(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パターン形成のための機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域と前記所定の親和性よりも低い親和性を有する第2の領域とによりパターニングされた基材の表面に前記機能性の液を所定の供給条件で供給してパターンを形成する際のパターンの品質を管理するチャートであって、
前記基材と同一の材料からなるチャート用基材と、
前記チャート用基材の表面上に形成された少なくとも1つの単位領域グループと
を備え、
前記単位領域グループは、それぞれ周囲を前記第2の領域により囲まれた前記第1の領域からなる複数の単位領域を含み、
それぞれの前記単位領域は、前記単位領域内に所定量の前記機能性の液を前記所定の供給条件で供給したときに、前記機能性の液が周囲の前記第2の領域にあふれることなく且つ前記単位領域内がすべて前記機能性の液で満たされる形状および大きさを有する適合タイプの単位領域と、前記機能性の液の一部が周囲の前記第2の領域にあふれる、および/または、前記単位領域内の一部が前記機能性の液で満たされない形状および大きさを有する非適合タイプの単位領域のいずれかに分類され、
前記複数の単位領域は、少なくとも1つの前記適合タイプの単位領域と少なくとも1つの前記非適合タイプの単位領域を含んでいることを特徴とするパターン品質管理チャート。
前記複数の単位領域は、前記非適合タイプの単位領域として、前記単位領域内に所定量の前記機能性の液を前記所定の供給条件で供給したときに、前記機能性の液の一部が短軸方向に隣接する前記第2の領域にあふれるような短軸の長さを有する少なくとも1つの単位領域と、前記単位領域内に所定量の前記機能性の液を前記所定の供給条件で供給したときに、前記単位領域内の長軸方向の一部が前記機能性の液で満たされないような長軸の長さを有する少なくとも1つの単位領域とを含む請求項2に記載のパターン品質管理チャート。
前記複数の単位領域は、前記非適合タイプの単位領域として、前記単位領域内に所定量の前記機能性の液を前記所定の供給条件で供給したときに、前記機能性の液の一部が短軸方向に隣接する前記第2の領域にあふれるような短軸の長さと、前記単位領域内の長軸方向の一部が前記機能性の液で満たされないような長軸の長さとを有する少なくとも1つの単位領域を含む請求項2に記載のパターン品質管理チャート。
前記複数の単位領域は、互いに短軸および長軸の少なくとも一方の長さが異なる前記適合タイプの複数の単位領域と、互いに短軸および長軸の少なくとも一方の長さが異なる前記非適合タイプの複数の単位領域とを含む請求項2に記載のパターン品質管理チャート。
前記単位領域グループに含まれる前記複数の単位領域は、それぞれの中心が等間隔に並ぶように配列されている請求項1〜6のいずれか一項に記載のパターン品質管理チャート。
前記複数の単位領域は、それぞれ、レーザ照射、電子線照射、フォトマスクを用いた輻射線照射、シャドーマスクを用いたプラズマ処理、ナノインプリントのいずれかにより形成される請求項1〜8のいずれか一項に記載のパターン品質管理チャート。
パターン形成のための機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域と前記所定の親和性よりも低い親和性を有する第2の領域とによりパターニングされた基材の表面に前記機能性の液を所定の供給条件で供給してパターンを形成する際のパターンの品質を管理する方法であって、
請求項1〜9のいずれか一項に記載のパターン品質管理チャートを作製し、
前記パターン品質管理チャートのそれぞれの前記単位領域グループの前記複数の単位領域にそれぞれ前記所定量の前記機能性の液を供給し、
前記複数の単位領域における前記機能性の液の濡れ拡がり形状を評価し、
前記機能性の液の濡れ拡がり形状の評価結果に基づいてパターン形成条件の適/不適を判定する
ことを特徴とするパターン品質管理方法。
前記機能性の液の濡れ拡がり形状は、対応する前記単位領域内がすべて前記機能性の液で満たされている、前記機能性の液の一部が前記単位領域から周囲の前記第2の領域にあふれている、および、前記単位領域内の一部が前記機能性の液で満たされていない、のいずれであるかが評価される請求項10に記載のパターン品質管理方法。
パターン形成のための機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域と前記所定の親和性よりも低い親和性を有する第2の領域とにより基材の表面をパターニングするパターニング処理工程と、前記基材の表面の前記第1の領域に前記機能性の液を所定の供給条件で供給してパターンを形成する供給工程とを含む一連の処理工程からなるパターン形成方法であって、
請求項10〜14のいずれか一項に記載のパターン品質管理方法による前記複数の単位領域における前記機能性の液の濡れ拡がり形状の評価結果を前記一連の処理工程によるパターンの形成に反映させることを特徴とするパターン形成方法。
【背景技術】
【0002】
いわゆるプリンテッドエレクトロニクスと呼ばれる分野において、近年、不要な部分をエッチングしてパターンを形成するサブトラクティブな工法から、塗布または印刷を用いて必要な機能性材料によるパターンを形成し、また、必要に応じてパターンを積層していくアディティブな工法への変革が試みられている。種々の塗布手段または印刷手段が、その適性に応じて適宜用いられるが、中でも、インクジェット方式に代表される非接触印刷法は、予め印刷原版を作る必要がなく、また、パターン形成工程中の熱履歴に伴う基材伸縮に対する動的アラインメント適性に優れ、さらに、大面積プロセスにも高精度に対応可能であるという観点から注目されている。
【0003】
ところで、インクジェット方式を一般的な画像の印刷に用いる場合には、画像品質は、インクの吐出精度およびキャリッジまたは紙送りの駆動精度に大きく依存する。このため、実用上視認される画像欠陥を抑制するように、画像処理および着弾干渉抑制プロセス等を行うことにより画像の品質を補っている。
しかし、このような方法だけでは、プリンテッドエレクトロニクス分野で配線、電極、アンテナ等の導電パターンまたは半導体パターンに電気的機能を付与するには、十分な精度を確保するのが困難である。特許文献1に、導電性のインクを用いてインクジェットで導電性パターンを形成する方法が提案されているが、特に、パターンの微細化を目指すほど、液滴の着弾位置のばらつきおよび着弾タイミングに伴う複数の液滴または液膜の合一、移動および変形等の着弾干渉によってパターンの品質は大きく劣化し、導電性パターンに断線、短絡等が容易に生じるおそれがあった。
【0004】
そこで、例えば特許文献2には、予め、基材上に親液領域と撥液領域による親撥パターン、すなわち、表面エネルギーの異なる領域によるパターンを作成し、インクジェット方式によって親液領域に液滴を滴下することで、導電性等の機能を発揮しやすい、パターン品質の高いパターニングを行おうとする方法が提案されている。
【0005】
このような親液領域と撥液領域によるパターニングを適切に行った基材では、インクジェット方式の代わりに、スピンコート、ダイコート等の塗布方式を用いても、ある程度の品質の導電性パターンが得られることが知られており、例えば非特許文献1には、親撥パターン上に銀ナノ粒子の機能性インクをスピンコートして導電性パターンを形成する方法が開示されている。
この非特許文献1に開示された方法では、基材上の親撥パターンと機能性インクの表面エネルギーの関係、特に、親液領域および撥液領域のそれぞれに対するインクの接触角が、一定の範囲に入っていなければ、目的のパターン品質を得ることができない。この表面エネルギーの関係は、パターン形成の条件下においても、様々な要因で変化してしまうため、工程管理が品質および歩留まり向上のためには重要である。
【0006】
ここで、表面エネルギーの関係を変化させる要因としては、例えば、1)基材上の親撥パターンを形成するための、紫外線、電子線、熱線等の照射により親液性と撥液性の変換が行われる材料のロット間差および塗布前後の経時変化、2)親撥パターン形成後の環境および経時変化、3)機能性インクのロット間差および経時に伴う物性(表面張力等)変化、4)親液性と撥液性の変換に用いた紫外線、電子線等の光源状態または熱源の状態、5)基材および機能性インクの温度、等が挙げられる。
これらの要因を確認する方法の一つとして、特許文献3には、絶縁基板上に評価用撥液領域と評価用親液領域を互いに隣接して配置し、配線パターンの形成に先立って、インクジェット方式により評価用撥液領域と評価用親液領域のそれぞれの中央部に同量の機能性インクを滴下し、これらの液滴径を上方から画像認識によって計測する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、接触角が極めて小さい領域では、接触角のわずかな変化が液滴径の大きな変化をもたらすが、接触角が比較的大きい領域では、接触角の変化の大きさに対して、液滴径の変化がわずかになってしまう。
例えば、
図16に、液滴を一定体積の球欠とみなして接触角と液滴径の関係を近似計算した例を示す。10pL(10×10
−15m
3)と1pL(1×10
−15m
3)の2種類の液滴量を滴下した場合の関係がそれぞれ示されている。いずれの液滴量においても、接触角が小さい場合には、接触角に対して液滴径が大きく変化しているが、接触角が大きくなると、接触角が変化しても、液滴径はほとんど変化していないことがわかる。例えば、1pLの液滴量を滴下した場合に、接触角が90度のときの液滴径が7.8μmであるのに対し、接触角が95度のときの液滴径は7.5μmであり、接触角が5度異なっても、液滴径は、サブミクロンの差しか生じない。
このため、特許文献3に開示された方法では、液滴径を計測するために用いられる顕微鏡等の拡大光学系に高い分解能が要求されると共に、計測誤差が大きく、高精度に上記の要因を確認することは困難である。
【0009】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、パターン形成条件の適/不適を容易に判定することができるパターン品質管理チャートを提供することを目的とする。
また、この発明は、パターン品質管理チャートを用いてパターンの品質を管理するパターン品質管理方法およびパターンの品質を管理しつつパターンを形成するパターン形成方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るパターン品質管理チャートは、パターン形成のための機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域と所定の親和性よりも低い親和性を有する第2の領域とによりパターニングされた基材の表面に機能性の液を所定の供給条件で供給してパターンを形成する際のパターンの品質を管理するチャートであって、基材と同一の材料からなるチャート用基材と、チャート用基材の表面上に形成された少なくとも1つの単位領域グループとを備え、単位領域グループは、それぞれ周囲を第2の領域により囲まれた第1の領域からなる複数の単位領域を含み、それぞれの単位領域は、単位領域内に所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、機能性の液が周囲の第2の領域にあふれることなく且つ単位領域内がすべて機能性の液で満たされる形状および大きさを有する適合タイプの単位領域と、機能性の液の一部が周囲の第2の領域にあふれる、および/または、単位領域内の一部が機能性の液で満たされない形状および大きさを有する非適合タイプの単位領域のいずれかに分類され、複数の単位領域は、少なくとも1つの適合タイプの単位領域と少なくとも1つの非適合タイプの単位領域を含むものである。
【0011】
複数の単位領域は、それぞれ、短軸および長軸を有する楕円形または長方形の形状を有することができる。
この場合、複数の単位領域は、非適合タイプの単位領域として、単位領域内に所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、機能性の液の一部が短軸方向に隣接する第2の領域にあふれるような短軸の長さを有する少なくとも1つの単位領域と、単位領域内に所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、単位領域内の長軸方向の一部が機能性の液で満たされないような長軸の長さを有する少なくとも1つの単位領域とを含むことが好ましい。
あるいは、複数の単位領域は、非適合タイプの単位領域として、単位領域内に所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、機能性の液の一部が短軸方向に隣接する第2の領域にあふれるような短軸の長さと、単位領域内の長軸方向の一部が機能性の液で満たされないような長軸の長さとを有する少なくとも1つの単位領域を含んでいてもよい。
複数の単位領域は、互いに短軸および長軸の少なくとも一方の長さが異なる適合タイプの複数の単位領域と、互いに短軸および長軸の少なくとも一方の長さが異なる非適合タイプの複数の単位領域とを含むこともできる。
【0012】
また、複数の単位領域は、それぞれ、円形または正方形の形状を有していてもよい。
単位領域グループに含まれる複数の単位領域は、それぞれの中心が等間隔に並ぶように配列されていることが好ましい。
複数の単位領域グループがチャート用基材の表面上に配列形成されていてもよい。
複数の単位領域は、それぞれ、レーザ照射、電子線照射、フォトマスクを用いた輻射線照射、シャドーマスクを用いたプラズマ処理、ナノインプリント等のいずれかにより形成されることができる。
【0013】
この発明に係るパターン品質管理方法は、パターン形成のための機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域と所定の親和性よりも低い親和性を有する第2の領域とによりパターニングされた基材の表面に機能性の液を所定の供給条件で供給してパターンを形成する際のパターンの品質を管理する方法であって、上記のパターン品質管理チャートを作製し、パターン品質管理チャートのそれぞれの単位領域グループの複数の単位領域にそれぞれ所定量の機能性の液を供給し、複数の単位領域における機能性の液の濡れ拡がり形状を評価し、機能性の液の濡れ拡がり形状の評価結果に基づいてパターン形成条件の適/不適を判定する方法である。
【0014】
なお、機能性の液の濡れ拡がり形状は、対応する単位領域内がすべて機能性の液で満たされている、機能性の液の一部が単位領域から周囲の第2の領域にあふれている、および、単位領域内の一部が機能性の液で満たされていない、のいずれであるかが評価されることが好ましい。
機能性の液の濡れ拡がり形状の評価は、それぞれの単位領域の拡大像を生成して目視あるいは画像認識により行うことができる。
複数の単位領域への機能性の液の供給は、インクジェット方式により行われることが好ましい。
【0015】
この発明に係るパターン形成方法は、パターン形成のための機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域と所定の親和性よりも低い親和性を有する第2の領域とにより基材の表面をパターニングするパターニング処理工程と、基材の表面の第1の領域に機能性の液を所定の供給条件で供給してパターンを形成する供給工程とを含む一連の処理工程からなるパターン形成方法であって、上記のパターン品質管理方法による複数の単位領域における機能性の液の濡れ拡がり形状の評価結果を一連の処理工程によるパターンの形成に反映させる方法である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、チャート用基材の表面上に形成された単位領域グループに含まれる複数の単位領域が、それぞれ、単位領域内に所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、機能性の液が周囲の第2の領域にあふれることなく且つ単位領域内がすべて機能性の液で満たされる形状および大きさを有する適合タイプの単位領域と、機能性の液の一部が周囲の第2の領域にあふれる、および/または、単位領域内の一部が機能性の液で満たされない形状および大きさを有する非適合タイプの単位領域のいずれかに分類され、複数の単位領域は、少なくとも1つの適合タイプの単位領域と少なくとも1つの非適合タイプの単位領域を含んでいるので、複数の単位領域にそれぞれ所定量の機能性の液を供給して機能性の液の濡れ拡がり形状を評価することで、パターン形成条件の適/不適を容易に判定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係るパターン品質管理チャートCHの構成を示す。パターン品質管理チャートCHは、平板形状のチャート用基材Sを有し、チャート用基材Sの表面上に複数の単位領域グループG11−Gijが形成されている。
チャート用基材Sは、実際に機能性のパターンを形成しようとする基材と同一の材料からなり、4隅にそれぞれアラインメントマークMが形成されている。複数の単位領域グループG11−Gijは、iおよびjをそれぞれ正の整数として、チャート用基材Sの所定の方向Dに対しi行j列に配列形成されている。すなわち、所定の方向Dに沿ってj個の単位領域グループが配列され、所定の方向Dに対して直交方向にi個の単位領域グループが配列されている。
また、単位領域グループG11−Gijは、それぞれ、所定の方向Dに沿って配列された3つの単位領域R0、R1およびR2を含んでいる。
【0019】
図2に示されるように、1つの単位領域グループに含まれる3つの単位領域R0、R1およびR2は、それぞれ、長軸が所定の方向Dを向いた楕円形状を有し、隣接する楕円の中心Pがそれぞれ等しい間隔Lで並ぶように配置されている。3つの単位領域R0、R1およびR2の大きさは互いに異なり、中央の単位領域R0は、長軸の長さa0と短軸の長さb0を有し、単位領域R1は、単位領域R0と同じ長軸の長さa0と単位領域R0の短軸の長さb0より短い短軸の長さb1を有し、単位領域R2は、単位領域R0の長軸の長さa0より長い長軸の長さa1と単位領域R0と同じ短軸の長さb0を有している。
【0020】
単位領域グループG11−Gijに含まれる単位領域R0は、互いに同一の形状および大きさを有し、単位領域R1も、互いに同一の形状および大きさを有し、単位領域R2も、互いに同一の形状および大きさを有している。
また、単位領域R0、R1およびR2の内部は、それぞれ、パターン形成のための機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域からなり、単位領域R0、R1およびR2の外部は、第1の領域の所定の親和性よりも低い親和性を有する第2の領域からなっている。すなわち、単位領域R0、R1およびR2は、それぞれ、比較的親液性を有する第1の領域から形成され、周囲が比較的撥液性を有する第2の領域により囲まれている。
【0021】
ここで、パターン形成用の基材に第1の領域と第2の領域によるパターニングを行い、第1の領域にパターン形成用の機能性の液を供給して機能性を発揮するパターンを形成しようとすると、機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域内で機能性の液が十分に濡れ拡がり、第1の領域と第2の領域の境界線上で機能性の液の先端部が留まって第2の領域にまであふれ出さないことが重要である。
【0022】
図3(A)に示されるように、パターン形成用の機能性の液に対して所定の親和性を有する第1の領域の表面上に機能性の液を滴下し、液滴が安定状態になったときの接触角をθwとし、同様に、
図3(B)に示されるように、第1の領域の所定の親和性よりも低い親和性を有する第2の領域の表面上に機能性の液を滴下し、液滴が安定状態になったときの接触角をθDとすると、θw<θDとなる。
そして、
図3(C)に示されるように、第1の領域に供給された機能性の液が第1の領域内を濡れ拡がり、第1の領域と第2の領域の境界線上で液滴または液層の先端が留まるためには、この境界線上における接触角をθとして、
θw<θ<θD
を満たすことが必要となる。
【0023】
さらに、パターン品質管理チャートCHにおいて第1の領域から形成された単位領域R0、R1およびR2は、いずれも楕円形状を有するため、これらの単位領域に供給された機能性の液が単位領域の外部にあふれることなく且つ単位領域内がすべて機能性の液で満たされるとき、
図4(A)に示されるように、単位領域を楕円の長軸方向に切断した断面の第1の領域と第2の領域の境界線上における接触角をθaとし、
図4(B)に示されるように、単位領域を楕円の短軸方向に切断した断面の第1の領域と第2の領域の境界線上における接触角をθbとすると、
θw<θa≦θb<θD ・・・(1)
が満たされることとなる。
【0024】
そこで、パターン品質管理チャートCHのそれぞれの単位領域グループに含まれる単位領域R0の長軸の長さa0と短軸の長さb0は、実際のパターン形成に用いられる機能性の液をパターン形成の際と同一の所定の供給条件で所定量だけ供給したときに、上記の(1)式が成り立つような値に設定される。
一方、それぞれの単位領域グループに含まれる単位領域R1の短軸の長さb1は、所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、第1の領域と第2の領域の境界線上における短軸方向の接触角θbが、第2の領域の表面上に滴下した液滴の安定状態における接触角θDより大きくなって、上記の(1)式が成り立たなくなるような値に設定される。
さらに、それぞれの単位領域グループに含まれる単位領域R2の長軸の長さa1は、所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、第1の領域と第2の領域の境界線上における長軸方向の接触角θaが、第1の領域の表面上に滴下した液滴の安定状態における接触角θwより小さくなって、上記の(1)式が成り立たなくなるような値に設定される。
【0025】
長軸の長さa0およびa1と短軸の長さb0およびb1をこのような値に設定して、それぞれの単位領域グループに含まれる単位領域R0、R1およびR2が設計される。
これにより、単位領域R0、R1およびR2にそれぞれパターン形成の際と同一の所定の供給条件で所定量の機能性の液を供給すると、単位領域R0では、
図5(A)に示されるように、長軸方向も短軸方向も、機能性の液が単位領域R0の外部にあふれることなく且つ単位領域R0内がすべて機能性の液で満たされることとなる。
一方、単位領域R1では、
図5(B)に示されるように、単位領域R0と同じ長さa0を有する長軸方向については、機能性の液があふれることなく単位領域R1内に満たされるものの、単位領域R0より短い長さb1を有する短軸方向については、機能性の液の一部が単位領域R1の外部にあふれてあふれ部分Fを生じてしまう。
また、単位領域R2では、
図5(C)に示されるように、単位領域R0と同じ長さb0を有する短軸方向については、機能性の液があふれることなく単位領域R2内に満たされるものの、単位領域R0より長い長さa1を有する長軸方向については、単位領域R2内に機能性の液で満たされない欠乏部分Kが形成されてしまう。
【0026】
このように、機能性の液が周囲にあふれることなく且つ単位領域内がすべて機能性の液で満たされる形状および大きさを有する単位領域R0を適合タイプの単位領域と呼び、機能性の液の一部が周囲にあふれたり、単位領域内の一部が機能性の液で満たされない形状および大きさを有する単位領域R1およびR2を非適合タイプの単位領域と呼ぶこととする。
【0027】
なお、パターン品質管理チャートCHは、実際に機能性パターンを形成する際に使用されるものと同じ親發変換装置、同じロットの基材を用いて作製されるものとする。親發変換装置は、基材の表面を第1の領域と第2の領域で親發パターニングするもので、例えば、レーザ照射によるレーザパターニング装置、電子線照射による電子線パターニング装置、フォトマスクを使用して紫外線等の輻射線を照射する装置、シャドーマスクを用いたプラズマ処理装置、ナノインプリント装置等が挙げられる。
レーザパターニング装置は、オンデマンド性に優れている点で好適である。なお、フォトマスクとしては、クロムまたは乳剤によるガラスマスクが好適に用いられるが、この場合には、機能性パターンの形成に用いられるフォトマスクそのものでなくても、同一とみなせる材料および方法で製造された品質管理用のフォトマスクを用いることもできる。また、機能性パターン形成用のフォトマスクの一部にパターン品質管理チャートCHを埋め込んで使用しても構わない。
また、ナノインプリントは、いわゆる蓮の葉効果(ロータス効果)を用いた超撥液面の形成に有効に使われ、その粗密により機能性の液に対する親和性の異なる領域を作ることができる。プラズマ処理は、例えば、メタルマスクを介してプラズマを照射することにより、プラズマに晒された部分だけ機能性の液に対する親和性を変化させることができる。
【0028】
また、パターン品質管理チャートCHに第1の領域と第2の領域の親發パターニングを施した後、実際の機能性パターンの形成で後処理を行う場合には、同様の後処理、例えば親發パターニングの露光後の熱処理等、親撥パターニング材料の使用方法に合わせた処理を行い、その後、実際の機能性パターンの形成と同じ印刷装置または塗布装置を用いて同じてパターン形成条件で各単位領域グループに含まれる単位領域R0、R1およびR2に所定量の機能性の液を供給する。印刷装置としては、インクジェット装置を使用することができ、塗布装置としては、スピンコート、ダイコート等を使用することができる。
ここで、同じパターン形成条件とは、露光強度、露光量、基材およびインクの設定温度、インクジェット装置の場合はインクの吐出波形と吐出量、吐出時のインクの温度、基材の温度および雰囲気、スピンコートの場合は回転数と時間、ダイコートの場合は同一形状のスリットダイと押出量、速度等が挙げられる。ただし、実質的に同等であると見なすことができれば、厳密に同一の条件である必要はない。
【0029】
実際に機能性パターンを形成する際に基材上に供給される機能性の液の接触角は、背景技術の欄にも記載したように、次のような種々の要因により変化する。
1)基材上に親撥パターニングを施すための、紫外線、電子線、熱線等の照射により親液性と撥液性の変換が行われる材料のロット間差および塗布前後の経時変化、
2)親撥パターニング後の環境および経時変化、
3)機能性の液のロット間差および経時に伴う物性(表面張力等)変化、
4)親液性と撥液性の変換に用いた紫外線、電子線等の光源状態または熱源の状態、
5)基材および機能性の液の温度等。
【0030】
これらの要因により機能性の液の接触角が変化して、上記の(1)式が成り立たなくなると、第1の領域に供給された機能性の液が周囲の第2の領域にあふれたり、第1の領域内の一部が機能性の液で満たされない状況が発生し、もはや第1の領域と第2の領域の親發パターニングに合わせて基材上に精度よく機能性のパターンを形成することが困難になってしまう。
【0031】
そこで、実際に機能性パターンを形成する際と同じ条件でパターン品質管理チャートCHを作製し、パターン品質管理チャートCHの各単位領域グループに含まれる単位領域R0、R1およびR2にそれぞれ互いに等しい所定量の機能性の液を供給して、それぞれの単位領域における機能性の液の濡れ拡がり形状を評価することにより、現在のパターン形成条件が適正であるのか否かを判定することが可能となる。
【0032】
すなわち、設計通りに、適合タイプの単位領域R0において、機能性の液が周囲にあふれることなく且つ単位領域内がすべて機能性の液で満たされると共に、非適合タイプの単位領域R1において、短軸方向に機能性の液の一部があふれるあふれ部分Fが生じ、さらに、非適合タイプの単位領域R2において、長軸方向に機能性の液が満たされない欠乏部分Kが形成すれば、種々の要因に基づく機能性の液の接触角の変化が許容範囲内であり、現在のパターン形成条件が適正であると判定することができる。
【0033】
これに対し、適合タイプの単位領域R0において、あふれ部分Fあるいは欠乏部分Kが生じたり、非適合タイプの単位領域R1およびR2において、それぞれ、あふれ部分Fおよび欠乏部分Kが生じない場合には、上記の(1)式が成り立たなくなるまで機能性の液の接触角が変化しており、現在のパターン形成条件では、所望のパターンを形成することができないと判定することができる。この場合には、パターン形成条件が適正であると判定されるまで、パターン形成条件を見直してパターン品質管理チャートCHによる機能性の液の濡れ拡がり形状の評価を繰り返すことが考えられる。
【0034】
図6に、実施の形態1のパターン品質管理チャートCHを用いたパターン品質管理方法を実施するための装置を示す。この装置は、インクジェット方式により機能性の液を各単位領域に供給するものであり、機能性の液を吐出するヘッド11がパターン品質管理チャートCHに対向するように配置され、ヘッド11にヘッド駆動部12が接続されている。また、パターン品質管理チャートCHを所定の方向Dに沿って移動させるチャート移動部13が配置され、ヘッド駆動部12とチャート移動部13に制御部14が接続されている。さらに、制御部14に入力部15が接続されている。
【0035】
次に、
図7のフローチャートを参照してパターン品質管理方法を説明する。
まず、ステップS1で、
図1に示したパターン品質管理チャートCHを作製し、ステップS2で、パターン品質管理チャートCHの各単位領域グループに含まれる3つの単位領域R0、R1およびR2にそれぞれ所定量に設定された等量の機能性の液を供給する。このとき、予め、入力部15から制御部14に、機能性の液の1回の供給量とパターン品質管理チャートCHの移動量が入力されており、制御部14は、パターン品質管理チャートCHのアラインメントマークMを用いてヘッド11に対するパターン品質管理チャートCHの位置合わせを行った上で、チャート移動部13によりパターン品質管理チャートCHを移動しつつ、ヘッド駆動部12を制御してヘッド11から各単位領域の中心Pに所定量の機能性の液を供給する。
図2に示したように、1つの単位領域グループに含まれる3つの単位領域R0、R1およびR2は、それぞれ、楕円の中心Pが等しい間隔Lで並ぶように配置されているので、チャート移動部13によりパターン品質管理チャートCHを単純に間隔Lずつ移動することで、インクジェットによる打滴変動を最小限に抑えつつ容易に各単位領域の中心Pに機能性の液を供給することができる。
【0036】
このようにして、ステップS2で、パターン品質管理チャートCHの単位領域グループG11−Gijのすべての単位領域R0、R1およびR2にそれぞれ所定量の機能性の液が供給されると、続くステップS3で、それぞれの単位領域における機能性の液の濡れ拡がり形状が評価される。すなわち、単位領域R0、R1およびR2のそれぞれについて、パターン品質管理チャートCHの単位領域グループG11−Gijの個数i×jだけの評価結果が得られることとなる。
この濡れ拡がり形状は、対応する単位領域内がすべて機能性の液で満たされている、機能性の液の一部が単位領域から周囲の第2の領域にあふれている、および、単位領域内の一部が機能性の液で満たされていない、のいずれであるかが評価される。このとき、顕微鏡等を用いてそれぞれの単位領域の拡大像を生成し、目視により濡れ拡がり形状を評価することができる。あるいは、画像認識により対応する単位領域を表す楕円との一致度等に基づいて濡れ拡がり形状を評価してもよい。例えば、液膜が判別できるようなコントラストで単位領域を撮影した上で、その輪郭を二値化し、単位領域を表す楕円と比較判定することができる。このようなパターンマッチング等の画像認識手法を用いることが、繰り返しの多い製造工程では好適である。
【0037】
そして、この機能性の液の濡れ拡がり形状の評価結果に基づいて、ステップS4で、パターン形成条件の適/不適が判定される。このとき、単位領域R0、R1およびR2のそれぞれについて、i×j個の評価結果を統計的に処理してパターン形成条件の適/不適を高い信頼性をもって判定することができる。
ただし、パターン品質管理チャートCHが必ずしも複数の単位領域グループを有する必要はなく、少なくとも1つの単位領域グループがパターン品質管理チャートCHに形成されていれば、それぞれの単位領域における機能性の液の濡れ拡がり形状を評価してパターン形成条件の適/不適を判定することが可能となる。
【0038】
さらに、このようにして判定されたパターン形成条件に基づいて機能性のパターンを形成することができる。すなわち、第1の領域と第2の領域とにより基材の表面をパターニングするパターニング処理工程と、基材の表面の第1の領域に機能性の液を所定の供給条件で供給してパターンを形成する供給工程とを含む一連の処理工程からなるパターン形成方法において、上記のパターン品質管理方法で得られた機能性の液の濡れ拡がり形状の評価結果が、一連の処理工程によるパターンの形成に反映される。これにより、接触角を変化させる種々の要因に影響されることなく、機能性のパターンを高精度に形成することが可能となる。
【0039】
なお、例えば、独立行政法人産業技術総合研究所により2013年7月31日に公開された液滴形状シミュレーションソフトウエア「HyDro1.00」[H.Matsui, Y.Noda, and T.Hasegawa, “Hybrid Energy-Minimization Simulation of Equilibrium Droplet Shapes on Hydrophilic/Hydrophobic Patterned Surfaces”, Langmuir , 2012, 28(44), pp.15450-15453 (dx.doi.org/10.1021/la303717n)]を用いることにより、任意の大きさの楕円領域の内外の接触角をそれぞれ設定し、楕円領域内に任意の量の液滴を滴下した際の濡れ拡がり形状をシミュレーションすることができる。例えば、第1の領域における接触角θw=15度、第2の領域における接触角θD=60度、液の表面張力を30mN/mに設定して10pL(10×10
−15m
3)の液滴を楕円領域内に滴下したときの濡れ拡がり形状を
図8(A)〜(C)に示す。
【0040】
図8(A)は、楕円の長軸の長さを100μm、短軸の長さを30μmとしたもので、適合タイプの単位領域R0のように、長軸方向も短軸方向も、液が楕円領域の外部にあふれることなく且つ楕円領域内がすべて液で満たされる場合のシミュレーション結果を示している。同様に、
図8(B)は、楕円の長軸の長さを100μm、短軸の長さを25μmとしたもので、非適合タイプの単位領域R1のように、短軸方向で液の一部が楕円領域の外部にあふれる場合のシミュレーション結果を示し、
図8(C)は、楕円の長軸の長さを120μm、短軸の長さを30μmとしたもので、非適合タイプの単位領域R2のように、楕円領域内の長軸方向の端部に液で満たされない欠乏部分が形成される場合のシミュレーション結果を示している。
【0041】
このようなシミュレーションを活用することにより、適合タイプの単位領域R0の長軸の長さa0および短軸の長さb0、非適合タイプの単位領域R1の長軸の長さa0および短軸の長さb1、非適合タイプの単位領域R2の長軸の長さa1および短軸の長さb0をそれぞれ効率的に決定することができる。
【0042】
上記の実施の形態1では、単位領域R0、R1およびR2が、それぞれ、長軸方向と短軸方向とで異方性を備えた楕円形状を有しているので、接触角の変化をより敏感に検出することができ、単位領域内に適正に液が濡れ拡がった状態か、あふれ部分Fまたは欠乏部分Kを生じた状態かが、顕微鏡等を用いた拡大像の観察で明確な差となって現れる。このため、濡れ拡がり形状の評価がばらつきにくくなるという利点を有している。
【0043】
また、パターン品質管理チャートCHの移動方向である所定の方向Dに沿って複数の単位領域グループが配列されているので、ヘッド11が所定の方向Dに直交する方向に配列された複数のノズルを有する場合に、同一ノズルによる複数の濡れ拡がり形状を評価することができ、統計的に評価結果を処理して、パターン形成条件の適/不適判定を高い信頼性で行うことが可能となる。
さらに、パターン品質管理チャートCHの移動方向である所定の方向Dに直交する方向にも複数の単位領域グループが配列されているので、ヘッド11が所定の方向Dに直交する方向に配列された複数のノズルを有する場合に、ノズル間の評価のばらつきを観察することができる。インクジェット方式の代わりに塗布方式が採用される場合も、所定の方向Dに直交する幅方向あるいは回転中心からの距離の違いによる評価のばらつきを観察することができる。
【0044】
また、機能性の液の接触角を変化させる種々の要因は、互いに複雑にからみ合っており、例えば、あるプラス方向に働く要因とマイナス方向に働く要因が互いに相殺されて、ばらつきの中でも実際に形成されたパターンの品質には影響しないという場合もあり得る。上述したように、検出感度の高いパターン品質管理チャートCHを用いて判定することにより、実際に問題にならないような相殺される要因の場合に、パターン形成条件が適正と判定され、パターンの形成を開始することができ、ロスタイムを効果的に抑えることが可能となる。
なお、パターン品質管理チャートCHに、チャート名、試験日時、号機番号、ロット番号、シリアル番号等の情報を併せて記載することもでき、また、パターン品質管理とは異なる他の目的のテストパターンを併せて埋め込むこともできる。
【0045】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、各単位領域グループが、1つの適合タイプの単位領域R0と、1つの非適合タイプの単位領域R1と、1つの非適合タイプの単位領域R2を含んでいたが、これに限るものではない。例えば、
図9に示されるように、1つの単位領域グループが、上記の(1)式が成り立つ範囲内で互いに長軸の長さと短軸の長さを変化させた複数の適合タイプの単位領域R0と、上記の(1)式が成り立たない範囲で互いに短軸の長さを変化させた複数の非適合タイプの単位領域R1と、上記の(1)式が成り立たない範囲で互いに長軸の長さを変化させた複数の非適合タイプの単位領域R2を含んでいてもよい。
このような単位領域グループを使用することにより、接触角の変化をより高精度に検出することができ、現在のパターン形成条件の適/不適をより詳細に判定することが可能となる。
【0046】
また、
図10に示されるように、複数の単位領域グループG1〜Giを、所定の方向Dと直交する方向に配列し、それぞれの単位領域グループが、互いに同一の短軸の長さを有すると共に所定の方向Dに沿って次第に長軸の長さが変化するように配列された複数の単位領域を含み、単位領域グループG1から単位領域グループGiに向かって次第に単位領域の短軸の長さが変化するようなパターン品質管理チャートを用いることもできる。すなわち、このパターン品質管理チャートは、所定の方向Dに沿って次第に長軸の長さが変化すると共に、所定の方向Dと直交する方向に沿って次第に短軸の長さが変化する複数の単位領域を有している。
このようにして、所定の方向Dにも、所定の方向Dと直交する方向にも、数段階〜数百段階に長軸または短軸の長さを変化させた単位領域を配置することができる。この場合、複数の単位領域の中心が、所定の方向Dおよび所定の方向Dと直交する方向にそれぞれ等間隔の格子点状に配列されることが望ましい。
このような単位領域グループを用いても、接触角の変化をより高精度に検出することができ、現在のパターン形成条件の適/不適をより詳細に判定することが可能となる。
【0047】
実施の形態3
図11に、実施の形態3で用いられる非適合タイプの単位領域R3を示す。この単位領域R3は、適合タイプの単位領域R0の長軸の長さa0および短軸の長さb0に対して、単位領域R0よりも長い長軸の長さa1と単位領域R0よりも短い短軸の長さb1を有している。
このため、単位領域R3にパターン形成の際と同一の所定の供給条件で所定量の機能性の液を供給したときに、短軸方向については、機能性の液の一部が単位領域R3の外部にあふれてあふれ部分を生じると同時に、長軸方向については、単位領域R3内に機能性の液で満たされない欠乏部分が形成されることとなる。すなわち、単位領域R3は、1つの単位領域で、実施の形態1における非適合タイプの2つの単位領域R1およびR2の機能を兼ね備えている。
【0048】
そこで、
図12に示されるように、1つの単位領域グループ内に、1つの適合タイプの単位領域R0と、1つの非適合タイプの単位領域R3を形成するだけで、実施の形態1と同様の濡れ拡がり形状の評価を行うことができる。
この実施の形態3においても、実施の形態2と同様に、1つの単位領域グループ内に、複数の適合タイプの単位領域R0と複数の非適合タイプの単位領域R3を含ませることができる。
【0049】
実施の形態4
上記の実施の形態1〜3では、いずれも単位領域が楕円形状を有していたが、
図13に示されるように、それぞれの単位領域を長軸aと短軸bを有する長方形状とすることもできる。
このようにしても、楕円形状と同様に、接触角の変化をより敏感に検出することができ、単位領域内に適正に液が濡れ拡がった状態か、あふれ部分Fまたは欠乏部分Kを生じた状態かが、顕微鏡等を用いた拡大像の観察で明確な差となって現れる。このため、濡れ拡がり形状の評価がばらつきにくくなる。
また、4隅の角を丸めた長方形状としてもよい。
親發変換装置を用いて基材の表面を第1の領域と第2の領域で親發パターニングすることにより単位領域を形成する際に、レーザ、電子線、輻射線等の照射パターンをデジタル画像データとして与えて単位領域の再現性を高める上で、長方形状の単位領域は好ましいものとなる。パターン形成に使用する装置、システムの特性に応じて、楕円形か長方形かを設計者が適宜選択することが望ましい。
ただし、単位領域の周縁部に不連続点が存在しない点で、長方形よりも楕円の方が好ましい。
【0050】
実施の形態5
図14に、実施の形態5で用いられる単位領域グループを示す。この単位領域グループは、
図2に示した実施の形態1における単位領域グループにおいて、3つの楕円形状の単位領域R0、R1およびR2の代わりに、3つの円形の単位領域R4、R5およびR6を含むものである。
単位領域R4、R5およびR6は、互いに異なる半径を有しており、単位領域R4の半径は、パターン形成に用いられる所定量の機能性の液をパターン形成の際と同一の所定の供給条件で供給したときに、上記の(1)式が成り立つような値に設定される。
【0051】
一方、単位領域R5の半径は、所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、上記の(1)式が成り立たなくなり、機能性の液の一部が単位領域R5の周囲にあふれるような値に設定される。
さらに、単位領域R6の半径は、所定量の機能性の液を所定の供給条件で供給したときに、上記の(1)式が成り立たなくなり、単位領域R6内の一部が機能性の液で満たされないような値に設定される。
すなわち、単位領域R4が適合タイプの単位領域となり、単位領域R5およびR6がそれぞれ非適合タイプの単位領域となる。
このような円形の単位領域R4、R5およびR6を用いても、実施の形態1と同様にして、それぞれの単位領域における機能性の液の濡れ拡がり形状を評価し、パターン形成条件の適/不適を判定することが可能となる。
【0052】
この実施の形態5においても、実施の形態2と同様に、
図15に示されるように、1つの単位領域グループ内に、上記の(1)式が成り立つ範囲内で互いに半径を変化させた複数の適合タイプの単位領域R4と、上記の(1)式が成り立たない範囲で互いに半径を変化させた複数の非適合タイプの単位領域R5と、上記の(1)式が成り立たない範囲で互いに半径を変化させた複数の非適合タイプの単位領域R6を含ませることができる。
このようにすることにより、接触角の変化をより高精度に検出することができ、現在のパターン形成条件の適/不適をより詳細に判定することが可能となる。
【0053】
また、この実施の形態5において、円形の単位領域の代わりに正方形状の単位領域を用いることもできる。この場合、上述した実施の形態4と同様に、親發変換装置を用いて基材の表面を親發パターニングする際に、レーザ、電子線、輻射線等の照射パターンをデジタル画像データとして与えて単位領域の再現性を高める上で、正方形状の単位領域は好ましいものとなる。パターン形成に使用する装置、システムの特性に応じて、円形か正方形かを設計者が適宜選択することが望ましい。