【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、実施例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0062】
〔実験方法〕
(1)水中NO
2−およびNH
4+の光触媒反応
パイレックス(登録商標)または石英試験管中、水(5cm
3)にTiO
2(50.0mg)を懸濁させ、NaNO
2(500μmol 和光純薬)と(NH
4)
2SO
4(NH
4+として500μmol,関東化学)を加えた。系内をAr雰囲気(バブリング:30min)にし、400W高圧水銀灯の紫外光(λ>200nm)を照射した。このときのNO
2−の初期濃度は0.1molL
−1であり、窒素濃度に換算するとNH
4+と合わせて2800mg−NL
−1であった。
【0063】
(2)水中NO
3−およびNH
4+の光化学反応
パイレックス(登録商標)または石英試験管中、水(5cm
3)にNaNO
3(500μmol 関東化学)と(NH
4)
2SO
4(NH
4+として500μmol 関東化学)を加えた。系内をAr雰囲気(バブリング:30min)にし、400W高圧水銀灯の紫外光(λ>200nm)を照射した。
【0064】
<実施例1>
〔水中NO
2−およびNH
4+の同時除去〕
光触媒による酸化還元反応は常温常圧で進行する反応である。TiO
2(P25)光触媒に紫外光(λ>300nm)を照射することにより、NO
2−とNH
4+から選択的にN
2が生成する(
図1)。この反応をより効率的に進行させるため、反応条件を検討した。また、超高濃度域における反応を検討した。
【0065】
(1)酸化チタン光触媒の種類の影響
各種酸化チタンを用いて亜硝酸−アンモニア反応を行った結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、Anatase/Rutile混合型のP25が最も活性が高かった。一方、ST−01(Anatase)の活性は低く、MT−150A(Rutile)は全く活性を示さなかった。よって、以降の反応は最も活性の高かったP25を用いて行った。
【0068】
(2)各種光触媒の検討
各種の光触媒を用いて亜硝酸−アンモニア反応を行った結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示すように、酸化チタン以外の光触媒はほとんど活性を示さなかった。
【0071】
(3)紫外光波長の影響
(3−1)光触媒反応における紫外光波長の影響
NaNO
2と(NH
4)
2SO
4の水溶液にTiO
2(P25)を懸濁し、λ>300nmの紫外光を照射した結果を
図2(a)に、λ>200nmの紫外光を照射した結果を
図2(b)に示す。
図2(a)および(b)に示す結果から、λ>200nmの紫外光を用いることで、反応速度が大幅に増加することが明らかになった。
【0072】
(3−2)光化学反応における紫外光波長の影響
NaNO
2と(NH
4)
2SO
4の水溶液に無触媒でλ>300nmの紫外光を照射した結果を
図3(a)に、λ>200nmの紫外光を照射した結果を
図3(b)に示す。λ>200nmの紫外光を用いることにより、無触媒で光化学反応が高速に進行することが明らかになった。
【0073】
図4にNaNO
2および(NH
4)
2SO
4のUV−Visスペクトルを示す。
図4に示すように、NO
2−は300または350nmの弱い吸収(n→p
*,対称禁制遷移)と220nm付近の強い吸収(p→p
*,許容遷移)をもつ。よって、220nm付近の遷移確率の高い吸収を利用することにより活性が増大したと考えられた。
【0074】
(4)pHの影響
NaNO
2と(NH
4)
2SO
4の水溶液にTiO
2(P25)を懸濁し、NaOH水溶液またはHCl水溶液で各種pHに調整して反応を行った結果を
図5に示す。
【0075】
図5に示すように、酸性条件ではNO
2−がNO
3−およびN
2Oへ不均化するために反応が進行しなかった。一方、塩基性条件では解離平衡により反応性の高いNH
3が増加するために反応速度が増加するが、強塩基性条件ではNH
3の溶解度が低下するために反応速度が低下した。また、強酸性および強塩基性条件では、TiO
2界面のζポテンシャルの絶対値が大きいためにイオンの吸着速度が低下することも活性低下に寄与している。
【0076】
以上の結果から、亜硝酸―アンモニア反応の最適pHは、弱塩基性条件である8〜9であることが分かった。
【0077】
(5)超高濃度NO
2−およびNH
4+の同時除去
基質濃度を5倍(2500μmol,0.5M)に増加させ、TiO
2(P25,50mg)を懸濁させ、Aq.NaOHを加えて最適pHであるpH8に調整し、紫外光(λ>200nm)を照射した結果を
図6に示す。
【0078】
図6に示すように、亜硝酸―アンモニア反応が超高濃度域においても進行し、8時間で99%以上のNO
2−およびNH
4+を除去することができた。
【0079】
次に、高濃度条件で光触媒を用いた場合と用いない場合を比較した結果を
図7に示す。
図7に示すように、無触媒の場合、濃度が増加してもN
2生成量はほとんど増加しなかった。これは、高濃度条件では光量が不足すると考えられる。
【0080】
一方、TiO
2(P25)を用いた場合は、基質濃度の増加に対してN
2生成量はほぼ直線的に増大した。これは200〜300nmの波長を含む紫外光を照射することで、光化学反応と光触媒反応が効率良く進行し反応速度が増加したと考えられ、高濃度条件にも適用できることが明らかとなった。
【0081】
以上より、超高濃度NO
2−およびNH
4+の同時除去においては、TiO
2(P25)を用いて光化学反応と光触媒反応を併用することにより効率的に反応が進行することが明らかになった。
【0082】
(6)触媒量の影響
NaNO
2と(NH
4)
2SO
4の水溶液に懸濁させるTiO
2の量を変化させて亜硝酸―アンモニア反応を行った結果を
図8に示す。
【0083】
図8に示すように、基質0.1Mのときの最適量は10mg、0.5Mのときの最適量は50mgであった。よって、500μmolの基質を5mLのH
2Oに溶解させる場合、触媒量は従来の50mgから10mgに削減できることが明らかになった。
【0084】
(8)共存金属イオンの影響
貴金属産業等の業界において発生する窒素含有廃液には、Ca
2+などのアルカリ金属イオン、またはFe
2+、Fe
3+若しくはCu
2+などの遷移金属イオンが含まれている。そこで、亜硝酸とアンモニアの溶液に各種金属イオンを加えて亜硝酸―アンモニア反応を行った。その結果を
図9に示す。
【0085】
図9に示すように、FeおよびCuが強い妨害作用を示した一方、Caはほとんど妨害しなかった。また、Feを5ppmおよび50ppm加えた場合、溶解せずFeO(OH)の沈殿が生成した。
【0086】
(9)亜硝酸−アンモニア比の影響
亜硝酸−アンモニア反応においてNO
2−とNH
4+は1:1の等量で反応するが、工業排水の組成は必ずしもそのような理想的な状態にはなっていない。そこで、NO
2−とNH
4+の比を1:3および3:1にして、TiO
2(P25,25mg)を懸濁させ、Aq.NaOHを加えてpH7に調整し、紫外光(λ>200nm)を照射した結果を
図10に示す。
【0087】
図10に示すように、いずれの場合も亜硝酸―アンモニア反応が高速かつ高選択的に進行したことから、当反応は広範な組成比の排水に適用できることが明らかになった。
【0088】
<実施例2>
〔水中NO
3−およびNH
4+の同時除去〕
水中NO
3−をλ>200nmの紫外光を用いて光化学的に分解すると、NO
2−およびO
2が生成する(式3)。
NO
3−→NO
2−+1/2O
2(式3)
【0089】
そこで、NO
3−からNO
2−への光分解反応と、NO
2−―NH
4+反応を組み合わせることにより、水中NO
3−およびNH
4+を同時除去することを目的として検討を行った。
【0090】
【化2】
【0091】
(1)熱反応
NaNO
3および(NH
4)
2SO
4の水溶液にNaOH水溶液を加えてpH9に調製し、暗所下358Kで反応させた結果を
図11に示す。
【0092】
図11に示すように、加熱による揮発のためNH
4+濃度が低下したが、反応はほとんど進行しなかった。このことから、常温常圧で光化学反応を行った場合、熱反応の影響はほとんど無視できることが明らかになった。
【0093】
(2)光化学反応
NaNO
3および(NH
4)
2SO
4の水溶液にNaOH水溶液を加えてpH8.5に調製し、λ>200nmの紫外光を照射して反応を行った結果を
図12に示す。この反応において、Total−NB(全窒素バランス)、NO
3−−NB(NO
3−バランス)、NH
4+−NB(NH
4+バランス)は下記式4〜6により定義される:
【0094】
【化3】
【0095】
前記式4〜6において、n
0は反応開始前の物質量であり、nは反応後の物質量である。
【0096】
図12に示すように、7時間の光照射により、約55%のNO
3−およびNH
4+を分解することができた。この結果から、NO
3−およびNH
4+を光化学的に同時除去できることが分かった。
【0097】
しかし、時間経過とともにpHが減少し、それに伴って反応速度が低下した。また、Total−NBは98%程度に保たれている一方、NO
3−−NBが増加してNH
4+−NBが減少する傾向を示したことから、NH
4+の光酸化反応が生じていると考えられる。
【0098】
次に、基質濃度を5倍(2500μmol,0.5M)に増加させ、Aq.NaOHを加えてpH8.5に調整し、紫外光(λ>200nm)を照射した結果を
図13に示す。
【0099】
図13に示すように、0.1Mの系と比較すると、pHがより急速に減少し、反応速度の低下も速く生じた。NB(NO
3−)およびNB(NH
4+)からは明確な傾向は見られなかったが、一度減少したTotal−NBが回復していることから、未同定の窒素化合物(NO、N
2OまたはNO
2など)が生成した可能性が示唆される。
【0100】
(3)光化学反応におけるpHの影響
NaNO
3および(NH
4)
2SO
4の水溶液にNaOH水溶液を加えて各種pHに調製し、λ>200nmの紫外光を照射して反応を行った結果を
図14に示す。
【0101】
図14に示すように、酸性条件下では反応はほとんど進行せず、弱塩基性条件において最高の活性を示した。また、pH上昇とともに窒素バランスも低下する傾向を示したが、これはNH
3の溶解度が低下するためであると考えられる。
【0102】
(4)TiO
2による光触媒反応
NaNO
3および(NH
4)
2SO
4の水溶液にP25を懸濁し、NaOH水溶液を加えてpH8.2に調製し、λ>200nmの紫外光を照射して反応を行った結果を
図15に示す。
【0103】
図15に示すように、光化学反応(無触媒)と比較すると、反応速度は非常に遅かった。これは、中間生成物であるNO
2−が光触媒によりNO
3−へ酸化されるためであると考えられる(スキーム2)。
【0104】
【化4】
【0105】
また、P25に代えて各種の光触媒を用い、同様にpH8.2に調製して反応を行った結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
表3に示すように、いずれの光触媒も光化学反応よりも低い活性を示した。
【0108】
NaNO
3および(NH
4)
2SO
4の水溶液に金属担持TiO
2(1質量% Metal−loaded P25)を懸濁し、NaOH水溶液を加えてpH8.5に調整し、紫外光を照射して反応を行った結果を
図16に示す。
【0109】
図16に示すように、Ag/P25は無触媒系と同程度のNO
2−生成活性を示したがN
2生成活性は低かった。その他の金属担持TiO
2はほとんど活性を示さなかった。