【実施例】
【0045】
次に、前記した本発明の波長選択フィルタ1による、赤外線波長域の光(赤外光)の再帰反射性と可視光の透過性を評価するために、以下に示す実施例1〜5と比較用の比較例1、2の構成を有する波長選択フィルタで評価を行った。
【0046】
なお、この赤外線波長域の光(赤外光)の再帰反射性と可視光の透過性を評価するために、RCWA(厳密結合波解析)法による電磁波解析シミュレーションソフトDiffract MOD(R-Soft社)を用いてシミュレーションを行った。
【0047】
〈実施例1〉
実施例1では、
図1に示した波長選択フィルタ1の偏向性回折格子2において、以下のような条件に設定した。
【0048】
第1の媒質2aの屈折率(n1):1.52
第2の媒質2bの屈折率(n2):1.72
屈折率変調周期(P):300nm
第1の媒質2aの厚み(d1):150nm
第2の媒質2bの厚み(d2):150nm
偏向性回折格子2の厚さ(t):1500nm(1.5μm)
第1の媒質2aと第2の媒質2bの積層角度(α):30°
【0049】
また、偏向性回折格子2の両面に設けられる第1、第2の透光性基材3,4においては、以下のような条件に設定した。
【0050】
第1の透光性基材3の屈折率:1.52
第2の透光性基材4の屈折率:1.52
【0051】
図4、
図5は、実施例1の波長選択フィルタ1において、入射光Lとして太陽光が第1の透光性基材3側から偏向性回折格子2の主面2’(
図1参照)の法線方向に対して30°の入射角度θi(空気中では、49°の入射角度に相当)で入射するときの、偏光方向がTE偏光とTM偏光の場合の反射特性と透過特性である。
【0052】
なお、
図4(a),(b)がTE偏光における反射特性と透過特性であり、
図5(a),(b)がTM偏光における反射特性と透過特性である。
図4(a)、
図5(a)の縦軸(反射率)において、1.0が反射率100%であり、
図4(b)、
図5(b)の縦軸(透過率)において、1.0が透過率100%である。また、反射率とは、反射する全ての次数の回折光を含み、透過率とは、透過する全ての次数の回折光を含む。以下の実施例、比較例においても同様である。
【0053】
図4(a)、
図5(a)に示すように、30°入射の場合は、偏向性回折格子2によってTE偏光及びTM偏光とも赤外線波長域で−1次反射回折光(a1)が発生している。なお、この発生した−1次反射回折光の法線方向に対する反射角度は、波長950nmで32.8°であった。即ち、赤外線波長域の光(赤外線)のみが選択されて再帰反射している。
【0054】
なお、実施例1では、+1次反射回折光及び0次反射回折光の発生はほとんど無視できる程度であった。
【0055】
また、
図4(b)、
図5(b)に示すように、30°入射の場合は、偏向性回折格子2によってTE偏光及びTM偏光とも可視光波長域の光(0次透過光:b1)が透過し、第2の透光性基材4から出射する。即ち、可視光域では、偏向性回折格子2内で回折光や反射光が発生していないので、偏向性回折格子2が透明で着色もない。
【0056】
以下の表は、実施例1、及び実施例2〜5と比較例1、2の波長選択フィルタにおける、可視光の平均透過率、赤外線の最大反射率、−次数の反射回折効率、赤外線波長域で最大反射率をとる波長における反射率Rmaxと−次数の反射回折効率Erとの比(Er/Rmax)を示したシミュレーション結果である。
【0057】
このように、実施例1の波長選択フィルタを、鉛直方向に設置される建物の窓ガラスの表面に配置した場合、斜め上方にある太陽光が上記の30°入射の状況に相当するので、赤外線波長域の光(赤外光)を選択して再帰反射させて、可視光を透過させることができる。
【0058】
【表1】
【0059】
図6、
図7は、実施例1の波長選択フィルタ1において、
図8に示すように、入射光Lとして太陽光が第1の透光性基材3側から偏向性回折格子2の主面2’の法線方向に対して−30°(空気中では、−49°の入射角度に相当)の入射角度θiで入射するときの、偏光方向がTE偏光とTM偏光の場合の反射特性と透過特性である。なお、
図6(a),(b)がTE偏光における反射特性と透過特性であり、
図7(a),(b)がTM偏光における反射特性と透過特性である。
【0060】
図6(a)、
図7(a)に示すように、−30°入射の場合は、TE偏光及びTM偏光とも可視光波長域から赤外線波長域において、偏向性回折格子2内での反射(−1次反射回折光a1、0次反射回折光a2、+1次反射回折光a3)はほとんど発生していない。
【0061】
また、
図6(b)、
図7(b)に示すように、−30°入射の場合は、TE偏光及びTM偏光とも可視光波長域から赤外線波長域において0次透過光b1が偏向性回折格子2を透過し、第2の透光性基材4から出射した。即ち、入射光Lが第1の透光性基材3側から偏向性回折格子2の主面2’の法線方向A2に対して−(マイナス)の入射角度で入射する場合は、TE偏光及びTM偏光とも可視光波長域から赤外線波長域で0次透過光が透過する。なお、
図7(b)において、b3は+1次透過光である。
【0062】
〈実施例2〉
実施例2では、
図1に示した波長選択フィルタ1の偏向性回折格子2において、以下のような条件に設定した。
【0063】
偏向性回折格子2の厚さ(t):2000nm(20μm)
第1の媒質2aと第2の媒質2bの積層角度(α):30°
他の設定条件は上記した実施例1と同様である。
【0064】
図9は、実施例2の波長選択フィルタ1において、入射光Lとして太陽光が第1の透光性基材3側から偏向性回折格子2の主面2’(
図1参照)の法線方向A2に対して30°の入射角度θiで入射するときの、偏光方向がTE偏光の場合の反射特性と透過特性である。
図9(a)がTE偏光における反射特性であり、
図9(b)がTE偏光における透過特性である。なお、偏光方向がTM偏光の場合においても、略同様の反射特性と透過特性であった。
【0065】
図9(a)に示すように、30°入射の場合は、偏向性回折格子2によって赤外線波長域で−1次反射回折光a1が発生し、特に、900〜1050nm程度の範囲で高い−1次反射回折光が発生している。なお、この発生した−1次反射回折光の法線方向A2に対する反射角度は、波長1000nmで36.6°であった。即ち、赤外線波長域の光(赤外光)が選択されて再帰反射している。
【0066】
なお、実施例2では、可視光波長域の一部の波長域(460nm付近)で0次反射回折光a2が若干発生したが、他の波長域での+1次反射回折光及び0次反射回折光の発生はほとんど無視できる程度であった。
【0067】
また、
図9(b)に示すように、30°入射の場合は、偏向性回折格子2によって可視光波長域の光(0次透過光b1)が透過し、第2の透光性基材4から出射する。なお、−1次透過光及び+1次透過光はほとんど無視できる程度であった。
【0068】
このように、偏向性回折格子2の厚さ(t)を実施例1の場合よりも厚くした場合、偏向性回折格子2内で光が通過する界面の数が増加し、赤外線波長域での反射がより大きくなるので、赤外線波長域の光(赤外線)をより効果的に再帰反射させることができる。
【0069】
〈実施例3〉
実施例3では、
図1に示した波長選択フィルタ1の偏向性回折格子2において、以下のような条件に設定した。
【0070】
屈折率変調周期(P):350nm
第1の媒質2aの厚み(d1):175nm
第2の媒質2bの厚み(d2):175nm
偏向性回折格2の厚さ(t):1500nm(1.5μm)
第1の媒質2aと第2の媒質2bの積層角度(α):30°
他の設定条件は上記した実施例1と同様である。
【0071】
図10は、実施例3の波長選択フィルタ1において、入射光Lとして太陽光が第1の透光性基材3側から偏向性回折格子2の主面2’(
図1参照)の法線方向A2に対して30°の入射角度θiで入射するときの、偏光方向がTE偏光の場合の反射特性と透過特性である。
図10(a)が反射特性であり、
図10(b)が透過特性である。なお、偏光方向がTM偏光の場合においても、略同様の反射特性と透過特性であった。
【0072】
図10(a)に示すように、30°入射の場合は、偏向性回折格子2によって赤外線波長域で−1次反射回折光a1が発生している。なお、この発生した−1次反射回折光の法線方向A2に対する反射角度は、波長1100nmで32.3°であった。即ち、赤外線波長域の光(赤外線)が選択されて再帰反射している。
【0073】
なお、実施例3では、可視光波長域の一部の波長域で0次反射回折光a2が若干発生したが、他の波長域での+1次反射回折光及び0次反射回折光の発生はほとんど無視できる程度であった。
【0074】
また、
図10(b)に示すように、30°入射の場合は、偏向性回折格子2によって可視光波長域の光(0次透過光b1)が透過し、第2の透光性基材4から出射する。なお、−1次透過光及び+1次透過光は、ほとんど無視できる程度であった。
【0075】
このように、傾斜積層された第1の媒質2aと第2の媒質2bの屈折率変調周期(P)を変更(実施例3では、実施例1の300nmから350nmに変更)することで、反射(再帰反射)する波長域(赤外線波長域)を制御することができる。即ち、屈折率変調周期(P)が大きくなるように変更すると、反射(再帰反射)する波長域(赤外線波長域)を長い波長側へシフトさせることができる。
【0076】
〈実施例4〉
実施例4では、
図1に示した波長選択フィルタ1の偏向性回折格子2において、以下のような条件に設定した。
【0077】
屈折率変調周期(P):460nm
第1の媒質2aの厚み(d1):230nm
第2の媒質2bの厚み(d2):230nm
第1の媒質2aと第2の媒質2bの積層角度(α):50°
他の設定条件は上記した実施例1と同様である。
【0078】
図11は、実施例4の波長選択フィルタ1において、入射光Lとして太陽光が第1の透光性基材3側から偏向性回折格子2の主面2’(
図1参照)の法線方向A2に対して30°の入射角度θiで入射するときの、偏光方向がTE偏光の場合の反射特性と透過特性である。
図11(a)が反射特性であり、
図11(b)が透過特性である。なお、偏光方向がTM偏光の場合においても、略同様の反射特性と透過特性であった。
【0079】
図11(a)に示すように、30°入射の場合は、偏向性回折格子2によって赤外線波長域で−1次反射回折光a1が発生している。なお、発生した−1次反射回折光の法線方向A2に対する反射角度は、波長1200nmで54.7°であった。即ち、赤外線波長域の光(赤外線)が選択されて再帰反射している。
【0080】
なお、実施例4では、他の波長域での+1次反射回折光及び0次反射回折光の発生はほとんど無視できる程度であった。
【0081】
また、
図11(b)に示すように、30°入射の場合は、偏向性回折格子2によって可視光波長域の光(0次透過光b1)が透過し、第2の透光性基材4から出射する。なお、−1次透過光及び+1次透過光は、ほとんど無視できる程度であった。
【0082】
このように、屈折率変調周期(P)、第1の媒質2aと第2の媒質2bの厚み(d1,d2)、積層角度(α)を変更することで、再帰反射する赤外線の波長域の範囲や反射角度を制御することができる。
【0083】
〈実施例5〉
図12は、実施例5における偏向性回折格子2’を有する波長選択フィルタ1を示す概略構成図である。
【0084】
図12に示すように、実施例5の偏向性回折格子2’は、屈折率変調周期(P1)を300nmとした第1の媒質2aと第2の媒質2b、及び屈折率変調周期(P2)を350nmとした第1の媒質2aと第2の媒質2bがそれぞれ5周期ごとに交互に傾斜積層された構成である。
【0085】
実施例5では、
図12に示した波長選択フィルタ1の偏向性回折格子2’において、以下のような条件に設定した。
【0086】
第1の媒質2aの屈折率(n1):1.52
第2の媒質2bの屈折率(n2):1.72
屈折率変調周期(P1):300nm
屈折率変調周期(P2):350nm
屈折率変調周期(P1)での第1の媒質2aの厚み(d1):150nm
屈折率変調周期(P1)での第2の媒質2bの厚み(d2):150nm
屈折率変調周期(P2)での第1の媒質2aの厚み(d’1):350nm
屈折率変調周期(P2)での第2の媒質2bの厚み(d’2):350nm
偏向性回折格子2’の厚さ(t):6000nm(6μm)
第1の媒質2aと第2の媒質2bの積層角度(α):30°
【0087】
なお、偏向性回折格子2’の両面に設けられる第1、第2の透光性基材3,4の条件は実施例1と同様である。
【0088】
実施例5の偏向性回折格子2’では、傾斜積層された第1の媒質2aと第2の媒質2bの計算上の1周期(=300nm×5周期+350nm×5周期)は3250nmとなり、この1周期に合わせた次数の反射回折光と透過光が得られる。また、300nmの屈折率変調周期(P1)による回折や、350nmの屈折率変調周期(P2)による回折などが混在し、多くの次数にわたって回折光が発生する。本実施例では、主として−8次、−9次、−10次、−11次、−12次の回折光が得られた。本実施例では、これらをまとめて−側反射回折光(a’1)とする。
【0089】
図13は、実施例5の波長選択フィルタ1において、入射光Lとして太陽光が第1の透光性基材3側から偏向性回折格子2’の主面2’の法線方向A2に対して30°の入射角度θiで入射するときの、偏光方向がTE偏光の場合の反射特性と透過特性である。
図13(a)が反射特性であり、
図13(b)が透過特性である。なお、偏光方向がTM偏光の場合においても、略同様の反射特性と透過特性であった。
【0090】
図13(a)に示すように、この偏向性回折格子2’によって赤外線波長域で−側反射回折光(−次数を多数含んでいる反射回折光)a’1が発生している。なお、この発生した−側反射回折光の法線方向A2に対する反射角度は、波長870nmで33.8°、波長960nmで34.7°、波長1060nmで35.0°、波長1170nmで34.5°、波長1320nmで34.7°であった。即ち、赤外線波長域の光(赤外線)が選択されて再帰反射している。
【0091】
なお、実施例5では、他の波長域での0次反射回折光及び+の次数の反射回折光(+側反射回折光)の発生はほとんど無視できる程度であった。
【0092】
また、
図13(b)に示すように、この偏向性回折格子2’によって可視光波長域の光(0次透過光b1)が透過し、第2の透光性基材4から出射する。なお、−の次数の透過光(−側透過光)及び+の次数の透過光(+側透過光)は、ほとんど無視できる程度であった。
【0093】
このように、異なる屈折率変調周期の第1の媒質2aと第2の媒質2bを、所定周期(本実施例では5周期)ごとに交互に傾斜積層させるようにすることで、幅広い波長域で高い反射率を実現でき、また、再帰反射する赤外光の波長域や、それぞれの反射ピークの重なり度合いを制御することができる。
【0094】
〈比較例1〉
図14は、比較例1における波長選択フィルタを示す概略構成図である。
【0095】
図14に示すように、比較例1における波長選択フィルタは、透光性を有する屈折率1.52で厚さd1が150nmの第1の層20と、透光性を有する屈折率1.72で厚さd2が150nmの第2の層21とを交互に積層(この比較例1では16層)からなる積層体22と、この積層体22の両面にそれぞれ設けた、屈折率1.52で厚さ2000nm(2μm)の透明樹脂シートなどの第1、第2の透光性基材23,24とで構成されている。
【0096】
図15は、比較例1の波長選択フィルタにおいて、入射光Lとして太陽光が第2の透光性基材24側から積層体12の法線方向に対して30°の入射角度θiで入射するときの、偏光方向がTE偏光の場合の反射特性と透過特性である。なお、
図15(a)が反射特性であり、
図15(b)が透過特性である。
【0097】
図15(a)に示すように、この積層体12によって赤外線波長域の光(赤外線)の一部を選択して正反射(0次反射a)している。なお、可視光域の光の一部も少し正反射(0次反射)している。また、比較例1の波長選択フィルタでは、−1次反射光及び+1次反射光の発生はほとんど無視できる程度であった。
【0098】
また、
図15(b)に示すように、この積層体12によって可視光波長域の光(0次透過光b)が透過し、第2の透光性基材14から出射する。なお、−1次透過光及び+1次透過光は、ほとんど無視できる程度であった。
【0099】
このように、比較例1の波長選択フィルタでは、赤外線波長域の光(赤外線)の一部を選択して正反射(0次反射)しているだけであり、再帰反射性は得られていない。
【0100】
〈比較例2〉
図16は、比較例2における波長選択フィルタを示す概略構成図である。
【0101】
図16に示すように、比較例2における波長選択フィルタは、透光性を有する屈折率1.52で幅d1が300nmの第1の媒質30と、透光性を有する屈折率1.72で幅d2が300nmの第2の媒質31が周期600nmで交互に配置された構成の回折格子32と、この回折格子32の両面にそれぞれ設けた、屈折率1.72で厚さ2000nm(2μm)の透明樹脂シートなどの第1、第2の透光性基材33,34とで構成されている。なお、回折格子22の高さhは4000nm(4μm)である。
【0102】
図17は、比較例2の波長選択フィルタにおいて、入射光Lとして太陽光が第1の透光性基材13側から回折格子32の法線方向に対して30°の入射角度θiで入射するときの、偏光方向がTE偏光の場合の反射特性と透過特性である。なお、
図17(a)が反射特性であり、
図17(b)が透過特性である。
【0103】
図17(a)に示すように、この回折格子32によって赤外線波長域の光(赤外線)の一部が少し正反射(0次反射a)しているだけで、他の波長域ではほとんど反射はなかった。
【0104】
また、
図17(b)に示すように、この回折格子2を透過した可視光波長域から赤外線波長域の光(0次透過光b1、−1次透過光b2)が回折している。なお、+1次透過光はほとんど無視できる程度であった。
【0105】
このように、比較例2の波長選択フィルタでは、赤外線波長域の光(赤外線)の再帰反射性は得られていない。
【0106】
上記表に示したように、実施例1〜5の波長選択フィルタでは、−次数の反射回折効率が29〜100%であったが、比較例1、2の波長選択フィルタでは、−次数の反射回折効率は0%であった。また、実施例1〜5の波長選択フィルタでは、赤外線波長域で最大反射率をとる波長における反射率(Rmax)と−次数の反射回折効率(Er)との比(Er/Rmax)が0.98〜1.00であったが、比較例1、2の波長選択フィルタでは、Er/Rmaxが0.00であった。
【0107】
(本発明の波長選択フィルタ1を配置した窓ガラス)
図18に示すように、上記した偏向性回折格子2を有する波長選択フィルタ1を、ビルディングなどの建物の窓材としての窓ガラス40の外側表面(内側表面でもよい)に配置した場合、斜め上方から太陽光Lが入射すると、上記したように赤外線波長域の光(赤外線)である−1次反射回折光a1のみを選択して再帰反射させ、可視光波長域の光(可視光)である0次透過光b1のみを透過させる。
【0108】
この偏向性回折格子2としては、例えば実施例1の構成のものを用いることができる。
【0109】
このように、窓ガラス40に偏向性回折格子2を配置することによって、太陽光のうちの可視光のみを窓ガラス40を透過させ、太陽光に含まれる赤外線を太陽光の入射方向側へ再帰反射させることができる。
【0110】
これにより、赤外線が太陽光の入射方向側へ再帰反射されるので、窓ガラス40内側の室内の温度上昇を抑えることができ、かつ反射された赤外線が地表面側に向かわないので地表面周囲の温度上昇も抑制することができる。よって、特にビルディングが密集している都市部でのヒートアイランド現象による温度上昇を抑えることが可能となるので、屋内を冷房するためのエネルギー消費量を低減することができる。
【0111】
なお、波長選択フィルタ1を建物の窓ガラスに設置する以外にも、例えば自動車等の車両の窓ガラス(フロントウィンドウ、サイドウィンドウ、リアウィンドウなど)にも設置することにより、太陽光に含まれる赤外線を太陽光の入射方向側へ再帰反射させることができるので、反射した赤外線が道路の路面等を照らすことを大幅に抑制することができる。