特許第5983443号(P5983443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5983443銅製錬ダストの処理方法、並びに銅製錬の操業方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983443
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】銅製錬ダストの処理方法、並びに銅製錬の操業方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 15/00 20060101AFI20160818BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   C22B15/00
   C22B7/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-18838(P2013-18838)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-148725(P2014-148725A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】菊田 直子
(72)【発明者】
【氏名】浅野 聡
(72)【発明者】
【氏名】山本 恵介
(72)【発明者】
【氏名】星野 陽介
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−246546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00,7/02,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含有する鉱石を製錬炉に投入して銅を製錬する際に発生したダスト(銅製錬ダスト)を、分級点を粒径1μm以上5μm以下の範囲に設定した乾式物理分離手段を用いて、該分級点以下の微細粒物と、該分級点を超える粗粒物とに分離し、
分離して得られた上記粗粒物を繰り返し上記製錬炉に投入することを特徴とする銅製錬ダストの処理方法。
【請求項2】
分離して得られた上記微細粒物を水洗して、水溶性物と洗浄微細粒物とに分離することを特徴とする請求項1に記載の銅製錬ダストの処理方法。
【請求項3】
上記鉱石は、銅のほかに、亜鉛、鉛、ビスマス、スズのうちの1つ以上の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の銅製錬ダストの処理方法。
【請求項4】
銅を含有する鉱石を製錬炉に投入して銅を製錬する銅製錬の操業方法において、
銅製錬において発生したダスト(銅製錬ダスト)を、分級点を粒径1μm以上5μm以下の範囲に設定した乾式物理分離手段を用いて、該分級点以下の微細粒物と、該分級点を超える粗粒物とに分離し、分離して得られた該粗粒物を上記製錬炉に繰り返すことを特徴とする銅製錬の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅製錬ダストの処理方法、並びに銅製錬の操業方法に関し、より詳しくは、銅製錬炉から排出されるダストから、銅製錬に不要な亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の不純物成分を分離する処理方法、並びにその方法を適用した銅製錬の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅の製錬では銅鉱石を炉に入れて高温で熔解する。このとき、炉からは硫黄酸化物等の廃ガスと共にダスト(煙灰)が発生する。銅製錬で発生するダストは、鉛、ビスマス、亜鉛等の鉱石に含有される不純物成分を含んでおり、集塵機で回収される。また、ダストには、微細な銅も含有されていることから、そのまま廃棄することは経済的に好ましくなく、ダストを再び製錬工程に繰り返して銅を回収する処理が行われることが一般である。
【0003】
しかしながら、発生したダスト全量を銅製錬の系内で繰返し処理すると、鉛、ビスマス、亜鉛等の不純物が系内に濃縮蓄積して、最後は製品の純度に影響を及ぼす懸念がある。そこで、一部のダストについては、系外で銅と分離処理した上で、銅のみを系内に返送し、有価金属は別途処理回収することが望ましい。
【0004】
特に、鉛とビスマスについては、例えば特許文献1に示すように、ダストを水又は希硫酸で浸出処理して銅や亜鉛等の可溶性塩類を浸出液として回収し、一方で不溶性硫酸塩を形成する鉛やビスマスは浸出残渣として固定して鉛製錬の原料とすることが行われている。この方法を用いることにより、ビスマスや鉛を系外に払い出し、銅製錬系内の不純物負荷を低減させることができる。
【0005】
また、上述の浸出残渣に残留する未溶解銅量を更に低減させるために、例えば特許文献2及び特許文献3に開示されているように、浸出残渣を湿式分級処理して、未溶解銅粒の粗粒側回収を狙う処理が行われることもある。
【0006】
ところが、上述した先行技術を用いても、浸出処理を行った際にダスト中の銅の大半が浸出されて液相に分配されるため、その液相中の銅を何らかの方法で沈殿させて回収し、十分に乾燥させた上で銅製錬系内に再投入する必要がある。
【0007】
また、上述した方法では、回収した銅を銅製錬系内に再投入する前に十分に乾燥しておくことが必要である。製錬炉内は高温であり、炉内に水分のあるダストを不用意に投入すると水蒸気爆発等の危険性がある。また、水分によりダストが不規則な塊状になると、ハンドリングや工程内での閉塞等の可能性もあり好ましくない。このため、乾燥処理のための設備やエネルギーを要し、非常にコストがかさむという課題がある。
【0008】
以上のように、銅製錬系統で発生するダストについて、不純物成分を低コストに効率よく払い出し、不純物の負荷を低減させて効果的に銅を銅製錬に繰り返すことができる方法は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−285136号公報
【特許文献2】特開2006−124828号公報
【特許文献3】特開2012−71283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、銅製錬において発生したダストに含まれる亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の不純物成分を効率よく分離することができる銅製錬ダストの処理方法、並びにその処理方法を適用した銅製錬の操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた。そして、銅製錬ダストの粒度分布を測定したところ、粒径数十〜数百μmの領域に1つと粒径1μm未満の領域に1つの合計2つのピークトップを持ち、またそのピーク間の最も粒子数が少なくなる点が粒径1〜5μmの領域に存在することを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明に係る銅製錬ダストの処理方法は、銅を含有する鉱石を製錬炉に投入して銅を製錬する際に発生したダスト(銅製錬ダスト)を、分級点を粒径1μm以上5μm以下の範囲に設定した乾式物理分離手段を用いて、該分級点以下の微細粒物と、該分級点を超える粗粒物とに分離し、分離して得られた上記粗粒物を繰り返し上記製錬炉に投入することを特徴とする。
【0013】
ここで、上述した銅製錬ダストの処理方法において、分離して得られた上記粗粒物を上記製錬炉に投入することができる。
【0014】
また、分離して得られた上記微細粒物を水洗して、水溶性物と洗浄微細粒物とに分離することが好ましい。
【0015】
また、上記鉱石は、銅のほかに、亜鉛、鉛、ビスマス、スズのうちの1つ以上の元素を含有するものを用いることができる。
【0016】
さらに、本発明に係る銅製錬の操業方法は、銅を含有する鉱石を製錬炉に投入して銅を製錬する銅製錬の操業方法において、銅製錬において発生したダスト(銅製錬ダスト)を、分級点を粒径1μm以上5μm以下の範囲に設定した乾式物理分離手段を用いて、該分級点以下の微細粒物と、該分級点を超える粗粒物とに分離し、分離して得られた該粗粒物を上記製錬炉に繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、銅製錬ダストに含まれる亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の銅製錬における不純物成分を、水を使用することなく低コストで効率よく分離して回収することができる。そして、それら不純物成分を分離除去したダストを銅製錬炉に繰り返すことによって、そのダスト中に含まれる銅も有効に製錬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ダスト粒子断面の電子線マイクロ分析装置(EPMA)による面分析結果を示す写真図である。
図2図1におけるCuについてのEPMA分析写真の模式図である。
図3】銅製錬ダストの粒度分布図である。
図4】銅製錬ダストの処理方法のフローを示す図である。
図5】微細粒側に分配された不純物濃縮物に対する処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る銅製錬ダスト(以下、単に「ダスト」ともいう。)の処理方法の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0020】
本実施の形態に係る銅製錬ダストの処理方法は、銅を含有する鉱石を製錬炉に投入して銅を製錬する銅製錬にて発生したダスト(煙灰)の処理方法であって、そのダストに含まれる亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の銅製錬における不純物成分を分離する方法である。
【0021】
具体的には、この銅製錬ダストの処理方法は、銅製錬に際して発生したダスト(銅製錬ダスト)を、乾式物理分離手段を用いて所定の分級点で乾式分級し、微細粒物と粗粒物とに分離することを特徴とする。
【0022】
この処理方法は、銅のほかに、亜鉛、鉛、ビスマス、スズのうちの1つ以上の元素を含有する鉱石を用いて銅製錬を行った際に発生した銅製錬ダストに対して好適に用いることができる。このような銅製錬ダストには、銅のほかに、それら亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の不純物成分が含まれるようになる。なお、銅製錬ダストの組成としては、特に限定されるものではない。
【0023】
ここで、その発生機構の観点から銅製錬ダストについて説明する。銅の製錬において発生する銅製錬ダストとしては、蒸気圧が低いメタルや硫化物が揮発することによるものと、製錬炉中の熔体が飛散することによるものとがある。銅製錬においては、これらの銅製錬ダストが、集塵機によって回収される。
【0024】
具体的に、亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の熔体中に一定以上の蒸気圧を持つ形態で存在する成分は、揮発した後に、排ガス中で酸素や亜硫酸ガス(SO)と反応しつつ冷却されて微細粒化し、そのまま集塵機へ送られてダストとして回収される。一方、製錬炉に吹き込まれる空気流で飛散した熔体飛沫の一部も、排ガスの流れに乗って集塵機まで到達してダストとして回収される。この熔体飛沫の基質は、銅メタル又は硫化銅(CuS)であり、メタル粒子の表面は、排ガス中の亜硫酸ガスと反応して硫酸銅(CuSO)の形態に変化しているものと考えられる。
【0025】
本発明者らは、ダスト粒子に存在する銅粒子の形態を粒子断面の電子線マイクロ分析装置(EPMA)を用いて面分析し観察した。図1が、そのEPMA分析結果の写真図であり、図2が、CuについてのEPMA分析写真の模式図である。この図1及び図2に示されるように、ダスト粒子の銅は、そのほとんどがメタル(銅(Cu)メタル)又は硫化物(CuS)の粒子の形態であり、また銅メタル粒子の表面は、硫酸銅(CuSO)の形態に変化していることが分かった。さらに、図1に示されるように、ビスマス、鉛、亜鉛は、銅粒子の表面に薄く付着して存在することが分かった。
【0026】
この銅粒子の存在形態の生成メカニズムについては明らかではないが、例えば以下のようにして生じたとも考えられる。すなわち、銅製錬ダストは、製錬炉への鉱石の装入に伴う単純な埃として生成した場合や、一度炉内で熔解された後に微細な粒子として発散して生成した場合がある。特に、後者の場合には、反応を経ているので、粒子が均一な形状となり易く、またその表面は高温の反応雰囲気に直接晒されるので硫黄酸化物の影響を受けて硫酸塩の形態をとり易くなり、さらにはビスマスや鉛、亜鉛等の不純物も、銅粒子の周囲に析出し易くなるものと考えられる。
【0027】
このような銅製錬ダストに関して、本発明者らは、様々な銅製錬工程の条件下で発生するダストの粒度分布を調査した。図3が、銅製錬ダストをマイクロトラック粒度分布計で測定して得られた粒度分布図である。その結果、図3に示されるように、銅製錬ダストの粒度分布は、粒径数十〜数百μmの領域に1つと粒径1μm未満の領域に1つの合計2つのピークトップを持ち、またこの2つのピークの境、つまりピーク間の最も粒子数が少なくなる点が粒径1〜5μmの領域に存在することを見出した。なお、図3の粒度分布グラフにおける縦軸の頻度(%)とは、体積分率の頻度を示す。
【0028】
これは、亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の揮発によりダストへ分配する成分の粒子がピークトップ1μm未満の分布を取り、一方で、熔体飛沫としてダストへ分配する銅粒子がピークトップ数十〜数百μmの分布を取るためであると考えられる。
【0029】
このことから、本実施の形態に係る銅製錬ダストの処理方法においては、集塵機にて回収した銅製錬ダストを処理対象として、分級点1μm以上5μm以下の範囲に設定して乾式物理分離を実施する。
【0030】
具体的に、図4に、本実施の形態に係る銅製錬ダストの処理方法のフローの一例を示す。図4に示すように、この銅製錬ダストの処理方法は、銅製錬ダストを、分級点1μm以上5μm以下の範囲に設定した乾式物理分離手段を用いて分離する。すると、上述した図3の粒度分布の関係から、分級点以下の微細粒側に亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の不純物元素が高密度に濃縮した不純物濃縮物が分配され、分級点を超える粗粒側に銅粒子を含む銅粒子濃縮物が分配されることになる。
【0031】
分級点が1μm未満では、上述したように、亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の不純物成分に由来するピークが存在する粒径領域となるため、微細粒側への銅粒子の分配は低減するものの、粗粒側への不純物元素の分配が多くなり、銅製錬炉に繰り返し用いると系内に濃縮蓄積して製品の純度に影響を及ぼす。一方で、分級点が5μmより大きいと、上述したように、熔体飛沫としてダストへ分配する銅粒子に由来するピークに近似するようになるため、粗粒側への不純物元素の分配は低減するものの、微細粒側への銅粒子の分配が多くなり、銅の廃棄量が多くなる。
【0032】
乾式物理分離手段としては、1μm以上5μm以下の範囲に分級点を設定でき、乾式分級することができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、遠心力や慣性力等の分級方式を用いた乾式物理分級装置を用いることができる。
【0033】
このような銅製錬ダストの処理方法によれば、処理対象の銅製錬ダストから、銅製錬において不純物成分となる亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の元素を、銅と効果的に且つ容易に分離することができる。そして、このように粗粒側に分離して得られた銅粒子濃縮物は、銅製錬炉にそのまま無処理で繰り返すことができ、そのダストに含まれていた銅をも有効に製錬して回収することができる。すなわち、従来の湿式処理によって液相に銅を分配させていた方法のように、乾燥処理を施す必要がなく、設備コストや乾燥させるための余分なエネルギーコストも不要となる。
【0034】
一方、分離して得られた微細粒側の不純物濃縮物は、組成毎に別途処理することによって、亜鉛や鉛の製錬の粗原料として利用することができる。
【0035】
ところで、乾式分級により分離して得られた微細粒側の不純物濃縮物には、硫酸銅の一部が微細粒化して混入することがある。そのため、この微細粒側の不純物濃縮物から、さらにその銅と不純物成分とを分離することによって、不純物成分をさらに濃縮させることができるとともに、その混入した銅も回収することができる。
【0036】
そこで、微細粒側の不純物濃縮物に対しては、さらに水洗処理を施すようにすることが好ましい。具体的に図5に、微細粒側に分配された不純物濃縮物に対する処理のフローを示す。なお、この図5のフローでは、上述した銅製錬ダストに対する乾式分級処理からの一連の流れを示し、微細粒側の不純物濃縮物に対する水洗処理等の流れは、図5中の点線囲み部に示す。
【0037】
図5に示すように、製錬ダストを乾式分級して得られた微細粒側の不純物濃縮物に対して、水洗処理を施す。すると、水溶性の硫酸塩である硫酸銅が水溶液中に溶解し、一方で水洗残渣側に鉛、ビスマス、スズ等が残留することとなる。そして、これを固液分離することによって、さらに濃縮した不純物元素である鉛、ビスマス、スズ等を分離することができるとともに、水溶液中に銅を分離することができる。
【0038】
水洗処理の方法としては、特に限定されないが、不純物濃縮物と水洗用の水(純水)とを処理槽中に投入し、攪拌装置等を用いて攪拌しながら行うことが好ましい。また、水洗処理後の固液分離の方法についても、特に限定されるものではなく、吸引濾過などの濾過や遠心分離等によって行うことができる。
【0039】
なお、硫酸銅を含んだ濾液(廃液)は、銅製錬工程の廃水と併せて既存の廃水処理工程に導入することで、中和や硫化等の公知の方法を用いて、その廃水から銅を含有する固形物として回収し、これを脱水・乾燥することで銅製錬に繰り返すことができる。また、乾式分級して得られた微細粒側の不純物濃縮物に含まれていた亜鉛は、この水洗処理によって、水溶液側(濾液側)に濃縮されることになる。したがって、この濾液を別途処理することによって、亜鉛についても効果的に分離することが可能となる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を適用した具体的な実施例と比較例について説明するが、本発明は、これらの実施例や比較例に限定されるものではない。
【0041】
ここで、実施例及び比較例で示す各元素の分配率とは、処理前のダストに含まれていた元素が処理によって得られた固形分や濾液に分配された割合を示し、その処理前のダストと処理によって得られた固形分及び濾液の化学分析値から算出した。なお、この元素分配率は、処理対象とした銅製錬転炉ダストAに含有される各元素の量を100%とした場合における分配を示す。また、その化学分析値は、分析用試料に必要な前処理を施した後に、ICP発光分析法により分析した。
【0042】
[実施例1]
10kgの銅製錬転炉ダストAを対象に、分級点を5μmに設定した乾式分級機を用いて乾式分級処理を行った。なお、ダストAは、ペルー産の銅精鉱を公知の自熔炉製錬法を用いて製錬した際に発生し回収したものを使用した。
【0043】
分級により、微粉側で6.1kgの不純物濃縮物Bが、粗粒側で3.9kgの銅粒子濃縮物が、それぞれ分離回収された。下記表1に、亜鉛、鉛、ビスマス、スズ、銅の、不純物濃縮物Bへの分配率を示す。
【0044】
表1に示されるように、銅製錬において不純物成分となる亜鉛、鉛、ビスマス、スズが効果的に濃縮分離できていることが分かる。
【0045】
[実施例2]
実施例2では、実施例1で得られた不純物濃縮物Bから水溶性の銅を分離した。
【0046】
具体的に、500gの不純物濃縮物Bを、2リットルビーカーに水1リットルと共に投入し、回転数を300rpmに設定した攪拌機を用いて15分攪拌した。その後、硬質濾紙(4A)を用いて吸引濾過して、1.95リットルの濾液Eを得て、また同時に得られた固形分を真空乾燥させて245gの不純物濃縮物Cを得た。下記表1に、亜鉛、鉛、ビスマス、スズ、銅の、不純物濃縮物Cへの分配率を、下記表2に、濾液Eへの分配率を、それぞれ示す。
【0047】
表1に示されるように、銅の混入が少ない、鉛、ビスマス、スズの不純物濃縮物が得られたことが分かる。なお、不純物濃縮物B中の亜鉛は、この実施例2で得られた濾液に濃縮されており、これを別途処理することによって回収可能であることが分かった。
【0048】
[比較例1]
1kgの銅製錬転炉ダストAを対象に、目開き10μmの試験用篩を用いた湿式分級試験を実施した。
【0049】
湿式分級処理の後、硬質濾紙(4A)を用いて篩下スラリーを吸引濾過して、8.4リットルの濾液Fを得て、また同時に得られた固形分を真空乾燥させて364gの不純物濃縮物Dを得た。
【0050】
下記表1に、亜鉛、鉛、ビスマス、スズ、銅の、不純物濃縮物Dへの分配率を、下記表2に、濾液Fへの分配率を、それぞれ示す。
【0051】
表1に示されるように、比較例1では、不純物濃縮物Dへの銅の混入が、上記実施例2での濃縮物Cよりも8倍以上高くなっていることが分かる。また、濾液Fへの銅の分配量は、濾液の4倍以上になっていることが分かる。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
以上のように、銅製錬ダストを、所定の分級点で乾式分離することによって、ダストに含まれる亜鉛、鉛、ビスマス、スズ等の銅製錬における不純物成分を効果的に銅と分離することができることが分かった。さらに、それら不純物成分の濃縮物を水洗し脱水することによって、銅の混入がより一層に低減した濃縮物が得られることが分かった。
図2
図3
図4
図5
図1