特許第5981720号(P5981720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5981720
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】吸水シート構成体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   A61F13/53 300
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2011-549906(P2011-549906)
(86)(22)【出願日】2010年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2010073537
(87)【国際公開番号】WO2011086843
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2013年12月16日
【審判番号】不服2016-4403(P2016-4403/J1)
【審判請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2010-4935(P2010-4935)
(32)【優先日】2010年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】鄙山 鉄博
(72)【発明者】
【氏名】松下 英樹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 悠
(72)【発明者】
【氏名】半田 昌良
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 蓮井 雅之
【審判官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−320523(JP,A)
【文献】 特表2006−513824(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/015980(WO,A1)
【文献】 特開平7−314613(JP,A)
【文献】 特開平9−151224(JP,A)
【文献】 特開2005−334616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂及び接着剤を含有してなる吸収層が、不織布により該吸収層の上方及び下方から挟持された構造を有する吸水シート構成体であって、該不織布は、該吸収層と接着されており、該吸水シート構成体は、不織布上に均一に散布された吸水性樹脂と接着剤との混合粉末が不織布に挟持されて加熱圧着された構造を有するものであり、該吸水性樹脂の含有量が100〜1000g/m2、該吸水性樹脂の質量平均粒径が50〜800μm、かつ該吸水性樹脂の粒径速度指数が0.01〜0.08秒/μm、該吸水シート構成体の剥離強度が、0.05〜3.0N/7cmである吸水シート構成体。
【請求項2】
吸水性樹脂及び接着剤を含有してなる吸収層が、不織布により該吸収層の上方及び下方から挟持された構造を有する吸水シート構成体であって、該不織布は、該吸収層と接着されており、該吸水シート構成体は、接着剤が溶融塗布された不織布上に均一に散布された吸水性樹脂が、接着剤が溶融塗布された不織布で挟持されて加圧圧着された構造を有するものであり、該吸水性樹脂の含有量が100〜1000g/m2、該吸水性樹脂の質量平均粒径が50〜800μm、かつ該吸水性樹脂の粒径速度指数が0.01〜0.08秒/μm、該吸水シート構成体の剥離強度が、0.05〜3.0N/7cmである吸水シート構成体。
【請求項3】
吸水性樹脂の生理食塩水保水能が、20〜60g/gである、請求項1又は2に記載の吸水シート構成体。
【請求項4】
吸水性樹脂の2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能が、15mL/g以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸水シート構成体。
【請求項5】
不織布が、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種からなる不織布である、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸水シート構成体。
【請求項6】
接着剤が、エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤、スチレン系エラストマー接着剤、ポリオレフィン系接着剤及びポリエステル系接着剤からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸水シート構成体。
【請求項7】
以下の(A)〜(D):
(A)乾燥状態の厚みが5mm以下、
(B)合計浸透速度が120秒以下、
(C)逆戻り量が25g以下、及び
(D)漏れ指数が100以下、
の特性を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸水シート構成体。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の吸水シート構成体を、液体透過性シート及び液体不透過性シートで狭持してなる、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生材料分野等に使用し得る吸水シート構成体に関する。詳しくは、薄型で紙おむつ等の吸収性物品に好適に使用し得る吸水シート構成体に関する。さらに本発明は、かかる吸水シート構成体を用いてなる紙おむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ等に代表される吸収性物品は、体液等の液体を吸収する吸収体が、体に接する側に配された柔軟な液体透過性の表面シート(トップシート)と、体と接する反対側に配された液体不透過性の背面シート(バックシート)とにより挟持された構造を有する。
【0003】
従来、デザイン性、携帯時における利便性、流通時における効率等の観点から、吸収性物品の薄型化、軽量化に対する要求は高まっていた。さらに近年、環境保全の観点から、資源を有効に利用し、樹木のような成長に長期間を要する天然素材の使用を極力回避する、いわゆるエコ・フレンドリーな志向にニーズが集まりつつある。従来、吸収性物品において一般的に行われている薄型化のための方法としては、例えば、吸収体中の吸水性樹脂を固定する役割である木材の解砕パルプ等の親水性繊維を減らし、吸水性樹脂を増加させる方法があった。
【0004】
嵩高く吸水能力の低い親水性繊維の比率を低くし、嵩が小さく吸水能力の高い吸水性樹脂を多量に使用した吸収体は、吸収性物品の設計に見合う吸収容量を確保しながら、嵩高い素材を減らすことにより薄型化を目指したもので、合理的な改良方法であると考えられていた。しかしながら、実際に紙おむつ等の吸収性物品に使用された際の液体の分配や拡散を考えた場合、多量の吸水性樹脂が液体の吸収によって柔らかいゲル状になると、いわゆる「ゲルブロッキング現象」が発生し、液体拡散性が格段に低下し、吸収体の液体浸透速度が遅くなるという欠点を有する。この「ゲルブロッキング現象」とは、特に吸水性樹脂が多く密集した吸収体が液体を吸収する際、表層付近に存在する吸水性樹脂が液体を吸収し、表層付近で柔らかいゲルがさらに密になることで、吸収体内部への液体の浸透が妨げられ、内部の吸水性樹脂が効率良く液体を吸収できなくなる現象のことである。
【0005】
そこで、これまでにも親水性繊維を減らし、吸水性樹脂を多量に使用した時に発生するゲルブロッキング現象を防ぐ手段として、例えば、特定の食塩水流れ誘導性、圧力下性能等を有する吸収性重合体を使用する方法(特許文献1参照)、特定の吸水性樹脂前駆体に特定の表面架橋剤を加熱処理した吸水性樹脂を用いる方法(特許文献2参照)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法では、吸水性樹脂を多量に使用した吸収体としての液体吸収性能は満足できるものではない。また、吸水性樹脂を固定する役割を担う親水性繊維を減らすことにより、吸水性樹脂が使用前又は使用中に移動するという問題が生じる。吸水性樹脂の偏りが発生した吸収体は、よりゲルブロッキング現象を引き起こしやすくなる傾向にある。
【0007】
さらに、形態保持に寄与する親水性繊維を減らした吸収体は、吸収体としての形態保持性が低下し、液体の吸収前又は吸収後において、よじれや断裂等の型くずれを起こしやすくなる。型くずれをした吸収体は、液体の拡散性が格段に低下するため、吸収体の本来の能力を発揮できなくなる。このような現象を避けようとすれば、親水性繊維と吸水性樹脂の比率が制限され、吸収性物品の薄型化にも限界が生じる。
【0008】
そこで近年は、吸収体における親水性繊維を極力使用せずに、吸水性樹脂の含有量を高めることのできる次世代型吸収体として、吸収層内に実質的に親水性繊維を含まない吸収積層体や、吸水シート等の研究が幅広く検討されている。例えば、バルキーな不織布の網目に吸水性樹脂を保持する方法(特許文献3参照)、2枚のメルトブローン不織布の間に吸水性ポリマーを封入する方法(特許文献4参照)、疎水性不織布と親水性シートとの間に吸水性ポリマー粒子を介在させる方法(特許文献5参照)等が挙げられる。
【0009】
しかし、親水性繊維をほとんど使用しない場合、前記のゲルブロッキング現象が起こりやすい。ゲルブロッキング現象が発生しない場合でも、尿等の体液を一時的に保水し、吸収積層体全体に液体を拡散するという、従来の親水性繊維の役割を担うものが無いため、吸収積層体が液体を十分に捕捉できずに、液漏れが発生する傾向にある。
【0010】
さらに、吸収積層体の形態保持のために接着剤を用いると、吸水性樹脂の表面が接着剤によって被覆され、液体吸収性能が低下する傾向にある。あるいは、接着剤によって上面と下面の不織布が強固に接着されて、吸水性樹脂が袋状に閉じ込められる等して、吸水性樹脂本来の吸水性能が発揮できない傾向にある。
【0011】
前記吸収積層体の液体吸収性能を向上させるために、吸収積層体の接着力を弱めた場合、積層体を加工する際に、吸水性樹脂の脱落が多大となり経済上好ましくないばかりか、接着力不足により積層体が剥離して商品価値が失われる可能性も生じる。すなわち、接着を強めれば、ゲルブロッキング現象や液漏れが発生し、接着を弱めれば、吸水性樹脂の脱落や積層体の破壊につながるため、現在のところ、前記課題が解決された吸収積層体、吸水シートは得られていない。
【0012】
このような吸水シートにおける接着と液体吸収性能のバランスを改善する研究も検討されている。例えば、2枚の不織布が不織布間に設けられた上下2層のホットメルト接着剤からなる網状体層によって接着されている吸収積層体を用いる方法(特許文献6参照)、不織布又はフィルムからなる基材に、特定の反応型ホットメルトを塗工して、吸水性樹脂を固定する方法(特許文献7参照)、微細セルロースと吸水性樹脂とをネット状のホットメルトで被覆して保持する方法(特許文献8参照)等が挙げられる。しかしながら、不織布、吸水性樹脂、接着剤の性能や、それらを使用する条件等を規定しても、液体吸収性能や形態保持性の高い吸水シートを得ることは困難である。また、特定の接着剤や接着方法を用いると、液体吸収性能が向上したとしても、経済性や生産性の観点から好ましくない。
【0013】
接着剤を使用することなく基材に吸水性樹脂を固定化する方法もある。例えば、重合進行中の吸水性ポリマー粒子を合成繊維質の基材に付着させ、繊維質基材上で重合を行う方法(特許文献9参照)、アクリル酸及びアクリル酸塩を主成分とする単量体水性組成物を不織布基材上で電子線照射によって重合させる方法(特許文献10参照)等が挙げられる。
【0014】
これらの方法では、ポリマー粒子中に合成繊維質の基材が入り込んで堅固に固着されるが、基材中で重合反応を完結させることが難しく、未反応の残存モノマーが多くなる等の欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表平9−510889号公報
【特許文献2】特開平8−57311号公報
【特許文献3】特表平9−253129号公報
【特許文献4】特開平7−051315号公報
【特許文献5】特開2002−325799号公報
【特許文献6】特開2000−238161号公報
【特許文献7】特表2001−158074号公報
【特許文献8】特表2001−096654号公報
【特許文献9】特開2003−11118号公報
【特許文献10】特開平02−048944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、パルプの極めて少ない吸水シート構成体であっても、ゲルブロッキング現象を回避できるため、吸水シート構成体としての基本的な性能(速い液体浸透速度、十分な保水能、少ない液体逆戻り量、少ない液漏れ量、形態保持性)に優れ、薄型化を達成することができる吸水シート構成体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 吸水性樹脂及び接着剤を含有してなる吸収層が、不織布により該吸収層の上方及び下方から挟持された構造を有する吸水シート構成体であって、該不織布は、該吸収層と接着されており、該吸水シート構成体は、不織布上に均一に散布された吸水性樹脂と接着剤との混合粉末が不織布に挟持されて加熱圧着された構造を有するものであり、該吸水性樹脂の含有量が100〜1000g/m2、該吸水性樹脂の質量平均粒径が50〜800μm、かつ該吸水性樹脂の粒径速度指数が0.01〜0.08秒/μm、該吸水シート構成体の剥離強度が、0.05〜3.0N/7cmである吸水シート構成体;
〔2〕 吸水性樹脂及び接着剤を含有してなる吸収層が、不織布により該吸収層の上方及び下方から挟持された構造を有する吸水シート構成体であって、該不織布は、該吸収層と接着されており、該吸水シート構成体は、接着剤が溶融塗布された不織布上に均一に散布された吸水性樹脂が、接着剤が溶融塗布された不織布で挟持されて加圧圧着された構造を有するものであり、該吸水性樹脂の含有量が100〜1000g/m2、該吸水性樹脂の質量平均粒径が50〜800μm、かつ該吸水性樹脂の粒径速度指数が0.01〜0.08秒/μm、該吸水シート構成体の剥離強度が、0.05〜3.0N/7cmである吸水シート構成体;
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載の吸水シート構成体を、液体透過性シート及び液体不透過性シートで狭持してなる、吸収性物品;に関するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる吸水シート構成体は、薄型であっても、形態保持性が良好なために、液体吸収前や吸収後に型くずれを起こさず、しかも液体浸透性、少ない液体逆戻り量、傾斜時の少ない液漏れ等の吸収能力を十分に発揮することができるという優れた効果を奏する。さらに、吸水シート構成体として、柔らかい触感と少ない異物感を両立するとともに、製造時における作業性、生産性にも配慮がなされたものである。従って、本発明にかかる吸水シート構成体を紙おむつの等吸収体として使用することにより、薄くて外観の意匠性に優れると共に、液漏れ等の不都合のない衛生材料を提供することができる。また、本発明にかかる吸水シート構成体は、衛生材料分野以外に、農業分野や建材分野等にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】吸水性樹脂の荷重下での吸水能を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。
図2】吸水性樹脂の初期吸水速度及び有効吸水量を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。
図3】吸水シート構成体の強度を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。
図4】吸水シート構成体の傾斜における漏れ試験を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。
図5】本発明にかかる吸水シート構成体の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかる吸水シート構成体は、吸水性樹脂及び接着剤を含有してなる吸収層が、不織布により挟持された構造を有する吸水シート構成体であり、特定の吸水性能、特定の平均粒径を有する吸水性樹脂を所定量用いて、接着剤を用いて吸収層を不織布間に形成することで、液体浸透性、少ない液体逆戻り量、傾斜時の少ない液漏れ等の液体吸収性能に優れた薄型の吸水シート構成体を実現することができるものである。
【0021】
さらに、本発明にかかる吸水シート構成体は、吸水性樹脂が接着剤により不織布に固着しているため、パルプ繊維等の親水性繊維を実質的に含んでいなくても、吸水性樹脂の偏りや散逸を防止することができ、形態保持性も良好に保たれる。また、剥離強度を特定の範囲とすることで、吸水性樹脂の表面全体が接着剤に覆われた状態ではなく、一部分が固着した状態であるため、吸水性樹脂の吸水性能がほとんど阻害されることがなく、吸水性樹脂が十分に膨潤することができるものと考えられる。
【0022】
本発明にかかる吸水シート構成体は、パルプ繊維等の親水性繊維が本発明の効果を損なわない範囲の量で、不織布間に吸水性樹脂とともに混在している態様であってもよいが、薄型化の観点からは、実質的に親水性繊維を含まない態様であることが好ましい。
【0023】
吸水性樹脂の種類としては、市販の吸水性樹脂が使用でき、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸部分中和物等が挙げられる。これらの吸水性樹脂のなかでは、生産量、製造コストや吸水性能等の観点から、ポリアクリル酸部分中和物が好ましい。ポリアクリル酸部分中和物を合成する方法としては、逆相懸濁重合法、及び水溶液重合法等が挙げられる。これらの重合法のなかでも、得られる粒子の流動性の良さや微粉末の少なさ、液体吸収容量(保水能、有効吸水量、荷重下での吸水能等の指標にて表される)や吸水速度等の吸水性能が高いという観点から、逆相懸濁重合法により得られる吸水性樹脂が好ましく使用される。
【0024】
ポリアクリル酸部分中和物の中和度は、吸水性樹脂の浸透圧を高め、吸水能力を高める観点から、50モル%以上が好ましく、70〜90モル%がより好ましい。
【0025】
吸水シート構成体における吸水性樹脂の含有量は、本発明にかかる吸水シート構成体が吸収性物品に使用された際にも十分な液体吸収性能を得る観点から、吸水シート構成体の1平米あたり100〜1000g(即ち100〜1000g/m2)であり、好ましくは150〜800g/m2、より好ましくは200〜700g/m2であり、さらに好ましくは220〜600g/m2である。吸水シート構成体としての十分な液体吸収性能を発揮させ、特に逆戻りを抑制する観点から、当該含有量は100g/m2以上であることが必要であり、ゲルブロッキング現象の発生を抑制し、吸水シート構成体として液体の拡散性能を発揮させ、さらに液体の浸透速度を改善する観点から、当該合計含有量は1000g/m2以下であることが必要である。
【0026】
本発明にかかる吸水シート構成体の液体吸収性能は、使用される吸水性樹脂の吸水性能に影響をうける。よって本発明で使用される吸水性樹脂は、吸水シート構成体の各成分の構成等を考慮して、吸水性樹脂の液体吸収容量(保水能、有効吸水量、荷重下での吸水能等の指標にて表される)、吸水速度等の吸水性能や質量平均粒径等が好適な範囲のものを選択することが好ましい。
【0027】
本明細書において、吸水性樹脂の保水能は、生理食塩水保水能として評価される。吸水性樹脂の生理食塩水保水能は、液体をより多く吸収し、かつ吸収時のゲルを強く保ちゲルブロッキング現象を防止する観点から、20〜60g/gであり、25〜55g/gであることが好ましく、30〜50g/gであることがより好ましく、35〜45g/gであることがさらに好ましい。吸水性樹脂の生理食塩水保水能は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0028】
また、本発明にかかる吸水シート構成体を紙おむつ等の吸収性物品に使用する場合を考慮すると、装着者の荷重にさらされた状態においても吸水能力が高い方が好ましいという観点から、荷重下での吸水能力も重要であり、吸水性樹脂の2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、15mL/g以上であることが好ましく、20〜50mL/gであることがより好ましく、23〜45mL/gであることがさらに好ましく、25〜40mL/gであることがよりさらに好ましい。吸水性樹脂の2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0029】
また、本発明にかかる吸水シート構成体を紙おむつ等の吸収性物品に使用する場合を考慮すると、装着者の荷重にさらされた状態においても吸水能力が高い方が好ましいという観点から、より高い荷重下での吸水能力も重要であり、吸水性樹脂の4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、12mL/g以上であることが好ましく、15〜40mL/gであることがより好ましく、18〜35mL/gであることがさらに好ましく、20〜33mL/gであることがよりさらに好ましい。吸水性樹脂の4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0030】
本明細書において、吸水性樹脂の吸水速度は、生理食塩水吸水速度として評価される。吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度は、本発明にかかる吸水シート構成体における液体の浸透速度を速め、衛生材料に使用される際の液漏れを防止する観点から、好ましくは80秒以下であり、より好ましくは1〜70秒であり、さらに好ましくは2〜60秒であり、よりさらに好ましくは3〜55秒である。吸水性樹脂の吸水速度は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0031】
吸水性樹脂の質量平均粒径は、吸水シート構成体における吸水性樹脂の散逸及び吸水時のゲルブロッキング現象を防止するとともに、吸水シート構成体のゴツゴツする感触を低減して、風合いを向上する観点から、50〜800μmであり、100〜700μmであることが好ましく、150〜600μmであることがより好ましく、200〜500μmであることがさらに好ましい。吸水性樹脂の質量平均粒径は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0032】
吸水性樹脂の粒径速度指数は、小さいほうが、吸水シート構成体に液体が投入された際により短い時間で液体のドライアップを実現できるという観点から、0.12秒/μm以下であり、0.11秒/μm以下であることが好ましく、0.005〜0.10秒/μmであることがより好ましく、0.01〜0.095秒/μmであることがさらに好ましい。吸水性樹脂の粒径速度指数は、前記生理食塩水吸水速度を前記質量平均粒径で除することにより得られる値である。
【0033】
本発明のような吸水シート構成体において、液体の浸透速度や液漏れ等の液体吸収性能を改良する手段のひとつとして、吸水性樹脂の吸水速度を速くすることが考えられる。一般に、吸水性樹脂の平均粒径が大きいものは、吸水速度が遅く、平均粒径が小さいものは、吸水速度が速くなる傾向にあるため、この場合、吸水性樹脂の微粉末を用いることが挙げられる。しかし、単に吸水性樹脂の平均粒径を小さくした場合、粉体としての流動性が悪くなり、粉立ちによる作業環境の悪化、あるいは吸水性樹脂が不織布から散逸することによる生産性の低下等の問題が発生するばかりか、前記ゲルブロッキング現象が発生しやすくなり、吸水シート構成体の液体吸収性能の低下にもつながる。その他にも、粒径の小さい吸水性樹脂が接着剤を覆いやすくなるためか、接着効果が低下して不織布が剥離しやすい傾向にある。
【0034】
これらをすべて満足するためには、吸水シート構成体の触感、剥離強度等を悪化させない程度に大きな粒径でありながら、かつ吸水速度が従来よりも速い吸水性樹脂を使用することが必要となる。本発明者らは、単位粒径あたりの吸水速度(秒)が速い吸水性樹脂、すなわち粒径速度指数が所定の範囲を満たす樹脂が、吸水シート構成体の液体吸収性能と、作業性、触感、剥離強度の課題の全てを高いレベルで満足するための重要な要素の一つであることを見出し、本発明の完成に至った。
【0035】
所定の粒径速度指数を満たす吸水性樹脂を得るためには、特定の吸水性樹脂の製造方法を用いること、例えば、重合中に発泡させ連続気泡を導入する水溶液重合法、又は特定の乳化剤を用いた逆相懸濁重合法を用いることが好ましく、なかでも得られる吸水性能の高さと、速い吸水速度が安定して得られる観点から後者の方法がより好ましい。特定の乳化剤としては、適度に親水性のノニオン性界面活性剤が好ましく使用され、それらを用いた逆相懸濁重合の吸水性樹脂は、通常、球状や顆粒状、及びそれらが凝集した形態で得られる。かかる形態の樹脂は、粉砕の必要がほとんど無いうえに、粉体としての流動性に優れ、吸水シート構成体の製造時における作業性が優れるなど等の観点からも、好ましく用いられる。
【0036】
また、本発明に用いられる吸水性樹脂は、前記の生理食塩水吸水速度範囲に加えて、所定の初期吸水速度と有効吸水量を有することが好ましい。
【0037】
本発明に用いられる吸水性樹脂の初期吸水速度は、吸水時間0〜30秒間における1秒間あたりの液体の吸水量(mL)として表され、吸水シート構成体において液体浸透の初期におけるゲルブロッキング現象の発生を抑制して、吸収層における液体拡散を促進させた後に、より広範囲な吸水性樹脂に効率よく吸水させる観点から、0.35mL/s以下であることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.30mL/sであり、さらに好ましくは0.10〜0.25mL/sである。液体拡散させつつ、液体浸透の初期における肌へのドライ感を確保する観点から、0.05mL/s以上であることがより好ましい。吸水性樹脂の初期吸水速度は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0038】
本発明に用いられる吸水性樹脂の有効吸水量は、生理食塩水有効吸水量として35mL/g以上であることが好ましく、40〜85mL/gであることがより好ましく、45〜75mL/gであることがさらに好ましく、50〜65mL/gであることがよりさらに好ましい。吸水性樹脂がより多くの液体を吸収し、逆戻りを低減することでドライ感を得る観点から、有効吸水量は35mL/g以上であることが好ましく、吸水性樹脂の架橋を適度に施すことで吸収時のゲルを強く保つことができ、ゲルブロッキングを防止する観点から、85mL/g以下であることが好ましい。吸水性樹脂の有効吸水量は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0039】
前記したように、吸水性樹脂の吸水速度は、その平均粒径を大きくすれば遅くなる傾向にあるが、初期吸水速度(mL/s)に関しては、従来の吸水性樹脂において平均粒径を大きくしても効果は少ないうえに、大きい粒子の比率が多くなると、吸水シート構成体における触感が悪化する傾向がある。初期吸水速度を所定の範囲に制御する方法としては、例えば、架橋剤によって吸水性樹脂の架橋密度を上げたり、疎水性の添加剤で吸水性樹脂の表面を均一に被覆したり、特定の乳化剤を用いた逆相懸濁重合によって吸水性樹脂を製造する方法等が挙げられる。
【0040】
しかし、架橋剤によって吸水性樹脂の架橋密度を上げれば、所定の初期吸水速度は満足できるかもしれないが、同時に吸水性樹脂の有効吸水量が低下するため、所定の初期吸水速度と有効吸水量の特性を併せもつ吸水性樹脂を得ることは困難である。
【0041】
よって、所定の初期吸水速度と有効吸水量の特性を併せもつ吸水性樹脂が得られやすい観点から、疎水性の添加剤を吸水性樹脂の表面に均一被覆したもの、及び特定の乳化剤を用いた逆相懸濁重合により製造されるものが好ましく、なかでも得られる吸水性能の高さから、後者の方がより好ましい。特定の乳化剤としては、適度に疎水性のノニオン性界面活性剤が好ましく使用され、それらを用いた逆相懸濁重合の吸水性樹脂は、通常、球状やフットボール状、及びそれらが凝集した形態で得られる。かかる形態の樹脂は、粉砕の必要がほとんど無いうえに、粉体としての流動性に優れ、吸水シート構成体の製造時における作業性が優れる等の観点からも、好ましく用いられる。
【0042】
本発明に用いられる不織布としては、当該技術分野で公知の不織布であれば特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性及びシート構成体とした際の強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維製からなる不織布や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された不織布等が挙げられる。これらの不織布のなかでも、吸水シート構成体の強度を高める等の観点から、合成繊維の不織布が好ましく用いられ、とりわけレーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維からなる不織布であることが好ましい。これらの不織布は、前記繊維の単独の不織布でもよく、2種以上の繊維を組み合わせた不織布でもよい。
【0043】
より詳細には、吸水シート構成体の形態保持性を高め、吸水性樹脂の目抜けによる脱落を防止する観点から、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維及びそれらの混合体からなる群より選択される繊維より製造されるスパンボンド不織布がより好ましく、また、シートを形成した際の液体吸収性能、柔軟性をより高める観点から、レーヨン繊維を主成分とするスパンレース不織布も、本発明に用いられる不織布として、より好ましい。前記スパンボンド不織布のなかでも、ポリオレフィン繊維の多層構造である、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布、及びスパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS)不織布がより好ましく用いられ、とりわけポリプロピレン繊維を主成分とするSMS不織布、SMMS不織布が好ましく用いられる。一方、前記スパンレース不織布としては、主成分のレーヨン繊維にポリオレフィン繊維及び/又はポリエステル繊維を適宜配合したものが好ましく使用され、なかでもレーヨン−PET不織布、レーヨン−PET−PE不織布が好ましく用いられる。前記不織布には、吸水シート構成体の厚みを増大させない程度に少量のパルプ繊維が含まれていてもよい。
【0044】
前記不織布は、その親水性が低すぎると、吸水シート構成体の液体吸収性能が悪化する一方、必要以上に高くても液体吸収性能はそれに見合うほど向上しないため、適度な親水性を有していることが望ましい。その観点から、後述される「不織布の親水度」の測定方法に従って測定した時の親水度が、5〜200のものが好ましく用いられ、8〜150のものがより好ましく、10〜100のものがさらに好ましく、12〜80のものがよりさらに好ましい。このような親水性を有する不織布は、特に限定されないが、前記した不織布のうち、レーヨン繊維のように素材自身が適度な親水度を示すものを用いたものでもよいし、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維に、公知の方法で親水化処理し、適度な親水度を付与したものを用いたものであってもよい。親水化処理の方法としては、例えば、スパンボンド不織布において、疎水性の化学繊維に親水化剤を混合したものをスパンボンド法にて不織布を得る方法、疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を作製する際に親水化剤を同伴させる方法、又は疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を得た後に親水化剤を含浸させる方法等が挙げられる。親水化剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤等が用いられる。
【0045】
吸収層を挟持する不織布は、吸水シート構成体の液体吸収性能をより高める観点から、親水性であることが好ましいが、とりわけ、液漏れを防止する観点から、吸収層の下方に用いられる不織布の親水性は、上方に用いられる不織布の親水性と同等又は高い方がより好ましい。本明細書における吸収層の上方とは、得られる吸水シート構成体を用いて吸収性物品を作製した時に、吸収対象の液体が供給される側をいい、吸収層の下方とは、その反対側をいう。
【0046】
不織布は、本発明にかかる吸水シート構成体に、良好な液体浸透性、柔軟性、強度やクッション性を付与すること、及び吸水シート構成体の液体浸透速度を速める観点から、適度に嵩高く、目付量が大きい不織布が好ましい。その目付量は、好ましくは5〜300g/m2であり、より好ましくは8〜200g/m2であり、さらに好ましくは10〜100g/m2であり、よりさらに好ましくは11〜50g/m2である。また、不織布の厚さとしては、20〜800μmの範囲が好ましく、50〜600μmの範囲がより好ましく、80〜450μmの範囲がさらに好ましい。
【0047】
本発明に用いられる接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系エラストマー接着剤;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)接着剤;エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等のエチレン−アクリル酸誘導体共重合系接着剤;エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)接着剤;共重合ナイロン、ダイマー酸ベースポリアミド等のポリアミド系接着剤;ポリエチレン、ポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等のポリオレフィン系接着剤;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、共重合ポリエステル等のポリエステル系接着剤等、及びアクリル系接着剤が挙げられる。本発明においては、接着力が強く、吸水シート構成体における不織布の剥離や吸水性樹脂の散逸を防ぐことができるという観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤、スチレン系エラストマー接着剤、ポリオレフィン系接着剤及びポリエステル系接着剤が好ましい。これらの接着剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
熱溶融型の接着剤を使用する場合、接着剤の溶融温度(軟化温度)は、吸水性樹脂を不織布に十分に固定するとともに、不織布の熱劣化や変形を防止する観点から、60〜180℃が好ましく、70〜150℃がより好ましく、75〜125℃がさらに好ましい。
【0049】
吸水シート構成体における接着剤の含有割合は、吸水性樹脂の含有量(質量基準)の0.05〜2.0倍の範囲であることが好ましく、0.08〜1.5倍の範囲であることがより好ましく、0.1〜1.0倍の範囲であることがさらに好ましい。十分な接着によって不織布の剥離や吸水性樹脂の散逸を防止し、吸水シート構成体の形態保持性を高める観点から、接着剤の含有割合は0.05倍以上であることが好ましく、接着が強くなり過ぎることによる吸水性樹脂の膨潤阻害を回避し、吸水シート構成体の浸透速度や液漏れを改善する観点から、接着剤の含有割合は2.0倍以下であることが好ましい。
【0050】
本発明にかかる吸水シート構成体において、吸収層は、吸水性樹脂及び接着剤を含有してなるものであり、例えば、不織布上で吸水性樹脂と接着剤の混合粉末を均一に散布し、さらに不織布を重ねて、接着剤の溶融温度付近で加熱すること、要すれば圧力下で加熱することにより形成される。また、接着剤を塗布した不織布上に、吸水性樹脂を均一に散布した後、接着剤を塗布した不織布をさらに重ねて、要すれば圧力下で加熱することによっても形成される。
【0051】
本発明にかかる吸水シート構成体は、例えば、以下のような方法で製造することができる。
【0052】
(a)不織布の上に、吸水性樹脂と接着剤の混合粉末を均一に散布し、さらに不織布を重ねて、接着剤の溶融温度付近で加熱圧着する。
【0053】
(b)不織布の上に、吸水性樹脂と接着剤の混合粉末を均一に散布し、加熱炉を通過させて粉末が散逸しない程度に固定する。これに不織布を重ねて、加熱圧着する。
【0054】
(c)不織布の上に、接着剤を溶融塗布した直後、吸水性樹脂を均一に散布して層を形成させ、さらに、上部から接着剤を溶融塗布した不織布を、接着剤の塗布面が散布した吸水性樹脂層の側に向くように上部から重ね、ロールプレス等を用いて加圧して、要すれば加熱して、圧着する。
【0055】
例えば、これら(a)〜(c)に示された方法によって吸水シート構成体を製造することで、吸水性樹脂及び接着剤を含有してなる吸収層が、2枚の不織布により挟持された構造を有する吸水シート構成体を得ることができる。これらの方法のなかでも、製造方法の簡便さと製造効率の高さの観点から、(a)、(c)の方法がより好ましい。
【0056】
なお、(a)〜(c)に例示された方法を併用して、吸水シート構成体を製造することもできる。吸水シート構成体の触感の改善及び液体吸収性能の向上を目的として、シート製造における加熱圧着時やシート製造後に、エンボス加工を施してもよい。
【0057】
吸水シート構成体の製造における接着剤の配合割合は、吸水性樹脂の量(質量基準)の0.05〜2.0倍の範囲であることが好ましく、0.08〜1.5倍の範囲であることがより好ましく、0.1〜1.0倍の範囲であることがさらに好ましい。十分な接着によって不織布の剥離や吸水性樹脂の散逸を防止し、吸水シート構成体の形態保持性を高める観点から、接着剤の配合割合は0.05倍以上であることが好ましく、接着が強くなり過ぎることによる吸水性樹脂の膨潤阻害を回避し、吸水シート構成体の浸透速度や液漏れを改善する観点から、接着剤の配合割合は2.0倍以下であることが好ましい。
【0058】
また、本発明にかかる吸水シート構成体は、消臭剤、抗菌剤やゲル安定剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0059】
本発明にかかる吸水シート構成体は、吸水シート構成体の剥離強度が0.05〜3.0N/7cmという特定の範囲であることに一つの特徴を有し、0.05〜2.5N/7cmであることが好ましく、0.1〜2.0N/7cmであることがより好ましく、0.2〜1.5N/7cmであることがさらに好ましい。吸水シート構成体の剥離強度が3.0N/7cmを超える場合、吸収層の接着が強すぎるため、特定の吸水性能を有する吸水性樹脂を所定量添加した効果が得られない。吸水シート構成体の剥離強度が0.05N/7cm未満の場合、吸収層の接着が弱すぎるため、吸水性樹脂の働きは阻害されないが、吸水シート構成体の形態保持性が悪く、吸水性樹脂の移動や不織布の剥離が生じるため、紙おむつ等の吸収性物品への加工が困難となる。本明細書において、吸水シート構成体の剥離強度は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0060】
本発明にかかる吸水シート構成体は、紙おむつ等への使用を考慮すると、含有する吸水性樹脂が十分な吸水性能を発揮して、吸水シート構成体としての液体吸収容量をより大きくするほうが好ましいという観点から、その生理食塩水保水能は、1000〜55000g/m2であることが好ましく、2000〜45000g/m2であることがより好ましく、3000〜35000g/m2であることがさらに好ましく、4000〜25000g/m2であることがよりさらに好ましい。本明細書において、吸水シート構成体の生理食塩水保水能は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0061】
さらに、適度な接着によって、吸水性樹脂の吸水性能を大きく阻害しない程度に、吸水性樹脂の固定化がなされていることが好ましい観点から、吸水シート構成体の生理食塩水保水能A〔g/m2〕が、前記吸水性樹脂の含有量B〔g/m2〕と前記吸水性樹脂の生理食塩水保水能C〔g/g〕に基づいて、関係式:0.5B×C≦A≦0.9B×Cを充足することが好ましく、関係式:0.55B×C≦A≦0.85B×Cを充足することがより好ましく、関係式:0.6B×C≦A≦0.8B×Cを充足することがさらに好ましい。
【0062】
本発明にかかる吸水シート構成体においては、各構成物を適切に配合して設計することが好ましく、なかでも特定の吸水性能を有する吸水性樹脂を、特定の含有量で用いることが好ましい観点から、吸水シート構成体における前記吸水性樹脂の含有量B〔g/m2〕が、前記吸水性樹脂の粒径速度指数C〔秒/μm〕に基づいて、関係式:50+1000C≦B≦700+1000Cを充足することが好ましく、関係式:100+1000C≦B≦500+1000Cを充足することがより好ましく、関係式:100+1000C≦B≦400+1000Cを充足することがさらに好ましい。前記関係式を充足することにより、液漏れの発生しにくい吸水シート構成体を、より効率よく得ることができる。なお、上記関係式におけるB及びCは数値のみを対象とし、それぞれの単位は考慮しない。
【0063】
本発明においては、前記吸水シート構成体の吸収層の全面又は一部を、適切な通気性分画層を用いて、垂直方向(シートの厚み方向)に、上方の1次吸収層と下方の2次吸収層に分画した構造とすることもできる。かかる構造とすることで、吸水シート構成体の液体吸収性能、なかでも傾斜における液漏れが飛躍的に改善される。
【0064】
前記通気性分画層は、適度な通気性と通液性を有するが、吸水性樹脂のような粒子状物が実質的に通過しない層であればよい。具体的には、PE、PP繊維からなる細孔を有するネット等の網状物、パフォーレイティッドフィルム等の多孔質フィルム、ティッシュペーパー等の衛生用紙、パルプ/PE/PPからなるエアレイド型不織布等のセルロース含有合成繊維不織布、あるいはレーヨン繊維、ポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維からなる合成繊維不織布等が挙げられる。これらのなかでも、得られる吸水シート構成体の性能面から、本発明における吸収層を挟持する前記不織布と同様のものが好ましく用いられる。
【0065】
2次吸収層における吸水性樹脂の使用量は、1次吸収層の吸水性樹脂の使用量に対して、0.01〜1.0倍(質量比)の範囲であることが好ましく、0.05〜0.8倍の範囲であることがより好ましく、0.1〜0.5倍の範囲であることがさらに好ましい。2次吸収層の液体吸収性を十分に発揮し、液漏れを防止する観点から、0.01倍以上であることが好ましく、吸液後における表面でのドライ感を高め、逆戻りを少なくする観点から、1.0倍以下であることが好ましい。
【0066】
本発明にかかる吸水シート構成体の液体吸収性能は、使用される吸水性樹脂の吸水性能に影響をうける。よって本発明で使用される1次吸収層の吸水性樹脂は、吸水シート構成体の各成分の構成等を考慮して、吸水性樹脂の液体吸収容量(保水能、有効吸水量、荷重下での吸水能等の指標にて表される)、吸水速度等の吸水性能や質量平均粒径等が好適な範囲のものを選択することが好ましい。また、2次吸収層の吸水性樹脂は、1次吸収層の吸水性樹脂と同一であってもよく、後述の範囲のものでもよい。
【0067】
より具体的には、少なくとも一方の吸収層に用いられる吸水性樹脂が逆相懸濁重合法により得られる吸水性樹脂である態様が好ましく、2次吸収層に用いられる吸水性樹脂が逆相懸濁重合法により得られる吸水性樹脂である態様がより好ましく、1次吸収層及び2次吸収層に用いられる吸水性樹脂の両者が逆相懸濁重合法により得られる吸水性樹脂である態様がさらに好ましい。
【0068】
本発明にかかる吸水シート構成体においては、1次吸収層に用いられる吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度と2次吸収層に用いられる吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度との間に正の値の差があることが好ましい。かかる差が大きいほど、前記した1次吸収層における液体の滞留を回避してドライ感を高める効果、かつ液漏れを防止する効果がより強く発揮される。具体的には、(1次吸収層に用いられる吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度)−(2次吸収層に用いられる吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度)が10秒間以上であることが好ましく、15秒間以上であることがより好ましく、20秒間以上であることがさらに好ましい。
【0069】
吸水シート構成体の液体吸収性能向上の観点から、好ましい形態として、1次吸収層の吸水性樹脂と2次吸収層の吸水性樹脂を異なったものとする場合、1次吸収層に用いられる吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度は、本発明にかかる吸水シート構成体の液体浸透速度を速め、1次吸収層における液体の滞留を回避して、吸収性物品に使用される際の肌へのドライ感を増す観点から、好ましくは15〜80秒であり、より好ましくは20〜70秒であり、さらに好ましくは30〜60秒であり、よりさらに好ましくは35〜55秒である。一方、2次吸収層に用いられる吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度は、本発明にかかる吸水シート構成体の傾斜における漏れを少なくし、吸収性物品に使用される際の液漏れによる不快感を防止する観点から、好ましくは1〜40秒であり、より好ましくは2〜30秒であり、さらに好ましくは2〜20秒であり、よりさらに好ましくは3〜15秒である。
【0070】
前記したように、吸水性樹脂の平均粒径が大きいものは、吸水速度が遅く、平均粒径が小さいものは、吸水速度が速くなる傾向にある。しかし、吸水速度を速めようと、吸水性樹脂の平均粒径を小さくしすぎた場合、粉体としての流動性の悪化、粉立ちによる作業環境の悪化、吸水性樹脂が不織布から散逸することによる生産性の低下、ゲルブロッキング現象の発生による液体吸収性能の低下、及び不織布の剥離等、種々の課題が発生しやすい傾向にある。
【0071】
これらを回避するためには、適度な平均粒径を有し、かつ吸水速度の速い吸水性樹脂を2次吸収層に用いることが好ましい。このような吸水性樹脂を得るためには、特定の吸水性樹脂の製造方法を用いること、例えば、重合中に発泡させ連続気泡を導入する水溶液重合法、又は特定の乳化剤を用いた逆相懸濁重合法を用いることが好ましく、なかでも得られる吸水性能の高さと、速い吸水速度が安定して得られる観点から後者の方法がより好ましい。特定の乳化剤としては、適度に親水性のノニオン性界面活性剤が好ましく使用され、それらを用いた逆相懸濁重合の吸水性樹脂は、通常、球状や顆粒状、及びそれらが凝集した形態で得られる。かかる形態の樹脂は、粉砕の必要がほとんど無いうえに、粉体としての流動性に優れ、吸水シート構成体の製造時における作業性が優れる等の観点からも、好ましく用いられる。
【0072】
なお、2次吸収層に用いられる吸水性樹脂の生理食塩水保水能、2.07kPa荷重下及び4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能、質量平均粒径、粒径速度指数、初期吸水速度、有効吸水量等は特に限定されず、前記1次吸収層に用いられるものと同様の範囲のものが用いられ、とりわけ、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能、初期吸水速度は、以下に例示される範囲のものが好適に用いられる。
【0073】
2次吸収層に用いられる吸水性樹脂の4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、12mL/g以上であることが好ましく、15〜40mL/gであることがより好ましく、15〜35mL/gであることがさらに好ましい。吸水性樹脂の4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0074】
また、2次吸収層に用いられる吸水性樹脂は、前記した範囲の生理食塩水吸水速度に加えて、特定の初期吸水速度を有することが好ましい。初期吸水速度は、吸水時間0〜30秒間における1秒間あたりの液体の吸水量(mL)として表され、吸水シート構成体において液体浸透の初期におけるゲルブロッキング現象の発生を抑制して、吸収層における液体拡散を促進させた後に、より広範囲な吸水性樹脂に効率よく吸水させつつ、液体浸透の初期における肌へのドライ感を確保する観点から、0.35mL/s以下であることが好ましく、0.05〜0.35mL/sであることがより好ましい。吸水性樹脂の初期吸水速度は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0075】
本発明にかかる吸水シート構成体は、薄型化が可能である点に一つの特長を有しており、吸収性物品への使用を考慮すると、吸水シート構成体の厚みは、乾燥状態で、5mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましく、0.5〜3mmであることがさらに好ましく、0.8〜2mmであることがよりさらに好ましい。乾燥状態とは、吸水シート構成体が液体を吸収する前の状態のことをいう。本明細書において、吸水シート構成体の乾燥状態の厚みは、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0076】
さらに本発明にかかる吸水シート構成体は、液体の浸透速度が速い点に一つの特長を有しており、吸収性物品への使用を考慮すると、吸水シート構成体の合計浸透速度が120秒以下であることが好ましく、100秒以下であることがより好ましく、80秒以下であることがさらに好ましい。本明細書において、吸水シート構成体の合計浸透速度は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0077】
さらに本発明にかかる吸水シート構成体は、液体浸透後の逆戻りが少ない点に一つの特長を有しており、吸収性物品への使用を考慮すると、吸水シート構成体における液体の逆戻り量が25g以下であることが好ましく、20g以下であることがより好ましく、15g以下であることがさらに好ましい。本明細書において、吸水シート構成体における液体の逆戻り量は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0078】
さらに本発明にかかる吸水シート構成体は、液体の傾斜における漏れが少ない点に一つの特長を有しており、吸収性物品への使用を考慮すると、吸水シート構成体の漏れ指数が100以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましく、30以下であることがよりさらに好ましい。本明細書において、吸水シート構成体の漏れ指数は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0079】
本発明の吸水シート構成体としては、乾燥状態の厚み、合計浸透速度、逆戻り量及び漏れ指数が所定の特性を有するものが好ましい。
【0080】
さらに、本発明にかかる吸水シート構成体は、天然由来の素材の使用量が極めて少ないため、前記した厚み、浸透速度、漏れ指数において高性能でありながら、環境への配慮もなされたものである。天然素材の使用比率は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがよりさらに好ましい。天然素材の使用比率は、吸水シート構成体の各構成成分に微量ながら含まれるパルプ、綿、麻、絹等の合計含有量を、吸水シート構成体の質量にて除することで算出される。
【実施例】
【0081】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。ただし、実施例1、3及び5はいずれも参考例である。
【0082】
吸水性樹脂及び吸水シート構成体の性能は、以下の方法により測定、評価した。
【0083】
<吸水性樹脂の生理食塩水保水能>
吸水性樹脂2.0gを、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に計り取り、500mL容のビーカーに入れた。綿袋に生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液、以下同様)500gを一度に注ぎ込み、吸水性樹脂のママコが発生しないように生理食塩水を分散させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性樹脂を十分に膨潤させた。遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、次式により吸水性樹脂の生理食塩水保水能を求めた。
吸水性樹脂の生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/吸水性樹脂の質量(g)
【0084】
<吸水性樹脂の2.07kPa荷重下及び4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能>
吸水性樹脂の2.07kPa荷重下及び4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、図1に概略構成を示した測定装置Xを用いて測定した。以下に2.07kPa荷重下を例に説明する。
【0085】
図1に示した測定装置Xは、ビュレット部1と導管2、測定台3、測定台3上に置かれた測定部4からなるものであった。ビュレット部1は、ビュレット10の上部にゴム栓14、下部に空気導入管11とコック12が連結されており、さらに、空気導入管11の上部にはコック13を有していた。ビュレット部1から測定台3までは、導管2が取り付けられており、導管2の直径は6mmであった。測定台3の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管2が連結されていた。測定部4は、円筒40と、この円筒40の底部に貼着されたナイロンメッシュ41と、重り42とを有していた。円筒40の内径は、2.0cmであった。ナイロンメッシュ41は、200メッシュ(目開き75μm)に形成されていた。そして、ナイロンメッシュ41上に所定量の吸水性樹脂5を均一に撒布した。重り42は、直径1.9cm、質量59.8gであった。この重り42は、吸水性樹脂5上に置かれ、吸水性樹脂5に対して2.07kPaの荷重を均一に加えることができるようになっていた。
【0086】
このような測定装置Xを用いた荷重下での生理食塩水吸水能の測定は以下の手順によって実施した。測定は温度25℃、湿度45〜75%の室内にて行われた。まずビュレット部1のコック12とコック13を閉め、25℃に調節された生理食塩水をビュレット10上部から入れ、ゴム栓14でビュレット上部の密栓をした後、ビュレット部1のコック12、コック13を開けた。次に、測定台3中心部における導管2の先端と空気導入管11の空気導入口とが同じ高さになるように測定台3の高さの調整を行った。
【0087】
一方、円筒40のナイロンメッシュ41上に0.10gの吸水性樹脂5を均一に撒布して、この吸水性樹脂5上に重り42を置いた。測定部4は、その中心部が測定台3中心部の導管口に一致するようにして置いた。
【0088】
吸水性樹脂5が吸水し始めた時点から継続的に、ビュレット10内の生理食塩水の減少量(吸水性樹脂5が吸水した生理食塩水量)Wc(mL)を読み取った。
【0089】
測定装置Xを用いた測定において、吸水開始から60分間経過後における吸水性樹脂5の荷重下での生理食塩水吸水能を、次式により求めた。
吸水性樹脂の2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能(mL/g)=Wc(mL)÷0.10(g)
【0090】
測定装置Xを用いた測定において、重り42の質量を質量59.8gから119.6gに変更する以外は同様に測定を実施することで、吸水性樹脂の4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能を求めた。
【0091】
<吸水性樹脂の初期吸水速度及び有効吸水量>
吸水性樹脂の初期吸水速度及び有効吸水量は、図2に示す測定装置を用いて測定した。
【0092】
当該測定装置は、ビュレット部1と導管2、測定台3、不織布45、架台65、クランプ75からなるものであった。ビュレット部1は、0.1mL単位で目盛が記載されたビュレット10の上部にゴム栓14、下部に空気導入管11とコック12が連結されており、さらに、ビュレット10の下部の先端にコック13を有していた。ビュレット部1はクランプ75で固定されていた。ビュレット部1と測定台3の間には、導管2が取り付けられており、導管2の内径は6mmであった。測定台3の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管2が連結されていた。測定台3は架台65によって適切な高さに支持されていた。
【0093】
このような測定装置を用いた、初期吸水速度及び有効吸水量の測定は以下の手順によって実施した。測定は温度25℃、湿度45〜75%の室内にて行われた。まずビュレット部1のコック12とコック13を閉め、25℃に調節された生理食塩水をビュレット10上部から入れ、ゴム栓14でビュレット上部の密栓をした後、ビュレット部1のコック12、コック13を開けた。次に、気泡を除去しながら導管2内部に生理食塩水を満たし、測定台3中心部の導管口から出てくる生理食塩水の水面と、測定台3の上面とが同じ高さになるように測定台3の高さの調整を行った。
【0094】
次いで、測定台3中心部の導管口に30mm×30mmに裁断した不織布45(目付量25g/m2の親水性レーヨンスパンレース)を敷き、平衡になるまで不織布に吸水させた。不織布が吸水している状態では、空気導入管11からビュレット10への気泡発生が見られたが、数分内に気泡発生が停止したことを確認して、平衡に到達したと判断した。平衡後、ビュレット10の目盛を読んで、ゼロ点を確認した。
【0095】
別途、吸水性樹脂5を0.10g正確に測りとり、不織布45の中心部に一気に投入した。ビュレット10内の生理食塩水の減少量(すなわち、吸水性樹脂5の粒子が吸水した生理食塩水量)を適宜読み取り、吸水性樹脂5の投入から起算して30秒後の生理食塩水の減量分Wd(mL)を吸水性樹脂0.10gあたりの吸水量として記録した。なお、30秒経過後も減量分の計測を続け、30分後に測定を完了した。測定は1種類の吸水性樹脂に対して5回実施し、30秒経過後の値において最低値と最高値を除いた3点の平均値とした。
【0096】
吸水性樹脂5の投入から30秒後に、ビュレット10内の生理食塩水の減少量(吸水性樹脂5が吸水した生理食塩水量)Wd(mL)を吸水性樹脂1gあたりの吸水量に変換し、さらに30(秒)で割って得られた商を、当該吸水性樹脂の初期吸水速度(mL/s)とした。すなわち、初期吸水速度(mL/s)=Wd÷(0.10×30)である。
【0097】
また、吸水性樹脂5の投入から30分間経過後に、ビュレット10内の生理食塩水の減少量(吸水性樹脂5が吸水した生理食塩水量)We(mL)を吸水性樹脂1gあたりの吸水量に変換し、当該吸水性樹脂の生理食塩水有効吸水量(mL/g)とした。すなわち、有効吸水量(mL/g)=We÷0.10である。
【0098】
<吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度>
本試験は、25℃±1℃に調節された室内で行なった。100mL容のビーカーに、生理食塩水50±0.1gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、ビーカーを恒温水槽に浸漬して、液温を25±0.2℃に調節した。次に、マグネチックスターラー上にビーカーを置いて、回転数600r/minとして、生理食塩水に渦を発生させた後、吸水性樹脂2.0±0.002gを、前記ビーカーに素早く添加し、ストップウォッチを用いて、吸水性樹脂の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、吸水性樹脂の吸水速度とした。
【0099】
<吸水性樹脂の質量平均粒径>
吸水性樹脂100gに、滑剤として、0.5gの非晶質シリカ(デグサジャパン株式会社製、Sipernat 200)を混合し、測定用の吸水性樹脂を調した。
【0100】
前記吸水性樹脂を、JIS標準篩の目開き250μmの篩を用いて通過させ、その50質量%以上が通過する場合には(A)の篩の組み合わせを、その50質量%以上が篩上に残る場合には(B)の篩の組み合わせを用いて質量平均粒子径を測定した。
【0101】
(A)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
(B)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0102】
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
【0103】
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径とした。
【0104】
<不織布の親水度>
本明細書において、不織布の親水度は、紙パルプ試験方法No.68(2000)に記載の「はっ水性試験方法」に記載の装置を用いて測定した。
【0105】
すなわち、45度の傾斜をもつ試験片取り付け装置に、幅×長さが10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した試験片を取り付けた。ビュレットのコック開口部を30秒あたり10gの蒸留水を供給するように調整したビュレットを一旦乾燥させ、傾斜を持つ装置に取り付けた試験片の最上部から垂直方向に5mm上の部分にビュレットの先端が配置するように固定した。ビュレット上部から蒸留水約60gを仕込み、ビュレット先端から不織布試験片に液体が滴下され始めてから、試験片が液体を保持しきれずに下部から液体がもれ出るまでの時間(秒)を測定し、不織布の親水度とした。数値が大きいほど親水度が高いと判断される。
【0106】
通常、不織布の素材自身が親水性を有するか、親水化処理を施した不織布では、親水度の数値は5以上となる一方、親水性の低い素材の不織布では、表面近傍で液体が走り、より早く下部から液体がもれ出る傾向がある。
【0107】
<吸水シート構成体の生理食塩水保水能>
吸水シート構成体を、7cm四方の正方形に切断したものをサンプルとし、質量Wf(g)を測定した。綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中にサンプルを入れ、さらに綿袋を500mL容のビーカーに入れた。綿袋に生理食塩水500gを一度に注ぎ込んだのち、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、サンプルを十分に膨潤させた。遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤サンプルを含んだ綿袋の質量Wg(g)を測定した。サンプルを用いずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wh(g)を測定し、次式により吸水シート構成体の生理食塩水保水能を求めた。
吸水シート構成体の生理食塩水保水能(g/m2)=[Wg−Wh−Wf](g)/0.0049(m2
【0108】
<吸水シート構成体の強度>
吸水シート構成体の強度は、以下の方法によって評価した。
得られた吸水シート構成体を10cm×10cmの大きさに切断した。次いで2枚の10cm×10cmアクリル板(質量約60g)の各片面の全面に両面テープを貼り付けた。図3に示すように、前記吸水シート構成体をアクリル板22に重なるように貼り付けた後、アクリル板21、22の対角線が45度を成すように、かつ両面テープが吸水シート構成体23側を向くようにしてアクリル板21を吸水シート構成体23に貼り付け、動かないよう圧着した。
【0109】
このように調製された吸水シート構成体の強度テストピースを、前記<吸水性樹脂の質量平均粒径>の項で用いた、篩の金属製受け皿の中に入れて蓋をした後、ロータップ振とう機で3分間回転タッピングした。タッピング後の強度テストピースの外観に基づいて、以下の基準によって吸水シート構成体の強度を評価した。
【0110】
○:外観に変化無く、アクリル板をずらそうとしても容易には動かなかった。
△:外観に変化無いが、アクリル板をずらすと、吸水シート構成体は分裂した。
×:吸水シート構成体は分裂し、内容物が散乱していた。
【0111】
<吸水シート構成体の触感>
吸水シート構成体の触感は、以下の方法により評価した。得られた吸水シート構成体を10cm×30cmに切断したものをサンプルとして用いた。サンプルが吸水シート構成体の柔らかさと形態保持性を両立しているか否かを、以下の基準によって、パネラー10名に3段階評価してもらい、その評価値を平均することで、吸水シート構成体の触感を評価した。
【0112】
段階A:折り曲げる際の感触が柔らかい。内部からの散逸物も見られない。(評価値:5)。
段階B:折り曲げる際に抵抗を感じる。又は、感触は柔らかいものの、内部からの散逸物が散見される。(評価値:3)。
段階C:折り曲げにくく、曲げた後の復元力も乏しい。又は、柔らかすぎて、内部からの散逸物がバラバラ落ちたり、不織布が簡単にめくれたりする。(評価値:1)。
【0113】
<吸水シート構成体の製造時における作業性>
後述する実施例、比較例に記載された製造プロセスに従って、同じ吸水シート構成体を不織布の機械方向長さで、積算して20m分となるよう、断続的に製造した。
【0114】
得られた吸水シート構成体及び製造後におけるシート製造機械の状態を、作業者3名に、表1に示す基準によって3段階評価してもらい、各項目の評価値を平均することで、吸水シート構成体の製造時における作業性を評価した。
【0115】
【表1】
【0116】
<吸水シート構成体の剥離強度(N/7cm)>
吸水シート構成体の剥離強度は、以下の方法により測定した。得られた吸水シート構成体を7cm×7cmの正方形に切断し、次いで、吸水シート構成体を形成する不織布の縦方向(機械方向)が引っ張り方向となるように、試験片の片側を、幅2cm分だけ均一に剥離させた。
【0117】
剥離させた2cm幅の部分を、幅8.5cmのチャックを取り付けた引っ張り試験機(島津製作所製、オートグラフAGS−J)の上下のチャックにそれぞれ取り付け、チャック間距離をゼロに設定した。
【0118】
試験片を0.5cm/分の速度で180°の方向に引っ張り、チャック間距離4cmまでの試験値(荷重)をコンピューターで連続的に記録した。引っ張り距離0〜4cmにおける、試験値(荷重)の平均値を、吸水シート構成体の剥離強度(N/7cm)とした。測定は5回行い、最大値と最小値を除いた3つの数値を平均した値を用いた。
【0119】
<吸水シート構成体の乾燥状態の厚みの測定>
吸水シート構成体を10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断したものを、サンプルとして使用した。厚み測定器(株式会社尾崎製作所製、型番:J−B)を用いて、長手方向に左端、中央、右端の3箇所(左から3cmを左端、15cmを中央、27cmを右端)を測定した。幅方向は中央部を測定した。厚みの測定値は各箇所で3回測定して平均した。さらに、左端、中央、右端の値を平均して、吸水シート構成体全体の厚みとした。
【0120】
<吸水シート構成体の合計浸透速度及び逆戻り量の評価>
吸水シート構成体を10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断したものを、サンプルとして使用した。
【0121】
10L容の容器に、塩化ナトリウム60g、塩化カルシウム二水和物1.8g、塩化マグネシウム六水和物3.6g及び適量の蒸留水を入れ、完全に溶解させた。次に、1質量%ポリ(オキシエチレン)イソオクチルフェニルエーテル水溶液15gを添加し、さらに蒸留水を添加して、水溶液全体の質量を6000gに調整した後、少量の青色1号で着色して、試験液を調製した。
【0122】
サンプル(吸水シート構成体)の上部に、サンプルと同じ大きさ(10cm×30cm)、目付量22g/m2のポリエチレン製エアスルー型多孔質液体透過性シートを載せた。また、サンプルの下にこのシートと同じ大きさ、目付量のポリエチレン製液体不透過性シートを置き、簡易的な吸収性物品を作製した。この吸収性物品の中心付近に、内径3cmの円筒型シリンダーを置き、50mLの試験液を一度に投入するとともに、ストップウォッチを用いて、試験液が完全に吸収性物品に浸透するまでの時間を測定し、1回目の浸透速度(秒)とした。次いで、30分後及び60分後にも1回目と同じ位置に円筒型シリンダーを置いて同様の操作を行い、2回目及び3回目の浸透速度(秒)を測定した。1回目〜3回目の秒数の合計を合計浸透速度とした。
【0123】
1回目の試験液投入開始から120分後にシリンダーを取り除き、吸収性物品上の液体投入位置付近に、あらかじめ質量(Wi(g)、約70g)を測定しておいた10cm四方の濾紙(約80枚)を置き、その上に底面が10cm×10cmの5kgの重りを載せた。5分間の荷重後、濾紙の質量(Wj(g))を測定し、増加した質量を逆戻り量(g)とした。
逆戻り量(g)=Wj−Wi
【0124】
<傾斜における漏れ試験>
傾斜における漏れ試験は、図4に示す装置を用いて行った。
概略としては、市販の実験設備用の架台31を用いて、アクリル板32を傾斜させて固定した後、板上に載置した吸収性物品33に鉛直上方から滴下ロート34で前記の試験液を投入し、漏れ量を天秤35で計量する装置である。以下に詳細な仕様を示す。
【0125】
アクリル板32は傾斜面方向の長さが45cmで、架台31によって水平に対して成す角45±2°になるよう固定した。アクリル板32は幅100cm、厚さ1cmで、複数の吸収性物品33を並行して測定することも可能であった。アクリル板32の表面は滑らかなので、板に液体が滞留したり吸収されたりすることはなかった。
【0126】
架台31を用いて、滴下ロート34を傾斜アクリル板32の鉛直上方に固定した。滴下ロート34は、容量100mL、先端部の内径が4mmであり、8mL/秒で液体が投入されるようにコックの絞りを調整した。
【0127】
アクリル板32の下部には、金属製のトレイ36を載置した天秤35が設置されており、漏れとして流れ落ちる試験液をすべて受けとめ、その質量を0.1gの精度で記録した。
【0128】
このような装置を用いた傾斜における漏れ試験は、以下の手順で行った。幅×長さが10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した吸水シート構成体の質量を測定した後、同サイズのエアスルー型ポリエチレン製液体透過性不織布(目付量22g/m2)を上方から付し、さらに、同サイズ、同目付量のポリエチレン製液体不透過性シートを下方から付して作製した簡易的な吸収性物品33を、アクリル板32上に貼り付けた(漏れを作為的に止めないために、吸収性物品33の下端はアクリル板32上には貼り付けなかった)。
【0129】
吸収性物品33の上端から2cm下方向の箇所に目印をつけ、滴下ロート34の投入口を、目印から鉛直上方距離8±2mmになるように固定した。
【0130】
天秤35を起動させ、表示をゼロに補正した後、滴下ロート34に前記試験液80mLを一度に投入した。試験液が吸収性物品33に吸収されずに傾斜したアクリル板32を流れ、金属製トレイ36に入った液量を測定し、1回目の漏れ量(g)とした。この1回目の漏れ量(g)の数値をLW1とした。
【0131】
1回目の投入開始から10分間隔にて、同様に2回目、3回目の試験液を投入して、2回目、3回目の漏れ量(g)を測定し、その数値をそれぞれLW2、LW3とした。
【0132】
次いで、以下の式に従って漏れ指数を算出した。指数が小さいほど、吸水シート構成体の傾斜における漏れ量、特に初期の漏れ量が少なく、優れた吸水シート構成体と判断される。
漏れ指数:L=LW1×10+LW2×5+LW3
【0133】
(製造例1:吸水性樹脂A)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、界面活性剤としてのHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
【0134】
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0135】
撹拌機の回転数を600r/minとして、前記単量体水溶液全量を前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。
【0136】
一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液174.9gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.16g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製し、温度を約25℃に保持した。
【0137】
前記重合後スラリーの入った撹拌機の撹拌回転数を1000r/minに変更した後、25℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液全量を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持した。再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して、昇温し、重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
【0138】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、269.8gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持した。その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂Aを231.2g得た。得られた吸水性樹脂Aの性能は、質量平均粒径:350μm、生理食塩水吸水速度:33秒、生理食塩水保水能:43g/g、2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能:33mL/g、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能:18mL/g、初期吸水速度:0.17mL/s、有効吸水量:64mL/gであった。
【0139】
(製造例2:吸水性樹脂B)
前記製造例1において、第1段目重合後スラリーの冷却温度を25℃から28℃に変更した以外は吸水性樹脂Aの製造例1と同様の操作を行い、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂Bを231.3g得た。得られた吸水性樹脂Bの性能は、質量平均粒径:300μm、生理食塩水吸水速度:24秒、生理食塩水保水能:42g/g、2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能:32mL/g、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能:18mL/g、初期吸水速度:0.19mL/s、有効吸水量:62mL/gであった。
【0140】
(製造例3:吸水性樹脂C)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン500mLをとり、界面活性剤としてのHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
【0141】
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0142】
撹拌機の回転数を450r/minとして、前記単量体水溶液全量を前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。
【0143】
一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液174.9gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.16g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製し、温度を約25℃に保持した。
【0144】
前記重合後スラリーの入った撹拌機の撹拌回転数を1000r/minに変更した後、25℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液全量を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持した。再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して、昇温し、重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
【0145】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、265.5gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液6.62gを添加し、80℃で2時間保持した。その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂Cを232.1g得た。得られた吸水性樹脂Cの性能は、質量平均粒径:370μm、生理食塩水吸水速度:41秒、生理食塩水保水能:35g/g、2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能:34mL/g、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能:25mL/g、初期吸水速度:0.18mL/s、有効吸水量:57mL/gであった。
【0146】
(製造例4:吸水性樹脂Dの製造)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン550mLをとり、界面活性剤としてのHLB8.6のソルビタンモノラウレート(日油株式会社製、ノニオンLP−20R)0.84gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、40℃まで冷却した。
【0147】
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液70gを入れ、これを氷冷しながら20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液112.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.084gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。
【0148】
撹拌機の回転数を800r/minとして、前記単量体水溶液全量を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を2時間行った。
【0149】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、85.5gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液3.50gを添加し、80℃で2時間保持した。その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、顆粒状の吸水性樹脂Dを72.3g得た。得られた吸水性樹脂Dの性能は、質量平均粒径:240μm、生理食塩水吸水速度:3秒、生理食塩水保水能:38g/g、2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能:31mL/g、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能:15mL/g、初期吸水速度:0.34mL/s、有効吸水量:63mL/gであった。
【0150】
(製造例5:吸水性樹脂E)
アクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の39質量%水溶液2750gに、架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート1.8gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積5Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液全量を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム1.2g及びL−アスコルビン酸0.06gを水6gに各々溶解したものを添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。
【0151】
得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を300μmの金網上に広げ、150℃で熱風乾燥した。次いで、ボールミルを用いて乾燥物を粉砕し、さらに850μmの金網で分級することにより、質量平均粒径が390μmの不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得た。
【0152】
撹拌機を付した1Lセパラブルフラスコに、得られた吸水性樹脂前駆体100gを仕込み、別途調したエチレングリコール0.5g、グリセロールポリグリシジルエーテル0.1g、水3g、エタノール1gからなる架橋剤水溶液を、吸水性樹脂前駆体を撹拌しながらスプレーで噴霧混合した。次いで、上記の混合物を撹拌しながら油浴にて昇温し、195℃で40分間加熱処理することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子Eを得た。得られた吸水性樹脂Eの性能は、質量平均粒径:390μm、生理食塩水吸水速度:56秒、生理食塩水保水能:37g/g、2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能:31mL/g、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能:22mL/g、初期吸水速度:0.38mL/s、有効吸水量:55mL/gであった。
【0153】
(製造例6:吸水性樹脂F)
前記製造例5において、含水ゲル状重合体の乾燥物を粉砕し、分級する際の金網を1.1mm〜300μmに変更した以外は吸水性樹脂Eの製造例5と同様の操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂Fを得た。得られた吸水性樹脂Fの性能は、質量平均粒径:530μm、生理食塩水吸水速度:87秒、生理食塩水保水能:36g/g、2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能:32mL/g、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能:24mL/g、初期吸水速度:0.36mL/s、有効吸水量:53mL/gであった。
【0154】
(製造例7:吸水性樹脂G)
前記製造例5において、含水ゲル状重合体の乾燥物を粉砕し、分級する際の金網を106μmに変更し、ふるいの通過分を採取するようにした以外は吸水性樹脂Eの製造例5と同様の操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂Gを得た。得られた吸水性樹脂Gの性能は、質量平均粒径:50μm、生理食塩水吸水速度:7秒、生理食塩水保水能:39g/g、2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能:24mL/g、4.14kPa荷重下での生理食塩水吸水能:18mL/g、初期吸水速度:0.40mL/s、有効吸水量:58mL/gであった。
【0155】
(実施例1)
ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、接着剤としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA;融点95℃)50質量部と、吸水性樹脂として製造例1の吸水性樹脂Aの240質量部とを均一混合させたものを仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、幅30cmのポリプロピレン製スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布に親水化剤により親水化処理したもの(目付量13g/m2、厚さ:150μm、ポリプロピレン含有率:100%、親水度=16;「不織布A」とする)を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記混合物を目付量290g/m2で前記不織布上に均一に積層した。
【0156】
得られた積層体を、別の不織布Aで挟みつけた後、加熱温度を130℃に設定した熱ラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることで一体化し、吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体の断面を模式的に示せば、図5のような構造であった。図5において、吸水シート構成体51は吸収層53が不織布56及び57により当該吸収層53の上方及び下方から狭持された構造であった。吸収層53は、吸水性樹脂52及び接着剤50を含有してなる構造であった。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0157】
(実施例2)
加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機(株式会社ハリーズ製:マーシャル150)上に、幅30cmのポリプロピレン製SMMS不織布に親水化剤により親水化処理したもの(目付量:15g/m2、厚さ:170μm、ポリプロピレン含有率:100%、親水度=20;「不織布B」とする)を敷いた後、接着剤としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS;軟化点85℃)を目付量30g/m2で当該不織布上に塗布した。
【0158】
次に、ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、吸水性樹脂として製造例2の吸水性樹脂Bを仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤塗布不織布を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、吸水性樹脂Bを目付量300g/m2で不織布上に均一に積層した。
【0159】
得られた積層体を、上部から目付量30g/m2で接着剤としての前記SBSを前記と同様の方法で塗布した別の不織布Bで挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化し、吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0160】
(実施例3)
実施例2において、使用する不織布を表4に記載の不織布Cに変更し、及び使用する吸水性樹脂を製造例3の吸水性樹脂Cに変更し、吸水性樹脂及び接着剤の含有量等を表2に記載された通りに変更する以外は、実施例2と同様の方法によって吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0161】
(実施例4)
ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、接着剤としての低密度ポリエチレン(融点107℃)70質量部と、吸水性樹脂として製造例4の吸水性樹脂Dの220質量部とを均一混合させたものを仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、幅30cmのレーヨン/ポリエチレンテレフタレート製スパンレース不織布(目付量40g/m2、厚さ:400μm、レーヨン含有率:70%、親水度=55;「不織布D」とする)を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記混合物を目付量290g/m2で前記不織布上に均一に積層した。
【0162】
得られた積層体を、別の不織布Dで挟みつけた後、加熱温度140℃設定した熱ラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることで一体化し、吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0163】
(実施例5)
加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機(株式会社ハリーズ製:マーシャル150)上に、幅30cmのポリプロピレン製SMS不織布に親水化剤により親水化処理したもの(目付量:11g/m2、厚さ:120μm、ポリプロピレン含有率:100%、親水度=12;「不織布E」とする)を敷いた後、接着剤としてSBS共重合体(軟化点85℃)を目付量25g/m2で当該不織布上に塗布した。
【0164】
次に、ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、吸水性樹脂としての吸水性樹脂Cを仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤塗布不織布を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、吸水性樹脂Cを目付量300g/m2で不織布上に均一に積層した。
【0165】
得られた積層体を、上部から目付量25g/m2で接着剤としての前記SBSを前記と同様の方法で塗布した通気性分画層としての別の不織布Eで挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化し、吸水シート構成体中間物を得た。
【0166】
前記と同様に、加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機上に、吸水シート構成体中間物を敷き、接着剤として前記SBSを目付量10g/m2で吸水シート構成体中間物上に塗布した。
【0167】
次に、ローラー型散布機の投入口に、吸水性樹脂としての吸水性樹脂Dを仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、接着剤が塗布された面を上にして吸水シート構成体中間物を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、吸水性樹脂としての吸水性樹脂Dを目付量50g/m2で、前記吸水シート構成体中間物の不織布上に均一に積層した。
【0168】
得られた積層体を、上部から目付量10g/m2で前記SBSを前記と同様の方法で塗布した別の不織布Eで挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化し、吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、吸水性樹脂Cを用いた吸収層が上方(1次吸収層)となるようにして、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。なお、本例における吸水シート構成体の剥離強度の測定は、前記吸水シート構成体の剥離強度測定方法に準拠して、次のように実施した。10枚の試験片を用意し、そのうち5枚を用いて、上方の不織布のみを2cm剥離したサンプルを調し、1次吸収層の測定を行った。次いで、残り5枚を用いて、下方の不織布のみを2cm剥離したサンプルを調し、2次吸収層の測定を行った。
【0169】
(比較例1)
実施例1において、吸水性樹脂を前記製造例5で得られた吸水性樹脂Eに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0170】
(比較例2)
実施例2において、吸水性樹脂を前記製造例6で得られた吸水性樹脂Fに変更し、吸水性樹脂及び接着剤の含有量等を表2に記載された通りに変更する以外は、実施例2と同様の方法によって吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0171】
(比較例3)
実施例4において、吸水性樹脂を前記製造例7で得られた吸水性樹脂Gに変更し、吸水性樹脂及び接着剤の含有量等を表2に記載された通りに変更する以外は、実施例4と同様の方法によって吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0172】
(比較例4、5)
実施例2において、接着剤の含有量等を表2に記載された通りに変更する以外は、実施例2と同様の方法によって吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、前記各種測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0173】
【表2】
接着剤の含有割合は、対吸水性樹脂の含有量(質量基準)である。
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
以上の結果より、実施例の吸水シート構成体は、比較例のものと対比して、液体の浸透速度が速く、逆戻り量が少なく、液体の傾斜における漏れも少なく、液体吸収性能が良好であることが分かった。さらに、実施例1、2及び3と比較例1、2及び3の結果から、吸水シート構成体に使用される吸水性樹脂の粒径速度指数が0.12秒/μmを超える場合、液体の浸透速度や、逆戻り量が悪く、吸水シート構成体の基本的な液体吸収性能において満足できるものではないことが分かった。この結果から、吸水シート構成物に用いられる各素材の種類や物性、又はシートの製造条件等といった、液体吸収性能に関わる多くの要素の中でも、吸水シート構成体に使用される吸水性樹脂の粒径速度指数が吸水シート構成体の基本的な性能(速い液体浸透速度、十分な保水能、少ない液体逆戻り量、少ない液漏れ量、形態保持性)を決める有力な要素の一つであることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明にかかる吸水シート構成体は、衛生材料分野、農業分野、建材分野等に使用することができ、なかでも、紙おむつに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0178】
X 測定装置
1 ビュレット部
2 導管
3 測定台
4 測定部
5 吸水性樹脂
10 ビュレット
11 空気導入管
12 コック
13 コック
14 ゴム栓
21 アクリル板
22 アクリル板
23 吸水シート構成体
31 架台
32 アクリル板
33 吸収性物品
34 滴下ロート
35 天秤
36 トレイ
40 円筒
41 ナイロンメッシュ
42 重り
45 不織布
50 接着剤
51 吸水シート構成体
52 吸水性樹脂
53 吸収層
56 不織布
57 不織布
65 架台
75 クランプ
図1
図2
図3
図4
図5