(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982336
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】代表色決定装置、代表色決定方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
H04N 1/46 20060101AFI20160818BHJP
H04N 1/60 20060101ALI20160818BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
H04N1/46 Z
H04N1/40 D
G06T1/00 510
【請求項の数】22
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-159026(P2013-159026)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-32881(P2015-32881A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸典
【審査官】
豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−097463(JP,A)
【文献】
特開2004−303187(JP,A)
【文献】
山川 義介,類似画像検索技術を用いた商品推薦システム,画像ラボ 第19巻 第8号 IMAGE LAB,日本,日本工業出版株式会社,2008年 8月10日,第19巻,pp.11-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46−62
G06T 1/00
H04N 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者から商品までの距離を表す観察距離の情報を入力する観察距離情報入力部と、
前記商品の画像、ならびに、前記商品の画像から抽出された前記商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報を記憶する商品情報記憶部と、
前記商品の画像に含まれる前記商品の領域を複数の部分色領域に分割し、各々の前記部分色領域に含まれる色の情報を取得する部分色取得部と、
人間の視覚特性の情報として、空間周波数とコントラストとの関係の情報を記憶する視覚特性情報記憶部と、
前記観察距離の情報、前記商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、前記視覚特性の情報に基づいて、前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断し、前記判断の結果に応じて、各々の前記部分色領域に含まれる色の情報から各々の前記部分色領域の代表色を算出する代表色算出部とを備えることを特徴とする代表色決定装置。
【請求項2】
前記代表色算出部は、前記観察距離の情報、および、前記商品の色柄の繰り返し頻度の情報から、各々の前記部分色領域の空間周波数を求め、前記求めた空間周波数、および、前記商品のコントラストの情報から、前記視覚特性の情報に基づいて、前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断するものである請求項1に記載の代表色決定装置。
【請求項3】
前記代表色算出部は、前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別不能な領域に含まれる場合、各々の前記部分色領域に含まれる色を混合した混合色を算出し、前記算出した混合色を、各々の前記部分色領域の代表色に決定するものである請求項1または2に記載の代表色決定装置。
【請求項4】
前記代表色算出部は、各々の前記部分色領域に含まれる2以上の色の面積の比率に応じて、前記2以上の色を加重平均することにより前記混合色を算出するものである請求項3に記載の代表色決定装置。
【請求項5】
前記代表色算出部は、
各々の前記部分色領域をフィルタリングするフィルタと、
前記観察距離の情報、前記商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、前記視覚特性の情報に基づいて、前記フィルタの遮断周波数を算出し、前記算出した遮断周波数を前記フィルタに設定する遮断周波数算出部と、
前記遮断周波数が設定されたフィルタを用いて、各々の前記部分色領域のフィルタリングを行うことにより前記混合色を出力するフィルタリング部とを備える請求項3に記載の代表色決定装置。
【請求項6】
前記遮断周波数算出部は、前記観察距離の情報に対応する位置と、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界の位置との差に応じて、前記フィルタの遮断周波数を算出するものである請求項5に記載の代表色決定装置。
【請求項7】
前記遮断周波数算出部は、前記差が小さくなればなるほど、前記フィルタの遮断周波数を高くし、前記差が大きくなればなるほど、前記フィルタの遮断周波数を低くするものである請求項6に記載の代表色決定装置。
【請求項8】
前記代表色算出部は、前記フィルタの遮断周波数に応じて、前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断するものである請求項6または7に記載の代表色決定装置。
【請求項9】
前記代表色算出部は、前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれる場合、各々の前記部分色領域に含まれる2以上の色のうちの1つの色を選択し、前記選択した色を、各々の前記部分色領域の代表色に決定するものである請求項1に記載の代表色決定装置。
【請求項10】
前記代表色算出部は、各々の前記部分色領域の代表色として、各々の前記部分色領域に含まれる2以上の色のうち、面積が最大の色を選択するものである請求項9に記載の代表色決定装置。
【請求項11】
観察者から商品までの距離を表す観察距離の情報を受け取るステップと、
前記商品の画像に含まれる前記商品の領域を複数の部分色領域に分割し、各々の前記部分色領域に含まれる色の情報を取得するステップと、
前記商品の画像、ならびに、前記商品の画像から抽出された前記商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報を取得するステップと、
人間の視覚特性の情報として、空間周波数とコントラストとの関係の情報を取得するステップと、
前記観察距離の情報、前記商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、前記視覚特性の情報に基づいて、前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断し、前記判断の結果に応じて、各々の前記部分色領域に含まれる色の情報から各々の前記部分色領域の代表色を算出するステップとを含むことを特徴とする代表色決定方法。
【請求項12】
前記観察距離の情報、および、前記商品の色柄の繰り返し頻度の情報から、各々の前記部分色領域の空間周波数を求め、前記求めた空間周波数、および、前記商品のコントラストの情報から、前記視覚特性の情報に基づいて、前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断する請求項11に記載の代表色決定方法。
【請求項13】
前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別不能な領域に含まれる場合、各々の前記部分色領域に含まれる色を混合した混合色を算出し、前記算出した混合色を、各々の前記部分色領域の代表色に決定する請求項11または12に記載の代表色決定方法。
【請求項14】
各々の前記部分色領域に含まれる2以上の色の面積の比率に応じて、前記2以上の色を加重平均することにより前記混合色を算出する請求項13に記載の代表色決定方法。
【請求項15】
前記観察距離の情報、前記商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、前記視覚特性の情報に基づいて、フィルタの遮断周波数を算出し、前記算出した遮断周波数を前記フィルタに設定するステップと、
前記遮断周波数が設定されたフィルタを用いて、各々の前記部分色領域のフィルタリングを行うことにより前記混合色を出力するステップとを含む請求項13に記載の代表色決定方法。
【請求項16】
前記観察距離の情報に対応する位置と、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界の位置との差に応じて、前記フィルタの遮断周波数を算出する請求項15に記載の代表色決定方法。
【請求項17】
前記差が小さくなればなるほど、前記フィルタの遮断周波数を高くし、前記差が大きくなればなるほど、前記フィルタの遮断周波数を低くする請求項16に記載の代表色決定方法。
【請求項18】
前記フィルタの遮断周波数に応じて、前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断する請求項16または17に記載の代表色決定方法。
【請求項19】
前記観察距離の情報に対応する位置が、前記観察者が各々の前記部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域に含まれる場合、各々の前記部分色領域に含まれる2以上の色のうちの1つの色を選択し、前記選択した色を、各々の前記部分色領域の代表色に決定する請求項11に記載の代表色決定方法。
【請求項20】
各々の前記部分色領域の代表色として、各々の前記部分色領域に含まれる2以上の色のうち、面積が最大の色を選択する請求項19に記載の代表色決定方法。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれか1項に記載の代表色決定方法の各々のステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項22】
請求項11〜20のいずれか1項に記載の代表色決定方法の各々のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者から商品までの距離を表す観察距離に応じて、観察者が所定の観察距離から見た時の商品の代表色を決定する代表色決定装置、代表色決定方法、プログラムおよび記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、PC(パーソナルコンピュータ)等を用いて、インターネット等のコンピュータネットワークを利用した電子商取引(いわゆる、ネットショッピング)により、白黒の縞模様の衣服を購入する場合を考える。この場合、購入者は、PC等を操作して、その衣服の画像をPCの表示装置に表示させ、表示装置に表示された衣服の画像を見て、その衣服を購入するかしないかを決定する。
【0003】
このように、購入者が表示装置に表示された商品の画像を見て、その商品を購入するかしないかを決定する場合、購入者にとって、その商品の色柄が、その商品の購入を決定する際の重要な要因になる。
【0004】
例えば、特許文献1には、予め商品の情報を登録した商品情報データベースに蓄積されている商品のうち、顧客の商品に対する好みの情報を蓄積する顧客毎データベースに基づいて、顧客の好みのテキスト情報に合った商品を検索し、なおかつ、顧客の好みの色に合った商品を装置に依存しない色空間で検索することにより、顧客が指定した好みの色に合致した商品を検索することができる電子ショッピング装置が記載されている。
【0005】
しかし、色柄のある商品は、観察者から商品までの観察距離に応じて色味が大きく変化する。特許文献1では、購入者が表示装置に表示された商品の画像を見る時に、その商品の色味が観察距離によって変化することが考慮されていない。
【0006】
色柄のある衣服の場合、観察者がその衣服を比較的近い距離の位置から見ると、所定の色のストライプ柄であるとかチェック柄であると認識することができる。しかし、観察者がその衣服を所定の距離よりも遠くに離れた位置から見ると、その衣服の色柄が混ぜ合わされて、混合色の無地の衣服であるかのように認識される場合がある。このように、色柄のある商品の色味は、観察距離に応じて変化する。
【0007】
特許文献1では、顧客が指定した好みの色に合致した、装置に依存しない色を持つ商品を検索することは可能である。しかし、その商品の色味が観察距離に応じてどのように変化するのかを商品の購入前に事前確認することができないという問題点がある。
【0008】
なお、本発明に関連性のある先行技術文献としては、特許文献1の他にも、特許文献2〜4等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−24263号公報
【特許文献2】特開2006−350546号公報
【特許文献3】特開2010−134567号公報
【特許文献4】特開2012−203837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の問題点を解消し、購入者が表示装置に表示された商品の画像を見た時に、観察者が所定の観察距離から見た時の商品の色味を確認することができる代表色決定装置、代表色決定方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、観察者から商品までの距離を表す観察距離の情報を入力する観察距離情報入力部と、
商品の画像、ならびに、商品の画像から抽出された商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報を記憶する商品情報記憶部と、
商品の画像に含まれる商品の領域を複数の部分色領域に分割し、各々の部分色領域に含まれる色の情報を取得する部分色取得部と、
人間の視覚特性の情報として、空間周波数とコントラストとの関係の情報を記憶する視覚特性情報記憶部と、
観察距離の情報、商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断し、判断の結果に応じて、各々の部分色領域に含まれる色の情報から各々の部分色領域の代表色を算出する代表色算出部とを備えることを特徴とする代表色決定装置を提供するものである。
【0012】
ここで、代表色算出部は、観察距離の情報、および、商品の色柄の繰り返し頻度の情報から、各々の部分色領域の空間周波数を求め、求めた空間周波数、および、商品のコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断するものであることが好ましい。
【0013】
また、代表色算出部は、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別不能な領域に含まれる場合、各々の部分色領域に含まれる色を混合した混合色を算出し、算出した混合色を、各々の部分色領域の代表色に決定するものであることが好ましい。
【0014】
また、代表色算出部は、各々の部分色領域に含まれる2以上の色の面積の比率に応じて、2以上の色を加重平均することにより混合色を算出するものであることが好ましい。
【0015】
また、代表色算出部は、
各々の部分色領域をフィルタリングするフィルタと、
観察距離の情報、商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、フィルタの遮断周波数を算出し、算出した遮断周波数をフィルタに設定する遮断周波数算出部と、
遮断周波数が設定されたフィルタを用いて、各々の部分色領域のフィルタリングを行うことにより混合色を出力するフィルタリング部とを備えることが好ましい。
【0016】
また、遮断周波数算出部は、観察距離の情報に対応する位置と、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界の位置との差に応じて、フィルタの遮断周波数を算出するものであることが好ましい。
【0017】
また、遮断周波数算出部は、差が小さくなればなるほど、フィルタの遮断周波数を高くし、差が大きくなればなるほど、フィルタの遮断周波数を低くするものであることが好ましい。
【0018】
また、代表色算出部は、フィルタの遮断周波数に応じて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断するものであることが好ましい。
【0019】
また、代表色算出部は、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれる場合、各々の部分色領域に含まれる2以上の色のうちの1つの色を選択し、選択した色を、各々の部分色領域の代表色に決定するものであることが好ましい。
【0020】
また、代表色算出部は、各々の部分色領域の代表色として、各々の部分色領域に含まれる2以上の色のうち、面積が最大の色を選択するものであることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、観察者から商品までの距離を表す観察距離の情報を受け取るステップと、
商品の画像に含まれる商品の領域を複数の部分色領域に分割し、各々の部分色領域に含まれる色の情報を取得するステップと、
商品の画像、ならびに、商品の画像から抽出された商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報を取得するステップと、
人間の視覚特性の情報として、空間周波数とコントラストとの関係の情報を取得するステップと、
観察距離の情報、商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断し、判断の結果に応じて、各々の部分色領域に含まれる色の情報から各々の部分色領域の代表色を算出するステップとを含むことを特徴とする代表色決定方法を提供する。
【0022】
ここで、観察距離の情報、および、商品の色柄の繰り返し頻度の情報から、各々の部分色領域の空間周波数を求め、求めた空間周波数、および、商品のコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断することが好ましい。
【0023】
また、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別不能な領域に含まれる場合、各々の部分色領域に含まれる色を混合した混合色を算出し、算出した混合色を、各々の部分色領域の代表色に決定することが好ましい。
【0024】
また、各々の部分色領域に含まれる2以上の色の面積の比率に応じて、2以上の色を加重平均することにより混合色を算出することが好ましい。
【0025】
また、観察距離の情報、商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、フィルタの遮断周波数を算出し、算出した遮断周波数をフィルタに設定するステップと、
遮断周波数が設定されたフィルタを用いて、各々の部分色領域のフィルタリングを行うことにより混合色を出力するステップとを含むことが好ましい。
【0026】
また、観察距離の情報に対応する位置と、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界の位置との差に応じて、フィルタの遮断周波数を算出することが好ましい。
【0027】
また、差が小さくなればなるほど、フィルタの遮断周波数を高くし、差が大きくなればなるほど、フィルタの遮断周波数を低くすることが好ましい。
【0028】
また、フィルタの遮断周波数に応じて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断することが好ましい。
【0029】
また、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域に含まれる場合、各々の部分色領域に含まれる2以上の色のうちの1つの色を選択し、選択した色を、各々の部分色領域の代表色に決定することが好ましい。
【0030】
また、各々の部分色領域の代表色として、各々の部分色領域に含まれる2以上の色のうち、面積が最大の色を選択することが好ましい。
【0031】
また、本発明は、上記のいずれかに記載の代表色決定方法の各々のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【0032】
また、本発明は、上記のいずれかに記載の代表色決定方法の各々のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、観察距離の情報に応じて、色柄を持つ商品の各々の部分色領域の代表色を算出する。そのため、商品の購入者は、本発明を適用するPC等の表示装置に表示された商品の画像を見た時に、観察者が所定の観察距離から見た時の商品の色味をシミュレートし、実際の商品の利用シーンに近い状態を商品の購入前に再現して、商品を購入するか否かを決定することができる。また、観察距離に応じた商品の見えの違いを利用してコーディネート等にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の代表色決定装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。
【
図3】空間周波数とコントラスト感度との関係を表す一例のグラフである。
【
図4】観察距離の情報に対応する位置を表す一例のグラフである。
【
図5】
図1に示す代表色決定装置の動作を表す一例のフローチャートである。
【
図6】観察距離と空間周波数との関係を表す一例の概念図である。
【
図7】観察距離に応じた混合比率の混合色を算出する場合の代表色算出部の構成を表すブロック図である。
【
図8】
図7に示す代表色算出部を備える代表色決定装置の動作を表す一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の代表色決定装置、代表色決定方法、プログラムおよび記録媒体を詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の代表色決定装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。同図に示す代表色決定装置10は、観察者から商品までの距離を表す観察距離に応じて、観察者が所定の観察距離から見た時の商品の代表色を決定するものであり、観察距離情報入力部12と、商品情報記憶部14と、部分色取得部16と、視覚特性情報記憶部18と、代表色算出部20とを備えている。
【0037】
観察距離情報入力部12は、観察距離の情報を入力するためのキーボード等の入力装置である。つまり、代表色決定装置10は、ユーザ(例えば、商品の購入者)が、観察距離情報入力部12を介して入力した観察距離の情報を受け取る。
ここで、商品は、2色以上の色柄を持ち、購入者が着用するものであり、例えば、白黒の縞模様の衣服等を例示することができる。
【0038】
商品情報記憶部14は、商品の情報、例えば、商品の画像、商品の画像から抽出された商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報等を記憶するものである。
ここで、商品の色柄の繰り返し頻度とは、商品が前述の白黒の縞模様の衣服である場合、所定の間隔の中、例えば、10cmの中に、縞模様が何回繰り返されているのかを表す情報である。
【0039】
部分色取得部16は、商品情報記憶部14から取得した商品の画像に含まれる商品の領域を複数の部分色領域に分割し、各々の部分色領域に含まれる色の情報を取得するものである。
部分色領域のサイズ、分割数等は何ら限定されず、所望の値に設定することができる。
【0040】
視覚特性情報記憶部18は、人間の視覚特性の情報として、空間周波数とコントラストとの関係の情報、例えば、キャンベルチャート、コントラスト感度等の情報を記憶するものである。
【0041】
図2は、キャンベルチャートの一例である。キャンベルチャートの横軸は空間周波数、縦軸はコントラストを表す。同図中、空間周波数は、右側に行くと大きくなり、左側に行くと小さくなる。一方、コントラストは、下側に行くと大きくなり、上側に行くと小さくなる。空間周波数は、1度の視角に含まれる縞の数(サイクル/度)を表す。
キャンベルチャートから分かるように、同じ空間周波数であってもコントラストが小さくなるに従って、ある境界で人間は縞模様を弁別することができなくなり、縞模様を弁別可能な領域と弁別不能な領域とに分かれる。
【0042】
図3は、空間周波数とコントラスト感度との関係を表す一例のグラフである。このグラフの横軸は空間周波数、縦軸はコントラスト感度を表す。同図中、空間周波数は、右側に行くと大きくなり、左側に行くと小さくなる。一方、コントラスト感度は、下側に行くと大きくなり、上側に行くと小さくなる。コントラスト感度は、キャンベルチャートにおいて、人間が縞模様を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界を表す。
このグラフに示すように、人間のコントラスト感度が最も高い空間周波数は3サイクル/度前後であり、これよりも空間周波数が大きくなるに従って、または、小さくなるに従って、コントラスト感度は小さくなる。
【0043】
代表色算出部20は、観察距離情報入力部12を介して入力された観察距離の情報、商品情報記憶部14から取得した商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、視覚特性情報記憶部18から取得した人間の視覚特性の情報に基づいて、観察距離の情報に対応する位置、例えば、
図2に示すキャンベルチャート上の位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか、それとも弁別不能な領域に含まれているのかを判断し、判断の結果に応じて、各々の部分色領域に含まれる色の情報から各々の部分色領域の代表色を算出するものである。
【0044】
図4は、観察距離の情報に対応する位置を表す一例のグラフである。同図は、
図3に示すグラフにおいて、観察距離の情報に対応する位置を表したものである。同図に点線で示すように、例えば、観察距離の情報および商品の色柄の繰り返し頻度の情報から求めた空間周波数と、商品情報記憶部14から取得した商品のコントラストの情報との交点の位置が、観察距離の情報に対応する位置を表す。
【0045】
次に、
図5に示すフローチャートを参照して、代表色決定装置10の動作を説明する。
ここでは、代表色決定装置10のユーザにより、商品情報記憶部14に記憶されている商品の画像の中から、2色以上の色柄を持つ商品の画像が選択されたものとする。
【0046】
部分色取得部16は、代表色決定装置10のユーザにより商品の画像が選択されると、商品情報記憶部14から、選択された商品の画像を取得する。部分色取得部16は、商品の画像を取得すると、取得した商品の画像に含まれる商品の領域を複数の部分色領域に分割し、各々の部分色領域に含まれる色の情報を取得する(ステップS1)。取得した各々の部分色領域の色の情報は、部分色取得部16から代表色算出部20に入力される。
【0047】
続いて、代表色決定装置10は、代表色決定装置10のユーザにより観察距離情報入力部12を介して入力される観察距離の情報を受け取る(ステップS2)。受け取った観察距離の情報は、観察距離情報入力部12から代表色算出部20に入力される。
【0048】
代表色算出部20は、前述のように、代表色決定装置10のユーザにより商品の画像が選択されると、商品情報記憶部14から、選択された商品の画像、ならびに、選択された商品の画像から抽出された商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報を取得する(ステップS3)。
【0049】
続いて、代表色算出部20は、視覚特性情報記憶部18から、人間の視覚特性の情報として、空間周波数とコントラストとの関係の情報を取得する(ステップS4)。
【0050】
代表色算出部20は、部分色取得部16から各々の部分色領域の色の情報が入力され、続いて、観察距離情報入力部12から観察距離が入力されると、観察距離の情報、商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、人間の視覚特性の情報に基づいて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断する(ステップS5)。
【0051】
代表色算出部20は、例えば、観察距離の情報、および、商品の色柄の繰り返し頻度の情報から、各々の部分色領域の空間周波数を求める。
【0052】
空間周波数は、前述のように、1度の視角に含まれる縞の数(サイクル/度)を表すため、観察距離に応じて変化する。
図6に示すように、観察距離がD0の場合の、商品の色柄の繰り返し頻度の情報に対応する空間周波数がF0であるとする。観察距離がD0よりも短いD1になると、1度の視角に含まれる縞の数は減少するため、空間周波数はF0よりも小さいF1になる。逆に、観察距離がD0よりも長いD2になると、1度の視角に含まれる縞の数は増加するため、空間周波数はF0よりも大きいF2になる。
【0053】
続いて、代表色算出部20は、観察距離の情報から求めた空間周波数、および、商品のコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断する。
【0054】
代表色算出部20は、例えば、
図2のキャンベルチャートにおいて、観察距離の情報から求めた空間周波数、および、商品のコントラストの情報に対応する位置を求める。求めた位置が、
図3のコントラスト感度の曲線よりも下側の領域にある場合、観察距離の位置は、観察者が各々の部分色領域に含まれる色を弁別可能な領域に含まれていると判断することができる。逆に、求めた位置がコントラスト感度の曲線よりも上側の領域にある場合、観察距離の位置は、観察者が各々の部分色領域に含まれる色を弁別不能な領域に含まれていると判断することができる。
【0055】
そして、代表色算出部20は、判断の結果に応じて、各々の部分色領域に含まれる色の情報から各々の部分色領域の代表色を決定する(ステップS6)。
【0056】
代表色算出部20は、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別不能な領域に含まれる場合、各々の部分色領域に含まれる色を混合した混合色を算出し、算出した混合色を、各々対応する部分色領域の代表色にする。この場合、代表色算出部20は、例えば、各々の部分色領域に含まれる2以上の色の面積の比率に応じて、2以上の色を加重平均することにより混合色を算出することができる。
【0057】
また、代表色算出部20は、観察距離の情報に対応する位置と、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界(つまり、コントラスト感度の曲線)の位置との差に応じて、混合色の混合比率を適宜変更することができる。
【0058】
前述のように、観察距離の情報に対応する位置は、
図4に示すように、観察距離の情報および商品の色柄の繰り返し頻度の情報から求めた空間周波数と、商品情報記憶部14から取得した商品のコントラストの情報との交点の位置である。観察距離の情報に対応する位置と、色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界の位置との差は、観察距離の情報に対応する位置と、コントラスト感度の曲線との間の距離を表す。
【0059】
図7は、観察距離に応じた混合比率の混合色を算出する場合の代表色算出部の構成を表すブロック図である。同図に示す代表色算出部20は、フィルタ22と、遮断周波数算出部24と、フィルタリング部26とを備えている。
【0060】
フィルタ22は、各々の部分色領域(の画像)をフィルタリングするものであり、例えば、ローパスフィルタを例示することができる。
【0061】
遮断周波数算出部24は、観察距離の情報、商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、フィルタ22の遮断周波数を算出し、算出した遮断周波数をフィルタ22に設定するものである。
【0062】
フィルタリング部26は、遮断周波数が算出されたフィルタ22を用いて、各々の部分色領域のフィルタリングを行うことにより混合色を出力するものである。
【0063】
次に、
図8に示すフローチャートを参照して、
図7に示す代表色算出部20を備える代表色決定装置10の動作を説明する。
【0064】
ステップS1〜S4は、前述の通りである。
【0065】
遮断周波数算出部24は、観察距離の情報、商品の色柄の繰り返し頻度およびコントラストの情報から、視覚特性の情報に基づいて、フィルタ22の遮断周波数を算出し、算出した遮断周波数をフィルタ22に設定する(ステップS7)。
【0066】
遮断周波数算出部24は、例えば、観察距離の情報に対応する位置と、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界の位置との差に応じて、フィルタ22の遮断周波数を算出し、算出した遮断周波数をフィルタ22に設定する。
また、遮断周波数算出部24は、観察距離の情報に対応する位置と境界との差が小さくなればなるほど、フィルタ22の遮断周波数を高くし、観察距離の情報に対応する位置と境界との差が大きくなればなるほど、フィルタ22の遮断周波数を低くする。
【0067】
フィルタ22に遮断周波数が設定されると、フィルタリング部26は、遮断周波数が設定されたフィルタ22を用いて、各々の部分色領域のフィルタリングを行うことにより混合色を算出し、算出した混合色を代表色として出力する(ステップS8)。
例えば、部分色領域の色柄が、地色が青色で、赤色縞のストライプである場合、フィルタ22の遮断周波数に応じて、地色の青色と、縞の赤色とが混合され、混合比率が大きくなるに従って次第に藤色になる。
【0068】
このように、観察距離の情報に対応する位置と、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域と弁別不能な領域との境界の位置との差に応じて、混合色の混合比率を変更することにより、観察距離に応じた混合比率の混合色を算出することができる。
【0069】
フィルタ22は、ローパスフィルタの場合、遮断周波数よりも高周波側の成分を遮断する。そのため、フィルタ22の遮断周波数が高くなればなるほど、遮断される高周波側の成分は少なくなり、フィルタリング後の部分色領域のぼけ(混合色の混合比率)は小さくなる。この場合、フィルタ22の遮断周波数が高くなればなるほど、観察距離の情報に対応する位置と境界との差は小さくなる。従って、観察距離の情報に対応する位置は、フィルタ22の遮断周波数が高くなればなるほど、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に近いことを意味する。
【0070】
逆に、フィルタ22の遮断周波数が低くなればなるほど、遮断される高周波側の成分は多くなり、フィルタリング後の部分色領域のぼけ(混合色の混合比率)は大きくなる。この場合、フィルタ22の遮断周波数が低くなればなるほど、観察距離の情報に対応する位置と境界との差は大きくなる。従って、観察距離の情報に対応する位置は、フィルタ22の遮断周波数が低くなればなるほど、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域から遠いことを意味する。
【0071】
言い換えると、代表色算出部20は、フィルタ22の遮断周波数に応じて、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれているのか否かを判断することができる。
【0072】
一方、代表色算出部20は、観察距離の情報に対応する位置が、観察者が各々の部分色領域に含まれる色柄を弁別可能な領域に含まれる場合、各々の部分色領域に含まれる2以上の色のうちの1つの色を選択し、選択した色を、各々対応する部分色領域の代表色にする。この場合、代表色算出部20は、例えば、各々の部分色領域の代表色として、各々の部分色領域に含まれる2以上の色のうち、面積が最大の色を選択することができる。
【0073】
このように、代表色決定装置10では、観察距離の情報に応じて、色柄を持つ商品の各々の部分色領域の代表色を算出する。そのため、商品の購入者は、この代表色決定装置10を適用するPC等の表示装置に表示された商品の画像を見た時に、観察者が所定の観察距離から見た時の商品の色味をシミュレートし、実際の商品の利用シーンに近い状態を商品の購入前に再現して、商品を購入するか否かを決定することができる。また、観察距離に応じた商品の見えの違いを利用してコーディネート等にも利用することができる。
【0074】
本発明の代表色決定方法は、例えば、その各々のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムにより実現することができる。また、このプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。
【0075】
なお、本発明の代表色決定装置は、購入者が自宅のPC等を用いて、電子商取引により商品を購入する場合に、PC等の表示装置に表示された商品の画像を見る時だけでなく、例えば、購入者が商品を販売する店に行った時に、購入者が店頭端末を利用して、あるいは、その店の店員が接客端末を用いて、それらの端末の表示装置に表示された商品の画像を見る時などにも利用することができる。
【0076】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0077】
10 代表色決定装置
12 観察距離情報入力部
14 商品情報記憶部
16 部分色取得部
18 視覚特性情報記憶部
20 代表色算出部
22 フィルタ
24 遮断周波数算出部
26 フィルタリング部