(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面等を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るシリコンウェーハの構造を示す概略断面図である。
本発明に係るシリコンウェーハ1は、表面から少なくとも深さ5μmまでの表層部1aは、LSTD密度が1.0個/cm
2未満であり、前記表層部1aを除くバルク部1bは、散乱光強度が3000〜5000a.u.であり、後述するBMD析出熱処理を施すことによって、密度が1.0×10
9〜6.0×10
9個/cm
3である酸素析出物2が成長する。
この酸素析出物2は、板状酸素析出物2a及び多面体酸素析出物2bで構成され、これらがバルク部1bの直径方向L1及び厚さ方向L2に各々混在して成長し、かつ、前記板状酸素析出物2a及び多面体酸素析出物2bの密度比(板状酸素析出物:多面体酸素析出物=X:100−X)は、X=10〜40であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るシリコンウェーハは、上述したような酸素析出物2が成長するため、半導体デバイス形成工程において当該酸素析出物を起点として転位が発生しにくく、かつ、Cuに対するゲッタリング効果が高い。
【0015】
すなわち、板状酸素析出物2a及び多面体酸素析出物2b共に、散乱光強度が3000〜5000a.u.であり、密度が1.0×10
9〜6.0×10
9個/cm
3であるため、バルク部1b内での酸素析出物2(特に、板状酸素析出物2a)の存在による歪みの発生が抑制される。
ここでいう散乱光強度とは、酸素析出物2のサイズを示すパラメータとなるものであり、散乱光強度が高いと酸素析出物2のサイズが大きいことを示す。この散乱光強度及び前記密度は、IRトモグラフィ(株式会社レイテックス製 MO−411)にて測定することができる。
このように、散乱光強度及び密度が上記範囲内であるため、バルク部1b内での歪みの発生が抑制される。従って、半導体デバイス形成工程において酸素析出物2(特に、板状酸素析出物2a)を起点とする転位の発生を抑制することができる。
【0016】
また、板状酸素析出物2a及び多面体酸素析出物2bの密度比を、(板状酸素析出物:多面体酸素析出物=X:100−X)で表したときに、X=10〜40であるため、Cuに対するゲッタリング効果を高くすることができる。
ここでいう密度比とは、IRトモグラフィ(株式会社レイテックス製 MO−411)にて、板状酸素析出物2aのみを特定して測定した密度Aと、多面体酸素析出物2bのみを特定して測定した密度Bとの合計(A+B)を100とした時の比(A/(A+B)=X)のことを示す。
【0017】
前記散乱光強度が3000a.u.未満である場合は、Cuに対するゲッタリング効果が低くなる。前記散乱光強度が5000a.u.を超える場合は、Cuに対するゲッタリング効果は高くなるものの、半導体デバイス形成工程において酸素析出物2(特に、板状酸素析出物2a)を起点とした転位が発生しやすくなる。
【0018】
前記密度が1.0×10
9個/cm
3未満である場合は、密度が低いため、酸素析出物2(特に、板状酸素析出物2a)を起点とした転位は発生しにくくなるものの、Cuに対するゲッタリング効果が低くなる場合がある。前記密度が6.0×10
9個/cm
3を超える場合は、密度が高いため、Cuに対するゲッタリング効果は高くなるものの、酸素析出物2(特に、板状酸素析出物2a)を起点とした転位が発生しやすくなる。
前記密度は、3.0〜5.0×10
9個/cm
3であることが好ましい。
このような密度の範囲とすることで、確実に、半導体デバイス形成工程において当該酸素析出物を起点として転位が発生しにくく、かつ、Cuに対するゲッタリング効果が高い効果を得ることができる。
【0019】
前記密度比において、Xが10未満である場合は、板状酸素析出物2aが少なくなるため、Cuに対するゲッタリング効果が低くなる。前記Xが40を超える場合は、板状酸素析出物2aが多くなるため当該板状酸素析出物2aを起点とした転位が発生しやすくなる。
【0020】
前記表層部1aは、表面から深さ2〜5μmまでのデバイス形成層1aaと、前記デバイス形成層1aaと前記バルク部1bとの間に設けられ、5〜15μmの厚さを有する前記板状酸素析出物2a及び多面体酸素析出物2bが成長しないデバイス非形成層1abとで構成されていることが好ましい。
通常、半導体デバイス形成工程で使用されるデバイス形成層は、表面から深さ2〜5μmまでの領域である。なお、このデバイス形成層1aaとバルク部1bとの間に、5〜15μmの厚さを有する前記板状酸素析出物2a及び多面体酸素析出物2bが成長しないデバイス非形成層1abが設けられていれば、仮に、酸素析出物2(特に、板状酸素析出物2a)を起点とした転位が発生したとしても、デバイス形成層1aaまで伝播するのを抑制することができる。
【0021】
前記デバイス非形成層1abの酸素濃度は、0.8〜1.2×10
18atoms/cm
3であることが好ましい。
このような酸素濃度の範囲とすることで、Cuに対するゲッタリング効果を更に高めることができる。これは、前記デバイス非形成層1abの酸素濃度が高くなるため、この層に半導体デバイス特性に影響を及ぼさない程度の微少の板状酸素析出物が析出し、これがデバイス形成層1aa内のCuをバルク部1b方向に引き寄せ、これによってバルク部1bの板状酸素析出物2aのゲッタリング効果を更に高めるものと考えられる。
【0022】
前記デバイス形成層1aaの酸素濃度は、前デバイス非形成層1abの酸素濃度よりも低く、0.4〜0.8×10
18atoms/cm
3であることが好ましい。
このような酸素濃度の範囲とすることで、デバイス形成層1aaでのBMDの析出を防止することができる。
【0023】
次に、前述した本発明に係るシリコンウェーハの製造方法について説明する。
本発明に係るシリコンウェーハは、下記の方法で製造することができる。
CZ法により育成されたシリコン単結晶からスライスされた酸素濃度が1.2×10
18atoms/cm
3以上である少なくとも半導体デバイス形成面が鏡面研磨されたシリコンウェーハを、700℃以下で保持された反応室内に投入し、非酸化性ガス雰囲気中、前記投入温度から1100〜1250℃の最高到達温度まで、2.0℃/分以下の昇温速度で昇温し、前記最高到達温度を30分〜2時間保持する。
なお、前記非酸化性ガス雰囲気は、窒素ガス雰囲気、水素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気(好ましくは、アルゴンガス雰囲気)が含まれる。
また、前記板状酸素析出物及び多面体酸素析出物の密度比の調整は、前記昇温速度を調整することにより行う。
【0024】
CZ法によるシリコン単結晶の育成は、周知の方法にて行う。 具体的には、周知の単結晶引上装置を用いて、シリコン融液の液面に種結晶を接触させて、種結晶と石英ルツボを回転させながら種結晶を引き上げてネック部及び所望の直径まで拡径する拡径部を形成後、所望の直径を維持しながら、結晶の中心軸のV/G値(V:引き上げ速度、G:シリコン融点から1300℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値)を制御して直胴部を形成し、その後、所望の直径から縮径する縮径部を形成し、前記縮径部をシリコン融液から切り離すことで行う。 また、前記育成するシリコン単結晶の酸素濃度の調整は、石英ルツボの回転数や炉内圧力、ヒータ温度などを調整することにより周知の方法で行う。
【0025】
前記シリコン単結晶の育成は、結晶の中心軸がV−リッチ領域となるようにV/G値を所定値(例えば、0.25〜0.35mm
2/℃・min)に制御して直胴部を形成することが好ましい。
結晶の中心軸が無欠陥領域となるようにV/G値を所定値(例えば、0.10〜0.20mm
2/℃・min)に制御する場合は、全面にGrown−in欠陥のないシリコンウェーハを製造することが可能である。しかしながら、この場合は、シリコン単結晶の育成効率が低下するという問題があり、更に、無欠陥領域を形成する場合は、結晶中の酸素濃度が低くなる傾向があるため、バルク部に前述したような酸素析出物2を成長させることが難しい場合がある。
【0026】
次に、このようにして得られたシリコン単結晶を、周知の方法により、シリコンウェーハにスライスして、少なくとも半導体デバイス形成面が鏡面研磨されたシリコンウェーハを製造する。具体的には、シリコン単結晶を内周刃またはワイヤソー等によりウェーハ状にスライスした後、外周部の面取り、ラッピング、エッチング、鏡面研磨等の平坦加工を行う。
【0027】
上記のようにして得られた鏡面研磨されたシリコンウェーハに対して行なう熱処理は、周知の縦型熱処理装置を用いて行う。
図2は、本発明の熱処理における温度シーケンスの一例を示す概念図である。
最初に、周知の縦型熱処理装置の温度T
0(好ましくは700℃以下)に保持された反応室内に、前記鏡面研磨されたウェーハを、例えば、周知の縦型ボードに枚葉で複数枚保持して投入し、非酸化性ガス雰囲気中、1100℃以上1200℃以下の最高到達温度T
1(以下、これを温度T
1と略する)まで昇温速度ΔTu(2.0℃/分以下)で昇温し、前記温度T
1で、30分以上2時間以下(t
1)保持する。その後、前記温度T
1から前記反応室からのウェーハの取り出し温度(例えば、温度T
0)まで、降温速度ΔTdで降温する。
【0028】
前記育成するシリコン単結晶の酸素濃度が1.2×10
18atoms/cm
3未満である場合には、酸素濃度が低いため、バルク部に所望のサイズ及び密度の酸素析出物を成長しきれない場合がある。
前記熱処理における反応室内への投入温度が700℃を超える場合には、室温(クリーンルーム:約25℃)からの急激な温度変化によりウェーハにスリップ転位が発生しやすくなるため好ましくない。
前記投入温度は、生産性等の観点からその下限値は、300℃以上であることが好ましい。
前記最高到達温度が1100℃未満である場合には、温度が低いため、表層部に存在するCOP(Crystal Originated Particle)等の欠陥を低減させることが難しい場合がある。前記最高到達温度が1250℃を超える場合には、温度が高いため、当該熱処理においてスリップ転位が発生しやすくなる場合がある。
前記昇温速度ΔTuが2.0℃/分を超える場合には、板状酸素析出部が密度比で少なくなる場合がある。
【0029】
前記最高到達温度の保持時間(t
1)が30分未満である場合には、熱処理時間が少ないため、十分に、表層部のCOP等の低減を図ることが難しい場合がある。前記保持時間(t
1)が2時間を越える場合には、生産性が低下すると共に、スリップ転位が発生しやすくなり、また、その他、不純物汚染等の他の不具合も発生する場合がある。
【0030】
前記熱処理における前記反応室からの取り出し温度においても700℃以下であることが好ましい。
前記取り出し温度が700℃を超える場合には、室温(クリーンルーム:約25℃)への急激な温度変化によりウェーハにスリップ転位が発生しやすくなるため好ましくない。
前記取り出し温度は、生産性等の観点からその下限値は、300℃以上であることが好ましい。
【0031】
前記熱処理における前記最高到達温度からの降温速度ΔTdは、前記熱処理において温度変化によるスリップ転位が発生しない速度に制御すれば特に限定されない。前記スリップ転位が発生しない速度は、例えば、1〜5℃/分である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定解釈されるものではない。
[試験1]
CZ法により窒素ドープ(石英ルツボ内へのポリシリコン積載時に窒化膜が形成されたシリコンウェーハ片を同時に積載)を行い、かつ、石英ルツボの回転数や炉内圧力を調整してV/G値(V:引き上げ速度、G:シリコン融点から1300℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値)を0.28〜0.32mm
2/℃・minに制御して直胴部がV−リッチ領域からなるN−type、面方位(100)、酸素濃度を1.2〜1.4×10
18atoms/cm
3の範囲で変化させた複数のシリコン単結晶を育成後、該インゴットの直胴部を切断して、酸素濃度が異なるV−リッチ領域からなる直径300mmの円板状の複数のスライスウェーハを得た。
この酸素濃度は、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて測定したスライスウェーハの半導体デバイス形成面側の表面から深さ1μmまでの平均濃度である(以下同じ)。
【0033】
次に、得られた酸素濃度の異なる複数のスライスウェーハに対して、両面(表裏面)のラッピング処理を行い、更に、酸性溶液(弗酸(HF)、硝酸(HNO
3)、酢酸(CH
3COOH)及び水(H
2O))を一定の比率で混合した溶液)によりエッチング処理を行い、最後に、両面の鏡面研磨処理を行った。
次に、鏡面研磨を行った酸素濃度が異なるウェーハを、周知の縦型ボートに枚葉で10枚ずつ保持して、周知の縦型熱処理装置の反応室内に投入し、
図2に示す熱処理シーケンスにて、更に、昇温速度ΔTuを0.01〜2.0℃/分の範囲内で変化させて、バルク部に成長する酸素析出物のサイズ(散乱光強度)、BMD密度及び板状酸素析出物及び多面体酸素析出物の密度比がそれぞれ異なるシリコンウェーハを複数製造した。
その他の熱処理条件は下記の通りである。
・T
0:700℃
・T
1:1100℃
・t
1:1時間
・ΔTd:1℃/分〜3℃/分
【0034】
前記熱処理を行ったウェーハに対して、半導体デバイス形成面となる表面側の表層部の欠陥密度を評価した。この欠陥密度の評価は、レイテックス社製LSTDスキャナMO601を用いて、各々の測定表面から深さ5μmまでの深さ領域の欠陥数を検出することで行った。
また、前記熱処理を行ったウェーハに対して、BMD析出熱処理(780℃で3時間熱処理した後、1000℃で16時間熱処理)を施した後、ウェーハのバルク部(深さ15μm)まで鏡面研磨を行なった後、当該研磨面の酸素析出物のサイズ(散乱強度)、密度及び密度比をIRトモグラフィ(株式会社レイテックス製 MO−411)にて評価した。
また、前記熱処理を行ったウェーハに対して、枚葉式急速加熱・急速冷却熱処理装置を用いて、700℃で保持された反応室内に投入し、昇温速度50℃/秒にて、最高到達温度1350℃まで昇温し、1350℃を15秒間保持した後、降温速度50℃/秒にて、700℃まで降温する急速加熱・急速冷却熱処理(Rapid Thermal Process:以下、RTPという)を施した後に、半導体デバイス形成面の表面から深さ5μmの位置における転位の発生の有無を、X線トポグラフィ(株式会社リガク製 XRT300)にて測定した。 この深さ5μmの位置における転位の発生の有無の評価は、前記RTPを施した後、半導体デバイス形成面側を5μm鏡面研磨により除去して、X線トポグラフィにより測定することで行なった。 更に、前記熱処理を行ったウェーハに対して、Cu(NO3)水溶液で、Cuを故意に汚染した後、半導体デバイス形成面となる表面の表層部をフッ硝酸にて溶解し、前記表層部を溶解させたフッ硝酸中に含まれるCu濃度をICP−MS(ICP-Mass Spectrometry:ICP質量分析)にて評価した。
表1に、本試験における実験条件及び評価結果を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から分かるように、Xが10〜40、散乱光強度(a.u.)が3000〜5000である場合(実施例1から12)は、表層部の欠陥密度も1.0個/cm
2未満であり、スリップ転位の発生も無く、Cu濃度も低いことが認められる。一方、Xが0である場合(比較例1から3)は、散乱光強度(a.u.)が高くても、Cu濃度が高いことが認められる。これに対して、Xが10以上である場合は、Cu濃度が低下するものの、散乱光強度が3000a.u.未満である場合(比較例4、6、8)は、Cu濃度が以前高いことが認められる。また、散乱光強度が5000a.u.を超える場合(比較例5、7、9)及びXが40を超える場合(比較例10、11)は、スリップ転位の発生が認められる。
【0037】
なお、この実施例1から12の前記BMD析出熱処理を行ったサンプルに関し、ウェーハを径方向に劈開して斜め研磨(表面からの角度30°)を行い、その研磨面をSEM(Scanning Electron Microscope)により観察し、表面からバルク部の上端までの表層部の厚さを、算出したところ10μmであった。
また、前記研磨面の表層部の酸素濃度を、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて測定したところ、表面から10mμまでの表層部の酸素濃度は、0.4〜0.8×10
18atoms/cm
3であった。また、当該表層部の欠陥密度及びBMD密度を前述したのと同様な方法により評価したところ、欠陥密度が1.0個/cm
2未満であり、BMD密度は検出限界以下(約3.0×10
6/cm
3以下)であった。
【0038】
[試験2]
前記シリコン単結晶育成時の酸素濃度を1.5〜1.8×10
18atoms/cm
3に調整し、更に、前記熱処理における最高到達温度及び熱処理時間を調整して、その他は、実施例1〜4と同様な条件で、表面から5μmまでの領域の酸素濃度が0.4〜0.8×10
18atoms/cm
3であり、当該表層部の深さ5μm〜10μmの間の酸素濃度が0.8〜1.2×10
18であるシリコンウェーハを製造した。
得られたシリコンウェーハについて、試験1と同様な方法にて、表面から深さ5μmまでの深さ領域の欠陥数、バルク部(深さ15μm)のサイズ(散乱強度)、密度及び密度比、転位の発生の有無及びCu濃度を評価した。
表2に、本試験における実験条件及び評価結果を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2から分かるように、当該表層部の深さ5μm〜10μmの間の酸素濃度を0.8〜1.2×10
18とした場合(実施例13から16)は、実施例1から4と比べて、Cu濃度が低下することが認められる。