(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フォーマと超電導導体層とを有するケーブルコアと、前記ケーブルコアを収容し、内管と外管からなる断熱構造を有する断熱管とを備える超電導ケーブルの固定構造であって、
前記断熱管と接続され、内壁と外壁からなる断熱構造を有し、前記ケーブルコアが貫通する固定ボックスと、
前記ケーブルコアを前記固定ボックスの内壁に固定する固定体とを有し、
前記固定ボックスの内壁の内側には冷媒が流通可能であり、
前記ケーブルコア上に形成され、両端部に向かって縮径した絶縁層である拡径補強層を有し、
前記ケーブルコアは、前記拡径補強層を介し前記固定体により前記内壁に固定されており、
前記ケーブルコアは、前記超電導導体層の外周に電気絶縁層を有し、前記固定ボックス内において、前記ケーブルコアは、前記電気絶縁層の接続部を有する中間接続部を有し、
前記中間接続部の前記電気絶縁層の接続部の外周には、前記中間接続部ではない部分の電気絶縁層の外径よりも大きな拡径補強絶縁層を有することを特徴とする超電導ケーブルの固定構造。
前記拡径補強絶縁層は、前記中間接続部における2つのケーブルコアのテーパー状の電気絶縁層の間に積層された電気絶縁層と前記テーパー状と、前記電気絶縁層の間に積層された電気絶縁層の絶縁層のつなぎ目を覆うように積層されたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの固定構造。
前記複数の固定ボックス内の冷媒は前記固定体を挟んで前記超電導ケーブルに沿って流通せず、前記冷媒流通孔に接続された前記冷媒輸送管を介して他の固定ボックスに流通する構造となっていることを特徴とする請求項12に記載の超電導ケーブル線路の固定構造。
前記循環冷却部は、前記第一の冷媒経路と前記第二の冷媒経路のそれぞれについて、前記冷凍機の冷却部位に流入する流入経路と前記冷凍機を回避するバイパス経路とを備え、
前記流入経路と前記バイパス経路の冷媒の流量を調節して冷媒の温度制御を行うことを特徴とする請求項14又は15記載の超電導ケーブル線路の固定構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は電力ケーブルの固定構造では、構造が複雑であり、部品点数が多く、コストが高くなるという問題があった。
また、特許文献1の固定構造では、弾性体とピンが直接導体に接続されていることから、高電圧の導体部分から接地されたケース部分間の沿面に存在する角部や突起部において電界が集中する。そのため、特許文献1の固定構造では、発生する電界集中を緩和できるような形状及び絶縁ユニットの絶縁設計が必要となる
。
【0006】
また、超電導ケーブルはケーブルコアの周囲に冷媒を供給してコアの冷却をはかる必要あるが、特許文献1の固定構造は、単なる電力ケーブルの固定構造であることから、ケーブルコアの周囲に冷媒を通す経路が存在せず、ケーブルに沿って冷媒を循環させることができなかった。
【0007】
ところで、超電導ケーブルは超電導導体をマイナス200℃近辺の極低温にまで冷却しなければ超電導の特徴を十分発揮できない。従って、超電導ケーブルは、液体窒素に代表される冷媒を介して64〜77K近辺まで冷却されるが、当該冷媒を冷却するに当たっては、極低温まで冷却することが可能な非常に高価な冷凍システムが必要となる(例えば特許文献2参照)。
また、極低温用冷凍機のエネルギー消費効率(COP:Coefficient of Performance)は0.06程度と非常に低く、冷却のためのランニングコストである電気料金も膨大となることから、効率の改善が求められている。
更に、送電システムはインフラに関わる信頼性を要求されるシステムでもあり、定期的なメンテナンスが必要となる。従って、超電導送電システムにとって冷凍システムはイニシャルコストだけでなく、ランニングコストやメンテナンスコストも大きな負担となっている。
即ち、超電導ケーブルの敷設には、非常に大きなイニシャルコスト、ランニングコストとメンテナンスコストが必要となることから、これらコスト低減が望まれていた。
【0008】
本発明は、超電導ケーブルに沿った液体の冷媒の循環経路を確保しつつ複雑な絶縁設計が不要なケーブルの固定を可能とする超電導ケーブル及び超電導ケーブル線路の固定構造を提供することをその目的とする。
また、本発明は、イニシャルコスト、ランニングコスト及びメンテナンスコストの低減を図ることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、
フォーマと超電導導体層とを有するケーブルコアと、前記ケーブルコアを収容し、内管と外管からなる断熱構造を有する断熱管とを備える超電導ケーブルの固定構造であって、
前記断熱管と接続され、内壁と外壁からなる断熱構造を有し、前記ケーブルコアが貫通する固定ボックスと、
前記ケーブルコアを前記固定ボックスの内壁に固定する固定体とを有し、
前記固定ボックスの内壁の内側には冷媒が流通可能であり、
前記ケーブルコア上に形成され、両端部に向かって縮径した絶縁層である拡径補強層を有し、
前記ケーブルコアは、前記拡径補強層を介し前記固定体により前記内壁に固定されて
おり、
前記ケーブルコアは、前記超電導導体層の外周に電気絶縁層を有し、前記固定ボックス内において、前記ケーブルコアは、前記電気絶縁層の接続部を有する中間接続部を有し、
前記中間接続部の前記電気絶縁層の接続部の外周には、前記中間接続部ではない部分の電気絶縁層の外径よりも大きな拡径補強絶縁層を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記固定体は前記拡径補強層の外周面形状に応じた形状のスリーブを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記ケーブルコアの前記拡径補強層の周囲に補強層を有し、
前記固定体は、前記補強層を介して前記拡径補強層
を保持することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記ケーブルコアと前記固定体とを接着結合する結合部を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記拡径補強絶縁層は、前記中間接続部における2つのケーブルコアのテーパー状の電気絶縁層の間に積層された電気絶縁層と前記テーパー状と、前記電気絶縁層の間に積層された電気絶縁層の絶縁層のつなぎ目を覆うように積層されたことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記拡径補強絶縁層は、絶縁性紙類により巻回されていることを特徴する。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、
更に前記ケーブルコアを前記内壁に固定する補助固定体を少なくとも一つ有し、
前記補助固定体を、前記ケーブルコアの外周を保持する金属輪を介し棒状又はブロック状の固定金具で前記内壁に固定する構造とすることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記固定体を、前記ケーブルコアの外周を覆うスリーブを介し棒状又はブロック状の固定金具で前記内壁に固定する構造とすることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記固定体は、前記固定ボックスの内部領域を二分するように前記内壁に固定され、
前記固定ボックスには、前記固定体を挟んでその両側にそれぞれ一つ以上の冷媒流通孔が形成され、前記冷媒流通孔において前記内壁と前記外壁とが結合されていることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記冷媒流通孔に冷媒輸送管が接合されていることを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記固定体を挟んでその両側に形成された前記冷媒流通孔同士が前記冷媒輸送管によって接続されていることを特徴と
する。
【0021】
請求項12記載の発明は、
請求項10に記載の固定構造を用いて複数の超電導ケーブルを固定する固定構造であって、
前記複数の超電導ケーブルは各々固定ボックスを有し、当該各固定ボックス同士が前記冷媒流通孔に接続された前記冷媒輸送管を介して接続されていることを特徴とする。
【0022】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記複数の固定ボックス内の冷媒は前記固定体を挟んで前記超電導ケーブルに沿って流通せず、前記冷媒流通孔に接続された前記冷媒輸送管を介して他の固定ボックスに流通する構造となっていることを特徴とする。
【0023】
請求項14記載の発明は、請求項9又は10の固定構造を用いると共に、
前記超電導ケーブルが平行に複数列配設されると共に、これら複数列の超電導ケーブルに循環冷却部が前記固定ボックスを介して一定の間隔で架設され、
前記循環冷却部は、
複数の前記超電導ケーブルの冷媒経路に連通する第一の冷媒経路と、
他の複数の前記超電導ケーブルの冷媒経路に連通する第二の冷媒経路と、
前記第一の冷媒経路内と前記第二の冷媒経路内で各々循環する冷媒を冷却する一台の冷凍機とを有し、
前記第一の冷媒経路と前記第二の冷媒経路とが、前記固定体を挟んでその両側に設けられた各々の前記冷媒流通孔を通じて前記固定ボックス間を接続することを特徴とする。
【0024】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記循環冷却部は、前記第一の冷媒経路と前記第二の冷媒経路のいずれか一方にのみ冷媒の循環ポンプを設けたことを特徴とする。
【0025】
請求項16記載の発明は、請求項14又は15記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記循環冷却部は、前記第一の冷媒経路と前記第二の冷媒経路のそれぞれについて、前記冷凍機の冷却部位に流入する流入経路と前記冷凍機を回避するバイパス経路とを備え、
前記流入経路と前記バイパス経路の冷媒の流量を調節して冷媒の温度制御を行うことを特徴とする。
【0026】
請求項17記載の発明は、請求項14から16のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記循環冷却部の第一の冷媒経路及び第二の冷媒経路は、その前後で異なる列の超電導ケーブルに冷媒を導くことを特徴とする。
【0027】
請求項18記載の発明は、請求項14から16のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、
前記循環冷却部の第一の冷媒経路及び第二の冷媒経路は、その前後で同じ列の超電導ケーブル冷媒を導くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、縮径した絶縁層である拡径補強層を介してケーブルコアを固定ボックスの内壁に固定するで、簡易な構造により堅牢にケーブルコアを固定することが可能である。
また、ケーブルコア上にその両端部に向かって縮径した拡径補強層を形成し、固定体が拡径補強層を介してケーブルコアを固定するので、ケーブルコアの周囲やその固定構造において角部や突起が少ない構造としたので、電界集中が生じにくく、絶縁性能が高い電界設計となっている。
【0029】
また、固定体が拡径補強層の外周面形状に応じた形状のスリーブを有する構成とした場合には、当該スリーブによりケーブルコアを固定ボックスの内壁に固定するので、簡易な構造により堅牢にケーブルコアを固定することが可能である。
【0030】
また、固定ボックスの内壁と外壁とを冷媒流通孔の位置において結合し、かつ、固定体を設けて超電導ケーブルのケーブルコアと固定ボックスの内壁を固定する構造とした場合には、固定ボックスの外壁または断熱管の外管を固定するだけで堅牢にケーブルコアを固定することが可能である。さらに、固定ボックスが冷媒流通孔を有するので、内壁の内部領域を二分するように固定体を設けて超電導ケーブルを固定し、固定体により冷媒の流通が妨げられる場合であっても冷媒流通孔を介して冷媒の流通を確保することが可能である。
さらに、固定ボックスの内壁と外壁とは、冷媒流通孔の位置において結合されているので、結合部位を最小限とし、結合部位から内部への熱侵入を低減することが可能となっている。
【0031】
さらに、循環冷却部が、第一の冷媒経路と第二の冷媒経路の冷媒の冷却を一台の冷凍機で共用して行う構成とした場合には、極低温を実現する高価な冷凍機の個体数を低減することができ、超電導ケーブルの布設設備のイニシャルコストを飛躍的に低減することが可能である。
また、冷凍機の個体数を低減することにより、そのメンテナンスコストも飛躍的に低減することが可能である。
また、冷凍機を2台から1台にまとめることにより、モーター等の個数が半減するため、モーターの軸受け等における摩擦発熱による機械的損失が小さくなり、冷凍効率を向上させることができる。更に、冷却システムの設置スペース同一出力で比較すると約50%に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施形態の概略]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は実施形態に係る超電導ケーブルの固定構造を適用した超電導ケーブルの布設例を示す概略図、
図2は布設される超電導ケーブルの一例を示す図である。
図1に示すように、超電導ケーブル10は、電力の供給元と供給先とに配設した終端接続部30、30の間を複数の超電導ケーブル10で接続し、超電導ケーブル10と超電導ケーブル10とが中間接続部15で連結されている。更に、終端接続部30、30の間には、固定構造としての中間固定部20を形成して、超電導ケーブル10を安定的に保持している。
【0034】
[超電導ケーブル]
図2に示す超電導ケーブル10は、断熱管12内に一心のケーブルコア11が収納された単心型の超電導ケーブルである。ケーブルコア11は、フォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116等により構成される。
【0035】
フォーマ111は、ケーブルコア11を形成するための巻心であり、例えば銅線等の常電導線材を撚り合わせて構成される。フォーマ111には、短絡事故時に超電導導体層112に流れる事故電流が分流される。
【0036】
超電導導体層112は、フォーマ111の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。
図2では、超電導導体層112を4層の積層構造としている。超電導導体層112には、定常運転時に送電電流が流れる。
超電導導体層112を構成する超電導線材は、例えば、テープ状の金属基板上に中間層、超電導層、保護層等が順に形成された積層構造を有している。超電導層を構成する超電導体には、液体窒素温度以上で超電導を示すRE系超電導体(RE:希土類元素)、例えば化学式YBa
2Cu
3O
7δで表されるイットリウム系超電導体(以下、Y系超電導体)が代表的である。また、金属マトリクス中に超電導体が形成されているテープ状の超電導線材でもよい。超電導体には、ビスマス系超電導体、例えば化学式Bi
2Sr
2CaCu
2
O
8+δ(Bi2212), Bi
2Sr
2Ca
2Cu
3O
10+δ(Bi2223)を適用できる。
なお、化学式中のδは酸素不定比量を示す。
【0037】
電気絶縁層113は、絶縁性紙類、例えば絶縁紙、絶縁紙とポリプロピレンフィルムを接合した半合成紙、高分子不織布テープなどで構成され、超電導導体層112の上に巻回することにより積層状態で形成される。
【0038】
超電導シールド層114は、電気絶縁層113の上に複数条の超電導線材を螺旋状に巻回することにより形成される。
図2では、超電導シールド層114を2層の積層構造としている。超電導シールド層114には、定常運転時に電磁誘導によって導体電流とほぼ同じ電流が逆位相で流れる。超電導シールド層114を構成する超電導線材には、超電導導体層112と同様のものを適用できる。
【0039】
常電導シールド層115は、超電導シールド層114の上に銅線などの常電導線材を巻回することにより形成される。常電導シールド層115には、短絡事故時に超電導シールド層114に流れる事故電流が分流される。
保護層116は、例えば絶縁紙、高分子不織布などで構成され、常電導シールド層115の上に巻回することにより形成される。
【0040】
断熱管12は、ケーブルコア11を収容するとともに冷媒(例えば液体窒素)が充填される断熱内管121と、断熱内管121の外周を覆うように配設された断熱外管122からなる二重管構造を有している。
断熱内管121及び断熱外管122は、例えばステンレス製のコルゲート管(波付き管)である。断熱内管121と断熱外管122の間には、例えばアルミを蒸着したポリエチレンフィルムの積層体で構成された多層断熱層(スーパーインシュレーション)123が介在され、真空状態に保持される。また、断熱外管122の外周はポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンなどの防食層124で被覆されている。
【0041】
また、断熱内管121の内側には、ケーブルコア11が挿通されると共に冷媒が循環する。即ち、この断熱内管121の内部領域が、超電導ケーブル10の冷媒経路となっている。
【0042】
[中間固定部:全体]
図3は中間固定部20における超電導ケーブル10の固定構造を示す断面図である。中間固定部20は超電導ケーブル10を内側に収容する円筒状の固定ボックス21と、固定ボックス21の内部に於いて、超電導ケーブル10を保持する固定体とを備えている。この固定体は、超電導ケーブル10を内側に保持するスリーブとしての固定ブロック22と、固定ブロック22を固定ボックス21内に固定する固定金具23とから構成される。
さらに、固定ボックス21には、ケーブル線路の長手方向中央に位置する固定金具23を挟んだ配置でその両側に冷媒流通孔25a,25bを有している。
【0043】
[中間固定部:固定ボックス]
固定ボックス21は超電導ケーブルの布設経路上における中間固定部20の布設目的位置に固定状態で設置される。
この固定ボックス21は、その両端部に超電導ケーブル10の断熱管12の端部が溶接により接続されている。そして、各断熱管12が接続される端部壁面には、断熱内管121の内部領域と固定ボックス21の内部流域では、ケーブルコア11を冷却するための液体の冷媒(例えば、液体窒素)が循環されており、超電導ケーブル10の断熱内管121と固定ボックス21(厳密には後述する内壁211の内部)との間で液体の冷媒の流通が行われる。
【0044】
この固定ボックス21は、円筒状の内壁211と外壁212の二重壁面構造を有している。
内壁211は、
図4に示すように、ケーブルの長手方向(以下、ケーブル方向という)の一方と他方とについて二分割した円筒部をさらにケーブル方向に沿った割断面で二分割した四つの壁面部材211a〜211dから構成されている。なお、壁面部材211aと211b、壁面部材211cと211dで構成される二つの円筒部の間には、後述する固定金具23を挟み込んでおり、壁面部材211a〜211dと固定金具23とはすべて溶接により一体化されている。
【0045】
また、内壁211のケーブル方向における両端部は端部壁面211e,211fにより閉塞され、当該端部壁面211e,211fには中央にケーブルコア11を挿入する貫通穴が形成されている。そして、当該貫通穴には直管211g,211hを介して超電導ケーブル10の断熱管12の断熱内管121が接続される。なお、壁面部材211a〜211d、端部壁面211e,211f、直管211g,211h及び断熱内管121も全て溶接により接合される。
【0046】
また、壁面部材211aと211cの上部には、内壁211の内部に対して冷媒の流通を行うための貫通穴が形成されており、これらの貫通穴にはそれぞれ冷媒流通孔25a,25bを構成する内管251a、251bが溶接により接続されている。
【0047】
外壁212は、内壁211の全体を内側に格納しており、
図5に示すように、ケーブル方向に沿った円筒部を当該ケーブル方向に沿った割断面で二分割した壁面部材212a、212bから構成されている。なお、外壁212は、内壁211の外径よりも内径が大きく、ケーブル方向に沿った長さも内壁211よりも長く、これにより、外壁212は内壁211を完全に内側に収容することを可能としている。なお、壁面部材212aと211bとは溶接により一体化されている。
【0048】
また、外壁212のケーブル長手方向における両端部は端部壁面212e,212fにより閉塞され、当該端部壁面212e,212fには中央にケーブルコア11を挿入する貫通穴が形成されている。そして、当該貫通穴には直管212g,212hを介して超電導ケーブル10の断熱管12の断熱外管122が接続される。なお、壁面部材212a,212b、端部壁面212e,212f、直管212g,212h及び断熱外管122も全て溶接により接合される。
【0049】
また、壁面部材212aの上部には、外壁212の内側に格納された内壁211の内部に対して冷媒の流通を行うための二つの貫通穴がケーブル方向に沿って並んで形成されており、これらの貫通穴にはそれぞれ冷媒流通孔25a,25bを構成する外管252a、252bが溶接により接続されている。
【0050】
前述したように、外壁212は内壁211を内部に収容し、これにより外壁212と内壁211の二重壁構造を形成する。そして、外壁212は内壁211との間の領域は真空引きが行われて断熱構造が形成される。
なお、超電導ケーブル10の断熱内管121と断熱外管122との間の内部領域も真空引きにより断熱構造が施されるが、当該断熱管12の内部領域と固定ボックス21の二重壁面の内部領域とを連通して、これらを同時に真空引きする事を可能としても良い。
【0051】
冷媒流通孔25a(25b)は、
図6に示すように、前述した内管251a(251b)と内管251a(251b)を内側に挿通させた外管252a(252b)と、内管251a(251b)と外管252a(252b)の双方の上端部に溶接により接合されて内管251a(251b)と外管252a(252b)との隙間空間を密閉する円板253a(253b)とを備えている。
円板253a(253b)は、外管252a(252b)よりも外径が大きく、その中央部には内管251a(251b)の内径と同一の径の貫通穴が形成され、当該貫通穴と内管251a(251b)とにより冷媒の流通を行っている。
【0052】
冷媒流通孔25a(25b)には、内管251a(251b)に対して冷媒輸送管30が挿入接続される。当該冷媒輸送管30は、内管31と外管32とからなる二重構造であり、その挿入端部が閉塞されている。そして、内管31と外管32との隙間空間は真空引きされて断熱構造が形成されている。
また、冷媒輸送管30の挿入端部近傍には、フランジ部33が形成されており、当該フランジ部は33は、前述した冷媒流通孔25a(25b)の円板
253a(253b)ほぼ等しい外径であり、フランジ部は33と円板
253a(253b)とはボルト締めにより連結されている。
また、内管251a(251b)と冷媒輸送管30との間にはOリングなどのシール部材を介挿しても良い。
【0053】
配管の端部は熱侵入が生じやすい部位だが、冷媒流通孔25a(25b)と冷媒輸送管30とは、いずれも二重管構造でその間は真空化により断熱構造が施されると共に、一方に他方が挿入される連結構造を採っているため、熱侵入を防ぎ、内部冷媒の温度上昇を小効果的に防止することが可能となっている。
【0054】
[中間固定部:固定ブロック]
図3のように、固定体により固定されて超電導ケーブル10のケーブルコア11は、その最外層である保護層116の表面に絶縁紙類を巻き付けて積層した拡径補強層201が形成されている。かかる拡径補強層201は、ケーブル方向中央部には外径が均一なる等径部201aが形成され、両端部には中央部から離れるにつれて徐々に縮径してケーブルコア11と同じ径に至るテーパー部201b,201bが形成されている。なお、この拡径補強層201は、ケーブルコア11に沿って滑りを生じないように、絶縁紙類は固く巻き付けが行われている。
そして、上記拡径補強層201の外周面上には、メッキ銅線を層状に巻回して補強層202が形成されている。かかる補強層202は、銅の編組線を積層して形成しても良い。
補強層202の外周形状は、下層の拡径補強層201の形状に応じて両端にテーパーを有する拡径部が形成されている。
【0055】
固定体の固定ブロック22は、円筒状であって、拡径補強層201及び補強層202を介してケーブルコア11を挿通させた状態で保持を行う。
補強層202は、ケーブル方向について、おおむね固定ブロック22の保持範囲と同じ範囲に渡って形成されており、この補強層202は、所定の厚さを有する巻回されたメッキ銅線層又は銅の編組線層であることから、超電導ケーブル10のケーブルコア11を固定ブロック22が保持した状態において、緩衝材としての機能を果たし、温度変化により熱伸縮時などにケーブルコア11を保持することを可能とする。
【0056】
固定ブロック22は、その外部形状がケーブルの長手方向における両端部が縮径した略円筒状に形成されている。また、固定ブロック22の内側には、拡径補強層201により拡径した補強層202の拡径部の外周形状が嵌合する形状で凸状部が形成されており、拡径補強層201及び補強層202を嵌合状態で包持することを可能としている。
なお、固定ブロック22は、その中心線に沿った断面により二つに割断された半円等部材によりケーブルコア11を挟み込むようにして包持し、相互に溶接することで一体化されている。このように、固定ブロック22は、分割構造を取ることにより、ケーブルコア11に対する取り付け作業を容易に行うことが可能となっている。
【0057】
また、かかる包持状態において、固定ブロック22の両端部には、補強層202の両端部も含む範囲でケーブルコア11まで、結合部としての熱硬化性樹脂24,24が塗布され、ケーブルコア11を固定ブロック22に固定する。
また、補強層202を固定ブロック22からはみ出さない範囲で形成し、熱硬化性樹脂24が固定ブロック22とケーブルコア11とを直接的に固定する構造としても良い。
なお、熱硬化性樹脂24は、ガラス繊維などの補強繊維とエポキシレジンなどの熱硬化性樹脂の混合物である繊維強化プラスチック(FRP)を用いてもよい。
【0058】
[中間固定部:固定金具]
固定金具23は、固定ブロック22の外周面上であってケーブル方向中間にボルト締めで固定されている。かかる固定金具23は、ケーブルコア11を中心とする半径方向に延出されたフランジ状に形成されており、その外径は、固定ボックス21の内壁211の外径より大きく、外壁212の内径よりも小さく設定されている。そして、前述したように、固定金具23は、内壁211を二分割した円筒に挟まれた状態で溶接により接合されている。これにより、固定金具23は、ケーブルコア11を全方位から保持することを可能としている。
なお、固定金具23も固定ブロック22と同様にその中心線に沿った断面により二分割された半円状の部材からなり、固定ブロック22の外周面に取り付ける際に相互に溶接により一体化される。
【0059】
なお、固定ボックス21の内壁211の内部領域は、固定金具23によって空間Aと空間Bとに分離されている。このため、固定ボックス21内において、空間Aから空間Bに対して直接的に冷媒が流通することはできないが、例えば、空間A側に接続された超電導ケーブル10の断熱管12から流入する冷媒は冷媒流通孔25aを通じて流出することで空間A内の流通が行われ(或いは、冷媒流通孔25aから断熱管12へ)、空間B側に接続された超電導ケーブル10の断熱管12から流入する冷媒は冷媒流通孔25bを通じて流出することで空間B内の流通が行われる(或いは、冷媒流通孔25bから断熱管12へ)。
【0060】
[固定構造:作用効果]
上記超電導ケーブル10の中間固定部20では、固定ボックス21の内壁211と外壁212とは、冷媒流通孔25a,25bの円板253a,253bにより結合されており、かつ、固定金具23を設けて超電導ケーブル10と固定ボックス21の内壁211を固定するので、固定ボックス21の外壁212または断熱管12の断熱外管122を固定するだけでケーブルコア11を中心とする全方位について堅牢にケーブルコア11を固定することが可能である。さらに、固定ボックス21が冷媒流通孔25a,25bを有するので、内壁211の内部領域が固定金具23により空間Aと空間Bとに二分され、相互の流通が妨げられた場合であっても、冷媒流通孔25a,25bを介して冷媒の流通を確保することが可能である。
また、ケーブルコア11の保護層116を固定体によって保持することで、高電圧の導体部分(フォーマ111、超電導導体層112)を直接保持する必要がないために、高電圧の導体部分から接地されたケース部分間の沿面において電界集中はほとんど生じない。つまり、複雑な絶縁設計(電界設計)を行う必要がない。
さらに、固定ボックス21の内壁211と外壁212とは、冷媒流通孔25a,25bの円板253a,253bにより結合されているので、結合部位を最小限とし、結合部位から内部への熱侵入を低減することが可能となっている。
【0061】
[固定ボックスの他の例]
図7は固定ボックス21にベローズ構造27を設けた例を示している。図示のように、固定ボックス21の外壁212であって、二つの冷媒流通孔25a,25bにはベローズ構造27を設けても良い。この例では二つのベローズ構造27,27を形成しているが、これらは一体としても良い。
ベローズ構造27は、円筒状の外壁212の全周にわたって形成された蛇腹形状部であり、外壁212をケーブル方向に沿って伸縮させる撓み変形やケーブルコア11の撓み方向に準じた撓み変形を許容する。
これにより、超電導ケーブル10の断熱管12やケーブルコア11に熱伸縮等を原因とする撓み、伸縮などの変形を生じた場合でも、これを許容しつつケーブルコア11の保持を行うことが可能となる。
なお、ベローズ構造27は、外壁212だけではなく、内壁211にも設けてもよい。
【0062】
[超電導ケーブルが三相ケーブルである場合]
図8は三相ケーブルである超電導ケーブル10Aの中間固定部20Aを示している。
超電導ケーブル10Aは三相ケーブルの場合、前述したケーブルコア11が三本螺旋状に寄り合わされた状態で断熱管12内に収容されている。
中間固定部20Aは、寄り合わされた状態のケーブルコア11Aを一本のケーブルコア11の場合と同様に保持する。即ち、この中間固定部20Aでは、寄り合わされた状態のケーブルコア11Aの表面をガラス繊維などの補強繊維とエポキシレジンなどの熱硬化性樹脂の混合物(繊維強化プラスチック:FRP)層28で被覆し、当該混合物層28の上に拡径補強層201及び補強層202を形成し、その上から固定体で保持する構成となっている。なお、混合物層28以外の構成については前述した中間固定部20と同一である。
かかる中間固定部20Aにより、三相ケーブルからなる超電導ケーブル10Aも超電導ケーブル10と同様の効果を享受しつつ固定することが可能である。
なお、ケーブルコア11は三本に限らず、二本又は四本以上の他相ケーブルからなる超電導ケーブルについても、上記中間固定部20Aにより効果的に固定することが可能である。
【0063】
[二つの冷媒流通孔の接続例]
図9に示すように、前述した固定ボックス21の冷媒流通孔25aと25bは、一本の冷媒輸送管30により互いに冷媒の流通が行われるように連結しても良い。これにより、固定ボックス21の内壁211の内部の空間Aに流入した冷媒は冷媒輸送管30を通じて空間Bに移動し、或いは、空間Bに流入した冷媒が空間Aに移動し、固定ボックス21内の空間Aと空間Bとの間での冷媒の流通が可能となる。
また、
図10に示すように、冷媒輸送管30の途中部分には、蛇腹形状のベローズ部31を形成しても良い。これにより、固定ボックス21の撓みの発生時にも冷媒輸送管30のベローズ部31によって許容することが可能となり、そのような場合でも、冷媒の良好な流通を確保することが可能である。また、冷媒輸送管30のベローズ部31は、前述したように、固定ボックス21の外壁212にベローズ部を形成した場合に、特に外壁212の変形撓み発生時にも効果的にこれに対応することが可能である。
【0064】
[固定ボックスにより多くの冷媒流通孔を設けた場合の例]
前述した中間固定部20では固定ボックス21の上部に二つの冷媒流通孔25a,25bを設けた場合を例示したが、冷媒流通孔の数は二つに限定するものではなく、より多くの冷媒流通孔を固定ボックス21に設けても良い。例えば、
図11に示す中間固定部20Bでは、固定ボックス21Bの下部にも二つの冷媒流通孔25c,25dを設けている。
この二つの冷媒流通孔25c,25dも二つの冷媒流通孔25a,25bと同様に内壁211の固定金具23を挟んで一方の空間Aともう一方の空間Bとにそれぞれ接続されている。
【0065】
図12は、
図3の中間固定部20と
図11の中間固定部20Bとを使用して三本の超電導ケーブル10を固定している超電導ケーブル線路の固定構造を示す設置例を示している。
三本の超電導ケーブル10は、互いに平行に布設されている。
図1の例では、冷媒を一本の超電導ケーブル10に沿って流通させているが、
図12のように複数の超電導ケーブル10を平行に布設する場合には、各超電導ケーブル10に沿って隣接する中間固定部20(又は20B)同士と各超電導ケーブル10の並び方向に隣接する中間固定部20(又は20B)同士とを連結して、マス目状に冷媒の循環経路を形成することができる。
例えば、両端の二本の超電導ケーブル10は、中間固定部20を所定の間隔で配置し、これらの間に位置する超電導ケーブル10は、中間固定部20Bを同じ間隔で配置し、各超電導ケーブル10の並び方向に隣接する中間固定部20(又は20B)同士を二本の冷媒輸送管30で連結する。このとき、中間固定部20Bは両隣の中間固定部20,20と連結されることから、中間固定部20Bの上の二つの冷媒流通孔25a,25bは、一方の中間固定部20の冷媒流通孔25a,25bと冷媒輸送管30,30を介して連結され、中間固定部20Bの下の二つの冷媒流通孔25c,25dは、他方の中間固定部20の冷媒流通孔25a,25bと冷媒輸送管30,30を介して連結される。
なお、一方の中間固定部20と中間固定部20Bとの間には、冷媒を所定方向に循環させるための循環ポンプ31と、冷媒を冷却するための冷凍機32とが配設される。
これにより、三本の超電導ケーブル10に隣接して設けられた合計六つの中間固定部20,20Bの間で格子状に一定方向での循環経路が形成される。
なお、複数の超電導ケーブル10を固定する場合には、中間固定部20同士を接続する必要はなく、冷媒輸送管が二つの冷媒流通孔を接続した中間接続部20(
図9,10)を用いてもよい。
【0066】
[中間接続部を有した中間固定部]
上述した中間固定部20,20A,20Bはいずれも、ケーブルコア11の中間接続部を有していない部分を固定していたが、二本の超電導ケーブル10を長手方向において接続する場合のケーブルコア11同士の中間接続部15を内部に有し、当該中間接続部15を固定する場合にも中間固定部20等と同じ構成の中間固定部20Cを使用することが可能である。
図13は二本の超電導ケーブル10の中間接続部15を有した中間固定部20Cを示している。
【0067】
まず、二本の超電導ケーブル10は、以下のようにして接続される。
即ち、各超電導ケーブル10の接続端部からケーブルコア11を断熱管12から一定長さだけ突き出して露出させる。さらに、電気絶縁層113、超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116をそれぞれ退避させて、フォーマ111及び超電導導体層112が接続端部側に所定の長さで突出した状態とする。このとき、絶縁紙等を積層された電気絶縁層113だけは、接続端部側の形状が当該接続端部に向かうにつれて縮径するように形状を整え、その接続端部にテーパー113aを形成する。
そして、フォーマ111同士を突き合せ、接続端部同士の溶接を行ってから、フォーマ111同士の溶接部の外径が一様となるよう、成形を行い、後方に退避されていた超電導導体層112をフォーマ111に巻き直す。
そして、二つの超電導導体層112の接続端部の上面において、各超電導導体層112の超電導層が導通するように半田を介在させて接続用超電導線材(図示略)を架設状態で貼着し、各超電導導体層112の電気的な接続が行われる。なお、超電導導体層112の超電導層を構成する超電導線材を1本ずつ半田により接続することも可能である。
【0068】
本発明の実施形態である超電導ケーブル10の固定構造では、上記のようにして接続された二つの超電導ケーブル10におけるフォーマ111及び超電導導体層112に対して、その周囲に、電気絶縁層113と同じ絶縁性紙類を巻回して積層し、電気絶縁層として接続絶縁層113cを形成する。接続絶縁層113cは、少なくとも互いに対向する二つのテーパー113a、113aにより縮径した部位を全て埋めることが可能な範囲で形成する。このとき、超電導導体層112の接続部は、通常の部位に比して周囲に対してより厳重に絶縁を図る必要があることから、接続絶縁層113cの形成後に電気絶縁層113の外径よりも大きくなるまで更に絶縁性紙類の巻回を行い、拡径補強絶縁層113bを形成する。
この拡径補強絶縁層113bは、電気絶縁層113の二つのテーパー113a、113aと接続絶縁層113cとの境界となる二箇所のつなぎ目をいずれも覆うことができるように十分な大きな幅で形成されている。
【0069】
更に、二つの超電導シールド層114の間に、接続用超電導シールド層114cを形成し、超電導シールド層114と接続用超電導シールド層114cの接続端部の上面において、各超電導シールド層114と接続用超電導シールド層114cの超電導層が導通するように半田を介在させて接続用超電導線材114aを架設状態で貼着し、各超電導シールド層114の電気的な接続が行われる。なお、超電導シールド層114の超電導層を構成する超電導線材と接続用超電導シールド層114cの超電導層を構成する超電導線材を1本ずつ半田により接続することも可能である。
また、接続用超電導シールド層114cを配さずに、超電導シールド層114同士の接続端部上面において、各超電導シールド層114の超電導層が導通するように半田を介在させて接続用超電導線材114aを架設状態で貼着し、各超電導シールド層114の電気的な接続を行ってもよく、超電導シールド層114の超電導層を構成する超電導線材を1本ずつ半田により接続してもよい。
超電導シールド層114の接続後、常電導シールド層115が形成されていない部分に、接続用常電導体115aが配され、各常電導シールド層115と接続用常電導体115aの接続端部同士が半田により接続され、常電導シールド層115同士が接続される。
常電導シールド層115の接続後、保護層116が形成されていない部分に、保護層116と同じ絶縁紙、高分子不織布などを巻回して積層し、接続保護層116aを形成する。
【0070】
以上のように、上記拡径補強絶縁層113bの外周面上には、各超電導ケーブル10の接続端部において当初退避された超電導シールド層114、常電導シールド層115、保護層116が順番に再形成される。
そして、再形成された保護層116の外周面上に、保護層116の表面に絶縁紙類を巻き付けて積層した拡径補強層201が形成されている。補強層202、固定体の固定ブロック22については、
図3の形態と同様である。
本実施形態の場合、超電導シールド層114の接続部分における損傷を低減するため、固定体の固定ブロック22の包持部分には、超電導シールド層114の接続部(
図13においては接続用超電導線材114aと超電導シールド層114、接続用超電導シールド層114cの接続部分に相当)を含まないようにすることが望ましい。
【0071】
本実施形態のように、中間固定部20Cにおいて、長手方向における超電導ケーブル10を接続する場合に形成する中間接続部15と中間固定部20を兼ねることで、固定ボックス21や接続ボックスの数を減らすことができ、熱侵入を低減することができる。
【0072】
また、上記中間接続部15は、超電導体層112同士の接続部において互いに対向する絶縁層113,113のテーパー113a,113aの間を新たな絶縁層113cで埋め、当該絶縁層113cの両端のつなぎ目を絶縁層113よりも径の大きな拡径補強絶縁層113bで覆っているので、電界の集中を防止し、高い絶縁性能を得ることを可能としている。
さらに、中間固定部20Cは、固定ボックス21の内壁211に支持された固体金具23がスリーブ状の固定ブロック22で中間接続部15を外側から包持しているので、超電導ケーブル10を簡易な構造により堅牢にケーブルコアを固定することが可能である。
また、ケーブルコア11上にその両端部に向かって縮径した拡径補強層201を形成し、その外周面形状に応じた形状の固定ブロック22で固定するので、ケーブルコア11の周囲やその固定構造において角部や突起が少ない構造ととなり、電界集中が生じにくく、絶縁性能が高い電界設計となっている。
なお、前述した固定ボックス21は、円筒状を例示したが、形状については特に限定はなく、例えば、直方体などの形状としても良い。
【0073】
なお、この中間固定部20Cでは、中間接続部15のみを外側から固定しているが、中間接続部15のケーブルコア11の長手方向における両側又は片側も、拡径補強層201、補強層202、固定ブロック22,固定金具
23を介して固定ボックス21の内壁211に固定支持する構造を付加しても良い。
【0074】
[固定金具の他の例]
上述した中間固定部20,20A,20B,20Cはいずれも、フランジ状の一つの固定金具23でケーブルコアを固定していたが、固定金具の形状や構造,個体数はこれに限定されるものではない。
例えば、
図14はケーブルコア11に垂直な断面から見た断面図であるが、図示のように、固定ブロック22の長手方向中間位置において外周面上に二分された補強用の金属輪231を嵌めて互いに溶接により固定し、さらに、金属輪231の外周における直径方向の両端部の位置に棒状又はブロック状の二つの固定金具232,232を設け、その両端部を溶接することで、金属輪231と固定ボックス21の内壁211との間を固定する構造としている。
また、強度が十分に確保されるのであれば、固定金具232は
図15のように一つのみとしても良いし、より強固に固定するために、
図16に示すように、より多くの固定金具232(
図16の例では三つ)で固定しても良い。
また、ケーブルコア11の中間接続部15以外の部位については、上記の固定体と合わせて補助固定具により固定ボックス21の内壁211に固定を行ってもよい。この補助固定具は、ケーブルコア11の中間接続部15以外の部位の外周に直接取り付けられ保持を行う金属輪(前述した金属輪231と同一構造)と、当該金属輪と固定ボックス21の内壁211との間を固定する棒状又はブロック状の一又は複数の固定金具(前述した固定金具232と同一構造)とからなり、ケーブルコア11の中間接続部15以外の絶縁性の高い部位について固定ボックス21内において補助的な固定を行う。
【0075】
[超電導ケーブル線路の固定構造の他の例(1)]
超電導ケーブル線路の固定構造の他の例について説明する。この超電導ケーブル線路の固定構造は、
図3の中間固定部20と
図11の中間固定部20Bとを使用して二本の超電導ケーブル線路を固定する構成であって、循環冷却部40を用いた冷却システム4を適用したことを特徴としている。
図17は超電導ケーブル線路の固定構造の布設例を示す概略図である。
図17に示すように、電力の供給元と供給先とにはそれぞれ終端接続部30、30が配設され、その間で超電導ケーブル線路が中間固定部20により支持される。
また、冷却システム4では、上記超電導ケーブル線路の列が二列並行に形成されている場合において、それぞれの線路の長手方向における同じ位置に設けられた一方の中間固定部20から他方の中間固定部20に渡って架設された状態で循環冷却部40が設けられている。
なお、超電導ケーブル線路とは、一方の目的地(終端接続部30)からもう一方の目的地(終端接続部30)までを結ぶ超電導ケーブルであるが、この超電導ケーブル線路を一本の超電導ケーブル10で構成しても良いし、複数の超電導ケーブル10を前述した中間接続部15によりつなぎ合わせて構成しても良い。また、複数の超電導ケーブル10をつなぎ合わせる場合には、中間固定部20に替えて中間
固定部20Cを使用する。以下の説明では、超電導ケーブル線路を一本の超電導ケーブル10で構成した場合を例示する。
【0076】
[循環冷却部]
図18は超電導ケーブル10、中間固定部20及び循環冷却部40の構成を示す概略図である。図示のように、循環冷却部40は、超電導ケーブル10からなる超電導ケーブル線路の二つの列の長手方向における同位置に設けられた中間固定部20,20に架設状態で設けられている。
循環冷却部40は、超電導ケーブル10のからなる超電導ケーブル線路の一方の列の中間固定部20から他方の列の中間固定部20に架設される冷媒輸送管で構成された第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42と、第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42にそれぞれ設けられた循環ポンプ43,44と、第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42のそれぞれを流れる冷媒を冷却する冷却装置45とを備えている。
【0077】
第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42は、前述した
図6の冷媒輸送管30と同一構造であり、いずれも内管411,421と外管412,422とからなる二重構造からなり、内管411,421と外管412,422との間の内部領域は、真空引きが行われて断熱構造が施されている。また、各冷媒経路41,42の端部は、前述した中間固定部20の冷媒流通口孔25a,25bにそれぞれ挿入接続されている。各冷媒経路41,42の端部と中間固定部20の冷媒流通孔25a,25bの端部にはそれぞれフランジ部が形成されており、相互のフランジ部がネジ止めにより連結されている。なお、各冷媒経路41,42の内管411,421と外管412,422との間の内部領域を、中間固定部20の固定ボックス21の内壁211と外壁212との間の領域と連通させて、これらを同時に真空引き可能としてよい。
【0078】
また、第一の冷媒経路41は、中間固定部20における固定金具23により仕切られた一方の内部領域に接続され、第二の冷媒経路42は、固定金具23により仕切られた他方の内部領域に接続されている。
かかる構造により、循環冷却部40の第一の冷媒経路41は、隣接する他の循環冷却部40の第二の冷媒経路42と、これら二つの循環冷却部40の間に位置する二つの超電導ケーブル10の断熱管12とにより、冷媒の循環経路Rを形成する。
【0079】
循環ポンプ43は第一の冷媒経路41において所定方向(
図18における下方)に冷媒を送出し、循環ポンプ44は第二の冷媒経路42において逆方向(
図18における上方)に冷媒を送出する。これにより、循環経路Rにおいて、一定の方向(
図18における時計方向)に冷媒を循環させるようになっている。
【0080】
この超電導ケーブル線路の固定構造の例では、一つの循環冷却部40において、第一の冷媒経路41を流れる冷媒と第二の冷媒経路42を流れる冷媒とに対して、単体の冷却装置45を共用して冷却することを特徴としている。
図19は冷却装置45の構成図である。冷却装置45は、当該装置内を循環する所定の冷媒に対して蒸発−圧縮−凝縮−膨張のサイクルを繰り返す冷凍機451と、第一と第二の冷媒経路41,42内の冷媒から吸熱を行う冷却部位としての熱交換器452とを備えている。
【0081】
これに対して、第一と第二の冷媒経路41,42には、それぞれ、熱交換器452内を通過する流入経路413,423と当該流入経路413,423と並列に設けられて熱交換器452を回避するバイパス経路414,424とを有しており、また、バイパス経路414,424には、当該経路内を通過する冷媒の流量調整弁415,425が設けられている。
さらに、第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42における冷却装置45のすぐ下流側には、冷媒の温度検出を行う温度センサ453,454が設けられ、これらの温度センサ453,454は、二つの流量調整弁415,425の流量制御を行う温度制御回路455に対して検出温度の信号出力を行う。
【0082】
上記流量調整弁415,425は、温度制御回路455からの制御信号に従って、個々に流量調節を行うことが可能な制御弁であり、温度制御回路455は、各冷媒経路41,42内の冷媒の温度が適正な温度範囲内(例えば、冷媒が液体窒素である場合には64〜77K)となるように流量調整弁415,425の制御を実行する。即ち、温度センサ453(又は454)の検出温度が適正範囲より低い場合には、流量調整弁415(又は425)の開度を大きくして熱交換器452を通過する冷媒の流量を低減する制御を行い、検出温度が適正範囲より高い場合には、流量調整弁415(又は425)の開度を小さくして熱交換器452を通過する冷媒の流量を増量する制御を行う。
なお、冷却装置45は、規定流量の冷媒を適正な温度よりも冷却可能な容量のものが使用される。
【0083】
二つの終端接続部30,30の間において、全ての超電導ケーブル10からなる超電導ケーブル線路は、それぞれの循環経路Rにおいて、冷媒が冷却装置45により所定の温度に冷却されつつ循環ポンプ43,44により循環され、そのケーブルコア11は、適正な温度に冷却されることとなる。従って、超電導ケーブル10では、その電気抵抗が十分に低減されて、一方の終端接続部30から他方の終端接続部30に送電を行うことが可能である。
【0084】
そして、各超電導ケーブル10は、外部からの熱侵入や自らの発熱により冷媒の温度が上昇するが、各循環冷却部40では、第一の冷媒経路41及び第二の冷媒経路42を流れる冷媒の温度が温度センサ453,454により常に検出され、温度制御回路455にて監視され、冷媒を適正な極低温に維持するので、冷媒の温度上昇は抑止され、超電導ケーブル10において抵抗値の上昇を回避することが可能である。
【0085】
さらに、循環冷却部40では、第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42とにおいて、冷却装置45の冷凍機451を共用するので、極低温を実現する高価な冷凍機451の個体数を半分に低減することができ、超電導ケーブル10の布設設備のイニシャルコストを飛躍的に低減することが可能である。
また、冷凍機451の個体数を低減することにより、メンテナンスコストも飛躍的に低減することが可能である。また、2台を1台にまとめることにより、モーター等の個数が半減するため、モーターの軸受け等における摩擦発熱による機械的損失が小さくなり、冷凍効率を向上させることができる。
更に、超電導ケーブルの敷設場所が都市部地下の場合には、冷却システムの設置スペースもできるだけ小さくされることが望まれることから、本発明の実施形態によれば、設置スペースも同一出力で比較すると約50%に抑えることができる。
【0086】
また、第一の冷媒経路41及び第二の冷媒経路42に冷却装置45に対する流入経路413,423とバイパス経路414,424とを設け、温度センサ453,454の検出温度に応じて流量調整弁415,425を制御する温度制御回路455を有するので、それぞれの循環経路Rにおいて、冷媒の温度の適正化を図ることができ、安定的に超電導による送電を行うことが可能である。
【0087】
[超電導ケーブル線路の固定構造の他の例(2)]
図18に示した超電導ケーブル線路の固定構造の例では、二列並行に布設された単相単芯型の超電導ケーブル10に対して冷却システム4を適用した場合を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、三芯のケーブルコア11を一括して断熱管12内に収納した三芯一括型超電導ケーブルが二列並行に布設されている場合にも、上記実施形態と全く同様に冷却システム4を設けることが可能である。
【0088】
また、三相電流を送電する場合において、三本の単芯型の超電導ケーブル10からなる超電導ケーブル線路が三列並行に布設された場合には、
図20に示す例のように、三列の超電導ケーブル10に架設される循環冷却部40Aを設けた冷却システム4Aを構成しても良い。即ち、この循環冷却部40Aでは、位相の異なる三相の電流を平行に布設した三列の超電導ケーブル10により送電し、それぞれの列ごとに同位置に設けられた三つの中間固定部20に架設されるように第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42とを形成する。
図示の例では、上から二列目の超電導ケーブル10に接続される中間固定部20B(
図11参照)のみが、上下両方に第一の冷媒経路41及び第二の冷媒経路42が接続される。そして、一番上の列の超電導ケーブル10を通過した冷媒は、上から二列目の超電導ケーブル10と三列目の超電導ケーブル10とに分岐して流れ、その後、合流してから再び一番上の列に超電導ケーブル10に流れる、という循環経路RAが形成される。
【0089】
上記構成の冷却システム4Aの場合も、各循環冷却部40Aには、第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42とに共用で一基の冷却装置45が設けられる。これにより、前述した冷却システム4と同様の効果を得ることが可能である。
また、この冷却システム4Aでは、前述したように、一番上の列の超電導ケーブル10は冷媒の流量が多く、他の二列の超電導ケーブル10の冷媒の流量は少なくなる。しかしながら、循環冷却部40Aの冷却装置45は、各冷媒経路の検出温度に基づいて熱交換器452を通過する冷媒の流量を制御することが可能であるため、第一の冷媒経路41では熱交換器452を通過する冷媒の流量が低減され、第二の冷媒経路42では熱交換器452を通過する冷媒の流量が増量される制御が行われ、いずれの列の超電導ケーブル10もほぼ同じ極低温を維持され、均一な状態で送電を行うことが可能である。
【0090】
[超電導ケーブル線路の固定構造の他の例(3)] また、冷却システム4の循環冷却部40は二基の循環ポンプ43,44を備えていたが、その給排水能力が十分に高いものである場合には、
図21に示すように、循環ポンプを含まない循環冷却部40Bを一部に含む冷却システム4Bを構成してもよい。
即ち、この循環冷却部40Bでは、並行に布設された超電導ケーブル10からなる超電導ケーブル線路の一方の列に設けられた中間固定部20(
図21の上側の中間固定部20)の冷媒流通口25a,25bが冷却装置45の流入経路413の一端と他端とに接続され、並行に布設された超電導ケーブル10の他方の列に設けられた中間固定部20(
図21の下側の中間固定部20)の冷媒流通口25a,25bが冷却装置45の流入経路423の一端と他端とに接続されている。
これにより、循環冷却部40Bを含む冷却システム4Bによる冷媒の循環経路RBは、前述した循環経路Rのように、循環冷却部40において一方の超電導ケーブル線路から他方の超電導ケーブル線路への移行はなく、循環冷却部40Bを介して同じ超電導ケーブル線路に沿って流れるように冷媒の循環が行われる。
この場合、冷却装置45の流入経路413が「第一の冷媒経路」に相当し、冷却装置45の流入経路423が「第二の冷媒経路」に相当することとなる。
冷却システム4Bは、このように構成されることにより、極低温での循環を可能とする循環ポンプの使用個体数を低減することができ、そのイニシャルコストやメンテナンスコストの低減を図ることが可能である。
【0091】
[その他]
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
また、上記冷却システム4(若しくは4A又は4B)では、循環冷却部40(若しくは40A又は40B)を中間固定部20ごとに設ける場合を例示したが、循環冷却部40(若しくは40A又は40B)の配設間隔は任意に調節可能である。例えば、複数の中間固定部20に一つの間隔で循環冷却部40(若しくは40A又は40B)を設けても良い。
【0092】
また、上記循環冷却部40(又は40A)では、第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42のそれぞれに循環ポンプ43,44を設けているが、第一の冷媒経路41と第二の冷媒経路42のいずれか一方にのみ循環ポンプを設ける構成としても良い。その場合でも、一つの循環経路R(又はRA)について少なくとも一基の循環ポンプを有するので、冷媒を循環することが可能である。
そして、これにより、極低温下で使用可能な循環ポンプの個体数を低減することができ、イニシャルコスト及びメンテナンスコストの低減を図ることが可能となる。
【0093】
また、各冷媒経路41,42において、循環ポンプ43,44を冷却装置45の上流側に配設しているが、これにより、循環ポンプ43,44から発生した熱が冷媒に伝わった場合でも、速やかに冷却すること可能である。但し、循環ポンプ43,44から伝わる熱量が十分に小さい場合には、循環ポンプ43,44は、冷却装置45の下流側に配設しても良い。
【0094】
また、上記循環冷却部40,40A又は40Bでは、いずれも超電導ケーブル線路が一つの超電導ケーブル10で構成される場合を例示したが、超電導ケーブル線路を端部同士をつないだ複数の超電導ケーブル10で7構成しても良い。その場合、中間固定部20,20Aは前述した中間固定部20C(
図13参照)の例のように、中間接続部15により超電導ケーブル10同士を連結し、中間固定部20Cと同様の支持構造で支持することが望ましい。