(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983406
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】フロート板ガラスの製造装置およびフロート板ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 18/02 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
C03B18/02
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-523148(P2012-523148)
(86)(22)【出願日】2011年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2011074877
(87)【国際公開番号】WO2012073624
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-265620(P2010-265620)
(32)【優先日】2010年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】龍腰 健太郎
【審査官】
伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−119585(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第00279835(GB,A)
【文献】
特開2008−030982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 18/00− 18/22
C03B 25/00− 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス溶融槽と、該ガラス溶融槽から連続的に供給される溶融ガラスを溶融金属層面上で流動させてガラスリボンを作製するフロート浴と、該フロート浴で作製されたガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、該徐冷炉で徐冷されたガラスリボンを所定寸法に切断しフロート板ガラスを製造する切断ステージと、前記フロート浴で作製されたガラスリボンを前記徐冷炉を通して前記切断ステージに向けて搬送する搬送路とを備える、液晶表示パネル用のフロート板ガラスの製造装置において、
少なくとも前記フロート浴および前記徐冷炉を囲む第1の建屋をさらに備え、
前記切断ステージは前記第1の建屋の外部に設置されており、
前記第1の建屋の外部に設けられ、前記切断ステージを囲む第2の建屋をさらに備え、
前記第1の建屋のガラスリボン搬出口が設けられる側壁と、前記徐冷炉のガラスリボン搬出口が設けられる側壁との間には、前方空間領域が形成され、
前記徐冷炉は、前記フロート浴から搬出されたガラスリボンをガラスの歪点の温度より低い温度である300〜500℃まで徐々に冷却すべく制御されたヒータを備えた第1の徐冷室と、該第1の徐冷室で冷却されたガラスリボンを更に冷却する第2の徐冷室とに区画されていることを特徴とする液晶表示パネル用のフロート板ガラスの製造装置。
【請求項2】
前記第1の建屋のガラスリボン搬出口が設けられる側壁と、前記徐冷炉のガラスリボン搬出口が設けられる側壁との間の距離が0.5m以上である請求項1に記載のフロート板ガラスの製造装置。
【請求項3】
前記第1の建屋の長手方向の側壁と、前記フロート浴および前記徐冷炉の長手方向の側壁との間には側部空間領域が形成されており、
前記第1の建屋のガラスリボン搬出口から前記第1の建屋内に流入した空気は、前記前方空間領域を通って前記側部空間領域に至り、ガラスリボンの進行方向とは反対方向に流れる請求項1または2に記載のフロート板ガラスの製造装置。
【請求項4】
前記ガラス溶融槽は、前記第1の建屋内に設置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のフロート板ガラスの製造装置。
【請求項5】
前記第1の建屋内の圧力は、前記切断ステージ側の雰囲気の圧力よりも低く設定されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のフロート板ガラスの製造装置。
【請求項6】
前記第1の建屋内の圧力は、前記切断ステージ側の雰囲気の圧力よりも0.1Pa〜30.0Pa低く設定されている請求項1〜5のいずれか1項にフロート板ガラスの製造装置。
【請求項7】
請求項1に記載のフロート板ガラスの製造装置によりフロート板ガラスを製造するフロート板ガラスの製造方法において、
前記切断ステージ側から前記第1の建屋のガラスリボン搬出口を通って前記第1の建屋内に流入した空気は、前記前方空間領域を通り、さらに前記第1の建屋内において前記第1の建屋の長手方向の側壁と、前記フロート浴および前記徐冷炉の長手方向の側壁との間の側部空間領域を通ってガラスリボンの進行方向とは反対方向に流れるフロート板ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記第1の建屋内の圧力は、前記切断ステージ側の雰囲気の圧力よりも低く設定されている請求項7に記載のフロート板ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記第1の建屋内の圧力は、前記切断ステージ側の雰囲気の圧力よりも0.1Pa〜30.0Pa低く設定されている請求項8に記載のフロート板ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板割れがなく、反りの発生を防止するとともに、フロート板ガラスの表面欠点が発生する原因を減少させることができ、更に安定生産ができるフロート板ガラスの製造装置およびフロート板ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、建築用ガラス板、自動車用ガラス板、ディスプレイ用のガラス板の製造方法として、フロート板ガラス製造方法が広く使用されている。
【0003】
この種のフロート板ガラス製造装置の概略を示した
図7に従って説明すると、ガラス溶融槽30の溶融領域31において、投入されたガラス原料は溶融され、得られた溶融ガラスは、清澄槽32を経て、フロート浴33に貯留された溶融錫層の表面に流し出される。このフロート浴33に流し出された溶融ガラスは、より高温のフロート浴の上流側からより低温の下流側に向かって溶融錫層の表面を移動しながら所定の厚みのガラスリボン34に成形され、フロート浴33の出口から搬出され、徐冷炉35へ搬送され、徐冷炉35内を搬送されながら徐冷され、徐冷されたガラスリボン34は徐冷炉35から引き出された後、ガラスリボンの切断ステージ36(切断装置は図示せず)において所定の寸法に切断されてフロート板ガラスとなる。
【0004】
特に、液晶ディスプレイ・パネル、プラズマ・ディスプレイ・パネル、有機ELディスプレイ・パネル等の平面ディスプレイ・パネル(FPD、Flat Panel Display)用のガラス基板は、一般に約0.3mm〜3.0mm程度の板厚で、また平坦度が優れた欠点のない高精度、高品位の薄板ガラスが要求される。かかる板厚の薄いガラス板を製造するためのフロート板ガラス製造ラインにおいては、製造ラインの操業条件を厳密に制御するとともに、ごみ、塵、異物、汚染原因となる物質などのガラス板の表面欠点となる物質がガラスリボンの表面に付着しないように、前記ガラス溶融槽とフロート浴と徐冷炉とは一つの建屋内に設置され、かかる建屋内を成形されたガラスリボンが連続して流れるように設計されることが多い。
【0005】
特に、上記したようなFPD用の板厚の薄い、高品位、高精度のガラス板の製造において、ガラスリボンを徐冷する長いラインの徐冷炉は、ヒータを備え、徐冷温度が徐々に低下するように厳密に温度制御された閉鎖された第1の徐冷ゾーンと、所定の温度以下に冷却されたガラスリボンを更に切断可能な温度まで冷却するヒータの備えられていない第2の徐冷ゾーンとに分けられることが多い。徐冷炉から搬出され、低温となったガラスリボンは、通常、外気に露出されたガラスリボンの切断ステージで所望の寸法に切断され、切断されたガラス板は採板ステージにて採板、箱詰めされる。一方、より高品質のガラス板を製造のため、前記建屋内の徐冷炉の出口と連設して囲い構造の第2の建屋を設置し、切断ステージを、場合によっては採板ステージも第2の建屋内に含め、切断ステージにおいて、あるいはそれ以降のステージにおいて、ガラスリボン面に、あるいは切断されたガラス板面にごみ、塵、異物、汚れ原因となる物質の付着を防止するという提案もなされている。
【0006】
前記したようなフロート板ガラスの製造ラインにおいては、例えば、ガラス溶融槽ではその上流側から下流側に向かって、約1600℃から1200℃程度の温度、フロート浴ではその上流側から下流側に向かって約1000℃から700℃程度の温度、また徐冷炉ではその上流側から下流側に向かって約700℃から30℃程度の温度となっている。従って、ガラス溶融槽とフロート浴と徐冷炉とが設置された建屋内は、高温のガラス溶融炉等から発生する上昇気流が建屋の天井あるいは上方壁に設置された排気口から排出されることにより、切断ステージの領域の雰囲気に比べ、特に徐冷炉が設置されている床近傍レベル(0〜2mの高さ)は負圧状態となる。前記したように、切断ステージを含めた囲い構造の第2の建屋を前記建屋内の徐冷炉の出口と連設した場合も同様である。そのため、徐冷炉が設置されている側の負圧により、前記徐冷炉のガラスリボンの出口から徐冷炉内に切断ステージ側のより冷たい空気が流入する結果となり、ガラスリボンの製造条件に変化、特に厳密に制御された徐冷条件に変動をきたし、安定した製造条件が維持しづらいという問題が生じる。例えば、徐冷条件が変動すると、徐冷炉内においてガラスリボンの板割れが発生するという危険性や、生産されたガラス板に反りや好ましくない歪が発生したりするという問題点が生ずる。
【0007】
前記したようなフロート板ガラス製造装置において、ガラスリボンに不均一な冷却や表面欠点が生じないように、フロート板ガラス製造装置のフロート浴のガラスリボンの搬出端領域にシール構造の改善を施すことが、日本国特開2008−505837号公報に開示されている。同公報には、具体的にフロート浴の出口において燃焼ガスとガラスリボン面との接触を大幅に減少させる装置の発明について提案されている。しかしながら、同公報に記載されている発明は、フロート浴の出口から流出する燃焼ガスの流れをガラスリボン表面から偏向させる改善に係わるものであり、徐冷炉において発生する問題点については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特開2008−505837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、フロート板ガラス製造において、少なくともフロート浴と徐冷炉とが設置された建屋内とその下流工程の切断ステージの領域の雰囲気との間の圧力差により、徐冷炉のガラスリボンの出口領域を通して切断ステージの領域の側から大気あるいは冷気(以下、これらを空気あるいは切断ステージ側の雰囲気ガスともいう。)が徐冷炉内に流入して、徐冷炉内を搬送されているガラスリボン、更にはフロート浴の溶融錫面上を流れるガラスリボンが冷却されて、予め設定された所定の温度条件が変化するのを防止するフロート板ガラスの製造装置およびフロート板ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、
ガラス溶融槽と、該ガラス溶融槽から連続的に供給される溶融ガラスを溶融金属層面上で流動させてガラスリボンを作製するフロート浴と、該フロート浴で作製されたガラスリボンを徐冷する徐冷炉と、該徐冷炉で徐冷されたガラスリボンを所定寸法に切断しフロート板ガラスを製造する切断ステージと、前記フロート浴で作製されたガラスリボンを前記徐冷炉を通して前記切断ステージに向けて搬送する搬送路とを備える
、液晶表示パネル用のフロート板ガラスの製造装置において、
少なくとも前記フロート浴および前記徐冷炉を囲む第1の建屋をさらに備え、
前記切断ステージは前記第1の建屋の外部に設置されており、
前記第1の建屋の外部に設けられ、前記切断ステージを囲む第2の建屋をさらに備え、
前記第1の建屋のガラスリボン搬出口が設けられる側壁と、前記徐冷炉のガラスリボン搬出口が設けられる側壁との間には、前方空間領域が形成され、
前記徐冷炉は、前記フロート浴から搬出されたガラスリボンをガラスの歪点の温度より低い温度
である300〜500℃まで徐々に冷却すべく制御されたヒータを備えた第1の徐冷室と、該第1の徐冷室で冷却されたガラスリボンを更に冷却する第2の徐冷室とに区画されていることを特徴とする
液晶表示パネル用のフロート板ガラスの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フロート板ガラス製造ラインにおいて、徐冷炉内の温度を予め設定された所定の条件に安定的に保つことができ、徐冷炉内にガラスリボンの切断ステージ側から流入する空気によりガラスリボンが温度変動することを防止することができ、その結果、反り、好ましくない歪等の欠点のない、高品質、かつ安定した品質のガラス板、特に板厚の薄いディスプレイ用ガラス板を安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施態様に係わるフロート板ガラス製造装置の縦方向の断面説明図。
【
図2】
図2は、本発明の他の実施態様に係わるフロート板ガラス製造装置の縦方向の断面説明図。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施態様に係わるフロート板ガラス製造装置の縦方向の平面説明図。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施態様に係わるフロート板ガラス製造装置の縦方向の平面説明図。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施態様に係わるフロート板ガラス製造装置の縦方向の平面説明図。
【
図6】
図6は、本発明の比較例に係わるフロート板ガラス製造装置の縦方向の断面説明図。
【
図7】
図7は、従来のフロート板ガラス製造装置の概略斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を最良の実施形態について説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
【0014】
図1および
図2は、本発明の好ましい実施形態に係わるフロート板ガラス製造装置の概略構成を示す縦断面説明図であり、図示するように、フロート板ガラス製造装置は、ガラス原料を溶融し、溶融したガラスを清澄するガラス溶融槽1と、溶融ガラスを溶融金属錫等の溶融金属層2の上に流し出し、浮かべながら進行させることで一定の幅と厚みの平坦なガラスリボンに成形するフロート浴3と、フロート浴3から搬出されたガラスリボン4を徐冷し、ガラスリボン4の内部に歪が発生することを可及的に少なくする第1の徐冷室5と第2の徐冷室6とを有する徐冷炉7と、徐冷炉7から搬出されたガラスリボンを所定の寸法に切断する切断ステージ8と、切断された板ガラスを分別したり、箱詰め等が行なわれる採板ステージ9とを備えている。なお、ガラスリボン4は実線で示しているので、
図1、2のフロート浴中において溶融金属層2の上に間隔をおいて図の右方向に流れているように表わされているが、実際は、ガラスリボンが溶融金属面と接して流れている。
【0015】
図1、
図3に示した例においては、ガラス溶融槽1とフロート浴3と徐冷炉7とが、外気に対し囲い構造となっている一つの建屋(以下第1の建屋10という)内に設置されており、切断ステージ8と採板ステージ9も囲い構造となっている一つの建屋(以下第2の建屋11という)内に設置されている。
【0016】
図2に示した例においては、フロート浴3と徐冷炉7とが、外気に対し囲い構造となっている一つの建屋(以下第1の建屋10という)内に設置されており、切断ステージ8と採板ステージ9とは前記したような第2の建屋内に設置されておらず、囲いのない外気に曝されたオープンの状態下に存在している。
【0017】
図4に示した例においては、フロート浴3と徐冷炉7とが、第1の建屋10内に設置されており、切断ステージ8と採板ステージ9も第2の建屋11内に設置されている。
【0018】
図5に示した例においては、ガラス溶融槽1とフロート浴3と徐冷炉7とが、第1の建屋10内に設置されており、切断ステージ8と採板ステージ9は前記したような第2の建屋内に設置されておらず、囲いのない外気に曝されたオープンの状態下に存在している。
【0019】
本発明における第1の建屋10は、フロート板ガラス製造設備の少なくともフロート浴3と徐冷炉7とが収容される構造となっており、フロート板ガラスの製造に必要な構造、保守・保全・修理、運転・操業に必要な部分を除き、周囲が囲い構造となる側壁、上部壁、下部壁・下部遮蔽部材、前方壁、後方壁を基本的に有する構造となっている。そして、第1の建屋10の内部空間は、前記必要部分を除き、第1の建屋が設置されている建築物の内部の空間とは基本的に区画、分離され、第1の建屋の内部空間は、建築物の内部の外気の影響を少なくするように設計されている。
【0020】
第1の建屋内にガラス溶融槽が設置された場合も、同様にガラス溶融に必要な構造、保守・保全・修理、運転・操業に必要な部分を除き、周囲が囲い構造となる側壁、上部壁、下部壁・下部遮蔽部材、前方壁、後方壁を基本的に有する構造となっている。
【0021】
また、当該建屋の天井、あるいは上方壁には、建屋内の空気・雰囲気ガスを排気するために排気孔が設けられている。
【0022】
本発明における徐冷炉7は、フロート浴3から搬出されたガラスリボン4を徐冷すべく制御されたヒータを備えた第1の徐冷室5と第1の徐冷室5に連続して設置された、第1の徐冷室で冷却されたガラスリボン4を更に冷却する第2の徐冷室6に区画されていることが好ましい。第1の徐冷室5は、フロート浴3から搬出された高温のガラスリボン4(例えば約750℃〜850℃程度)を、製造されるガラス板内に好ましくない歪が発生しないように、当該ガラスの歪点の温度以下まで、所定の徐冷速度をもって徐々に冷却されるように温度管理されている。この第1の徐冷室5では、ヒータ(図示せず)が設置されており、所定の温度分布、温度勾配が得られるようになっている。第1の徐冷室5にて歪点の温度より充分低い温度(例えば約300℃〜500℃程度)まで冷却されたガラスリボン4は、第1の徐冷室5から第2の徐冷室6へ搬入され、更に冷却され、ガラスリボンの切断に適する温度(例えば30℃〜100℃程度)程度まで冷却される。かかる第2の徐冷室6は、通常特にヒータを具備していないが、更に徐冷されるように第2の徐冷室はガラスリボンの進行方向に向かって同室内温度が逓減するように温度分布、温度勾配が制御されている。
【0023】
また、徐冷炉7の内部には、フロート浴3から搬出されたガラスリボン4を搬送する搬送ロール12が、複数本、所定間隔をおいて並列して設けられ、搬送路が形成されている。そして、この搬送ロール12は、ガラスリボン4が徐冷炉7から搬出され、切断ステージ8へ移送され、切断ステージ8で切断された板ガラスが、その後段の採板ステージ9へ移送されるように、フロート浴3のガラスリボンの出口から徐冷炉7内、更に採板ステージまで連続して設けられている。搬送ロールは、駆動モータ(図示せず)によって駆動され、搬送ロール上をリボン状の連続したガラスリボンが予め設定された一定速度で切断ステージまで搬送されるようになっている。
【0024】
なお、
図1、2において示した本発明の徐冷炉7においては、当該徐冷炉7が第1の徐冷室5と第2の徐冷室6との二つに区画された例を示したが、第1と第2の徐冷室を連続した一つの室構造としてフロート浴から搬出されたガラスリボンが高温の状態から徐冷され、室温近くまでの温度まで徐冷するようにしてもよい。
【0025】
前記した本発明の徐冷炉7は、ガラスリボン4の流入口、流出口、保守・保全・修理、運転・操業に必要な部分を除き、第1の建屋内部において区画され、周囲が囲い構造となる側壁、上部壁、下部壁・下部遮蔽部材、前方壁、後方壁を基本的に有する構造となっている。即ち、徐冷炉7の第1の徐冷室5および第2の徐冷室6は、これらの徐冷室内に設置された、ガラスリボンの搬送ロールの上流から下流まで、搬送ロールの両側、上方、下方を含め、全体が外気と実質的に遮断されるように部屋構造となっている。そして、第1の建屋10の、徐冷炉7のガラスリボン4の進行方向と並列する方向の両側の側壁18と徐冷炉の側壁17との間に、側部空間領域が形成され、また第1の建屋の天井壁20と徐冷炉の天井壁19との間にも、上部空間領域が形成されていることが好ましい。即ち、徐冷炉7は、第1の建屋10の床に、当該建屋の長手方向(即ちガラスリボンの進行方向)の中央領域に設けられている。徐冷炉7は、第1の建屋10の両側の側壁と所定間隔をおいて設置されている。
【0026】
かかる構造により、第1の建屋10内において、徐冷炉7の内部空間は、前記必要部分を除き、第1の建屋10の内部の空間とは基本的に区画、分離され、徐冷炉7の内部空間は、第1の建屋10内の雰囲気ガスの影響を少なくするように設計されている。また、第2の徐冷炉6のみ建屋の天井壁20と天井を共有したり、建屋の天井壁20との間に屋根裏部屋を設けたりしてもよい。
【0027】
図1、
図3、
図4に示した例は、徐冷炉7(第2の徐冷室6)から搬出されたガラスリボン4を切断する切断ステージ8の周囲を囲み、外気を遮断するように第2の建屋11が設置されている。この第2の建屋11も、切断ステージ8が収容される構造となっており、切断ステージ8に必要な構造、保守・保全・修理、運転・操業に必要な部分を除き、周囲が囲い構造となる側壁、上部壁、下部壁・下部遮蔽部材、前方壁、後方壁を基本的に有する構造となっている。そして、第2の建屋11の内部空間は、前記必要部分を除き、第2の建屋が設置されている建築物の内部の空間とは基本的に区画、分離され、建屋の内部空間は、建築物の内部に外気の影響を少なくするように設計されている。
【0028】
この第2の建屋11には、前記切断ステージの後工程の採板ステージを含んでもよいし、また更に採板ステージ以降の処理ステージを含んでもよい。
【0029】
第2の建屋11を設けた場合には、切断ステージ、更には採板ステージ等が外気から区画され、外気と遮断されているので、外気中の粉塵、汚染物質等が切断ステージ、更には採板ステージ等へ流入することを防止することができ、その結果、徐冷炉7内を流れるガラスリボンの表面に粉塵、汚染物質等が降りかかつ付着することを防止することができ、ガラス板の表面欠点の発生原因を少なくすることができる。
【0030】
なお、本発明においては、
図2、
図5に示したように、第2の建屋11を設置せずに、切断ステージ8が、また切断ステージとその後段の採板ステージ9等が、囲いのない外気に曝されたオープンの状態下に存在するようにしてもよい。
【0031】
本発明の第1の建屋10の、矢印A方向に移送されるガラスリボン4が当該第1の建屋から搬出される側の端部には、ガラスリボン10の流れ方向と直交する面の方向に前方の出口側壁13が立設されており、この第1の建屋の前方の出口側壁13にはガラスリボン4が搬出される搬出口14が形成されている。また、徐冷炉7、即ち第2の徐冷室6の、矢印A方向に移送されるガラスリボン4が当該徐冷室6から搬出される側の端部には前方の出口側壁15が立設されており、この徐冷炉の前方の出口側壁15にはガラスリボン4が搬出される搬出口16が形成されている。
【0032】
前記前方の出口側壁13および前方の出口側壁15の搬出口14および16は、第1の建屋10から、また徐冷炉7からガラスリボン4が搬出されるのに適当な大きさの開口となっている。しかし、搬出口14から第1の建屋11内に、また搬出口16から徐冷炉7内に余分な大気が流入しないような幅、高さをもった大きさに設計される。
【0033】
一方、
図1、
図3、
図4のように第2の建屋が設置されている場合には、第2の建屋11の、矢印A方向に移送されるガラスリボン4が当該第2の建屋11に搬入される側の端部には後方の入口側壁が立設されており、この第2の建屋の入口側壁にはガラスリボン4が搬入される搬入口が形成されている。
図6において、第2の建屋の後方の入口側壁を21、入口側壁21に設けられる搬入口を22として示した。
【0034】
第1の建屋10と第2の建屋11が連設されている場合には、第1の建屋10の出口側壁13を、第2の建屋11の入口側壁として共用するような構造としてもよいし、あるいは第1の建屋10の出口側壁13と第2の建屋11の入口側壁とを別々に形成し、前記前方の出口側壁13と第2の建屋11の入口側壁とが連設するような構造としてもよい。また、第1の建屋10と第2の建屋11とを近接して設置し、第1の建屋の出口側壁13と第1の建屋11の入口側壁との間の隙間からの外気の流入が所定以下となるような多少の隙間を有する構造としてもよい。
【0035】
前記したように、第1の建屋10の前方の出口側壁は種々の態様があるが、いずれも前方の出口側壁は、第1の建屋10の切断ステージ側とを区画する仕切り壁の役目をするので、以下、第2の建屋11の入口側壁と共用する場合も含め、本発明において第1の建屋10の前方の出口側壁を仕切り壁とも称する。
【0036】
本発明においては、第1の建屋10の前方の出口側壁13、即ち切断ステージ側との仕切りとなる仕切り壁は、徐冷炉7のガラスリボン4の搬出側の出口側壁15から所定間隔をおいて設置され、前方出口側壁13と仕切り壁との間に前方空間領域が形成されている。このような前方空間領域は、切断ステージ側から、あるいは第2の建屋11から第1の建屋10の搬出口14を通って第1の建屋10内に流入した外気、あるいは雰囲気ガスを、徐冷炉7の長手方向の側壁と第1の建屋の長手方向の側壁との間の側部空間領域に、かつガラスリボンの進行方向とは反対方向に回り込ませるスペースとなり、前記した切断ステージ側の外気(空気、冷気)あるいは第2の建屋の雰囲気ガス(空気、冷気)が徐冷炉7の第2の徐冷室の搬出口16から徐冷炉7の内部に入り込むことを少なくすることができる。
【0037】
図1〜5において、Lは、徐冷炉7、即ち第1の徐冷室6の前方の出口側壁15の外面と、第1の建屋10の前方の出口側壁13である仕切り壁の第2の徐冷炉6側の内面との間の距離であり、第1の建屋10、徐冷炉6、更にはフロート浴3の大きさにもよるが、通常のフロート板ガラス製造装置によれば、好ましくは0.5m以上である。この距離は、第2の徐冷室6の出口側壁15の外面と、第1の建屋11の出口側壁13である仕切り壁の内面との間の矢印A方向における距離の平均を示すものである。この距離が0.5m以上であれば、第1の建屋11の出口側壁13と前記仕切り壁との間に充分な前方空間領域が形成され、切断ステージ側から外気が、あるいは第2の建屋11側から同建屋内の雰囲気ガスが、第1の建屋10の前方の出口側壁13、即ち仕切り壁の搬出口14から流入した外気、あるいは雰囲気ガスが、徐冷炉7、即ち第2の徐冷室6のガラスリボンの搬出口16から第2の徐冷室6へ流入する量を少なくすることができる。
【0038】
この距離の上限については、特に制限はないが、装置の設計上および実用上の点から30.0m以下が好ましい。
【0039】
また、第2の建屋10の出口側壁13と第2の徐冷室6の出口側壁15との間の前方空間領域の横断面積は、第2建屋10の出口側壁13、即ち仕切り壁の搬出口14の横断面積より、少なくとも2倍以上であることが好ましい。このように2倍以上、かつ前記したように徐冷室6の出口側壁15の外面と、第1の建屋10の出口側壁13である仕切り壁の徐冷炉6側の内面との間の距離Lを0.5m以上とすることにより、第1の建屋10の前方の出口側壁13の搬出口14からその内部側に流入した空気を、徐冷炉7の長手方向の側壁と第1の建屋の長手方向の側壁との間の側部空間領域に、かつガラスリボンの進行方向とは反対方向に回り込ませることができ、第2の徐冷室6のガラスリボンの搬出口14から第2の徐冷室6、第1の徐冷室5へ流入する量を少なくすることができる。
【0040】
徐冷炉7の長手方向の側壁17と第1の建屋10の長手方向の側壁18との間の空間は、第1の建屋10の前方の出口側壁13の搬出口14から流入した空気がガラスリボンの進行方向とは反対方向(矢印C方向)に流れるように充分な広さと長さが必要である。通常、徐冷炉7の長手方向の側壁17の外面と第1の建屋10の長手方向の側壁18の内面との間の距離は、徐冷炉7の長さ全体に渡って2.0m以上あれば充分である。なお、ここで謂う距離は、両者間の最も短い部分の距離を示す。
【0041】
前記した例の仕切り壁は、1段の構成になっているが、必要に応じて所定間隔をおいて2段、あるいはそれ以上の多段としてもよい。例えば、第2建屋10の出口側壁13と第2の徐冷室6の出口側壁15との間にもう一枚、あるいは複数枚の仕切り壁を設けてもよい。このような仕切り壁は、第2建屋10の出口側壁13と第2の徐冷室6の出口側壁15との間の空間の上部領域および/または両側部領域の所定領域を部分的に覆うようにしてもよい。
【0042】
本発明においては、
図3〜5に示したように、徐冷炉7、即ち第2の徐冷室6の出口側壁15と、第1の建屋10の出口側壁13、即ち仕切り壁とが所定間隔をおいて設置されて、前方空間領域が形成されていると、出口側壁13のガラスリボンの搬出口14の隙間から第1の建屋10の内部へと、切断ステージ側から流入した外気(空気、冷気)の大半、あるいは第2の建屋側から流入した雰囲気ガス(空気、冷気)の大半は、図示した矢印Bのように、この前方空間領域において回り込んで、第1の建屋10の側壁18と徐冷室7の側壁17との間の側部空間領域、および第1の建屋10の天井壁20と徐冷炉7の天井壁19との間の上部空間領域を、ガラスリボンの進行方向とは反対側の方向(矢印C方向)、即ちガラスリボンの流れの上流側に流れて行き、第2の徐冷室6の搬出口16とガラスリボン4との隙間から第2の徐冷室6の内部に流入する外気、あるいは雰囲気ガスを減少させることができる。従って、第2の徐冷室6、更には第1の徐冷室5の内部への、温度変動の原因となる外気、雰囲気ガスの流入が少ないので、徐冷炉7内の外乱による温度変動を抑えることができ、所定の設定された徐冷条件にて徐冷することができ、ガラスリボンの割れ、反り、好ましくない不均一な歪の発生を少なくすることができ、製品への欠点発生を減少させることができる。
【0043】
一方、
図6のように、第1の建屋10の出口側壁13と第2の建屋の入口側壁21とが連設され、両壁が所定間隔をおいて設置されていないと、第2の建屋の入口側壁21のガラスリボンの搬入口22から第1の建屋10の出口側壁13の搬出口14と第2の徐冷室6の搬出口16を通って第1の建屋10へと、第2の建屋11内の低い温度(例えば、約4〜10℃の冷気)の空気が矢印Dのように直接、第2の徐冷室6に入り、更には第1の徐冷室5に入ってしまう。その結果、流入した冷気が第2の徐冷室6と第1の徐冷室5の予め設定された徐冷条件を変動させてしまい、所望の徐冷が行なわれなくなり、ガラスリボンの割れ、反り、好ましくない不均一な歪の発生が発生し、品質の安定した、高品質のフロート板ガラスを製造できなくなる。また、第2の建屋11の切断ステージ、更には採板ステージ等で発生する、あるいはこれらのステージに同伴されて流入する粉塵、汚染物質等が徐冷炉7内に流入し、徐冷炉7内を流れるガラスリボンの表面に粉塵、汚染物質等が降りかかつて付着し、フロート板ガラスの表面欠点の発生原因となってしまうという欠点が生じる。
【0044】
前記した本発明のフロート板ガラスの製造装置によりフロート板ガラスを製造する方法について以下に説明する。
【0045】
第2の建屋11を設置した本発明の場合には、第1の建屋10内(より詳細には、前方空間領域、側部空間領域、または/および上部空間領域)の圧力を第2の建屋11内の圧力に比べ負圧にコントロールすることが好ましい。具体的には、第1の建屋10内の圧力を、第2の建屋11内の圧力より0.1Pa〜30.0Pa程度低く設定することが好ましい。このように設定することによって、前記第2の建屋11から第1の建屋のガラスリボンの搬送口14のガラスリボン4との隙間部分を通って第1の建屋10内に流入した空気は、第1の建屋10内の前方空間領域において、第1の建屋10の長手方向の側壁16と、徐冷炉7の長手方向の側壁17の間の側部空間領域の方向(矢印B方向)に流れるように回り込ませ、回り込んだ空気が前記側部空間領域を通ってガラスリボン4の進行方向とは反対方向(C方向)に流れるように制御できる。そして、このように制御された状態下において、フロート浴から成形されて搬出されたガラスリボンを前記徐冷炉内に通して徐冷して、第1の建屋10から搬出して第2の建屋11内の切断ステージでガラスリボンを切断し、所望のフロート板ガラスを製造する。
【0046】
第2の建屋11を設置せず、切断ステージが外気圧の雰囲気下のオープン状態とした本発明の場合には、第1の建屋10内(より詳細には、前方空間領域、側部空間領域、または/および上部空間領域)の圧力を外気圧に対して負圧にコントロールすることが好ましい。具体的には、前記と同様に第1の建屋10内の圧力を外気の雰囲気の圧力より0.1Pa〜30.0Pa程度低く設定することが好ましい。このように設定することによって、前記の例と同様に、第1の建屋のガラスリボンの搬送口14部分のガラスリボン4との隙間部分を通って当該建屋10内に流入した外気の空気は、前記前方空間領域において、矢印B方向に流れるように回り込ませ、回り込んだ空気が前記側部空間領域を通って矢印C方向に流れるように制御できる。そして、このように制御された状態下において、フロート浴から成形されて搬出されたガラスリボンを前記徐冷炉内に通して徐冷して、第1の建屋10から搬出して切断ステージでガラスリボンを切断し、所望のフロート板ガラスを製造する。
【0047】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2010年11月29日出願の日本特許出願2010−265620に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、表面欠点が少なく、反りや応力分布の少ない均質な高精度の高品質の薄い板厚のフロート板ガラスを安定的に製造することができ、FPD用のガラス基板、特に液晶表示パネル用の板厚0.3〜1.0mmのガラス基板を製造するのに好適である。
【符号の説明】
【0049】
1:ガラス溶融槽
2:溶融金属層
3:フロート浴
4:ガラスリボン
5:第1の徐冷室
6:第2の徐冷室
7:徐冷炉
8:切断ステージ
9:採板ステージ
10:第1の建屋
11:第2の建屋
12:搬送ロール
13:第1の建屋の出口側壁(第1の建屋のガラスリボン搬出口が設けられる側壁)
14:第1の建屋の出口側壁の搬出口
15:徐冷炉の出口側壁(徐冷炉のガラスリボン搬出口が設けられる側壁)
16:徐冷炉の出口側壁の搬出口
17:徐冷炉の側壁
18:第1の建屋の側壁
19:徐冷炉の天井壁
20:第1の建屋の天井壁
21:第2の建屋の入口壁
22:第2の建屋の搬入口