(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化樹脂組成物の半硬化物を前記成形型の上に充填し、該硬化樹脂組成物の半硬化物の前記成形型と接していない側の表面上に前記透明基材を積層することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合レンズの製造方法。
前記硬化樹脂組成物が、側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体を5〜50質量%含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合レンズの製造方法。
前記側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体の重量平均分子量が2,000〜200,000であることを特徴とする請求項12に記載の複合レンズの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の複合レンズおよびその製造方法やそれに用いる材料などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
[複合レンズの製造方法]
本発明の複合レンズの製造方法は、(メタ)アクリレートモノマー、非共役ビニリデン基含有化合物および光ラジカル開始剤を含む硬化樹脂組成物の半硬化物と、該半硬化物に接するように配置した透明基材とを成形型に充填された状態で加熱および加圧し、該半硬化物を熱重合させて硬化物を得る熱重合工程を含むことを特徴とする(但し、非共役ビニリデン基含有化合物は、(メタ)アクリレートモノマーを含まない)。
従来の硬化樹脂では熱またはUVで瞬時に硬化することから、透明基材と組み合わせて硬化させるときに転写性が悪かった。また複合レンズ作製時に泡が混入し、不良品の割合が高くなりやすかった。また、硬化時に残留応力が残ることから耐環境性を求められる使用方法が出来なかった。これに対し、本発明では、半硬化物を調製してから、硬化することにより転写性を確保することができる。また、半硬化物の組成により、作製時の泡混入を無くして不良品割合を低くすることができ、耐環境性能を大幅に改善することができる。さらに、いかなる理論に拘泥するものでもないが、本発明では、非共役ビニリデン基含有化合物モノマーの重合中の連鎖異動によって、3次元構造をコントロールすることで、半硬化物に変形性と耐熱性を付与することができ、上記課題を解決することができる。
ここで、本明細書中、「半硬化物」とは、硬化樹脂組成物を重合したものであり、完全に固体となっておらず、ある程度流動性を有する状態の物を意味する。例えば、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10
5〜10
8mPa・sの状態の硬化樹脂組成物の光および/または加熱重合体は、半硬化物である。特に本発明を限定するものではないが、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度の上限値として1.0×10
9mPa・sの物までを半硬化物と考えられる。一方、「硬化物」とは、硬化樹脂組成物を重合したものであり、完全に固体となっている状態の物を意味する。
以下、本発明の複合レンズの製造方法に用いられる各材料と、各工程について順に説明する。
【0016】
(1)半硬化物を形成する工程
本発明の複合レンズの製造方法では、硬化樹脂組成物の半硬化物と、該半硬化物に接するように配置した透明基材とを成形型に充填された状態に設置する。
ここで、前記硬化樹脂組成物の半硬化物は、いかなる方法で入手してもよいが、非共役ビニリデン基含有化合物および光ラジカル開始剤を含む硬化樹脂組成物に対して光照射および加熱のうち少なくとも一方を行って、前記硬化樹脂組成物の半硬化物を形成する工程(以下、半硬化物を形成する工程と言う)を含むことが好ましい。
【0017】
前記半硬化物を形成する工程は、硬化樹脂組成物の半硬化物を成形型に充填する前に行っても、充填した後に行ってもよい。すなわち、硬化樹脂組成物を、後述の熱重合工程に用いる成形型に直接設置してもよく、硬化樹脂組成物を後述の熱重合工程に用いる成形型とは別の型に入れて半硬化物を製造した後で後述の熱重合工程に用いる成形型に移動させてもよい。
【0018】
ここで、成形型は、一般に2つの成形型を組み合わせて内容物に加圧しながら加熱することができるようになっており、成形型に低粘度の組成物を注入すると、成形型クリアランスへの漏れの原因となる。本発明の複合レンズの製造方法で用いる前記硬化樹脂組成物は一般に成形型に直接注入するには粘度が低いことがある。そのため、本発明の一つの好ましい態様では、側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体をさらに添加して前記硬化樹脂組成物の粘度を調整して、一つの成形型内で半硬化と後述する熱重合を行って、硬化物を得ることも製造性の観点からは好ましい。
硬化樹脂組成物の半硬化物を成形型に充填した後に前記半硬化物を形成する工程を行う場合、前記硬化樹脂組成物は前記透明基材と接しない状態で半硬化させても、接した状態で半硬化させてもよいが、前記硬化樹脂組成物と前記透明基材とを互いに接した状態で半硬化することが、泡混入数を低減する観点から好ましい。
【0019】
一方、硬化樹脂組成物の半硬化物を成形型に充填する前に前記半硬化物を形成する工程を行う場合、本発明の複合レンズの製造方法は、前記硬化樹脂組成物の半硬化物を前記成形型の上に充填し、該硬化樹脂組成物の半硬化物の前記成形型と接していない側の表面上に前記透明基材を積層することとなる。このとき、前記硬化樹脂組成物の半硬化物を形成する工程は、成形型とは別の型または任意の支持体上で行うことができる。硬化樹脂組成物を半硬化させるときは後述の熱重合工程で用いるとは別の型に入れて半硬化物を製造した後で、後述の熱重合工程で用いる成形型に移動させることが、材料コストを低下させる観点からは好ましい。
ここで、成形型とは別の型を用いる場合、いわゆるプリフォーム用の型を用いることが好ましい。前記プリフォーム用の型は、金属製であってもよいし、ガラス製、樹脂製であってもよい。量産過程で繰り返し使用することを考慮すれば、前記プリフォーム用の型は、金属製またはガラス製であることが好ましい。また、本発明の半硬化物をレンズとして用いる場合は、プリフォーム用の型の少なくとも一方の面には、成形型と同じ/または近い形状を有していることが好ましく、両面に成形型形状に同じ/または近い形状を有していることがより好ましい。
【0020】
これらの中でも、本発明では、前記半硬化物を形成する工程を、硬化樹脂組成物の半硬化物を成形型に充填した後に行うことが、泡混入数を低減し、製造工程を簡略化できる観点から好ましい。
このとき、前記硬化樹脂組成物と前記透明基材とを互いに接するようにして前記成形型中に充填する工程が、前記硬化樹脂組成物を前記成形型の上に充填し、該硬化脂組成物の前記成形型と接していない側の表面上に前記透明基材を積層する工程であることがより好ましい。
【0021】
《硬化樹脂組成物》
前記半硬化物を形成する工程では、前記硬化樹脂組成物に対して光照射および加熱のうち少なくとも一方を行う。
前記硬化樹脂組成物の泡混入数を減少させる観点からは、前記硬化樹脂組成物の液粘度も特定の範囲となるように制御することが好ましい。前記硬化樹脂組成物の液粘度(半硬化前の液粘度)は、1,000〜20,000mPa・sであることが好ましく、3,000〜15,000mPa・sであることがより好ましく、4,000〜12,000mPa・sであることが特に好ましい。このように前記硬化樹脂組成物の液粘度を制御するには、前記硬化樹脂組成物の組成を変更することが好ましい。
以下、硬化樹脂組成物の組成について説明する。
【0022】
<非共役ビニリデン基含有化合物>
前記硬化樹脂組成物は、非共役ビニリデン基含有化合物を含む(但し、該非共役ビニリデン基含有化合物は、(メタ)アクリレートモノマーを含まない)。
このような非共役ビニリデン基含有化合物を含む硬化樹脂組成物を用いることで、本発明では、光または加熱重合後の半硬化物の粘度を特定の範囲に制御し、かつ、その半硬化物を後述する本発明の硬化物の製造方法において熱重合したときに得られる複合レンズの耐熱性および良品率を改善できる。
【0023】
前記非共役ビニリデン基含有化合物は、下記一般式(0)で表されることが好ましい。
【化3】
(一般式(0)中、R
1〜R
6は、それぞれ独立に置換基を表す。R
1〜R
6のうち、少なくとも1つが環を形成しているか、少なくとも2つが互いに結合して環を形成している。)
前記R
1〜R
6が表す置換基に特に制限はなく、例えば、以下の置換基を用いることができる。水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、アルケニル基、アシル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、芳香環基、複素芳香環基、脂環基。
その中でも前記R
1〜R
6は、それぞれ独立に水素原子、酸素原子および炭素原子のみからなる置換基であることが好ましく、水素原子および炭素原子のみからなる置換基であることがより好ましい。具体的には、前記R
1〜R
6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基であることがより好ましい。
なお、本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0024】
前記R
1〜R
6が形成する環は、芳香環であっても、複素芳香環であっても、非芳香性の環であってもよい。その中でも、前記R
1〜R
6が形成する環は、非芳香性の環であることが好ましく、非芳香性の炭化水素環であることがより好ましい。また、前記R
1〜R
6が形成する環は、その環にさらに置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基がより好ましい。また、前記R
1〜R
6が形成する環が、その環にさらに置換基を有する場合は、その置換基どうしが結合して縮合環を形成してもよい。
【0025】
また、前記非共役ビニリデン基含有化合物において前記R
1〜R
6が形成する環は、1つであっても、複数であってもよい。また、前記R
1〜R
6が形成する環が複数である場合は、互いに独立した複数の環であっても、互いに独立した複数の環どうしが縮合した縮合環であっても、上述のように1つの環がさらに置換基を有する場合はその置換基どうしが結合した縮合環であってもよい。その中でも、前記R
1〜R
6が形成する環は、複数の環が縮合した縮合環であることがより好ましく、1つの環がさらに置換基を有する場合はその置換基どうしが結合した縮合環であることが特に好ましい。なお、本明細書中、後述の化合物(B−2)のように2つの環がスピロ縮合をしている態様も、縮合環に含まれる。
【0026】
また、前記非共役ビニリデン基含有化合物としては、2〜5の環が縮合した縮合環を含むことが好ましく、2または3の環が縮合した縮合環を含むことがより好ましい。
また、前記縮合環を構成するそれぞれの環の環員数は、3〜10であることが好ましく、3〜9であることがより好ましく、4〜9であることが特に好ましい。
【0027】
また、前記R
1〜R
6のうち、(A)少なくとも1つが環を形成しているか、(B)少なくとも2つが互いに結合して環を形成している。前記非共役ビニリデン基含有化合物は、前記R
1〜R
6のうち、(B)少なくとも2つが互いに結合して環を形成している場合が好ましい。以下、(A)の場合と(B)の場合に分けて前記非共役ビニリデン基含有化合物のさらに好ましい態様を説明する。
【0028】
まず、前記R
1〜R
6のうち、(A)少なくとも1つが環を形成している場合について説明する。
(A)の場合、前記R
1〜R
6のうちR
1〜R
3のいずれか2つが互いに結合して環を形成しているか、R
4〜R
6のいずれか2つが互いに結合して環を形成していることが好ましい。この場合、R
1〜R
3のいずれか2つまたはR
4〜R
6のいずれか2つのどちらか一方のみが互いに結合して環を形成していることがより好ましく、このときはR
1〜R
3のいずれか2つまたはR
4〜R
6のいずれか2つのうち互いに結合して環を形成していない側は全て水素原子であることが好ましい(例えば、R
1〜R
3のいずれか2つが互いに結合して環を形成している場合、R
4〜R
6はすべて水素原子であることが好ましい)。
【0029】
次に、前記R
1〜R
6のうち、(B)少なくとも2つが互いに結合し、環を形成している場合について説明する。
(B)の場合、前記非共役ビニリデン基含有化合物が下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【化4】
(一般式(1)中、R
11、R
12、R
15およびR
16は、それぞれ独立に置換基を表し、Aは環状構造を形成するために必要な原子団を表す。)
【0030】
一般式(1)中、R
11、R
12、R
15およびR
16が表す置換基の好ましい範囲は、前記R
1〜R
6の好ましい範囲と同様である。また、R
11、R
12、R
15およびR
16は、さらに互いに結合して環を形成していてもよく、その環はさらに置換基を有していてもよい。
また、R
11とR
12の結合している炭素原子、および、R
15とR
16の結合している炭素原子のうち、一方の炭素原子は不斉炭素原子であることが好ましい。
また、R
11とR
12の組またはR
15とR
16の組のうち、いずれか一方の組のみにおいて2つの置換基の少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、いずれか一方の組のみにおいて2つの置換基の両方が水素原子であることがより好ましい。
水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基を表し、かつ、該炭素数1〜5の炭化水素基が環を形成していないことが好ましい。R
11およびR
12のうち、一方のみが水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基を表し、かつ、該炭素数1〜5の炭化水素基が環を形成していないことが好ましい。
一般式(1)中、前記Aは環状構造を形成するために必要な原子団を表し、その環状構造としては、特に制限はなく、公知の環状構造でよい。前記環状構造としては、例えば、脂環(非芳香性の炭化水素環)、芳香環、複素環、−CO−を含むラクトン環などを挙げることができる。
その中でも、前記Aは、一般式(1)の前記Aに連結する炭素原子および非共役ビニリデン基を構成する炭素原子を含めて炭素数4〜10の脂環を形成するために必要な原子団であることが好ましく、一般式(1)の前記Aに連結する炭素原子および非共役ビニリデン基を構成する炭素原子を含めて炭素数5〜9の脂環を形成するために必要な原子団であることが特に好ましい。この脂環はさらなる置換基を有していてもよく、その好ましい置換基は前記R
1〜R
6が形成する環の有していてもよいさらなる置換基の範囲と同様である。また、前記Aは、不飽和の脂環であっても、飽和の脂環であってもよいが、前記非共役ビニリデン基含有化合物全体として、少なくとも1つの不飽和結合を有することが好ましい。また、前記Aは、R
11、R
12、R
15およびR
16が表す置換基とさらに縮合環を形成していてもよい。
本発明では、前記一般式(1)中、R
11、R
12、R
15およびR
16は、それぞれ独立に水素原子および炭素原子のみからなる置換基を表し、Aは脂環(非芳香性の炭化水素)構造であることが特に好ましい。
【0031】
本発明では、前記非共役ビニリデン基含有化合物がビニリデン基(非共役ビニリデン基)以外にさらに別のアルケニル基を有することが好ましい。前記非共役ビニリデン基含有化合物の有する非共役ビニリデン基以外のビニリデン基の位置としては特に制限はない。その中でも前記非共役ビニリデン基含有化合物は、非共役ビニリデン基以外のビニリデン基が、前記R
1〜R
6が形成する環に位置することが好ましい。すなわち、前記R
1〜R
6が形成する環は、少なくとも1つの不飽和炭化水素環を含むことが特に好ましく、少なくとも1つの二重結合を1つのみ有する不飽和炭化水素環を含むことがより特に好ましい。
【0032】
以下において、本発明に好ましく用いられる前記非共役ビニリデン基含有化合物の具体例を列挙するが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0033】
非共役ビニリデン基含有化合物
【化5】
【0035】
(分子量)
前記非共役ビニリデン基含有化合物の分子量は、100〜400であることが好ましく、120〜350であることがより好ましく、130〜300であることが特に好ましい。
【0036】
(入手方法)
これらの前記非共役ビニリデン基含有化合物の入手方法については特に制限は無く、商業的に入手してもよく、合成により製造してもよい。
商業的に入手する場合は、例えば、β−カリオフィレン(化学式:B−1)(東京化成工業社製)などを好ましく用いることができる。
合成により製造する場合は、前記非共役ビニリデン基含有化合物の製造方法としては特に制限はなく、公知の方法で合成することができる。例えば、前記非共役ビニリデン基含有化合物の中でも本発明に好ましく用いることができる化合物(B−1)を合成する場合は、J.Am.Chem.Soc. 85,362(1964)、Tetrahedron Lette.,24,1885(1983)に記載の方法などで、合成することができる。
【0037】
本発明では、前記硬化樹脂組成物が、前記硬化樹脂組成物の総量に対して前記非共役ビニリデン基含有化合物を0.5〜30質量%含有することが好ましく、1〜25質量%含有することがより好ましく、2〜20質量%含有することが特に好ましい。
【0038】
<(メタ)アクリレートモノマー>
本発明の複合レンズの製造方法は、(メタ)アクリレートモノマーを含有する硬化樹脂組成物を用いる。なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。
【0039】
本前記(メタ)アクリレートモノマーが、脂環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。すなわち、前記(メタ)アクリレートモノマーは下記一般式(3)または(4)で表されることが好ましい。
【化7】
(一般式(3)中、L
1は単結合または2価の連結基を表し、B
1は1価の脂環基を表す。)
前記L
1は、単結合または2価のアルキレン基であることが好ましく、単結合またはメチレン基であることがより好ましく、単結合であることが特に好ましい。
前記B
1は炭素数5〜15の1価の脂環基であることが好ましく、炭素数7〜15の1価の脂環基であることがより好ましく、炭素数8〜12の1価の脂環基であることが特に好ましい。前記B
1は2以上の環が縮合した縮合環であることが好ましく、2または3の環が縮合した縮合環であることがより好ましい。また、前記B
1は脂環構造中に二重結合を有していないことが好ましい。
【0040】
【化8】
(一般式(4)中、L
2およびL
3はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、B
2は2価の脂環基を表す。)
前記L
2およびL
3はそれぞれ独立に単結合または2価のアルキレン基であることが好ましく、単結合またはメチレン基であることがより好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
前記B
2は炭素数5〜15の2価の脂環基であることが好ましく、炭素数7〜15の2価の脂環基であることがより好ましく、炭素数8〜12の2価の脂環基であることが特に好ましい。前記B
1は2以上の環が縮合した縮合環であることが好ましく、2または3の環が縮合した縮合環であることがより好ましい。また、前記B
2は脂環構造中に二重結合を有していないことが好ましい。
【0041】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーに分けることができる。ここで、多官能(メタ)アクリレートモノマーとは官能基が複数である(メタ)アクリレートモノマーのことを言い、単官能(メタ)アクリレートモノマーとは官能基が1つである(メタ)アクリレートモノマーのことを言う。なお、本明細書中において、"(メタ)アクリレートモノマーの官能基"とは、重合反応に関与するエチレン性不飽和結合のことを言う。
【0042】
(多官能(メタ)アクリレートモノマー)
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば以下の物を用いることができる。トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート。
その中でも、本発明では脂環構造を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましく、脂環構造を有する2価の(メタ)アクリレートモノマーを用いることがより好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが特に好ましく、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートがより特に好ましい。
【0043】
(単官能(メタ)アクリレートモノマー)
前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば以下の物を用いることができる。1−アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチル(メタ)アクリレート類、イソボロニル(メタ)アクリレートなどのノルボルニル(メタ)アクリレート類、トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカ−8−イルアクリレートなどのトリシクロデカン(メタ)アクリレート類、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート。
その中でも、脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましく、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートおよびトリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカ−8−イル(メタ)アクリレートがより好ましく、1−アダマンチルメタクリレートが特に好ましい。
【0044】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、多官能(メタ)アクリレートモノマー、あるいは、多官能(メタ)アクリレートモノマーと単官能(メタ)アクリレートモノマーの混合物であってもよい。
【0045】
以下において、本発明に好ましく用いられる前記(メタ)アクリレートモノマーの具体例を列挙するが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0047】
単官能(メタ)アクリルモノマー
【化10】
【0048】
(分子量)
本発明に好ましく用いられる前記(メタ)アクリレートモノマーの分子量は100〜500であることが好ましく、150〜400であることがより好ましく、200〜400であることが特に好ましい。
【0049】
(入手方法)
これらの前記(メタ)アクリレートモノマーの入手方法については特に制限は無く、商業的に入手してもよく、合成により製造してもよい。
商業的に入手する場合は、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(化学式:Aa−1)(新中村化学工業社製)などを好ましく用いることができる。
合成により製造する場合は、前記(メタ)アクリレートモノマーの製造方法としては特に制限はなく、公知の方法で合成することができる。
【0050】
本発明の複合レンズの製造方法では、前記硬化樹脂組成物が、前記硬化樹脂組成物の総量に対して前記(メタ)アクリレートモノマーを50〜95質量%含有することが好ましく、55〜90質量%含有することがより好ましく、60〜90質量%含有することが特に好ましい。
【0051】
<光ラジカル重合開始剤>
本発明の複合レンズの製造方法では、前記硬化樹脂組成物が、光ラジカル重合開始剤を含む。前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0052】
前記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルベンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−フェニル2−ヒドロキシ−2メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレート。
【0053】
その中でも、本発明では、前記光ラジカル重合開始剤としてBASF社製、イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を好ましく用いることができる。
【0054】
前記光ラジカル重合開始剤の前記硬化樹脂組成物中における添加量は、特に制限はないが、前記硬化樹脂組成物の総量(好ましくは、前記(メタ)アクリレートモノマー、非共役ビニリデン基含有化合物および後述する非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の合計)に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜1.0質量%であることがより好ましく、0.05〜0.5質量%であることが特に好ましい。
【0055】
<熱ラジカル重合開始剤>
本発明の複合レンズの製造方法は、前記硬化樹脂組成物が、熱ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。このような熱ラジカル重合開始剤をあらかじめ硬化樹脂組成物に添加しておくことで、半硬化物はその後熱重合によって、より耐熱性が高い硬化物を成形性よく、容易かつ生産性よく製造することができる。
【0056】
前記熱ラジカル重合開始剤としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン。
【0057】
その中でも、本発明では、前記熱ラジカル重合開始剤として、分子内にヒドロペルオキシド基を有するヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、更には、分子内にヒドロペルオキシド基を有するヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤、および分子内にヒドロペルオキシド基を有さない非ヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤を少なくとも1種ずつ用いることがより好ましい。
【0058】
その中でも、本発明では、前記非ヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤として日本油脂株式会社製、パーブチルO(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート)および前記ヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤として日本油脂株式会社製、パークミル H(クメンヒドロペルオキシド)を好ましく用いることができる。
【0059】
前記熱ラジカル重合開始剤として、分子内にヒドロペルオキシド基を有するヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい理由として、ヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤が非共役ビニリデン基含有化合物モノマーの重合中の連鎖移動を促進する効果があり、3次元構造のコントロール性がより向上し、半硬化物の変形性を付与することができるためである。また、ヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤は、熱ラジカル重合開始する温度が一般に高いため、熱重合開始温度の低い非ヒドロペルオキシド系熱ラジカル重合開始剤を併用することがより好ましい。
【0060】
前記熱ラジカル重合開始剤の前記硬化樹脂組成物における添加量は、特に制限はないが、前記(メタ)アクリレートモノマー、非共役ビニリデン基含有化合物および後述する非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の合計に対して、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜4.0質量%であることがより好ましく、0.3〜3.0質量%であることが特に好ましい。
【0061】
<側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体>
本発明の半硬化物の製造方法は、さらに側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体を含むことが、硬化樹脂組成物を光照射および/または加熱前から成形型に直接設置した場合に、成形型クリアランスへの漏れを抑制できるように光照射および/または加熱前の硬化樹脂組成物の粘度を高く調整する観点からは、好ましい。
なお、前記側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体は単独重合体であっても、共重合体であってもよく、共重合体である場合は少なくとも一方の共重合成分が側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有していればよい。
【0062】
以下において、本発明に好ましく用いられる前記側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体の具体例を列挙するが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0063】
非共役ビニル基を側鎖に有する重合体
【化11】
【0064】
メタクリル基を側鎖に有する重合体
【化12】
【0065】
アリル基を側鎖に有する重合体
【化13】
【0066】
アクリル基を側鎖に有する重合体
【化14】
【0067】
(分子量)
前記側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体の分子量は、1,000〜10,000,000であることが好ましく、2,000〜170,000であることがより好ましく、4,000〜150,000であることが特に好ましい。
【0068】
(Tg)
前記側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体のガラス転移温度(以下、Tgとも言う)は、50〜400℃であることが好ましく、70〜350℃であることがより好ましく、100〜300℃であることが特に好ましい。
【0069】
本発明の複合レンズの製造方法では、前記硬化樹脂組成物の総量(好ましくは、前記(メタ)アクリレートモノマー、前記非共役ビニリデン基含有化合物、前記光ラジカル重合開始剤、前記熱ラジカル重合開始剤および前記側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体の総量)に対し、前記側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体を5〜50質量%含有することが好ましく、10〜50質量%含有することがより好ましく、20〜35質量%含有することが特に好ましい。前記硬化樹脂組成物の総量に対して前記非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の含有量が50質量%以下であることが光照射および/または加熱前の前記硬化樹脂組成物の初期粘度を抑制してディスペンス等を容易にする観点から好ましい。
【0070】
<その他の添加剤>
本発明の趣旨に反しない限りにおいて、前記硬化樹脂組成物が、本発明の条件を満たさない樹脂、モノマー、分散剤、可塑剤、熱安定剤、離型剤、シランカップリング剤などの樹脂−透明基材(特にガラス)界面の密着力向上剤等の添加剤を含んでいてもよい。
前記シランカップリング剤を用いることで、ガラス−透明基材界面の密着性を上げることができ、各環境試験での耐久性が更に向上する。前記シランカップリング剤は、前記硬化樹脂組成物中に混合してもよいが、あらかじめ前記シランカップリング剤を用いて透明基材(特にガラス)に表面処理をしてもよい。前記シランカップリング剤中の有機官能性基としては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基が挙げられ、具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられ、例えば3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0071】
<半硬化工程>
(光照射の条件)
本発明の複合レンズの製造方法における光照射の好ましい条件について、以下説明する。
前記光照射は、光照射後の半硬化物の25℃、周波数10Hzにおける複素粘度は、10
5〜10
8mPa・sとなるように行うことが好ましく、10
5.2〜10
7.5mPa・sとなるように行うことがより好ましく、10
5.5〜10
7.5mPa・sとなるように行うことが特に好ましい。
【0072】
前記光照射に用いられる光は、紫外線、可視光線であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。例えばメタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、殺菌ランプ、キセノンランプ、LED光源ランプなどが好適に使用される。
前記光照射時の雰囲気は、空気中または不活性ガス置換あることが好ましく、酸素濃度1%以下になるまで窒素置換した雰囲気であることがより好ましい。
【0073】
(加熱半硬化の条件)
本発明の複合レンズの製造方法における加熱半硬化の好ましい条件について、以下説明する。
前記加熱半硬化は、加熱後の半硬化物の25℃、周波数10Hzにおける複素粘度は、10
5〜10
8mPa・sとなるように行うことが好ましく、10
5.2〜10
7.5mPa・sとなるように行うことがより好ましく、10
5.5〜10
7.5mPa・sとなるように行うことが特に好ましい。
【0074】
<半硬化物>
前記硬化樹脂組成物の半硬化物は、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10
5〜10
8mPa・sであることが好ましく、10
5.2〜10
7.5mPa・sであることがより好ましく、10
5.5〜10
7.5mPa・sであることが特に好ましい。
【0075】
前記硬化樹脂組成物の半硬化物は、光照射工程後において、光ラジカル重合開始剤が全て消費されていて全く含まれていなくてもよく、光ラジカル重合開始剤が残留していてもよい。
【0076】
(Tg)
前記硬化樹脂組成物の半硬化物のガラス転移温度(以下、Tgとも言う)は、−150〜0℃であることが好ましく、−50〜0℃であることがより好ましく、−20〜0℃であることが特に好ましい。
【0077】
<熱重合工程>
本発明の複合レンズの製造方法は、前記硬化樹脂組成物の半硬化物と、該半硬化物に接するように配置した透明基材を成形型に入れ加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る熱重合工程を含む。
本発明の熱重合工程で用いられる成形型のことを、熱成形用成形型とも言う。前記熱成形用成形型は、一般に2つの成形型を組み合わせて内容物に加圧しながら加熱することができる構成となっていることが好ましい。また、本発明の硬化物の製造方法では、前記硬化物を得る熱重合工程において、前記成形型として金型を用いることがより好ましい。このような熱成形用成形型としては、例えば、特開2009−126011号公報に記載のものを用いることができる。
【0078】
(成形型への導入)
本発明の複合レンズの製造方法では、まず前記半硬化物を成形型に入れる。まず、半硬化物を成形型に入れるという工程について説明する。
光照射および/または加熱後の半硬化物は、上述の半硬化物の形成工程で説明したとおり、熱成形用成形型に直接設置されて光照射および/または加熱されているか、または、熱成形用成形型とは別の型に入れて光照射および/または加熱されている。前記光照射後の半硬化物が熱成形用成形型に直接設置されて光照射および/または加熱された場合は、特に熱成形用成形型に入れる動作自体は必要なく、説明上成形型に入れると記載してあるに過ぎない。
一方、光照射および/または加熱後の半硬化物が熱成形用成形型とは別の型に入れて光照射および/または加熱された場合は、熱成形用成形型に移動させる工程を意味する。光照射および/または加熱後の半硬化物を熱成形用成形型に移動させる方法としては、例えば、シリンジ、バキュームパッドと真空発生器を有するエアピンセットなどを用いることができる。本発明の半硬化物は、複素粘度が特定の範囲であるため、このようにエアピンセットなどを用いて容易に熱成形用成形型に移動させることができる。
【0079】
(加圧変形・加熱)
前記熱重合工程では、成形型に入れた半硬化物を、加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る。
ここで、加圧変形と加熱は同時に行ってもよく、加圧変形した後で加熱を行ってもよく、加熱した後で加圧変形を行ってもよいが、その中でも加圧変形と加熱を同時に行うことが好ましい。また、加圧変形と加熱を同時に行った上で、加圧が安定してからさらに高温に加熱することも好ましい。
【0080】
前記加圧変形における圧力は、1kg/cm
2〜100kg/cm
2であることが好ましく、2kg/cm
2〜50kg/cm
2であることがより好ましく、2kg/cm
2〜30kg/cm
2であることが特に好ましい。
前記加熱温度は、加圧変形と同時に行う加熱は80〜300℃であることが好ましく、120〜300℃であることがより好ましく、150〜280℃であることが特に好ましい。
一方、加圧が安定してからさらに高温に加熱場合も、80〜300℃であることが好ましく、120〜300℃であることがより好ましく、150〜280℃であることが特に好ましい。
前記熱重合の時間は、30〜1000秒であることが好ましく、30〜500秒であることがより好ましく、60〜300秒であることが特に好ましい。
前記熱重合時の雰囲気は、空気中または不活性ガス置換あることが好ましく、酸素濃度1%以下になるまで窒素置換した雰囲気であることがより好ましい。
【0081】
<硬化物>
以下、前記硬化物の好ましい特性について説明する。
(屈折率)
前記硬化物は、複合レンズに用いる観点から、屈折率が高いことが好ましい。前記硬化物は、波長589nmにおける屈折率nDが1.45以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、1.51以上とあることが特に好ましい。
【0082】
(アッベ数)
前記硬化物は、複合レンズに用いるときに色収差を低減する観点から、アッベ数が大きいことが好ましい。前記硬化物は、波長589nmにおけるアッベ数が45以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、55以上とあることが特に好ましい。
本明細書中、アッベ数νDは、波長589nm、486nm、656nmにおけるそれぞれの屈折率nD、nF、nCを測定することで、下記式(A)により算出される。
【数1】
【0083】
(光線透過率)
前記硬化物は、複合レンズに用いる観点から、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上が特に好ましい。なお、本発明における厚さ1mm換算の光線透過率は、厚さ1.0mmの基板を作製し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置(UV−3100、(株)島津製作所製)で測定した値である。
【0084】
(Tg)
前記硬化物のTgは、120〜400℃であることが好ましく、150〜300℃であることがより好ましく、180〜300℃であることが特に好ましい。
【0085】
(サイズ)
前記硬化物は、最大厚みが0.1〜10mmであることが好ましい。最大厚みは、より好ましくは0.1〜5mmであり、特に好ましくは0.15〜4mmである。前記硬化物は、最大直径が1〜1000mmであることが好ましい。最大直径は、より好ましくは2〜80mmであり、特に好ましくは2.5〜70mmである。このようなサイズの硬化物は、高屈折率の複合レンズ用途として特に有用である。このような厚い成形体は、溶液キャスト法で製造しようとしても溶剤が抜けにくいため一般に容易ではなく、成形が容易ではない。しかしながら、本発明の複合レンズの製造方法を用いれば、成形が容易でバリも生じにくいため良品率が高く、非球面などの複雑な形状も容易に実現することができる硬化物を得ることができる。このように、高い耐熱性を有する硬化物を、容易に製造することができる。
【0086】
[複合レンズ]
本発明の複合レンズは、(メタ)アクリレートモノマー、非共役ビニリデン基含有化合物、光ラジカル開始剤および側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうちの少なくともひとつの重合性基を有する重合体を5〜50質量%を含む硬化樹脂組成物の硬化物が、透明基材の少なくとも片側に積層されたことを特徴とする(但し、非共役ビニリデン基含有化合物は、(メタ)アクリレートモノマーを含まない)。
また、本発明の複合レンズは、本発明の複合レンズの製造方法で製造されたことを特徴とする。
【0087】
<透明基材>
前記透明基材は、レンズ基材であることが好ましい。
なお、本明細書中において「レンズ基材」とは、レンズ機能を発揮することができる単一部材を意味する。レンズ基材の表面や周囲には、レンズの使用環境や用途に応じて膜や部材を設けることができる。例えば、レンズ基材の表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、レンズ基材の周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。ただし、これらの膜や枠などは、レンズ基材に付加される部材であり、本明細書中でいうレンズ基材そのものとは区別される。
【0088】
一方、前記透明基材はガラス材であることが好ましい。
前記ガラス材としては、特に制限はないが、ガラスレンズ、平板形状ガラス、ガラスプリズム、ガラスミラーなどを挙げることができる。
なお、前記透明基材は上述のとおり前記シランカップリング剤を用いて表面処理をしたものでもよく、特にガラス材は前記シランカップリング剤を用いて表面処理することが好ましい。
【0089】
<複合レンズの特性>
本発明の複合レンズは、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0090】
なお、本発明における厚さ1mm換算の光線透過率は、厚さ1.0mmの基板を作製し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置(UV−3100、(株)島津製作所製)で測定した値である。
【0091】
<複合レンズの用途>
本発明の複合レンズは、好ましくは、高アッベ数であって、高屈折性、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れているものである。また、硬化樹脂組成物を構成するモノマーの種類を適宜調節することにより、複合レンズの屈折率を任意に調節することが可能である。
【0092】
本発明の複合レンズは、例えば、デジタルカメラ用レンズ、車載カメラ用レンズ、プロジェクタ用(OHP、液晶プロジェクタ用など)レンズ、内視鏡用レンズ、放送用(テレビカメラ等の撮影装置用)レンズに使用される。
なお、眼鏡レンズ、携帯カメラ用レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、マイクロレンズアレイ、およびウェハレベルレンズアレイ(特許第3926380号公報、国際公開2008/102648号、特許第4226061号公報、特許第4226067号公報)等に使用してもよい。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0094】
[実施例1]
<非共役ビニリデン基含有化合物の入手>
非共役ビニリデン基含有化合物B−1、東京化成工業株式会社製 製品名 β−カリオフィレンを用いた。
【0095】
<硬化樹脂組成物の調製>
前記多官能(メタ)アクリルモノマー(Aa−1)(新中村化学工業社製 製品名:A−DCP)を60質量部、前記非共役ビニリデン基含有化合物B−1(東京化成工業社製 製品名:β−カリオフィレン)を10質量部、下記光ラジカル重合開始剤C(BASF社製、イルガキュア184)を0.1質量部、下記熱ラジカル重合開始剤D−1(日本油脂株式会社製、パーブチルO)を1質量部、下記熱ラジカル重合開始剤D−2(日本油脂株式会社製、パークミルH)を0.5質量部添加して、硬化樹脂組成物を調製した。
【0096】
用いた重合開始剤の構造を以下に示す。
【0097】
光ラジカル重合開始剤C
【化15】
【0098】
熱ラジカル重合開始剤
【化16】
【0099】
(重合体E−3の合成)
還流冷却器、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカ−8−イルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名FA−513AS)20.0g、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)30.0g、酢酸エチル450.0gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−65(商品名)7.5gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下65℃で4時間加熱した。その後、メタノール2Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。70℃で5時間減圧乾燥を行い、溶媒を留去することにより重合体E−3を得た(収率60%、重量平均分子量100,000)。
以上の工程により、側鎖に重合性基としてアリル基を有する重合体E−3を得た(重量平均分子量100,000)。
【0100】
<硬化樹脂組成物特性>
(硬化樹脂組成物の25℃、10Hzにおける粘度)
上記にて調製した硬化樹脂組成物について、HAAKE社製レオストレスRS600を用いて、25℃、10Hzにおける動的な複素粘度の値を測定し、硬化樹脂組成物の液粘度とした。
【0101】
<半硬化物特性>
(UV照射後の25℃、10Hzにおける粘度)
直径20mm、厚み1mmの型に注入した硬化樹脂組成物に、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm
2の紫外線を下記表1に記載の時間照射し、半硬化物(光硬化物)を得た。ついで、HAAKE社製レオストレスRS600を用いて、25℃、10Hzにおける動的な複素粘度の値を測定し、半硬化物の粘度とした。
【0102】
<複合レンズの製造>
金型成形型(硬化樹脂組成物と接する面がレンズ形成用の曲面である)に注入された、上記にて調製した硬化樹脂組成物200mgに、硬化樹脂組成物の金型成形型と接していない側のすべての表面上を覆うように透明なガラスレンズガラス硝材BK−7、屈折率1.509を被せて、硬化樹脂組成物のすべての表面が金型成形型またはガラスレンズに接するように(泡が混入しないように)充填した状態とした。この状態とした後、前記ガラスレンズの上方から、Execure3000(HOYA(株)社製)を用いて15mW/cm
2の紫外線を下記表1に記載の時間照射し、上記の半硬化物特性粘度の測定のときと同じ粘度となるように調整した半硬化物を作製した。ついで、金型成形型およびガラスレンズによって挟まれた状態を維持したまま、半硬化物に2kgf/cm
2の圧力を印加しながら200℃まで昇温した後、室温まで冷却した。その後、硬化性樹脂組成物の硬化物(高さ200μm)とガラスレンズが積層された複合レンズを、金型成形型から取り出した。
以下の評価に用いるために上記の工程を10回繰り返し、得られた10個の複合レンズを実施例1の複合レンズとした。
【0103】
<複合レンズの評価>
(転写性)
作製した各複合レンズの外観を、Taylor−Hobson社製Form Talysurf S5Cおよびキーエンス社製デジタルマイクロスクープ(商品名:VHX−1000)を用いて評価した。
レンズのフランジ部表面に、微細な凹凸(シワ)、またはレンズにクラックが発生しているものを不良品、発生していないものを良品とした。10個の複合レンズを評価し、そのうちの良品の割合を良品率とし、以下の基準で評価した。
◎:良品率が80%以上であった。
○:良品率が50%以上であった。
△:良品率が30%以上であった。
×:良品率が30%未満であった。
【0104】
(耐熱性)
作成した各複合レンズを85℃に加熱し、100時間経時させた複合レンズの形状観察をTaylor−Hobson社製Form Talysurf S5C(タリサーフ)およびキーエンス社製デジタルマイクロスクープ(商品名:VHX−1000)を用いて評価した。クラックが入っている、または形状変化が認められるものを不良品として、発生していないものを良品とした。10個の複合レンズを評価し、そのうちの良品の割合を良品率とし、以下の基準で評価した。
◎:良品率が80%以上であった。
○:良品率が50%以上であった。
△:良品率が30%以上であった。
×:良品率が30%未満であった。
【0105】
(泡混入数)
円柱状の金型に入れた硬化樹脂組成物に、ガラスレンズをかぶせた際のガラスレンズと硬化樹脂組成物の積層体中に発生する気泡の数をキーエンス社製デジタルマイクロスクープ(商品名:VHX−1000)を用いて評価した。10個の複合レンズの作製時における泡混入数をそれぞれ測定し、以下の基準で評価した。
◎:複合レンズ1つあたりの泡の混入数0個であった。
○:複合レンズ1つあたりの泡の混入数が1〜3個であった。
△:複合レンズ1つあたりの泡の混入数が4個〜9個であった。
×:複合レンズ1つあたりの泡の混入数10個以上であった。
【0106】
(耐クラック性)
作成した各複合レンズを85℃、相対湿度85%に加熱し、100時間経時させたレンズの形状観察をTaylor−Hobson社製Form Talysurf S5C(タリサーフ)およびキーエンス社製デジタルマイクロスクープ(商品名:VHX−1000)を用いて評価した。クラックが入っている、形状変化が認められるものを不良品として、発生していないものを良品とした。10個の複合レンズを評価し、そのうちの良品の割合を良品率とし、以下の基準で評価した。
◎:良品率が80%以上であった。
○:良品率が50%以上であった。
△:良品率が30%以上であった。
×:良品率が30%未満であった。
【0107】
[実施例2〜13、比較例1〜4]
用いた材料を下記表1に記載したとおりに変更して硬化樹脂組成物を調製し、各実施例および比較例の複合レンズを製造し、各評価を行った。得られた結果をそれぞれ下記表1に記載した。
また、各実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。
・エポキシモノマー(ビスフェノールAジグリシジルエーテル:東京化成工業社製)
【化17】
【0108】
<非共役ビニル基を側鎖に有する重合体の入手>
実施例8〜11で用いた非共役ビニル基を側鎖に有する重合体E−1、E−2、E−4、およびE−5を以下の方法で合成して入手した。
【0109】
(E−1の合成)
還流冷却器、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカ−8−イルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名FA−513AS)20.0g、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)30.0g、酢酸エチル450.0gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−65(商品名)7.5gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下65℃で30分間加熱した。その後、メタノール2Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。70℃で5時間減圧乾燥を行い、溶媒を留去することにより重合体E−1を得た(収率60%、重量平均分子量1,500)。
以上の工程により、側鎖に重合性基としてアリル基を有する重合体E−1を得た(重量平均分子量1,500)。
【0110】
(E−2の合成)
還流冷却器、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカ−8−イルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名FA−513AS)20.0g、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)30.0g、酢酸エチル450.0gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−65(商品名)7.5gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下65℃で1時間加熱した。その後、メタノール2Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。70℃で5時間減圧乾燥を行い、溶媒を留去することにより重合体E−2を得た(収率62%、重量平均分子量2,100)。
以上の工程により、側鎖に重合性基としてアリル基を有する重合体E−2を得た(重量平均分子量2,100)。
【0111】
(E−4の合成)
還流冷却器、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカ−8−イルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名FA−513AS)20.0g、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)30.0g、酢酸エチル450.0gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−65(商品名)7.5gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下65℃で6時間加熱した。その後、メタノール2Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。70℃で5時間減圧乾燥を行い、溶媒を留去することにより重合体E−4を得た(収率70%、重量平均分子量180,000)。
以上の工程により、側鎖に重合性基としてアリル基を有する重合体E−4を得た(重量平均分子量180,000)。
【0112】
(E−5の合成)
還流冷却器、ガス導入コックを付した1L三口フラスコに、トリシクロ[5,2,1,0
2,6]デカ−8−イルアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名FA−513AS)20.0g、アリルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)30.0g、酢酸エチル450.0gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−65(商品名)7.5gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下65℃で8時間加熱した。その後、メタノール2Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。70℃で5時間減圧乾燥を行い、溶媒を留去することにより重合体E−5を得た(収率55%、重量平均分子量220,000)。
以上の工程により、側鎖に重合性基としてアリル基を有する重合体E−5を得た(重量平均分子量220,000)。
【0113】
【表1】
【0114】
表1より、本発明の製造方法で得られた複合レンズは、転写性が良好であり、泡混入数が少なく、耐熱性および耐クラック性に優れることがわかった。
一方、比較例1より、(メタ)アクリレートモノマーの代わりにエポキシモノマーを用いて、非共役ビニリデン基含有化合物を硬化性樹脂組成物に添加しない場合は、得られる複合レンズの転写性、泡混入数、耐熱性が悪いことがわかった。
比較例2より、(メタ)アクリレートモノマーを用いず、側鎖にメタクリル基、アリル基、アクリル基、ビニル基のうち少なくとも1つの重合性基を有する重合体を樹脂組成物の主バインダーとして用いた場合は、UV照射および加熱によって半硬化または硬化をさせることができず、複合レンズを製造できなかった。
比較例3より、非共役ビニリデン基含有化合物を硬化性樹脂組成物に添加しない場合は、転写性、耐熱性が悪いことがわかった。
比較例4より、光重合開始剤を硬化性樹脂組成物に添加しない場合は、得られる複合レンズの転写性、泡混入数が悪いことがわかった。
【0115】
(光線透過率)
各実施例の複合レンズについて、本明細書中に記載の方法で光線透過率を測定した。その結果、いずれの複合レンズも光線透過率が95%以上であった。
また、各実施例の複合レンズは以下の特性を満たし、複合レンズとしての良好な光学特性を満たすことがわかった。
屈折率1.52、アッベ数52、Tg(ガラス転移温度)200℃。