(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(i)の工程において、表面・裏面二枚の硬質パネルの片面に外周部を残してシリコーン硬化膜(X)、(Y)を形成し、一方のパネルのシリコーン硬化膜未形成部分にシリコーン硬化膜よりも厚いブチルゴム系熱可塑性接着剤を配置し、次いで(ii)、(iii)の工程を行うことを特徴とする、請求項1記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
上記オルガノポリシロキサン組成物(I)の硬化膜(X)が、針入度20〜200のシリコーンゲルであり、上記オルガノポリシロキサン組成物(II)の硬化膜(Y)が、針入度200以下のシリコーンゲル又はデュロメータタイプA硬度70以下のシリコーンゴムである請求項1又は2記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
前記シリコーン硬化膜の厚みがそれぞれ200〜1,000μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
前記(iii)工程は、前記二枚の硬質パネルと太陽電池セルストリングスを減圧下70〜150℃に加熱することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
前記表面・裏面二枚の硬質パネルは、白板熱強化ガラス基板又はポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光を利用したエネルギー資源として、太陽光発電に対する関心が高まってきている。ここで太陽電池の発電素子は、一般的にシリコン等の半導体からなり、太陽電池モジュールは、個々の太陽電池セルを電気的に相互接続した状態で、受光面ガラス基板などに積載される。
【0003】
その際、太陽電池セルに光が当たる表面又は裏面側は、封入材料で覆われることにより、外的環境、例えば雨、風、雪、埃などから保護されることになる。封入材料として一般的には、低コストなどの観点からエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2000−183385号公報)には、太陽電池モジュールに、封止材として酢酸ビニル含有率が10〜30質量%であるEVAの太陽電池封止材の使用が記載されている。しかしながら、封止材としてEVAを使用した場合、特に高温高湿環境下において酢酸が発生するため、この発生酢酸が原因となって、太陽電池セル電極を腐食するなどの影響により、発電性能が劣化するという問題があった。特に、太陽電池は数十年単位の長期使用が期待されるため、経時劣化は保証の観点から早急な解消が望まれていた。
【0005】
またEVAは、上記問題に留まらず、UV耐性が低く、長期間屋外に暴露されることにより変色が生じ、黄色あるいは褐色となるために、外観を損ねるという問題もあった。
【0006】
これらの問題が生じない封止材として、シリコーンが挙げられる。例えば、シリコーンを封止材として使用した場合、酢酸の発生がないことにより電極腐食が抑えられるだけでなく、黄色又は褐色の変色問題も解消される。また、EVAのように低温で弾性率が急激に上昇するようなことがなく、電極の接続の信頼性も高くなる。例えば、非特許文献1では、シリコーンを太陽電池モジュール封止材として適用した場合の性能が記されている。
【0007】
1970年代、宇宙用の太陽電池の封止材にはシリコーンが使用されていたが、地上用途向けに量産する段階で、液状シリコーン組成物のコスト及び製造方法が課題となった。このとき低コスト且つフィルムで供給され、真空ラミネーターによる成形可能なEVAがシリコーンに置き換わった過去がある。
【0008】
しかし、近年太陽電池の高効率化や長期信頼性が大きく取り上げられるようになり、高透明・高耐候性を有するシリコーンが改めて注目されるようになった。
【0009】
これまで、様々なシリコーンでの封止方法が提案されている。特許文献2(特表2007−527109号公報)では、基板上にコーティングされたシリコーン材料上又はシリコーン材料中に、接続された太陽電池を多軸ロボットにより配置し、その後でシリコーン材料を硬化することにより気泡を取り込まずに封入することが提案されている。
【0010】
また、特許文献3(特表2011−514680号公報)では、移動可能なプレートを有したセルプレスを使用し、真空下で太陽電池セルを硬化あるいは半硬化のシリコーン上に配置することにより気泡を取り込まずに封入することが提案されている。
【0011】
更に、特許文献4(国際公開第2009/091068号)では、ガラス基板に封止剤、太陽電池素子、シリコーン液状物質を配置し、最後に裏面保護基板を重ねて仮積層体とし、室温の真空下で加圧密着させて密封する方法が提案されているが、この方法では実用サイズの太陽電池モジュールへの展開は難しいと考えられる。
【0012】
しかし、前記方法はいずれも、太陽電池セルストリングスを封止する工程において液状シリコーン組成物を使用するという工程を含み、従来のEVAシートを用いる場合と全く異なり煩雑であることから、太陽電池モジュール化メーカーに受け入れ難いものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記問題に鑑みなされたものであって、シリコーンを封止材として使用する際、液状シリコーン組成物を使用せずに太陽電池セルストリングスを空隙を残すことなく封止して、端面からの水分浸入を防ぐ太陽電池モジュールの製造ができ、かつ太陽電池モジュールメーカーが従来の製造に利用している真空ラミネーターを用いて簡便に封止できるシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記目的を達成するために種々検討を行った結果、表面・裏面二枚の硬質パネルそれぞれの片面に、総脂肪族不飽和基に対するケイ素原子結合水素原子(Si−H基)のモル比が最適化された付加硬化型シリコーン組成物の硬化膜を形成し、その硬化膜の間に太陽電池セルストリングスを挟み、真空下加熱圧着することで、良好かつ簡便にシリコーン封止された太陽電池モジュールが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
従って、本発明は、下記シリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
〔1〕 (i)表面・裏面二枚の硬質パネルそれぞれの片面にシリコーン硬化膜を形成する工程、
(ii)表面・裏面二枚の硬質パネルのシリコーン硬化膜面の間に太陽電池セルストリングスを挟み込むように配置し、積層体を形成する工程、
(iii)上記積層体を減圧空間内に配置し、加熱しながら押圧して太陽電池セルストリングスを封止する工程
を含む、表面・裏面二枚の硬質パネルの間に複数の太陽電池セルストリングスをシリコーン硬化膜で封止して太陽電池モジュールを製造する方法であって、表面・裏面二枚の硬質パネルに形成するシリコーン硬化膜が、それぞれ
(A)(A−1)ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上含有する23℃における粘度が100〜100,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:80〜100質量部、
(A−2)ケイ素原子に結合した水素原子とヒドロシリル化反応可能な脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上含有する有機化合物:0〜20質量部、
(A−1)成分+(A−2)成分の合計が100質量部となる量、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A−1)及び(A−2)成分中の脂肪族不飽和基の総モル数(a)に対する本成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子のモル数(b)の比率(b)/(a)をpとした場合、0.25≦p<1.3となる量、
(C)白金系触媒から選ばれるヒドロシリル化反応触媒:有効量
を含有するオルガノポリシロキサン組成物(I)の硬化膜(X)と、
(D)(D−1)ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上含有する23℃における粘度が100〜100,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:80〜100質量部、
(D−2)ケイ素原子に結合した水素原子とヒドロシリル化反応可能な脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上含有する有機化合物:0〜20質量部、
(D−1)成分+(D−2)成分の合計が100質量部となる量、
(E)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D−1)及び(D−2)成分中の脂肪族不飽和基の総モル数(d)に対する本成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子のモル数(e)の比率(e)/(d)をqとした場合、0.3<q≦10となる量、
(F)白金系触媒から選ばれるヒドロシリル化反応触媒:有効量
を含有するオルガノポリシロキサン組成物(II)の硬化膜(Y)であって、上記モル比p,qが、|q−p|>0.7、q/p≧1.3の関係を満たすことを特徴とする、シリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
〔2〕 前記(i)の工程において、表面・裏面二枚の硬質パネルの片面に外周部を残してシリコーン硬化膜(X)、(Y)を形成し、一方のパネルのシリコーン硬化膜未形成部分にシリコーン
硬化膜よりも厚いブチルゴム系熱可塑性接着剤を配置し、次いで(ii)、(iii)の工程を行うことを特徴とする、〔1〕記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
〔3〕 上記オルガノポリシロキサン組成物(I)の硬化膜(X)が、針入度20〜200のシリコーンゲルであり、上記オルガノポリシロキサン組成物(II)の硬化膜(Y)が、針入度200以下のシリコーンゲル又はデュロメータタイプA硬度70以下のシリコーンゴムである〔1〕又は〔2〕記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
〔4〕 前記シリコーン硬化膜の厚みがそれぞれ200〜1,000μmであることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
〔5〕 前記(iii)工程は、前記二枚の硬質パネルと太陽電池セルストリングスを減圧下70〜150℃に加熱することを特徴とする、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
〔6〕 前記(iii)工程は、真空ラミネーターにより行われることを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
〔7〕 前記表面・裏面二枚の硬質パネルは、白板熱強化ガラス基板又はポリカーボネートであることを特徴とする、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、総Si−H基/Si−Vi基値が最適化されたシリコーン硬化膜を塗布した太陽電池表面パネル・裏面パネルを加熱下貼り合わせることで、取り扱いに難がある液状材料を用いることなく太陽電池セルストリングスを空隙なく封止することができ、かつ熱衝撃試験にも耐えうる接着信頼性を持たせることが可能となったものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のシリコーン封止太陽電池モジュールの製造方法は、
(i)表面・裏面二枚の硬質パネルそれぞれの片面にシリコーン硬化膜を形成する工程、
(ii)表面・裏面二枚の硬質パネルのシリコーン硬化膜面の間に太陽電池セルストリングスを挟み込むように配置し、積層体を形成する工程、
(iii)上記積層体を減圧空間内に配置し、加熱しながら押圧して太陽電池セルストリングスを封止する工程
を含む。
【0021】
この場合、上記表裏の硬質パネルの一方、好ましくは表面パネルの片面に形成するシリコーン硬化膜(X)を形成するオルガノポリシロキサン組成物(I)は、
(A)(A−1)ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上含有する23℃における粘度が100〜100,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:80〜100質量部、
(A−2)ケイ素原子に結合した水素原子とヒドロシリル化反応可能な脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上含有する有機化合物:0〜20質量部、
(A−1)成分+(A−2)成分の合計が100質量部となる量、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A−1)及び(A−2)成分中の脂肪族不飽和基の総モル数(a)に対する本成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子のモル数(b)の比率(b)/(a)をpとした場合、0.25≦p<1.3となる量、
(C)白金系触媒から選ばれるヒドロシリル化反応触媒:有効量
を含有するものであり、以下更に詳しく説明する。
【0022】
[(A)成分]
[(A−1)成分]
(A−1)成分のオルガノポリシロキサンは、この組成物の主剤であり、1分子中に1個以上、好ましくは2〜10個の脂肪族不飽和基を含有する。該脂肪族不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の、炭素原子数が、通常2〜8、好ましくは2〜4程度のアルケニル基が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。(A)成分中におけるケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基は、例えば、分子鎖末端基(ジオルガノアルケニルシロキシ基、オルガノジアルケニルシロキシ基、トリアルケニルシロキシ基等のアルケニル基含有トリオルガノシロキシ基などの形で)及び/又は分子鎖側基(オルガノアルケニルシロキサン単位やジアルケニルシロキサン単位等のアルケニル基含有ジオルガノロキサン単位などの形で)として含まれる。なお、オルガノポリシロキサン中のアルケニル基の量は、0.003〜0.02mol/100gが好ましい。
【0023】
(A−1)成分中のアルケニル基等の脂肪族不飽和基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、アルキル基、特にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基;アリール基、特にフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜14のアリール基;アラルキル基、特にベンジル基、フェネチル基等の炭素原子数7〜14のアラルキル基;ハロゲン化アルキル基、特にクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等の炭素原子数1〜3のハロゲン化アルキル基などの、非置換又はハロゲン置換1価炭化水素基が挙げられるが、本用途では耐候性が高いことが求められることから、特にメチル基であることが好ましい。
【0024】
このような(A−1)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐状等が挙げられるが、硬化後にシリコーンゲルとなるものが好ましく、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0025】
(A−1)成分の23℃における粘度は、得られるシリコーンゴムの物理的特性が良好であり、また、組成物の取扱作業性が良好であることから、100〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に500〜10,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。なお、粘度は回転粘度計による値である(以下、同様)。
【0026】
このような(A−1)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R
13SiO
0.5(R
1は後述のとおりである)で示されるシロキサン単位と式:R
12R
2SiO
0.5(R
2は後述のとおりである)で示されるシロキサン単位と式:R
12SiOで示されるシロキサン単位と少量の式:SiO
2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R
13SiO
0.5で示されるシロキサン単位と式:R
12R
2SiO
0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO
2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R
12R
2SiO
0.5で示されるシロキサン単位と式:R
12SiOで示されるシロキサン単位と少量の式:SiO
2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R
1R
2SiOで示されるシロキサン単位と少量の式:R
1SiO
1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R
2SiO
1.5で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0027】
上記式中のR
1はアルケニル基以外の非置換又は置換の炭素数1〜12の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。また、上記式中のR
2はアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基等が挙げられる。
【0028】
[(A−2)成分]
(A−2)成分のケイ素原子に結合した水素原子とヒドロシリル化反応可能な脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上含有する有機化合物において、ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)とヒドロシリル化反応可能な脂肪族不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基や、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等が挙げられる。
【0029】
(A−2)成分は、(A−1)成分や後記(B)成分と混合しても無色透明となることが好ましく、具体例として、トリアリルイソシアヌレート、(メタ)アクリル酸及びそのエステルなどの、分子中にケイ素原子を含まない脂肪族不飽和基含有炭化水素系化合物や上記脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上有する、好ましくは23℃における粘度が100mPa・s未満、通常0.01〜50mPa・s、より好ましくは0.01〜30mPa・s、更に好ましくは0.1〜10mPa・s程度のオルガノシラン、オルガノ(ポリ)シロキサン(シロキサンオリゴマー)などの有機ケイ素化合物を挙げることができる。
このオルガノ(ポリ)シロキサン(シロキサンオリゴマー)の重合度又は分子中のケイ素原子の数は、通常2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8程度のものが好適に使用される。
【0030】
この有機ケイ素化合物として、具体的には、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ジビニルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、ジアリルジメチルシラン等のアルケニル基を1個以上有するオルガノアルケニルシランや、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基を1個以上有するオルガノ(ポリ)シロキサン(又はシロキサンオリゴマー)などが挙げられる。
【0031】
また、(A−1)成分と(A−2)成分の配合割合としては、80質量部:20質量部〜100質量部:0質量部、好ましくは90質量部:10質量部〜100質量部:0質量部、更に好ましくは95質量部:5質量部〜100質量部:0質量部である。これは(A−1)成分の配合量が80質量部より少ないと、シリコーン硬化物として必要とされる耐候性やゴム強度特性が維持されないためである。
【0032】
[(B)成分]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A−1)成分及び(A−2)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si−Hで表されるヒドロシリル基)を有する必要があり、通常3〜500個、好ましくは3〜200個、より好ましくは3〜100個程度のSi−H基を有することが望ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されるものが用いられる。
R
3mH
nSiO
(4-m-n)/2 (1)
【0033】
上記式(1)中、R
3は、脂肪族不飽和結合を除く、通常は炭素原子数1〜14、好ましくは炭素原子数1〜10のケイ素原子に結合した非置換又は置換の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、このR
3における非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子又はアルコキシ基で置換したもの、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等が挙げられ、また、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。R
3の非置換又は置換の1価炭化水素基として、好ましくはアルキル基、アルコキシ基であり、より好ましくはメチル基、メトキシ基である。また、mは0.7〜2.1、nは0.001〜1.0で、かつm+nが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくは、mは1.0〜2.0、nは0.01〜1.0、m+nが1.5〜2.5を満足する正数である。
【0034】
1分子中に2個以上、好ましくは3個以上含有されるSi−H基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造等のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、通常2〜1,000、好ましくは3〜300、より好ましくは4〜150程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常0.1〜5,000mPa・s、好ましくは0.5〜1,000mPa・s、より好ましくは5〜500mPa・s程度の、室温(25℃)で液状のものが使用される。
【0035】
(B)成分は、公知の製法によって得ることが可能である。一般的な製造方法を挙げると、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラハイドロシクロテトラシロキサン(場合によっては、該シクロテトラシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンとの混合物)とヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等の末端基源となるシロキサン化合物とを、あるいはオクタメチルシクロテトラシロキサンと1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に−10〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0036】
トリアルコキシシリル基を有する式(1)の化合物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンにアルケニル基含有アルコキシシランを付加反応させる方法等により製造することができる。
【0037】
(B)成分は、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
(B)成分の配合量は、(A−1)成分中のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基及び(A−2)成分中のヒドロシリル化反応可能な脂肪族不飽和基の総モル数(a)に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)のモル数(b)の比p[(b)/(a)]が、0.25≦p<1.3、好ましくは0.5〜1.2、更に好ましくは0.5〜0.8の範囲内となる量である。(B)成分の配合量あるいは上記pの値が少なすぎると組成物が十分に硬化しない場合があり、逆に多すぎると得られる組成物の硬化物同士の接着性が極端に劣る場合がある。
【0038】
(C)成分は(A)〜(B)成分との反応を促進する硬化触媒で、有効量の白金族金属系触媒であることが好ましい。
【0039】
この白金族金属系触媒としては、ヒドロシリル化反応触媒として公知のものが全て使用できる。例えば、白金黒、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H
2PtCl
4・dH
2O、H
2PtCl
6・dH
2O、NaHPtCl
6・dH
2O、KHPtCl
6・dH
2O、Na
2PtCl
6・dH
2O、K
2PtCl
4・dH
2O、PtCl
4・dH
2O、PtCl
2、Na
2HPtCl
4・dH
2O(式中、dは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。これらの中で、好ましいものとして、相溶性の観点及び塩素不純物の観点から、塩化白金酸をシリコーン変性したものが挙げられ、具体的には例えば塩化白金酸をテトラメチルビニルジシロキサンで変性した白金触媒が挙げられる。
【0040】
硬化触媒の添加量は触媒量でよいが、白金原子にして(A)〜(D)成分の合計中、質量換算で1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは3〜100ppmであり、更に好ましくは10〜40ppmである。配合量が少なすぎると付加反応が著しく遅くなるか、もしくは硬化しなくなるおそれがあり、逆に多すぎるとコスト的に不利になる場合がある。
【0041】
ここで、上記オルガノポリシロキサン組成物(I)は、硬化してシリコーンゲルを形成するものが好ましく、JIS K2220(1/4コーン)稠度試験法による測定法において、針入度20〜200、特に30〜80のものが好ましい。針入度が200より大きいと、パネル上に形成されるシロキサン硬化物の形状が崩れる場合がある。
【0042】
次に、もう一方のパネル、好ましくは裏面パネルの片面に形成するシリコーン硬化膜(Y)を形成するオルガノポリシロキサン組成物(II)は、
(D)(D−1)ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上含有するオルガノポリシロキサン:80〜100質量部、
(D−2)ケイ素原子に結合した水素原子とヒドロシリル化反応可能な脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上含有する有機化合物:0〜20質量部、
(D−1)成分+(D−2)成分の合計が100質量部となる量、
(E)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(D−1)及び(D−2)成分中の脂肪族不飽和基の総モル数(d)に対する本成分中に含まれるケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)のモル数(e)の比率(e)/(d)をqとした場合、0.3<q≦10となる量、
(F)白金系触媒から選ばれるヒドロシリル化反応触媒:有効量
を含有するものである。
【0043】
[(D)成分]
[(D−1)成分]
(D−1)成分のオルガノポリシロキサンは、(A−1)成分と同様のものを例示することができ、特に直鎖状のものが好ましい。この場合、(D−1)成分と(A−1)成分とは、同一のものでも、異なったものでもよく、23℃の粘度が100〜100,000mPa・s、特に500〜10,000mPa・sのものが好ましい。また、このオルガノポリシロキサンのアルケニル基量は0.005〜0.02mol/100gであることが好ましい。
【0044】
また、(D−1)成分のオルガノポリシロキサンとして、R
3SiO
1/2単位とSiO
2単位とからなり、必要により少量のR
2SiO単位、RSiO
3/2単位を含む樹脂質共重合体を用いることもできる。
ここで、Rとしては、炭素数1〜12の置換又は非置換の1価炭化水素基で、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられ、具体例としては、(A−1)成分において説明したものと同様のものが挙げられるが、樹脂共重合体の一分子中、アルケニル基は少なくとも1個、特に少なくとも2個有することが好ましく、また一分子中のアルケニル基の量は0.02〜0.15mol/100g、特に0.05〜0.1mol/100gであることが好ましい。
【0045】
上記R
3SiO
1/2単位とSiO
2単位とのモル比は0.5〜2、特に0.7〜1.5が好ましい。また、R
2SiO単位、RSiO
3/2単位を含有する場合、これらの含有量は合計で樹脂共重合体全体の30モル%以下、特に10モル%以下であることが好ましい。
【0046】
なお、直鎖状のオルガノポリシロキサンと樹脂共重合体とを併用する場合、その併用割合は質量比として100:0〜50:50、特に100:0〜70:30であり、樹脂共重合体を配合する場合は全体の90:10〜70:30、特に90:10〜80:20であることが好ましい。また、そのアルケニル基量は全体として0.005〜0.045mol/100g、特に0.010〜0.030mol/100gであることが好ましい。
【0047】
[(D−2)成分]
(D−2)成分のオルガノポリシロキサンは、(A−2)成分と同様のものを例示することができる。この場合も、(D−2)成分と(A−2)成分とは、同一のものでも、異なったものでもよい。なお、(D−2)成分としてオルガノ(ポリ)シロキサン(シロキサンオリゴマー)を用いる場合、23℃の粘度が100mPa・s未満、通常0.01〜50mPa・s、より好ましくは0.01〜30mPa・s、更に好ましくは0.1〜10mPa・s程度のものが好ましい。
【0048】
また、(D−1)成分と(D−2)成分の配合割合としては、80質量部:20質量部〜100質量部:0質量部、好ましくは90質量部:10質量部〜100質量部:0質量部、更に好ましくは95質量部:5質量部〜100質量部:0質量部である。これは(D−1)成分の配合量が80質量部より少ないと、シリコーン硬化物として必要とされる耐候性やゴム強度特性が維持されないためである。
【0049】
(E)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(B)成分と同様のものが例示されるが、他にオルガノポリシロキサン組成物(II)のパネルへの接着性を付与するのに、フェニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基等を有するトリオルガノシロキシ基、ジオルガノシロキサン単位等を分子内に有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンなどが例示される。
【0050】
(E)成分の配合量は、(D−1)成分中のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基及び(D−2)成分中のヒドロシリル化反応可能な脂肪族不飽和基の総モル数(d)に対するオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)のモル数(e)の比率をq[(e)/(d)]とした場合、0.3<q≦10、好ましくは0.8≦q≦5、より好ましくは1.1≦q≦3となる量である。(E)成分の配合量あるいは上記qの値が少なすぎると架橋が不足し、十分なゴム強度が得られなかったり、組成物の硬化物同士の接着性が極端に劣る場合があり、逆に多すぎるとコスト的に不利になる場合がある。
【0051】
(F)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(C)成分と同様のものを例示することができる。この場合も、(F)成分と(C)成分とは、同一のものでも、異なったものでもよい。
【0052】
ここで、上記オルガノポリシロキサン組成物(II)は、硬化してシリコーンゲルを形成するものであっても、シリコーンゴムを形成するものであってもよい。シリコーンゲルを形成する場合は、JIS K2220(1/4コーン)稠度試験法による測定において、針入度が200以下、より好ましくは150以下のものが好ましく、更に好ましくは80〜130である。針入度が200より大きいと、パネル上に形成されるシロキサン硬化物の形状が崩れる場合がある。また、シリコーンゴムを形成する場合、JIS K6249による測定法において、デュロメータタイプA硬度で70以下、より好ましくは5〜70、更に好ましくは20〜50のものが好ましい。硬度が70より高いと貼り合わせ時にシロキサン硬化物が太陽電池セルにストレスを与え、セルが割れてしまうおそれがある。
【0053】
なお、本発明のシリコーン積層体においては、上述したオルガノポリシロキサン組成物(I)における(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(Si−H基)に対する(A)成分中の総脂肪族不飽和基のモル比pと、オルガノポリシロキサン組成物(II)における(E)成分中のケイ素原子結合水素原子(Si−H基)に対する(D)成分中の総脂肪族不飽和基のモル比qとを、|q−p|>0.7かつq/p≧1.3とするものであり、これにより、オルガノポリシロキサン組成物(I)の硬化物と、オルガノポリシロキサン組成物(II)の硬化物とを、その界面においてよく接着させることができる。この場合、より好ましくは|q−p|>1、q/p≧1.5である。また、|q−p|の値が0.7以下の場合やq/pが1.3未満の場合、硬化物同士の密着性が悪くなる可能性があり、その結果両者の接触界面から水分などが浸入して太陽電池セルを劣化してしまうおそれがある。q/pの上限は特に制限されないが、通常q/p≦40、特にq/p≦10である。
【0054】
[その他の成分]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物(I)及び(II)においては、上記以外の任意成分を添加することができる。例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤、及びこれらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面処理した充填剤が挙げられる。また、充填剤としては、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等も挙げられる。
【0055】
また、更に、オルガノポリシロキサン組成物(I)及び(II)には、本発明の目的を損なわない範囲において、その他の任意の成分として、例えば、ケイ素原子結合水素原子及びアルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、有機溶剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、可塑剤、チクソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤等を配合することができる。
【0056】
本発明で用いるオルガノポリシロキサン組成物(I)及び(II)は、上記(A)〜(C)、及び(D)〜(F)成分(任意成分が配合される場合には、任意成分も含む)の組成物を常法に準じて混合することにより調製することができる。このようにして得られた組成物は、必要に応じてトルエン、キシレン、ベンゼン、環状シロキサン等の有機溶剤で希釈し、使用することができる。
【0057】
[工程i:硬質パネルへのシリコーン硬化膜形成工程]
上記のようにして得られたオルガノポリシロキサン組成物を、太陽光を入射する透明部材のパネルと上記太陽光の入射方向と反対側のパネルにそれぞれ全面に亘って塗布し、硬化させてシリコーン硬化膜を形成する。
この場合、上記組成物(I)及び(II)は、表面・裏面二枚の硬質パネルの片面のいずれに塗布しても差し支えないが、好ましくは太陽光を入射する表面パネルに組成物(I)を塗布し、硬化させてシリコーンゲルからなるシリコーン硬化膜(X)を形成し、太陽光の入射方向と反対側のパネルに組成物(II)を塗布し、硬化させてシリコーンゴムからなるシリコーン硬化膜(Y)を形成することが推奨される。
図1は、この工程iを説明するもので、表面パネル1に組成物(I)を塗布し、これを硬化して硬化膜(X)を形成すると共に、裏面パネル2に組成物(II)を塗布し、これを硬化させて硬化膜(Y)を形成した状態を示す。
【0058】
組成物の塗布の方法としては、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、ナイフコーティング法、スクリーンコーティング法等があるが、そのいずれの方法を用いてもよい。
【0059】
このとき、塗布量は硬化後のシリコーン硬化膜としての膜厚が200〜1,000μmとなるように調整することが好ましく、より好ましくは300〜800μmの範囲である。膜厚が200μmより薄いと、半導体基板からなる太陽電池素子ストリングスをパネルの間に挟み込んで押圧する工程において太陽電池素子にクラックが入るおそれがある。一方、膜厚が1,000μmより厚いと、シリコーンの使用量が増えてコスト高になる。
【0060】
ここで、オルガノポリシロキサン組成物(I)及び(II)の硬化は、ホットプレート、オーブン等、公知の加熱器具又は装置が使用される。条件としては、特に限定されるものではなく、付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物の硬化条件として公知の条件により硬化することができるが、好ましくは70〜150℃、特に80〜120℃で10分〜4時間、特に20分〜1時間程度の条件で硬化することができる。
【0061】
[太陽光入射側パネル(表面パネル)]
太陽光を入射させる側のパネルとしては、青板硝子、白板硝子又は強化硝子等の無機系ガラスが使用され、その他、合成樹脂材として、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又はエポキシ樹脂等の有機系ガラスも使用することができる。一般的には、透明性、耐候性が高い厚さ3mm程度の白板強化ガラスやポリカーボネートが用いられる。
【0062】
[太陽光入射と反対側のパネル(裏面パネル)]
太陽光入射と反対側となる裏面には、上記表面パネルと同様のガラス無機系及び有機系を使用することができる。また、太陽電池モジュール内に生じる部分的なホットスポット現象を緩和するため、銅、アルミニウム、鉄等の金属シート、シリカをはじめ、酸化チタン、アルミナ、窒化アルミニウムなど高い熱伝導性を有する材料を担持した硬質の合成樹脂を用いてもよい。
【0063】
[工程i’]
ここで、上記工程iにおいて、表面・裏面二枚の硬質パネルの片面に組成物(I)、(II)を塗布する際、
図3に示したように、表面パネル1及び裏面パネル2にそれぞれ各パネルの外周縁部を除いて組成物(I)、(II)を塗布し、硬化させる。この状態で上記組成物(I)、(II)が塗布されず、従ってシリコーン硬化膜(X)、(Y)が形成されていない上記パネル1及び2のいずれか一方の外周縁部にブチルゴム系熱可塑性接着剤4を配置する。
図3では、表面パネル1の外周縁部に該接着剤4を配置したが、これに限られず、裏面パネル2の外周縁部に配置するようにしてもよい。
ここで、ブチル系熱可塑性接着剤としては、太陽電池モジュールとアルミフレームを固定・接着させるものが使用できる。
この接着剤としては市販品が使用し得、例えば、横浜ゴム株式会社製「M−155P」や、株式会社日本シールボンド製「SB−4」が挙げられる。
なお、ブチル系熱可塑性接着剤を配置する場合、シリコーン硬化膜(X)、(Y)より厚いことが必要であり、その厚さはシリコーン硬化膜(X)、(Y)の合計厚さに対し1〜3mm厚めであることが好ましい。
【0064】
[工程ii]
工程iiは、表面・裏面二枚の硬質パネルのシリコーン硬化膜の間に太陽電池セルストリングスを挟み込むように配置し、積層体を形成する工程である。
ここで、太陽電池セルは、一般的な単結晶シリコン又は多結晶シリコンのうちから選ばれる1種もしくは2種のシリコン半導体を用いてなるもので、太陽電池セルストリングスは、ここでは、上記太陽電池セルをタブ線で接続し組みセルとしたものが挙げられる。
【0065】
[工程iii]
工程iiiは、上記積層体を減圧空間内に配置し、加熱しながら押圧して太陽電池セルストリングスをシリコーン硬化膜(X)、(Y)により封止する工程である。
図2は、工程iを採用した場合の太陽電池モジュールを示す。なお、
図3は太陽電池セルストリングスである。
一方、
図4は、工程i’を採用した場合の太陽電池モジュールを示す。この
図4のモジュールにあっては、太陽電池セルストリングスはシリコーン硬化膜(X)、(Y)によって封止されていると共に、外周縁部においてブチルゴム系熱可塑性接着剤4によって封止されている。
ここで、積層体を減圧空間内に配置する場合、その減圧度は特に制限されないが、−0.08〜−0.10MPaであることが好ましい。また、加熱・押圧条件も適宜選定されるが、50〜120℃、特に60〜100℃の加熱において、3〜5分間の真空減圧後に大気圧で5〜10分間程度押圧することが好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0067】
[オルガノポリシロキサンの調製]
[実施例1]
[オルガノポリシロキサン(I)]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が1,000mPa・sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.012mol/100gであるジメチルポリシロキサン100質量部に、白金原子として1質量%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05質量部、付加反応制御剤として1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン0.1質量部を加え、均一に混合した後、側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.0055mol/g)1.2質量部加え、調製液を調合した(総Si−H/Si−Vi(p)=0.5)。この調製液を、340mm×360mm・厚み3.2mmの白板熱強化ガラスに周囲を10mmにマスキングテープで土手を作った後、500μmの厚みに塗布し、120℃,10分間加熱硬化させてシリコーン塗布膜を得て、これを表面パネルとした。なお、このシリコーンの硬度は針入度50であった。
【0068】
[オルガノポリシロキサン(II)]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が1,000mPa・sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.012mol/100gであるジメチルポリシロキサン131質量部、(CH
3)
3SiO
1/2単位、(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位及びSiO
2単位からなる樹脂質共重合体[〔(CH
3)
3SiO
1/2単位と(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位との合計〕/SiO
2単位=0.8(モル比)、ビニル基含有量=0.0085mol/g]50質量部、白金原子として1質量%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.3質量部、トリアリルイソシアヌレート0.2質量部、反応制御剤エチニルシクロヘキサノール0.05質量部、下記化学式(2)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン25質量部、下記化学式(3)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン2.5質量部を均一に混合した(総Si−H/Si−Vi(q)=2.0)。340mm×360mm・厚み3.2mmの白板熱強化ガラスに周囲を10mmにマスキングテープで土手を作った後、500μmの厚みに塗布し、120℃,10分間加熱硬化させてシリコーン塗布膜を得て、これを裏面パネルとした。なお、このシリコーンの硬度はデュロメータタイプA20であった。
【0069】
【化1】
【0070】
[モジュール化]
表面、裏面パネルのマスキングテープを除去し、厚み2mmのテープ状の熱可塑性ブチルゴム接着剤(横浜ゴム株式会社製:M−155P)を裏面パネルの周囲(シリコーンが載っていない部分)に配置し、太陽電池セルストリングスを載せ、一番上に表面パネルのシリコーン塗膜面を太陽電池セルストリングス側を下にして積層体を作り、この積層体を真空ラミネーター槽に入れ、100℃で5分間減圧(−0.7MPa以下)後、5分間プレスを行った。
【0071】
[評価方法]
硬化物同士を密着させ、常圧で貼り合わせたものを120℃,30分間加熱した後、接着試験を行った。また、真空ラミネーターによるモジュール化後、シリコーン塗布膜により太陽電池セルストリングスが完全に封止されているか、目視にて確認を行った。また、モジュールを85℃⇔−40℃のヒートサイクル試験100回行い、改めて目視確認を行った。
【0072】
[実施例2]
[オルガノポリシロキサン(I)]
実施例1の(I)と同じように作製した。
[オルガノポリシロキサン(II)]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が1,000mPa・sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.012mol/100gであるジメチルポリシロキサン147質量部、分子鎖片末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が800mPa・sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.004mol/100gであるジメチルポリシロキサン92質量部、白金原子として1質量%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.06質量部、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン0.01質量部、分子鎖両末端のみにSi−H基を有する(Si−H量:0.013mol/g)オルガノハイドロジェンシロキサン21質量部、側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.0055mol/g)0.5質量部加え、調製液を調合した(総Si−H/Si−Vi(q)=1.3)。この硬化物は針入度107のシリコーンゲルであった。これらを用い、実施例1と同様にしてモジュール化して評価を行った。
【0073】
[実施例3]
[オルガノポリシロキサン(I)]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が1,000mPa・sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.012mol/100gであるジメチルポリシロキサン100質量部に、白金原子として1質量%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05質量部、付加反応制御剤として1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン0.1質量部を加え、均一に混合した後、側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.0055mol/g)1.9質量部加え、調製液を調合した(総Si−H/Si−Vi(p)=0.8)。この調製液を、340mm×360mm・厚み3.2mmの白板熱強化ガラスに周囲を10mmにマスキングテープで土手を作った後、500μmの厚みに塗布し、120℃,10分間加熱硬化させてシリコーン塗布膜を得て、これを表面パネルとした。なお、このシリコーンの硬度は針入度30であった。
[オルガノポリシロキサン(II)]
実施例1の(II)と同じように作製した。
これらを用い、実施例1と同様にしてモジュール化して評価を行った。
【0074】
[比較例1]
[オルガノポリシロキサン(I)]
実施例1の(I)と同じように作製した。
[オルガノポリシロキサン(II)]
実施例1の(I)と同じように作製した。
これらを用い、実施例1と同様にしてモジュール化して評価を行った。
【0075】
[比較例2]
[オルガノポリシロキサン(I)]
実施例1の(I)と同じように作製した。
[オルガノポリシロキサン(II)]
分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が1,000mPa・sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.012mol/100gであるジメチルポリシロキサン112質量部、分子鎖片末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された、23℃における粘度が800mPa・sであり、ビニル基(Vi)含有量が0.004mol/100gであるジメチルポリシロキサン73質量部、白金原子として1質量%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.06質量部、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルテトラシロキサン0.01質量部、分子鎖両末端のみにSi−H基を有する(Si−H量:0.013mol/g)オルガノハイドロジェンシロキサン13質量部、側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(Si−H量:0.0055mol/g)0.3質量部加え、調製液を調合した(総Si−H/Si−Vi(q)=1.0)。この硬化物は針入度65のシリコーンゲルであった。これらを用い、実施例1と同様にしてモジュール化して評価を行った。
【0076】
[比較例3]
[オルガノポリシロキサン(I)]
実施例2の(II)と同じように作製した。
[オルガノポリシロキサン(II)]
実施例2の(II)と同じように作製した。
これらを用い、実施例1と同様にしてモジュール化して評価を行った。
【0077】
結果を表1に示す。
【0078】
【表1】