(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および第2の送電電極は同一平面上に配置されていること、または前記第1および第2の受電電極は同一平面上に配置されていることの少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項1、2、及び4〜7のうち何れか1項記載の搬送システム。
所定の搬送経路に沿って並べられた第1および第2の送電電極と対向する位置に配置され、当該第1および第2の送電電極と電界共振結合する第1および第2の受電電極と、
前記第1および第2の送電電極と電界共振結合する前記第1および第2の受電電極の受電電力により、前記搬送経路に沿って移動する電動部と、
前記第1及び第2の受電電極間を短絡させる導電部材が着脱可能な装着部材と、を有することを特徴とする搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された往復移動装置は、軌道の両端以外では移動体が非接触給電することができないため、移動体の搬送経路の長さが制限され、また、搬送経路を変更することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、容易に変更可能な搬送経路に沿って、無接点給電を動力源とした搬送装置が移動可能な搬送システムおよび搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1の態様)
本発明の第1の態様に係る搬送システムは、所定の搬送経路に沿って第1および第2の送電電極が配置され、当該搬送経路と垂直な方向に所定の電圧が印加される送電電極部と、送電電極部から受電した電力を駆動力に変換して、所定の搬送経路に沿って移動する搬送装置と、を備え、搬送装置は、第1および第2の送電電極と対向する位置にそれぞれ配置され、当該第1および第2の送電電極と電界共振結合する第1および第2の受電電極と、第1および第2の送電電極と電界共振結合する第1および第2の受電電極の受電電力により、搬送経路に沿って移動する電動部と、を有することを特徴とする。
【0007】
第1の態様によれば、搬送装置が、搬送経路に沿って並べられた第1および第2の送電電極と第1および第2の受電電極との間の電界共振結合によって電力を受電し、受電電力を駆動力に変換して搬送経路に沿って移動する。第1および第2の送電電極が搬送経路に沿って並べられているため、送電電極間の電界と垂直方向に搬送装置が移動する。このように送電電極間の電界と垂直方向に搬送装置が移動する場合、互いに対向する送電電極と受電電極との位置の変化に対して相対的に伝送効率が変動しにくい。
【0008】
したがって、上記第1の態様によれば、搬送装置が搬送経路を移動しながら効率よく電力を受電して継続して移動することができる。また、上記第1の態様によれば、第1および第2の送電電極の配置変更することによって容易に搬送経路を変更することができ、このような搬送経路に沿って、無接点給電を動力源とする搬送装置を継続して移動させることができる。
【0009】
(第2の態様)
第2の態様によれば、上記第1の態様において、電力発生部は、所定の波長λの交流電圧を第1および第2の送電電極間に印加し、第1および第2の送電電極は、その長手方向の電極長がλ/2π以下であることを特徴とする。上記第2の態様によれば、第1および第2の送電電極の電極長を所定の長さ以下に制限することで、搬送装置に効率良く電力を伝送することができる。
【0010】
(第3の態様)
第3の態様によれば、上記第1又は第2の態様において、第1および第2の送電電極は同一平面上に配置されていること、または第1および第2の受電電極は同一平面上に配置されていることの少なくとも一方を満たすことを特徴とする。上記第3の態様によれば、送電電極部や搬送装置の低背化を図ることができる。
【0011】
(第4の態様)
上記第4の態様によれば、上記第3の態様において、第1および第2送電電極は、発泡材料の表面に設置されていることを特徴とする。
【0012】
第4の態様によれば、比較的誘電率が低い発泡材料の表面に送電電極を設置することで送電電極間がより自由空間に近い状態となり、誘電率が高い材料の表面に送電電極を設置した場合に比べて、送電電極間を通る電気力線の増大を抑えることができる。これにより、上記第4の態様によれば、送電電極と受電電極との間に電気力線を集中させ、良好な送電効率を実現することができる。
【0013】
(第5の態様)
第5の態様によれば、上記第2乃至第4の態様において、搬送装置の電動部は、第1および第2の送電電極上に車輪を設置して、当該車輪を回転駆動させることにより搬送経路に沿って移動し、第1および第2の送電電極には、搬送経路に対して垂直方向の端部を折り曲げることで、車輪が移動することを規制する折り曲げ部が形成されていることを特徴とする。上記第5の態様によれば、搬送装置が搬送経路から外れないようにすることができる。
【0014】
(第6の態様)
第6の態様によれば、上記第1乃至第5の態様において、搬送装置は、搬送物を着脱可能な荷台部をさらに有することを特徴とする。上記第6の態様によれば、搬送物を容易に搬送装置に設置することができる。
【0015】
(第7の態様)
第7の態様によれば、上記第1乃至第6の態様において、第1および第2の送電電極は、搬送経路に沿って所定の曲率で曲げられていることを特徴とする。上記第7の態様によれば、搬送経路が所定の曲率となるように容易に曲げることができる。
【0016】
(第8の態様)
第8の態様によれば、上記第1乃至第7の態様において、送電装置は、第1および第2の送電電極を複数有し、第1の送電電極は、その長手方向の端部が他の第1の送電電極に連結され、第2の送電電極は、その長手方向の端部が他の第2の送電電極に連結されていることを特徴とする。上記第8の態様によれば、複数の送電電極を連結することで、搬送経路長を長くすることができる。
【0017】
(第9の態様)
第9の態様によれば、上記第8の態様において、連結された第1の送電電極間および連結された第2の送電電極間でそれぞれ電力を中継する中継器をさらに有することを特徴とする。上記第9の態様によれば、第1および第2の送電電極間に効率よく電圧を印加することができる。
【0018】
(第10の態様)
第10の態様によれば、上記第8又は第9の態様において、連結される第1の送電電極間および連結される第2の送電電極間を離間させる絶縁部材が、搬送経路に沿って設けられていることを特徴とする。上記第10の態様によれば、絶縁部材を介して送電電極を接続することで、隣接する送電電極間の干渉を低減し、効率よく電力を搬送装置に伝送することができる。
【0019】
(第11の態様)
第11の態様によれば、上記第10の態様において、絶縁部材は、搬送経路に沿って所定の曲率で曲げられていることを特徴とする。上記第11の態様によれば、送電電極を変形しなくても絶縁部材を用いることで、搬送経路が所定の曲率となるように容易に曲げることができる。
【0020】
(第12の態様)
第12の態様によれば、上記第1及び第2の送電電極の周囲を覆い、送電電極間を電気的に絶縁する絶縁部材を更に備えることを特徴とする。上記第12の態様によれば、送電電極間の短絡を防ぐことができる。
【0021】
(第13の態様)
第13の態様によれば、上記第1乃至第12の態様において、第1及び第2の送電電極は、フレキシブルプリント基板上に形成されていることを特徴とする。上記第13の態様によれば、搬送システムを使用しないときは、フレキシブルプリント基板を巻き取ることにより、送電電極部をコンパクトに保管することができる。
【0022】
(第14の態様)
第14の態様によれば、上記第1乃至第13の態様において、搬送経路から外した搬送装置を配置する箱状部を、搬送経路の近傍に設け、箱状部は、電界を遮蔽する材料により形成され、かつ、搬送装置が有する第1及び第2の受電電極の設置位置よりも高い側壁を有することを特徴とする。上記第14に態様によれば、送電電極部から放射される電界が遮蔽された箱状部の中に受電電極が隠れるように、搬送経路から外した搬送装置を置くことにより、送電電極部から搬送装置への給電を停止することができる。
【0023】
(第15の態様)
第15の態様によれば、上記第1乃至第14の態様において、搬送装置は、第1及び第2の受電電極間を短絡させる導電部材が着脱可能な装着部材を更に有することを特徴とする。上記第15の態様によれば、搬送経路から搬送装置を外したときに、装着部材に導電部材を取り付けることで受電電極間を短絡して送電電極部から搬送装置への給電を停止することができる。
【0024】
(第16の態様)
第16の態様によれば、上記第1乃至第15の態様において、送電電極部は、搬送経路に沿って並んだ複数のレールに、それぞれ設けられており、一のレールに設けられた送電電極部に給電された電力を、他のレールに設けられた送電電極部に中継する電力中継器を、更に備えることを特徴とする。上記第16の態様によれば、電力中継器を用いることで、各レールに配置された搬送装置の受電電極に給電することができる。つまり、各レールに独立した給電装置を設ける必要がないため、装置規模が大きくなるのを抑えながら搬送経路に沿って搬送可能な搬送装置の数を増やすことができる。
【0025】
(第17の態様)
第17の態様によれば、上記第1乃至第15の態様において、送電電極部は、搬送経路に沿って並んだ複数のレールの中の一のレールに設けられており、搬送装置は、一のレールに近接した他のレール上を搬送し、搬送装置の第1および第2の受電電極が、送電電極部と電界共振結合する位置に配置されることを特徴とする。上記第17の態様によれば、一つの送電電極部を用いて、複数のレール上を搬送する搬送装置に電力を給電することができる。
【0026】
(他の態様)
また、以上のような本発明は、上記搬送システムの態様に限らず、他の態様、すなわち搬送システムに組み込まれる搬送装置によって実現することも可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、無接点給電を動力源とする搬送装置を、容易に変更可能な搬送経路に沿って移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態の搬送システムの全体構成を説明するための図である。
【
図2】運搬台車が備える各部の構成を説明するための断面図である。
【
図3】送電回路および受電回路の回路構成を示す図である。
【
図4】
図3に示す送電回路および受電回路の等価回路を示す図である。
【
図5】
図5(A)は、三次元直交座標XYZ上に送電電極および受電電極を配置した斜視図である。
図5(B)は、三次元直交座標XYZ上に送電コイルおよび受電コイルを配置した斜視図である。
【
図6】電界共振結合している電極同士および磁界共振結合しているコイル同士の相対位置を変化させたときの電力伝送効率の変化について説明するための図である。
【
図7】変形例に係る搬送システムの全体構成を説明するための図である。
【
図8】送電電極部の構成の変形例について説明するための図である。
【
図9】発泡材料の表面に送電電極部を設置した具体例について説明するための図である。
【
図10】発泡材料の表面に送電電極部を設置したときの電力伝送効率について説明するための図である。
【
図11】変形例に係る送電電極部の構成を説明するための図である。
【
図12】絶縁部材を介して送電電極部を連結した配置について説明するための図である。
【
図13】絶縁部材を介して送電電極部を連結した配置の変形例について説明するための図である。
【
図14】送電電極部の変形例について説明するための図である。
【
図15】送電電極部の変形例について説明するための図である。
【
図16】送電電極部の変形例について説明するための図である。
【
図17】搬送経路から外した運搬台車を配置する箱状部について説明するための図である。
【
図18】受電電極を短絡させる導電部材が着脱可能な装着部材について説明するための図である。
【
図19】搬送経路Rに沿って並んだ複数(図中では一例として3つ)のレールに設けられた送電電極について説明するための図である。
【
図20】搬送経路に沿って並んだ複数のレールの中の一のレール10だけに設けられた送電電極について説明するための図である。
【
図21】変形例に係る運搬台車が備える各部の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について具体例を示して説明する。本実施形態は、電力を駆動力に変換して、所定の搬送経路に沿って搬送物を搬送する搬送システムに関する。
【0030】
(1)全体構成
本実施形態の搬送システム1は、
図1(A)に示すように、送電電極部100と運搬台車200とから構成される。運搬システム1では、搬送経路Rを作成し、作成した搬送経路Rに沿って送電電極部100を例えば2つの机150a、150bに配置し、運搬台車200が送電電極部100から受電した電力を駆動力に変換して搬送経路Rを移動する。
【0031】
送電電極部100は、搬送経路Rに沿って互いに離間して配置された2つの送電電極11、12からなり、これら送電電極11、12に接続された送電回路10により、当該搬送経路と垂直な方向、すなわち送電電極11、12の電極間には、所定の電圧たとえば、周波数が13.56MHzの交流電圧が印加される。このような電圧が送電電極11、12間に印加されることで、搬送経路Rと垂直方向に電界が発生することとなる。また、送電電極11、12は、例えば、同一平面上、すなわち机150a、150bの表面に配置され、これにより送電電極部100の低背化を図ることができる。なお、送電電極11、12は、互いに離間して配置されていればよく、その配置は同一平面上でなくてもよい。
【0032】
運搬台車200は、運搬経路Rに沿って移動する搬送装置の一例であって、上述したように送電電極部100から電力を受電し、受電電力を駆動力に変換して搬送経路Rを移動する。また、運搬台車200は、
図1(B)の矢印A1に示すようにして、例えば搬送を管理する管理者によって送電電極部100から離されて給電できなくなると停止する。また、運搬台車200は、例えば搬送を管理する管理者によって
図1(B)の矢印A2に示すように送電電極部100と給電可能な位置に配置されると、搬送経路R上の移動を再開する。
図1(A)および
図2に示すように、運搬台車200は、送電電極部100から無接点給電するため、車体201と、第1および第2の受電電極21、22を含む受電回路20と、整流回路203と、モータ204と、車輪205a、205bと、荷台部206とを備える。ここで、第1および第2の受電電極21、22は、互いに離間して配置される。
【0033】
受電電極21、22は、送電電極部100から無接点で電力を受電するため、
図1(A)に示すように、送電電極11、12と対向する位置にそれぞれ配置される。このような配置条件を満たすため、例えば
図2に示すように、受電電極21、22は、例えば、同一平面上、すなわち当該運搬台車200の車体201の底面部202に配置される。受電電極21、22が、それぞれ送電電極11、22に対向する位置に配置されることで、無接点給電が可能となる。
【0034】
受電電極21、22は、送電電極11、12と対向する位置にそれぞれ配置されれば、底面部202以外の車体201の部位に配置してもよい。受電電極21、22は、同一平面上、すなわち底面部202に配置されることで運搬台車200の低背化を図ることができる。なお、受電電極21、22は、互いに離間して配置されていればよく、その配置は同一平面上でなくてもよい。
【0035】
受電電極21、22により受電した電力は、整流回路203により整流され、モータ204に供給される。モータ204は、受電電極21および受電電極22により受電した電力を、車体201に設けられた車輪205aを回転させる駆動力に変換する電動部である。運搬台車20は、車輪205aが駆動輪として回転し、この回転に連動して車輪205bが回転することで、搬送経路Rに沿って移動することができる。
【0036】
荷台部206は、搬送物を着脱可能に取り付けることができ、搬送物を容易に運搬台車20に設置して運搬することができる。
【0037】
(2)無接点給電について
受電電極21、22が、それぞれ送電電極11、12に対向することで可能となる無接点給電の動作原理について、
図3を参照して説明する。
図3は、送電回路10および受電回路20の回路構成を示す図である。
【0038】
送電回路10は、送電電極11、12、インダクタ13、14、接続線15、16、および、交流電力発生部17を有している。また、受電回路20は、受電電極21、22、インダクタ23、24、接続線25、26、および、負荷27を有している。送電電極11、12およびインダクタ13、14は送電用カプラを構成する。受電電極21、22およびインダクタ23、24は受電用カプラを構成する。
【0039】
ここで、送電電極11、12、受電電極21、22は、導電性を有する部材によって構成され、所定の距離d1を隔てて配置されている。
図3の例では、便宜上、送電電極11、12、受電電極21、2として、略同一のサイズを有する矩形形状を有する平板状の電極を例示している。また、送電電極11と受電電極21は距離d2を隔てて対向するように平行に配置され、送電電極12と受電電極22も同じ距離d2を隔てて対向するように平行に配置されている。
【0040】
送電電極11、12の電極間の距離d1を含む合計幅Dは、これらの電極から放射される電界の波長をλとした場合に、λ/2πで示される近傍界よりも狭くなるように設定されている。同様に、受電電極21、22の電極間の距離d1を含む合計幅Dは、λ/2πで示される近傍界よりも狭くなるように設定されている。また、送電電極11、12の長さLは、λ/2πで示される近傍界よりも狭くなるように設定されている。受電電極21、22の長さLも、λ/2πで示される近傍界よりも狭くなるように設定されている。送電電極11と受電電極21および送電電極12と受電電極22の間の距離d2についても、λ/2πで示される近傍界よりも短くなるように設定されている。
【0041】
電極長が近傍界を超えると放射される電力が著しく大きくなってしまうので、送電電極11、12の長手方向の電極長Lが、λ/2πで示される近傍界よりも狭くなるように設定することにより、受電電極21、22に効率良く電力を伝送することができる。
【0042】
インダクタ13、14は、例えば、導電性の線材(例えば、銅線)を巻回して構成され、
図3の例では、送電電極11、12の端部にそれぞれの一端が電気的に接続されている。接続線15はインダクタ13の他端と交流電力発生部17の出力端子の一端とを接続する導電性の線材(例えば、銅線)によって構成される。接続線16はインダクタ14の他端と交流電力発生部17の出力端子の他端とを接続する導電性の線材によって構成される。なお、接続線15,16は、同軸ケーブルまたは平衡ケーブルによって構成される。
【0043】
交流電力発生部17は、所定の周波数の交流電力を発生し、接続線15、16を介してインダクタ13、14に供給する。
【0044】
インダクタ23、24は、例えば、導電性の線材を巻回して構成され、
図3の例では、受電電極21、22の端部にそれぞれの一端が電気的に接続されている。接続線25はインダクタ23の他端と負荷27の入力端子の一端とを接続する導電性の線材(例えば、銅線)によって構成される。接続線26はインダクタ24の他端と負荷27の入力端子の他端とを接続する導電性の線材によって構成される。なお、接続線25、26は、同軸ケーブルまたは平衡ケーブルによって構成される。
【0045】
負荷27は、交流電力発生部17から出力され、送電用カプラおよび受電用カプラを介して伝送された電力が供給される。すなわち、負荷27は、整流装置203およびモータ204によって構成されている。
【0046】
図4は、
図3に示す送電回路10および受電回路20の等価回路を示す図である。この
図4において、インピーダンス2は、接続線15、16および接続線25、26の特性インピーダンスを示し、Z0の値を有している。インダクタ3はインダクタ13、14に対応し、Lの素子値を有している。キャパシタ4は、送電電極11、12の間に生じる素子値Cのキャパシタから、送電電極11、12と受電電極21、22の間に生じる素子値Cmのキャパシタを減じた素子値(C−Cm)を有する。キャパシタ5は、送電電極11、12と受電電極21、22の間に生じるキャパシタを示し、Cmの素子値を有している。キャパシタ6は、受電電極21、22の間に生じる素子値Cのキャパシタから、送電電極11、12と受電電極21、22の間に生じる素子値Cmのキャパシタを減じた素子値(C−Cm)を有する。インダクタ7はインダクタ23、24に対応し、Lの素子値を有している。
【0047】
送電回路10の送電電極11、12と受電回路20の受電電極21、22は、互いに対向した位置に配置されることで電界共振結合され、送電回路10の送電電極11,12から受電回路20の受電電極21、22に対して電界によって交流電力が伝送される。
【0048】
(3)伝送効率
次に、送電電極11、12と受電電極21、22との相対位置を変化させたときの伝送効率の変化について
図5を用いて説明する。
図5(A)は、三次元直交座標XYZ上に送電電極11、12および受電電極21、22を配置した斜視図である。すなわち、送電電極11、12および受電電極21、22について、それぞれの電極間で生じる電界と垂直な方向をX軸方向とし、電界と平行な方向をY軸方向とする。また、送電電極11、12と受電電極21、22とを隔てる高さ方向をZ軸とする。このような配置の下、送電電極11、12との給電点Port1と、受電電極21、22との給電点Port2とがXY平面上で一致した状態を中心位置として電界共振結合させ、X軸およびY軸方向に相対位置を移動させたときの電力の伝送効率を
図6に示す。なお、送電電極11、12、受電電極21、22は、XY平面上で規定される寸法が500mm×500mmとし、Z軸方向で規定される送電電極11、12と受電電極21、22の離間距離を300mmとする。
【0049】
また、比較例として
図5(B)に示すように、XY平面上に送電コイル301および受電コイル302を配置し、送電コイル301および受電コイル302を隔てる高さ方向をZ軸とする。このような配置の下、送電コイル301との給電点Port1と、受電コイル302との給電点Port2とがXY平面上で一致した状態を中心位置として磁界共振結合させ、X軸およびY軸方向に相対位置を移動させたときの電力の伝送効率を
図6に示す。なお、送電コイル301および受電コイル302は、
図5(A)に示す電極形状のサイズと同程度のサイズとするため、その直径を520mmとし、Z軸方向で規定される送電コイル301と受電コイル302の離間距離を300mmとする。また、磁界共振結合の共振周波数は、13.56MHzとする。
【0050】
図6は、横軸を中心位置からのPort1、2間のずれ量[mm]を示し、縦軸に中心位置を100%としたときの伝送効率を示す。
【0051】
図6中において、「電界共振結合X方向」とは、
図5(A)に示す送電電極11、12と受電電極21、22との相対位置をX軸方向にずらしたときの伝送効率を示すグラフである。「電界共振結合Y方向」とは、
図5(A)に示す送電電極11、12と受電電極21、22との相対位置をY軸方向にずらしたときの伝送効率を示すグラフである。
【0052】
また、「磁界共振結合X方向」とは、
図5(B)に示す送電コイル301と受電コイル302との相対位置をX軸方向にずらしたときの伝送効率を示すグラフである。「磁界共振結合Y方向」とは、
図5(B)に示す送電コイル301と受電コイル302との相対位置をY軸方向にずらしたときの伝送効率を示すグラフである。
【0053】
この
図6から明らかなように、送電コイル301と受電コイル302との間で磁界共振結合により電力伝送を行う場合は、X軸またはY軸どちらか一方にずらしても同様に伝送効率が低下する。これに対して、送電電極11、12と受電電極21、22との間で電界共振結合により電力伝送を行う場合は、Y軸方向に電極をずらした場合に比べてX軸方向に電極をずらした方が伝送効率の低下が少ない。この結果から明らかなように、送電電極11、12と受電電極21、22との相対位置を、電界と垂直方向であるX軸に移動させても伝送効率が低下しにくい特性がある。
【0054】
ここで、
図1で示したように、搬送システム1では、搬送経路Rに沿って送電電極11、12が配置しているので、送電電極11、12間で生じる電界と垂直方向に運搬台車200が移動する。すなわち、搬送システム1では、
図5(A)に示すような伝送効率が低下しにくいX軸方向に受電電極21、22が移動しながら、受電電極21、22と対向する送電電極11、12と電界共振結合することとなる。すなわち、送電電極11、12間の電界と垂直方向に運搬台車200が移動する場合、互いに対向する送電電極11、12と受電電極21、22との位置の変化に対して相対的に伝送効率が変動しにくい。
【0055】
したがって、運搬台車200は、搬送経路Rを移動しながら効率よく送電電極部100から電力を受電して継続して移動することができる。また、搬送システム1では、送電電極11、12の配置変更することによって容易に搬送経路Rを変更することができ、このような搬送経路Rに沿って、無接点給電を動力源とする運搬台車200を継続して移動させることができる。すなわち、搬送システム1では、例えば、ベルトコンベアに比べて搬送経路の設置や移動、搬送経路の変更への対応が極めて容易となる。また、机150a、150bは、送電電極部100を撤去すれば普通の机として使用することができる。
【0056】
(4)変形例
また、搬送システム1では、上述した
図1に示すような机や床などの表面以外であっても送電電極部100を設置することができる。例えば
図7(A)および
図7(B)に示すように、搬送経路Rに沿って、例えば棒状の送電電極保持部材301、302、303を設置し、設置した送電電極保持部材301、302、303の上面部301a、302a、303aに送電電極部100を設置してもよい。さらに、送電電極部100の側面に作業台として机311、312、313、314を設置してもよい。このようにして送電電極保持部材301、302、303に送電電極部100を設置することで、例えば机や床などに送電電極部100を設置する場合に比べて、送電電極部100周囲に誘電率が高い部材に近づけないようにすることができ、結果として電力伝送効率を高めることができる。
【0057】
また、搬送システム1では、
図8(A)および
図8(B)に示すように、搬送経路Rに対して垂直方向D1、D2の送電電極11、12の側面部を、運搬台車20側に折り曲げた折り曲げ部11a、12aを形成してもよい。折り曲げ部11a、12aは、車輪25a、25bが当該垂直方向D1、D2に移動することを規制することによって、運搬台車20が搬送経路Rから外れないようにすることができる。例えば送電電極11、12の部材としてアルミニウムを用い、このアルミニウム部材を曲げてL字状の形状とすることで容易に台車の進行方向を規制する折り曲げ部11a、12aを形成することができる。
【0058】
また、搬送システム1では、
図1で示した机や床などの表面1a、1bや
図7で示した送電電極保持部材301、302、303以外にも、例えば、
図9(A)に示すように、送電電極部100を、発泡ゴムなどを板状に形成した発泡材料400の表面401に送電電極部100を設置してもよい。また、
図9(B)に示すように、机150aの上に発泡材料400を積層して、発泡材料400の表面401に送電電極部100を設置したり、
図9(C)に示すように、送電電極保持部材301の上に発泡材料400を積層して、発泡材料400の表面401に送電電極部100を設置してもよい。このようにして、発泡材料400の表面401に送電電極部100を設置することで、次の理由から、良好な送電効率を実現することができる。
【0059】
まず、
図10(A)に示すように、自由空間に送電電極11、12及び受電電極21、22を設置した場合、電気力線が送電電極11と受電電極21との間、及び、送電電極12と受電電極22との間にそれぞれ集中し送電効率が良い。次に、
図10(B)に示すように、比較的誘電率が高い部材の机150aの上に送電電極11、12及び受電電極21、22を設置した場合、送電電極11、12間を通る電気力線が増えるため送電効率が落ちる。このような
図10(B)に示す配置例に対して、
図10(C)に示すように、比較的誘電率が低い発泡材料400の表面401に送電電極11、12を設置することで送電電極11、12間がより自由空間に近い状態となり、送電電極11、12間を通る電気力線の増大を抑えることができる。これにより、送電電極11と受電電極12との間、及び、送電電極12と受電電極22との間に電気力線を集中させ、良好な送電効率を実現することができる。
【0060】
また、発泡材料400の表面401に送電電極部100を設置することで、送電電極11、12上を運搬台車200が移動したときに、発泡材料400により衝撃を吸収して送電電極11、12の破損や変形を防止することができる。
【0061】
また、搬送システム1では、例えば
図11(A)に示すように、各机150a、150b、150c、150dにそれぞれ送電電極部100を設置して、搬送経路Rに沿って各送電電極部100を物理的に連結してもよい。具体的には、搬送経路Rに沿った送電電極11の端部を他の送電電極11に連結し、搬送経路Rに沿った送電電極12の端部を他の送電電極12に連結する。このようにして、複数の送電電極部100を物理的に連結することで、搬送経路Rの経路長を長くすることができる。また、搬送経路Rに沿って各送電電極部100を物理的に連結する場合、例えば
図11(B)に示すように、送電電極部100ごとに交流電力発生部17を電気的に接続して給電することが可能である。また、個々の交流電源発生部17は、交流電源の位相を変化させることで、隣接する送電電極部100、100間において電界が干渉しないようにすることも可能である。この結果、送電電極11、12から効率よく電力を受電電極21、22に伝送することができる。
【0062】
また、搬送システム1は、
図11(B)以外にも、例えば、
図11(C)に示すように、搬送経路Rの一方の端部側の送電電極部100のみ交流電力発生部17から給電し、他の送電電極部100は、隣接する送電電極部100との連結部に電力を中継する中継器500を設けるようにしてもよい。すなわち、中継部500により、連結された送電電極11、11間および連結された送電電極12、12間でそれぞれ電力を中継することで、効率よく全ての送電電極部100に対して所定の電圧を印加することができる。
【0063】
また、搬送システム1は、
図12(A)に示すように、隣接する送電電極11間および送電電極12、12間の連結部に、電極間を離間させる絶縁部材600を設けてもよい。また、運搬台車200が絶縁部材600を通過する時には、送電電極部100から給電することができないが、運搬台車200の慣性力によって絶縁部材600を通過して、その後送電電極部100から給電することが可能である。このようにして送電電極部100、100間を離間させる絶縁部材600を設けることによって、運搬台車200の動きを止めることなく搬送経路R上を移動しながら、隣接する送電電極部100、100間において電界が干渉しないようにすることができる。この結果、送電電極11、12から効率よく電力を受電電極21、22に伝送することができる。
【0064】
また、送電電極部100、100間の連結部に設けられる絶縁部材600は、
図13に示すように、搬送経路Rに沿って所定の曲率で曲げてもよい。ここで、絶縁部材600には搬送経路Rと垂直な方向の両端に、運搬台車20側に折り曲げた折り曲げ部601、602を形成する。このような絶縁部材600を送電電極部100、100間の連結部に設けることで、送電電極部100を変形しなくても、搬送経路Rが所定の曲率となるように容易に曲げることができる。また、運搬台車200は、絶縁部材600を通過する際に送電電極部100から給電しないので、減速しながら搬送経路Rに沿って移動することができる。これによって、運搬台車200は、搬送経路Rに沿って曲がる際に減速することが可能となる。したがって、運搬台車200は、減速機構を設けることなく、運搬台車200がカーブを曲がる際に遠心力によって搬送経路Rから外れてしまうことを防止することができる。
【0065】
また、搬送システム1は、
図14に示すように、絶縁部材600を設けることなく、搬送経路Rに沿って所定の曲率で曲げた曲率部分111、121を有する送電電極11、12を用いてもよい。また、曲率部分111、121には、遠心力により搬送経路Rと垂直な方向に運搬台車200が移動するのを規制するため、上述した折り曲げ部11a、12aを設けている。このようにして、搬送経路Rが所定の曲率となるように容易に曲げることが可能となる。
【0066】
また、搬送システム1は、
図15(A)に示すように、折り曲げ部11a、12aが形成されている送電電極11、12の周囲を覆い、送電電極11、12間を電気的に絶縁する絶縁部材71を備えてもよい。絶縁部材71は、例えば、送電電極11、12全体を被覆する樹脂が用いられる。樹脂を用いることにより、搬送経路が曲線であっても当該搬送経路に沿った形状に絶縁部材71を成型できる。また、送電電極11、12全体を被覆することで送電電極11、12の間隔を保持するスペーサー711として機能し、送電電極11、12の離間距離の変動に起因した電界強度特性の変化を防止することができる。
【0067】
また、搬送システム1は、
図15(B)に示すような絶縁部材72を用いてもよい。
図15(B)に示す例では、送電電極11、12に折り曲げ部11a、12aが形成されていないが、絶縁部材72に折り曲げ部721、722を形成することにより、運搬台車の進行方向を規制することができる。
【0068】
上記の絶縁部材71、72は、送電電極部100で発生した熱を放熱するため、放熱性が良好な樹脂を用いることが好ましい。特に良好な放熱特性を実現するため、搬送システム1は、
図15(C)に示すように、送電電極11、12の周囲に放熱用の空気穴731、732が形成された絶縁部材73を用いることができる。
【0069】
また、搬送システム1は、
図16(A)の正面図および
図16(B)の断面図に示すように、送電電極11、12をフレキシブルプリント基板80上に形成してもよい。また、フレキシブルプリント基板80には、台車移動方向に対する垂直方向の両端部に樹脂で成型した樹脂壁81、82が設けられている。このようにして送電電極11、12をフレキシブルプリント基板80上に形成することで、搬送システム1を使用しないときは、フレキシブルプリント基板80を巻き取ることにより、送電電極部100をコンパクトに保管することができる。
【0070】
また、搬送システム1は、
図17(A)に示すように、搬送経路Rから外した運搬台車200を配置する箱状部90を、搬送経路Rの近傍に設けてもよい。ここで、箱状部90は、
図17(B)に示すように、搬送台車200が有する受電電極21、22の設置位置よりも高い側壁91、92を有する。また、箱状部90は、電界を遮蔽する材料、例えば金属、導電性樹脂などを含んで形成される。例えば、箱状部90は、金属の周囲が絶縁樹脂で被覆された材料、樹脂等に金属被覆が施された材料などで形成されていてもよい。
図17(A)に示す搬送システムは、
図17(B)に示すような側壁91、92によって、送電電極部100から放射される電界が遮蔽された箱状部90の中に受電電極21、22が隠れるようになる。このため、搬送経路Rから外した運搬台車200を箱状部90内に置くことにより、送電電極部100から運搬台車200への給電を停止することができる。
【0071】
また、搬送システム1において、
図18(A)および
図18(B)に示すように、運搬台車200は、受電電極21、22を短絡させる導電部材220が着脱可能な装着部材211、212を更に備えるようにしてもよい。導電部材220は、例えば銅、アルミなどの金属で形成されることが好ましい。装着部材211、212は、
図18(A)に示すように、例えば受電電極21、22が露出した露出部21a、21bの近傍に設けられた磁石である。装着部材211、212に導電部材220が磁力により装着されると、導電部材220は、露出部21a、21bと接触することで、受電電極21、22が短絡することになる。このため、搬送経路から運搬台車200を外したときに、装着部材211、221に導電部材220を取り付けて受電電極21、22間を短絡させることにより、送電電極部100から運搬台車200への給電を停止することができる。
【0072】
また、搬送システム1は、
図19(A)に示すように、搬送経路Rに沿って並んだ複数(図中では一例として3つ)のレール10a、10b、10cに送電電極11、12をそれぞれ設けてもよい。さらに3組の送電電極部11、12に給電するため、搬送システム1は、一のレール10aに設けられた送電電極11、12に給電された電力を、他のレール10b、10cに設けられた送電電極11、12に中継する電力中継器181、182を備えるようにしてもよい。このように電力中継器181、182を用いて、各レール上に配置された運搬台車200の受電電極21、22それぞれに給電することができる。つまり、各レールに独立した給電装置を設ける必要がないため、装置規模が大きくなるのを抑えながら搬送経路Rに沿って搬送可能な運搬台車200の数を増やすことができる。また、全てのレール10a、10b、10cに運搬台車200を配置する必要はなく、例えば
図19(B)に示すように、レール10b上に中継器の機能を内蔵した送電回路19を設置してもよい。
【0073】
また、搬送システム1は、
図20(A)に示すように、送電電極部100を、搬送経路Rに沿って並んだ複数のレール10a、10b、10cの中のレール10bだけに設けてもよい。各レール10a、10b、10上には運搬台車200が設置されたとき、受電電極21、22は、送電電極11、12と電界共振結合する位置に配置する。このようにして、一つの送電電極部100を用いて、複数のレール10a、10b、10c上を搬送する搬送装置200に電力を給電することができる。また、全てのレール10a、10b、10cに運搬台車200を配置する必要はなく、例えば
図20(B)に示すように、レール10b上に中継器の機能を内蔵した送電回路19を設置してもよい。さらに、
図20(C)に示すように、レール10bを、他のレール10a、10cと別にプラスチックなどで成形して、送電電極11、12が形成されたフレキシブルプリント基板191を設置することで、他のレール10a、10cを運搬する運搬台車200に給電するようにしてもよい。
【0074】
また、搬送システム1では、
図21に示すように、運搬台車200は、整流回路203により整流された直流電圧を所定値の直流電圧に変換するDCDCコンバータ207を備えてもよい。DCDCコンバータ207により変換した直流電圧をモータ204に印加することで、モータ204を安定的に駆動することができる。
【0075】
以上のように搬送システム1は、電界共振結合の長尺の送電電極部100をレールとし、このようなレールに受電回路20とモータ204などからなる簡易的な運搬台車200を設置することにより、組み換え容易な搬送系を構築することができる。また、搬送システム1は、ベルトコンベアのような大掛かりな装置を使わずに製造ラインなどで使用できる搬送系を提供できる。さらに、搬送システム1は、搬送経路Rの構成が変わった場合、その経路長さに対応して、部品搬送の範囲を変更することができる。