特許第5983977号(P5983977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5983977-固体電解コンデンサの製造方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5983977
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/028 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   H01G9/02 331H
   H01G9/02 331G
   H01G9/02 331F
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-34419(P2011-34419)
(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公開番号】特開2011-192983(P2011-192983A)
(43)【公開日】2011年9月29日
【審査請求日】2014年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2010-35647(P2010-35647)
(32)【優先日】2010年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 明
(72)【発明者】
【氏名】山東 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 正志
(72)【発明者】
【氏名】入山 浩彰
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−053479(JP,A)
【文献】 特開2002−033245(JP,A)
【文献】 特開2002−313684(JP,A)
【文献】 特開2005−085947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回型固体電解コンデンサの製造方法であって、
セパレーターを使用したコンデンサ素子に、可溶性導電性高分子と、水および/または有
機溶剤を含み、表面張力を29.7mN/m以上、43.1mN/m以下の範囲に調整した導電性組成物を塗布する工程と、乾燥して導電性高分子層を形成する工程を有する、巻回型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記導電性組成物に含まれる有機溶剤の量が、1〜70質量%である、請求項1に記載の巻回型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記導電性組成物が、0.1〜20質量%の界面活性剤を更に含む、請求項1または2に記載の巻回型固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記導電性高分子が下記一般式(1)で表されるものである請求項1〜3の何れか一項に記載の巻回型固体電解コンデンサの製造方法。
【化1】

式(1)中、R〜Rは、各々独立に、−H、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、−F、−Cl、−Brまたは−Iであり、R〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質として導電性高分子層を備えた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルミニウム、ニオブ、タンタル、チタン、マグネシウムなどの弁作用を有する多孔質の金属体からなる陽極体の表面に、陽極酸化法により陽極酸化皮膜を形成し、次いで前記陽極酸化皮膜上に導電性高分子層をさらに形成して、この導電性高分子層を固体電解質として用いる固体電解コンデンサが開発されている。
このような固体電解コンデンサは、固体電解質として二酸化マンガンを用いた従来の固体電解コンデンサと比較して、固体電解質の導電率が10〜100倍高く、またESR(等価直列抵抗)を大きく減少させることが可能であり、小型電子機器の高周波ノイズの吸収用など様々な用途への応用が期待されている。
【0003】
一般的に、固体電解コンデンサの固体電解質として用いられる導電性高分子層を陽極酸化皮膜上に形成するためには、化学酸化重合法や、電解重合法が用いられている。
化学酸化重合法は、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ピロール、アニリンなどの導電性高分子のモノマーと、酸化剤やドーパント(導電補助剤)を含む溶液をに、表面に陽極酸化皮膜が形成された金属体(陽極体)を浸漬させ、陽極酸化皮膜上においてモノマーと酸化剤とを直接反応させて導電性高分子層を形成させる方法である。
一方、電解重合法は、予め陽極酸化皮膜上に導電性の下地層を形成しておき、該下地層上に導電性高分子のモノマーおよびドーパントを含む電解質液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜と下地層との間に電圧を印加して導電性高分子層を形成する方法である。
【0004】
例えば、特許文献1には、化学酸化重合法による導電性高分子層の形成方法が開示されている。具体的には、EDOTと、酸化剤およびドーパントを兼ねるp−トルエンスルホン酸鉄(III)とを有機溶媒に溶解させた溶液を、表面酸化が施されたアルミニウム電極の表面に塗布してポリマーを形成した上で、有機溶媒を除去して導電性高分子層を形成している。
また、特許文献2には、化学酸化重合法により形成されたポリピロールもしくはポリアニリンの導電性高分子層を下地とし、該下地の表面に同質の導電性高分子層を電解重合法によってさらに形成する方法が開示されている。
【0005】
しかし、これら化学酸化重合法や電解重合法は、陽極酸化皮膜上で重合反応を進行させるため、固体電解コンデンサの製造工程を制御するには困難となることがあった。
そこで、陽極酸化皮膜上で化学酸化重合を行わずに導電性高分子層を形成するスラリーポリマー塗布法が提案されている。スラリーポリマー塗布法は、予めモノマーを重合させてポリマー(導電性高分子)とし、該ポリマーを含む分散液を陽極酸化皮膜上に願信させて乾燥し、塗膜とすることにより導電性高分子層を形成する方法である。
スラリーポリマー塗布法は、化学酸化重合法や電解重合法とは異なり、陽極酸化皮膜上で重合反応を進行させるのではなく、予めモノマーと酸化剤とドーパントを化学反応させて重合反応が完了した導電性高分子を用いる。従って、重合反応を陽極酸化皮膜上で行う必要がないため、製造工程の制御が比較的容易であるという特徴を有する。
【0006】
ところで、陽極酸化皮膜内部への導電性高分子の分散性と含浸性と、導電性高分子の分子量の大きさとの間には相反関係があることが知られている。一方、スラリーポリマー塗布法によって形成される塗膜の導電率は、導電性高分子の分子量に比例する傾向がある。
従って、スラリーポリマー塗布法により導電性高分子層を形成する場合に、その導電率を上げてESRを低下させるためには、分子量の大きな導電性高分子を用いればよい。
【0007】
しかし、上述したように、分子量の大きな導電性高分子の分散液は、陽極酸化皮膜内部への含浸性が低いので、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部には導電性高分子層が形成されにくく、表層のみに導電性高分子層が形成されるため、得られる固体電解コンデンサの静電容量が低くなるという問題があった。
【0008】
そこで、固体電解質層を少なくとも2段階に分けて形成する方法が考えられている。
この方法では、まず化学酸化重合法により陽極酸化皮膜上に第一の導電性高分子層を形成し、ついでスラリーポリマー塗布法により、分子量が大きく導電性の高い導電性高分子の分散液を用いて、高導電率の第二の導電性高分子層を形成する。
【0009】
このように、スラリーポリマー塗布法を用いる場合でも、静電容量を確保したり、導電性高分子層の導電率を高めたりするためには、予め化学酸化重合を行って2段階に分けて導電性高分子層を形成する必要があった。また、化学酸化重合による第一の導電性高分子層の形成は、通常、モノマー、酸化剤、ドーパントを含む溶液に金属体を浸漬させる工程を複数回行うため、製造工程が煩雑になり製品管理上の問題が生じることがあった。
【0010】
そこで、製造工程の制御性に優れた固体電解コンデンサの製造方法として、例えば特許文献3には、表面に陽極酸化皮膜を形成した多孔質の弁作用金属体に、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の水分散体を、吐出機を用いて塗布した後、水洗浄する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3040113号公報
【特許文献2】特公平3−61331号公報
【特許文献3】特開2009−147122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献3に記載のように吐出機を用いる方法は、機械装置の初期投資が嵩む上、比較的高価な導電性高分子の利用率が低いため、無駄が増えコスト高になりやすい。
また、ポリジオキシチオフェンは、分子量は小さいものの水や有機溶剤に難溶であり、分散液中で凝集しやすく、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸しにくかった。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、静電容量が高く、高導電率の導電性高分子層を備えた巻回型固体電解コンデンサを、制御性のよい製造工程により製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討した結果、水や有機溶剤に溶けやすい導電性高分子を用いることで、導電性高分子を分散液ではなく水や有機溶剤に溶解した状態(ポリマー溶液)で使用できるため、導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部へ含浸しやすくなることを見出した。
しかし、近年、多孔質の金属体はさらに微細化されていたり、様々な形態の微細孔を有していたりする。また、巻回型固体電解コンデンサのように、繊維又は紙系のセパレーターに絶縁油を染み込ませたものでは、導電性高分子はセパレーターに浸透しづらく、コンデンサ内部の陽極酸化皮膜の微細孔に含浸させることが難しかった。
従って、多孔質金属体の表面に形成された陽極酸化皮膜も内部はより微細で複雑であり、該陽極酸化皮膜の内部に導電性高分子を含浸させるには、上述したポリマー溶液を用いるだけでは不十分であった。
そこで、さらに検討を重ねた結果、ポリマー溶液の表面張力を規定すること、または/および、界面活性剤を含むことで、セパレーターに絶縁油を染み込ませた巻回型固体電解コンデンサの場合でも、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への含浸性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第一の観点は、巻回型固体電解コンデンサの製造方法であって、セパレーターを使用したコンデンサ素子に、可溶性導電性高分子と、水および/または有機溶剤を含み、表面張力を29.7mN/m以上、43.1mN/m以下の範囲に調整した導電性組成物を塗布する工程と、乾燥して導電性高分子層を形成する工程を有する、巻回型固体電解コンデンサの製造方法である。
【0016】
また、本発明の第二の観点は、前記導電性組成物に含まれる有機溶剤の量が、1〜70質量%である、前記巻回型固体電解コンデンサの製造方法であり、第三の観点は、前記導電性組成物が、0.1〜20質量%の界面活性剤を更に含む、前記巻回型固体電解コンデンサの製造方法である。
【0017】
また、本発明の第四の観点は、前記導電性高分子が下記一般式(1)で表される前記巻回型固体電解コンデンサの製造方法である。
【化1】
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、−H、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、−F、−Cl、−Brまたは−Iであり、R〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。
【発明の効果】
【0019】
前記固体電解コンデンサの製造方法によれば、静電容量が高く、高導電率の導電性高分子層を備えた巻回型固体電解コンデンサを、制御性のよい製造工程により製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は巻回型固体電解コンデンサ素子の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
<巻回型固体電解コンデンサの製造方法>
本発明の実施の形態において、巻回型固体電解コンデンサは、導電性高分子層の形成工程の他は、公知の技術により製造される。
例えば、アルミニウム箔の表層近傍をエッチングにより多孔質体化した後、陽極酸化により誘電体酸化皮膜層(陽極酸化皮膜)を形成し、本実施の形態による導電性高分子層を含む固体電解質を形成した後、陰極部を形成し、陽極部および陰極部には外部端子を接続し外装を施して、本実施の形態にかかる巻回型固体電解コンデンサを得ることができる。
【0023】
本発明の一実施態様における固体電解質層の作製工程では、繊維又は紙系のセパレーターを使用したコンデンサ素子に、水または有機溶剤に可溶な導電性高分子と、絶縁油に溶解する溶剤1〜70質量%とを含み、表面張力を65mN/m以下に調整した導電性組成物を塗布し、乾燥して導電性高分子層を形成する。
本発明の更なる実施形態における固体電解質層の作製工程では、繊維又は紙系のセパレーターを使用したコンデンサ素子に、可溶性導電性高分子と、0.1〜20質量%の界面活性剤を含む導電性組成物を塗布し、乾燥して導電性高分子層を形成する。
【0024】
上記陽極酸化皮膜は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ニッケル等の金属材料(被膜形成金属)からなる電極(弁作用金属体)を陽極酸化して形成されたものである。多孔質の弁作用金属体を陽極酸化して形成される陽極酸化皮膜は、弁作用金属体の表面状態を反映し、表面が微細な凹凸状となっている。この凹凸の周期は、弁作用金属体の種類などに依存するが、通常、200nm以下程度である。また、凹凸を形成する凹部(微細孔)の深さは、弁作用金属体の種類などに特に依存しやすいので一概には決められないが、例えばアルミニウムを用いる場合、凹部の深さは数十nm〜1μm程度である。
【0025】
<導電性高分子層>
本発明において、導電性高分子層は、水または有機溶剤に可溶な導電性高分子(以下、「可溶性導電性高分子」という。)を含む。
なお、本発明において「導電性」とは、10Ω・cm以下の体積抵抗率を有することである。
可溶性導電性高分子としては、水または有機溶剤に溶解するものであれば特に限定されないが、スルホン酸基(−SOH)および/またはカルボキシ基(−COOH)を有するものが、溶解性の観点で好ましく用いられる。なお、可溶性導電性高分子において、スルホン酸基、カルボキシ基は、それぞれ、酸の状態(−SOH、−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO、−COO)で含まれていてもよい。
本発明において「可溶」とは、10gの水または有機溶剤(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。
【0026】
可溶性導電性高分子としては、例えば特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平01−301714号公報、特開平05−504153号公報、特開平05−503953号公報、特開平04−32848号公報、特開平04−328181号公報、特開平06−145386号公報、特開平06−56987号公報、特開平05−226238号公報、特開平05−178989号公報、特開平06−293828号公報、特開平07−118524号公報、特開平06−32845号公報、特開平06−87949号公報、特開平06−256516号公報、特開平07−41756号公報、特開平07−48436号公報、特開平04−268331号公報に示された水溶性導電性高分子が挙げられる。
【0027】
また、可溶性導電性高分子としては、導電性の観点から、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、−H、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、−F、−Cl、−Brまたは−Iであり、R〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基である。
ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。つまり、式(1)中、R〜Rのうちの少なくとも一つは、−SO、−SOH、−COOHまたは−COOである。特に、製造が容易な点で、R〜Rのうち、いずれか一つが炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルコキシ基であり、他のいずれか一つが−SOまたは−SOHであり、残りがHであるものが好ましい。
【0030】
可溶性導電性高分子は、当該可溶性導電性高分子を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を20〜100モル%含有することが好ましく、50〜100モル%含有することがより好ましく、pHに関係なく、水および有機溶剤への溶解性に優れる点で、100モル%含有することが特に好ましい。
また、可溶性導電性高分子は、導電性に優れる観点で、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
【0031】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する化合物としては、溶解性に優れる点で、ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)が特に好ましい。
【0032】
可溶性導電性高分子は、質量平均分子量が3000〜1000000であることが好ましく、3000〜50000であることがより好ましい。可溶性導電性高分子の質量平均分子量が3000以上であれば、導電性、成膜性および膜強度に優れる。可溶性導電性高分子の質量平均分子量が1000000以下であれば、水および有機溶剤への溶解性に優れる。
なお、可溶性導電性高分子の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定し、ポリエチレングリコール換算した値である。
【0033】
可溶性導電性高分子は、化学重合または電解重合などの各種合成法によって得られる。また、例えば特開平7−196791号公報、特開平7−324132号公報に記載の合成方法により製造することもできる。
【0034】
本発明の一実施態様において、導電性高分子層は、可溶性導電性高分子の他に、可溶性導電性高分子以外の導電性高分子(他の導電性高分子)や、界面活性剤等の添加剤など、他の材料などを含有してもよい。
他の導電性高分子としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリンなどが挙げられる。
【0035】
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの塩などが挙げられる。
【0037】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、第一〜第三脂肪アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウムおよびこれらの塩などが挙げられる。
【0038】
両性界面活性剤としては、例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などが挙げられる。
【0039】
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどが挙げられる。
【0040】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどが挙げられる。
ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。
これら界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の一実施態様において、導電性高分子組成物が界面活性剤を含有する場合、その含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、特に0.1〜5質量%が好ましい。界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であれば、詳しくは後述するが、導電性高分子層の形成に用いる、可溶性導電性高分子が溶媒に溶解した導電性組成物の表面張力を低下させることができる。その結果、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への含浸性が向上し、導電性高分子層の導電率が高まる。
一方、界面活性剤の含有量が20質量%以下であれば、導電性を良好に維持できる。
【0042】
<導電性組成物>
前記導電性組成物は、可溶性導電性高分子および絶縁油に溶解する溶剤を含有し、必要に応じて他の導電性高分子や、各種添加剤を溶媒に溶解することで得られる。
その際、表面張力を65mN/m以下になるように調整する。表面張力調整方法としては、例えば、水と有機溶剤の混合溶媒を使用する方法、水および/または有機溶剤に既存の界面活性剤を添加する方法等がある。
導電性組成物の表面張力が65mN/m以下であれば、陽極酸化皮膜が形成されたコンデンサ素子に対する濡れ性が向上するため、分子量の大きい可溶性導電性高分子を用いても、可溶性導電性高分子は陽極酸化皮膜の表面に堆積することなく、微細な凹凸の内部へ含浸できる。
なお、導電性組成物の表面張力は、可溶性導電性高分子の種類や量、溶媒の種類などによって調整できる。
【0043】
本発明において、絶縁油等の油分を溶解する溶剤は、固体電解コンデンサのセパレーターに含浸された絶縁油等の油分を溶解するものであれば、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等が挙げられる。
【0044】
本発明の一実施態様において、導電性組成物は、絶縁油に溶解する水および/または有機溶剤1〜70質量%とを含む。前記溶剤を含むことにより、可溶性導電性高分子をセパレーターに十分に浸透させて、コンデンサ内部の陽極酸化皮膜の微細孔に含浸させることができる。
【0045】
前記導電性組成物に用いる溶媒の具体例としては、可溶性導電性高分子を溶解し、且つ
前記絶縁油等の油分を溶解する溶剤を含有するものであれば特に限定されない。
前記導電性組成物に用いる溶媒の具体例としては、前記絶縁油等の油分を溶解する溶剤及び水を混合したものが好ましく用いられる。なお、溶媒は2種以上を用いても何ら差し支えない。
【0046】
導電性組成物において、可溶性導電性高分子は、溶媒に対して、0.5質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
可溶性導電性高分子の割合が0.5質量%以上であれば、十分な膜厚の導電性高分子層を形成できる。一方、可溶性導電性高分子の割合が30質量%以下であれば、導電性組成物中で可溶性導電性高分子が凝集するのを抑制でき、導電性組成物が高粘度化しにくくなり、可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部により含浸しやすくなる。
【0047】
本発明の一実施態様において、前記可溶性導電性高分子溶液の表面張力の調整には、既存の界面活性剤等を使用することができる。
【0048】
界面活性剤の具体例としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの塩などのアニオン系界面活性剤;第一〜第三脂肪アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウムおよびこれらの塩などのカチオン系界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどの非イオン系界面活性剤;およびフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤が用いられる。ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。なお、界面活性剤は二種以上用いても何らさしつかえない。さらに、上記記載の溶剤と混合して使用しても良い。
【0049】
前記導電性組成物は、可溶性導電性高分子、および、必要に応じて、他の導電性高分子や、界面活性剤などの添加剤を溶媒に溶解することで得られる。その際、表面張力が65mN/m以下になるように調整する。
導電性組成物の表面張力が65mN/m以下であれば、陽極酸化皮膜が形成された巻回型固体電解コンデンサ素子に対する濡れ性が向上するため、分子量の大きい可溶性導電性高分子を用いても、可溶性導電性高分子は陽極酸化皮膜の表面に堆積することなく、微細な凹凸の内部へ含浸できる。
【0050】
導電性組成物の表面張力は、含浸性の観点から、65mN/m以下、特に、60mN/m以下が好ましい。
【0051】
導電性組成物の表面張力は、可溶性導電性高分子の種類や量、上述したような溶媒の種類などによって調整できる。
例えば、溶媒として混合溶媒を用いる場合、有機溶剤の割合が多くなるに連れて、導電性組成物の表面張力は低くなる傾向にある。
また、導電性組成物の表面張力は、上述した界面活性剤を配合することでも調整できる。
特に、溶剤として水のみを用いる場合は、導電性組成物の表面張力が高くなる傾向にある。そのような場合は、界面活性剤を配合すると表面張力が低下しやすくなる。
【0052】
なお、導電性組成物の表面張力は、自動表面張力計(協和界面科学株式会社 CBVP−Z型)を用いて、プレート法(ウィルヘルミ法)で測定した。
すなわち、測定子(白金プレート)を測定溶液につけて、測定子が溶液に引っ張られる力(表面張力)と測定子を固定しているバネの力がつりあったときの、測定子が溶液に沈んだ変位から、表面張力を測定した。
【0053】
導電性組成物の塗布方法としては、ディップコート法、刷毛塗り法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、スプレーコート法、フローコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等などが挙げられる。中でも、操作が容易である点で、ディップコート法(浸漬法)が好ましい。
ディップコート法により導電性組成物を塗布する場合、作業性の観点から、導電性組成物への浸漬時間は、1〜30分が好ましい。また、ディップコートする際に、減圧時にディップさせて常圧に戻す、あるいは、ディップ時に加圧するなどの方法も有効である。
【0054】
スプレーコート法などは、外部からの物理的な力によって可溶性導電性高分子を陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸させることが可能であるが、機械装置の初期投資が嵩んだり、導電性組成物が陽極酸化皮膜以外の部分に飛び散りやすく可溶性導電性高分子の利用率が低下したりしやすい。
しかし、本発明であれば、上述した導電性組成物を用いて塗布を行うので、可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸しやすい。従って、スプレーコート法などを用いなくても、操作が容易で、初期投資がかかりにくく、しかも可溶性導電性高分子を無駄なく利用できるディップコート法を使用でき、経済的にも有益である。
【0055】
導電性組成物を塗布した後の乾燥方法としては、加熱乾燥が好ましいが、例えば、風乾や、スピンさせて物理的に乾燥させる方法などを用いてもよい。
また、乾燥条件は、可溶性導電性高分子や溶媒の種類により決定されるが、通常、乾燥温度は、乾燥性の観点から、20〜190℃が好ましく、乾燥時間は1〜30分が好ましい。
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、多孔質の弁作用金属体上に形成された陽極酸化皮膜上に、可溶性導電性高分子を含み、表面張力を規定した導電性組成物を塗布して導電性高分子層を形成するので、分子量の大きい可溶性導電性高分子を用いても、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部へ十分に含浸する。よって、陽極酸化皮膜上に高導電率の導電性高分子層を形成することができる。
【0057】
特に、近年は、多孔質の弁作用金属体はさらに微細化されていたり、様々な形態の微細孔を有していたりするので、陽極酸化皮膜も内部はより微細で複雑になっているが、本発明であれば、より微細で複雑な陽極酸化皮膜の内部にも、十分に可溶性導電性高分子を含浸できる。
よって、本発明により得られる巻回型固体電解コンデンサは、陽極酸化皮膜上に、その微細な凹凸の内部にまで十分に可溶性導電性高分子が含浸した導電性高分子層が形成されるので、静電容量が高く、コンデンサとしての性能に優れる。
また、本発明は、陽極酸化皮膜上で化学酸化重合を行わずに導電性高分子層を形成できるので、製造工程の制御が容易であり、制御性に優れる。
【0058】
なお、多孔質の弁作用金属体には、上記ではアルミニウムを例に説明したが、その他タンタル、ニオブ、ニッケルめっき品等特にアルミニウムに限定されるものではない。
【0059】
<セパレーター>
本発明において、巻回型固体電解コンデンサに使用されるセパレーターには、繊維又は紙系やPET等がある。巻回型固体電解コンデンサを作る工程で、セパレーターに絶縁油を染み込ませたものが用いられることもある。上記絶縁油としては、フタル酸エステルやマレイン酸エステル、フマル酸エステル、アルキルベンゼン油などが挙げられるが、鉱油、ジアリルエタン油、アルキルベンゼン油、脂肪族エステル油、芳香族エステル油、多環芳香族油、シリコン油等の電気絶縁油またはこれらの混合物が含まれるものであれば特に限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
<表面張力測定方法>
導電性組成物の表面張力は、自動表面張力計(協和界面科学株式会社 CBVP−Z型)を用いて、プレート法(ウィルヘルミ法)で測定した。
すなわち、測定子(白金プレート)を測定溶液につけて、測定子が溶液に引っ張られる力(表面張力)と測定子を固定しているバネの力がつりあったときの、測定子が溶液に沈んだ変位から、表面張力を測定した。
【0062】
<含浸性評価>
試験片を縦方向(積層方向)に切断し、これを走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ、「S−4300SE/N」、)にて、観察倍率1000〜30000倍で観察して、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への可溶性導電性高分子の含浸状態を確認した。以下に示す評価基準にて含浸性の評価を行った。
【0063】
(含浸性評価基準)
◎:可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に十分含浸している。
○:可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に十分ではないが含浸している。
△:可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部にやや含浸している。
×:可溶性導電性高分子の陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への含浸が不十分である。
【0064】
<電気容量測定>
電気容量はLCRメーター(アジレント製E4980A プレシジョンLCRメーター)を用いて周波数120Hzで測定した。
【0065】
[製造例1、可溶性導電性高分子(a−1)]
a−1:ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の合成
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを,25℃で100mmolのトリエチルアミン水溶液に攪拌溶解し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、重合体粉末15gを得た。この重合体の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリエチレングリコール換算で求めた質量平均分子量は約10000であった。
【0066】
<導電性組成物(B1〜11)の調整>
B−1:a−1(5質量部)と、溶媒として水(100質量部)を混合した。
B−2:a−1(5質量部)と、溶媒として水(50質量部)とイソプロピルアルコール(IPA)(50質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−3:a−1(5質量部)と、溶媒として水(50質量部)とアセトン(50質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−4:a−1(5質量部)と、溶媒として水(50質量部)とメタノール(50質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−5:a−1(5質量部)と、溶媒として水(90質量部)と、メタノール(10質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−6:a−1(5質量部)と、溶媒として水(75質量部)とメタノール(25質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−7:a−1(3質量部)と、溶媒として水(100質量部)を混合した。
B−8:a−1(3質量部)と、溶媒として水(80質量部)とメタノール(20質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−9:a−1(5質量部)と、溶媒として水(100質量部)に界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王株式会社製の「ペレックスOT−P」(c−1)を0.5質量%)混合した。
B−10:a−1(3質量部)と、溶媒として水(100質量部)に界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王株式会社製の「ペレックスOT−P」(c−1)を0.1質量%)混合した。
B−11:a−1(3質量部)と、溶媒として水(80質量部)とイソプロピルアルコール(IPA)(20質量部)の混合溶媒とを混合した。
【0067】
(導電性組成物の表面張力の測定)
導電性組成物(B−1〜B−11)を調整し、各々の表面張力を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
[実施例1]
表1(B−2)に示す組成で導電性組成物を調整し、前記組成物溶液に誘電体層を有する陽極酸化したアルミ箔を浸漬し、130℃で乾燥することによって導電性高分子層を形成させた巻回型固体電解コンデンサ用アルミ箔を作製した。前記巻回型固体電解コンデンサ用アルミ箔の含浸性評価の結果を表2に示す。
【0070】
[実施例2〜6、比較例1]
表1に示す種類の導電性組成物(実施例2〜6:B―3〜6、B−9、比較例1:B−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして含浸性評価を行った。含浸性評価の結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
[実施例7〜9、比較例2]
PET製のセパレーターを有するAl巻回コンデンサ素子にB−7〜10(実施例7〜9:B−8、10、11、比較例2:B−7)の導電性組成物を浸漬させた後に、130℃で1時間乾燥させたものを、LCRメーター(アジレント製E4980A プレシジョンLCRメーター)を用いて120Hzでの電気容量を測定した。その結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表2より、本実施例で用いたアルミ箔では、表面張力65mN/m以下になるようにメタノール水溶液等や界面活性剤を添加した組成に調整することで、コンデンサの陽極酸化皮膜の微細孔に導電性高分子層を十分に含浸させることができた。
一方、表面張力が67mN/mである比較例1は、コンデンサの陽極酸化皮膜の微細孔に導電性高分子層を十分に含浸させることができなかった。
また、表3より、表面張力が65mN/m以下の場合、コンデンサの陽極酸化皮膜の微細孔に導電性高分子が十分に含浸(陽極酸化皮膜の微細孔の被覆率が改善)できたため、高い電気容量が発現させることができた。
一方、表面張力が67mN/mである比較例2は、コンデンサの陽極酸化皮膜の微細孔に導電性高分子層を十分に含浸させることができず、十分な電気容量を発現することができなかった。
【符号の説明】
【0075】
図1
1 巻回型コンデンサ(素子)
2 陰極
3 陽極
4 セパレーター
図1