給することができるとともに、高い放熱性を実現しかつ小型化が容易な構成となっている。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る電源供給装置を、図3、4を用いて以下に説明する。図3は、本実施形態の電源供給装置200の構成の一例を示す平面図及び断面図である。同図(b)に示す断面図は、同図(a)に示す平面図のA−A断面で切断したときの断面図である。また図4は、電源供給装置200の構成を示すブロック図である。本実施形態の電源供給装置200では、J/B210に発熱部品のリレー212が配置されている。
【0032】
リレー212は、例えばDC/DCコンバータ120の使用をオン/オフさせるのに用いられる。すなわち、DC/DCコンバータ120を用いて電気負荷20への供給電圧を安定化させるときは、J/B210からDC/DCコンバータ120を経由して電気負荷20に電力を供給する接続状態にリレー212を作動させる。一方、電気負荷20への供給電圧を安定化させる必要がない、あるいはDC/DCコンバータ120の作動が不可のときは、DC/DCコンバータ120をバイパスする接続状態にリレー212を作動させる。
【0033】
一般に、アイドリングストップシステムを搭載した車両では、電気負荷への電源供給が過大なときは、アイドリングストップを行わないようにしている。これは、電気負荷への電源供給が大きいときにアイドリングストップを行うと、エンジン停止中にバッテリの充電率が低下し、エンジンを再始動するときに電気負荷に必要な電源供給が行えなくなるおそれがあるためである。本実施形態の電源供給装置200では、アイドリングストップが行われないときは、DC/DCコンバータ120をバイパスするようにリレー212を作動させることができる。
【0034】
DC/DCコンバータ120の接続状態を切り替えるためにリレー212に電流を流して作動させると、リレー212が一時的に発熱し、この熱が基板211に伝達されて均熱化される。リレー212とDC/DCコンバータ120は同時には作動しないことから、リレー212からの発熱とDC/DCコンバータ120からの発熱が同時に基板211に伝達されることはない。これより、基板211は、リレー212からの発熱量とDC/DCコンバータ120からの発熱量のいずれか大きい方を均熱化して放熱できるだけの放熱特性を有していればよく、基板211を大型化する必要はない。
【0035】
上記では、基板211にリレー212が設けられ、リレー212からの発熱を均熱化する場合について説明したが、リレー212からの発熱に限定されず、例えば基板211上の回路パターン(図示せず)に一時的に大きな電流が流れて発熱する場合であってもよい。この場合、基板211の発熱がDC/DCコンバータ120での発熱と同時に発生しないものであれば、上記と同様に均熱化させて放熱することができ、基板211を大型化する必要はない。
【0036】
上記のように、一般に、アイドリングストップシステムを搭載した車両では、電気負荷への電源供給が過大なときは、アイドリングストップを行わないようにしている。電気負荷への電源供給が大きいときは、電源供給装置200のDC/DCコンバータ120以外の基板211に流れる電流が大きくなる。よって、基板211からDC/DCコンバータ120へ伝熱し、均熱化される。逆に、電気負荷への電源供給が小さいときには、アイドリングストップが行われる。この場合には、電源供給装置200のDC/DCコンバータ120以外の基板211に流れる電流は小さく、熱的には余裕がある。よって、エンジンの再始動時にDC/DCコンバータ120の負荷が大きくなり、発熱したとしても、DC/DCコンバータ120の熱が基板211に伝熱し、均熱化される。つまり、アイドリングストップシステムを搭載した車両では、リレー212以外にも、基板211の過度の発熱がDC/DCコンバータ120での過度の発熱と同時に発生しないように制御されることになり、電源供給装置200の小型化の効果が得られる。
【0037】
本実施形態の電源供給装置200では、基板211側で大きな発熱が発生する場合であっても、これがDC/DCコンバータ120での発熱と同時に発生しない限り、第1実施形態の電源供給装置100と同様に、基板211を大型化することなく均熱化することができる。本実施形態の電源供給装置200は、第1実施形態の電源供給装置100と同様に、高い放熱性を実現しかつ小型化が容易な構成となっている。
【0038】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る電源供給装置を、図5を用いて以下に説明する。図5は、本実施形態の電源供給装置300の構成を示すブロック図である。本実施形態の電源供給装置300でも、第2実施形態の電源供給装置200と同様に、J/B310側でリレー312に電流が流れて一時的に発熱があるものとしている。但し、リレー312からの発熱に限定されず、基板211側で一時的に大きな発熱を発生するものであればよい。
【0039】
本実施形態の電源供給装置300では、リレー312による基板311上の発熱とDC/DCコンバータ120における発熱とが同時に発生しないようにするために、基板311の温度を測定するための温度センサー341と、DC/DCコンバータ120の動作可否を判定するための判定部342と、DC/DCコンバータ120の動作を制御する制御部343とを備えている。温度センサー341で測定された基板311の温度は、判定部342に入力されて所定の判定に用いられる。
【0040】
なお、ここでは温度センサー341を設けて基板311の温度を測定するようにしているが、これに限定されず、例えば基板311に流れる電流を測定する電流センサーを設け、電流センサーで測定された電流を判定部342の判定に用いるようにしてもよい。
【0041】
判定部342は、温度センサー341から基板311の温度を入力し、これが所定の閾値温度を超えるか否かを判定する。基板311の温度が所定の閾値温度を超えると判定すると、判定部342は制御部343に対してDC/DCコンバータ120を動作させないようにする要求信号を出力する。あるいは、基板311の温度が閾値温度を超える度合いに応じて、DC/DCコンバータ120の動作を制限する要求信号を制御部343に出力する。
【0042】
制御部343は、判定部342から入力した要求信号に応じて、DC/DCコンバータ120を動作させない、あるいは動作を制限するようにDC/DCコンバータ120を制御する。制御部343がDC/DCコンバータ120を動作させない要求信号を入力したときは、DC/DCコンバータ120が作動しないように直接制御するのに代えて、DC/DCコンバータ120をバイパスするようにリレー312を制御してもよい。
【0043】
また、制御部343がDC/DCコンバータ120の動作を制限する要求信号を入力したときは、DC/DCコンバータ120の出力電圧を例えば12Vから11Vに下げる、あるいは許容電流を5Aから4Aに下げる、等の処理を行う。これにより、DC/DCコンバータ120で消費される電力量が低減され、DC/DCコンバータ120での発熱を低減することができる。
【0044】
本実施形態の電源供給装置300では、上記のような構成を有することにより、基板311側での大きな発熱とDC/DCコンバータ120での発熱とが同時に発生しないように制御することが可能となっている。これにより、基板311を大型化することなく均熱化することができる。本実施形態の電源供給装置300は、第1実施形態の電源供給装置100と同様に、高い放熱性を実現しかつ小型化が容易な構成となっている。
【0045】
上記説明の第1乃至第3実施形態の電源供給装置100、200及び300は、いずれも熱結合構造部130を用いてDC/DCコンバータ120をJ/B110または210または310に接続することで両者を一体化している。これに対し従来の電源供給装置では、例えば図6に示すように、DC/DCコンバータ92がワイヤハーネス93でJ/B91に接続されていた。同図(a)に示す従来例では、J/B91とDC/DCコンバータ92との間、及びDC/DCコンバータ92と電気負荷20との間が、それぞれワイヤハーネス93で接続されていた。また、同図(b)に示す別の従来例では、DC/DCコンバータ92と電気負荷20との間の接続が、J/B91を経由してワイヤハーネス93で接続されており、ワイヤハーネス93がさらに長くなっていた。
【0046】
ワイヤハーネス93は、ノイズを放射するアンテナとして作用するおそれがあることから、ワイヤハーネス93が長くなると、それだけノイズの影響を受けやすくなる。また、ワイヤハーネス93の配線スペースを確保するために電源供給装置が大型化したり重量化するといった問題もある。
【0047】
これに対し上記実施形態の電源供給装置100、200及び300では、J/B110または210または310とDC/DCコンバータ120とが一体化されたたことで、J/B110等とDC/DCコンバータ120との間のワイヤハーネスが不要となっている。一例として、第1実施形態の電源供給装置100では、図7に例示するように、DC/DCコンバータ120と電気負荷20との間だけがワイヤハーネス30で接続されている。
【0048】
本発明の電源供給装置は、ノイズを放射するアンテナとしてのワイヤハーネスを削減することができ、これによりワイヤハーネスから放射されるノイズを低減することが可能となる。また、ワイヤハーネスの配線スペースを小さくして電源供給装置の小型化・軽量化を図ることができるとともに、ワイヤハーネスの引き回し作業等を軽減することができる。
【0049】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る電源供給装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における電源供給装置の細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 バッテリ
20 電気負荷
30 ワイヤハーネス
100、200、300 電源供給装置
110、210、310 負荷電源供給部(J/B)
111、211、311 基板
111a メタルコア
120 電圧変換装置(DC/DCコンバータ)
121 発熱部品
122 基板
122a メタルコア
130 熱結合構造部
212、312 リレー
341 温度センサー
342 判定部
343 制御部



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7