(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。また、
図2及び
図3は、それぞれ、散乱光度計および吸光光度計の構成を概略的に示す図である。
【0013】
図1において、自動分析装置は、サンプルディスク5、第1及び第2試薬ディスク13A,13B、反応ディスク1、試料分注機構7、試薬分注機構12A,12B、及び、コンピュータ(制御装置)18を含むその他の機能部とから概略構成されている。
【0014】
サンプルディスク5には、血液や尿などの生体サンプル(以下、試料と称する)が収容された複数の試料容器6が周方向に並べて配置されている。サンプルディスク5は、図示しない回転駆動機構によって周方向に回転駆動されることにより、試料容器6を所定の位置に移動させる。
【0015】
第1及び第2試薬ディスク13A,13Bは、それぞれ、試薬保冷庫9A,9Bを備えており、自動分析装置における分析処理の各処理項目に用いる試薬が収容された複数の試薬ボトル10A,10Bが周方向に並べて配置されている。第1及び第2試薬ディスク13A,13Bは、図示しない回転駆動機構によって周方向に回転駆動されることにより、試薬ボトル10A,10Bを所定の位置に移動させる。また、第1及び第2試薬ディスク13A,13Bには、各試薬ボトル10A,10Bに設けられた試薬識別情報を読み取る読取装置34A,34Bが配置されており、読み取った試薬識別情報は、第1及び第2試薬ディスク13A,13B上のポジション情報とともにインタフェース19を介してコンピュータ(制御装置)18に送られ、測定日時などと関連付けられてメモリ(記憶部)11に記憶される。試薬識別情報は、例えば、バーコードで表されており、読取装置34A,34Bはバーコード読取装置である。
【0016】
反応ディスク1は、恒温維持装置4によって所定の温度(例えば37℃)に制御された恒温槽(反応槽)3を備えており、試料と試薬の混合液(又は、反応液とも称する)が収容される複数の反応容器(反応セル)2が周方向に並べて配置されている。反応ディスク1は、図示しない回転駆動機構によって周方向に回転駆動されることにより、周方向に沿った搬送経路で反応容器2が搬送される。なお、反応ディスク1の回転方向、回転角度、および回転速度は、コンピュータ(制御装置)18により制御されている。
【0017】
試料分注機構7は、試料容器6に収容された試料を試料分注位置7a(後の
図4参照)の反応容器2に分注するものであり、試薬分注機構12A,12Bは、試薬ボトル10A,10B収容された試薬を第1及び第2試薬分注位置12a,12b(後の
図4参照)の反応容器2に分注するものである。反応容器2に分注された試料と試薬の混合液は、試薬分注機構12A,12Bにおけるそれぞれの分注位置に設けられた攪拌機構33A,33Bにより攪拌される。
【0018】
サンプルディスク1および試料分注機構7の動作は、サンプル分注制御部20によって制御される。第1及び第2試薬ディスク13A,13B、試薬分注機構12A,12B、攪拌機構33A,33Bの動作は、試薬分注制御部21により制御される。サンプル分注制御部20と試薬分注制御部21は、インタフェース19を介して接続されたコンピュータ(制御装置)18により制御される。
【0019】
反応ディスク1には、反応容器2に収容された検体と試薬の混合液(反応液)の吸光度を検出する1つ以上の吸光光度計41と、反応液の散乱光度を検出する1つ以上の散乱光度計40とが設けられている。なお、本実施の形態では、吸光光度計41と散乱光度計40とをそれぞれ1つずつ設けた場合を示して説明する。
【0020】
図2に示すように、吸光光度計41は、測定対象の試料と試薬との混合液(反応液)を収容する反応容器2に多波長光を照射する多波長光源(透過光検出用光源)44(例えば、ハロゲン光源)と、反応容器2及び収容物である混合液(反応液)を透過する透過光を検出する透過光検出器45とを備えている。反応ディスク1の搬送経路に沿って周方向に駆動される反応容器2が多波長光源44と透過光検出器45の間の透過光検出位置を通るときに、透過光量が検出される。透過光検出器45で検出された透過光量(検出結果)は、A/D変換器16によりディジタル変換され、インタフェース19を介してコンピュータ(制御装置)18に送られる。
【0021】
図3に示すように、散乱光度計40は、測定対象の試料と試薬との混合液(反応液)を収容する反応容器2に単波長光を照射する単波長光源(散乱光検出用光源)14(例えば、LED光源:Light Emitting Diode 光源)と、単波長光源14の照射により反応容器2及び収容物である混合液(反応液)から生じる散乱光を検出する散乱光検出器15とを備えている。散乱光検出器15は、単波長光源14から照射された単波長光の光軸上(角度0度)に配置された検出器15aの他、光軸を中心とする円周上に光軸に対して角度θ1に配置された検出器15b、及び角度θ2に配置された検出器15cを含む複数の検出器により構成されている。反応ディスク1の搬送経路に沿って周方向に駆動される反応容器2が単波長光源14と散乱光検出器15の間の散乱光検出位置を通るときに、散乱光量が検出される。散乱光検出器45で検出された散乱光量(検出結果)は、A/D変換器16によりディジタル変換され、インタフェース19を介してコンピュータ(制御装置)18に送られる。
【0022】
測定の終了した混合液(反応液)が収容された反応容器2は洗浄位置で洗浄機構17により洗浄処理される。
【0023】
また、自動分析装置には、入力装置としてのキーボード24、表示装置としてのCRTディスプレイ25、印刷出力装置としてのプリンタ22、FDなどの外部出力メディアに記録する記録媒体ドライブ23、記憶装置(記憶部)としてのメモリ11がインタフェース19を介してコンピュータ(制御装置)18を含む各機能部と接続されている。メモリ11は、ハードディスクなどの記憶装置であり、分析結果のほか、オペレータ毎に設定されたパスワードや、画面の表示レベル、分析パラメータ、分析依頼項目内容、キャリブレーション結果などの情報が記憶されている。
【0024】
図4は、反応ディスク1に配置した反応容器2の搬送経路における各構成の配置を概略的に示す図である。
【0025】
図4に示すように、本実施の形態における搬送経路上には、試料分注位置7a、第1試薬分注位置12a、第2試薬分注位置12b、散乱光検出位置40a、透過光検出位置41a、及び、洗浄位置17aが反時計回りにその順番で配置されており、それぞれの位置において、搬送経路上を搬送される反応容器2に対して作業が行われる。
【0026】
ここで、本実施の形態の測定対象試料に対する測定原理について説明する。
【0027】
(1)測定方法
(1−1)吸光光度計41を用いた測定
測定対象の試料と試薬の混合液(反応液)に多波長光源(透過光検出用光源)44から照射した光の透過光量を透過光検出器45により測定し、吸光度の測定値に基づいて試料の検査を行う。
【0028】
多波長光源(透過光検出用光源)44からの光(紫外線領域から近赤外線までの領域の波長の光)を試料と試薬の混合液(反応液)に照射し、反応液からの透過光を分光し、単一又は複数の波長について吸光度を算出する。そして、ランベールト・ベーア(Lambert-Beer)の法則に従い、反応液の吸光度と濃度の関係から対象成分量を定量する。一例としては、試料への試薬投入からの約10分間、一定の時間間隔で吸光度の経時変化を測定する。
【0029】
水溶液中の色素では、散乱はほとんど発生せず、光の吸収がほぼすべてである。つまり、吸光度のみが大きくなるということである。色素は波長で吸収特性が異なるため、吸光度は波長により異なる。生化学においては、酵素、蛋白質、無機物、脂質など複数の項目について測定を行う。
【0030】
(1−2)散乱光度計40を用いた測定
測定対象の試料と試薬の混合液(反応液)に単波長光源(散乱光検出用光源)14から照射した光の反応液中の物質による散乱光を検出する。散乱光度計40では、反応液が水等のように抗原体反応物のような凝集物を含まない場合は散乱光がほとんど生じず、抗原抗体反応物の増加に伴って散乱光が増加する。そして、一般的に粒子による光の散乱として知られるレイリー(Rayleigh)散乱の定義に概ね従うと考え、反応液による散乱光量と濃度の関係から対象性分量を定量する。
【0031】
試料中の微量蛋白成分を測定する場合、抗原である蛋白に反応する抗体を試薬として反応させ、濃度を定量する。抗体単独では感度が不足するため、抗体にラテックス粒子を結合させて感度を上げるラテックス免疫比濁法を使用する。粒子は、どの波長に対しても吸収・散乱特性が類似しているという特徴を有している。ラテックスの粒子径が大きいほうが感度は良が、粒子径が大きい場合ほど静置したときに溶液中での沈殿が生じやすくなり、安定な測定が行いにくい。このような抗原抗体反応結合物は、必ずしも吸光光度法で十分な感度を持たないので、散乱光度計40を用いて測定する。つまり、ラテックス粒子等を用いる測定では、透過光を利用する吸光光度計41を用いた測定方法よりも、散乱光度計40を用いて散乱光を測定する方が感度が良い。
【0032】
(2)反応原理
各検査項目に対応して試料に添加する試薬の反応原理には、主に、酵素反応を用いた測定原理のものと、抗原抗体反応を用いた測定原理のものの2種類が挙げられる。
【0033】
(2−1)酵素反応を利用した測定
酵素反応を利用した測定の試料と試薬の混合液(反応液)における反応には、基質と酵素との呈色反応と、抗原と抗体との凝集反応との2種類が用いられることが多い。呈色反応は生化学分析であり、検査項目としてLDH(乳酸脱水素酵素)、ALP(アルカリホスファターゼ)、AST(アスパラギン酸オキソグルタル酸アミノトンラフェナーゼ)になどに対応するものがある。また、凝集反応免疫分析であり、検査項目としてCRP(C反応性蛋白)、IgG(免疫グロブリン)、RF(リウマトイド因子)などに対応するものがある。
【0034】
(2−2)抗原抗体反応を利用した測定
主に、抗原抗体反応を利用した測定が用いられる免疫分析で測定される対象物質は血中濃度が低いことが多いために高感度であることが要求される。例えば、ラテックス粒子の表面に抗体を感作(結合)させた試薬を用い、試料中に含まれる検出対象成分を認識し凝集させる際に、反応液に多波長光源(透過光検出用光源)44からの光を投光し、ラテックス凝集塊に散乱されずに透過した光量(透過光量)を測定することで吸光度を測定し、試料中に含まれる検出対象成分量を定量するラテックス免疫凝集法での高感度化を図る。抗原抗体結合反応は、抗原と試薬との反応が比較的ゆっくりと進行する。反応時間が数分のオーダーであるため、数秒間隔で計測することにより反応過程をモニタリングすることができる。
【0035】
(3)前述した吸光光度計41および散乱光度計40について、測定感度は散乱光度計40を用いた測定が優れている傾向にある。また、再現性は同等、直線性は吸光光度計41を用いた測定が優れている傾向にある。核光度計40,41における干渉物質は物質により異なっており、散乱光度計40の方がRF因子の粒子物質の影響を受けやすいという特長がある。一方で、吸光光度計41の方は、ビリルビン、ヘモグロビンなど試料中に溶けている物質による影響を受けにくいという特長がある。つまり、散乱光度計40は、特定の波長の光を照射して反応液中の粒子散乱を見ているために感度は良いが、試料中の粒子の影響は受けやすいということである。また、吸光光度計41は、ハロゲンランプ等の光(短波長から長波長までの光)を照射しているため、反応液からの透過光を分光し、ビリルビン、ヘモグロビンなどの影響を受けない波長を選定することができ、アプリケーションの適用範囲が広い。
【0036】
図5は、反応容器に収容した試料と試薬の混合液(反応液)における透過光量、吸光度、及び、散乱光量の時間変化の一例を概略的に示すものであり、横軸に時間、縦軸に検出量をそれぞれ示している。
【0037】
図5においては、第1の試薬(R1)の添加直後には大きな変化は見られず、反応を促進するための第2の試薬(R2)の添加直後から各検出値が変化していることがわかる。このように、透過光は反応が進行するのに伴って小さくなる傾向にあり、また、吸光度は反応の進行に伴って大きくなる傾向にある。
【0038】
免疫反応も、広い意味の化学反応である。化学反応は、試料と試薬を混合したときに瞬間的に反応するものばかりでなく、数分間、数十分の時間が必要なものもある。抗体抗原反応では、数分間必要なものが多い。特に反応の最初の数分間では、反応は急激に進み、その後、緩やかになるものが多い。また、抗原抗体反応では、ラテックス抗体を第2試薬(R2)で使用する。抗原抗体反応を吸光光度計41と散乱光度計40で同一サイクル内に測定する最も重要な範囲は、第2試薬(R2)の添加後である。
【0039】
試料中に含まれる共存物質の影響は、最初の数分間の抗原抗体反応に影響する。吸光光度計41、散乱光度計40などの測定原理が異なる光学系では、わずかの時間差でも測定結果に対する影響は異なる。吸光光度計41は、透過光を計測し、散乱光度計40は散乱した光を測定するという、原理の異なるものである。吸光光度計41は、ハロゲンランプ等の多波長抗原44で短波長から長波長まで広い範囲の波長の光を一度に反応容器に照射し、透過光を分光して各波長の光量を検出する。また、散乱光度計40では、反応容器に単波長光を照射し、反応液により散乱した光量を検出する。このような、免疫反応の特徴を捉える複数の光学系を使用し、その測定結果を総合的に評価しようとする場合、それら光学系は反応液に対する測定を時差なく行うことが望ましい。実際には、同時の測定が困難であるため、複数の光度計(本実施の形態では、散乱光度計40及び吸光光度計41)を互いに干渉しない程度に離れた位置に設置したうえで、かつ、それらによる測定時刻の差(測定時差)を最小限(例えば、1秒以内)に抑制する必要がある。
【0040】
吸光光度計41と散乱光度計40の測定時差を抑制する(例えば、数秒以内に収める)方法の1つとして、反応ディスク1が回転している1サイクル内に吸光光度計41による測定と散乱光度計40による測定の両方を実施することがある。ここで、サイクルとは、反応容器2が搬送経路上においてある停止位置から移動開始し、次の停止位置に到達する(停止する)までの動作のことである。本実施の形態では、複数の光度計40,41の配置位置、反応容器2に対する試料および試薬の分注位置、反応ディスクの回転制御について説明する。
【0041】
次に、本実施の形態における動作、すなわち、コンピュータ(制御装置)18による制御を説明する。
【0042】
自動分析装置によって分析可能な項目に関する分析パラメータは、予め情報入力装置であるキーボード24を介して入力されておリ、メモリ11に記憶されている。オペレータは、後述する操作機能画面を用いて各試料に依頼されている検査項目を選択する。
【0043】
この際に、患者IDなどの情報もキーボード24から入力される。各サンプルに対して指示された検査項目を分析するために、試料分注機構7は、分析パラメータにしたがって、試料容器6から反応容器2へ所定量の試料を分注する。
【0044】
サンプルを受け入れた反応容器は、反応ディスク1の回転によって移送され、試薬受け入れ位置に停止する。試薬分注機構12A,12Bは、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応容器2に所定量の試薬液を分注する。試料と試薬の分注順序は、この例とは逆に、試料より試薬が先であってもよい。
【0045】
その後、撹拌機構13A,13Bにより、サンプルと試薬との撹拌が行われ、混合される。この反応容器2が、測光位置を横切る時、散乱光度計40より反応液の散乱光が測光される。測光された散乱光は、A/D変換器16により光量に比例した数値に変換され、インタフェース19を経由して、コンピュータ18に取り込まれる。この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データに変換される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ22やCRT25の画面に出力される。
【0046】
以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析測定に必要な種々のパラメータの設定や試料の登録を、操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果をCRT25上の操作画面により確認する。
【0047】
ここで、反応ディスク1における搬送経路上での吸光光度計41と散乱光度計40の配置位置、及び、反応ディスク1の回転制御について説明する。
【0048】
吸光光度計41と散乱光度計40による測定時差を抑制するためには、反応ディスク1が回転している1サイクル内に、両方の計測を行うことが必要である。すなわち、複数の光度計(吸光光度計41,散乱光度計40)における測定時差を最小にするためには、1サイクル中に複数の光度計の測定位置を反応容器が通過するように制御する必要がある。
【0049】
反応ディスク1は、分析終了後、反応容器を洗浄して繰り返し使用する仕様であり、洗浄後に再度、試料分注位置に戻ってくる。反応容器2が最初の位置(試料分注位置)から移動開始し、同位置に戻ってくるのに要する時間(以降、時間T1とする)は、反応時間TR+反応容器洗浄時間+試料・試薬分注時間で決まる。また、1サイクル当たりに要する時間をT0、反応ディスク1にセットされた反応容器の数をN、1サイクル当たり移動する反応容器の数をMとした場合、同一サイクルで複数の光度計(吸光光度計41,散乱光度計40)による測定が可能となる条件は次のようになる。
【0050】
(4)N≦Mの場合:無条件で測定条件を満足する。
【0051】
試薬分注機構12A,12N、試料分注機構7は、反応ディスク1の制御に合わせるため、装置レイアウトに制限が生じる。
【0052】
図6及び
図7は、N≦Mの場合における反応ディスクの動作を示す図であり、
図6は測定対象の反応容器が試料分注位置7aにある場合を、
図7は1サイクル後の場合をそれぞれ示している。
【0053】
コンピュータ(制御装置)18における反動ディスク1の制御では、反応ディスク1を1サイクル当たり、1回転と1反応容器以上(すなわち、360度以上)回転させる。
図6及び
図7の例では、1サイクルで1回転プラス1反応容器分だけ回転した場合を示している。つまり、本例では、1サイクルごとに1反応容器ずつ反応容器2の位置が
図6及び
図7における反時計回り(以降、順方向と称する)に進んでいくことになる。この間、反応容器2は、反応ディスク1の搬送経路上にある、複数の光度計(吸光光度計41,散乱光度計40)を通過する。1サイクル中に同じ反応容器2内の反応液を複数の光度計(吸光光度計41,散乱光度計40)で測定した結果が得られる。
【0054】
図8はCRPを吸光光度計と散乱光度計で測定した結果であり、
図9はコンピュータ(制御装置)による時間補正処理後の測定結果を示す図である。なお、
図9においては、説明の簡単のため
図8における測定結果の一部のみの補正結果を代表して示す。
【0055】
コンピュータ(制御装置)18における測定データの時間補正処理は、測定結果に対応してメモリ11に記録された時刻から、散乱光度計40、吸光光度計41のいずれかの測定時刻の散乱強度、吸光度の時間補正を可能とする。同じサイクルの中で吸光光度計41と散乱光度計40を用いて測定しても、物理的な配置が異なるため、測定時差が生じる。時間補正処理では、この測定時差を測定時刻に基づいて補正する。散乱光度計40での測定結果を吸光光度計41の測定結果の測定時刻に基づいて補正する場合、ある1サイクルの吸光光度計41の測定時刻より早い時刻における散乱光度計40の測定結果と、遅い時刻における散乱光度計40の測定結果(すなわち、吸光光度計41の測定結果に対して時間的に前後2つの散乱光度計41の測定結果)の2点から、散乱光度計40の2つの測定結果を時刻差で比例配分して、吸光光度計41の測定結果の測定時刻相当の散乱光度計40の測定値を算出する。
【0056】
測定結果の時間補正処理における計算例を以下に示す。
例えば、吸光度のX番目の測定結果をAbsX、その測定時刻をtX、測定結果AbsXの時間軸上での前後の散乱光量をIXとIYする。その測定時刻をtiYとyiXとすると、AbsXの測定時刻に相当する散乱光強度は、以下の式で求められる。
IX’=(IX+IY)*(tX−tiY)/(tiX−tiY)
上記式に従って、すべての測定点のデータを、ある光学システムの測定時刻に合わせて変換する。これにより、複数の光学システムの測定データが同じ、時間で時系列的に並ぶ。測定データの時間差がなくなる(
図9参照)。
【0057】
測定結果の時間補正処理の計算には、以下2種類の方法の何れかを用いる。
【0058】
1つは、各光学システムの実際の測定時刻を記録して、各測定システムの測定時刻の時間差で補正する方法であり、もう1つは各測定システムで反応ディスク制御であらかじめ決められた予定時間で補正する方法である。
【0059】
実際の測定時刻を用いた補正方法は、補正値が正確になる。あらかじめ決められた時間差で補正する方法では、各測定点の時刻を記憶する必要がなく、時間差もあらかじめ決められたテーブルを使用する。この方法では、記憶領域が少なくて済むことや、時刻差の計算時間が不要であり、計算処理が簡単などのメリットがある。
【0060】
なお、この2種類の時間補正方法は、測定対象の反応が早い場合は、実際の時刻を使用するほうが良い。また、反応時間が長い場合は、事前に決められた補正時間で計算しても影響が小さいと考えられる。
【0061】
(5)N≧Mの場合:測定条件には下記の制約がある。
【0062】
反応ディスクの2回転の制御と、複数の光学系(吸光光度計41,散乱光度計40)、及び試料分注位置、試薬分注位置の配置関係を限定する必要がある。
【0063】
(5−1)1サイクル当たりの反応ディスク2の移動回転角度が、180度〜360度の間である場合
第2試薬の分注(R2)から反応終了までの時間は、反応時間の約半分である。180度以上の回転であれば、第2試薬分注から、反応終了までの測定サイクルは十分にカバーできる。その間、対象の反応容器2が停止しないように制御する。すなわち、第2試薬の添加後、1サイクルの途中で、ある光度計は通過し、他の光度計は通過しないというような条件選択を避ける。
【0064】
複数の光学系の配置は1サイクル当たり回転角度以下(360度*M/N)に配置する。すなわち、反応ディスクの回転周回線場で、所定の角度以内に配置する。1サイクルの動作が1回転(360度)より1反応容器分だけ、少なく回転した場合、反応容器の停止位置は、最初のサンプリング位置から、1反応容器ずつ回転方向に対して手前に移動していく。1サイクル中に複数の光度計を、同一の反応容器2が横切ることが可能である。
【0065】
(5−2)1サイクル当たりの反応ディスク2の移動回転角度が、180度以下である場合
図10〜
図12は、移動回転角度が180度以下の場合における反応ディスクの動作を示す図であり、
図10は測定対象の反応容器が試料分注位置にある場合を、
図11は測定対象の反応容器が1サイクル後に第1試薬分注位置にある場合を、
図12は測定対象の反応容器が第2試薬分注位置を経由して攪拌位置にある場合をそれぞれ示している。
【0066】
第2試薬の分注(R2)から反応終了までの時間は、反応時間の約半分であるため、180度以下の回転では、第2試薬分注から反応終了までの測定サイクルに複数の光度計(吸光光度計41,散乱光度計40)を通過測定するように制御することができない。抗原抗体反応では、第2試薬添加後の数サイクルの計測が、試薬感度を確保するために重要である。第2試薬添加後に当該反応容器2が停止しないように制御する。
【0067】
複数の光学系(吸光光度計41、散乱光度計40)の配置角度θは1サイクル当たり回転角度以下(360度*M/N)に配置する。すなわち、反応ディスク1の搬送経路上に、反応ディスク2を中心として1サイクルの回転角度以内に配置する。第2試薬添加後の最初の測定サイクルは、確実に複数の光学系(吸光光度計41,散乱光度計40)が測定できるようにする。反応容器2は、反応ディスク1の回転方向(順方向)に対して、複数の光度計(吸光光度計41,散乱光度計40)の手前に停止している。反応ディスク1の回転開始後の最初の測定サイクルでは、両方の光度計(吸光光度計41,散乱光度計40)で計測できるように配置する。
【0068】
(5−3)1サイクル当たりの反応ディスク2の移動回転角度が、90度以下である場合
1サイクルの移動角度が90度以下等の少ない、かつ、反応時間がサンプリングしてから10分、第2試薬添加後5分の場合、同じサイクルの中で複数の光度計が横切る反応時間は、R2添加後、2〜3分程度となり全反応時間をカバーすることはできない。1サイクルあたりの反応容器移動角度は180度程度とすることが望ましく、この場合は、約5分間の反応時間をカバーすることができる。
【0069】
(5−4)N≧Mの場合の条件で制御した測定結果の一例。
【0070】
反応容器の数(N)は160個、1サイクル当たりの反応容器移動数(M)は150個である。第2試薬は第1試薬添加の5分後に添加している。第2試薬添加の後に散乱光度計40と吸光光度計41により同一サイクル内で測定する。
図13は測定試薬RFおよび腫瘍マーカAFの散乱光度計40における散乱光強度であり、
図14は吸光光度計における直線性の測定結果である。なお、
図13においては、散乱光度計40における検出器の光軸からの角度を20度とした場合と、30度とした場合について示している。
【0071】
(6)濃度換算について
本実施の形態の自動分析装置においては、測定開始前に最初に、複数の光学系(散乱光度計40,吸光光度計41)で標準液を用いた検量線の算出を含む校正(キャリブレーション)を実施する。検量線は、標準液の測定結果に対して時間補正処理を実施し、その測定結果に基づいて作成する。その後の一般検体(測定対象試料)の測定においても、時間補正処理を施した測定結果と検量線とに基づいて測定結果とする。複数の光学系(散乱光度計40,吸光光度計41)では、個別にキャリブレーションを実施するため、キャリブレーションから、患者検体の濃度換算も終了すれば、その光度系としては処理が終了し、測定結果のずれ等も発生しない。しかしながら、複数の光度系(散乱光度計40,吸光光度計41)でそれらの測定結果を比較する場合、散乱光度計40による測定結果と、吸光光度計41による測定結果とでは、測定時刻が異なる場合には測定結果にずれが生じ、単純に比較することができない。化学反応を扱う場合には測定時差の影響が大きくなるということである。
図15は、インスリンの測定結果である。
図8に示したCRPの時間経過に伴う反応は、項目によっても異なっている。散乱光度計40と吸光光度計41等の原理の異なる光学系で同一の反応を計測する場合は、時間補正処理が重要であることがわかる。
【0072】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0073】
従来技術における分析装置においては、測定対象試料における吸光度の測定、或いは、散乱光の測定を行うことにより、試料(血液や尿などの生体サンプル)の定性・定量分析を行っていた。吸光度の測定では、短波長から長波長までの光を照射して透過光を分光するため、ビリルビン、ヘモグロビンなどの影響を受けない波長を選定することができるなどアプリケーションの適用範囲が広いという特長がある。また、散乱光の測定では、特定の波長の光を照射して反応溶液中の粒子散乱を見ているため感度が良いという特長があるが、試料中の粒子の影響を受けやすいという点を考慮する必要がある。したがって、散乱光の測定と吸光度の測定の両方を同じ測定対象試料に対して実施することにより、測定精度の向上を図ることも考えられる。しかしながら、散乱光や吸光度の測定では、所定の試薬の添加から時間の経過に伴って状態の変化する測定対象試料を測定対象としているため、散乱光および吸光度の測定時差の測定結果への影響が懸念される。
【0074】
これに対して本実施の形態においては、反応ディスクの回転によって周方向に搬送される反応容器の搬送経路上に試料分注機構、試薬分注機構、攪拌機構、散乱光度計及び吸光光度計を配置し、反応容器を散乱光検出位置及び透過光検出位置の両方について同一の移動工程中に通過させることにより散乱光度および吸光度の測定を行うように構成したので、散乱光および吸光度の測定の測定時差の測定結果への影響を抑制することができ、測定精度を向上することができる。