特許第5981577号(P5981577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5981577電子デバイス封止用樹脂組成物および電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981577
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】電子デバイス封止用樹脂組成物および電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20160818BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160818BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160818BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160818BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20160818BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20160818BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H01L23/30 R
   H05B33/14 A
   B01J20/22 A
   B01D53/28
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 E
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-17222(P2015-17222)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-110963(P2016-110963A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2015年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-248467(P2014-248467)
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】三枝 哲也
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 匠
(72)【発明者】
【氏名】石坂 靖志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 恵司
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−003432(JP,A)
【文献】 特開2014−140797(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/027658(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/086334(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/063626(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/001823(WO,A1)
【文献】 特開2011−026521(JP,A)
【文献】 特開2012−038660(JP,A)
【文献】 特開2007−191511(JP,A)
【文献】 特開2005−007235(JP,A)
【文献】 特開2013−082815(JP,A)
【文献】 特開昭59−042540(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第01473335(GB,A)
【文献】 特開2005−298598(JP,A)
【文献】 特開2015−086376(JP,A)
【文献】 特開2012−036240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
B01D 53/28
B01J 20/22
C09K 3/10
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で表される架橋性アルコキシドを配位子として有する金属錯化合物を架橋性有機金属乾燥剤として含む電子デバイス封止用樹脂組成物。
【化1】
一般式(2)において、Mは、Al、B、TiまたはZrを表し、配位子におけるRxは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、アシル基または下記一般式(a)で表される基を表す。ただし、少なくとも1つのRxは、上記基に、チオール基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イソシアネート基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される架橋性基が置換した基である。nはMの原子価を表す。
【化2】
一般式(a)において、Oは前記一般式(2)におけるORxのOを表す。
はアルキル基、アルケニル基またはアシル基を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Rはアルキル基または炭素原子数10以上のアルコキシ基を表す。
【請求項2】
少なくとも1つの前記Rxが、チオール基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イソシアネート基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される架橋性基が置換したアルキル基もしくはアルケニル基である請求項1に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの前記Rxが、チオール基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イソシアネート基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される架橋性基が置換したアルキル基である請求項1に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記Rがアルコキシ基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(メタ)アクリレートモノマーを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、ポリブタジエン末端ウレタンジ(メタ)アクリレートである請求項5に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記架橋性有機金属乾燥剤を全樹脂中、1〜25質量%含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
【請求項8】
有機材料からなる有機発光材料層が互いに対向する一対の電極間に挟持されてなる積層体と、この積層体を外気から遮断する構造体と、この構造体内に配置された乾燥手段とを有する有機EL素子であって、前記乾燥手段が請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物より形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性基を持つ配位子から成る架橋性有機金属乾燥剤を含む電子デバイス封止用樹脂組成物、およびこの封止用樹脂組成物で封止された電子デバイスに関する。なかでも有機電子デバイス、有機発光素子、タッチパネル、LED、太陽電池の貼り合わせや封止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(以下、OLED素子とも称す。)は、使用により発光輝度や発光効率などの発光特性が徐々に劣化していくという問題がある。その原因としては、有機発光素子内に浸入した水分等による有機物の変性や電極の酸化が挙げられる。
【0003】
このような問題を防止するため、有機発光素子を封止することで、水分等が有機発光素子中に浸入することを防ぎ、有機発光素子の劣化を抑制する技術が検討されており、封止樹脂中に湿気反応性有機金属乾燥剤を添加する技術も検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。ここでは、封止樹脂中に有機金属乾燥剤を添加する場合には、湿気反応性有機金属乾燥剤と封止樹脂を均一に相溶させたり、湿気反応性有機金属乾燥剤が放出するアルコールのマイグレーションを抑制することが要求されている。
【0004】
しかし、これらの要求を満たすためにこれまでに検討された技術では、非架橋系の材料やモノアクリレートを使用するなどして、封止剤硬化物の架橋度を低くする必要があった。そのため、これらの封止剤の水蒸気バリア性は十分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5062648号公報
【特許文献2】特開2012−38660号公報
【特許文献3】特許5213303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来技術における封止樹脂は、架橋密度が低くならざるをえず、水蒸気バリア性を十分に満たしているとは言えない。
さらに、本発明者らが封止樹脂の検討を進めるなか、湿気反応性有機金属乾燥剤を封止樹脂中に添加した場合、加湿試験で封止板が剥離する例が確認された。この原因を詳細に検討した結果、封止材料のせん断接着力が加湿試験後に大きく低下したためと判明した。これは水分との反応により湿気反応性有機金属乾燥剤から脱離した、イソプロピルアルコールが封止樹脂と封止板との界面に偏析することで接着力を低下させたためと推定される。このような材料を実際の製品に適用した場合、有機発光素子が大気中の湿気を吸収して経時劣化し、不良を起こす危険性があり、封止耐久性に劣る。
【0007】
このような問題に鑑み、本発明は、架橋性基を持つ配位子から成る架橋性有機金属乾燥剤を用いて、高い架橋密度を実現し、加湿によるせん断接着力の低下を抑えることのできる、従来の封止剤よりも水蒸気バリア性が高く、かつ加湿によるせん断接着力低下が少ない、封止耐久性に優れた封止樹脂およびこの封止樹脂を作製するための電子デバイス封止用樹脂組成物(以下、「封止用樹脂組成物」ともいう。)を提供することを課題とする。
加えて、この電子デバイス封止用樹脂組成物を硬化させ樹脂で封止することにより、密封性と封止耐久性に優れる電子デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、有機金属乾燥剤の配位子に着目して、上記の従来技術が有する課題を解決するように鋭意検討した。
その結果、特定の架橋性基を持つ配位子からなる架橋性有機金属乾燥剤を樹脂組成物に配合させることで、この樹脂組成物を硬化させてなる封止樹脂に高い水蒸気バリア性を付与することができ、高い架橋密度を実現し、加湿によるせん断接着力の低下を抑えることができ、封止寿命を延ばし、高い封止耐久性を実現できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
(1)下記一般式(2)で表される架橋性アルコキシドを配位子として有する金属錯化合物を架橋性有機金属乾燥剤として含む電子デバイス封止用樹脂組成物。
【化1】
一般式(2)において、Mは、Al、B、TiまたはZrを表し、配位子におけるRxは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、アシル基または下記一般式(a)で表される基を表す。ただし、少なくとも1つのRxは、上記基に、チオール基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イソシアネート基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される架橋性基が置換した基である。nはMの原子価を表す。
【0010】
【化2】
【0011】
一般式(a)において、Oは前記一般式(2)におけるORxのOを表す。
はアルキル基、アルケニル基またはアシル基を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Rはアルキル基または炭素原子数10以上のアルコキシ基を表す。
【0014】
(2)少なくとも1つの前記Rxが、チオール基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イソシアネート基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される架橋性基が置換したアルキル基もしくはアルケニル基である(1)に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
(3)少なくとも1つの前記Rxが、チオール基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イソシアネート基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される架橋性基が置換したアルキル基である(1)に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
(4)前記Rがアルコキシ基である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
(5)さらに、(メタ)アクリレートモノマーを含む(1)〜(4)のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
(6)前記(メタ)アクリレートモノマーが、ポリブタジエン末端ウレタンジ(メタ)アクリレートである(5)に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
(7)前記架橋性有機金属乾燥剤を全樹脂中、1〜25質量%含有する(1)〜(6)のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物。
(8)有機材料からなる有機発光材料層が互いに対向する一対の電極間に挟持されてなる積層体と、この積層体を外気から遮断する構造体と、この構造体内に配置された乾燥手段とを有する有機EL素子であって、前記乾燥手段が(1)〜(7)のいずれか1項に記載の電子デバイス封止用樹脂組成物より形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【0015】
本明細書において、「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートのいずれでもよく、これらの総称として使用する。従って、メタクリレートおよびアクリレートのいずれか一方の場合やこれらの混合物をも含む。なお、(メタ)アクリロイル基は、一般には(メタ)アクリレート基とも称される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の架橋性有機金属乾燥剤を含有する電子デバイス封止用樹脂組成物によれば、架橋密度が高く、水蒸気バリア性の高い封止樹脂を形成することができる。さらに、本発明の封止樹脂で封止した電子デバイスは、加湿による樹脂せん断接着力の低下が抑えられ、気密性、封止耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の封止用樹脂組成物で有機発光素子を封止・硬化した一態様の模式的な断面図である。
図2】均一封止のため、スペーサーとともに本発明の封止用樹脂組成物で有機発光素子を封止・硬化した一態様の模式的な断面図である。
図3】本発明の封止用樹脂組成物で有機発光素子を封止・硬化した、別の態様の模式的な断面図である。
図4】本発明の封止用樹脂組成物で有機発光素子を封止・硬化した、更に別の態様の模式的な断面図である。
図5】実施例および比較例における、(a)Ca腐食試験に用いる試験片の平面図および(b)Ca腐食試験に用いた試験片の4隅が腐食された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に用いる架橋性有機金属乾燥剤について説明する。
【0019】
<<架橋性有機金属乾燥剤>>
最初に、本発明の一般式(2)で表される架橋性アルコキシドを配位子として有する金属錯化合物を含む下記一般式(1)で表される架橋性アルコキシドを配位子として有する金属錯化合物を説明する
M(ORx)n 一般式(1)
一般式(1)において、Mは中心金属を表し、具体的には、Al、B、TiまたはZrを表す。中でもAlが好ましい。
Rxは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、アシル基または下記一般式(a)で表される基を表し、少なくとも1つのRxは架橋性基を有し、nはMの原子価を表す。Rxは同一の基であっても、複数の異なる種類の基であってもよい。また、複数の(ORx)nのそれぞれのRxが結合した多座配位子であってもよい。
なお、前記一般式(1)は、Mの原子価nを用いて、M(ORx)nと表記したが、このような錯化合物は、通常多量体として存在する。
前記一般式(1)で表される金属錯化合物において、中心金属Mと結合しているORx基の酸素原子が、前記一般式(1)で表される金属錯化合物の中心金属Mに配位(−M−O(:M)R−)することで二量体以上の多量体が生成していてもよい。また、加熱や不純物によってアルコールが脱離することで−M−O−M−結合が生成することでも多量体は生成する。ここでは前者の、M(OR)n自体がふたつ以上連なったものを多量体という。
【0020】
前記架橋性有機金属乾燥剤の架橋性基として、ビニル基、チオール基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、オキセタン基、エポキシ基等が挙げられる。
本発明において、架橋性基の「架橋」とは、チオール-エン反応、カチオン重合反応、アニオン重合反応、ラジカル反応等により、橋かけすることを意味する。
前記架橋性基は、重合性官能基が好ましい。重合性官能基の具体例として、光ないしは熱によるラジカル重合性のビニル基、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0021】
上記の架橋性アルコキシド配位子における架橋性基を除くアルコキシド部位の炭素数は、炭素数1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、2または3が特に好ましい。
アルキル基は直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく炭素数1〜10が好ましく、2〜5がより好ましく、2または3が特に好ましい。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、i―プロピルおよびt―ブチルが挙げられる。
【0022】
アルケニル基は直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく炭素数2〜10が好ましい。アルケニル基の具体例として、ビニルおよびプロペニル等が挙げられる。なお、アルケニル基における炭素−炭素二重結合は分子鎖の任意の位置に存在してよい。
アリール基は、炭素数6〜20が好ましく、炭素数6〜15がより好ましい。アリール基の具体例として、フェニルおよびナフチル等が挙げられる。
Rxがアリール基である場合、吸収波長が可視光領域にかかることがあるため、トップエミッション構造のディスプレイへの適用は好ましくない。
【0023】
シクロアルキル基は、炭素数3〜20が好ましく、炭素数3〜15がより好ましい。シクロアルキル基の具体例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、ジシクロペンタニルおよびシクロヘキシル等が挙げられる。
複素環基は、炭素数3〜8が好ましく、炭素数3〜6がより好ましい。複素環基の具体例として、ピリジルおよびピペリジニル等が挙げられる。
【0024】
アシル基は、炭素数2〜10が好ましく、炭素数4〜6がより好ましい。アシル基の具体例として、アセチル、プロピオニル、ベンゾイルおよびアクリル等が挙げられる。
【0025】
【化3】
【0026】
一般式(a)において、Oは一般式(1)におけるORxのOを表す。
【0027】
はアルキル基、アルケニル基またはアシル基を表す。
におけるアシル基は架橋性基をその構造中に含み、その架橋性基は、ラジカル重合性基が好ましく、なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
におけるアルキル基、アルケニル基およびアシル基は一般式(1)におけるアルキル基、アルケニル基およびアシル基とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0028】
一般式(a)において、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
におけるアルキル基は前記一般式(1)におけるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0029】
はアルキル基またはアルコキシ基を表し、アルコキシ基が好ましい。
におけるアルキル基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜5がより好ましく、炭素数1が特に好ましい。
におけるアルコキシ基は後述する。
【0030】
Rx、R、RおよびRは任意の置換基を有していてもよく、このような置換基として、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アリル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜20のアリール基、より好ましくは炭素数6〜15のアリール基)、ベンジル基、アシル基(好ましくは炭素数2〜10のアシル基、より好ましくは炭素数4〜6のアシル基)、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0031】
本発明における架橋性有機金属乾燥剤は、後述のように水と反応して失活するので、本発明の封止用樹脂組成物は乾燥条件下で製造、取り扱われることが好ましい。また、本発明の封止用樹脂組成物の構成材料は、後述する添加剤を含めて、あらかじめ脱水処理してから使用することが好ましい。
特に、中心金属への配位子がすべてアルコキシドである場合、水分子との反応活性が高いため、封止用樹脂組成物の製造工程中で、大気中に含まれる水分との反応により架橋性有機金属乾燥剤は失活し、乾燥能力が低下してしまう。
そのため、上記一般式(1)で表される架橋性有機金属乾燥剤の中でも、下記一般式(2)で表される金属錯化合物が好ましく、本発明において架橋性有機金属乾燥剤として使用する
【0032】
【化4】
【0033】
一般式(2)において、Mは、Al、B、TiまたはZrを表し、配位子におけるRxは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、アシル基または記一般式(a)で表される基を表す。ただし、少なくとも1つのRxは、上記基に、チオール基、(メタ)アクリロイルオキシ基、イソシアネート基、オキセタン基およびエポキシ基から選択される架橋性基が置換した基である。nはMの原子価を表す。はアルキル基、アルケニル基またはアシル基を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Rはアルキル基または炭素原子数10以上のアルコキシ基を表す。
【0034】
本発明では、前記一般式(2)において、Rがメチルを表し、Rが水素原子を表し、Rがメチルを表すことが特に好ましい。すなわち、一般式(2)で表される金属錯化合物がアセチルアセトナト配位基を有する配位子を有することがより好ましい。
【0035】
さらに、前記一般式(2)において、Rがアルコキシ基を表し、一般式(1)で表される化合物がアセトアセトキシエステル配位基を有する配位子を有することが特に好ましい。
におけるアルコキシ基は炭素数1以上が好ましい。また、(メタ)アクリル樹脂との相溶性の観点から炭素原子数2以上が好ましく、本発明においては、炭素原子数は10以上である。また、水蒸気バリア性の観点からは炭素原子数20以下が好ましい。

【0036】
また、一般式(1)で表される架橋性有機金属乾燥剤は、1つの中心金属Mに対して、二分子のアルコキシド配位子と、一分子のアセチルアセトナト配位基を有する配位子が配位する架橋性有機金属乾燥剤がより好ましい。
アセチルアセトナト配位基を有する配位子は、安定なケトエノール構造を有する2座配位子であるため、解離定数は小さく、水分子との反応活性は低い。
このため、水分子との反応活性の高いアルコキシド配位子と、反応活性の低いアセチルアセトナト配位基を有する配位子を共に有する架橋性有機金属乾燥剤を用いることで、水分子との反応活性を調整することができる。
一般式(1)で表される架橋性有機金属乾燥剤はアセトアセトキシ化合物を含む。
【0037】
また、本発明の封止用樹脂組成物中には、架橋性有機金属乾燥剤および架橋性有機金属乾燥剤と水との反応生成物である金属水酸化物が並存している状態がより好ましい。
一般に、有機樹脂は容易に吸水し、数千ppmもの水分を含有することも多い。このような大量の水分を含んでいる樹脂を、真空乾燥や加熱乾燥によって数ppm以下になるよう脱水を行うことは現実的ではない。このため、有機樹脂中の水分が十分に脱水されていない有機樹脂で有機発光素子を封止した場合には、封止剤中の水分により有機発光素子が劣化してしまう。
【0038】
これに対して、あらかじめ封止用樹脂組成物中の水分を架橋性有機金属乾燥剤により脱水しておくことで、樹脂中の水分を脱水し、封止用樹脂組成物中の水分量を10ppm以下にすることも可能である。このようにして脱水された封止用樹脂組成物を用いて封止した有機発光素子の寿命は、脱水処理されていない封止用樹脂組成物を用いて封止した有機発光素子よりも長くなる。
さらに、封止用樹脂組成物中に残存する架橋性有機金属乾燥剤は、封止後に有機発光デバイス中に浸入してくる水分と反応し、脱水する役割も果たす。
【0039】
また、封止樹脂中に含まれる架橋性有機金属乾燥剤は、基板表面の疎水性を高める。この結果、素子基板や封止基板との親和性の低い封止樹脂の場合には親和性が向上し、封止樹脂と基材の界面からの水の侵入を低減できるため、効果的である。
【0040】
さらに、一般式(1)で表される化合物がアセトアセトキシエステル配位基を有する配位子を有する場合、架橋性有機金属乾燥剤と封止用樹脂組成物の相溶性が良いので、架橋性有機金属乾燥剤は硬化前の液体状態でも、硬化後の固体状態でも相分離や白濁が起こらず、架橋性有機金属乾燥剤による吸水効果と基板との高い親和力(接着力)の相乗効果により、高い水蒸気バリア性が得られる。しかし、硬化前後で相分離や白濁がみられる樹脂組成物はこのような効果が得られず、十分な封止性能を示せない。
【0041】
本発明における架橋性有機金属乾燥剤M(ORx)nは、下記反応式(I)で示されるように、水と反応することが好ましい。
【0042】
反応式(I)
M(ORx)n + tHO → M(OH)t(ORx)n−t + tRxOH
【0043】
反応式(I)において、tは1以上n未満の整数を表す。
【0044】
水との反応により解離するRxOHは、(メタ)アクリル樹脂等と良好に混合できる化合物であることが好ましい。すなわち、ORxは、解離化合物RxOHが(メタ)アクリル樹脂等と良好に混合可能な配位子であることが好ましい。
【0045】
このような架橋性有機金属乾燥剤M(ORx)nは、例えば、アルミニウムアルコキシド類とヒドロキシ(メタ)アクリレートとのアルコール交換により得られる。
具体的なアルミニウムアルコキシド類として、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH)、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート(ALCHTR)、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート(アルミキレートM)、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート(アルミキレートD)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(アルミキレート−A)、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステアレートトリマー(いずれも川研ファインケミカル株式会社製)等があり、市販品として入手できる。
【0046】
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(以上、日本合成化学工業株式会社製)、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学株式会社)等があり、市販品として入手できる。
また、架橋性アセトアセトキシエステルとして、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートが市販品として、日本合成化学工業株式会社等より入手できる。
【0047】
次に、本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物の使用態様を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の使用態様はこれに限定されるものではない。
【0048】
<<電子デバイス封止用樹脂組成物>>
本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物は、図1に示されるように、有機発光デバイス5における有機発光素子3を封止するために用いられる。より詳細には、素子基板4上に設けられた有機発光素子3等の有機電子デバイス用素子と封止基板1との間に、電子デバイス封止用樹脂組成物を架橋硬化して封止樹脂2として配設される。これにより、有機発光素子3が素子基板4と封止基板1とで気密封止され、固体密着封止構造を有する有機発光デバイス5等の各種有機電子デバイスが得られる。有機電子デバイスとしては、有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機半導体、有機太陽電池等が挙げられる。
【0049】
本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物は、上記の架橋性有機金属乾燥剤を含む。
架橋性有機金属乾燥剤の含有量は、封止用樹脂組成物に含有される全樹脂100質量%中、1〜25質量%が好ましい。
【0050】
<樹脂モノマー>
また、本発明における電子デバイス封止用樹脂組成物は、重合により架橋、硬化する単量体モノマー化合物(樹脂モノマー)を含むことが好ましい。
ラジカル重合により高分子化する樹脂モノマーとしては、ビニル基をモノマー中に含むものが好ましい。例えば、エチレン、スチレン、塩化ビニル、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、等やその誘導体のモノマーがあげられる。重合反応の容易さから、好ましくは(メタ)アクリレートモノマーであり、より好ましくはアクリレートエステルモノマーである。
なお、カチオン重合環境下では、上記一般式(1)における酸素原子がカチオン重合の阻害剤となり、架橋密度を低下させて水蒸気透過性を低下させることがある。
【0051】
本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物は、粘度が低いと封止基板とのなじみが良好となり、封止作業が行いやすくなる。そのため、本発明の電子デバイス封止用樹脂組成物の粘度は、10Pa・s以下が好ましく、1Pa・s以下がより好ましい。
ただし、低粘度化のために低分子量のモノマーを多用すると封止樹脂の架橋密度が高くなり、弾性率が高くなるため、硬化収縮による封止部の剥離が増える。そのため、硬化樹脂の弾性率を下げて剥離を低減するために、数平均分子量が、1,500〜5,000である樹脂を配合することが好ましい。このように柔軟性を高める観点から配合される樹脂の数平均分子量は、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましい。また、低分子モノマーとの相溶性に優れ、封止基板への良好な馴染み性の観点から、4,000以下が好ましく、3,500以下がより好ましい。
なお、数平均分子量は、テトラヒドロフランに溶解して得た1%溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC装置:Waters社製GPCシステム、カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−N」、流速:1.0 mL/min)により測定した値を、ポリスチレン換算の数平均分子量として算出したものである。
【0052】
本発明におけるラジカル重合性樹脂モノマーは、1分子中に1.5〜3個の重合性基が含有される多官能ラジカル重合性樹脂モノマーである。重合性基の数は、1.5〜3個であるが、2〜3個が好ましく、2個がより好ましい。
なお、1.5個の重合性基が含有されるラジカル重合性樹脂モノマーとは、例えば、ラジカル重合性樹脂モノマー1分子中に1個の重合性基が含有されるものとラジカル重合性樹脂モノマー1分子中に2個の重合性基が含有されるものの、等モル混合物が挙げられる。
【0053】
<添加剤>
本発明の封止用樹脂組成物は、封止樹脂の水蒸気バリア性や屈曲性を損なわない範囲で、他の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、希釈剤、粘着付与剤、架橋助剤、難燃剤、フィラー、カップリング剤等が挙げられる。
希釈剤としては低粘度の(メタ)アクリルモノマーやポリブテンが挙げられる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン樹脂、及びこれらの水素化化合物等が挙げられる。
また本発明の封止用樹脂組成物は、封止対象との接着力を高めるために、エポキシ基含有の樹脂やカチオン重合開始剤、およびカチオン重合開始剤で重合を開始する樹脂を含有していても良い。
【0054】
次に、本発明の電子デバイスについて説明する。
【0055】
<<電子デバイス>>
本発明の電子デバイスは、上述の本発明の封止用樹脂組成物を用いて封止された電子デバイス、なかでも、有機電子デバイスが好ましい。
以下に、有機電子デバイスの例として、有機発光デバイス(画像表示装置)について説明する。
【0056】
有機発光デバイス5は、いわゆるトップエミッションまたはボトムエミッションであり、図1に示すように、素子基板4上に設けられた有機発光素子3が、封止樹脂2を介して封止基板1により封止されている。なお、封止樹脂2は、本発明の封止用樹脂組成物を硬化させてなる樹脂を意味する。
なお、この有機発光デバイス5は、封止側面が露出していてもよい。すなわち、側面部封止剤としてガラスフリットや接着剤などによるさらなる密閉処理が行われていなくともよい。これは、本発明の封止用樹脂組成物が、高い水蒸気バリア性と接着性を兼ね備えていることに起因する。このように、本発明の封止用樹脂組成物は、ガラスフリットなどによるさらなる密閉処理を行う必要が無く樹脂の塗布工程は一度で済み、そのため有機発光デバイス5の構造を簡略化することができ、軽量化や低コスト化を図ることもできる。
また、剛直なガラスフリット等を用いないため、素子基板4や封止基板1に柔軟性のある材料を用いる場合、有機発光デバイス5自体に柔軟性を付与した、いわゆるフレキシブルデバイスの提供が可能となる。また、デバイス全体が柔軟かつ軽量であるため、落下等の衝撃を受けても壊れにくくなる。
【0057】
本発明では、図1のような有機発光デバイス5以外に、図2のような有機発光デバイス5Aの形態も好ましい。図2では、封止基板1と素子基板4を平行に設置するため、目的とする封止樹脂の厚みに対して適当な高さを有するスペーサーbを組み込んだものである。図面において各図間の同符号は同じものを示す。
使用するスペーサーbの高さは、実質、いずれのスペーサーbも同じでなければ、封止基板1と素子基板4を平行に設置することが困難となる。
スペーサーbは、球状フィラーまたはフォトリソグラフィ法によって形成された柱状ピラーが好ましい。また、材質としては、有機発光素子を封止時の圧力で押しつぶして破壊する危険性がなければ、有機もしくは無機のいずれでも構わない。なお、有機樹脂であると本発明の封止用樹脂組成物との親和性に優れるので好ましく、架橋系アクリルであるとガスバリア性の劣化が少ないのでより好ましい。
スペーサーbとしては、特に制限するものではないが、例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のENEOSユニパウダーや早川ゴム株式会社製のハヤビーズなどを用いることができる。
【0058】
基板1mmあたりのスペーサーbの配置密度は、封止基板1と素子基板4を平行に設置する観点からは、10個/mm以上が好ましく、より好ましくは50個/mm以上、さらに好ましくは100個/mm以上である。配置密度が10個/mm未満であると、上下の基板間距離を均一に保つことが難しくなる。
樹脂粘度の観点からは、基板1mmあたりのスペーサーの配置密度は1,000個/mm以下が好ましく、より好ましくは500個/mm以下、さらに好ましくは300個/mm以下である。配置密度が1,000個/mmを超えると、樹脂粘度が高くなりすぎて封止作業が困難になる。
【0059】
封止樹脂の厚さは、基板(封止面)への凹凸追従性の観点からは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。封止樹脂の厚さが0.5μm未満になると、有機発光素子の凹凸を十分に吸収できずに基板間を完全に封止できない。
また、水蒸気バリア性の観点からは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。封止樹脂の厚さが100μmを超えると、大気に露出する封止樹脂の面積が大きくなり、水分浸入量が多くなるので封止効果が低下する。
なお、封止樹脂の厚さは、スペーサーbを使用する場合には、スペーサーbの高さに対応する。
【0060】
本発明の封止用樹脂組成物より得られる封止樹脂は、図3に示すような、側面部封止剤(ガラスフリットや接着剤)10などによるさらなる密閉処理が行われている有機発光デバイス15に使用してもよい。この場合、本発明の封止用樹脂組成物と側面部封止剤(ガラスフリットや接着剤)10の相乗効果により、高い気密性が保たれる。このため、有機発光デバイス15の長期寿命化の観点からは、本発明の封止用樹脂組成物より得られる封止樹脂12と側面部封止剤(ガラスフリットや接着剤)10を併用した有機発光デバイス15が好ましい。
【0061】
本発明の封止用樹脂組成物を用いた有機発光デバイスの製造方法は次の通りである。この際、封止用樹脂組成物の設置方法は、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレーコート法、スリットコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、フローコート法等があげられる。
【0062】
図1のように額縁部分に密閉処理の無い有機発光デバイス5では、まず、有機ELの素子部を積層形成した有機発光素子基板4の上に有機発光素子3を覆って本発明の封止用樹脂組成物を適量塗布し、さらにその上から封止基板1で本発明の封止用樹脂組成物を挟むように設置する。これにより、素子基板4と封止基板1の間に空間が生じないよう密閉し、その後、紫外線照射により本発明の封止用樹脂組成物を硬化し、封止樹脂2を形成することで封止される。
または、初めに封止基板1に本発明の封止用樹脂組成物を塗布し、この封止用樹脂組成物の上に有機発光素子3を載せ、素子基板4で挟んだ後、紫外線照射により本発明の封止用樹脂組成物を硬化し、封止樹脂2を形成することで封止しても良い。
【0063】
図3のように、有機発光素子13の周りを囲むように、側面部封止剤10として、接着剤やガスバリア性シール剤、またはガラスフリット硬化物などでダム構造部分を形成することで、封止端部からの水分浸入を低減させる構造の場合、先に側面部封止剤(接着剤)10を素子基板14または封止基板11の上に形成する。その後、この有機発光素子13の周りを囲むように形成された側面部封止剤(接着剤)10の内部に、本発明の封止用樹脂組成物を流し込み、さらにもう片方の基板で本発明の封止用樹脂組成物を挟むように設置する。これにより、素子基板14と封止基板11の間に空間が生じないよう密閉し、その後、紫外線照射により本発明の封止用樹脂組成物を硬化し、封止樹脂12を形成することで封止する。
これらの封止工程は乾燥環境下で行われると、本発明の封止用樹脂組成物より得られる封止樹脂の吸湿特性の劣化が少なくなるので好ましい。
【0064】
さらに、本発明の封止用樹脂組成物より得られる封止樹脂は、図4に示すような、ガスバリア性の素子基板24上に形成された、有機発光素子23の上部全体を覆う無機薄膜21上に、本発明の封止用樹脂組成物を塗布し、これを硬化させた有機薄膜22を配し、この上に、さらに無機薄膜21を形成することで得られる、有機薄膜22と無機薄膜21の複数積層により密閉処理がなされた有機発光デバイス25に使用してもよい。この場合、有機樹脂が封止樹脂となる。本発明の封止用樹脂組成物により得られる有機薄膜22と無機薄膜21の相乗効果により、高い気密性が保たれる。上記の効果が得られる限り、前記積層数は図4の態様に限定されるものではなく任意に設計できる。
ここで無機薄膜21は、窒化ケイ素化合物や酸化ケイ素化合物、酸化アルミニウム化合物、アルミニウムなどから構成される。無機薄膜21の形成は、プラズマCVD(PECVD)、PVD(物理気相堆積)、ALD(原子層堆積)などで形成される。一層の無機薄膜21の厚みは1μm以下が屈曲性の点から好ましい。
有機薄膜22はインクジェット法やスプレーコート法、スリットコート法、バーコート法など既存の方法で塗布された後、紫外線照射で硬化させることにより形成される。一層の有機薄膜22の厚みは、屈曲性の点からは5μm以下が好ましいが、有機EL素子への耐衝撃性の点からは1μm以上、より好ましくは5μm以上が好ましい。
【0065】
本発明の封止用樹脂組成物を用いた有機発光デバイスは、色度調整のためのカラーフィルタが設置されていても良い。この場合のカラーフィルタの設置場所は、図1〜3の態様の場合は、本発明の封止樹脂2(12)と封止基板1(11)、または素子基板4(14)との間であっても良く、カラーフィルタと有機発光素子3(13)で素子基板4(14)を挟んでも、または、カラーフィルタと素子基板4(14)で封止基板1(11)および封止樹脂2(12)を挟むように設置しても良い。図4の態様の場合は、無機薄膜21の上、または素子基板24の下に設置しても良い。その場合、本発明の封止用樹脂組成物、またはその他の透明樹脂組成物で固定されることが好ましい。
また、有機材料からなる有機発光材料層が互いに対向する一対の電極間に挟持されてなる積層体と、この積層体を外気から遮断する構造体と、この構造体内に配置された乾燥手段とを有する有機EL素子であって(図示せず)、前記乾燥手段が、本発明の封止用樹脂組成物により形成されるものであってもよい。
【実施例】
【0066】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
(参考例)
[架橋性有機金属乾燥剤の調製]
以下、後述の有機金属乾燥剤Al(HEA)3、Al(HPA)3、Al(HEA)2CH、Al(HEA)2MおよびAl(HPA)2Mを便宜的に単量体として記載する。
【0068】
【化5】
【0069】
[Al(HEA)3の調製]
アルミニウムトリイソプロポキシド(川研ファインケミカル株式会社製)10gとトルエン100g、ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)17.1g、重合禁止剤として2,6―ジ―t―ブチル−p−クレゾール(東京化成工業株式会社製)0.1gをナスフラスコ中に入れて溶解させた。アルミニウムトリイソプロポキシドからヒドロキシエチルアクリレートとの交換反応で脱離したイソプロパノールと溶媒のトルエンを、エバポレーターにより40℃で留去することで、Al(HEA)3を得た。
【0070】
[Al(HPA)3の調製]
ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)に代えて、ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)19.1gを用いた以外は、Al(HEA)3と同様にして、Al(HPA)3を得た。
【0071】
[Al(HEA)2CHの調製]
アルミニウムトリイソプロポキシド(川研ファインケミカル株式会社製)に代えて、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、アセトアセトキシエステルのアルキル基炭素数2)10gを用い、ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)を8.5g用いた以外は、Al(HEA)3と同様にして、Al(HEA)2CHを得た。
【0072】
[Al(HEA)2Mの調製]
アルミニウムトリイソプロポキシド(川研ファインケミカル株式会社製)に代えて、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、アセトアセトキシエステルのアルキル基炭素数18)10gを用い、ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)を4.7g用いた以外は、Al(HEA)3と同様にして、Al(HEA)2Mを得た。
【0073】
[Al(HPA)2Mの調製]
アルミニウムトリイソプロポキシド(川研ファインケミカル株式会社製)に代えて、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、アセトアセトキシエステルのアルキル基炭素数18)10gを用い、ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)を5.3g用いた以外は、Al(HEA)3と同様にして、Al(HPA)2Mを得た。
【0074】
実施例
(封止用樹脂組成物の調製)
【0075】
参考例1
(メタ)アクリレート樹脂としてTEAI−1000(商品名、日本曹達株式会社製、ポリブタジエン末端ウレタンジ(メタ)アクリレート樹脂)を9.8g、架橋性有機金属乾燥剤としてAl(HEA)3を0.1g、重合開始剤としてEsacure TZT(商品名:2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合品、重合開始剤、DKSHジャパン株式会社製)を0.1g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(東京化成工業株式会社製)を0.01g加え、室温(25℃)にて1時間攪拌し、参考例1の封止用樹脂組成物を得た。
【0076】
[参考例2〜4、実施例1〜、比較例1〜3
下記表1の組成に変えた以外は、実施例1と同様にして参考例2〜4、実施例1〜、比較例1〜3の封止用樹脂組成物を得た。得られた封止用樹脂組成物に対して下記試験を行った。結果を下記表1に示す。なお、参考例2〜4、実施例1〜、比較例1〜3において、参考例1と同様に、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(東京化成工業株式会社製)を0.01g用いた。
【0077】
[水蒸気バリア性試験]
下記表1に記載の組成を有する組成物を、厚さ50μmの離型処理PETフィルム(商品名:E7004、東洋紡株式会社製)上に厚み100μmで塗布し、これと25μmの離型処理PETフィルム(商品名:E7004、東洋紡株式会社製)とをラミネートして紫外線照射装置で3J/cmの紫外線を照射した。この積層体から二枚のPETフィルムを剥離することで、厚み100μmの封止用樹脂組成物の硬化フィルムを得た。このフィルムを用いてJIS Z 0208 の塩化カルシウムカップ法に準じ、60℃、相対湿度90%の加湿条件でバリア性(水蒸気透過率)を測定した。
なお、60℃、相対湿度90%の恒温槽に投入した際に、カップ内空気の体積変化によりフィルムが膨張して、表面積やサンプルフィルムの厚みが変化し、測定値が不正確になる恐れがあるため、サンプルは厚み20μmのセロハンで補強を行った。この厚み20μmのセロハンの透湿度は、同様の条件で3,000g/m/24hrと、各実施例、参考例、比較例のサンプルの透湿度に比べて十分に大きいため、サンプルの透湿度測定の妨げにはならなかった。
【0078】
[カルシウム試験]
図5を適宜参照して説明する。
寸法1.2mm×22.5mm×14mmである市販のガラス基板(透明ガラス)を45℃10分間超音波洗浄とUVオゾン洗浄を行った。引き続きこのガラス基板上に真空蒸着機により金属カルシウム層を10mm×10mm角で100nm厚に形成した。次いで、硬化後の封止樹脂厚みが30μmとなるよう10μlの液状封止材を滴下し、0.15mm×18mm×18mmの封止ガラス(透明ガラス)でこれを挟んで、3J/cmの紫外線を照射して封止し、試験片を得た。このとき、封止端面の一辺から金属カルシウム層の一辺までの距離は、四方とも均等に4mmとした。図5(a)及び(b)は、ガラス基板を介して見える前記試験片を上から見た図(ただし、前記封止ガラスの部分を除く。)を示す。得られた試験片(図5(a)参照)を60℃、相対湿度90%の高温高湿下保存を行い、24時間ごとに金属カルシウム22のコーナー部分を観察し、図5(b)の金属カルシウム54のように金属カルシウムの腐食により角が丸まっているもの(図5(b)におけるRが1mm以上のもの)は不合格とした。
なお、下記表1には、不合格となるまでの経過時間を記載した。
本試験はガラス基板上の金属カルシウムが、樹脂中に浸入してきた水分子と反応して、水酸化カルシウムになることで透明になることを利用して、封止樹脂の封止能力を測るものであり、実際の封止の姿により近い方法である。
上記の水蒸気バリア性試験で水蒸気透過率の低い封止用樹脂組成物は、本試験でも良い成績となることが多いが、封止樹脂と基板の界面からの水分子の浸入の影響が有るので、封止樹脂と基板間の親和性によっては、水蒸気バリア性試験と一致しないことも有る。
【0079】
[せん断接着力試験]
各実施例、参考例、比較例で得た封止用樹脂組成物を、厚さ0.5mm、5mm角のガラスチップ(日本電気硝子株式会社製 OA−10G)に厚さ20μmとなるように塗布し、これを厚み0.5mmのLCD(液晶表示装置)用無アルカリガラス(商品名:OA−10G、日本電気硝子株式会社製)上に載せて、紫外線照射装置で3J/cmの紫外線を照射し、接着力測定試料を得た。この測定試料をボンドテスター(商品名:万能型ボンドテスター4000Plus、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社(旧デイジジャパン株式会社製))を用い、測定温度25℃、せん断速度50μm/s、せん断高さ75μmの条件で評価した。
また、この測定試料を、60℃、相対湿度90%の高温高湿下で24時間保存を行った後、同様にせん断接着力を測定し、加湿後のせん断接着力とした。
【0080】
[カールフィッシャー試験]
JIS K 0113に従い、陽極液としてハイドラナール・クーロマットAK(商品名、シグマアルドリッチ株式会社製)、陰極液としてハイドラナール・クーロマットCG−K(商品名、シグマアルドリッチ株式会社製)を用い、気化式カールフィッシャー滴定法(電量滴定法)で封止用樹脂組成物中の水分量測定を行った。
【0081】
【表1】
【0082】
[表1の注]
・「%」は質量%を意味する。
・「−」は成分が含まれていないことを示す。
・TEAI−1000(商品名、日本曹達株式会社製、ポリブタジエン末端ウレタンジ(メタ)アクリレート樹脂)
・アルミキレートM(商品名、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、川研ファインケミカル株式会社製)アセトアセトキシエステルのアルキル基炭素数18
【0083】
実施例1〜と比較例1、2を比較すると、水蒸気透過率が同程度であっても、本発明に規定の架橋性有機金属乾燥剤を添加した実施例1〜の封止用樹脂組成物は、本発明に規定の架橋性有機金属乾燥剤を添加しなかった比較例1、2の封止用樹脂組成物に対してカルシウム試験における不合格になるまでの時間(寿命)が2倍以上であることがわかる。
また、実施例1〜において、本発明に規定の架橋性有機金属乾燥剤の含有量が好ましい範囲内にあることにより、加湿後のせん断接着力を維持することができることがわかる
【0084】
参考例1〜4と実施例1〜を比較すると、一般式(1)で表される化合物がアセトアセトキシ化合物であり、一般式(2)で表されるアセトアセトキシエステル配位基を有する配位子を有する金属錯化合物であると、加湿後のせん断接着力が高いまま、カルシウム試験の寿命を延ばすことができることがわかる。
さらに、比較例3と実施例を比較すると、一般式(2)で表されるアセトアセトキシエステル配位基を有する配位子を有する金属錯化合物であって、かつ、一般式(2)においてRで表されるアルコキシ基の炭素数が10〜20の範囲内にあることにより、加湿後のせん断接着力がさらに高いまま、カルシウム試験の寿命を延ばすことができることがわかる。
【0085】
また、実施例1〜で作製した電子デバイス封止用樹脂組成物を硬化させ樹脂で有機発光素子を封止することで、密封性と封止耐久性に優れる図1に示す電子デバイスを得ることができた。
【符号の説明】
【0086】
1 封止基板
2 封止樹脂
3 有機発光素子
4 素子基板
b スペーサー(フィラー)
5、5A 有機発光デバイス(画像表示装置)
10 側面部封止剤(接着剤、ガラスフリット等)
11 封止基板
12 封止樹脂
13 有機発光素子
14 素子基板
15 有機発光デバイス(画像表示装置)
21 無機薄膜
22 有機薄膜(封止樹脂)
23 有機発光素子
24 素子基板
25 有機発光デバイス(画像表示装置)
51 封止樹脂
52 金属カルシウム
53 Ca試験片
54 腐食した金属カルシウム
55 試験後のCa試験片
R 曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5