特許第5981472号(P5981472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000002
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000003
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000004
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000005
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000006
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000007
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000008
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000009
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000010
  • 特許5981472-レーザ溶接装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981472
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】レーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20160818BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20160818BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   B23K26/21 F
   B23K26/02 A
   H01R43/16
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-33160(P2014-33160)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2014-184485(P2014-184485A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-33940(P2013-33940)
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】八木 三郎
(72)【発明者】
【氏名】繁松 孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 伸弥
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−014027(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/025235(WO,A1)
【文献】 特開2004−111058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/02
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア部に片持ち支持された連鎖端子における圧着端子の圧着部の突き合わせ部分である突き合わせ界面を有する被加工物を溶接加工位置に供給し、当該被加工物の突き合わせ界面をレーザ照射により溶接するレーザ溶接装置であって、
前記レーザ光の照射開始に先立ち、前記レーザ光の照射位置と前記突き合わせ界面の位置との位置ずれを検出する位置ずれ検出手段と、
前記位置ずれが所定の許容誤差よりも大きいか否かを判定し、前記位置ずれが許容誤差以下の場合には補正することなく、前記位置ずれが前記許容誤差よりも大きい場合には、前記レーザ光の照射位置を前記突き合わせ界面の位置に補正する照射位置補正手段と、
前記突き合わせ界面にレーザ光を照射するレーザ掃引照射手段と、
備えるレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記被加工物を前記溶接加工位置に供給する送りローラ
を更に備え、
前記送りローラの外周面には、前記圧着端子の間隔に相当する一定のピッチで前記キャリア部に設けられた送り孔と係合する送り爪が周方向に等間隔に突設されている、請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記位置ずれ検出手段は、
前記被加工物を撮像するための撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に基づいて前記位置ずれを検出するための画像処理手段と、
前記被加工物の突き合わせ界面の像を前記撮像手段の受光部に導く位置ずれ観測用光学装置と、を有し、
前記位置ずれ観測用光学装置の少なくとも一部の光路は、
前記レーザ光を前記突き合わせ界面に導くための光学装置の光路と同軸に配置されている、請求項1または2記載のレーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の突き合わせ界面をレーザ照射により溶接するレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車内配線にはワイヤハーネスが多用される。ワイヤハーネスは、車内配線の仕様に合わせて複数の被覆電線を集合部品化したものである。各被覆電線の端末には、接続用の端子(以下、圧着端子という。)が圧着されている。圧着端子をワイヤハーネスの電線端末に接続する場合、電線端末の絶縁被覆層を皮剥ぎして芯線を露出させ、芯線露出部に圧着端子の芯線バレルを加締め圧着することにより、電線端末と圧着端子との電気的接続がなされる。そして、圧着端子との接続部から電線内への水分の浸入による芯線の腐食を防止するべく、圧着端子と電線端末との接続部が樹脂封止される(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−167821号
【特許文献2】特開2012−069449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、圧着端子と電線端末との接続部を樹脂封止することがワイヤハーネスの製造単価を増加させる要因となっている。これは使用される樹脂そのものが高価であることに加え、樹脂モールド処理或いはコーティング処理の工程で、樹脂の流し込みや硬化に時間を要することによる。
【0005】
そこで、圧着端子の圧着部(電線接続部)をプレス成型により筒状に曲げ加工し、その筒状に曲げ加工した部分にできる板材両端の突き合わせ界面全体をレーザ溶接により接合して圧着部を密閉構造にする試みがなされている。
【0006】
しかしながら、圧着端子などの被加工物の種類が変わったり、摩耗した金型を交換すると、レーザ溶接におけるレーザの照射位置と被加工物の突き合わせ界面の相対位置とがずれてしまうことがある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、被加工物の突き合わせ界面の位置のばらつきを許容して、当該突き合わせ界面をレーザ溶接して圧着部を密閉することができるレーザ溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ溶接装置は、
キャリア部に片持ち支持された連鎖端子における圧着端子の圧着部の突き合わせ部分である突き合わせ界面を有する被加工物を溶接加工位置に供給し、当該被加工物の突き合わせ界面をレーザ照射により溶接するレーザ溶接装置であって、
前記レーザ光の照射開始に先立ち、前記レーザ光の照射位置と前記突き合わせ界面の位置との位置ずれを検出する位置ずれ検出手段と、
前記位置ずれが所定の許容誤差よりも大きいか否かを判定し、前記位置ずれが許容誤差以下の場合には補正することなく、前記位置ずれが前記許容誤差よりも大きい場合には、前記レーザ光の照射位置を前記突き合わせ界面の位置に補正する照射位置補正手段と、
前記突き合わせ界面にレーザ光を照射するレーザ掃引照射手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のレーザ溶接装置は、キャリア部に片持ち支持された連鎖端子における圧着端子の圧着部の突き合わせ部分である突き合わせ界面の位置とレーザ光の照射位置との相対的な位置ずれが所定の許容誤差よりも大きいか否かを判定し、位置ずれが許容誤差以下の場合には補正することなく、位置ずれが許容誤差よりも大きい場合には補正する機能を有しているので、被加工物の突き合わせ界面の位置のばらつきを許容して溶接可能となり、圧着部を密閉できるため、当該突き合わせ界面を常に高品質にレーザ溶接することができる。
【0010】
本発明のレーザ溶接装置において、前記被加工物を前記溶接加工位置に供給する送りローラを更に備え、
前記送りローラの外周面には、前記圧着端子の間隔に相当する一定のピッチで前記キャリア部に設けられた送り孔と係合する送り爪が周方向に等間隔に突設されていることが望ましい。
本発明のレーザ溶接装置において、
前記位置ずれ検出手段は、
前記被加工物を撮像するための撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に基づいて前記位置ずれを検出するための画像処理手段と、
前記被加工物の像を前記撮像手段の受光部に導く位置ずれ観測用光学装置と、を有し、
前記位置ずれ観測用光学装置の光路の一部は、
前記レーザ光を前記突き合わせ界面に導くための光学装置の光路と同軸に配置されていることが望ましい。
【0011】
上記のように構成されたレーザ溶接装置によれば、被加工物を前記溶接加工位置に供給する送りローラの外周面には、圧着端子の間隔に相当する一定のピッチでキャリア部に設けられた送り孔と係合する送り爪が周方向に等間隔に突設されているので、送り爪と送り孔とが係合するごとに送りローラとキャリア部との間の僅かな隙間に起因する圧着端子の搬送量のずれを防止することができる。
上記のように構成されたレーザ溶接装置によれば、被加工物の像を撮像手段の受光部に導く位置ずれ観測用光学装置の少なくとも一部の光路軸が、突き合わせ界面に照射されるレーザ光の落射光路と同軸に配置されていることにより、レーザ光が実際に照射される位置を含む被加工物の画像を確実に撮像することができる。そして、当該撮像された画像に基づいて、レーザ光の照射位置と被加工物の突き合わせ界面の位置との相対的な位置ずれを検出し、その位置ずれを解消するべくレーザ光の照射位置を補正することができる。また、位置ずれ観測用光学装置の光路の一部として、レーザ光の落射光路を利用することにより、レーザ光の照射位置において発生する飛散粒子や煙などの影響を受けない位置に撮像手段を配置して、常に清浄な環境下で被加工物の像を撮像することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザ溶接装置は、レーザ光の照射位置と突き合わせ界面の位置との相対的な位置ずれを補正する機能を有しているので、被加工物の突き合わせ界面の位置のばらつきを許容して溶接可能となり、圧着部を密閉できるため、当該突き合わせ界面を常に高品質にレーザ溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態の装置構成図
図2】(a)突き合わせ界面に隙間が生じている被加工物と当該被加工物を挟み込む前の状態におけるクランプ装置の形態とを例示する概念図 (b)被加工物をクランプ装置で挟み込んだ状態で被加工物の突き合わせ界面にレーザ光を照射している状態を例示する概念図
図3】本発明のレーザ溶接装置による溶接加工処理動作の流れを例示するフロー図
図4】本発明の第2の実施形態の装置構成図
図5】本発明の第3の実施形態の装置構成図
図6】本発明の第4の実施形態の装置構成図
図7】本発明のその他の実施形態の装置構成図
図8】本発明のレーザ溶接装置により溶接加工された圧着端子の斜視図
図9図8の圧着端子の製造工程の概略を示す工程図
図10】レーザ溶接機を示すシステム構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
この実施形態では、図8に例示する圧着端子80を製造するための装置構成について説明する。この圧着端子80は、図9に示すように、(a)帯状の金属板81をその長手方向(矢印Aの向き)に一定のピッチで順送しつつ、(b)キャリア部82と展開状態の端子素材83とを打ち抜き、(c)端子素材83を打ち抜き及び曲げ加工することにより箱状のコネクタ部84と筒状の圧着部85とを一体成型し、(d)圧着部85にできる板材両端の突き合わせ界面86及び先端封止部分の重ね合わせ部100をレーザ溶接により接合する、という一連の工程を経て製造される。ここで、突き合わせ界面とは、圧着部を構成する板材の曲げ方向における一方の端面と、もう一方の端面とを突き合わせて接触させた部分のことを言う。また、レーザ溶接は、重ね合わせ部100の長手方向の中間を端子幅方向に溶接するように行う。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は本発明のレーザ溶接装置の第1の実施形態を示すシステム構成図である。このレーザ溶接装置10は、被加工物である未溶接の圧着端子87を溶接加工位置に順次供給し、その圧着端子87の圧着部85の突き合わせ界面86をレーザ照射により溶接する装置である。圧着端子87は、図9(c)に示すように一定の間隔でキャリア部82に片持ち支持された連鎖端子88の形態で溶接加工位置Pに順次送り込まれて、レーザ照射による溶接加工が施される。
【0016】
レーザ溶接装置10は、レーザ光源20と、レーザ照射光学装置30と、送り装置40と、クランプ装置50と、位置ずれ検出装置60と、制御装置70と、を有している。
【0017】
レーザ光源20は、公知のファイバレーザであり、希土類元素を添加した石英光ファイバをレーザ媒体に使用して近赤外領域の波長のレーザ光を発振する。
【0018】
レーザ照射光学装置30は、レーザ光源20から出力されたレーザ光を溶接加工位置Pに導くための光学装置である。レーザ照射光学装置30は、光路軸シフト光学装置31と、ガルバノスキャナ(レーザ掃引照射手段)32と、集光レンズ33と、を有している。
【0019】
光路軸シフト光学装置31は、レーザ光源20から水平方向に出力されたレーザ光を複数回に反射させて、レーザ光の光路軸を上方に平行にシフトさせる光学装置である。この例では、互いに平行且つ上下に離間させて入射角45°の姿勢で配置された2つの誘電体多層膜平面ミラー31A、31Bで構成されている。
【0020】
ガルバノスキャナ32は、2軸(XY)式ガルバノスキャナであり、光路軸シフト光学装置31からのレーザ光を互いに直交する軸周りに互いに同期して角度制御される2つのミラー32X,32Yで順次反射させることにより、溶接加工位置Pに停止している圧着端子87の突き合わせ界面86及び重ね合わせ部100にレーザ光LBを掃引照射する。ガルバノスキャナ32は、ガルバノ制御系34により駆動制御される。レーザ光LBの水平面内における照射位置は、ミラー32X,32Yの角度を制御することにより、レーザ光LBの掃引速度はミラー32X,32Yの回動速度を制御することにより、各々調節することができる。
【0021】
集光レンズ33は、ガルバノスキャナ32からのレーザ光を圧着端子87の突き合わせ界面86の位置に集光させる光結合系である。集光レンズ33には、テレセントリックレンズ又はfθレンズが用いられる。
【0022】
送り装置40は、連鎖端子88を圧着端子87の並んでいる間隔Lに相当する一定のピッチで送ることにより、圧着端子87を溶接加工位置Pに順次供給する装置である。送り装置40は、連鎖端子88の送り方向における溶接加工位置Pの上流側近傍と下流側近傍とに、連鎖端子88のキャリア部82を上下から挟んで回転する双ローラ41、42を有している。双ローラ41、42は、キャリア部82の下面に接する送りローラ41A、42Aと、上面に接する押さえローラ41B、42Bとからなる。押さえローラ41B、42Bは、キャリア部82を上方から押さえつつ従動回転する。送りローラ41A、42Aは、図示しない駆動機構により一定速度で回転駆動される。送りローラ41A、42Aの外周面には、周方向に等間隔に送り爪45が突設されている。送り爪45は、キャリア部82の送り孔89(図9参照)に係合する。送りローラ41A、42Aが一定角度回転する毎に、キャリア部82の送り孔89に係合している送り爪45が連鎖端子88を圧着端子87の並んでいる間隔L分だけ移動させる。
【0023】
クランプ装置50は、溶接加工位置Pに供給された圧着端子87を精度良く位置決めするための装置である。クランプ装置50は、上クランプ治具51と、下クランプ治具52と、圧着端子87の背面側(クランプ治具52の背面側)から光を照射する照明装置53とを有し、両クランプ治具51、52で圧着端子87の圧着部85に最低3点で接触するように上下から挟み込む。このため、クランプ治具51には、例えば、圧着部85と2点で当接して押さえ込む略ハ字型部51aが形成されている。一方、クランプ治具52には、圧着部85と一点で当接する略平らな当接面52aが形成されている。両クランプ治具51、52で圧着端子87の圧着部85を上下から挟み込むことにより、圧着部85の突き合わせ界面86を、図2(b)に示すように、レーザ光LBを照射可能な位置に位置決めをすることができる。また、上クランプ治具51には、突き合わせ界面86へのレーザ光LBの照射の邪魔にならないようにスリット51bが形成されている。
【0024】
位置ずれ検出装置60は、レーザ光の照射開始に先立ち、レーザ光LBの照射位置と突き合わせ界面86の位置との相対的な位置ずれを検出するための検出装置である。位置ずれ検出装置60は、溶接加工位置Pに供給された圧着端子87の圧着部85を撮像するための撮像装置61と、溶接加工位置Pを明るく照らす照明装置62と、圧着部85の像を撮像装置61の受光部に導き結像させる位置ずれ観測用光学装置63と、撮像装置61により撮像された画像に基づいて突き合わせ界面86の位置を検出するための画像処理系64と、を有している。
【0025】
撮像装置61には、CCD(Carge-Cupled Dice)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)など固体撮像素子を用いたイメージセンサが使用される。照明装置62には、LED(Light Emitting Diode)ランプやハロゲンランプなどが使用される。
【0026】
位置ずれ観測用光学装置63は、その光路の大部分がレーザ照射光学装置30の光路と同軸に配置されている。この例では、光路軸シフト光学装置31の一方の誘電体多層膜平面ミラー31Bからガルバノスキャナ32に至る光路35と、レーザ照射光学装置30の落射光路36すなわち、ガルバノスキャナ32から溶接加工位置Pに至る光路とを、位置ずれ観測用光学装置63の光路として利用している。そして、誘電体多層膜平面ミラー31Bと撮像装置61との間に結像レンズ65が配置されている。この構成により、溶接加工位置Pに供給された圧着端子87の圧着部85の像が、集光レンズ33、ガルバノスキャナ32、誘電体多層膜平面ミラー31B、結像レンズ65を順次経て、撮像装置61の受光部に結像される。撮像装置61は、受光像を撮像し、得られた画像データを出力する。撮像装置61から出力された画像データは、画像処理系64に入力される。画像処理系64は、入力された画像データにエッジ検出処理などを施すことにより、圧着端子87の突き合わせ界面86の位置を検出する。
【0027】
制御装置70は、このレーザ溶接装置10の全体の動作を統括制御するコンピュータシステムである。制御装置70は、画像処理系64からのデータに基づいて、レーザ光LBの照射位置を補正する照射位置補正手段として機能する。
【0028】
上記のように構成されたレーザ溶接装置10の動作を図3に例示するフロー図に従って説明する。レーザ溶接装置10は、送り装置40により未溶接処理の圧着端子87を溶接加工位置Pに供給する度に(S1)、その圧着端子87の圧着部85をクランプ装置50でクランプし(S2)、位置決めを行った状態で、圧着部85を撮像する(S3)。撮像により得られた画像データに基づいて、圧着部85に存在する突き合わせ界面86の位置を検出する(S4)。検出された突き合わせ界面86の位置とレーザ光LBの照射位置(現在の設定位置)との間の距離Dを測定し(S5)、測定された距離Dが許容誤差(閾値)ΔDより大であるか否か判定する(S6)。測定された距離Dが許容誤差ΔD以下であれば(S6でNo)、現在の設定位置のままレーザ光LBを照射してレーザ溶接を実行する(S7)。一方、測定された距離Dが許容誤差ΔDより大の場合(S6でYes)、レーザ光LBの照射位置と突き合わせ界面86の位置との間に相対的な位置ずれが生じたと判断し、レーザ光LBの照射位置を突き合わせ界面86の位置に補正した後(S8)、レーザ溶接を実行する(S7)。その後、クランプを解除し(S9)、未溶接処理の圧着端子87を溶接加工位置Pに供給する処理(S1)に戻る。
【0029】
上記のように、このレーザ溶接装置10は、レーザ光LBの照射開始に先立ち、レーザ光LBの照射位置と突き合わせ界面86の位置との相対的な位置ずれを検出する処理を行い、その結果、位置ずれが検出された場合には、レーザ光LBの照射位置を突き合わせ界面86の位置に補正した後、レーザ光LBの照射を開始してレーザ溶接を実行する。したがって、このレーザ溶接装置10によれば、溶接加工位置Pに次々と供給される圧着端子87の突き合わせ界面86の位置のばらつきを許容して、全ての圧着端子87の突き合わせ界面86を高品質にレーザ溶接することができる。
【0030】
また、この実施形態のレーザ溶接装置10によれば、圧着部85の像を撮像装置61の受光部に導く位置ずれ観測用光学装置63の一部の光路軸が、突き合わせ界面86に照射されるレーザ光LBの落射光路36と同軸に配置されていることにより、レーザ光LBが実際に照射される位置を含む圧着部85の画像を確実に撮像することができる。そして、当該撮像された画像に基づいて、レーザ光LBの照射位置と圧着部85の突き合わせ界面の位置との相対的な位置ずれを検出し、その位置ずれを解消するべくレーザ光LBの照射位置を補正することができる。また、位置ずれ観測用光学装置63の光路の一部としてレーザ光LBの落射光路36を利用することにより、レーザ光LBの照射位置において発生する飛散粒子や煙などの影響を受けない位置に撮像装置61を配置して、常に清浄な環境下で圧着部85の像を撮像することができる。
また、送りローラ41A、42Aの外周面には送り爪45が突設されているため、圧着端子87の搬送時に送り爪45がキャリア部82の送り孔89に係合する。これによって、送りローラ41A、42Aとキャリア部82との間の僅かな隙間に起因する圧着端子87の搬送量のずれを防止することができ、高精度な位置決めを行うことができる。
また、クランプ装置50の背面側にバックライト53を設けたので、このバックライト53からの光の照射により圧着端子87の輪郭がより明瞭となるため、より高精度な位置決めを行うことができる。
【0031】
[第2の実施形態]
図4は本発明のレーザ溶接装置の第2の実施形態を示すシステム構成図である。以下、第1の実施形態と共通の構成要素については図中に同一符号を付し、説明を適宜省略する。第1の実施形態では、溶接加工位置Pの近傍に照明装置62を設け、照明装置62の照明光で圧着部85を直接照らすようにしているが、図4に示す第2の実施形態では、光路軸シフト光学装置31の誘電体多層膜平面ミラー31Aに臨ませて照明装置66が設けられ、照明装置66から出射された照明光が、レーザ照射光学装置30の光路軸を通って溶接加工位置Pに導かれるようになっている。すなわち、この例では、光路軸シフト光学装置31の両多層膜平面ミラー31A、31B間の光路37と、誘電体多層膜平面ミラー31Bからガルバノスキャナ32に至る光路35と、レーザ照射光学装置30の落射光路36とを、照明光の光路として利用している。照明光の光路としてレーザ光LBの落射光路36を利用することにより、レーザ光LBの照射位置において発生する飛散粒子や煙などの影響を受けない位置に照明装置66を配置することができる。また、確実に材料表面をむらなく照明でき、送り装置40やクランプ装置50との位置的干渉をさけることができる。
【0032】
[第3の実施形態]
図5は本発明のレーザ溶接装置の第3の実施形態を示すシステム構成図である。第1の実施形態では、ガルバノスキャナ32を備え、レーザ光源20からのレーザ光LBをガルバノスキャナ32内の2つのミラー32X、32YでXY方向(水平方向)に振ることにより、圧着端子87の突き合わせ界面86に沿ってレーザ光LBを掃引する構成を採用しているが、図5に示す第3の実施形態では、レーザ加工ヘッド90を備え、そのレーザ加工ヘッド90自体をXY方向(水平方向)に移動させることにより、レーザ光LBを掃引する。レーザ加工ヘッド90内には、レーザ光源20からのレーザ光LBを下向きに直角に反射させて溶接加工位置Pに落射させる誘電体多層膜平面ミラー91と、誘電体多層膜平面ミラー91からのレーザ光LBを圧着端子87の突き合わせ界面86の位置に集光させる集光レンズ92とが設けられている。さらに、レーザ加工ヘッド90内には、撮像装置61と、結像レンズ65とが設けられている。撮像装置61及び結像レンズ65は、落射光路36と同軸に配置されており、溶接加工位置Pにある圧着端子87の圧着部85の像が集光レンズ92、誘電体多層膜平面ミラー91、結像レンズ65を順次経て、撮像装置61の受光部に結像される。
【0033】
この第3の実施形態のレーザ溶接装置10においても、圧着部85の像を撮像装置61の受光部に導く位置ずれ観測用光学装置63の一部の光路軸が、突き合わせ界面86に照射されるレーザ光LBの落射光路36と同軸に配置されていることにより、レーザ光LBが実際に照射される位置を含む圧着部85の画像を確実に撮像することができる。そして、当該撮像された画像に基づいて、レーザ光LBの照射位置と圧着部85の突き合わせ界面の位置との相対的な位置ずれを検出し、その位置ずれを解消するべくレーザ光LBの照射位置を補正することができる。
【0034】
[第4の実施形態]
図6は本発明のレーザ溶接装置の第4の実施形態を示すシステム構成図である。第3の実施形態では、溶接加工位置Pの近傍に照明装置62を設け、照明装置62の照明光で圧着部85を直接照らすようにしているが、図6に示す第4の実施形態では、照明装置66が溶接加工位置Pから遠く離れたレーザ光源20の近傍に設けられている。レーザ光源20の近傍には、レーザ光源20から出力されたレーザ光LBを反射させてレーザ加工ヘッド90内の誘電体多層膜平面ミラー91に導く誘電体多層膜平面ミラー67が設けられている。照明装置66は両誘電体多層膜平面ミラー67、91と同軸に配置されている。そして、照明装置66から出射された照明光が、レーザ照射光学装置30の光路軸を通って溶接加工位置Pに導かれるようになっている。すなわち、この例では、レーザ照射光学装置30の両多層膜平面ミラー67、91間の光路38と、落射光路36とを、照明光の光路として利用している。照明光の光路としてレーザ光LBの落射光路36を利用することにより、レーザ光63の照射位置において発生する飛散粒子や煙などの影響を受けない位置に照明装置66を配置することができる。
【0035】
[その他の実施形態]
本発明の構成は上記実施形態の構成に限定されるものではない。たとえば、ミラーやレンズの配置などは適宜変更可能である。また、上記の例では、レーザ光源20としてファイバレーザを使用した場合について説明したが、レーザ光源20はファイバレーザに限定されない。上記の例では、位置ずれ検出装置60が照明装置62、66を有しているが、溶接加工位置Pに供給された圧着端子87の圧着部85の像を誘電体多層膜平面ミラー31B、91を透過させて撮像装置61で受光できる十分な明るさが得られているならば、照明装置62、66は省略可能である。被加工物についても圧着端子に限るものではない。
【0036】
また、図7は、図1に示す第1の実施形態の構成からクランプ装置50を省いた装置構成図である。図7に示すように、クランプ装置50を省いた場合には、送りローラ41A、42Aとキャリア部82の送り孔89との係合において、位置ずれが発生するが、上記実施形態においては、全ての圧着端子の画像処理をして突き合わせ界面の位置ずれを補正しながらレーザ照射することができる。また、圧着部のクランプ工程を省くことができ、圧着端子の搬送から溶接に至るまでの作業効率を向上させることができる。
【0037】
また、図10は、レーザ溶接機210を示すシステム構成図である。このレーザ溶接機210は、被加工物である未溶接の圧着端子287を溶接加工位置に順次供給し、その圧着端子287の圧着部285の突き合わせ界面286a及び重ね合わせ部286bをレーザ照射により溶接する装置である。圧着端子287は、一定の間隔でキャリア部282に片持ち支持された連鎖端子288の形態で溶接加工位置Pに順次送り込まれて、レーザ照射による溶接加工が施される。
【0038】
レーザ溶接機210は、レーザ光源220と、レーザ照射光学装置230と、送り装置240と、被加工物保持機構250と、制御装置270と、を有している。
【0039】
レーザ照射光学装置230は、レーザ光源220から出力されたレーザ光を溶接加工位置Pに導くための光学装置である。レーザ照射光学装置230は、X・Y軸スキャナ231と、Z軸スキャナ232と、集光レンズ233と、を有している。
【0040】
X・Y軸スキャナ231は、2軸(XY)式ガルバノスキャナであり、レーザ光源220からのレーザ光LBを互いに直交する軸周りに互いに同期して角度制御される2つのミラー231X,231Yで順次反射させることにより、溶接加工位置Pに停止している圧着端子287の突き合わせ界面286a及び重ね合わせ部286bにレーザ光LBを掃引照射する。
【0041】
Z軸スキャナ232は、X・Y軸スキャナ231により走査されるレーザ光LBの照射方向(Z軸方向)における焦点位置を調節するための光学装置である。Z軸スキャナ232は、X・Y軸スキャナ231に入射するレーザ光LBの光路上に設けられている。
【0042】
X・Y軸スキャナ231及びZ軸スキャナ232は、ガルバノ制御系234により駆動制御される。レーザ光LBの水平面内における照射位置は、ミラー231X,231Yの角度を制御することにより、レーザ光LBの掃引速度はミラー231X,231Yの回動速度を制御することにより、各々調節することができる。
【0043】
集光レンズ233は、X・Y軸スキャナ231からのレーザ光LBを圧着端子287の突き合わせ界面286a及び重ね合わせ部286bの位置に集光させる光結合系である。集光レンズ233には、テレセントリックレンズ又はfθレンズが用いられる。
【0044】
送り装置240は、連鎖端子288を圧着端子287の並んでいる間隔Lに相当する一定のピッチで送ることにより、圧着端子287を溶接加工位置Pに順次供給する装置である。送り装置240は、連鎖端子288の送り方向における溶接加工位置Pの上流側近傍と下流側近傍とに、連鎖端子288のキャリア部282を上下から挟んで回転する双ローラ241、242を有している。双ローラ241、242は、キャリア部282の下面に接する送りローラ241A、242Aと、上面に接する押さえローラ241B、242Bとからなる。押さえローラ241B、242Bは、キャリア部282を上方から押さえつつ従動回転する。送りローラ241A、242Aは、図示しない駆動機構により一定速度で回転駆動される。送りローラ241A、242Aの外周面には、周方向に等間隔に送り爪245が突設されている。送り爪245は、キャリア部282の送り孔に係合する。送りローラ241A、242Aが一定角度回転する毎に、キャリア部282の送り孔に係合している送り爪245が連鎖端子288を圧着端子287の並んでいる間隔L分だけ移動させる。
【0045】
被加工物保持機構250は、溶接加工位置Pに供給された圧着端子287を適正な位置・姿勢に保持するとともに突き合わせ界面286aの隙間を解消するための装置である。
なお、同軸観測系と組み合わせられるZ軸フォーカスシステムは、レーザ光源とガルバノスキャナもしくはレーザ加工ヘッドの間にあってもよい。具体的には、図1、4、7のレーザ光源20と誘電体多層膜平面ミラー31Aとの間、図5のレーザ光源20と誘電体多層膜平面ミラー91との間、図6のレーザ光源20と誘電体多層膜平面ミラー67との間に設置すればよい。
すなわち、本発明は金属板材相互の突合せ界面を有する被加工物全般のレーザ溶接装置に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
10 レーザ溶接装置
20 レーザ光源
30 レーザ照射光学装置
31 光路軸シフト光学装置
32 ガルバノスキャナ(レーザ掃引照射手段)
33 集光レンズ
36 落射光路
40 送り装置
50 クランプ装置(隙間解消装置)
60 位置ずれ検出装置
61 撮像装置
63 位置ずれ観測用光学装置
64 画像処理系
70 制御装置(照射位置補正手段)
80 圧着端子
85 圧着部
86 突き合わせ界面
87 圧着端子(被加工物)
LB レーザ光
P 溶接加工位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10