(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素数22以下のアルキルオレフィン含有量が1ppm以下、かつ、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度がいずれも5ppm以下である、化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液であって、
前記有機系処理液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する有機系現像液であり、現像液全体としての含水率が10質量%未満である、化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液。
前記有機系現像液を用いて現像する工程が、処理液用フィルターを搭載した現像装置を用いて現像する工程であって、前記有機系現像液を、前記処理液用フィルターを通過させて現像に用いる、請求項3に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線(EB)等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0012】
本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液は、炭素数22以下のアルキルオレフィン含有量が1ppm以下、かつ、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度がいずれも5ppm以下である。
有機系処理液が、上記要件を満たすことにより、特に微細化(例えば、30nmノード以下)パターンに問題視されやすいパーティクルの発生を低減できる。
換言すれば、炭素数22以下のアルキルオレフィン含有量が1ppm超過である場合、又は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの少なくともいずれかの金属元素の濃度が5ppm超過である場合、特に微細化(例えば、30nmノード以下)パターンにおいて無視し難いパーティクルが発生する傾向となる。
本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液において、炭素数22以下のアルキルオレフィン含有量は、0.5ppm以下であることが好ましく、0.3ppm以下であることがより好ましい。炭素数22以下のアルキルオレフィンは、存在しないことが最も好ましいが、存在する場合、その含有量は、通常、0.001ppm以上である。
また、本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液において、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度は、いずれも、4ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることがより好ましい。Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znは、いずれも存在しないことが最も好ましいが、これらの金属元素のいずれかが存在する場合、存在する金属元素の濃度の最小値は、通常、0.001ppm以上である。
【0013】
炭素数22以下のアルキルオレフィン含有量は、熱分解装置(フロンティアラボ製PY2020Dなど)を接続したガスクロマトグラフ質量分析法(島津製作所社製のガスクロマトグラフ質量分析装置GCMS−QP2010など)により測定できる。
Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(アジレント・テクノロジー社製の誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS装置)Agilent 7500csなど)により測定できる。
【0014】
化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液は、通常、有機系現像液、又は、有機系リンス液であり、典型的には、(ア)化学増幅型レジスト組成物により膜を形成する工程、(イ)該膜を露光する工程、及び(ウ)露光した膜を、有機系現像液を用いて現像する工程、を含むパターン形成方法における“有機系現像液”、又は、前記パターン形成方法が工程(ウ)の後に更に有し得る有機系リンス液を用いて洗浄する工程における“有機系リンス液”である。
【0015】
有機系現像液とは、有機溶剤を含有する現像液を意味し、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0016】
有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0017】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0018】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
有機系現像液は、酢酸ブチルであることが好ましい。
また、有機系現像液は、特許第5056974号の0041段落〜0063段落に例示されているような、含窒素化合物を含んでもよい。なお、現像液の貯蔵安定性などの観点からは、有機系現像液への含窒素化合物の添加は、本願のパターン形成方法を行う直前が好ましい。
【0019】
また、有機系リンス液とは、有機溶剤を含有するリンス液を意味し、有機系リンス液に対する有機溶剤の使用量は、リンス液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0020】
有機系リンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機系現像液において説明したものと同様のものを挙げることができる。
中でも、有機系リンス液は、4−メチル−2−ペンタノール、又は、酢酸ブチルであることが好ましい。
【0021】
有機系リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0022】
有機系リンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0023】
有機系リンス液には、上述の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0024】
本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液(典型的には、有機系現像液又は有機系リンス液)は、上記したように、炭素数22以下のアルキルオレフィン含有量が1ppm以下、かつ、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度がいずれも5ppm以下である。
本発明の有機系処理液は、上記条件を満たせば、その入手方法等は特に限定されないが、収容部を有する、化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液の収容容器であって、前記収容部の、前記有機系処理液に接触する内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属から形成された、化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液の収容容器を用意し、この収容容器の上記収容部に、化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液として使用される予定の有機溶剤を収容し、化学増幅型レジスト膜のパターニング時において、上記収容部から排出することにより、好適に入手できる。
【0025】
よって、本発明は、上記した本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液が収容された収容部と、該収容部を密封するシール部とを有する、化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液の収容容器であって、前記収容部の、前記有機系処理液に接触する内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属から形成された、化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液の収容容器にも関する。
【0026】
有機系処理液が、上記収容容器の収容部に収容されることにより、本発明の「炭素数22以下のアルキルオレフィン含有量が1ppm以下、かつ、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度がいずれも5ppm以下である」という要件を好適に満たすことのできる理由については完全に明らかではないが、以下のように推測される。
すなわち、収容容器において、収容部の、有機系処理液に接触する内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施されていない金属により形成されている場合には、収容部への有機系処理液の封入時から、化学増幅型レジスト膜のパターニング時における有機系処理液の収容部からの排出までの一般的な期間(例えば、1週間〜1年間)において、有機系処理液と、上記1種以上の樹脂又は防錆・金属溶出防止処理が施されていない金属との接触により、樹脂に含有されている低分子オレフィン(樹脂の合成過程において残存しているものと考えられる)が有機系処理液に溶出し、「炭素数22以下のアルキルオレフィン含有量が1ppm以下、かつ、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度がいずれも5ppm以下である」という要件を満たし難いことに対して、本発明の収容容器によれば、上記のように、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属が使用されていることにより、上記要件を満たす本発明の有機系処理液が得られるものと推測される。
【0027】
上記の収容容器が、更に、上記の収容部を密閉するためのシール部を有している場合、このシール部も、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属から形成されることが好ましい。
ここで、シール部とは、収容部と外気とを遮断可能な部材を意味し、パッキンやOリングなどを好適に挙げることができる。
【0028】
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる前記樹脂は、パーフルオロ樹脂であることが好ましい。
【0029】
パーフルオロ樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、フッ化ビニル樹脂(PVF)等を挙げることができる。
特に好ましいパーフルオロ樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂を挙げることができる。
【0030】
防錆・金属溶出防止処理が施された金属における金属としては、炭素鋼、合金鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼等を挙げることができる。
防錆・金属溶出防止処理としては、皮膜技術を適用することが好ましい。
皮膜技術には、金属被覆(各種メッキ),無機被覆(各種化成処理,ガラス,コンクリート,セラミックスなど)および有機被覆(さび止め油,塗料,ゴム,プラスチックス)の3種に大別されている。
好ましい皮膜技術としては、錆止め油、錆止め剤、腐食抑制剤、キレート化合物、可剥性プラスチック、ライニング剤による表面処理が挙げられる。
中でも、各種のクロム酸塩、亜硝酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸等のカルボン酸、カルボン酸金属石鹸、スルホン酸塩、アミン塩、エステル(高級脂肪酸のグリセリンエステルや燐酸エステル)などの腐食抑制剤、エチレンジアンテトラ酢酸、グルコン酸、ニトリロトリ酢酸、ヒドロキシエチルエチオレンジアミン三作酸、ジエチレントリアミン五作酸などのキレート化合物及びフッ素樹脂ライニングが好ましい。特に好ましいのは、燐酸塩処理とフッ素樹脂ライニングである。
また、直接的な被覆処理と比較して、直接、錆を防ぐわけではないが、被覆処理による防錆期間の延長につながる処理方法として、防錆処理にかかる前の段階である「前処理」を採用することも好ましい。
このような前処理の具体例としは、金属表面に存在する塩化物や硫酸塩などの種々の腐食因子を、洗浄や研磨によって除去する処理を好適に挙げることができる。
【0031】
次に、上記した本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液を用いた、パターン形成方法について説明する。
【0032】
本発明のパターン形成方法は、
(ア)化学増幅型レジスト組成物により膜(化学増幅型レジスト膜)を形成する工程、
(イ)該膜を露光する工程、及び
(ウ)露光した膜を、有機系現像液を用いて現像する工程、
を含む。
ここで、工程(ウ)における有機系現像液は、上記した本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液としての有機系現像液であり、その具体例及び好ましい例は上記した通りである。
【0033】
上記露光工程における露光は、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、露光工程の後に、加熱工程を有することが好ましい。
また、本発明のパターン形成方法は、アルカリ現像液を用いて現像する工程を更に有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、露光工程を、複数回有することができる。
本発明のパターン形成方法は、加熱工程を、複数回有することができる。
【0034】
本発明のパターン形成方法に於いて、露光工程、及び現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
【0035】
製膜後、露光工程の前に、前加熱工程(PB;Prebake)を含むことも好ましい。
また、露光工程の後かつ現像工程の前に、露光後加熱工程(PEB;Post Exposure Bake)を含むことも好ましい。
加熱温度はPB、PEB共に70〜130℃で行うことが好ましく、80〜120℃で行うことがより好ましい。
加熱時間は30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。
【0036】
本発明における露光装置に用いられる光源波長に制限は無いが、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、電子線等を挙げることができ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F
2エキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザーであることがより好ましい。
【0037】
また、本発明の露光を行う工程においては液浸露光方法を適用することができる。
液浸露光方法とは、解像力を高める技術として、投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たし露光する技術である。
前述したように、この「液浸の効果」はλ
0を露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA
0=sinθとすると、液浸した場合、解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。ここで、k
1及びk
2はプロセスに関係する係数である。
(解像力)=k
1・(λ
0/n)/NA
0
(焦点深度)=±k
2・(λ
0/n)/NA
02
すなわち、液浸の効果は波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0038】
液浸露光を行う場合には、(1)基板上に膜を形成した後、露光する工程の前に、及び/又は(2)液浸液を介して膜に露光する工程の後、膜を加熱する工程の前に、膜の表面を水系の薬液で洗浄する工程を実施してもよい。
【0039】
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
【0040】
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤はウエハー上のレジスト層を溶解させず、かつレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。
このような添加剤としては、例えば、水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。
【0041】
一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0042】
液浸液として用いる水の電気抵抗は、18.3MΩcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(D
2O)を用いてもよい。
【0043】
本発明の組成物を用いて形成した膜を、液浸媒体を介して露光する場合には、必要に応じて更に前述の疎水性樹脂(D)を添加することができる。疎水性樹脂(D)が添加されることにより、表面の後退接触角が向上する。膜の後退接触角は60°〜90°が好ましく、更に好ましくは70°以上である。
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態に於けるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能がレジストには求められる。
【0044】
本発明の組成物を用いて形成した膜と液浸液との間には、膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト上層部への塗布適性、放射線、特に193nmの波長を有した放射線に対する透明性、及び液浸液難溶性が挙げられる。トップコートは、レジストと混合せず、更にレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、193nmにおける透明性という観点からは、芳香族を含有しないポリマーが好ましい。
具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、及びフッ素含有ポリマーなどが挙げられる。前述の疎水性樹脂(D)はトップコートとしても好適なものである。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズが汚染されるため、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
【0045】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程が膜の現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性であることが好ましいが、膜との非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がないか又は小さいことが好ましい。この場合、解像力を向上させることが可能となる。露光光源がArFエキシマレーザー(波長:193nm)の場合には、液浸液として水を用いることが好ましいため、ArF液浸露光用トップコートは、水の屈折率(1.44)に近いことが好ましい。また、透明性及び屈折率の観点から、トップコートは薄膜であることが好ましい。
【0046】
トップコートは、膜と混合せず、更に液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。更に、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【0047】
本発明において膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiO
2やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。更に、必要に応じて有機反射防止膜を膜と基板の間に形成させても良い。
【0048】
本発明のパターン形成方法が、アルカリ現像液を用いて現像する工程を更に有する場合、アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%質量の水溶液が望ましい。
なお、有機系現像液による現像と、アルカリ現像液による現像を組み合わせることにより、US8,227,183BのFIG.1〜11などで説明されているように、マスクパターンの1/2の線幅のパターンを解像することが期待できる。
【0049】
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0050】
露光した膜を有機系現像液を用いて現像する工程における有機系現像液は、上記したように、本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液としての有機系現像液であり、現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm
2以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm
2以下、更に好ましくは1mL/sec/mm
2以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm
2以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜・レジストパターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm
2)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0051】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。
【0052】
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0053】
有機系現像液を用いて現像する工程に用いられる現像装置は、有機系現像液を塗布可能な塗布現像装置であることが好ましく、塗布現像装置としては、東京エレクトロン社製 LITHIUS、LITHIUS i+、LITHIUS Pro、LITHIUS Pro−i、LITHIUS Pro V、LITHIUS Pro V−i、及び、SOKUDO社製 RF
3S、SOKUDO DUO等が挙げられる。
これら塗布現像装置には、標準的に、POUフィルターと呼ばれる接続薬液用フィルター(処理液用フィルター)が搭載されている。
よって、現像工程において、POU搭載塗布現像装置(処理液用フィルターが搭載された現像装置)を使用するとともに、本発明のパターニング用有機系処理液(特に有機系現像液)をPOUフィルターを通過させて現像に使用してもよい。
【0054】
POU搭載塗布現像装置での使用時には、以下の2点を実施することが好ましい。
1.新品POUフィルター使用時は、POUフィルターを装置にセット直後に使用する処理液を30L以上の量で通液する。
2.6時間以上使用しない時間が空いた場合には、使用直前に1L以上のダミーディスペンスを実施する。
【0055】
本発明のパターン形成方法は、有機系現像液を用いて現像する工程の後に、更に、有機系リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
ここで、有機系リンス液は、上記した本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液としての有機系リンス液であり、その具体例及び好ましい例は上記した通りである。
【0056】
有機系現像液を用いて現像する工程の後に、より好ましくは、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機系リンス液を用いて洗浄する工程を行い、更に好ましくは、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、特に好ましくは、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、最も好ましくは、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
ここで、リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
【0057】
あるいは、有機系リンス液として酢酸ブチルを用いて洗浄する工程も好ましい。
【0058】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0059】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0060】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0061】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0062】
本発明のパターン形成方法は、有機系現像液を用いて現像する工程の後に、更に、有機系リンス液を用いて洗浄する工程を含むとともに、有機系現像液が、上記した本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液としての酢酸ブチルであり、かつ、有機系リンス液が、上記した本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液としての酢酸ブチルであることがより好ましい。
【0063】
本発明のパターン形成方法において使用される化学増幅型レジスト組成物は、露光を契機とする系中の化学反応が触媒的に連鎖するタイプのレジスト組成物であれば特に限定されないが、典型的には、以下に示す成分の一部または全てを含む化学増幅型レジストが好ましく用いられる。
【0064】
[1](A)酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂
酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂(A)としては、例えば、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、極性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(A)」ともいう)を挙げることができる。
酸分解性基は、極性基を酸の作用により分解し脱離する基で保護された構造を有することが好ましい。好ましい極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基が挙げられる。
【0065】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R
36)(R
37)(R
38)、−C(R
36)(R
37)(OR
39)、−C(R
01)(R
02)(OR
39)等を挙げることができる。
式中、R
36〜R
39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R
36とR
37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R
01及びR
02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0066】
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。また、本発明のパターン形成方法をKrF光またはEUV光による露光、あるいは電子線照射により行う場合、フェノール性水酸基を酸脱離基により保護した酸分解性基を用いてもよい。
【0067】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
この繰り返し単位としては、以下が挙げられる。
具体例中、Rxは、水素原子、CH
3、CF
3、又はCH
2OHを表す。Rxa、Rxbはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xa
1は、水素原子、CH
3、CF
3、又はCH
2OHを表す。Zは、置換基を表し、複数存在する場合、複数のZは互いに同じであっても異なっていてもよい。pは0又は正の整数を表す。Zの具体例及び好ましい例は、Rx
1〜Rx
3などの各基が有し得る置換基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0071】
下記具体例において、Xaは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0076】
下記具体例中、Xa
1は、水素原子、CH
3、CF
3、又はCH
2OHを表す。
【0078】
酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
樹脂(A)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、15モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、25モル%以上であることが更に好ましく、40モル%以上であることが特に好ましい。
【0080】
樹脂(A)は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
以下にラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
2種以上のラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を併用することも可能である。
【0085】
樹脂(A)がラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有する場合、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、5〜60モル%が好ましく、より好ましくは5〜55モル%、更に好ましくは10〜50モル%である。
【0086】
また、樹脂(A)は、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。如何に具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下の具体例中のR
A1は、水素原子又はアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。
【0088】
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有していても良い。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0091】
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を有してもよい。
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。樹脂(A)が酸基を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(A)における酸基を有する繰り返し単位の含有量は、通常、1モル%以上である。
【0092】
酸基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、RxはH、CH
3、CH
2OH又はCF
3を表す。
【0095】
樹脂(A)は、更に極性基(例えば、前記酸基、ヒドロキシル基、シアノ基)を持たない脂環炭化水素構造及び/または芳香環構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH
3、CH
2OH、又はCF
3を表す。
【0099】
本発明の組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の組成物に用いられる樹脂(A)は実質的には芳香環を有さない(具体的には、樹脂中、芳香族基を有する繰り返し単位の比率が好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、理想的には0モル%、すなわち、芳香族基を有さない)ことが好ましく、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0100】
本発明における樹脂(A)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。樹脂(A)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
本発明の組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の組成物に用いられる樹脂(A)は実質的には芳香環を有さない(具体的には、樹脂中、芳香族基を有する繰り返し単位の比率が好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、理想的には0モル%、すなわち、芳香族基を有さない)ことが好ましく、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
本発明の組成物が、後述する樹脂(D)を含んでいる場合、樹脂(A)は、樹脂(D)との相溶性の観点から、フッ素原子及びケイ素原子を含有しないことが好ましい。
【0101】
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
【0102】
本発明の組成物にKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(EUVなど)を照射する場合には、樹脂(A)は、芳香環を有する繰り返し単位を有してもよい。芳香環を有する繰り返し単位としては、特に限定されず、また、前述の各繰り返し単位に関する説明でも例示しているが、スチレン単位、ヒドロキシスチレン単位、フェニル(メタ)アクリレート単位、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート単位などが挙げられる。樹脂(A)としては、より具体的には、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位と、酸分解性基によって保護されたヒドロキシスチレン系繰り返し単位とを有する樹脂、上記芳香環を有する繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸のカルボン酸部位が酸分解性基によって保護された繰り返し単位を有する樹脂、などが挙げられる。
【0103】
本発明における樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成、及び精製することができる。この合成方法及び精製方法としては、例えば特開2008−292975号公報の0201段落〜0202段落等の記載を参照されたい。
【0104】
本発明における樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、上記のように7,000以上であり、好ましくは7,000〜200,000であり、より好ましくは7,000〜50,000、更により好ましくは7,000〜40,000、特に好ましくは7,000〜30,000である。重量平均分子量が7000より小さいと、有機系現像液に対する溶解性が高くなりすぎ、精密なパターンを形成できなくなる懸念が生じる。
【0105】
分散度(分子量分布)は、通常1.0〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.6、更に好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.4〜2.0の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、かつ、レジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0106】
本発明の化学増幅型レジスト組成物において、樹脂(A)の組成物全体中の配合率は、全固形分中30〜99質量%が好ましく、より好ましくは60〜95質量%である。
また、本発明において、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0107】
以下、樹脂(A)の具体例(繰り返し単位の組成比はモル比である)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下では、後述する、酸発生剤(B)に対応する構造が樹脂(A)に担持されている場合の態様も例示している。
【0111】
以下に例示する樹脂は、特に、EUV露光または電子線露光の際に、好適に用いることができる樹脂の例である。
【0120】
[2]活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)
本発明における組成物は、通常、更に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物であることが好ましい。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0121】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
酸発生剤の中で、特に好ましい例を以下に挙げる。
【0130】
酸発生剤は、公知の方法で合成することができ、例えば、特開2007−161707号公報、特開2010−100595号公報の[0200]〜[0210]、国際公開第2011/093280号の[0051]〜[0058]、国際公開第2008/153110号の[0382]〜[0385]、特開2007−161707号公報等に記載の方法に準じて合成することができる。
酸発生剤は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の組成物中の含有量は、化学増幅型レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%である。
【0131】
なお、レジスト組成物によっては、酸発生剤に対応する構造が、前記樹脂(A)に担持されている態様(B´)もある。このような態様として具体的には、特開2011−248019に記載の構造(特に、0164段落から0191段落に記載の構造、段落0555の実施例で記載されている樹脂に含まれる構造)などが挙げられる。ちなみに、酸発生剤に対応する構造が、前記樹脂(A)に担持されている態様であっても、レジスト組成物は、追加的に、前記樹脂(A)に担持されていない酸発生剤を含んでもよい。
態様(B´)として、以下のような繰り返し単位が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0133】
[3](C)溶剤
化学増幅型レジスト組成物は、通常、溶剤(C)を含有する。
化学増幅型レジスト組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有しても良いモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
これらの溶剤の具体例は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書[0441]〜[0455]に記載のものを挙げることができる。
【0134】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、水酸基を含有しない溶剤としては前述の例示化合物が適宜選択可能であるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有しても良いモノケトン化合物、環状ラクトン、酢酸アルキルなどが好ましく、これらの内でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0135】
[4]疎水性樹脂(D)
本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、特に液浸露光に適用する際、疎水性樹脂(以下、「疎水性樹脂(D)」又は単に「樹脂(D)」ともいう)を含有してもよい。なお、疎水性樹脂(D)は、前記樹脂(A)とは異なることが好ましい。
これにより、膜表層に疎水性樹脂(D)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、水に対するレジスト膜表面の静的/動的な接触角を向上させ、液浸液追随性を向上させることができる。
疎水性樹脂(D)は前述のように界面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
【0136】
疎水性樹脂(D)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含有されたCH
3部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがさらに好ましい。
【0137】
疎水性樹脂(D)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
また、疎水性樹脂(D)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
疎水性樹脂(D)の組成物中の含有量は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜8質量%がより好ましく、0.1〜7質量%が更に好ましい。
【0138】
疎水性樹脂(D)は、樹脂(A)同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0.01〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%、0.05〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のない化学増幅型レジスト組成物が得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2の範囲である。
【0139】
疎水性樹脂(D)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
反応溶媒、重合開始剤、反応条件(温度、濃度等)、及び、反応後の精製方法は、樹脂(A)で説明した内容と同様であるが、疎水性樹脂(D)の合成においては、反応の濃度が30〜50質量%であることが好ましい。より詳細には、特開2008−292975号公報の0320段落〜0329段落付近の記載を参照されたい。
【0140】
以下に疎水性樹脂(D)の具体例を示す。また、下記表に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0151】
[5]塩基性化合物
本発明における化学増幅型レジスト組成物は、塩基性化合物を含有することが好ましい。
化学増幅型レジスト組成物は、塩基性化合物として、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(以下、「化合物(N)」ともいう)を含有することが好ましい。
【0152】
化合物(N)は、塩基性官能基又はアンモニウム基と、活性光線又は放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有する化合物(N−1)であることが好ましい。すなわち、化合物(N)は、塩基性官能基と活性光線若しくは放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有する塩基性化合物、又は、アンモニウム基と活性光線若しくは放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有するアンモニウム塩化合物であることが好ましい。
【0155】
これらの化合物の合成は、一般式(PA−I)で表される化合物又はそのリチウム、ナトリウム、カリウム塩と、ヨードニウム又はスルホニウムの水酸化物、臭化物、塩化物等から、特表平11−501909号公報又は特開2003−246786号公報に記載されている塩交換法を用いて容易に合成できる。また、特開平7−333851号公報に記載の合成方法に準ずることもできる。
【0158】
これらの化合物は、特開2006−330098号公報の合成例などに準じて合成することができる。
化合物(N)の分子量は、500〜1000であることが好ましい。
【0159】
本発明における化学増幅型レジスト組成物は化合物(N)を含有してもしていなくてもよいが、含有する場合、化合物(N)の含有量は、化学増幅型レジスト組成物の固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0160】
本発明における化学増幅型レジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物として、前記化合物(N)とは異なる、塩基性化合物(N’)を含有していてもよい。
塩基性化合物(N’)としては、好ましくは、下記式(A’)〜(E’)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0162】
一般式(A’)と(E’)において、
RA
200、RA
201及びRA
202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、RA
201とRA
202は、互いに結合して環を形成してもよい。RA
203、RA
204、RA
205及びRA
206は、同一でも異なってもよく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)を表す。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
これら一般式(A’)と(E’)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0163】
塩基性化合物(N’)の好ましい具体例としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい具体例としては、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0164】
イミダゾール構造を有する化合物としては、イミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては、1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としては、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としては、オニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタンー1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン構造を有する化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0165】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。この具体例としては、米国特許出願公開2007/0224539号明細書の[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0166】
また、塩基性化合物の1種として、酸の作用により脱離する基を有する含窒素有機化合物を用いることもできる。この化合物の例として、例えば、化合物の具体例を以下に示す。
【0168】
上記化合物は、例えば、特開2009−199021号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
【0169】
また、塩基性化合物(N’)としては、アミンオキシド構造を有する化合物も用いることもできる。この化合物の具体例としては、トリエチルアミンピリジン N−オキシド、トリブチルアミン N−オキシド、トリエタノールアミン N−オキシド、トリス(メトキシエチル)アミン N−オキシド、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン=オキシド、2,2’,2”−ニトリロトリエチルプロピオネート N−オキシド、N−2−(2−メトキシエトキシ)メトキシエチルモルホリン N−オキシド、その他特開2008−102383に例示されたアミンオキシド化合物が使用可能である。
【0170】
塩基性化合物(N’)の分子量は、250〜2000であることが好ましく、更に好ましくは400〜1000である。LWRのさらなる低減及び局所的なパターン寸法の均一性の観点からは、塩基性化合物の分子量は、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、600以上であることが更に好ましい。
【0171】
これらの塩基性化合物(N’)は、前記化合物(N)と併用していてもよいし、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0172】
本発明における化学増幅型レジスト組成物は塩基性化合物(N’)を含有してもしていなくてもよいが、含有する場合、塩基性化合物(N’)の使用量は、化学増幅型レジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0173】
また、本発明における化学増幅型レジスト組成物は、特開2012−189977号公報の式(I)に含まれる化合物、特開2013−6827号公報の式(I)で表される化合物、特開2013−8020号公報の式(I)で表される化合物、特開2012−252124号公報の式(I)で表される化合物などのような、1分子内にオニウム塩構造と酸アニオン構造の両方を有する化合物(以下、ベタイン化合物ともいう)も好ましく用いることができる。このオニウム塩構造としては、スルホニウム、ヨードニウム、アンモニウム構造が挙げられ、スルホニウムまたはヨードニウム塩構造であることが好ましい。また、酸アニオン構造としては、スルホン酸アニオンまたはカルボン酸アニオンが好ましい。この化合物例としては、例えば以下が挙げられる。
【0175】
[6]界面活性剤(F)
本発明における化学増幅型レジスト組成物は、更に界面活性剤を含有してもしなくても良く、含有する場合、フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子とケイ素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0176】
本発明における化学増幅型レジスト組成物が界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられ、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(DIC(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106、KH−20(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D、222D((株)ネオス製)等である。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0177】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)若しくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
上記に該当する界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(DIC(株)製)、C
6F
13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C
3F
7基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体等を挙げることができる。
【0178】
また、本発明では、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0179】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0180】
化学増幅型レジスト組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、化学増幅型レジスト組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
一方、界面活性剤の添加量を、化学増幅型レジスト組成物の全量(溶剤を除く)に対して、10ppm以下とすることで、疎水性樹脂の表面偏在性があがり、それにより、レジスト膜表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性を向上させることが出来る。
【0181】
[7]その他添加剤(G)
本発明における化学増幅型レジスト組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有してもよい。このようなカルボン酸オニウム塩は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書[0605]〜[0606]に記載のものを挙げることができる。
化学増幅型レジスト組成物がカルボン酸オニウム塩を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0182】
また、本発明の化学増幅型レジスト組成物は、必要に応じていわゆる酸増殖剤を含んでもよい。酸増殖剤は、特に、EUV露光または電子線照射により本発明のパターン形成方法を行う際に使用することが好ましい。酸増殖剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば以下が挙げられる。
【0184】
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、必要に応じて更に染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
本発明における化学増幅型レジスト組成物は、解像力向上の観点から、膜厚30〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚30〜200nmで使用されることが好ましい。
本発明における化学増幅型レジスト組成物の固形分濃度は、通常1.0〜10質量%であり、好ましくは、2.0〜5.7質量%、更に好ましくは2.0〜5.3質量%である。固形分濃度を前記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができる。
固形分濃度とは、化学増幅型レジスト組成物の総重量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の重量の重量百分率である。
【0185】
本発明における化学増幅型レジスト組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002−62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0186】
本発明は、上記した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例】
【0187】
<実施例1〜8及び比較例1〜4>
<収容容器>
収容容器として、以下の各容器を用意した。
容器1:Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム(接液内面;PFA樹脂ライニング)
容器2:JFE社製 鋼製ドラム缶(接液内面;燐酸亜鉛皮膜)
容器3:コダマ樹脂工業(株)製 ケミカルドラムPS−200−AW(接液内面;高密度ポリエリレン樹脂)
容器4:コダマ樹脂工業(株)製 ピュアドラムPL−200−CW(接液内面;高密度ポリエリレン樹脂)
容器5:Entegris社製 FluoroPure三層HDPEドラム(接液内面;高密度ポリエチレン樹脂)
容器6:リサイクル鋼製ドラム缶(接液内面;不明)
【0188】
<現像液の調製>
蒸留直後の酢酸ブチルを上記各容器に充填し、室温(25℃)にてX日間(Xの値は下記表1に示した)保管した。
容器内の酢酸ブチルを取り出し、ポアサイズ50nmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターでろ過し、これを、評価用現像液とした。
【0189】
<ウエットパーティクル評価>
クラス1000のクリーンルームに設置されたAMAT社製ウエハー欠陥評価装置ComPLUS3T(検査モード30T)により8インチシリコンウエハー上のパーティクル数(N1)を検査した。
このシリコンウエハー上に上記評価用現像液としての酢酸ブチルを5mL吐出し、シリコンウエハーを、1000回転/分で1.6秒間回転させることにより、酢酸ブチルをシリコンウエハー上で拡散させ、20秒間静置後、2000回転/分で20秒間スピン乾燥させた。
24時間後に、このシリコンウエハー上のパーティクル数(N2)をAMAT社製ウエハー欠陥評価装置ComPLUS3T(検査モード30T)により検査し、N2−N1をウエットパーティクル数(N)とした。
【0190】
<有機不純物濃度分析>
東京化成工業株式会社製の1−ドコセン 10mgを蒸留直後の酢酸ブチル1kgに溶解させた。この溶液を50μL熱分解装置用サンプル容器に採取し、自然乾燥させた。このサンプルを、フロンティアラボ社製熱分解装置PY2020Dを接続した株式会社島津製作所社製のガスクロマトグラフ質量分析装置GCMS−QP2010により、ガスクロマトグラフ質量分析を実施し、そのスペクトルから1−ドコセンのピーク面積(S
0)を求めた。
【0191】
ガスクロマトグラフ質量分析における熱分解条件を以下に示す。
インジェクション、インターフェイス温度:300℃、
カラム:熱分解装置カラムフロンティアラボ製UA−5(30m×0.25mmD 膜厚0.25μm)
カラム温度シーケンス:50℃(2分)→15℃/分→280℃(15分)
スプリット比:1/23.5
検出器:0.8kV
熱分解炉温度:300℃
【0192】
次に、上記評価用現像液としての酢酸ブチルを室温(25℃)でエバポレーターを使用して10分の1の重量に濃縮し、その液を50μL熱分解装置用サンプル容器に採取し自然乾燥させた。このサンプルを、上記したガスクロマトグラフ質量分析装置によりガスクロマトグラフ質量分析を実施し、炭素数22以下のポリオレフィン化合物に相当するスペクトルピーク面積の和(S
1)を求め、次式にて有機不純物濃度を算出した。
有機不純物濃度(ppm)=S
1/S
0
【0193】
<メタル不純物濃度分析>
各元素濃度が10ppmに調製されたspex社製ICP汎用混合液 XSTC−622(35元素)10μLにN−メチルピロリドン(NMP)10mLを加え希釈し、メタル分析用10ppb用標準液を調製した。
また、NMPの量を変更する以外は同様にして、メタル分析用5ppb標準液を調製した。更に、希釈に使用したNMPをメタル分析用0ppb標準液とした。
メタル不純物としてのターゲットメタルは、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Znの12元素とし、調液した0ppb,5ppb,10ppbのメタル分析用標準液をアジレント・テクノロジー社製の誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS装置)Agilent7500csで測定し、メタル濃度検量線を作成した。
次いで、メタル分析用標準液を、上記評価用現像液としての酢酸ブチルに変更した以外は、上記と同様の手法により、誘導結合プラズマ質量分析を実施することで、酢酸ブチルのメタル不純物濃度の分析を行った。
【0194】
上記の各評価・分析の結果を下記表1に示す。
【0195】
【表4】
【0196】
上表中、メタル不純物濃度は、12元素のメタル濃度の内、最も濃度の高い値を記載した。
【0197】
上表のように、本発明の化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液に相当する、実施例の酢酸ブチルを用いることにより、特に微細化(例えば、30nmノード以下)パターンに問題視されやすいパーティクルの個数を大幅に減少させることができることが分かった。
【0198】
<合成例(樹脂A−1の合成)>
シクロヘキサノン 102.3質量部を窒素気流下、80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、下記構造式M−1で表されるモノマー 22.2質量部、下記構造式M−2で表されるモノマー 22.8質量部、下記構造式M−3で表されるモノマー 6.6質量部、シクロヘキサノン 189.9質量部、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕2.40質量部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に2時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチル(質量比9:1)で再沈殿、ろ過し、得られた固体を真空乾燥することで、本発明の樹脂(A−1)を41.1質量部得た。
【0199】
【化55】
【0200】
得られた樹脂のGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))から求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は、Mw=9500、分散度はMw/Mn=1.60であった。
13C−NMRにより測定した組成比(モル比)は40/50/10であった。
【0201】
<樹脂(A)>
以下、同様にして、樹脂A−2〜A−3を合成した。以下、樹脂A−1も含めて、樹脂A−2〜A−3における繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を以下に示す。
【0202】
【化56】
【0203】
<酸発生剤>
酸発生剤としては、以下の化合物を用いた。
【0204】
【化57】
【0205】
<塩基性化合物>
塩基性化合物として、以下の化合物を用いた。
【0206】
【化58】
【0207】
<疎水性樹脂>
樹脂Aと同様にして、樹脂D−1〜D−3を合成した。樹脂D−1〜D−3における繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を以下に示す。
【0208】
【化59】
【0209】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、以下のものを用いた。
W−1: メガファックF176(DIC(株)製;フッ素系)
W−2: メガファックR08(DIC(株)製;フッ素及びシリコン系)
【0210】
<溶剤>
溶剤としては、以下のものを用いた。
SL−1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL−2: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
【0211】
<リンス液の調製>
蒸留直後の4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)を上記容器2に充填し室温(25℃)にて30日間保管した。
容器2内のMIBCを取り出し、ポアサイズ50nmのPTFE製フィルターでろ過し、これをリンス液1とした。
【0212】
<リソグラフィー評価>
下記表2に示す成分を同表に示す溶剤に固形分で3.8質量%溶解させ、それぞれを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、化学増幅型レジスト組成物を調製した。
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚95nmの反射防止膜を形成した。その上に、上記のようにして調製した化学増幅型レジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベークを行い、膜厚90nmの化学増幅型レジスト膜(レジスト膜1)を形成した。
【0213】
【表5】
【0214】
<実施例9:現像/リンスプロセス>
表2の化学増幅型レジスト組成物I−1により形成されたレジスト膜1に、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー[ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole(outerσ:0.981/innerσ:0.895)、Y偏向]を用い、ハーフトーンマスクを介してパターン露光した。液浸液としては超純水を用いた。その後、105℃で60秒間ベークを実施した。次いで、現像液としての実施例4の酢酸ブチルで30秒間現像し、上記リンス液1で20秒間リンスし、パターン(レジストパターン基板1)を得た。
【0215】
<実施例10:リンスレスプロセス>
表2の化学増幅型レジスト組成物I−2により形成されたレジスト膜1に、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー[ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole(outerσ:0.981/innerσ:0.895)、Y偏向]を用い、ハーフトーンマスクを介してパターン露光した。液浸液としては超純水を用いた。その後、105℃で60秒間ベークを実施した。次いで、現像液としての実施例8の酢酸ブチルで30秒間現像し、2000回転/分で20秒間現像液をスピン乾燥し、パターン(レジストパターン基板2)を得た。
【0216】
<実施例11:現像/リンスプロセス>
表2の化学増幅型レジスト組成物I−3により形成されたレジスト膜1に、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー[ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole(outerσ:0.981/innerσ:0.895)、Y偏向]を用い、ハーフトーンマスクを介してパターン露光した。液浸液としては超純水を用いた。その後、105℃で60秒間ベークを実施した。次いで、現像液としての実施例8の酢酸ブチルで30秒間現像し、リンス液としての実施例8の酢酸ブチルで20秒間リンスし、パターン(レジストパターン基板3)を得た。
【0217】
レジストパターン基板1〜3を測長走査型電子顕微鏡(日立社製CG4100)にて観察したところ、いずれの基板もラインサイズ及びスペースサイズが1:1の45nmパターンがパターン倒れなく、良好に形成できていることを確認した。
【0218】
【表6】
【0219】
<リソグラフィー評価2>
表2のレジスト組成物I−1と同一の組成を持つレジスト組成物を収容する容器を塗布現像装置(SOKUDO社製 RF
3S)のレジストラインに接続した。
また、18Lキャニスター缶に入った現像液としての実施例5の酢酸ブチルを上記塗布現像装置に接続した。
また、18Lキャニスター缶に入った上記リンス液1を上記塗布現像装置に接続した。
現像液用及びリンス液用のPOUフィルターとして、それぞれ、インテグリス製オプチマイザーST−L(製品型番AWATMLKM1)を、上記塗布現像装置に搭載した後、塗布現像装置における通常の方法でフィルターのエア抜きを実施し、連続して30Lの処理液(現像液及びリンス液の各々)をPOUフィルターに通過させた。
上記塗布現像装置を使用して、シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚95nmの反射防止膜を形成した。その上に上記レジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベークを行い、膜厚90nmの化学増幅型レジスト膜(レジスト膜2)を形成した。
【0220】
<実施例12:現像/リンスプロセス>
レジスト膜2に、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー[ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole(outerσ:0.981/innerσ:0.895)、Y偏向]を用い、ハーフトーンマスクを介してパターン露光した。液浸液としては超純水を用いた。その後、105℃で60秒間ベークを実施した。次いで、上記塗布現像装置により、上記現像液(すなわち実施例5の酢酸ブチル)で30秒間現像し、上記リンス液1で20秒間リンスし、パターン(レジストパターン基板4)を得た。
【0221】
<実施例13:リンスレスプロセス>
レジスト膜2に、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー[ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole(outerσ:0.981/innerσ:0.895)、Y偏向]を用い、ハーフトーンマスクを介してパターン露光した。液浸液としては超純水を用いた。その後、105℃で60秒間ベークを実施した。次いで、上記塗布現像装置により、現像液としての上記現像液(すなわち実施例5の酢酸ブチル)で30秒間現像し、2000回転/分で20秒間現像液をスピン乾燥し、パターン(レジストパターン基板5)を得た。
【0222】
レジストパターン基板4及び5を、測長走査型電子顕微鏡(日立社製CG4100)にて観察したところ、いずれの基板もラインサイズ及びスペースサイズが1:1の45nmパターンがパターン倒れなく、良好に形成できていることを確認した。
【0223】
<実施例14>
上記と同様のリソグラフィー評価を、前掲の「特に、EUV露光または電子線露光の際に、好適に用いることができる樹脂の例」として挙げた樹脂を適宜用い、ArFエキシマレーザー液浸露光ではなく、EUV光および電子線による露光で行った場合も、良好にパターン形成を行うことができた。
【0224】
<実施例15>
化学増幅型レジスト組成物I−3で使用の塩基性化合物C−3を、上述のベタイン化合物C1−1〜C1−8に替えた以外は同様の組成物8例を調製し、実施例11と同様の工程により評価を行ったところ、パターン形成を行うことができた。
【0225】
<実施例16>
実施例9で、酢酸ブチルを塗布現像装置に接続する直前に、酢酸ブチルにトリn−オクチルアミンを加えた以外は同様にして評価を行い、パターン形成を行うことができた。