(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被写体に向けて放射線を照射する放射線発生装置と、被写体を透過した放射線を受けて放射線画像を撮影する放射線撮影装置とを備え、放射線画像を撮影するための本撮影と、前記本撮影に先立って前記本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とにより1回の撮影を行う放射線撮影システムにおいて、
前記放射線発生装置は、
前記プレ撮影用の第1照射と、前記本撮影用の第2照射を実行する放射線源と、
少なくとも2段階の押圧操作が可能で、前記押圧操作により駆動指示を入力するための照射スイッチと、
前記駆動指示に基づいて前記放射線源の駆動を制御する線源制御装置であり、
前記照射スイッチの1段階目の押圧操作による駆動指示の入力を受けて、前記放射線源に対して、前記第1照射の前にウォームアップを開始させ、ウォームアップの完了後、前記1段階目の押圧操作が解除されない間は前記ウォームアップが完了した状態を維持し、前記1段階目の押圧操作が解除されることなく前記照射スイッチの2段階目以降の押圧操作による駆動指示が入力された場合には、ウォームアップを行わずに前記第2照射を開始させる線源制御装置とを備え、
前記線源制御装置は、前記照射スイッチによる前記1段階目の押圧操作による駆動指示の入力を受けた後、前記1段階目の押圧操作が解除されず、かつ、2段階目以降の押圧操作による駆動指示の入力が無い状態が所定時間継続した場合には、前記放射線源を前記ウォームアップ開始前の状態に戻す放射線撮影システム。
前記線源制御装置は、前記半押しによる駆動指示の入力を受けて前記ウォームアップを開始させ、さらに前記ウォームアップに引き続き前記第1照射を開始させ、前記全押しによる駆動指示の入力を受けて前記第2照射を開始させる請求項3に記載の放射線撮影システム。
前記線源制御装置は、前記半押しによる駆動指示の入力を受けて前記ウォームアップを開始させ、さらに、1回目の前記全押しによる駆動指示の入力を受けて前記第1照射を開始させ、その後、前記半押しに戻してからの2回目の全押しによる駆動指示の入力を受けて前記第2照射を開始させる請求項3に記載の放射線撮影システム。
前記線源制御装置は、前記照射スイッチによる前記1段階目の押圧操作による駆動指示の入力を受けた後、前記1段階目の押圧操作が解除された場合には、前記放射線源を前記ウォームアップ開始前の初期状態に戻す請求項1ないし7のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
前記本撮影条件決定部は、前記本撮影における前記第2照射に必要な線量から、前記プレ撮影における前記第1照射の線量を控除した線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件を決定する請求項9に記載の放射線撮影システム。
前記放射線画像検出装置は、前記プレ撮影において、前記積算値が前記目標線量に達したときに前記放射線発生装置に対して前記第1照射を停止させるための照射停止信号を出力するAEC部を備える請求項9または10に記載の放射線撮影システム。
前記放射線画像検出装置は、前記プレ撮影中において、前記第1照射の線量に応じた電荷を前記画像に蓄積させる蓄積動作を実行し、蓄積した前記電荷を掃き出さずに前記本撮影へ移行する請求項9ないし11のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
被写体に放射線を照射して被写体の放射線画像を撮影するための本撮影と、前記本撮影に先立って前記本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とにより1回の撮影を行う放射線撮影システムに用いられる放射線発生装置において、
前記プレ撮影用の第1照射と、前記本撮影用の第2照射を実行する放射線源と、
少なくとも2段階の押圧操作が可能で、前記押圧操作により駆動指示を入力するための照射スイッチと、
前記駆動指示に基づいて前記放射線源の駆動を制御する線源制御装置であり、
前記照射スイッチの1段階目の押圧操作による駆動指示の入力を受けて、前記放射線源に対して、前記第1照射の前にウォームアップを開始させ、ウォームアップの完了後、前記1段階目の押圧操作が解除されない間は前記ウォームアップが完了した状態を維持し、前記1段階目の押圧操作が解除されることなく前記照射スイッチの2段階目以降の押圧操作による駆動指示が入力された場合には、ウォームアップを行わずに前記第2照射を開始させる線源制御装置とを備え、
前記線源制御装置は、前記照射スイッチによる前記1段階目の押圧操作による駆動指示の入力を受けた後、前記1段階目の押圧操作が解除されず、かつ、2段階目以降の押圧操作による駆動指示の入力が無い状態が所定時間継続した場合には、前記放射線源を前記ウォームアップ開始前の状態に戻す放射線発生装置。
被写体に放射線を照射して被写体の放射線画像を撮影するための本撮影と、前記本撮影に先立って前記本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とにより1回の撮影を行う放射線撮影システムに用いられる放射線発生装置の作動方法において、
前記プレ撮影用の第1照射と、前記本撮影用の第2照射を放射線源に実行させ、
少なくとも2段階の押圧操作が可能で、前記押圧操作により駆動指示を入力するための照射スイッチから、1段階目の押圧操作による駆動指示の入力を受けて、前記放射線源に対して、前記第1照射の前にウォームアップを開始させ、
前記ウォームアップの完了後、前記1段階目の押圧操作が解除されない間は前記ウォームアップが完了した状態を維持し、
前記1段階目の押圧操作が解除されることなく前記照射スイッチの2段階目以降の押圧操作による駆動指示が入力された場合には、ウォームアップを行わずに前記第2照射を開始させ、
前記照射スイッチによる前記1段階目の押圧操作による駆動指示の入力を受けた後、前記1段階目の押圧操作が解除されず、かつ、2段階目以降の押圧操作による駆動指示の入力が無い状態が所定時間継続した場合には、前記放射線源を前記ウォームアップ開始前の状態に戻す放射線発生装置の作動方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1において、X線撮影システム2は、X線源10と、X線源10の動作を制御する線源制御装置11と、X線源10へのウォームアップ開始とX線の照射開始を指示するための照射スイッチ12と、被写体(患者)を透過したX線を検出してX線画像を出力する電子カセッテ13と、電子カセッテ13の動作制御やX線画像の表示処理を担うコンソール14と、被写体を立位姿勢で撮影するための立位撮影台15と、臥位姿勢で撮影するための臥位撮影台16とを有する。X線源10、線源制御装置11、および照射スイッチ12はX線発生装置2a、電子カセッテ13、およびコンソール14はX線撮影装置2bをそれぞれ構成する。この他にもX線源10を所望の方向および位置にセットするための線源移動装置(図示せず)が設けられており、X線源10は立位撮影台15および臥位撮影台16で共用される。
【0027】
X線源10は、X線管と、X線管が放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)とを有する。X線管は、熱電子を放出するフィラメントである陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とを有している。ウォームアップ開始の指示があると陽極が回転を開始し、規定の回転数となったらウォームアップが終了する。照射野限定器は、例えば、X線を遮蔽する4枚の鉛板を四角形の各辺上に配置し、X線を透過させる四角形の照射開口が中央に形成されたものであり、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0028】
コンソール14は、有線方式や無線方式により電子カセッテ13と通信可能に接続されており、キーボード等の入力デバイス14aを介したオペレータからの入力操作に応じて電子カセッテ13の動作を制御する。電子カセッテ13からのX線画像はコンソール14のディスプレイ14bに表示される他、そのデータがコンソール14内のストレージデバイス14cやメモリ(図示せず)、あるいはコンソール14とネットワーク接続された画像蓄積サーバ等のデータストレージに記憶される。
【0029】
コンソール14は、被写体の性別、年齢、撮影部位、撮影目的等の情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイ14bに表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)等の患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、放射線技師等のオペレータにより手動入力される。検査オーダには、頭部、胸部、腹部、手、指等の撮影部位の項目がある。撮影部位には、正面、側面、斜位、PA(X線を被写体の背面から照射)、AP(X線を被写体の正面から照射)等の撮影方向も含まれる。オペレータは、検査オーダの内容をディスプレイ14bで確認し、その内容に応じた撮影条件をディスプレイ14bに映された操作画面を通じて入力デバイス14aで入力する。
【0030】
撮影条件には、撮影部位の他、X線源10が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧(単位;kV)、単位時間当たりの照射量を決める管電流(単位;mA)、およびX線の照射時間(単位;s)などが含まれる。管電流と照射時間の積でX線の累積の照射量が決まるため、撮影条件としては、管電流と照射時間のそれぞれの値を個別に入力する代わりに、両者の積である管電流時間積(mAs値)の値が入力される場合もある。しかし、後述するように、本例ではAECが行われて照射時間が決められる。そのため、X線撮影システム2で決定した照射時間が、コンソール14から入力された照射時間よりも優先して適用される。
【0031】
X線撮影システム2では、診断に供する1枚分のX線画像を取得する1回のX線撮影をプレ撮影と本撮影のセットで行う。プレ撮影は、本撮影において適切な画質のX線画像を得るために、被写体に応じて必要な本撮影の撮影条件を決めるために行われる。このためプレ撮影では本撮影よりも少ない線量のX線を被写体に照射する。本撮影では、プレ撮影によって決定された撮影条件にてX線を照射する。
【0032】
図2に示すように、同じ管電圧、管電流でX線を照射した場合、すなわち、X線源10が照射するX線の照射量が同じであっても、被写体の体格に応じてX線の透過率が異なるため、電子カセッテ13に到達する到達線量が変わる。例えば被写体厚が比較的厚い場合は、実線のグラフで示すように、被写体を透過して電子カセッテ13に到達する単位時間当たりのX線の到達線量が少なくなるため、必要な累積線量に到達するための照射時間Taは長くなり、逆に被写体厚が薄い場合は点線のグラフで示すように短くなる(照射時間Tb)。また、体内組織の密度が比較的高い場合もX線の透過率が低下するため照射時間が長くなり、低い場合は短くなる。
【0033】
良好な画質のX線画像を得るための必要な累積線量は決まっているので、X線撮影システム2においては、被写体の体格が異なっても必要な累積線量が得られるようにAECが行われる。具体的には、実線や点線のグラフで示される台形の面積であるX線の累積線量が必要な累積線量と同じになるように照射時間を調節する。X線撮影システム2では、プレ撮影において、累積線量が所定の閾値まで達するまでの照射時間を測定する。プレ撮影では本撮影と比較してX線の照射量は少ないが、測定された照射時間は、被写体の体格に応じたX線の透過率が反映された値となる。X線撮影システム2は、プレ撮影の照射時間に基づいて、本撮影において必要な累積線量を得るための本撮影の照射時間を本撮影条件として決定し、その条件で本撮影を行う。
【0034】
図3に示すように、線源制御装置11は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブルを通じてX線源10に供給する高電圧発生器20と、X線源10に与える管電圧および管電流と、X線の照射時間を制御する制御部21と、コンソール14との主要な情報、信号の送受信を媒介する通信I/F22と、電子カセッテ13との信号の送受信を媒介する照射信号I/F26と、メモリ23と、タッチパネル24とを備える。
【0035】
制御部21には照射スイッチ12とメモリ23とタッチパネル24が接続されている。照射スイッチ12は、制御部21に対して駆動指示を入力するスイッチであり、照射スイッチとして一般的な、2段階の押圧操作が可能な2段階押しスイッチである。操作ボタンであるSW1とSW2は、入れ子構造になっており、SW1を押してからでないとSW2をオンできない。こうした構造により、1段階目の押圧操作である半押し(SW1オン)と、2段階目の押圧操作である全押し(SW2のオン)の2段階の押圧操作がなされる。照射スイッチ12が半押し(SW1オン)されると、制御部21に対して、SW1がオンされたことを表す信号が半押しによる駆動指示として入力される。同様に全押し(SW2)されると、SW2がオンされたことを表す信号が全押しによる駆動指示として入力される。
【0036】
制御部21は、照射スイッチ12からの駆動指示の入力に応じて、X線源10の駆動を制御する制御信号を発生する。制御信号には、X線源10のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号と、プレ撮影用の照射を開始させるための第1照射開始信号と、本撮影用の照射を開始させるための第2照射開始信号と、X線源10を初期状態に戻す初期化信号とがある。
【0037】
制御部21は、照射スイッチ12が半押しされると、高電圧発生器20に対してウォームアップ開始信号を発して、X線源10にウォームアップを開始させる。制御部21は、ウォームアップ完了後で照射スイッチ12の半押しが解除されていない場合は、X線撮影装置2bとの間で同期信号の送受信による同期制御を行ったうえで、プレ撮影用の第1照射開始信号を高電圧発生器20に発して、X線源10にプレ撮影用のX線照射を開始させる。
【0038】
照射スイッチ12が半押しの状態からさらに押し込まれて全押しがなされると、制御部21は、プレ撮影と同様に、X線撮影装置2bとの同期制御を行ったうえで、第2照射開始信号を高電圧発生器20に発して、X線源10に本撮影用のX線照射を開始させる。
【0039】
制御部21は、照射スイッチ12がいったん半押しされた後、半押しが解除されたときに初期化信号を発生する。制御部21は、照射スイッチ12が半押しされてX線源10のウォームアップが開始された後、プレ撮影用の照射や本撮影の照射が完了するまでの間に、照射スイッチ12の半押しが解除されると、高電圧発生器20に対して初期化信号を発して、X線源10の回転陽極の回転を停止して、X線源10をウォームアップ開始前の初期状態に戻す。これらの信号は、信号ケーブルを通じて線源制御装置11からX線源10に入力される。
【0040】
また、制御部21は、プレ撮影のX線照射が停止された後も照射スイッチ12の半押しが解除されない間はX線源10を初期状態に戻さずに、ウォームアップが完了した状態を維持する。このため、半押しに続いて照射スイッチ12が全押しされると、X線源10は、ウォームアップを行うことなく、直ちに本撮影用のX線照射を開始することができる。
【0041】
メモリ23は、管電圧、管電流等の撮影条件を予め数種類格納している。撮影条件はタッチパネル24を通じてオペレータにより手動で設定される。タッチパネル24には、メモリ23から読み出された撮影条件が複数種類表示される。表示された撮影条件の中から、コンソール14に入力した撮影条件と同じ撮影条件をオペレータが選択することにより、線源制御装置11に対して撮影条件が設定される。もちろん、予め用意されている撮影条件の値を微調整することも可能である。コンソール14に入力された撮影条件を線源制御装置11に送信することで線源制御装置11の撮影条件の設定を自動化してもよい。
【0042】
撮影条件として設定された管電圧、管電流は、プレ撮影、本撮影ともに同じ値が使用される。照射時間については、プレ撮影では、後述するようにX線撮影装置2bにおいてAECが行われて目標線量に到達するまでの照射時間が測定されるため、測定中に照射が停止しないように余裕を持った値が設定される。この値は、プレ撮影における照射時間が本撮影と比較して非常に短いこと、また、管電流や撮影部位に応じて電子カセッテ13への到達線量が目標線量に到達するまでの照射時間が変わることなどを考慮して設定される。X線源10において安全規制上設定されている照射時間の最大値を設定してもよい。
【0043】
本撮影の照射時間は、プレ撮影の結果に基づいてX線撮影装置2bにおいて計算で求められた値が設定される。制御部21にはタイマー25が設けられており、タイマー25は、本撮影において、プレ撮影の結果に基づき決定されたX線の照射時間を計測する。本撮影において、制御部21は、タイマー25が設定された照射時間を計測したら、照射停止信号を高電圧発生器20に発してX線の照射を停止させる。
【0044】
照射信号I/F26は、線源制御装置11がX線撮影装置2bとの間で行う同期制御において、同期信号の送受信を媒介する。制御部21は、プレ撮影と本撮影のX線照射開始前に、X線撮影装置2bに対してX線の照射を開始してよいか否かを問い合わせる同期信号である照射開始要求信号を送信する。そして、X線撮影装置2bから、照射開始要求信号に対する応答として、照射を受ける準備が完了したことを表す同期信号である照射許可信号を受信する。また、照射信号I/F26は、プレ撮影においてX線撮影装置2bがAECを実行したときに、X線撮影装置2bが発する照射停止信号を受信する。
【0045】
通信I/F22は、プレ撮影の結果に基づいてX線撮影装置2bにおいて算出された本撮影の撮影条件を受信する。これら照射信号I/F26や通信I/F22は、有線方式でもよいし無線方式でもよい。
【0046】
図4において、電子カセッテ13は、FPD30とこれを収容する扁平な箱型をした可搬型の筐体31とで構成される。筐体31は例えば導電性樹脂で形成されている。X線が入射する筐体31の前面31aには矩形状の開口が形成されており、開口には天板として透過板32が取り付けられている。透過板32は、軽量で剛性が高く、かつX線透過性が高いカーボン材料で形成されている。筐体31は、電子カセッテ13への電磁ノイズの侵入、および電子カセッテ13から外部への電磁ノイズの放射を防止する電磁シールドとしても機能する。なお、筐体31には、電子カセッテ13の各部に所定の電圧の電力を供給するためのバッテリ(二次電池)や、コンソール14とX線画像等のデータの無線通信を行うためのアンテナがFPD30の他に内蔵されている。
【0047】
筐体31は、フイルムカセッテやIPカセッテと略同様の国際規格ISO4090:2001に準拠した大きさである。電子カセッテ13は、筐体31の前面31aがX線源10と対向する姿勢で保持されるよう、各撮影台15、16のホルダ15a、16a(
図1参照)に着脱自在にセットされる。そして、使用する撮影台に応じて、線源移動装置によりX線源10が移動される。また、電子カセッテ13は、各撮影台15、16にセットされる他に、被写体が仰臥するベッド上に置いたり被写体自身に持たせたりして単体で使用されることもある。なお、電子カセッテ13は、サイズがフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさであるため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台にも取り付け可能である。
【0048】
図5において、FPD30は、TFTアクティブマトリクス基板を有し、この基板上に撮像領域40が形成されている。撮像領域40には、X線の到達線量に応じた電荷を蓄積する複数の画素41が、所定のピッチでn行(x方向)×m列(y方向)の行列状に配置されている。なお、n、mは2以上の整数である。
【0049】
FPD30は、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体、図示せず)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素41で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(Gd
2O
2S:Tb、テルビウム賦活ガドリウムオキシサルファイド)等からなり、画素41が配列された撮像領域40の全面と対向するように配置されている。なお、シンチレータとTFTアクティブマトリクス基板は、X線の入射する側からみてシンチレータ、基板の順に配置されるPSS(Penetration Side Sampling)方式でもよいし、逆に基板、シンチレータの順に配置されるISS(Irradiation Side sampling)方式でもよい。また、シンチレータを用いず、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレン等)を用いた直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0050】
画素41は、周知のように、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換部42、光電変換部42が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)、およびスイッチング素子である第1TFT43を備える。
【0051】
光電変換部42は、電荷を発生する半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。光電変換部42は、下部電極に第1TFT43が接続され、上部電極にはバイアス線が接続されている。バイアス線は画素41の行数分(n行分)設けられて1本の母線に接続されている。母線はバイアス電源に繋がれている。母線とその子線のバイアス線を通じて、バイアス電源から光電変換部42の上部電極にバイアス電圧が印加される。バイアス電圧の印加により半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性をもつ上部電極と下部電極に移動し、キャパシタに電荷が蓄積される。
【0052】
第1TFT43は、ゲート電極が第1走査線44に、ソース電極が信号線45に、ドレイン電極が光電変換部42にそれぞれ接続される。第1走査線44と信号線45は格子状に配線されており、第1走査線44は1行分の画素41に対して共通に1本ずつ、画素41の行数分(n行分)設けられている。また信号線45は1列分の画素41に対して共通に1本ずつ、画素41の列数分(m列分)設けられている。第1走査線44は第1ゲートドライバ46に接続され、信号線45は信号処理回路47に接続される。
【0053】
第1ゲートドライバ46は、制御部48の制御の下に第1TFT43を駆動することにより、X線の到達線量に応じた信号電荷を画素41に蓄積する蓄積動作と、画素41から蓄積された信号電荷を読み出す読み出し動作と、リセット動作とをFPD30に行わせる。蓄積動作では第1TFT43がオフ状態にされ、その間に画素41に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、第1ゲートドライバ46から同じ行の第1TFT43を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Gnを所定の間隔で順次発生して、第1走査線44を1行ずつ順に活性化し、第1走査線44に接続された第1TFT43を1行分ずつオン状態とする。画素41のキャパシタに蓄積された電荷は、第1TFT43がオン状態になると信号線45に読み出されて、信号処理回路47に入力される。
【0054】
光電変換部42の半導体層には、X線の入射の有無に関わらず暗電荷が発生する。この暗電荷はバイアス電圧が印加されているために画素41のキャパシタに蓄積される。画素41において発生する暗電荷は、画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにX線の照射前には所定時間間隔でリセット動作が行われる。リセット動作は、画素41に発生する暗電荷を、信号線45を通じて掃き出す動作である。
【0055】
リセット動作は、例えば、1行ずつ画素41をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式では、信号電荷の読み出し動作と同様、第1ゲートドライバ46から第1走査線44に対してゲートパルスG1〜Gnを所定の間隔で順次発生して、第1TFT43を1行ずつオン状態にする。
【0056】
順次リセット方式に代えて、配列画素の複数行を1グループとしてグループ内で順次リセットを行い、グループ数分の行の暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式や、全行にゲートパルスを入れて全画素の暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式を用いてもよい。並列リセット方式や全画素リセット方式によりリセット動作を高速化することができる。
【0057】
信号処理回路47は、積分アンプ49、CDS回路(CDS)50、マルチプレクサ(MUX)51、およびA/D変換器(A/D)52等を備える。積分アンプ49は、各信号線45に対して個別に接続される。積分アンプ49は、オペアンプ49aとオペアンプ49aの入出力端子間に接続されたキャパシタ49bとからなり、信号線45はオペアンプ49aの一方の入力端子に接続される。オペアンプ49aのもう一方の入力端子はグランド(GND)に接続される。キャパシタ49bにはリセットスイッチ49cが並列に接続されている。積分アンプ49は、信号線45から入力される電荷を積算し、アナログ電圧信号V1〜Vmに変換して出力する。各列のオペアンプ49aの出力端子には、増幅器53、CDS50を介してMUX51が接続される。MUX51の出力側には、A/D52が接続される。
【0058】
CDS50はサンプルホールド回路を有し、積分アンプ49の出力電圧信号に対して相関二重サンプリングを施してノイズを除去するとともに、サンプルホールド回路で積分アンプ49の出力電圧信号を所定期間保持(サンプルホールド)する。MUX51は、シフトレジスタ(図示せず)からの動作制御信号に基づき、パラレルに接続される各列のCDS50から順に一つのCDS50を電子スイッチで選択し、選択したCDS50から出力される電圧信号V1〜VmをシリアルにA/D52に入力する。なお、MUX51とA/D52の間に増幅器を接続してもよい。
【0059】
A/D52は、入力された1行分のアナログの電圧信号V1〜Vmをデジタル値に変換して、電子カセッテ13に内蔵されるメモリ54に出力する。メモリ54には、1行分のデジタル値が、それぞれの画素41の座標に対応付けられて、1行分のX線画像を表す画像データとして記録される。こうして1行分の読み出しが完了する。
【0060】
MUX51によって積分アンプ49からの1行分の電圧信号V1〜Vmが読み出されると、制御部48は、積分アンプ49に対してリセットパルスRSTを出力し、リセットスイッチ49cをオンする。これにより、キャパシタ49bに蓄積された1行分の信号電荷が放電されてリセットされる。積分アンプ49をリセットした後、再度リセットスイッチ49cをオフして所定時間経過後にCDS50のサンプルホールド回路の一つをホールドし、積分アンプ49のkTCノイズ成分をサンプリングする。その後、第1ゲートドライバ46から次の行のゲートパルスが出力され、次の行の画素41の信号電荷の読み出しを開始させる。さらにゲートパルスが出力されて所定時間経過後に次の行の画素41の信号電荷をCDS50のもう一つのサンプルホールド回路でホールドする。これらの動作を順次繰り返して全行の画素41の信号電荷を読み出す。
【0061】
全行の読み出しが完了すると、1枚分のX線画像を表す画像データがメモリ54に記録される。この画像データはメモリ54から読み出され、制御部48で各種画像処理を施された後通信I/F55を通じてコンソール14に出力される。こうして被写体のX線画像が検出される。
【0062】
なお、リセット動作では、第1TFT43がオン状態になっている間、画素41から暗電荷が信号線45を通じて積分アンプ49のキャパシタ49bに流れる。読み出し動作と異なり、MUX51によるキャパシタ49bに蓄積された電荷の読み出しは行われず、各ゲートパルスG1〜Gnの発生と同期して、制御部48からリセットパルスRSTが出力されてリセットスイッチ49cがオンされ、キャパシタ49bに蓄積された電荷が放電されて積分アンプ49がリセットされる。
【0063】
制御部48には、メモリ54のX線画像データに対してオフセット補正、感度補正、および欠陥補正の各種画像処理を施す回路(図示せず)が設けられている。オフセット補正回路は、X線を照射せずにFPD30から取得したオフセット補正画像をX線画像から画素単位で差し引くことで、信号処理回路47の個体差や撮影環境に起因する固定パターンノイズを除去する。感度補正回路はゲイン補正回路とも呼ばれ、各画素41の光電変換部42の感度のばらつきや信号処理回路47の出力特性のばらつき等を補正する。欠陥補正回路は、出荷時や定期点検時に生成される欠陥画素情報に基づき、欠陥画素の画素値を周囲の正常な画素の画素値で線形補間する。また、欠陥補正回路は、後述する、AECに用いられる検出画素41bの画素値も同様に補間する。なお、上記の各種画像処理回路をコンソール14に設け、各種画像処理をコンソール14で行ってもよい。
【0064】
画素41には通常画素41aと検出画素41bがある。通常画素41aはX線画像を生成するために用いられる。一方検出画素41bは撮像領域40へのX線の到達線量を検出する線量検出センサとして機能する。検出画素41bは、X線の到達線量が所定値に達したときに、X線源10によるX線の照射を停止させるAECのために用いられる。なお、図では検出画素41bにハッチングを施し通常画素41aと区別している。
【0065】
検出画素41bは、撮像領域40内で局所的に偏ることなく撮像領域40内に満遍なく散らばるよう配置される。全画素41に対して検出画素41bの占める割合は約0.01%程度であることが好ましい。検出画素41bは、例えば、同じ信号線41が接続された画素41の列に複数個(本例では3行おき)設けられ、検出画素41bが設けられた列は、検出画素41bが設けられない列を複数列挟んで設けられる。画素41が1024行×1024列のマトリクス配置であった場合、例えば128列毎の8本の信号線41に対して16個ずつ均等に検出画素41bを配置すれば、検出画素41bの占める割合は約0.01%となる。検出画素41bの位置はFPD30の製造時に既知であり、FPD30は全検出画素41bの位置(座標)を不揮発性のメモリ(図示せず)に予め記憶している。
【0066】
なお、上記例は1例であり、検出画素41bの配置、個数、割合は適宜変更が可能である。例えば、配置に関しては、本実施形態とは逆に検出画素41bを局所に集中して配置してもよい。例えば乳房を撮影対象とするマンモグラフィ装置では胸壁側に集中して検出画素41bを配置するとよい。
【0067】
通常画素41aと検出画素41bは光電変換部42等の基本的な構成は全く同じであるが、検出画素41bには第1TFT43に加えて第2TFT57が接続されている。第2TFT57は、第1TFT43を駆動するための第1走査線44および第1ゲートドライバ46とは別の第2走査線58および第2ゲートドライバ59により駆動される。検出画素41bは第2TFT57が接続されているので、同じ行の通常画素41aが第1TFT43をオフ状態とされ、信号電荷を蓄積する蓄積動作中であっても電荷を読み出すことが可能である。
【0068】
プレ撮影と本撮影は連続的に行われるため、プレ撮影において照射されたX線を、本撮影終了後に読み出されるX線画像に反映させるために、FPD30は、プレ撮影が開始されるときに、通常画素41aの蓄積動作を開始して、以後、本撮影が終了するまで蓄積動作を継続する。一方、プレ撮影においては、FPD30は、AECのために検出画素41bを用いた線量検出動作を実行する。検出画素41bに第2TFT57が接続されていることで、FPD30は、プレ撮影において、通常画素41aが接続されている第1TFT43をオフ状態として通常画素41aの蓄積動作を実行しながら、それと並行して、第2TFT57をオンオフすることにより線量検出動作を実行することができる。
【0069】
プレ撮影時に実行される線量検出動作において、第2ゲートドライバ59は、制御部48の制御の下、同じ行の第2TFT57を一斉に駆動するゲートパルスg1、g4、g7、・・・、gk(k=1+3(n−1))を所定の間隔で順次発生して、第2走査線58を1行ずつ順に活性化し、第2走査線58に接続された第2TFT57を1行分ずつ順次オン状態とする。オン状態となる時間は、ゲートパルスg1、g4、g7・・・のパルス幅で規定されており、第2TFT57はパルス幅で規定された時間が経過するとオフ状態に復帰する。検出画素41bの光電変換部42で発生した電荷は、第1TFT43のオン/オフに関わらず、第2TFT57がオン状態の間、信号線45を介して積分アンプ49のキャパシタ49bに流入する。積分アンプ49に蓄積された検出画素41bからの電荷はA/D52に出力され、A/D52でデジタル電圧信号(以下、線量検出信号という)に変換される。線量検出信号はメモリ54に出力される。メモリ54には、撮像領域40内の各検出画素41bの座標情報と対応付けて線量検出信号が記録される。FPD30は、こうした線量検出動作を、所定のサンプリングレートで複数回繰り返す。
【0070】
図6において、AEC部60は、制御部48により駆動制御される。AEC部60は、プレ撮影において、所定のサンプリングレートで複数回取得される線量検出信号をメモリ54から読み出して、読み出した線量検出信号に基づいてAECを行う。
【0071】
AEC部60は、複数回の線量検出動作によってメモリ54から読み出される線量検出信号を、座標毎に順次加算することにより、撮像領域40に到達するX線の累積線量を測定する。より具体的には、AEC部60は、撮像領域40を予め所定の大きさの領域に等分割した分割領域毎に累積線量を求める。各分割領域の累積線量は、例えば、各分割領域内に存在する複数の検出画素41bのそれぞれの線量検出信号の積算値を求め、各検出画素41bの積算値の加算値を検出画素41bの個数で除算した平均値が使用される。AEC部60は、各分割領域のうちの例えば累積線量が最も低い分割領域をAECの判定対象領域となる採光野領域に定める。
【0072】
なお、採光野領域の決め方は一例であり、撮影部位に応じて採光野領域を決めてもよいし、ユーザ設定により任意の領域を採光野領域として指定できるようにしてもよい。また、各分割領域の累積線量は、平均値でなくてもよく、各分割領域内の各検出画素41bの線量検出信号の積算値の中の最大値、最頻値、または合計値でもよい。
【0073】
AEC部60は、採光野領域の累積線量と予め設定された照射停止閾値(目標線量)とを比較して、累積線量が照射停止閾値に達したか否かを判定する。AEC部60は、採光野領域の累積線量が照射停止閾値を上回り、X線の累積線量が目標線量に達したと判定したときに制御部48に照射停止信号を出力する。
【0074】
照射信号I/F61には、線源制御装置11の照射信号I/F26が有線または無線接続される。照射信号I/F61は、線源制御装置11との間の同期制御の際に送受信される同期信号、具体的には、線源制御装置11からの照射開始要求信号の受信と、照射開始要求信号に対する応答である照射許可信号の線源制御装置11への送信を媒介する。この他、AEC部60が出力する照射停止信号を、制御部48を介して受け取って線源制御装置11に向けて送信する。
【0075】
通信I/F55は、コンソール14および線源制御装置11のそれぞれと有線または無線接続され、コンソール14および線源制御装置11との間の情報の送受信を媒介する。通信I/F55は、コンソール14との間では、オペレータによって入力された撮影条件と、後述する判定条件とを受信してこれらの情報を制御部48に入力する。線源制御装置11との間では、通信I/F22と通信して、制御部48が決定した本撮影条件を線源制御装置11に送信する。
【0076】
コンソール14のストレージデバイス14cには、撮影条件毎に複数の判定条件が予め記録された判定条件テーブル62が格納されている。判定条件には、照射停止閾値と必要線量が含まれる。照射停止閾値は、上述したとおり、プレ撮影時にAEC部60が線量検出信号の積算値と比較してX線の照射停止を判定するための情報である。プレ撮影時に照射されるX線は少量であるため、照射停止閾値が低すぎると、線量検出信号に重畳されるノイズの影響を受けて誤判定の要因となる。そのため、照射停止閾値は、ノイズの影響を受けない程度の値が設定される。必要線量は、制御部48が本撮影の撮影条件を決定する際に用いられる。必要線量は、本撮影で必要とされるX線の累積線量であり、本撮影で得られるX線画像が診断に供する良好な画質となる値に設定される。
【0077】
コンソール14は、オペレータによって撮影条件が入力されたときに、その撮影条件に含まれる、撮影部位、管電圧および管電流に対応する判定条件を判定条件テーブル62から読み出す。コンソール14は、読み出した判定条件を撮影条件と一緒に電子カセッテ13に送信する。電子カセッテ13は、撮影条件と判定条件を通信I/F55で受信して、制御部48に入力する。制御部48は、判定条件のうち、照射停止閾値をAEC部60に提供する。
【0078】
制御部48にはタイマー63が設けられている。タイマー63は、プレ撮影時に実行されるAECにおいて、線源制御装置11に照射許可信号を送信してからAEC部60が照射停止信号を出力するまでの時間、すなわち、採光野領域における累積線量が照射停止閾値に達するまでの照射時間を計時する。
【0079】
制御部48は、タイマー63で計時されたプレ撮影におけるX線の照射時間(照射停止閾値に達するまでの時間)と、コンソール14から入力された必要線量および照射停止閾値から本撮影の撮影条件である照射時間を決定する。本撮影の照射時間は、プレ撮影と同じ管電流で本撮影において必要線量が得られるまでの時間であるから、プレ撮影において照射停止閾値までに達するまでに掛かった照射時間から比例計算により求められる。求める本撮影の照射時間をT2、必要線量をD2、プレ撮影の照射時間をT1、照射停止閾値(プレ撮影における累積線量)をD1とすると、照射時間T2は、次式(1)で求められる。
T2=T1・D2/D1・・・(1)
【0080】
ただし、上述したように、通常画素41aの蓄積動作は、プレ撮影から本撮影まで中断することなく継続されるので、通常画素41aには、プレ撮影において照射された線量に応じた信号電荷も蓄積されている。そのため、本撮影における必要線量は、プレ撮影において既に照射済みの線量を控除した値とすることができる。この場合には、本撮影の照射時間T2は、次式(2)で求められる。
T2=T1・(D2−D1)/D1・・・(2)
【0081】
制御部48は、こうして求めた本撮影の照射時間T2を本撮影条件として、通信I/F55を介して線源制御装置11に送信する。なお、本撮影条件としては、照射時間T2を送信しているが、照射時間T2と管電流の積である管電流時間積を送信してもよい。
【0082】
次に、
図7のタイミングチャートを参照して、X線撮影システム2においてプレ撮影と本撮影をセットとする1回のX線撮影を行う場合の手順を説明する。
【0083】
X線撮影システム2においてX線撮影を行う場合は、まず、被写体を立位、臥位の各撮影台15、16のいずれかの所定の撮影位置にセットし、電子カセッテ13の高さや水平位置を調節して、被写体の撮影部位と位置を合わせる。そして、電子カセッテ13の位置および撮影部位の大きさに応じて、X線源10の高さや水平位置、照射野の大きさを調整する。次いで線源制御装置11とコンソール14に撮影条件(撮影部位、管電流、管電圧)を設定する。コンソール14で設定された撮影条件は電子カセッテ13に提供される。また、
図6で示したように、コンソール14において撮影条件に応じた判定条件(照射停止閾値、必要線量)が読み出されて撮影条件とともに電子カセッテ13に提供される。
【0084】
撮影準備が完了すると、オペレータによって照射スイッチ12が半押し(SW1オン)される。線源制御装置11は、照射スイッチ12が半押しされると、ウォームアップ開始信号を高電圧発生器20に発して、X線源10にウォームアップを開始させる。また、X線源10のウォームアップが完了すると、線源制御装置11は、照射開始要求信号(要求)を電子カセッテ13に送信する。
【0085】
X線撮影前の待機モードでは、電子カセッテ13のFPD30はリセット動作を繰り返し行っており、照射開始要求信号を待ち受けている。FPD30は、線源制御装置11から照射開始要求信号を受信すると、状態チェックを行った後に線源制御装置11に照射許可信号(許可)を送信する。同時にFPD30はリセット動作を終えて蓄積動作と線量検出動作を開始し、待機モードから撮影モードに切り替わる。また、タイマー63によるプレ撮影のX線の照射時間T1の計測が開始される。
【0086】
線源制御装置11は、FPD30から照射許可信号を受信すると、高電圧発生器20に対して第1照射開始信号を発して、X線源10にプレ撮影のX線照射を開始させる。X線源10から照射されたX線は被写体を透過してFPD30に入射する。
【0087】
線量検出動作において、FPD30は、検出画素41bで発生した電荷の読み出しが所定のサンプリングレートで繰り返し行われる。AEC部60は、所定のサンプリングレートで読み出される検出画素41bからの線量検出信号に基づいて、分割領域毎の累積線量を計算して、最小値の累積線量を示す分割領域を採光野領域に決定する。そして、AEC部60は、採光野領域の累積線量と照射停止閾値とを比較して、累積線量が照射停止閾値に到達したか否かを判定する。
【0088】
AEC部60は、採光野領域の累積線量が照射停止閾値に到達すると照射停止信号を出力する。これと同時に、タイマー63は、プレ撮影のX線の照射時間T1の計時を停止する。照射停止信号は線源制御装置11に送信される。線源制御装置11は照射停止信号を受けてX線源10によるX線の照射を停止する。線源制御装置11は、X線源10によるX線照射を停止した後も、X線源10を初期状態に復帰させることなく、ウォームアップを完了した状態を継続させる。
【0089】
FPD30は、AEC部60が照射停止信号を出力した後も蓄積動作を続行する。制御部48は、照射停止信号が送信された後、本撮影条件決定処理を実行する。本撮影条件決定処理では、制御部48は、タイマー63で計時した照射時間T1と、判定条件として設定された照射停止閾値および必要線量とに基づいて本撮影のX線の照射時間T2を決定する。決定された照射時間T2の情報は、線源制御装置11に送信される。線源制御装置11では、受信した照射時間T2がタイマー25に設定される。
【0090】
オペレータは、照射スイッチ12を半押しした後、ウォームアップおよびプレ撮影に要する時間を見計らって、照射スイッチ12を全押しする。照射スイッチ12が全押しされると、線源制御装置11は、本撮影の照射を開始する前に、電子カセッテ13に対して照射開始要求信号(開始)を送信して同期制御を行う。電子カセッテ13において、FPD30はプレ撮影から蓄積動作を継続しているので、電子カセッテ13は、照射開始要求信号を受信すると、直ちに線源制御装置11に対して照射許可信号(許可)を送信する。
【0091】
線源制御装置11は、照射許可信号を受信すると、高電圧発生器20に対して第2照射開始信号を発して、X線源10に本撮影のX線照射を開始させる。X線源10はプレ撮影後もウォームアップが完了した状態が継続されているため、本撮影前にウォームアップを行うことなく本撮影のX線照射を直ちに開始することができる。線源制御装置11は、タイマー25で照射時間を計時して、計時した照射時間が照射時間T2に達した時点でX線の照射を停止させる。
【0092】
FPD30ではプレ撮影から引き続いて通常画素41aの蓄積動作が行われている。制御部48のタイマー63においても、2回目に照射許可信号を送信してからの経過時間を計時する。そして、経過時間が照射時間T2となった時点で、FPD30の動作が蓄積動作から読み出し動作に移行される。これにより1枚分のX線画像を表す画像データがメモリ54に出力される。読み出し動作後、FPD30はリセット動作を行う待機モードに戻る。
【0093】
制御部48の各種画像処理回路により、読み出し動作でメモリ54に出力されたX線画像に対して各種画像処理が行われる。画像処理済みのX線画像はコンソール14に送信され、ディスプレイ14bに表示されて診断に供される。これにてプレ撮影と本撮影をセットする1回のX線撮影が終了する。
【0094】
以上説明したとおり、X線撮影システム2では、プレ撮影の照射前にX線源10のウォームアップを行い、プレ撮影の照射後もX線源10を初期状態に戻すことなくウォームアップを完了した状態に維持する。これにより、本撮影の照射前のウォームアップを省くことができ、従来のようにプレ撮影と本撮影の照射前に都合2回ウォームアップを行う場合と比べて1回のX線撮影に掛かる時間を短縮することができる。これにより診断効率が向上し、多くの患者を限られた時間内で捌く必要がある集団検診において特に効果を発揮する。
【0095】
本撮影の撮影条件を決定するために必要な累積線量が照射されるまでプレ撮影を行い、タイマー63で計時したプレ撮影の照射時間T1、および判定条件として設定された照射停止閾値と必要線量に基づいて本撮影の撮影条件である照射時間T2を決定するので、被写体の体型や体内組織の密度等の個体差によらず常に適正な撮影条件で本撮影を行うことができる。オペレータが被写体の個体差に応じて撮影条件を調整する場合と比較して、正確でかつ簡単に適正な撮影を行うことができる。
【0096】
また、AECはX線の照射量が少ないプレ撮影時のみ行う。これは本撮影でAECを行う場合と比べて次のようなメリットがある。AECを行う場合には、電子カセッテ13から線源制御装置11に対して照射停止信号を送信することになるが、通信遅延などが生じた場合には、照射停止信号に遅延が生じて適正なタイミングでX線照射を停止できない場合がある。照射停止信号が遅延すると、必要以上のX線が照射されることになるため、被写体の被曝量が多くなる。X線の照射量が少ないプレ撮影でAECを行えば、照射停止信号の遅延が生じた場合でも、本撮影で行う場合と比べれば無用な被曝量の増加を抑えることができる。
【0097】
上記例においては、プレ撮影と本撮影で、同じ管電流を設定しているが、例えば、プレ撮影では本撮影よりも管電流を小さくしてもよい。こうすれば、プレ撮影において照射停止信号の遅延が生じた場合でも、単位時間当たりのX線の照射量を決める管電流が小さい分、無用な被曝量の増加をさらに抑えることができる。ただしこの場合、本撮影条件決定処理においては、プレ撮影と本撮影の管電流の違いを考慮して、本撮影の照射時間を計算することになる。
【0098】
プレ撮影で読み出し動作を行わずプレ撮影開始から本撮影終了までは通常画素41aの蓄積動作を続行するため、プレ撮影で照射したX線が無駄にならずに済む。その分、被写体への被曝量を低減することができる。また、このようにプレ撮影の照射を診断に供するX線画像に反映させた場合、プレ撮影と本撮影の照射の間の被写体の体動の影響でX線画像の画質が劣化するおそれがあるが、本発明ではウォームアップを行わずに直ちに本撮影の照射に移り、間を空けずにプレ撮影と本撮影の照射を行うので、X線画像への体動の影響を低減することができる。
【0099】
なお、プレ撮影のX線照射の停止時にリセット動作を行ってプレ撮影で蓄積された電荷を棄て、本撮影のX線照射の開始時に改めて蓄積動作を再開してもよい。この場合は、本撮影条件決定処理では式(1)を用い、必要線量(D2)から照射停止閾値に相当するプレ撮影における累積線量(D1)を減算せずに、本撮影の照射時間T2を求める。
【0100】
また、上記例では、線源制御装置11と電子カセッテ13のプレ撮影時の同期制御に関して、
図7に示すように、X線源10のウォームアップが完了したときに線源制御装置11から電子カセッテ13に照射開始要求信号(要求)を送信しているが、照射スイッチ12が半押しされたときに照射開始要求信号を送信してもよいし、ウォームアップの途中で送信してもよい。しかし、電子カセッテ13では照射開始要求信号の応答である照射許可信号を送信してから照射時間T1の計時を開始するので、照射許可信号の送信タイミングとプレ撮影の照射開始タイミングに間隔が空くと、照射時間T1の正確性が損なわれる。そのため、上記例で示したようにウォームアップが完了したときに照射開始要求信号を送信することが好ましい。
【0101】
また、上記例では、プレ撮影中の線量検出動作において検出画素41bから読み出される線量検出信号をAECのみに利用しているが、線量検出信号に基づく画像情報をプレビュー画像として電子カセッテ13からコンソール14に送信し、これをディスプレイ14bにプレビュー表示してもよい。上記例においては、検出画素41bは、撮像領域40内の全領域に満遍なく分散配置されており、各検出画素41bからの線量検出信号は、メモリ54内において各検出画素41bの座標と対応付けて記録される。そのため、メモリ54に記録された画像情報は、解像度が低く診断には供せないものの、被写体の位置や撮影部位の確認には利用することができる。したがって、線量検出信号に基づく画像情報をプレビュー表示すれば、プレ撮影時に被写体が動いたりして被写体の位置や撮影部位が適正でないことをオペレータが確認することができる。
【0102】
このように、プレ撮影時の線量検出信号に基づく画像情報をプレビュー画像に利用して本撮影の前にプレビュー表示を行えば、プレ撮影時に明らかに撮影失敗と分かった場合に本撮影を止めることができる。プレビュー表示の時点で本撮影を止める場合には照射スイッチ12の半押しを解除すればよい。照射スイッチ12の半押しが解除されると、制御部21から初期化信号が発せられてX線源10が初期状態に戻される。また、オペレータは、コンソール14を操作して、電子カセッテ13をFPD30がリセット動作を繰り返す待機モード)に戻す。そして、被写体のポジショニングを修正した後に、再度最初から撮影をやり直す。
【0103】
なお、プレビュー画像を確認できなかったとしても、オペレータは通常撮影室のガラス越しに被写体の体動があるか否かを撮影中に監視しているため、目視で体動に気付いたときに照射スイッチ12の半押しを解除することで本撮影を止めることができる。
【0104】
上記実施形態では、照射スイッチ12の半押しが解除されたときにX線源10をウォームアップ開始前の初期状態に戻しているが、これに代えて、照射スイッチ12が半押しされてからの経過時間を計り、経過時間が予め設定された閾値を過ぎても次の操作がされなかった場合は本撮影を中止したと判断してX線源10を初期状態に戻してもよい。また、電子カセッテ13では、所定回のサンプリングで線量検出信号がほぼ0であった場合に本撮影を中止したと判断してFPD30を蓄積動作からリセット動作に移行させてもよい。
【0105】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、照射スイッチ12の半押し(SW1オン)でウォームアップとプレ撮影の照射を行い、全押し(SW2オン)で本撮影の照射を行っているが、本発明はこれに限定されず、
図8に示す態様としてもよい。
図8に示す第2実施形態では、照射スイッチ12の半押しでウォームアップを行い、続く全押しでプレ撮影の照射を行う。プレ撮影の照射後、1点鎖線の丸で囲むように照射スイッチ12を半押しの状態に戻し(SW1はオンのままSW2をオフし)、再び全押しすることで本撮影の照射を行う。
【0106】
この場合、線源制御装置11は、照射スイッチ12が半押しされたときに、X線源10に対してウォームアップ開始信号を発してウォームアップを開始させる点は、上記第1実施形態と同じである。第1実施形態では、照射スイッチ12が半押しされていれば、ウォームアップ完了後、プレ撮影のX線照射が開始されたが、第2実施形態では、ウォームアップ完了後、照射スイッチ12が全押しされたときに、線源制御装置11が第1照射開始信号を発して、X線源10がプレ撮影のX線照射を開始する。プレ撮影のX線照射の前には、線源制御装置11と電子カセッテ13との間で、照射開始要求信号と照射許可信号の送受信により同期制御が行われる。そして、照射スイッチ12は、オペレータによって全押し状態からいったん半押し状態に戻される。その後、再び全押しされると、線源制御装置11は、電子カセッテ13との間で同期制御を行い、X線源10に第2照射開始信号を発してX線源10に本撮影の照射を開始させる。プレ撮影のX線照射中における電子カセッテ13の動作は、照射時間T1の計測や照射時間T2の決定など、上記第1実施形態と同様である。
【0107】
[第3実施形態]
照射スイッチは2段階押しに限らず、3段階押しの照射スイッチを用いてもよい。3段階押しの照射スイッチの場合は、
図9に示す第3実施形態のように、1段押し(SW1オン)でウォームアップを行い、続く中押し(SW2オン)でプレ撮影の照射を行って、全押し(SW3オン)で本撮影の照射を行えばよい。線源制御装置11は、照射スイッチが1段押しされると、X線源10に対してウォームアップ開始信号を発してウォームアップを開始させ、中押しされると第1照射開始信号を発してX線源10にプレ撮影の照射を開始させ、全押しされると、第2照射開始信号を発してX線源10に本撮影の照射を開始させる。なお、従来の照射スイッチは2段階押しが主流であるため、操作感が慣れている分、本実施形態の3段階押しよりも第1、第2実施形態の2段階押しの照射スイッチを用いるほうがより好ましい。
【0108】
また、単純に照射スイッチ12の半押しでウォームアップを行い、全押しでプレ撮影と本撮影の照射を自動的に連続して行ってもよい。ただし、このように本撮影前に照射スイッチ12への操作を入れずにプレ撮影と本撮影の照射を自動的に行うと、プレ撮影時に被写体が動いたりして明らかに撮影失敗と分かり本撮影を止めたい場合に対処することができないため、上記第1〜第3実施形態のようにワンアクション入れてから本撮影の照射を開始するほうがよい。本撮影の照射開始前にワンアクションを入れることで、オペレータが自らの操作でプレ撮影と本撮影の境目を認識することができ、プレ撮影の結果をみて本撮影を中止し、被写体のポジショニングや撮影条件を修正することもできる。
【0109】
なお、電子カセッテ13から直接本撮影条件である照射時間T2の情報を線源制御装置11に送信するのではなく、電子カセッテ13からコンソール14に照射時間T2の情報を送信し、さらにコンソール14から線源制御装置11に照射時間T2の情報を送信してもよい。
【0110】
上記実施形態では、第1TFT43とは別に駆動される第2TFT57を設けた検出画素41bを例示しているが、第1TFT43のソース電極とドレイン電極が短絡された画素、あるいは第1TFT43がなく光電変換部42が直接信号線45に接続された画素を検出画素としてもよい。
【0111】
また、各画素にバイアス電圧を供給するバイアス線に画素で発生する電荷に基づく電流が流れることを利用して、ある特定の画素に繋がるバイアス線の電流値をモニタリングして線量を検出してもよい。この場合は電流値をモニタリングする画素が検出画素となる。同様に画素から流れ出るリーク電流をモニタリングして線量を検出してもよく、この場合もリーク電流をモニタリングする画素が検出画素となる。さらに、画素とは別に構成が異なり出力が独立した線量検出センサを撮像領域に設けてもよい。これらAECを行うための線量検出センサの形態はその他どのようなものであってもよい。
【0112】
さらに、上記実施形態では、プレ撮影において、採光野領域の累積線量と予め設定された照射停止閾値(目標線量)とをAEC部60で比較して、累積線量が照射停止閾値に達したか否かを判定してX線の照射を停止する例を記載したが、プレ撮影の照射時間は固定であってもよい。この場合は検出画素41bはあってもよいが、プレ撮影の画像情報を通常画素41aから読み出し、その値に基づいて本撮影の条件を決めるようにすれば、検出画素41bがなくてもAECを行うことができる。プレ撮影の照射時間は、本撮影の照射時間よりも十分に小さい値が設定値として予め設定される。
【0113】
上記実施形態では、プレ撮影におけるX線の累積線量が照射停止閾値に達したら照射停止信号を出力しているが、線量検出信号の積算値に基づきX線の累積線量が照射停止閾値に達すると予測される時間を算出し、算出した予測時間に達したときに照射停止信号を線源制御装置に送信する、あるいは予測時間の情報そのものを線源制御装置に送信してもよい。また、積算値を計算するのは上記実施形態の線量検出信号の平均値に限らず、各分割領域の検出画素41bの線量検出信号の最大値、最頻値、または合計値でもよい。
【0114】
上記実施形態では、コンソール14と電子カセッテ13が別体である例で説明したが、コンソール14は独立した装置である必要はなく、電子カセッテ13にコンソール14の機能を搭載してもよい。また、電子カセッテ13の機能の一部、例えば、本撮影条件を決定する処理部をコンソール14にもたせてもよい。また、電子カセッテ13とコンソール14に加えて、コンソール14が有する電子カセッテ13を制御する機能の一部を実行する撮影制御装置を設けてもよい。
【0115】
上記実施形態では、TFT型のFPDを例示しているが、CMOS型のFPDを用いてもよい。また、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテに限らず、撮影台に据え付けるタイプのX線画像検出装置に適用してもよい。さらに、本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を撮影対象とした場合にも適用することができる。