特許第5981444号(P5981444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981444プロテアーゼおよびアミラーゼを含む保存安定性の液体洗浄・清浄剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981444
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】プロテアーゼおよびアミラーゼを含む保存安定性の液体洗浄・清浄剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160818BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20160818BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20160818BHJP
   C12N 9/14 20060101ALN20160818BHJP
   C12N 9/20 20060101ALN20160818BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20160818BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20160818BHJP
   C12N 9/42 20060101ALN20160818BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20160818BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20160818BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C11D3/386ZNA
   C11D17/08
   !C12N9/14
   !C12N9/20
   !C12N9/24
   !C12N9/26
   !C12N9/42
   !C12N9/50
   !C12N9/02
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-543696(P2013-543696)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-507119(P2014-507119A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2011072511
(87)【国際公開番号】WO2012080202
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】102010063458.1
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170221
【弁理士】
【氏名又は名称】小瀬村 暁子
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーランド,スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,カール−ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】オコーネル,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート,ヘンドリック
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−507901(JP,A)
【文献】 特表平09−512434(JP,A)
【文献】 特表2001−520044(JP,A)
【文献】 特表平09−503818(JP,A)
【文献】 国際公開第02/077187(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/056640(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号1に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号1に従う番号付けで99位にアミノ酸のグルタミン酸(E)を有するプロテアーゼの、アミラーゼおよびプロテアーゼを含む液体洗浄または清浄剤中のアミラーゼの保存安定性を改善するための使用
【請求項2】
プロテアーゼが、配列番号1に従う番号付けで、以下のアミノ酸:
(a) 3位のトレオニン(3T)、
(b) 4位のイソロイシン(4I)、
(c) 61位のアラニン、トレオニンまたはアルギニン(61A、61Tまたは61R)、
(d) 154位のアスパラギン酸またはグルタミン酸(154Dまたは154E)、
(e) 188位のプロリン(188P)、
(f) 193位のメチオニン(193M)、
(g) 199位のイソロイシン(199I)、
(h) 211位のアスパラギン酸、グルタミン酸またはグリシン(211D、211Eまたは211G)、
(i) アミノ酸(a)〜(h)の組み合わせ
の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の使用
【請求項3】
列番号2に記載のアミノ酸配列を含むプロテアーゼ;又は
列番号2において少なくとも1つの位置で改変されたアミノ酸配列を含むプロテアーゼであって、ここで配列番号1に従う番号付けでの改変が、以下:
i. 3位のトレオニン(3T)、
ii. 4位のイソロイシン(4I)、
iii. 61位のアラニン、トレオニンまたはアルギニン(61A、61Tまたは61R)、
iv. 154位のアスパラギン酸またはグルタミン酸(154Dまたは154E)、
v. 188位のプロリン(188P)、
vi. 193位のメチオニン(193M)、
vii. 199位のイソロイシン(199I)、
viii. 211位のアスパラギン酸、グルタミン酸またはグリシン(211D、211Eまたは211G)、
ix. アミノ酸(i)〜(viii)の組み合わせ
からなる群から選択されるプロテアーゼの、アミラーゼおよびプロテアーゼを含む液体洗浄または清浄剤中のアミラーゼの保存安定性を改善するための使用
【請求項4】
アミラーゼが、活性タンパク質に基づいて1 x 10-8〜5重量パーセントの量で含まれ、および/またはプロテアーゼが、活性タンパク質に基づいて1 x 10-8〜5重量パーセントの量で含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用
【請求項5】
液体洗浄または清浄剤が、以下:
i. アニオン性物質および/もしくはポリアニオン性物質、ならびに/または
ii. カチオン性物質および/もしくはポリカチオン性物質、ならびに/または
iii. ヒドロキシル基および/もしくはポリヒドロキシル基(1つもしくは複数)を有する物質
から選択される成分をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用
【請求項6】
液体洗浄または清浄剤が、少なくとも1つのさらなる成分を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用
【請求項7】
少なくとも1つのさらなる成分が、ホスホネート、界面活性剤、ビルダー、非水性溶媒、酸、水溶性塩、増粘剤ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
液体洗浄または清浄剤が、少なくとも1つのさらなる酵素を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用
【請求項9】
少なくとも1つのさらなる酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、タンナーゼ、キシラナーゼ、キサンタナーゼ、キシログルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、ペクチナーゼ、カラギナーゼ、ペルヒドロラーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、リパーゼ、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤および清浄剤の分野に属する。本発明は特に、規定のプロテアーゼをアミラーゼと組み合わせて含む、液体の酵素含有洗浄剤および清浄剤に関し、さらにかかる剤の使用方法を提案する。本発明はさらに、アミラーゼを含む液体洗浄剤または清浄剤における規定のプロテアーゼの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤および清浄剤では、サブチリシン型のプロテアーゼが好ましく用いられる。先行技術において知られている、洗浄剤または清浄剤に組み込まれるプロテアーゼは、バチルス(Bacillus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、フミコラ(Humicola)属もしくはシュードモナス(Pseudomonas)属などの微生物にもともとは由来し、および/または、好適な微生物を用いた公知のバイオテクノロジー手法に従って、例えば、バチルス(Bacillus)属のトランスジェニック発現宿主によって、または糸状菌によって製造される。
【0003】
現代の液体洗浄剤は特に、ますます追加的酵素を含むようになっており、その中でも特にアミラーゼを含む。アミラーゼは、特にデンプンなどの多糖におけるグリコシド結合の加水分解を触媒する酵素である。アミラーゼの中でも、アミロースのα(1-4)グリコシド結合を加水分解するα-アミラーゼが、洗浄剤および清浄剤にしばしば組み込まれる。酵素の番号分類である酵素のEC分類中で、α-アミラーゼはEC番号(酵素番号)3.2.1.1を有し、結果的に、酵素の6つの主要分類群のうちの第3群、ヒドロラーゼ(E.C.3.-.-.-)、その下のグリコシラーゼ(E.C. 3.2.-.-)、そしてさらにその下のグリコシダーゼ(E.C. 3.2.1.-)、すなわちO-および/またはS-グリコシル化合物を加水分解する酵素に属する。α-アミラーゼによるデンプンの分解によってデキストリンが得られ、次いでマルトース、グルコースおよび分枝オリゴ糖が得られる。結果としてアミラーゼは、洗濯物中の、特にデンプンを含む残留物に対して有効であり、それらの加水分解を触媒する。
【0004】
国際特許出願WO 95/23221中には、洗浄剤または清浄剤における使用に適した、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)DSM 5483に由来するサブチリシン型のプロテアーゼまたはプロテアーゼ変異体が開示されている。これらのプロテアーゼの中に、アミノ酸交換R99E、A、SまたはGを有し得るプロテアーゼも開示されている。また、洗浄剤が追加的酵素、中でもアミラーゼをも含み得ることも開示されている。洗浄剤は固体でも液体でもありうる。しかしこの文献は、アミラーゼを、99位にアミノ酸のグルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)またはアミノ酸のアスパラギン(N)もしくはグルタミン(Q)またはアミノ酸のアラニン(A)もしくはグリシン(G)もしくはセリン(S)を有するプロテアーゼと組み合わせて含む液体洗浄剤を直接的かつ明確には開示していない。欧州特許出願EP 1 921 147についても同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術による、プロテアーゼを含みさらにアミラーゼを含む液体洗浄剤および清浄剤の欠点は、これらが十分な保存安定性を有しておらず、その結果、短時間しか経過していなくても、かなりの量のアミロース分解活性および/またはタンパク質分解活性、特にアミロース分解活性を喪失しているということである。プロテアーゼがアミラーゼを不活性化させるため、プロテアーゼの存在がアミロース分解活性の喪失につながる場合が多い。その結果、洗浄または清浄剤は、最適な清浄力を示さない。
【0006】
本発明は、上記の欠点を克服し、特にアミロース分解活性に関して十分なまたはより優れた保存安定性を有する、プロテアーゼを含みさらにアミラーゼを含む液体洗浄剤または清浄剤を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の主題は、
(a1) 配列番号1に記載されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号1に従う番号付けで99位にアミノ酸のグルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)を有するプロテアーゼ、または
(a2) 配列番号1に記載されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号1に従う番号付けで99位にアミノ酸のアスパラギン(N)もしくはグルタミン(Q)を有するプロテアーゼ、または
(a3) 配列番号1に記載されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号1に従う番号付けで99位にアミノ酸のアラニン(A)もしくはグリシン(G)もしくはセリン(S)を有するプロテアーゼ、および
(b) アミラーゼ
を含む液体洗浄または清浄剤(liquid washing or cleaning agent)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
驚くべきことに、このようなプロテアーゼとアミラーゼとの組み合わせを含む液体洗浄または清浄剤が、好都合にも保存安定性であるということが見出された。特にこの剤は、剤に存在するプロテアーゼのみが本発明の剤と異なる洗浄または清浄剤と比較して、保存開始時にプロテアーゼが活性酵素に関して比較対象の剤と同じ濃度で存在する場合、保存後はより高いアミロース分解活性を示す。従って、本発明において提供されるプロテアーゼは、アミラーゼの不活性化の低減をもたらす。しかし、本発明において提供されるプロテアーゼによるアミラーゼの不活性化の低減は、不十分なプロテアーゼ活性の結果である。
【0009】
この点について、本発明に係る剤は、プロテアーゼ感受性の汚れに対して優れた、特に有利な清浄力を有し、好ましくは依然として有する。また、少なくとも1種のプロテアーゼ感受性の汚れに対するこの種類の清浄力は、特に低温、例えば、10℃〜50℃、好ましくは10℃〜40℃または20℃〜40℃でも生じる。従ってこのような剤は、織物および/または硬表面(例えば皿)についた、少なくとも1種の、好ましくは複数種のプロテアーゼ感受性の汚れの十分なまたは改善された除去を可能とする。
【0010】
従って、序文で言及した国際特許出願WO 95/23221に関して、本発明は、特に剤のタンパク質分解活性および/もしくはアミロース分解活性、あるいは保存後の剤の残存活性について、強力かつ保存安定性である液体洗浄剤を提供する特に有利な選択に関する。
【0011】
本発明において、「清浄力(cleaning power)」とは、1種または複数種の汚れの色を薄くする、特に汚れを洗浄除去することを意味すると理解される。かかる汚れの例としては、特に以下に挙げた種類、綿についた血液-牛乳/インク、綿についた全卵/顔料、綿についたチョコレート-牛乳/インク、ポリエステル/綿についたピーナッツ油-顔料/インク、綿についた草、または綿についたココアがある。本発明において、プロテアーゼとアミラーゼを含む洗浄もしくは清浄剤またはこの剤によって形成された洗浄もしくは清浄液だけでなく、プロテアーゼもしくはアミラーゼ自体もまた、特定の清浄力を有する。従って、本酵素の清浄力は、本剤およびこの剤によって形成された洗浄または清浄液の清浄力に寄与する。この清浄力は、好ましくは以下に示すとおりに測定される。
【0012】
「洗浄または清浄液(washing or cleaning liquor)」とは、繊維製品もしくは織物に作用(洗浄液)または硬表面に作用(清浄液)し、これにより繊維製品および/もしくは織物または硬表面上に存在する汚れと接触する洗浄または清浄剤を含む溶液を意味すると理解される。本発明の洗浄または清浄液は、通常、洗浄または清浄工程が始まり、例えば、洗濯機または別の適切な容器内で、本発明の洗浄または清浄剤が水で溶解されまたは希釈されるときに、生じる。
【0013】
本発明において、「保存安定性」は、本発明による洗浄または清浄剤が、保存後に、含まれるプロテアーゼのみが本発明による洗浄または清浄剤と異なる対照組成物と比較してより高いアミラーゼ活性を示す場合に存在する。結果的に、保存後、本発明による洗浄または清浄剤は、対照と比較して、より高いアミラーゼの残存活性を示す。従って、保存開始時には、比較対象の剤は両方とも、アミラーゼおよび/または初期アミロース分解活性について同じ量または濃度を示す。さらに、保存開始時には、両剤は、活性酵素に基づいて同じ濃度のプロテアーゼを有し、いずれの剤も、特に保存条件および酵素活性の測定に関して同じ方法で処理される。保存は、好ましさが増大する順に少なくとも24時間、48時間、72時間、5日間、1週間、2週間、3週間、4週間または8週間行う。さらに保存は、好ましくは20℃、25℃または30℃、特に好ましくは30℃の温度で行う。
【0014】
この点に関して、酵素活性は、特定の酵素型に適した標準的な方法を用いて測定することができる。酵素活性の測定方法は酵素技術の分野の当業者に周知であり、日常的に用いられている。プロテアーゼ活性の測定方法は、例えば、Tenside, 第7版(1970), pp.125-132に開示されている。タンパク質分解活性は、基質suc-L-Ala-L-Ala-L-Pro-L-Phe-p-ニトロアニリド(suc-AAPF-pNA)からの発色団パラ-ニトロアニリン(pNA)の放出から測定することもできる。プロテアーゼは、基質を切断し、pNAを放出する。放出されたpNAは、410nmで吸光度の増加をもたらす;時間の関数としての吸光度の変化は酵素活性の尺度である(DeI Marら, 1979参照)。この測定は、温度25℃、pH6および波長410nmで行われる。測定時間は、20秒〜60秒の測定間隔をあけて5分間である。プロテアーゼ活性は、好ましくはPU(プロテアーゼ単位)として表される。
【0015】
アミラーゼ活性は、標準的な方法を用いて測定される。アミラーゼ活性は、好ましくは以下のとおりに測定される。アミラーゼはデンプンをグルコースに変換する。試験下のサンプルを、0.67%のデンプン(可溶性、Zulowskyに従って前処理した(190℃においてグリセリンで処理))と共に規定の反応条件(トリス-マレイン酸緩衝液、pH6.5、50℃、15分)下でインキュベートする。ジニトロサリチル酸を加えてアルカリ条件下で100℃まで加熱することにより、ジニトロサリチル酸がグルコースおよび他の還元糖で還元されて橙赤色の色素が得られ、反応の終わりにこの色素を540nmで光度的に測定する。着色に対応する放出された糖の量が、酵素活性の尺度である(Sumnerら, J. Biol. Chem., 1921, 47 & 1924, 62を参照)。
【0016】
本発明において、酵素安定化の存在は、特に好ましくは、温度30℃で8週間保存された、プロテアーゼを含みかつアミラーゼを含む液体洗浄または清浄剤を使用して上記のとおりに測定され、この場合、タンパク質分解活性は、基質suc-AAPF-pNAからのパラ-ニトロアニリン発色団(pNA)の放出から測定され、またアミロース分解活性は上記のとおりに測定される。
【0017】
本発明による洗浄または清浄剤に含まれるプロテアーゼは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、さらに配列番号1に従う番号付けで99位にアミノ酸のグルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)またはアミノ酸のアスパラギン(N)もしくはグルタミン(Q)またはアミノ酸のアラニン(A)もしくはグリシン(G)もしくはセリン(S)を有する。好ましさが増大する順に、上記のアミノ酸配列は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列と、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%一致し、さらに極めて特に好ましくは99%まで一致する。配列番号1は、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)DSM 5483に由来する成熟アルカリプロテアーゼの配列であり、それは国際特許出願WO 92/21760に開示されており、この開示は本明細書中で明示的に参照される。
【0018】
本発明では、このようなプロテアーゼを、アミラーゼを含む液体洗浄または清浄剤に加えることにより、特に保存後の、とりわけ好ましさが増大する順に少なくとも24時間、48時間、72時間、5日間、1週間、2週間、3週間、4週間または8週間の保存期間後の残存アミロース分解活性に関して、特に保存安定性の液体洗浄剤が得られるということが示された。
【0019】
本発明による洗浄または清浄剤に含まれるプロテアーゼは、タンパク質分解活性を示す。すなわち、ポリペプチドまたはタンパク質のペプチド結合を加水分解することができる。従って、本発明による洗浄または清浄剤に含まれるプロテアーゼは、ペプチド結合の加水分解を触媒し、これによってペプチドまたはタンパク質を切断することができる酵素である。特に、本発明による洗浄または清浄剤に含まれるプロテアーゼはサブチラーゼであり、特に好ましくはサブチリシンである。
【0020】
アミラーゼは、序文に記載したとおりの酵素である。アミラーゼについて、同義語、例えば1,4-アルファ-D-グルカン-グルカノヒドロラーゼまたはグリコゲナーゼを用いることができる。本発明による調節可能なアミラーゼは、好ましくはα-アミラーゼである。本発明において、酵素がα-アミラーゼであるか否かの決定要因は、アミロース中のα(1-4)-グリコシド結合を加水分解する能力である。
【0021】
本発明による調節可能なアミラーゼの例は、洗浄または清浄剤において使用するための、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)またはバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)に由来するα-アミラーゼ、ならびに特にそれらの改良されたさらなる発展型である。バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)由来の酵素は、Novozymes CompanyからTermamyl(登録商標)という名称で、またDanisco/Genencor CompanyからPurastar(登録商標)STという名称で入手可能である。このα-アミラーゼのさらなる発展型の製品は、Novozymes CompanyからDuramyl(登録商標)およびTermamyl(登録商標)ultraという商品名で、Danisco/Genencor CompanyからPurastar(登録商標)OxAmという名称で、またDaiwa Seiko Inc.(東京、日本)からKeistase(登録商標)として入手可能である。バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)由来のα-アミラーゼは、Novozymes Companyにより、BAN(登録商標)という名称で商品化され、またBSG(登録商標)およびNovamyl(登録商標)という名称の、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来のα-アミラーゼから誘導された変異体もNovozymes Companyから商品化されている。さらにこの目的のため、Bacillus種A 7-7(DSM 12368)に由来するα-アミラーゼと、バチルス・アガラドヘレンス(Bacillus agaradherens)(DSM 9948)に由来するシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTアーゼ)に注目すべきである。また、上記の分子全ての融合産物も使用することができる。さらに、Novozymes社からFungamyl(登録商標)という商品名で入手可能な、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)およびアスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)に由来するα-アミラーゼのさらなる発展型が好適である。有利に使用し得るさらなる市販製品は、例えば、Amylase-LT(登録商標)およびStainzyme(登録商標)またはStainzyme ultra(登録商標)またはStainzyme plus(登録商標)であり、最後に挙げられるこれらの酵素もまた、Novozymes companyから入手可能である。また、点変異によって得られるこれらの酵素の変異体も本発明により組み込むことができる。特に好ましいアミラーゼは、国際出願WO 00/60060、WO 03/002711、WO 03/054177およびWO 07/079938に開示されており、従ってこれらの開示は明示的に参照され、あるいは、この点に関してこれらの開示内容が本特許出願に明示的に組み込まれる。
【0022】
本発明の別の実施形態において、本発明の洗浄または清浄剤は、それに含まれるプロテアーゼが配列番号1に従う番号付けで以下のアミノ酸:
(a) 3位のトレオニン(3T)、
(b) 4位のイソロイシン(4I)、
(c) 61位のアラニン、トレオニンまたはアルギニン(61A、61Tまたは61R)、
(d) 154位のアスパラギン酸またはグルタミン酸(154Dまたは154E)、
(e) 188位のプロリン(188P)、
(f) 193位のメチオニン(193M)、
(g) 199位のイソロイシン(199I)、
(h) 211位のアスパラギン酸、グルタミン酸またはグリシン(211D、211Eまたは211G)、
(i) アミノ酸(a)〜(h)の組み合わせ
の少なくとも1つをさらに含むものである。
【0023】
従って、99位の上記のアミノ酸の1つの他にも、本発明のプロテアーゼは、各位置に上記のアミノ酸の1つ以上を有する。これらのアミノ酸は、さらに有利な特性をもたらし、かつ/または既存の特性を強化することもできる。特に上記のアミノ酸は、液体洗浄もしくは清浄剤またはこの洗浄または清浄剤によって形成された洗浄液中のプロテアーゼのタンパク質分解活性および/または安定性の増加をもたらす。このようなプロテアーゼを、アミラーゼを含む液体洗浄または清浄剤に加えることにより、特に好ましさが増大する順に少なくとも24時間、48時間、72時間、5日間、1週間、2週間、3週間、4週間または8週間の保存期間後の、特に保存後の残存アミロース分解活性に関してのみならず、好ましくは保存後の残存タンパク質分解活性に関しても、特に保存安定性を有する液体洗浄または清浄剤が同じように得られる。このような剤は、プロテアーゼ感受性および/またはアミラーゼ感受性の汚れに対する清浄力の向上も示す。
【0024】
本発明において、アミノ酸位置は、配列番号1に記載されるバチルス・レンツス(Bacillus lentus)由来のプロテアーゼのアミノ酸配列に加えられるプロテアーゼのアミノ酸配列のアライメントによって規定される。バチルス・レンツス(Bacillus lentus)由来のプロテアーゼは、先行技術においてプロテアーゼとアミノ酸改変を特徴付けるための重要な参照分子となるため、アミノ酸位置の割当においてはバチルス・レンツス(Bacillus lentus)由来のプロテアーゼ(配列番号1)の番号付けを参照するのが有利である。さらにこの番号付けは、成熟タンパク質と一致する。この分類は、加えられるプロテアーゼのアミノ酸配列が、配列番号1に記載のバチルス・レンツス(Bacillus lentus)由来のプロテアーゼよりも多数のアミノ酸残基を含む場合にも使用しなければならない。
【0025】
バチルス・レンツス(Bacillus lentus)由来のプロテアーゼのアミノ酸配列中の上記の位置から出発して、本発明により加えられるプロテアーゼ中のアミノ酸位置は、アライメント中でこれらの同じ位置に帰するアミノ酸位置である。
【0026】
99位に加えて、特に有利な位置は、結果的に、配列番号1とのアライメントに起因し、すなわち配列番号1による番号付けによる3位、4位、61位、154位、188位、193位、199位および211位である。バチルス・レンツス(Bacillus lentus)由来のプロテアーゼの野生型分子中の以下のアミノ酸残基は、上記の位置:S3、V4、G61、S154、A188、V193、V199、およびL211に見られる。アミノ酸3T、4I、61A、154D、154E、211D、211Gおよび211Eは、本発明により加えられるプロテアーゼ中の対応する位置が、これらの好ましいアミノ酸のうちの1つによって既に占められていない限り特に好ましい。置換3Tおよび4Iは、例えば、当該分子に安定化効果を与え、本発明のプロテアーゼの保存安定性および清浄力の向上をもたらし、これにより本発明のプロテアーゼを含む液体洗浄または清浄剤の清浄力の向上をもたらす。
【0027】
上記のアミノ酸の1つ以上がそれぞれの位置で実現される場合、配列番号1がそれぞれの位置に別のアミノ酸を有するため、99位に加えてさらに配列番号1からの配列の逸脱が確実になる。配列番号1からの配列の逸脱の数により、他の全てのアミノ酸が配列番号1と一致している場合でも、本発明により加えられるプロテアーゼが配列番号1に対して有し得る様々な最大同一性値が生じる。この状況は、提案されるアミノ酸のあらゆる可能な組み合わせについて個々の場合に考慮され、またさらにこの状況は、プロテアーゼのアミノ酸配列の長さにも依存する。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8または9個の配列改変を伴う最大同一性は、269アミノ酸のアミノ酸配列長に対しては99.63%、99.26%、98.88%、98.51%、98.14%、97.77%、97.40%、97.03%または96.65%であり、275アミノ酸のアミノ酸配列長に対しては99.64%、99.27%、98.91%、98.55%、98.18%、97.82%、97.45%、97.09%または96.73%である。
【0028】
核酸配列またはアミノ酸配列の同一性は、配列比較によって決定される。この比較は、ヌクレオチド配列中またはアミノ酸配列中の類似配列を互いに整列(アラインメント)させることによって行われる。この配列比較は、好ましくは、先行技術において確立され通常用いられているBLASTアルゴリズム(例えばAltschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W. & Lipman, DJ. (1990) "Basic local alignment search tool." J. Mol. Biol. 215: 403-410、ならびにAltschul, Stephan F., Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang, Hheng Zhang, Webb Miller, およびDavid J. Lipman (1997): "Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein detabase search program"; Nucleic Acids Res., 25, pp. 3389-3402を参照)に基づいて行われ、また基本的にはヌクレオチド配列中またはアミノ酸配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の類似配列を互いに整列(アラインメント)させることによって行われる。その位置の図表形式の割当をアライメントと呼ぶ。先行技術から利用可能な別のアルゴリズムは、FASTAアルゴリズムである。配列アライメント、特に多重配列アライメントは、通常、コンピュータプログラムによって作成される。Clustalシリーズ(例えば、Chennaら(2003):Multiple sequence alignment with the Clustal series of programs, Nucleic Acid Research 31, 3497-3500を参照)、T-Coffee(例えば、Notredameら(2000):T-Coffee: A novel method for multiple sequence alignments. J. Mol. Biol. 302, 205-217を参照)またはこれらのプログラムもしくはアルゴリズムに基づくプログラムが使用される場合が多い。本発明において、配列比較およびアライメントは、好ましくはコンピュータプログラムVector NTI(登録商標) Suite 10.3(Invitrogen Corporation, 1600 Faraday Avenue, Carlsbad, California, USA)によって、標準デフォルトパラメータを用いて作成される。
【0029】
このような比較により、互いに比較された配列の類似性についての記述を作成することができる。それは通常、パーセント同一性、すなわち、同じもの又は対応位置での相互のアラインメント中の、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の割合で表される。アミノ酸配列に関する広義の用語「相同性」は、保存されたアミノ酸交換(すなわち類似の化学活性を有するアミノ酸)を考慮に入れるが、これは、これらがタンパク質中でほとんど類似の活性または機能を発揮するからである。その結果、比較される配列の類似性は、パーセント相同性またはパーセント類似性として表すこともできる。同一性および/または相同性データは、完全ポリペプチドまたは遺伝子について、あるいは個々の領域のみについて収集することができる。従って、様々な核酸またはアミノ酸配列の相同なまたは同一の領域は、配列中の一致によって規定される。これらの領域は多くの場合、同じ機能または類似の機能を有する。これらの領域は小さく、数個のヌクレオチドまたはアミノ酸しか含まないこともある。このような小さな領域が、タンパク質の全体活性について必須の機能を実行する場合がしばしばある。結果的には、個々の、場合によっては小さな領域についてのみ配列一致を得ることには価値がある可能性がある。しかし、特に指定のない限り、本出願における「同一性データ」または「相同性データ」は、関連する記載の核酸配列またはアミノ酸配列の全長を指す。
【0030】
本発明の主題の別の実施形態において、本発明の洗浄または清浄剤は、それに含まれるプロテアーゼが、上記のとおり配列番号1に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつこのアミノ酸配列は、配列番号1に記載のプロテアーゼから、1つ以上の保存的アミノ酸置換によって得られたかまたは得ることが可能であり、このプロテアーゼは、99位において、この位置に上記のとおりに指定されたアミノ酸の1つを依然として有するものである。用語「保存的アミノ酸置換」とは、1つのアミノ酸残基の別のアミノ酸残基への交換(置換)であって、この置換が、交換されたアミノ酸の位置において極性または電荷の変化をもたらさないもの、例えば非極性アミノ酸残基の別の非極性アミノ酸残基への置換を意味する。本発明において、保存的アミノ酸置換とは、例えば:G=A=S、l=V=L=M、D=E、N=Q、K=R、Y=F、S=T、G=A=I=V=L=M=Y=F=W=P=S=Tを含む。
【0031】
本発明の別の実施形態において、本発明による洗浄または清浄剤は、その清浄力が、配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8に記載されるアミノ酸配列、特に好ましくは配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを含有する洗浄または清浄剤の清浄力に少なくとも相当するものである。本発明による洗浄または清浄剤の清浄力は、洗浄液1リットル当たり2.0〜9.0グラムの用量でアミラーゼを含む洗浄剤ならびにプロテアーゼ(この場合、比較されるプロテアーゼは(活性タンパク質に基づいて)同じ濃度で添加される)を含む洗浄系において測定され、その清浄力は、綿についた血液-牛乳/インク、綿についた全卵/顔料、ポリエステル/綿についたピーナツ油-顔料/インクおよび綿についた草などの1種以上の汚れに対して、特に1種以上の以下の汚れ:
-綿についた血液-牛乳/インク:製品番号C-05、CFT(試験材料センター(Center For Testmaterial))B.V.(フラールディンゲン(Vlaardingen)、オランダ)から入手可能
-綿についた全卵/顔料(全卵/煤):製品番号10N、wfk Testgewebe GmbH;(ブリュッゲン-ブラハト(Brueggen-Bracht)、ドイツ)から入手可能、または製品C-S-37、CFT(試験材料センター)B.V.(フラールディンゲン、オランダ)から入手可能
-ポリエステル/綿についたピーナツ油-顔料/インク:製品番号PC-10、CFT(試験材料センター)B.V.(フラールディンゲン、オランダ)から入手可能
-綿についた草:製品番号164、Eidgenoessische Material- und Pruefanstalt (EMPA) Testmaterialien AG, St. Gallen(スイス)から入手可能
に対して、洗浄された織物の白色度を計測することによって測定され、この場合洗浄工程は温度20℃で少なくとも30分間、場合により60分間続き、水の硬度は15.5〜16.5(ドイツ硬度)である。
【0032】
上記の洗浄系のための洗浄剤は液体洗浄剤であり、以下のとおりに製剤化される(数値は全て重量パーセント):0.3〜0.5%のキサンタン、0.2〜0.4%の消泡剤、6〜7%のグリセリン、0.3〜0.5%のエタノール、4〜7%のFAEOS(脂肪アルコールエーテルスルフェート)、24〜28%の非イオン性界面活性剤、1%のホウ酸、1〜2%のクエン酸ナトリウム(二水和物)、2〜4%のソーダ、14〜16%のココナツ脂肪酸、0.5%のHEDP(1-ヒドロキシエタン-(1,1-ジホスホン酸))、0〜0.4%のPVP(ポリビニルピロリドン)、0〜0.5%の光学的光沢剤、0〜0.001%の着色剤、0.0001〜0.04%のアミラーゼ(活性タンパク質)、好ましくはStainzyme(登録商標)(Novozymes companyから販売されているアミラーゼ製剤)、残りは脱塩水。本発明のプロテアーゼは、活性タンパク質に基づいて0.001〜0.1%、好ましくは0.01〜0.06%の濃度で洗浄剤に組み込まれる。液体洗浄剤は、好ましくは洗浄液1リットル当たり2.0〜9.0グラム、好ましくは3.0〜8.2グラム、4.0〜7.5グラムおよび特に好ましくは4.7グラムの用量である。洗浄は、好ましくはpH8〜pH10.5、好ましくはpH8〜pH9のpH範囲で行われる。洗浄液中のプロテアーゼ活性もアミラーゼ活性も、洗浄の開始時にはゼロではない。
【0033】
白色度、すなわち清浄力の尺度としての汚れの明色化は、光学的測定法を用いて、好ましくは光度的に測定される。このための好適な装置は、例えばMinolta CM508d分光計である。計測のために使用される装置は、通常、白色基準、好ましくは装置が供給する白色基準で校正されている。
【0034】
本発明の別の実施形態において、本発明による洗浄または清浄剤は、その保存安定性もまた、少なくとも、配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8に記載されるアミノ酸配列、特に好ましくは配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを含有する洗浄または清浄剤の保存安定性に相当する。このような保存安定性は、本発明による洗浄または清浄剤が、30℃で8週間の保存後に、比較のために使用した洗浄または清浄剤と同等のまたはこれより高いアミラーゼ活性を示す場合に存在し、この場合本発明の剤は、比較のために使用した洗浄または清浄剤とは、含まれるプロテアーゼのみが異なる。
【0035】
比較物質は、特に好ましくは以下の組成を有する液体洗浄剤である(量は全て重量パーセント):
【0036】
本発明のプロテアーゼは、本発明の洗浄剤に、活性タンパク質に基づいて0.001〜0.1%、好ましくは0.01〜0.06%の濃度で組み込まれる。
【0037】
保存の開始時、比較される両剤は、同じ初期アミロース分解活性を示し、活性酵素に関して同じ濃度でプロテアーゼを含み、また両剤は同じ方法で処理される。これらの剤中のタンパク質分解活性は、基質suc-AAPF-pNAからの発色団パラ-ニトロアニリン(pNA)の放出に基づいて測定され、またこれらのアミロース分解活性は上記のとおりに測定される。
【0038】
各剤中のプロテアーゼとアミラーゼの初期活性はゼロに等しくはない。
【0039】
アミラーゼを、活性タンパク質に関してプロテアーゼと同じ活性かつ同じ濃度で加えると、全タンパク質に対する活性物質の比率(比活性値)におけるあらゆる可能性のある多様性を考慮に入れても、確実に真の酵素的特性を比較することができる。
【0040】
本発明では、特に指定のない限り、本発明の液体洗浄剤の重量を参照する。つまり、本発明のデータは重量に基づく。
【0041】
多くのプロテアーゼ、特にサブチリシンは、いわゆるタンパク質前駆体として形成され、すなわちプロペプチドおよびシグナルペプチドと共に形成され、この場合、シグナルペプチドの機能は、通常、プロテアーゼをペリプラズムまたは細胞周囲の媒質中に産生する細胞から、プロテアーゼを確実に排出することにあり、またプロペプチドは、通常、プロテアーゼの正しいフォールディングのために必要とされる。シグナルペプチドとプロペプチドは、一般的には、タンパク質前駆体のN末端部分に存在する。自然条件下では、シグナルペプチドは、シグナルペプチダーゼによって残りのプロテアーゼから切断される。次いで、プロペプチドに支持されたプロテアーゼの正しい最終的なフォールディングが生じる。その後、プロテアーゼは活性型になり、プロペプチド自体を切断する。プロペプチドの切断後、成熟プロテアーゼ、特にサブチリシンは、元来存在していたN末端アミノ酸の非存在下でその触媒活性を発揮する。一般的な、また特に本発明における技術的応用のためには、タンパク質前駆体よりも成熟プロテアーゼ、すなわち産生後にプロセシングされた酵素の方が好ましい。さらにプロテアーゼは、それらを産生する細胞から、ポリペプチド鎖の産生後、例えば糖分子の付着、ホルミル化、アミノ化等によって修飾される可能性がある。このような修飾は翻訳後修飾であり、プロテアーゼの機能に対し、必ずというわけではないが影響を及ぼす場合がある。
【0042】
さらに成熟プロテアーゼをN末端および/またはC末端で短縮化し、配列番号1または配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8と比較して短縮化されたプロテアーゼ、すなわち断片が、本発明による洗浄または清浄剤に含まれるようにすることもできる。この場合、同一性データは全て、当該断片が配列番号1とのアライメントにおいて一致する領域を指す。しかし、いずれの場合も、当該断片は、配列番号1とのアライメントにおいて99位と一致する位置を含み、この位置に対応するアミノ酸を有する。
【0043】
有利なことに、上記の断片は、1つ以上の追加的な上述した位置も含み、その位置に対応するアミノ酸も有する。さらに、かかる断片はタンパク質分解活性を有する。この点に関して、さらに好ましい断片は、配列番号1または配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8と一致する、少なくとも50個または少なくとも60個、70個、80個、90個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、260個、265個、266個、267個、もしくは268個の連結アミノ酸位置の長さを超えるアミノ酸配列を含み、上記のアミノ酸を99位に供し、また場合により3位および/または4位および/または61位および/または154位および/または188位および/または193位および/または199位および/または211位に供する。かかる断片を含む本発明の洗浄または清浄剤の清浄力および/または保存安定性は、少なくとも、配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8に記載されるアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むプロテアーゼを含有する洗浄または清浄剤の清浄力および/または保存安定性に相当し、それぞれ上記のとおりに測定される。
【0044】
本発明の別の主題は、液体洗浄または清浄剤であって、以下:
(a)
a. 配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むプロテアーゼ;
b. 配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8において少なくとも1つの位置で改変されたアミノ酸配列を含むプロテアーゼであって、ここで配列番号1に従う番号付けでの改変が、以下:
i. 3位のトレオニン(3T)、
ii. 4位のイソロイシン(4I)、
iii. 61位のアラニン、トレオニンまたはアルギニン(61A、61Tまたは61R)、
iv. 154位のアスパラギン酸またはグルタミン酸(154Dまたは154E)、
v. 188位のプロリン(188P)、
vi. 193位のメチオニン(193M)、
vii. 199位のイソロイシン(199I)、
viii. 211位のアスパラギン酸、グルタミン酸またはグリシン(211D、211Eまたは211G)、
ix. アミノ酸(i)〜(viii)の組み合わせ
からなる群から選択される上記プロテアーゼ;
からなる群から選択されるプロテアーゼ;
(b) アミラーゼ
を含む上記液体洗浄または清浄剤である。
【0045】
これらのプロテアーゼは、極めて特に好ましくは本発明による液体洗浄または清浄剤に組み込まれる。これらのプロテアーゼは、配列番号1から出発して、配列番号1に従う番号付けで、99位のアミノ酸のアルギニンを、アミノ酸のグルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)またはアミノ酸のアスパラギン(N)もしくはグルタミン(Q)またはアミノ酸のアラニン(A)もしくはグリシン(G)もしくはセリン(S)に置換することによって得られる。これらのアミノ酸配列は、配列プロトコル中に、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8として記載されている。さらにこれらのプロテアーゼは、99位に提供されるアミノ酸に加えて、配列番号1とのアライメントと一致するように、またその結果として配列番号1に従う番号付けで、3位、4位、61位、154位、188位、193位、199位および211位に1つ以上の上記のアミノ酸を有し得る。これらの位置に提供される上記のアミノ酸は、さらに有利な特性を生じさせ、および/またはこれらのプロテアーゼが有する既存の特性を強化もする。特に、これらは液体洗浄または清浄剤中のプロテアーゼ、またはこの洗浄または清浄剤によって形成される洗浄液中のプロテアーゼのタンパク質分解活性および/または安定性の増加をもたらす。上記の実施形態は全て、適切な場合、同様にこれらの特に好ましいプロテアーゼを適用する。
【0046】
本発明による剤は、上記のプロテアーゼを、好ましさが増大する順に、活性タンパク質に基づいて1x10-8〜5wt%、0.0001〜1wt%、0.0005〜0.5wt%、0.001〜0.1wt%および特に好ましくは0.001〜0.06wt%の量で含む。本発明による剤は、上記のアミラーゼを、好ましさが増大する順に、活性タンパク質に基づいて1x10-8〜5wt%、0.00001〜1wt%、0.00005〜0.5wt%、0.0001〜0.1wt%および特に好ましくは0.0001〜0.05wt%の量で含む。タンパク質濃度は、例えば、BCA法(ビシンコニン酸;2,2'-ビキノリル-4,4'-ジカルボン酸)またはビウレット(biuret)法(A. G. Gornall, C. S. BardawillおよびM.M. David, J. Biol. Chem., 177(1948), pp.751-766)のような公知の方法を用いて測定することができる。この点に関して、活性タンパク質濃度は、適切な不可逆的阻害剤(例えばプロテアーゼについてはフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF))の存在下で活性中心を滴定し、残存活性を計測することによって測定される(M. Benderら, J. Am. Chem. Soc. 88, 24 (1966), pp.5890-5913参照)。
【0047】
本発明のプロテアーゼおよび/またはアミラーゼは、これらを成熟前分解から保護するため、担体上に吸着されおよび/またはカプセル材の中に埋め込まれていてもよい。これによって本発明の洗浄液中、すなわち使用条件下で、上記の酵素が放出されて触媒活性を発揮することができる。
【0048】
本発明の別の実施形態において、本発明の洗浄または清浄剤は:
i. アニオン性および/またはポリアニオン性物質、および/または
ii. カチオン性および/またはポリカチオン性物質、および/または
iii. ヒドロキシル基および/またはポリヒドロキシル基を有する物質
から選択される成分をさらに含む。
【0049】
かかる物質の添加は、本発明の洗浄剤および清浄剤、特に、とりわけ上記のもののようなプロテアーゼおよびアミラーゼを含む液体洗浄または清浄剤の清浄力を、特に比較的低温で、とりわけ10℃〜50℃、10℃〜40℃、10℃〜30℃および/または20℃〜40℃でさらに高めることが見出された。特に、本発明により組み込まれ得るプロテアーゼと組み合わせた場合、とりわけ少なくとも1種のプロテアーゼ感受性の汚れ、特に上記のプロテアーゼ感受性の汚れの除去に関して相乗効果が生じる。
【0050】
上記のi.に挙げられる物質はアニオン性またはポリアニオン性の物質に関し、すなわちこれらの物質は、少なくとも1つのまた好ましくは複数の負電荷を有する。これらの物質は、好ましくは少なくとも1つの負電荷を帯びたモノマー、好ましくは複数の負電荷を帯びたモノマーを含むポリマーに関する。従って、この本発明による好ましいポリマーは、負電荷を帯びたポリマーである。例示的には、有機酸またはそれらの塩のポリマー、とりわけポリアクリレートおよび/もしくは多糖酸ならびに/またはポリアクリレートコポリマーおよび/もしくは多糖コポリマーが好ましい。この点に関して、さらに好ましい化合物は、ポリアクリル酸スルホネートまたはポリカルボキシレート、およびそれらの塩、コポリマーもしくは当該コポリマーの塩である。
【0051】
例示的な、特に好ましく添加される物質は、Acusol 587D(ポリアクリル酸スルホネート;Rohm & Haas/Dow Chemical)、Acusol 445N(ポリカルボキシレートナトリウム塩;Rohm & Haas/Dow Chemical)、Acusol 590(ポリアクリレートコポリマー;Rohm & Haas/Dow Chemical)、Acusol 916(ポリアクリレートナトリウム塩;Rohm & Haas/Dow Chemical)、Sokalan CP42(修飾ポリカルボキシレートナトリウム塩;BASF)、Sokalan PA 30CL(ポリカルボキシレートナトリウム塩;BASF)、Dequest P 9000(ポリマレイン酸;Thermphos)、アルギン酸、ポリ-2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、ポリ-4-スチレンスルホン酸-コ-マレイン酸ナトリウム塩、ポリアクリルアミド-コ-アクリル酸ナトリウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリメチルビニルエーテル-alt-マレイン酸またはポリビニルスルホン酸ナトリウム塩である。
【0052】
ii.に挙げられる物質は、カチオン性またはポリカチオン性物質に関し、すなわちこれらの物質は、少なくとも1つのおよび好ましくは複数の正電荷を有する。これらは、好ましくは少なくとも1つの正電荷を帯びたモノマー、好ましくは複数の正電荷を帯びたモノマーを含むポリマーに関する。従って、この本発明による好ましいポリマーは、正電荷を帯びたポリマーである。この点に関して例示的な好ましい化合物は、ポリアミン、ポリエチレンイミンまたはそれらのコポリマーの塩、ポリアリルアミンの塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム化合物またはポリ(アクリルアミド-コ-ジアリルジメチルアンモニウム)化合物の塩である。
【0053】
iii.に挙げられる物質は、少なくとも1つのヒドロキシル基および/またはポリヒドロキシル基を有し、好ましくは複数のヒドロキシル基および/またはポリヒドロキシル基を有する物質に関する。この点に関して、例えばポリビニルアルコール、例えば商品名Mowiol(Kremer Pigmente GmbH & Co. KG)として入手可能なポリビニルアルコールが好ましい。
【0054】
この点において、実際の物質は、上記の群i.〜iii.の1つ以上に属し得るということが明示的に指摘される。例えば、実際の物質は、1つ以上のヒドロキシル基および/またはポリヒドロキシル基を有するアニオン性ポリマーに関する可能性がある。そのためこの種の物質は、群i.と群iii.に属する。同様に、1つ以上のヒドロキシル基および/またはポリヒドロキシル基を有するカチオン性ポリマーは、群ii.と群iiiに属する。
【0055】
本発明においては、同様に、i. ii.またはiiiに属する上記の物質の誘導体を加えることができる。本出願において、「誘導体」とは、上記の物質の1つから出発して、例えば側鎖の変換によって、または当該物質上に別の化合物を共有結合させることによって、化学的に修飾された物質を意味すると理解される。このような化合物は、例えば、脂質または単糖、オリゴ糖、もしくは多糖またはアミンもしくはアミン化合物などの低分子量化合物に関し得る。さらにこの物質は、糖化され、加水分解され、酸化され、N-メチル化され、N-ホルミル化され、N-アセチル化されていてよく、またはメチル、ホルミル、エチル、アセチル、t-ブチル、アニシル、ベンジル、トリフルオロアセチル、N-ヒドロキシスクシンイミド、t-ブチルオキシカルボニル、ベンゾイル、4-メチルベンジル、チオアニシル、チオクレシル、ベンジルオキシメチル、4-ニトロフェニル、ベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンゾイル、2-ニトロフェニルスルフェニル、4-トルエンスルホニル、ペンタフルオロフェニル、ジフェニルメチル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2,4,5-トリクロロフェニル、2-ブロモベンジルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、トリフェニルメチル、2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニルを含んでいてよい。
【0056】
同様に、「誘導体」とは、ちょうど適当な高分子のかご構造中に非共有結合的に封入するような、上記の物質の高分子担体上への共有結合または非共有結合を意味すると理解される。他の高分子化合物、例えばポリエチレングリコールなどと結合させてもよい。さらに好ましい化学修飾は、化学基-COOH、-OH、=NH、-NH2、-SH〜-COOR、-OR、-NHR、-NR2、-NHR、-NR、-SRの1つ以上の修飾であって;この場合:
Rは、-CH=CH-R2、-C=C-R2、-C(R2)=CH2、-C(R2)=C(R3)、-CH=NR2、-C(R2)=N-R3、置換を有するまたは有さない4〜7員の炭素環系、置換を有するまたは有さない4〜7員の窒素複素環、または1〜5個の二重結合または三重結合を有し、R1、R2、またはR3から選択される置換基を有するC2〜C8の炭素鎖であり、この場合
-R1は、H、-R、-NO2、-CN、ハロゲン化物置換基、-N3、C1-8アルキル、-(CH2)nCO2R2、-C2-8 アルケニル-CO2R2、-O(CH2)nCO2R2、-C(O)NR2R3、-P(O)(OR2)2、アルキル置換テトラゾール-5-イル、-(CH2)nO(CH2)nアリール、-NR2R3、-(CH2)nOR2、-(CH2)nSR2、-N(R2)C(O)R3、-S(O2)NR2R3、-N(R2)S(O2)R3、-(CHR2)nNR2R3、-C(O)R3、(CH2)nN(R3)C(O)R3、-N(R2)CR2R3、置換または非置換の(CH2)n-シクロアルキル、置換または非置換の(CH2)n-フェニル、または-環であり;ここでnは1より大きい数であり;
-R2は、H、ハロゲン化物置換基、-アルキル、-ハロアルキル、-(CH2)n-フェニル、-(CH2)1-3-ビフェニル、-(CH2)1-4-Ph-N(SO2-C1-2-アルキル)2、-CO(CHR1)n-OR1、-(CHR1)n-複素環、-(CHR1)n-NH-CO-R1、-(CHR1)n-NH-SO2R1、-(CHR1)n-Ph-N(SO2-C1-2-アルキル)2、-(CHR1)n-C(O)(CHR1)-NHR1、-(CHR1)n-C(S)(CHR1)-NHR1、-(CH2)nO(CH2)nCH3、-CF3、-C2-C5アシル、-(CHR1)nOH、-(CHR1)nCO2R1、-(CHR1)n-O-アルキル、-(CHR1)n-O-(CH2)n-O-アルキル、-(CHR1)n-S-アルキル、-(CHR1)n-S(O)-アルキル、-(CHR1)n-S(O2)-アルキル、-(CHR1)n-S(O2)-NHR3、-(CHR3)n-N3、-(CHR3)nNHR4、1〜5個の二重結合を有するC2〜C8の鎖のアルケン鎖、1〜5個の三重結合を有するC2〜C8の鎖のアルキン鎖、置換または非置換の-(CHR3)n複素環、置換または非置換の飽和または不飽和の-(CHR3)nシクロアルキルであり;ここでnは1より大きい数であり、R1とR3は同じであっても異なっていてもよく;
-R3は、H、-OH、-CN、置換アルキル、-C2〜C8アルケニル、置換または非置換のシクロアルキル、-N(R1)R2、4〜7個の炭素原子の飽和または不飽和のC5〜C7複素環または複素二環、4〜7個の炭素原子の飽和または不飽和の複素環または複素二環からなる-NR1、-NR2、-NR1R2であり;
-R4は、H、-(CH2)nOH、-C(O)OR5、-C(O)SR5、-(CH2)nC(O)NR6R7、-O-C(O)-O-R6、アミノ酸またはペプチドであり;ここでnは0〜4の数であり;
-R5はHであり、
-R6は、-C(R7)-(CH2)n-O-C(O)-R8、-(CH2)n-C(R7)-O-C(O)R8、-(CH2)n-C(R7)-O-C(O)-O-R8;または-C(R7)-(CH2)n-O-C(O)-O-R8;ここでnは0〜4の数であり;
-R7およびR8は、それぞれ、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、複素環、置換複素環、アルキルアリール、置換アルキルアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、またはCH2CO2アルキルであり、ここでR7とR8は同じであっても異なっていてもよい。
【0057】
本発明によれば、上記のi.、ii.もしくはiiiに属する物質および/またはそれらの誘導体の、可能性のある全ての組み合わせを用いることもできる。
【0058】
本発明による液体洗浄または清浄剤は、そのままで、または水で希釈した後に、特に織物および/または硬表面を清浄するために使用することができる。このような希釈は簡単に行うことが可能であり、測定量の本剤を、剤:水の規定の重量比で追加量の水に希釈し、場合により確実に本剤を水中で均一に分散させるため振盪する。希釈のための可能な重量比または体積比は、1:0(剤:水)〜1:10000または1:20000(剤:水)、好ましくは1:10〜1:2000(剤:水)である。
【0059】
あらゆる液体剤形または自由流動性(free-flowing)剤形を、本発明の液体洗浄または清浄剤として使用することができる。
【0060】
本出願において、「自由流動性(free-flowing)」とは、注入可能で、かつ数万mPasまでの粘度を有し得る製剤を意味すると理解される。この粘度は、標準的な方法を使用して(例えば、ブルックフィールド型粘度計LVT-II(20rpmかつ20℃でスピンドル3)を使用して)計測することが可能であり、好ましくは5〜10,000mPasの範囲内である。好ましい剤は、10〜8000mPas、特に好ましくは120〜3000mPasの粘度を有する。従って、本発明において、液体洗浄または清浄剤は、ゲル状またはペースト状であってもよく、均一な溶液または懸濁液であってよく、また例えば、スプレーし得るものであってもよく、または他の通常の剤形にパッケージされていてもよい。洗浄剤は、考えられるあらゆる種類の洗浄剤、特に織物、カーペットまたは天然繊維用の洗浄剤を包含する。これらは、手動用および/または自動用に提供され得る。本発明の洗浄剤はさらに洗浄補助剤を含み、これらの洗浄補助剤は、手動または自動の織物洗浄の過程で、別の効果を達成するため、実際の洗浄剤中に計量添加される。同様に、本発明の清浄剤は、硬表面の清浄および/または消毒、手動食器洗浄用洗剤および自動食器洗浄機用洗剤、カーペットクリーナー、研磨剤、ガラスクリーナー、WC芳香剤等のための、上記の任意の剤形の剤を全て包含する。織物用プレコンディショナーおよびアフターコンディショナーは、一方では、例えば頑固な汚れを部分的に溶解させるために実際の洗浄の前に洗濯物と接触させる物質であり、他方では、実際の織物洗浄から続くステップにおいて、洗濯物に、心地よい感触、水切りの不要性または低い残存静電荷などの追加的な望ましい特性を付与する物質である。最後に挙げた剤は、とりわけ柔軟剤を含む。消毒剤は、例えば、手の消毒剤、表面消毒剤および機器消毒剤であり、これらもまた、上記の任意の剤形であってよい。
【0061】
本発明の別の好ましい実施形態において、洗浄または清浄剤は、少なくとも1種のさらなる成分、特に、ホスホネート、界面活性剤、ビルダー、非水性溶媒、酸、水溶性塩、増粘剤ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む。
【0062】
ホスホネートは、ホスホン酸の塩および有機化合物、特にエステルである。ホスホン酸の塩は、一級ホスホン酸塩(M'H2PO3またはHP(O)(OH)(OM'))および二級ホスホン酸塩(M'2HPO3またはHP(O)(OM')2)(ここでM'は一価の金属を表す)として存在する。これらの無機ホスホン酸塩は、一級または二級亜リン酸塩とも呼ばれる。無機ホスホン酸塩は、例えば、ホスホン酸HP(O)(OH)2(特に亜リン酸の安定な互変異型)を、一価(一級)または二価(二級)の塩基、例えば水酸化アルカリ金属と反応させることによって生じる。本発明において、リン-炭素結合を有する有機P-置換ホスホネート(有機リン化合物)が好ましい。これらの一般構造式は、R1P(O)(OR2)2(R1および/またはR2 = アルキル、アリールまたはH)であり、この場合アルキル基またはアリール基はさらに置換され、または追加的な化学基を有しうる。有機P-置換ホスホネートは、例えば、ミカエリス・アルブゾフ(Michaelis-Arbusov)反応によって形成される。これらのホスホネートの多くは水溶性である。一部の産業上重要なホスホネートは、NR-(CH2)x-PO(OH)2(R = アルキル、アリールまたはH)型の追加的なアミノ基(1つまたは複数)を有する。これらのアミノホスホネートの一部は、EDTA、NTAまたはDTPAなどの錯化剤と構造的に類似し、かつ類似の機能を有する。本発明において特に好ましいホスホネートは、特に、例えば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸 (HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(ATMP、アミノ-トリス(メチレンホスホン酸)とも呼ばれる)、またはニトロロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP))、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMPまたはDETPMPまたはDTPNT)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)とも呼ばれる)および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBS-AM、(2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸または3-カルボキシ-3-ホスホノアジピン酸とも呼ばれる)などの有機ホスホネートを含み、これらは、主にアンモニウム塩またはアルカリ金属塩の形態で加えられる。ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)ナトリウム塩が特に好ましい。このようなホスホネートは、例えば商品名Dequest(登録商標)2066(Thermphos社)として入手可能である。
【0063】
上記ホスホネートは、好ましくは洗浄または清浄剤中に、0.01〜2.5wt%および好ましさが増大する順に0.02〜2wt%、0.03〜1.5wt%および特に0.05〜1wt%の量で含まれる。
【0064】
アニオン性、非イオン性、両性イオン性および/または両性の界面活性剤を、本発明の界面活性剤(1種または複数種)として加えてもよい。産業的利用の観点からは、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との混合物が好ましい。本発明の液体洗浄または清浄剤の全界面活性剤含量は、好ましくは、液体洗浄または清浄剤全量に基づいて、60wt%以下および特に好ましくは45wt%以下である。
【0065】
好適な非イオン性界面活性剤としては、アルコキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸アミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、アミンオキシド、アルキルポリグルコシドおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
好ましい非イオン性界面活性剤は、アルコキシル化され、有利にはエトキシル化された、特に、好ましくは8〜18個の炭素原子を含み、かつ平均でアルコール1モル当たり1〜12モルのエチレンオキシド(EO)を含む第一級アルコールであり、この場合アルコール基は直鎖または好ましくは2位のメチル分枝鎖であってよく、あるいは、例えば典型的にはオキソアルコール残基中に含まれる混合物の形態の直鎖基およびメチル分枝鎖基を含んでいてよい。しかしながら、特に、例えばココアルコール、パームアルコール、獣脂アルコールまたはオレイルアルコール由来の、12〜18個の炭素原子を含む天然起源の直鎖アルコール基を有し、かつアルコール1モル当たり平均2個〜8個のEOを有するアルコールエトキシレートが好ましい。例示的な好ましいエトキシル化アルコールとしては、3EOまたは4EOを有するC12-14アルコール、7EOを有するC9-11アルコール、3EO、5EO、7EOまたは8EOを有するC13-15アルコール、3EO、5EOまたは7EOを有するC12-18アルコールおよびこれらの混合物(例えば、3EOを有するC12-14アルコールと5EOを有するC12-18アルコールとの混合物)が挙げられる。上記のエトキシル化度は統計的平均値を構成し、特定産物について整数番号または分数番号となる場合がある。好ましいアルコールエトキシレートは、狭い同族体分布を有する(狭範囲エトキシレート、NRE)。これらの非イオン性界面活性剤に加えて、12を超えるEOを有する脂肪アルコールを使用してもよい。これらの例には、14EO、25EO、30EOまたは40EOを有する獣脂脂肪アルコールがある。また本発明によれば、分子中にEO基とPO基を共に含む非イオン性界面活性剤を使用することができる。さらに、(高)分枝エトキシル化脂肪アルコールと直鎖エトキシル化脂肪アルコールとの混合物、例えば、7EOを有するC16-18脂肪アルコールと7EOを有する2-プロピルヘプタノールとの混合物なども適している。本発明の洗浄剤、清浄剤、後処理用または補助的洗浄剤は、特に好ましくは非イオン性界面活性剤として、7EOを有するC12-18脂肪アルコールまたは7EOを有するC13-15オキソアルコールを含む。
【0067】
本発明の洗浄または清浄剤における非イオン性界面活性剤の含量は、好ましくは3〜40wt%、有利には5〜30wt%および特に7〜20wt%であり、いずれの場合も全洗浄または清浄剤全量に基づく。
【0068】
非イオン性界面活性剤に加えて、本発明の洗浄または清浄剤は、アニオン性界面活性剤を含み得る。アニオン性界面活性剤として、スルホネート、スルフェート、石鹸、アルキルホスフェート、アニオン性シリコ-界面活性剤およびこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0069】
好適なスルホネート型の界面活性剤は、有利には、C9-13アルキルベンゼンスルホネート、オレフィンスルホネート(すなわちアルケンおよびヒドロキシアルカンのスルホネートとジスルホネートとの混合物)であり、例えば、末端二重結合または内部二重結合を有するC12-18モノオレフィンから、気体硫黄トリオキシドでスルホン化し、その後スルホン化産物をアルカリ加水分解または酸加水分解することによって得られる。C12-18アルカンスルホネートのエステルおよびα-スルホ脂肪酸のエステル(スルホン酸エステル)、例えば、水素化ココ酸、パームナッツ酸、または獣脂酸のα-スルホン化メチルエステルは、同様に適している。
【0070】
好ましいアルキル(アルケニル)スルフェートは、C12-C18脂肪アルコール(例えばココナツバターアルコール、獣脂アルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールもしくはステアリルアルコール)、またはC10-C20オキソアルコールから誘導される硫酸ハーフエステルのアルカリ金属塩および特にナトリウム塩、ならびにこれらの鎖長の第二級アルコールの硫酸ハーフエステルのアルカリ金属塩および特にナトリウム塩である。洗浄能力を理由として、C12-C16アルキルスルフェートおよびC12-C15アルキルスルフェートならびにC14-C15アルキルスルフェートが好ましい。2,3-アルキルスルフェートもまた、好適なアニオン性界面活性剤である。
【0071】
また、1〜6モルのエチレンオキシドでエトキシル化された直鎖または分枝鎖のC7-21アルコールから誘導される硫酸モノエステル、例えば、平均3.5モルのエチレンオキシド(EO)を有する2-メチル分枝C9-11アルコールまたは1〜4EOを有するC12-18脂肪アルコールも好適である。
【0072】
石鹸もまた、好ましいアニオン性界面活性剤である。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、(水素化された)エルカ酸およびベヘン酸の塩などの飽和および不飽和脂肪酸の石鹸、ならびに、特にココナツ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸または獣脂脂肪酸などの天然の脂肪酸から誘導される石鹸混合物が適している。
【0073】
石鹸を含むアニオン性界面活性剤は、それらのナトリウム塩、カリウム塩もしくはマグネシウム塩、またはアンモニウム塩の形態で含まれ得る。アニオン性界面活性剤は、好ましくはそれらのナトリウム塩の形態で存在する。またアニオン性界面活性剤のためのさらに好ましい対イオンは、プロトン化形態のコリン、トリエチルアミンまたはメチルエチルアミンである。
【0074】
洗浄または清浄剤中のアニオン性界面活性剤の含量は、1〜40wt%、有利には5〜30wt%および極めて特に好ましくは10〜25wt%であり、いずれの場合も洗浄または清浄剤全量に基づく。
【0075】
シリケート、アルミニウムシリケート(特にゼオライト)、カーボネート、有機ジカルボン酸および有機ポリカルボン酸の塩ならびにこれらの物質の混合物は、特に本発明の洗浄または清浄剤に含まれるビルダーとして挙げることができる。
【0076】
本発明の洗浄または清浄剤中に存在し得る有機ビルダーは、例えばナトリウム塩の形態で使用可能なポリカルボン酸であり、本発明において「ポリカルボン酸」とは、2つ以上の酸機能を有するカルボン酸であると理解される。これらとしては、例えばクエン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、糖酸、アミノカルボン酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)およびこれらの誘導体ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましい塩は、クエン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、糖酸などのポリカルボン酸の塩およびこれらの混合物である。
【0077】
また高分子ポリカルボキシレートもビルダーとして適している。これらは、例えばポリアクリル酸またはポリメタクリル酸のアルカリ金属塩であり、例えば600〜750,000g/モルの相対分子量を有するポリアクリル酸またはポリメタクリル酸のアルカリ金属塩である。特に好適なポリマーは、好ましくは1000〜15,000g/モルの分子量を有するポリアクリレートである。同様に、このグループの好ましい代表例は、優れた溶解性を有することから、1000〜10,000g/モルおよび特に好ましくは1000〜5000g/モルの分子量を有する短鎖ポリアクリレートであり得る。
【0078】
さらに好適な共重合体ポリカルボキシレートは、特にメタクリル酸を含むアクリル酸の共重合体ポリカルボキシレートおよびマレイン酸を含むアクリル酸またはメタクリル酸の共重合体ポリカルボキシレートである。水溶解性を高めるため、本発明のポリマーは、アリルオキシベンゼンスルホン酸およびメタリルスルホン酸などのモノマーとして、アリルスルホン酸を含んでいてもよい。
【0079】
しかし、例えばクエン酸などの可溶性ビルダーが好ましく、あるいは1000〜5000g/モルの分子量を有するアクリルポリマーが、本発明の液体洗浄または清浄剤中に好ましく添加される。
【0080】
本明細書中で、高分子ポリカルボキシレートについて言及される分子量は、基本的にはUV検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、特定の酸形態の重量平均分子量(Mw)である。測定は、外部ポリアクリル酸標準に対して行われ、調査するポリマーとの構造的類似性から実際の分子量値が得られる。これらの値は、標準としてのポリスチレンスルホン酸に対して測定される分子量とは著しく異なる。ポリスチレンスルホン酸に対して測定される分子量は、一般的には、本明細書中で言及される分子量より著しく高い。
【0081】
これらの種類の有機ビルダーは、所望のとおりに、40wt%以下、特に25wt%以下および好ましくは1wt%〜8wt%の量で含まれ得る。上記の上限値に近い量は、好ましくはペースト状または液状、特に水性の組成物中に組み込まれる。
【0082】
本発明による洗浄または清浄剤は液体であり、好ましくは主溶媒として水を含む。さらに、本発明の洗浄または清浄剤には非水性溶媒を加えることができる。好適な非水性溶媒としては、規定の濃度範囲内で水と混合し得る限り、一価もしくは多価のアルコール、アルカノールアミンまたはグリコールエーテルが挙げられる。これらの溶媒は、好ましくはエタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、ブタノール、グリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン、ジグリコール、プロピルジグリコール、ブチルジグリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジイソプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、ブトキシトリグリコール、1-ブトキシエトキシ-2-プロパノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、プロピレングリコールt-ブチルエーテル、ジ-n-オクチルエーテルならびにこれらの溶媒の混合物から選択される。しかし、本発明の洗浄または清浄剤は、非水性溶媒としてポリオールを含むことが好ましい。特にポリオールとして、グリセリン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび/またはジプロピレングリコールを挙げることができる。本発明の洗浄または清浄剤は、特に好ましくはポリオールと一価アルコールとの混合物を含む。非水性溶媒は、本発明の洗浄または清浄剤に、0.5〜15wt%の量で加えることができるが、しかし好ましくは12wt%以下である。
【0083】
通常の成分を混合することから生じたpHを所望のレベルまで調整するため、本剤は、系および環境に適した酸、特にクエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸および/またはアジピン酸、さらに鉱酸、特に硫酸、または塩基、特に水酸化アンモニウムもしくは水酸化アルカリ金属も含み得る。これらの種類のpH調整剤は、好ましくは20wt%以下、特に1.2wt%〜17wt%の量で本剤に含まれる。
【0084】
本発明において、剤は、例えば、粘度を調整するのに役立つ1種以上の水溶性塩をさらに含み得る。この点に関して、これらは無機塩であってもあるいは有機塩であってもよい。本発明では、組み込まれ得る無機塩は、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムおよび/または遷移金属の、無色の水溶性ハロゲン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩および/または酸化物を含む群から選択され;さらにアンモニウム塩も組み込むことができる。この点に関して、アルカリ金属のハロゲン化物および硫酸塩が特に好ましい;結果として、無機塩は、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムならびにそれらの混合物を含む群から選択される。組み込むことができる例示的な有機塩は、カルボン酸の、無色の水溶性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩および/または遷移金属塩である。これらの塩は、好ましくはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩ならびにそれらの混合物を含む群から選択される。
【0085】
本発明による剤は、粘性を高めるために1種以上の増粘剤を含み得る。増粘剤は、好ましくはキサンタン、グアー、カラギーナン、アガーアガー、ジェラン、ペクチン、ローカストビーン粉およびこれらの混合物を含む群から選択される。またこれらの化合物は、無機塩の存在下で有効な増粘剤でもある。特に好ましい実施形態において、キサンタンが高塩濃度下でも効果的に粘性を高め、連続相のマクロ分離を防ぐため、本発明の洗浄または清浄剤は増粘剤としてキサンタンを含む。さらに本発明の増粘剤は、連続界面活性剤の乏しい相を安定化させてマクロ相分離を防ぐ。
【0086】
別法として、(メタ)アクリル酸(コ)ポリマーもまた、増粘剤として用いることができる。例示的な、好適なアクリルコポリマーおよびメタクリルコポリマーとして、ポリアルケニルポリエーテル、特に、サッカロース、ペンタエリスリトールまたはプロピレンのアリルエーテルと架橋したアクリル酸の高分子量ホモポリマー(The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association (CTFA)の国際化粧品成分辞典(International Dictionary of Cosmetic Ingredients)によるINCI名:カルボマー(Carbomer))(カルボキシビニルポリマーとも呼ばれる)が挙げられる。この種のポリアクリル酸は、とりわけ商品名Polygel(登録商標)およびCarbopol(登録商標)として入手可能である。さらに以下のアクリル酸コポリマー、例えば:(i) アクリル酸、メタクリル酸、および好ましくはC1-4アルカノールで形成されたこれらの単純エステルの群の2つ以上のモノマーのコポリマー(INCI:アクリレートコポリマー)(例えば、商品名Aculyn(登録商標)、Acusol(登録商標)またはTego(登録商標)ポリマーで入手可能);(ii) 例えば、サッカロースのアリルエーテルまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋した、アクリル酸、メタクリル酸、および好ましくはC1-4アルカノールで形成されたこれらの単純エステルの群の1つ以上のモノマーを有するC10-30アルキルアクリレートのコポリマーが属する、架橋高分子量アクリル酸コポリマー(INCI:アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー)(商品名Carbopol(登録商標)で入手可能)が適している。さらに好適なポリマーは、Sokalan(登録商標)型の(メタ)アクリル酸(コ)ポリマーである。
【0087】
本発明の洗浄または清浄剤が、(メタ)アクリル酸(コ)ポリマーを別の増粘剤、好ましくはキサンタンと組み合わせて含むことも好ましい。本発明の洗浄または清浄剤は、それぞれ洗浄または清浄剤全量に基づいて、0.05〜1.5wt%および好ましくは0.1〜1wt%の増粘剤を含み得る。この点に関して、添加される増粘剤の量は、増粘剤の種類および所望の粘度によって決まる。
【0088】
標準的な溶媒中の溶液の形態の、液状またはペースト状の本発明の剤は、一般的には、成分の単純な混合によって製造され、そのままで、または溶液として自動混合機中に添加することができる。
【0089】
本発明による洗浄または清浄剤は、専ら上記のプロテアーゼとアミラーゼのみを含んでいてもよい。別法として、これらは、追加的な加水分解酵素または他の酵素を、本剤の活性に適した濃度で含んでいてもよい。本発明の別の主題は、1種以上のさらなる酵素を追加的に含む剤によって示され、この場合、基本的には、これらの目的のために先行技術中に見られるあらゆる酵素を添加することができる。本発明による剤において触媒活性を発揮することができる酵素は全て、好ましくは追加的酵素として組み込むことが可能であり、このような酵素は特に、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、タンナーゼ、キシラナーゼ、キサンタナーゼ、β-グルコシダーゼ、ペクチナーゼ、カラギナーゼ、ペルヒドロラーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼまたはリパーゼ、ならびにそれらの混合物である。追加的酵素は、本発明の剤中に、活性タンパク質に基づいて全量1 x 10-8〜5 wt%でそれぞれ有利に含まれる。それぞれの追加的酵素は、好ましさが増大する順に、本発明による剤中に、活性タンパク質に基づいて1 x 10-7〜3 wt%、0.00001〜1 wt%、0.00005〜0.5 wt%、0.0001〜0.1 wt%および特に好ましくは0.0001〜0.05 wt%の量で含まれる。これらの酵素は、特に好ましくは特定の汚れまたは染みに対して相乗的清浄力を示し、つまり本剤の組成に含まれる酵素は、それらの清浄力を互いにサポートし合う。このような相乗効果は、極めて特に好ましくは、本発明で含まれるプロテアーゼと本発明による剤の別の酵素との間、特に上記のプロテアーゼおよびアミラーゼならびに/またはリパーゼおよび/もしくはマンナナーゼおよび/もしくはセルラーゼおよび/もしくはペクチナーゼの間に存在する。相乗効果は、本発明による剤の様々な酵素間に現れるだけでなく、1種以上の酵素と追加的成分との間にも現れる。
【0090】
本発明の別の主題は、汚れ、特に織物または硬表面上のプロテアーゼ感受性および/またはアミラーゼ感受性の汚れを除去するため、すなわち織物または硬表面の清浄のための本発明による剤の使用によって示される。特に、含まれるプロテアーゼとアミラーゼの組み合わせにより、織物からの、または硬表面からの対応する汚染を除去するため、本発明による剤をこの目的のために有利に使用することができる。手作業による洗浄、織物または硬表面からの染みの手動除去、または自動方法に関する使用は、本発明のこの主題の例示的実施形態である。本発明による洗浄または清浄剤について記載される全ての事実、主題および実施形態もまた、本発明のこの主題に適用することができる。従って本明細書において、この開示は適当な場所で明確に言及され、この開示は、本発明による前述の使用についても有効であることとする。
【0091】
本発明の別の主題は、本発明による洗浄または清浄剤が少なくとも1つの工程段階で使用される、織物または硬表面の清浄方法によって示される。
【0092】
これらの方法は、手動方法ならびに自動方法の両方を含むが、例えば添加量および接触時間の点においてより精密に制御できるため、自動方法の方が好ましい。織物の清浄方法は、一般的には、複数の工程段階で、清浄化すべき物に対して様々な清浄活性物質が適用され、接触時間の後に洗い流されるという方法であり、あるいは清浄化すべき物を、洗浄剤またはこの剤の溶液もしくは希釈液を用いて任意の他の方法で処理するという方法である。織物、特に硬表面以外の全ての物の清浄方法についても同様である。本発明による洗浄または清浄剤を、考えられる全ての洗浄工程または清浄工程の少なくとも1つの工程段階に加えることも可能である;従って、これらの工程は本発明の実施形態となる。本発明による洗浄または清浄剤について記載される全ての事実、主題および実施形態もまた、本発明のこの主題に適用することができる。従って本明細書において、この開示は明確に言及され、この開示は、本発明による前述の方法についても有効であることとする。
【0093】
好ましい実施形態において、本発明の方法では、アミラーゼが0.0000003〜0.0004wt%、好ましくは0.0000005〜0.0003wt%の濃度で洗浄液中に存在し、および/またはプロテアーゼが、0.00009〜0.0005wt%、好ましくは0.00015〜0.00035wt%の濃度で洗浄液中に存在する(これらのデータは洗浄液中の活性タンパク質に基づく)。別の好ましい実施形態において、本発明による方法は、温度10℃〜50℃、好ましくは10℃〜40℃および特に好ましくは20℃〜40℃で実施される。
【0094】
上記の実施形態に対応して、本発明による剤に組み込まれるプロテアーゼは、本発明による洗浄剤および清浄剤、ならびに本発明による方法、特に洗浄方法および清浄方法において有利に用いることができる。従ってこれらは、対応する剤にタンパク質分解活性を与えるために有利に使用される。
【0095】
従って、別の主題は、アミラーゼをさらに含む液体洗浄または清浄剤にタンパク質分解活性を付与するための、以下のプロテアーゼ:
(a1) 配列番号1に記載されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号1に従う番号付けで99位にアミノ酸のグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)を有するプロテアーゼ、または
(a2) 配列番号1に記載されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号1に従う番号付けで99位にアミノ酸のアスパラギン(N)またはグルタミン(Q)を有するプロテアーゼ、または
(a3) 配列番号1に記載されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号1に従う番号付けで99位にアミノ酸のアラニン(A)もしくはグリシン(G)もしくはセリン(S)を有するプロテアーゼ
の使用によって形成される。
【0096】
別の実施形態において、この使用は、上記のプロテアーゼが、配列番号1に従う番号付けで、以下のアミノ酸:
(a) 3位のトレオニン(3T)、
(b) 4位のイソロイシン(4I)、
(c) 61位のアラニン、トレオニンまたはアルギニン(61A、61Tまたは61R)、
(d) 154位のアスパラギン酸またはグルタミン酸(154Dまたは154E)、
(e) 188位のプロリン(188P)、
(f) 193位のメチオニン(193M)、
(g) 199位のイソロイシン(199I)、
(h) 211位のアスパラギン酸、グルタミン酸またはグリシン(211D、211Eまたは211G)、
(i) アミノ酸(a)〜(h)の組み合わせ
の少なくとも1つをさらに含むものである。
【0097】
本発明の別の主題は、アミラーゼをさらに含む液体洗浄または清浄剤にタンパク質分解活性を付与するための、以下:
a. 配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むプロテアーゼ;
b. 配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6または配列番号7または配列番号8において少なくとも1つの位置で改変されたアミノ酸配列を含むプロテアーゼであって、ここで配列番号1に従う番号付けでの改変が、以下:
i. 3位のトレオニン(3T)、
ii. 4位のイソロイシン(4I)、
iii. 61位のアラニン、トレオニンまたはアルギニン(61A、61Tまたは61R)、
iv. 154位のアスパラギン酸またはグルタミン酸(154Dまたは154E)、
v. 188位のプロリン(188P)、
vi. 193位のメチオニン(193M)、
vii. 199位のイソロイシン(199I)、
viii. 211位のアスパラギン酸、グルタミン酸またはグリシン(211D、211Eまたは211G)、
ix. アミノ酸(i)〜(viii)の組み合わせ
からなる群から選択される上記プロテアーゼ;
からなる群から選択されるプロテアーゼの使用によって形成される。
【0098】
本発明による洗浄または清浄剤について記載される全ての事実、主題および実施形態もまた、上記の使用に適用することができる。従って本明細書において、この開示は適当な場所で明確に言及され、この開示は、本発明による前述の使用についても有効であることとする。
【実施例】
【0099】
本発明による液体洗浄剤の保存安定性の測定
本発明の洗浄剤の基本製剤は以下のとおりであった。
a) 以下の組成の第1の液体洗浄剤(データ全てwt%):0.3〜0.5%のキサンタン、0.2〜0.4%の消泡剤、6〜7%のグリセリン、0.3〜0.5%のエタノール、4〜7%のFAEOS(脂肪アルコールエーテルスルフェート)、24〜28%の非イオン性界面活性剤、1%のホウ酸、1〜2%のクエン酸ナトリウム(二水和物)、2〜4%のソーダ、14〜16%のココナツ脂肪酸、0.5%のHEDP(1-ヒドロキシエタン-(1,1-ジホスホン酸))、0〜0.4%のPVP(ポリビニルピロリドン)、0〜0.5%の光学的光沢剤、0〜0.001%の着色剤、残りは脱塩水。含まれるアミラーゼは、0.44 wt%のStainzyme(登録商標) 12L (Novozymes companyからのアミラーゼ製剤)であった。
【0100】
b) 以下の組成の第2の液体洗浄剤:
【0101】
様々な実験のため、本発明の洗浄剤の基本製剤に以下のプロテアーゼを加えた(データは活性タンパク質に基づく)。
【0102】
方法1:WO 95/23221に記載される、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)に由来するプロテアーゼの高性能変異体F49(99位にアルギニン(Arg)(99R)):a)およびb)の液体洗浄剤に0.4 mg/ml(0.04 wt%)添加した。
【0103】
方法2:国際特許出願WO 03/057713の図2または配列番号3に開示されているプロテアーゼ(99位のセリン(Ser)(99S);配列番号1に対する同一性 < 80%):a)の液体洗浄剤に0.4mg/ml(0.04 wt%)、b)の液体洗浄剤に0.3mg/ml(0.03 wt%)添加した。
【0104】
方法3:配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むプロテアーゼ(99位にグルタミン酸(Glu)(99E)):a)の液体洗浄剤に0.4mg/ml(0.04 wt%)、b)の液体洗浄剤に0.3mg/ml(0.03 wt%)添加した。
【0105】
方法1、2および3のそれぞれによる洗浄剤の保存安定性を試験した。上記の洗浄剤を、温度30℃で所定時間保存し、それぞれの残存アミロース分解活性を測定した。試験下のサンプルを、0.67%のデンプン(可溶性、Zulowskyに従って前処理した(190℃においてグリセリンで処理))と共に規定の反応条件(トリス-マレイン酸緩衝液、pH6.5、50℃、15分)下でインキュベートした。ジニトロサリチル酸を加えてアルカリ条件下で100℃まで加熱すると、ジニトロサリチル酸がグルコースおよび他の還元糖で還元されて橙赤色の色素が得られ、反応の終わりにこの色素を540nmで光度的に測定した。着色に対応する放出された糖の量は、酵素活性の尺度である(Sumnerら, J. Biol. Chem., 1921, 47 & 1924, 62を参照)。測定された残存アミロース分解活性を以下の表1に記載する(n.d. = 測定なし)。
【0106】
【0107】
本発明の洗浄剤が、方法1および2の洗浄剤と比較して、著しく高められた残存アミロース分解活性およびその結果として著しく高められた保存安定性を示すことは明らかである。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]