特許第5984624号(P5984624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5984624β−ジケトン化合物からの非対称β−ジケトン化合物の抽出方法
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  • 特許5984624-β−ジケトン化合物からの非対称β−ジケトン化合物の抽出方法 図000025
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984624
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】β−ジケトン化合物からの非対称β−ジケトン化合物の抽出方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/80 20060101AFI20160823BHJP
   C07C 45/72 20060101ALI20160823BHJP
   C07C 49/12 20060101ALI20160823BHJP
   C07C 49/14 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C07C45/80
   C07C45/72
   C07C49/12
   C07C49/14
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-237909(P2012-237909)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-88332(P2014-88332A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】原田 了輔
(72)【発明者】
【氏名】重冨 利幸
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 昌幸
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−166058(JP,A)
【文献】 特開2005−023065(JP,A)
【文献】 特開2001−163818(JP,A)
【文献】 特開2005−336178(JP,A)
【文献】 特開2008−037765(JP,A)
【文献】 特開2003−267908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/80
C07C 49/92
C07C 49/12
C07C 45/68
C07C 45/77
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1で示される非対称β−ジケトン化合物に、化2で示される対称β−ジケトン化合物と化3で示される対称β−ジケトン化合物の少なくともいずれかが混在するβ−ジケトン化合物から、前記非対称β−ジケトン化合物を抽出する方法であって、
下記(A)工程及び(B)工程を含み、
(A)工程:前記β−ジケトン化合物と水との混合溶液のPHを11.5以上とし、β−ジケトン化合物を水に溶解させてβ−ジケトン化合物溶液とする工程。
(B)工程:次いで、前記β−ジケトン化合物溶液のpHを9.5以下とし、前記β−ジケトン化合物溶液から分離する化1の非対称β−ジケトン化合物を回収する工程。
更に、下記の(a)、(b)の工程の少なくともいずれかを含む非対称β−ジケトン化合物の抽出方法。
(a)工程:(A)工程の際、混合溶液のpHの上限を12.5に設定してβ−ジケトン化合物溶液とし、前記β−ジケトン化合物溶液に疎水性溶媒とを接触させることにより、化3の対称β−ジケトン化合物を前記疎水性溶媒に移動させる工程。
(b)工程:(B)工程の際、β−ジケトン化合物溶液のpHの下限を8.0に設定し、β−ジケトン化合物溶液から分離する化1の非対称β−ジケトン化合物を分離させて回収する工程。
【化1】
【化2】
【化3】
(各化学式において、置換基であるR、R炭素数1〜4のアルキル基であり、Rの炭素数<Rの炭素数の関係を有する。また、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【請求項2】
(A)工程の混合溶液のpHを調整する工程は、混合溶液に金属水酸化物を添加するものである請求項1記載の非対称β−ジケトン化合物の抽出方法。
【請求項3】
(B)工程のβ−ジケトン化合物溶液のpHを調整する工程は、溶液に塩酸、硫酸、過塩素酸の少なくともいずれかを添加するものである請求項1又は請求項2記載の非対称β−ジケトン化合物の抽出方法。
【請求項4】
(a)工程でβ−ジケトン化合物溶液に接触させる疎水性溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルムである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の非対称β−ジケトン化合物の抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学蒸着法用の原料の前駆体等に有用な非対称β−ジケトン化合物の抽出方法に関する。詳しくは、対称β−ジケトン化合物と非対称β−ジケトン化合物とが混在したβ−ジケトン化合物から非対称β−ジケトン化合物を選択的に抽出・精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
β−ジケトン化合物は、古くは合成樹脂の添加剤や香料等の用途において使用される化合物であったが、近年では、化学蒸着法(CVD法、ALD法等)による金属薄膜形成の原料である有機金属化合物の前駆体としての利用が着目されている。化学蒸着法用の原料として有用とされるβ−ジケトン類が配位する有機金蔵化合物としては、例えば、特許文献1〜3記載のものが挙げられる。これらの有機金属化合物は、Ru、Ir等の中心金属に2〜3のβ−ジケトン類が配位してなるものである。これらの有機金属化合物は、β−ジケトン類を配位子とすることで、薄膜形成をしたときの密着性が良好であること、特定の反応ガス(水素等)に対する反応性が良好であること等の利点を有する。
【0003】
【化1】
【0004】
【化2】
【0005】
【化3】
【0006】
ところで、上記の有機金属化合物においては、β−ジケトン類の置換基(化1におけるR、R)が相違するものが好ましいとされる。R、Rが相違する有機金属化合物は、常温で液体状態とすることでき、化学蒸着法による薄膜形成工程における原料取り扱い性が良好となるからである(特許文献1参照)。この点、化2、化3の有機金属化合物は、β−ジケトン類の置換基としてメチル基、エチル基と相違する置換基を有するものである。そして、このような非対称のβ−ジケトン類が配位する有機金属化合物の合成のためには、前駆体となるβ−ジケトン化合物も非対称性を有することが必要となる。
【0007】
ここで、非対称β−ジケトン化合物の製造方法としては、基本的に対称β−ジケトン化合物と同様の合成反応を利用することができ、このとき目的となる2種の置換基を有する反応物質を使用すれば良い。例えば、下記反応式による、エステル化合物とケトン化合物との縮合反応による合成方法が挙げられる(特許文献4、非特許文献1、2)。この合成法は、出発原料(エステル化合物とケトン化合物)の調達が容易であり、反応工程も簡易であることから一般的に用いられる方法である。
【0008】
【化4】
【0009】
また、上記合成方法の他、次式によるβ−ケトエステルを出発原料とする合成反応もある。この合成反応は、β−ケトエステルとカルボン酸ハライド又はカルボン酸無水物を反応させ、得られた中間生成物の脱アルコキシカルボニル反応によりβ−ジケトン化合物を得る方法である。
【0010】
【化5】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4097979号明細書
【特許文献2】特許第4746141号明細書
【特許文献3】特許第4054215号明細書
【特許文献4】特開2005−23065号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T. Adams and Charles R. Hauser, The Acylation of Methyl Ketones withAliphatic Esters by Means of Sodium Amide Synthesis of β−Diketones of the Type RCOCH2COR1,J. Am. Chem. Soc., 1944(vol. 66), p.1220−1222.
【非特許文献2】Frederic W. Swamer and Charles R. Hauser, Claisen Acylation andCarbethoxylations of Ketones and Esters by Means of Sodium Hydride, J. Am.Chem. Soc., 1950(vol. 72), p.1352−1356.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本発明者等によれば、上記の合成方法により得られるβ−ジケトン化合物においては、製造目的である非対称β−ジケトン化合物(化6)に加えて、化7及び/又は化8の対称β−ジケトン化合物が副生成物として含まれている。
【0014】
【化6】
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】
そして、対称β−ジケトン化合物が混在した非対称β−ジケトン化合物を前駆体として有機金属化合物を製造した場合、非対称β−ジケトン類が配位する有機金属化合物だけでなく対称β−ジケトン類が配位する有機金属化合物までも製造される。対称β−ジケトン類が配位する有機金属化合物が混在したままの有機金属化合物は、所望の物性、製膜特性を示さないことからその除去が必要となるが、その除去工程分の製造コストが生じるだけではなく、除去された有機金属化合物分の金属のロスが生じる。上記のように、貴金属の有機化合物であればそのロスは無視できないものとなり、化学蒸着用原料のコストアップひいては薄膜を適用するデバイスのコストアップに繋がる。
【0018】
従って、対称β−ジケトン化合物と非対称β−ジケトン化合物とが混在したβ−ジケトン化合物については、その使用前に対称β−ジケトン化合物を除去し非対称β−ジケトン化合物を抽出すれば良いといえるが、それは容易なものではない。対称β−ジケトン化合物と非対称β−ジケトン化合物とは、沸点等の物性が近く、一般的な分離精製手段である蒸留法では効率的な分離精製が困難である。また、高精度の分離抽出が可能なるカラムクロマトグラフィーでは大量生産に対応できず、非対称β−ジケトン化合物のコストアップに繋がる。
【0019】
本発明は以上のような背景のもとなされたものであり、任意の方法で合成されたβ−ジケトン化合物から非対称β−ジケトン化合物を抽出する方法について、大量生産可能なレベルで効率的なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、β−ジケトン化合物中の非対称β−ジケトン化合物と対称β−ジケトン化合物との相違点として、水への溶解度(親水性)に差異が生じることを見出した。
【0021】
β−ジケトン化合物はpHによって親水性が変化する化合物である。そして、水との混合溶液において、そのpHをアルカリ側にすることで容易に脱プロトン化してイオン化し親水性が増す傾向にある。これは非対称β−ジケトン化合物、対称β−ジケトン化合物の双方に見られる傾向であるが、本発明者等によると、上記化6の非対称β−ジケトン化合物の溶解度と化7、化8の対称β−ジケトン化合物の溶解度には下記のような関係がある(β−ジケトン化合物の置換基R、Rはアルキル基であり、その炭素数をR<Rとする。また、Rは水素又はアルキル基である。)。
【0022】
【化9】
【0023】
上記の関係は、置換基Rより炭素数の多い置換基Rを有する化8の対称β−ジケトン化合物がアルカリ条件下においてもっとも溶解度が低い(疎水性である)ことを意味する。そこで、アルカリ条件下のβ−ジケトン化合物溶液に疎水性溶媒を接触させることで、この疎水性溶媒に疎水性の高い化8の対称β−ジケトン化合物を移動させて除去することができる。
【0024】
そして、上記の溶解度の大小関係は、β−ジケトン化合物溶液のpHが変化しても変わるものではない。そこで、溶液のpHを下げ中性側にシフトさせていくと、化7の対称β−ジケトン化合物よりも溶解度の低い化6の非対称β−ジケトン化合物が先に溶液から分離する。そして、このときpHの値を好適範囲にすることで、化7の対称β−ジケトン化合物は溶液に溶解させたまま非対称β−ジケトン化合物を回収することができる。
【0025】
本発明者等は、以上説明した、β−ジケトン化合物のpHによる親水性の変動、及び、非対称β−ジケトン化合物と対称β−ジケトン化合物の溶解度の大小関係に着目した。そして、処理対象となるβ−ジケトン化合物の混合溶液のpHを厳密な管理のもとで上下にスイングして、各pH領域において溶液から対称β−ジケトン化合物又は非対称β−ジケトン化合物を分離抽出することで、高純度の非対称β−ジケトン化合物を精製できることを見出し、本発明に想到した。
【0026】
即ち、本発明は、化10で示される非対称β−ジケトン化合物に、化11で示される対称β−ジケトン化合物と化12で示される対称β−ジケトン化合物の少なくともいずれかが混在するβ−ジケトン化合物から、前記非対称β−ジケトン化合物を抽出する方法であって、下記(A)工程及び(B)工程を含み、更に、下記の(a)、(b)の工程の少なくともいずれかを含む非対称β−ジケトン化合物の抽出方法である。
【0027】
(A)工程:前記β−ジケトン化合物と水との混合溶液のpHを11.5以上とし、β−ジケトン化合物を水に溶解させてβ−ジケトン化合物溶液とする工程。
(B)工程:次いで、前記β−ジケトン化合物溶液のpHを9.5以下とし、前記β−ジケトン化合物溶液から分離する化10の非対称β−ジケトン化合物を回収する工程。
【0028】
(a)工程:(A)工程の際、混合溶液のpHの上限を12.5に設定してβ−ジケトン化合物溶液とし、前記β−ジケトン化合物溶液に疎水性溶媒とを接触させることにより、化3の対称β−ジケトン化合物を前記疎水性溶媒に移動させる工程。
(b)工程:(B)工程の際、β−ジケトン化合物溶液のpHの下限を8.0に設定し、β−ジケトン化合物溶液から分離する化1の非対称β−ジケトン化合物を分離させて回収する工程。
【0029】
【化10】
【0030】
【化11】
【0031】
【化12】
(各化学式において、置換基であるR、Rはアルキル基であり、Rの炭素数<Rの炭素数の関係を有する。また、Rは水素又はアルキル基である。)
【0032】
以下、本発明についてより詳細に説明する。まず、本発明において処理対象となるβ−ジケトン化合物について、その合成工程は特に限定されるものではない。従って、上記したエステル化合物とケトン化合物との縮合反応による合成方法、又は、β−ケトエステルを出発原料とする合成方法のいずれの合成法によるβ−ジケトン化合物も対応する。また、これら2つの合成法以外の方法で合成されたものであっても良い。
【0033】
処理対象となるβ−ジケトン化合物に含まれる対称β−ジケトン化合物としては、その置換基に応じて2種の対称β−ジケトン化合物が考えられるが、いずれか一方のみを含んでいても良いし、双方を含んでいても良い。非対称β−ジケトン化合物の合成に際しては、副反応である対称β−ジケトン化合物の生成反応の選択性を制御することができないからである。尚、後述するように一方の対称β−ジケトン化合物のみしか含まれていない場合、或いは、一方の対称β−ジケトン化合物の含有量が少ない場合には、工程を簡略化するためその対称β−ジケトン化合物についての分離除去は行わないようにすることができる。
【0034】
また、本発明は各種のアルキル基(R、R)を有するβ−ジケトン化合物を対象とし、その炭素数に制限は無いが、好適には炭素数1〜4のアルキル基を有する非対称β−ジケトン化合物の抽出に有用である。R、Rは相違するアルキル基であり、その炭素数がR<Rの関係を有する。R、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基)からそれぞれ選択され、前記炭素数の大小関係を満足する組合せのものが好ましい。また、置換基Rは、水素又はアルキル基であるが、置換基Rがアルキル基である場合、これも炭素数に制限は無いが、好適には炭素数1〜4である。
【0035】
本発明は溶液系の処理を伴うものであるから、上記した非対称β−ジケトン化合物の合成後の反応液を処理対象としても良い。但し、非対称β−ジケトン化合物の合成反応では、対称・非対称β−ジケトン化合物以外のその他の有機物の生成が伴うことが多く、これらその他の有機物は本発明の溶解度差を利用する分離方法では除去が困難である。そのため、好ましくは合成反応後にその他の有機物が除去された状態のβ−ジケトン化合物を処理対象とするのが好ましい。この好ましい処理対称となるβ−ジケトン化合物は、対称・非対称β−ジケトン化合物の合計含有量が80〜100重量%のものである。20%程度のその他の有機物を含むものであれば、非対称β−ジケトン化合物の抽出後に適宜に蒸留等を行うことで除去可能だからである。
【0036】
本発明は、上記の通り任意の方法により得られるβ−ジケトン化合物を処理対象物としてこれを水に混合して混合溶液とし、そのpHを11.5以上のアルカリ領域にする(A)工程と、(A)工程の後、β−ジケトン化合物溶液のpHを9.0以下に下げる(B)工程を基本的な構成とする。
【0037】
(A)工程は、上記の通り、β−ジケトン化合物のpH上昇による親水性の増大を利用し、β−ジケトン化合物(対称、非対称含む)を水に溶解させる工程である。ここで、pHの下限値を11.5としたのは、これ以上のpHにしないとβ−ジケトン化合物を完全に溶解させることができず、最終的な非対称β−ジケトン化合物の収率に影響を及ぼすこととなるからである。好ましい、pHの下限値は12.0である。一方、(A)工程で設定されるpHの上限値は、(a)工程による化12の対称β−ジケトン化合物の除去を行うか否かにより決定される。そして、(a)工程の処理を行わない場合には、pHの上限に特に制限はないが、pH調整のために添加する塩基の節約等を考えると13.5程度を上限とするのが好ましい。
【0038】
(A)工程でpHを上昇させる手段としては、溶液に金属水酸化物を添加するのが好ましい。強アルカリで水への溶解度が高く、pHの調整が容易だからである。具体的な添加物は、アルカリ金属の水酸化物である水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが挙げられる。
【0039】
そして、(B)工程は、(A)工程により生成したβ−ジケトン化合物溶液のpHを下げることで、β−ジケトン化合物の親水性を低下させて非対称β−ジケトン化合物を溶液から分離させる工程である。このpHの上限を9.5とするのは、これを超えるpHでは溶液中にβ−ジケトン化合物が溶存している可能性があり非対称β−ジケトン化合物の収率を低下させるからである。好ましいpHの上限値は9.0である。一方、(B)工程で設定されるpHの下限値は、(b)工程で規定されるpHの下限値を適用するか否かにより相違する。そして、(b)工程によるpHの設定を適用しない場合には、pHの下限には特に制限はないが、pH調整のために添加する酸の節約等を考えると7.0程度を下限とするのが好ましい。
【0040】
(B)工程で溶液のpHを低下させる手段としては、溶液に塩酸、硫酸、過塩素酸を添加するのが好ましい。安価で強酸であり、pHの調整が容易だからである。
【0041】
この(B)工程によりpHを低下させた溶液には非対称β−ジケトン化合物が有機層として分離した状態にあるから、これを回収することで精製された非対称β−ジケトン化合物を得ることができる。この回収には疎水性溶媒を用いた溶媒抽出を行っても良い。
【0042】
そして、本発明では、上記(A)、(B)工程を基本構成とし、各工程のpH値の上限、下限を(a)工程、(b)工程の有無により決定する。
【0043】
(a)工程は、炭素数の多い置換基を含む化12の対称β−ジケトン化合物を除去する工程である。この工程では、pHの上限値を12.5としてβ−ジケトン化合物溶液を生成し、これに疎水性溶媒を接触させることで、親水性の最も低い化12の対称β−ジケトン化合物を疎水性溶媒に移動させて除去する。pHの上限を12.5とするのは、これを超えるpHにすると、除去目的である化12の対称β−ジケトン化合物の親水性までも高くなり、疎水性溶媒での除去が困難となるからである。このpHの上限値は、より好ましくは12.2とする。また、β−ジケトン化合物溶液に接触させる疎水性溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルムが好ましい。このときの接触時間(方法)は5分以上とするのが好ましい。また、β−ジケトン化合物溶液と疎水性溶媒との接触処理は1回でも良いが、2回以上行うのがこのましい。
【0044】
(b)工程は、(A)工程で生成したβ−ジケトン化合物溶液のpHを下げて非対称β−ジケトン化合物を溶液から分離させる際、炭素数の少ない置換基を含む化11の対称β−ジケトン化合物の同伴を防止するためにpHの下限値を設定する工程である。化11の対称β−ジケトン化合物は、化10の非対称β−ジケトン化合物よりも親水性が高いことから、(A)工程で低下させたpHの値が化11の対称β−ジケトン化合物が分離するpH値よりも高い場合、溶液中に残留することとなる。(b)工程はこの現象を利用するものであり、化11の対称β−ジケトン化合物を分離するため溶液のpHの下限値を8.0に設定するものである。これより低いpHでは、化11の対称β−ジケトン化合物までも溶液から分離することとなる。好ましいpHの下限値は8.5である。
【0045】
以上の各工程における溶液の温度については、常温で実施可能であり、特に限定するものではない。そして、回収された非対称β−ジケトン化合物は、そのまま錯体製造のための原料に供しても良いが、蒸留等の後処理を行っても良い。蒸留は、β−ジケトン化合物以外の有機物等の不純物を完全に除去することができるので好ましい後処理である。この蒸留の条件としては、圧力100Pa、温度30〜35℃で減圧蒸留するのが好ましい。
【0046】
上記説明から理解できるように、(a)工程、(b)工程の実施の有無、即ち、(A)工程におけるpHの上限設定及び疎水性溶液との接触の有無と、(B)工程におけるpHの下限設定の有無は、処理対象となるβ−ジケトン化合物の構成により決定される。これを説明するのが図1である。処理対象となるβ−ジケトン化合物中に化11、化12の対称β−ジケトン化合物の双方が含まれている場合には、(a)、(b)工程の双方の処理を行う(図1における実線のようにpHを調整する)。また、処理対象となるβ−ジケトン化合物中に化12の対称β−ジケトン化合物のみが含まれている場合、或いは、化11の対称β−ジケトン化合物の量が極めて少ない場合には、(a)工程の処理のみ行うことで非対称β−ジケトン化合物中を抽出できる((A)工程は実線に、(B)工程は点線に沿ってpHを調整する)。そして、処理対象となるβ−ジケトン化合物中に化11の対称β−ジケトン化合物のみが含まれている場合、或いは、化12の対称β−ジケトン化合物の量が極めて少ない場合には、(a)工程は不要であり、(A)工程のβ−ジケトン化合物の溶解後(pHは11.5以上であれば特に上限はない)、直ちに(b)工程で設定するpHの下限値を考慮してpHを下げることで非対称β−ジケトン化合物中を抽出できる((A)工程は点線に、(B)工程は実線に沿ってpHを調整する。)。尚、上記において「極めて少ない場合」とする基準としては、処理対象となるβ−ジケトン化合物中、いずれかの対称β−ジケトン化合物の含有量が0.1%以下である場合が挙げられる。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、任意の製法により製造されたβ−ジケトン化合物から非対称β−ジケトン化合物を効率的に抽出することができる。そして本発明によれば、非対称β−ジケトンが配位する有機金属化合物の純度を確保することができ、金属のロス等がない。これにより化学蒸着法による薄膜形成コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明におけるβ−ジケトン溶液のpH変動を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
第1実施形態:ここでは、化4の合成方法に従い各種の塩基触媒を用い、非対称β−ジケトン化合物として化13に示す5−メチル−2,4−ヘキサンジオン(R:C、R:CH)を合成した。
【化13】
【0050】
そして、合成されたβ−ジケトン化合物について、式14、15の対称β−ジケトン化合物(化14:R、Rが共にCHである2,4−ペンタンジオン、化15:R、Rが共にCである2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン)を分離し非対称β−ジケトン化合物を抽出した。
【0051】
【化14】
【0052】
【化15】
【0053】
5−メチル−2,4−ヘキサンジオンの合成は、上記の通り化4の反応に従い、ジイソプロピルエーテルと3−メチル−2−ブタノンとを下記式により反応させるものである。
【0054】
【化16】
【0055】
本実施形態では、塩基触媒としてNaNH、NaH、t−BuOK(カリウム tert−ブトキシド)の3種の塩基触媒を使用した。また、NaNHについては複数(4種)の反応温度で合成を行った。以下、各塩基触媒を使用した合成工程について説明する。
【0056】
(I)β−ジケトン化合物の合成
(i)NaNHを塩基に用いた合成
1L三口フラスコにジイソプロピルエーテル150mL、酢酸エチル36.2g(40.2mL)、及び、NaNH15.3gを入れた。これを攪拌しながら、3−メチル−2−ブタノン33.7g(42.0mL)を滴下ロートで加え、0℃、25℃、50℃、70℃の反応温度で1.5時間反応させた。この合成反応後の反応液の一部を採取し、濃縮して分析した結果、β−ジケトン化合物(対称、非対称の双方を含む)を60%程度含むものであった。
【0057】
合成反応後の反応液について、β−ジケトン化合物を精製するため、水100mLを加えて反応により生じた塩を溶解させ、分離した有機層を除去した。この水を添加した段階における反応液のpHは13である。そして、残った水層にヘキサン30mLを加えて抽出洗浄を2回行った。次に、水層に15%塩酸を加えpHを7.0とした。このpH操作により生成・分離する有機層(β−ジケトン化合物)を回収した。そして、回収物についてガスクロマトグラフィーで分析を行い、非対称β−ジケトン化合物(化13)と対称β−ジケトン化合物(化14、化15)の比率を測定した。ここで合成したβ−ジケトン化合物は、反応温度(0℃、25℃、50℃、70℃)に対してNo.1〜No.4とする。尚、回収物は90%程度がβ−ジケトン化合物で構成されるものであった。
【0058】
(ii)NaHを塩基に用いた合成
1L三口フラスコにジイソプロピルエーテル150mL、酢酸エチル36.2g(40.2mL)及びNaH
17.1g(55%オイルディスパージョン)を入れた。攪拌しながら50℃に保ち、3−メチル−2−ブタノン20.1g(25.0mL)を滴下ロートで1時間かけて加えた。さらに50℃で1.5時間反応させた。
【0059】
反応終了後、エタノール5mLを加えて攪拌し、未反応のNaHを除去処理した。そして、上記のNaNHを塩基に用いたと同様、反応液中の塩についてこれを水で溶解し、抽出洗浄、pH操作を行い生成・分離する有機層(β−ジケトン化合物)を回収した。ここで合成したβ−ジケトン化合物については、No.5とする。
【0060】
(iii)t−BuOKを塩基に用いた合成
1L三口フラスコにジイソプロピルエーテル150mL、酢酸エチル36.2g(40.2mL)及びt−BuOK43.8gを入れた。攪拌しながら3−メチル−2−ブタノン33.7g(42.0mL)を滴下ロートで加え、25℃で1.5時間反応させた。反応終了後、上記と同様の手順で反応液から有機層(β−ジケトン化合物)を回収した。ここで合成したβ−ジケトン化合物については、No.6とする。
【0061】
以上製造したNo1〜No.6のβ−ジケトン化合物についてのガスクロマトグラフィーによる非対称β−ジケトン化合物と対称β−ジケトン化合物との比率についての分析結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から、各塩基触媒・反応温度により合成されるβ−ジケトン化合物については、99%以上が製造目的である非対称β−ジケトン化合物で構成される。しかし、いずれの合成例でも対称β−ジケトン化合物が含まれていることがわかる。もっとも、対称β−ジケトン化合物の生成も常に2種類が同等に生じるわけではない。即ち、No.4では、化14の対称β−ジケトン化合物の生成量は極めて少なく、化15の対称β−ジケトン化合物の生成が多くなっている。逆に、No.5、No.6では、化15の対称β−ジケトン化合物の生成量が極めて少なく、化14の対称β−ジケトン化合物の生成が多い。
【0064】
また、この合成結果について収率を考慮しつつ検討すると、収率を向上させる場合、反応温度を調整する、或いは、塩基としてNaHを選択するといった対応が考えられるが、その場合、非対称β−ジケトン化合物の比率が低下する傾向がある(No.1とNo.2との対比、No.1とNo.5との対比から)。従って、特に収率を高くする必要がある場合、合成したβ−ジケトン化合物について、対称β−ジケトン化合物を除去する必要性が生じる。
【0065】
更に、表1の結果は、通常の非対称β−ジケトン化合物の製造工程(合成工程及び精製工程)においては、対称β−ジケトン化合物の同伴を抑制することは不可避であることがわかる。即ち、上記製造工程は、合成反応後に生じた塩を洗浄し分離・抽出する精製工程を含む。これらの工程では、塩溶解のために水を添加したときの反応液はアルカリ性(pH13)であり、また、その後塩酸を添加してpHを7としている。この操作は、β−ジケトン以外の有機物を事前に除去することを目的とするものであるが本願発明の構成に類似する(但し、pH範囲は、本発明の(a)、(b)工程の少なくともいずれかで設定されるものと相違する)。しかし、このような精製工程におけるpH調整を行っても、回収されたβ−ジケトン化合物中には対称β−ジケトン化合物が含まれている(表1)。よって、通常の合成・精製工程では対称β−ジケトン化合物の同伴は不可避であることが確認できる。
【0066】
(II)非対称β−ジケトン化合物の精製
製造したNo1〜No.6のβ−ジケトン化合物について、非対称β−ジケトン化合物の抽出・精製を行った。ここでは、非対称β−ジケトン化合物の比率が比較的高いNo.1については、従来の蒸留法で精製を行い。No.2〜No.6については、本発明に係る精製法と蒸留法との組合せで精製を行った。以下、No1〜No.6のβ−ジケトン化合物についての精製工程を説明する。
【0067】
・No.1(従来例)
このβ−ジケトン化合物については蒸留により精製を行った。このときの条件は、圧力100Pa、温度30〜35℃とした。精製後、ガスクロマトグラフィーで分析を行いβ−ジケトンの含有比率を測定した。
【0068】
・No.2
回収したβ−ジケトン化合物に8%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH12の水溶液とした。この水溶液にヘキサン20mLを加えて激しく攪拌し、抽出を行った後ヘキサン層を除去した。このヘキサンでの抽出操作は2回行った。残った水層に15%塩酸を加えpHを8.8とし、分離してきた有機層を回収して蒸留して非対称β−ジケトン化合物を得た。蒸留はNo.1と同様の条件で行った。
【0069】
・No.3
No.3については、上記No.2の抽出精製を2回行ってから蒸留した。即ち、塩酸添加により分離してきた有機層を回収し、これに再度水酸化ナトリウム水溶液の添加等の工程を繰り返し分離有機層を回収して蒸留した。蒸留はNo.1と同様の条件で行った。
【0070】
・No.4
上記したように、No.4は、化14の炭素数の少ない対称β−ジケトン化合物の生成量は極めて少なく、化15の炭素数の多い対称β−ジケトン化合物が多い。そこで、この試料については、アルカリ領域での対称β−ジケトン化合物の抽出工程((a)工程)は行いつつ、塩酸添加時のpH値を低い値とした((b)工程に基づくpH設定を行わなかった)。
【0071】
回収したNo.4のβ−ジケトン化合物に8%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12とした。この水溶液にヘキサン20mLを加えて激しく攪拌し、抽出を行った後ヘキサン層を除去した(2回実施)。そして、残った水層に15%塩酸を加えpHを7.0とし、分離してきた有機層を回収して蒸留した。
【0072】
・No.5、No.6
No.5、6は、いずれも化15の炭素数の多い対称β−ジケトン化合物の生成量は少ない。そこで、この試料については、アルカリ領域にしてβ−ジケトン化合物を溶解させた後、ヘキサン抽出を行わず直ちにpHを下げている。
【0073】
回収したβ−ジケトン化合物に8%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12とした。次に15%塩酸を加えpHを9.0とし、分離してきた有機層を回収して蒸留した。
【0074】
以上精製した非対称β−ジケトン化合物についてのガスクロマトグラフィーの分析結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2について、表1の精製前の分析結果と対比すると、No.2〜No.6について行ったpH操作を含む精製工程は、非対称β−ジケトン化合物の比率を高め、対称β−ジケトン化合物の比率を0.1%程度にしている。これに対し、蒸留法のみの精製を経たNo.1は、非対称β−ジケトン化合物の比率にさほどの変化がない。従って本発明における厳密な管理の下のpH操作による抽出精製工程の有用性が確認できる。尚、この抽出精製工程は、1回でも十分な効果があるが、2回以上繰り返すことで、約100%に近い非対称β−ジケトン化合物を得ることができる。また、No.4、5、6については、本発明における(a)、(b)工程の一方のみを行ったものであるが、いずれも目的とする対称β−ジケトン化合物が除去された非対称β−ジケトン化合物を得ることができることが確認された。
【0077】
(III)有機金属化合物の合成
精製後のNo.2、No.3、No.5の非対称β−ジケトン化合物を用いて、化2の有機金属化合物であるジカルボニル−ビス(5−メチル−2,4−ヘキサンジケトナト)ルテニウム(II)の合成を行った。
【0078】
300mLの三口フラスコにドデカカルボニルトリルテニウム4.8g、精製した非対称β−ジケトン化合物9.0g、n−デカン100mLを入れ、アルゴン雰囲気下、160℃で96時間加熱攪拌を行った。反応終了後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去し淡黄色液体である有機ルテニウム化合物を得た。そして、ガスクロマトグラフィーで分析を行い、製造した化合物の構成比率を測定した。この結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
表3から、合成される有機金属化合物について、その純度(非対称β−ジケトン化合物が配位する有機金属化合物の比率)は、その原料となるβ−ジケトン化合物の構成比率に対応する。従って、無駄のない効率的な有機金属化合物合成のためには、本発明のような抽出精製工程を経た非対称β−ジケトン化合物の適用が好ましいといえる。
【0081】
尚、対称β−ジケトン化合物が配位する有機金属化合物の比率と、原料中の対称β−ジケトン化合物の比率とを対比すると、合成反応により対称β−ジケトン化合物が配位する有機金属化合物の割合が高くなっている。つまり、合成反応も対称β−ジケトン化合物が配位する有機金属化合物の比率を増加させる要因を有することがわる。この点、表1のNo.1の結果のように収率を犠牲にすれば、合成・精製工程のみでも非対称β−ジケトン化合物の比率をある程度高くすることはできる。しかし、例えば、それが要求基準値をギリギリ満たすような場合、そのような非対称β−ジケトン化合物からは期待通りの有機金属化合物が製造できないおそれがある。よって、収率を確保しつつ、高純度の非対称β−ジケトン化合物を得る上で、本発明のような抽出精製工程は有用であるといえる。
【0082】
第2実施形態:ここでは置換基R、Rが相違する複数種類の非対称β−ジケトンを合成し、抽出精製を行った。
【0083】
合成反応は、第1実施形態と同様、化4の合成反応に従っており、その原料は対応する置換基Rを有するエーテル化合物とRを有するケトン化合物を使用している。そして、塩基触媒としてNaNHを使用し、その存在下で両者を合成反応させた。反応後、第1実施形態と同様にβ−ジケトン以外の有機物を除去するための抽出分離操作を行い、β−ジケトン化合物を回収した。
【0084】
次に、第1実施形態と同様、回収したβ−ジケトン化合物に水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH12の水溶液とし、ヘキサンより抽出を行い。残った水層に塩酸を加えpHを8.8としたときの分離有機層を回収した。以上の精製操作は1回としている。そして、回収物を蒸留して非対称β−ジケトン化合物を得た。蒸留も第1実施形態と同様の条件で行った。各種置換基R、Rを有するβ−ジケトン化合物の精製後におけるガスクロマトグラフィー分析の結果を表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
表4から、非対称β−ジケトン化合物の置換基が相違しても、本発明の抽出精製工程が有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は任意の合成工程で得られたβ−ジケトン化合物について、非対称β−ジケトン化合物を効率的に抽出精製する方法である。本発明によれば、非対称β−ジケトンが配位する有機金属化合物の純度を確保することができる。これにより有機金属化合物を構成する金属(貴金属)のロスを抑制することができる。本発明は、化学蒸着法による薄膜形成を行う各種デバイスの製造コストの低減に資することができる。
図1