特許第5982577号(P5982577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5982577金属がコーティングされた電極活物質の前駆体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5982577
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】金属がコーティングされた電極活物質の前駆体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20160818BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20160818BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160818BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20160818BHJP
   C01G 53/00 20060101ALN20160818BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/36 C
   C25D7/00 G
   !C01G53/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-532982(P2015-532982)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2015-536018(P2015-536018A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】KR2013010794
(87)【国際公開番号】WO2014081269
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0134343
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】デ・ジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ホン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・コン
(72)【発明者】
【氏名】スン・シク・シン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−331845(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0056106(KR,A)
【文献】 特表2011−516384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 62
C25D 7/00
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用電極活物質の前駆体の製造方法であって、
前記電極活物質の前駆体は、遷移金属水和物からなる1次前駆体の表面に、金属物質が均一にコーティングされており、
本方法が、
(i)下記化学式1で表される1次前駆体を製造する過程と、
(ii)前記1次前駆体に、電解分解を通じて前記金属物質をコーティングする過程と、
(iii)前記コーティングされた1次前駆体を乾燥させる過程と、
を含み、
前記(ii)過程が、前記金属物質が酸性水溶液でイオン化され、中間体を経て、再び還元されて行われ、
前記1次前駆体が、下記化学式1で表されることを特徴とする、電極活物質の前駆体の製造方法
M(OH1−z(化学式1)
上記式中、
0.5<1−z<1、
Mは、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti及びFeからなる群から選択された1種以上の元素を主成分として含む。
【請求項2】
前記中間体が、金属塩であることを特徴とする、請求項に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項3】
前記金属塩が、硫酸塩または硝酸塩であることを特徴とする、請求項に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項4】
前記電解分解が、触媒を通じて行われることを特徴とする、請求項1に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項5】
前記触媒が、ZnCl系、CoCl系、MnCl系、NiCl系、及びSnCl系からなる群から選択される1つ以上の触媒であることを特徴とする、請求項に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項6】
前記Mが、NiMnMeであり、
ここで、a+b≦1、0.3≦a≦0.9、0.1≦b≦0.8、0≦c≦0.2であり、Meは、Co、Al、Mg、Ti、Sr、Zn、B、Ca、Cr、Si、Ga、Sn、P、V、Sb、Nb、Ta、Mo、W、Zr、Y及びFeからなる群から選択された1種以上の元素であることを特徴とする、請求項に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項7】
前記Meが、Coを含むことを特徴とする、請求項に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項8】
前記金属物質が、電解分解が可能な遷移金属、P及びAlからなる群から選択された1種以上の元素を含む物質であることを特徴とする、請求項1に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項9】
前記遷移金属が、Ni、Co、Mn、Fe、Sn、Mo、Nd、Zr及びZnからなる群から選択された1種以上の元素であることを特徴とする、請求項に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項10】
前記金属物質のコーティング厚さが、0.1〜1μmであることを特徴とする、請求項1に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項11】
前記金属物質が、電極活物質の前駆体の全重量を基準として、0.01〜5%含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【請求項12】
前記金属物質が、1次前駆体の表面の全部または一部にコーティングされていることを特徴とする、請求項1に記載の電極活物質の前駆体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属がコーティングされた電極活物質の前駆体及びその製造方法に係り、より詳細には、リチウム二次電池用電極活物質の前駆体であって、電極活物質の前駆体が、遷移金属水和物からなる1次前駆体の表面に、電解分解を通じてイオン化可能な金属物質が均一にコーティングされている電極活物質の前駆体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発及び需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急増しており、そのような二次電池の中でも、高いエネルギー密度と放電電圧のリチウム二次電池に対して多くの研究が行われており、また、商用化されて広く使用されている。そのうち、リチウム二次電池は、優れた電極寿命及び高い高速充放電効率によって最も多く使用されている電池である。
【0003】
一般に、リチウム二次電池は、電極活物質としてリチウム遷移金属酸化物を含む正極、カーボン系活物質を含む負極、及び正極と負極との間にポリオレフィン系多孔性分離膜が介在している電極組立体に、LiPFなどのリチウム塩を有した非水性電解液が含浸されている構造からなっている。
【0004】
ここで、正極活物質としては、主にリチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物、リチウムニッケル系酸化物、リチウム複合酸化物などが使用されており、負極活物質としては、主に炭素系物質が使用されている。充電時には、正極活物質のリチウムイオンが放出されて負極の炭素層に挿入され、放電時には、炭素層のリチウムイオンが放出されて正極活物質に挿入され、非水性電解液は、負極と正極との間でリチウムイオンを移動させる媒質の役割を果たす。このようなリチウム二次電池は、基本的に電池の作動電圧範囲で安定しなければならず、十分に速い速度でイオンを伝達できる性能を有しなければならない。
【0005】
しかし、フッ素(F)を含有する電解液を使用し、負極活物質として炭素材料を使用する二次電池は、充放電が進行するにつれて、正極活物質の金属成分が電解液に溶出され、リチウムが炭素材料の表面に析出され、それにより電解液が炭素材料において分解されるという問題を有している。このような金属成分の析出及び電解液の分解は、高温保存時にさらに深刻に発生し、これは、電池の残存容量と回復容量の減少をもたらす。
【0006】
一方、正極活物質として使用されるリチウム遷移金属酸化物は、電気伝導性が低いという問題があり、リチウム遷移金属酸化物と電解液の反応が高温で促進され、正極の抵抗を増加させる副産物を生成することによって、高温での貯蔵寿命が急激に低下するという問題もまた有している。
【0007】
このような正極と負極の問題点を解決するために、一部の先行技術は、正極と負極の活物質表面を所定の物質でコーティングするか、または表面処理する技術を開示している。
【0008】
例えば、特開2000−12026号は、Ni、Co、Cu、Mo、Wなどの金属酸化物などを炭素系負極活物質の表面にコーティングする方法を開示している。また、正極活物質を伝導性物質でコーティングすることで、正極活物質と電解質または高温で生成された副産物との接触界面抵抗を低くする方法として、導電性高分子を正極活物質にコーティングする方法などが知られている。
【0009】
また、韓国公開特許第2003−0088247号は、(a)ドーピング元素−含有コーティング液に金属原料物質を添加して、金属原料物質(metal−containing source)を表面処理するステップ(ここで、前記金属原料物質は、リチウムを除外したコバルト、マンガン、ニッケル、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む物質である)と、(b)前記表面処理された金属原料物質を乾燥して活物質前駆体を製造するステップと、(c)前記活物質前駆体とリチウム原料物質(lithium−containing source)を混合した後、熱処理するステップとを含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を開示している。
【0010】
しかし、焼成された電極活物質にコーティングするにおいて、水溶性物質を使用することができず、酸化物の使用時、既に合成された物質にコーティングを円滑に進行することに困難がある。
【0011】
OH基のコーティングに基づく一部の先行技術も存在するが、これもまた均一な膜の形成を確認しにくく、pHなどに合う限定的な物質のみが使用可能であるため、コーティング組成にも限界がある。
【0012】
したがって、このような問題点を根本的に解決することができる技術に対する必要性が高い実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−12026号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2003−0088247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の問題点及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0015】
本出願の発明者らは、鋭意研究と様々な実験を重ねた結果、電解分解を通じて、遷移金属水和物からなる1次前駆体に金属物質をコーティングする場合、電極活物質合成過程でコーティング物質が物質の内部に浸透せず、表面で均一な膜を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
したがって、本発明の目的は、電解分解を通じて金属物質が均一にコーティングされた電極活物質の前駆体及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような目的を達成するための本発明に係るリチウム二次電池用電極活物質の前駆体は、遷移金属水和物からなる1次前駆体の表面に、電解分解を通じてイオン化可能な金属物質が均一にコーティングされている。
【0018】
一具体例において、前記電解分解は、前記金属物質が酸性水溶液でイオン化され、中間体を経て、再び還元される過程で進行してもよい。
【0019】
具体的に、コーティングしようとする金属物質を(+)極と(−)極の極板とし、硫酸水溶液などの酸性水溶液に浸した状態で電気を印加すると、(+)極で金属が電子を放出して金属イオンにイオン化され、前記金属イオンが水溶液上の硫酸イオンと反応して金属塩の中間体を経た後、(−)極から電子を受け取って再び金属に還元される。このように還元された金属が、前記1次前駆体粒子に吸着することによってコーティングが行われ得る。
【0020】
電解分解過程で生じる前記中間体は、詳細には金属塩であってもよく、より詳細には硫酸塩または硝酸塩であってもよいが、これに限定されるものではなく、様々な酸性塩の形態の物質が可能である。
【0021】
上記のように電解分解を通じて1次前駆体をコーティングする場合、金属状態で1次前駆体にコーティングされることで、−OHまたは−OOHとは異なる合成温度を有するので、以降、焼成によっても前駆体の内部に浸透せず、内部と異なる表面を形成することによって、均一な膜を形成することができる。
【0022】
また、電解分解が可能な金属であればpHなどに影響を受けないので、様々な組成の金属コーティングが可能である。一具体例において、前記金属物質は、電解分解が可能な遷移金属、P及びAlからなる群から選択された1種以上の元素を含む物質であってもよく、詳細には、前記遷移金属は、Ni、Co、Mn、Fe、Sn、Mo、Nd、Zr及びZnからなる群から選択された1種以上の元素であってもよい。
【0023】
ただし、Mnのように酸化電位が高い金属物質をコーティングする場合、電解分解が容易に行われず、MnOのような酸化物が生成されるため、所望の結果を得ることができない。したがって、前記電解分解は、一具体例において、触媒を通じて行うことができ、前記触媒は、詳細には、ZnCl系、CoCl系、MnCl系、NiCl系、及びSnCl系からなる群から選択される1つ以上の触媒であってもよく、より詳細には、ZnCl系触媒であってもよい。
【0024】
一具体例において、前記金属物質のコーティング厚さは、0.1〜1μmであってもよい。前記コーティングが0.1μm未満の場合、均一なコーティングを担保しにくく、金属コーティングを通じて所望の電気伝導度などの所望の効果を得ることができず、1μmを超える場合、リチウムイオンの吸蔵、放出を妨げることがあるため好ましくない。
【0025】
また、前記金属物質は、電極活物質の前駆体の全重量を基準として0.01〜5%含まれてもよく、前記1次前駆体の表面の全体または一部にコーティングしてもよいが、好しくは、全体にコーティングすることができる。
【0026】
全重量を基準として0.01%未満の場合、正極活物質と電解液との反応により発生する問題を防止することができず、優れた電気伝導性もまた示すことができず、5%以上の場合、相対的に活物質の量が少なくなって容量が減少するという問題が生じ得るため、好ましくない。
【0027】
一具体例において、前記1次前駆体は、下記化学式1で表される物質であってもよい。
【0028】
M(OH1−z(1)
【0029】
上記式中、0.5<z<1、Mは、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti及びFeからなる群から選択された1種以上の元素を主成分として含むことができ、このとき、前記Mのモル分率は、詳細には、全体元素に対して80モル%以上であってもよい。
【0030】
一具体例において、前記Mは、NiMnMeであり、a+b≦1、0.3≦a≦0.9、0.1≦b≦0.8、0≦c≦0.2であり、Meは、Co、Al、Mg、Ti、Sr、Zn、B、Ca、Cr、Si、Ga、Sn、P、V、Sb、Nb、Ta、Mo、W、Zr、Y及びFeからなる群から選択された1種以上の元素であってもよく、特に好ましくは、MeがCoである、いわゆる3成分系物質であってもよい。
【0031】
すなわち、前記1次前駆体は、ニッケルのモル分率が30〜90%であり、Mnを含み、所定の金属元素(Me)を含む遷移金属酸化物前駆体の水和物の形態であってもよい。このような複合遷移金属酸化物前駆体は、1種の元素からなる遷移金属酸化物前駆体を使用するときよりも高容量であり、構造的安定性に優れたリチウム二次電池用電極活物質を製造するのに特に好ましく使用することができる。
【0032】
一方、このように、1次前駆体に電解分解を通じてコーティングする場合には、正極活物質を製造した後、電解分解コーティングする場合に比べて、電極活物質に水溶性溶媒を使用するときに生じ得る表面の損傷(damage)を防止することができるだけでなく、電解分解時に生じ得る電極活物質自体の電荷移動などのリチウム損失(Li loss)を低減できるという点においてより有利である。
【0033】
本発明はまた、前記電極活物質の前駆体を製造する方法であって、
(i)水和物状態の1次前駆体を製造する過程と、
(ii)前記前駆体に、電解分解を通じて金属物質をコーティングする過程と、
(iii)前記コーティングされた電極活物質の前駆体を乾燥させる過程と、
を含む電極活物質の前駆体の製造方法を提供する。
【0034】
前記過程(i)は、遷移金属供給源及び溶媒を混合して製造することができる。例えば、遷移金属供給源は、ニッケル供給源、コバルト供給源及びマンガン供給源のうち少なくとも1つであってもよいが、これに限定されるものではなく、前記1次前駆体を形成する段階において、遷移金属供給源をさらに混合することができる。
【0035】
前記溶媒は、水、エタノール、メタノール、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0036】
前記ニッケル供給源は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、リン酸ニッケル、またはこれらの組み合わせを含むことができ、前記コバルト供給源は、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルト、リン酸コバルト、またはこれらの組み合わせを含むことができ、前記マンガン供給源は、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガン、リン酸マンガン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0037】
前記遷移金属供給源は、遷移金属の硫黄酸化物、遷移金属の硝酸化物、遷移金属の酢酸化物、遷移金属の塩化物、遷移金属のリン酸化物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0038】
本発明はまた、前記電極活物質の前駆体とリチウム前駆体を混合した後、熱処理して製造される電極活物質を提供する。
【0039】
一具体例において、前記リチウム前駆体は、LiOH及びLiCOからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0040】
熱処理温度及び雰囲気などは、当業界における公知の条件で設定することができる。
【0041】
前記電極活物質は、詳細には、正極活物質または負極活物質であってもよく、より詳細には、正極活物質であってもよい。
【0042】
例えば、電極活物質は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LNMO)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2−x(ここで、xは0〜0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01〜0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01〜0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどに前記金属物質がコーティングされた形態の正極活物質であってもよい。または、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1−xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge、Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン、0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)などの金属複合酸化物;Li−Co−Ni系材料などに前記金属物質をコーティングした形態の負極活物質であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明に係る実施例1で製造された正極活物質のSEM写真である。
図2】比較例1で製造された正極活物質のSEM写真である。
図3】実施例1で製造された正極活物質のSEM断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施例を参照して説明するが、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらに限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
遷移金属水和物からなる1次前駆体として金属水酸化物M(OH0.6(M=Ni0.6Mn0.2Co0.2)を、金属物質としてCoをそれぞれ準備し、前記金属水酸化物に、電解分解を通じてCoを3wt%コーティングさせた後、これを空気中で890℃〜930℃の温度範囲で10時間焼結することで、Coがコーティングされた正極活物質を製造した。
【0046】
<比較例1>
1次前駆体として金属水酸化物M(OH0.6(M=Ni0.6Mn0.2Co0.2)を、電気分解を通じたメッキを実施せずに、焼成することで、リチウム二次電池用正極活物質であるLiNi0.6Mn0.2Co0.2を製造した。
【0047】
<実験例1>
製造された正極活物質の走査電子顕微鏡観察及びEDX分析
上記実施例1及び比較例1で製造されたNi系正極活物質を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、図1及び図2に示した。また、実施例1の正極活物質のEDX分析結果を表1に示し、このとき、表1での領域1及び領域2は、図3の正極活物質のSEM断面写真にその領域を表示した。
【0048】
【表1】
【0049】
図1を参照すると、実施例1で製造されたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の表面にCoが滑らかにコーティングされていることがわかる。また、図3及び表1を参照すると、Coの量が正極活物質の内部よりも表面に多く存在することを見ることができる。これは、内部の1次前駆体と金属Coが異なる合成温度を有するので、以降、焼成によっても金属Coが前駆体の内部に浸透せず、内部と異なる表面を形成するからである。
【0050】
本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、上記内容に基づいて本発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上で説明したように、本発明に係る電極活物質の前駆体は、1次前駆体を金属物質でコーティングした後、その後に合成過程が実施されても、コーティング物質が活物質の内部に浸透せずに表面に残ることで、均一な金属コーティング膜を形成することができ、様々な組成の金属がコーティングされた形態を有することができるという効果がある。
【0052】
また、本発明に係る電極活物質の前駆体の製造方法は、多い量の1次前駆体に均一な量のコーティングを進行することが可能であり、共沈法を通じてコーティングすることができない物質もコーティングが可能である。
図1
図2
図3