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特許5984803ヒドロキサム酸誘導体又はその塩を添加剤として含む光電変換装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984803
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ヒドロキサム酸誘導体又はその塩を添加剤として含む光電変換装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20160823BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20160823BHJP
   C09B 67/02 20060101ALI20160823BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01G9/20 113C
   H01G9/20 113A
   H01G9/20 301
   H01G9/20 307
   H01L31/04 112C
   C09B67/02 A
   C09K3/00 T
【請求項の数】26
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2013-517630(P2013-517630)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2013-539155(P2013-539155A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】IB2011052842
(87)【国際公開番号】WO2012001628
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月25日
(31)【優先権主張番号】10167649.2
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ニール グレゴリー スキラー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス アイケマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シェーネボーム
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー ゼンス
(72)【発明者】
【氏名】ペーター エアク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ライヒェルト
(72)【発明者】
【氏名】ヘアマン ベアクマン
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−507570(JP,A)
【文献】 特開2002−231325(JP,A)
【文献】 特開2003−288953(JP,A)
【文献】 特開2009−108182(JP,A)
【文献】 特開2003−068374(JP,A)
【文献】 特開2003−007359(JP,A)
【文献】 特開2010−016001(JP,A)
【文献】 特開2010−067542(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0149165(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0305905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H01M 14/00
C09B 67/02
C09K 3/00
H01L 51/44
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの半導体性金属酸化物であって、その上に少なくとも1つの発色物質が吸着されている半導体性金属酸化物を含有する感光層を含む色素増感光電変換装置の製造方法であって、前記半導体性金属酸化物が、400〜1000nmの電磁波長範囲で本質的に透明である少なくとも1つのヒドロキサム酸及び/又は少なくとも1つのその塩で処理され、
前記少なくとも1つのヒドロキサム酸が、一般式(I)の化合物であり、少なくとも1つのその塩が一般式(I’)の化合物であり、
【化1】
式中
+が、アルカリ金属カチオンまたはNR’4カチオン(ここでR’が、互いに独立して、水素、C1〜C6−アルキル及びベンジルから選択される)であり;
1が、ベンジル(これはベンジル基の4位で結合しているC3〜C12−アルコキシから選択される1個の置換基を有する)であり、
2が、Hである、前記製造方法。
【請求項2】
+が、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン又はNR’4イオンであり、ここでR’が、互いに独立して、水素、C1〜C4−アルキル及びベンジルから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
半導体性金属酸化物が、発色物質が半導体性金属酸化物に吸着した後に、少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩で処理される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
半導体性金属酸化物が、発色物質が半導体性金属酸化物に吸着している間に、少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩で処理される、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
半導体性金属酸化物が、発色物質が半導体性金属酸化物に吸着する前に、少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩で処理される、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
発色物質が、金属錯体色素、ポルフィリン色素、メロシアニン色素及びリレン色素から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
発色物質が、ルテニウム錯体色素及びリレン色素から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
感光層に含有される半導体性金属酸化物がナノ多孔質TiO2である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
i)電気伝導層を提供する工程;
iii)感光層を前記電気伝導層の上に堆積させる工程(ここで感光層は、請求項1、6又は7のいずれか1項で定義された発色物質で増感され、請求項1または2で定義された少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩で処理された、請求項1または8のいずれか1で定義された半導体性金属酸化物を含有する);
iv)電荷移動層を前記感光層の上に堆積させる工程;及び
v)対向電気伝導層を前記電荷移動層の上に堆積させる工程
を含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
電気伝導層及び対向電気伝導層のいずれか一方又は両方が実質的に透明である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
電気伝導層が電気伝導性金属酸化物を含有する、請求項9または10項記載の方法。
【請求項12】
電気伝導性金属酸化物が、フッ素、アンチモン又はインジウムでドープされた酸化スズである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記工程i)と前記工程iii)の間に、
ii)前記電気伝導層の上にドープされた又はドープされていない半導体性金属酸化物を含む下塗層を堆積させる工程
を含む、請求項9〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
半導体性金属酸化物がTiO2である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
発色物質が、感光層の半導体性金属酸化物に吸着される、請求項9〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩が、感光層の半導体性金属酸化物に吸着される、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
電荷移動層が、イオン伝導性電解質組成物又は正孔輸送材料を含む、請求項5〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
電荷移動層が固体である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
電荷移動層が、正孔輸送材料としてスピロビフルオレン誘導体を含む、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
電荷移動層が塩も含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
塩がLi[CF3SO2)N]である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
対向電気伝導層が金属を含む、請求項9〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
金属が銀又は金である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
I)電気伝導層;
II)場合により下塗層;
III)感光層(ここで感光層は、発色物質で増感され、請求項1または2で定義された400〜1000nmの電磁波長範囲で本質的に透明な少なくとも1つのヒドロキサム酸及び/又は少なくとも1つのその塩を吸着状態で含む半導体金属酸化物を含有する);
IV)電荷移動層;並びに
V)対向電気伝導層
を含む、色素増感光電変換装置。
【請求項25】
請求項24記載の光電変換装置を含む太陽電池。
【請求項26】
発色物質が吸着されている半導体性金属酸化物を含有する感光層を含む色素増感光電変換装置のエネルギー変換効率ηを向上させるための、半導体性金属酸化物に対する、請求項1または2で定義されたヒドロキサム酸及び/又はその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に透明なヒドロキサム酸又は本質的に透明なその塩で処理された色素増感金属酸化物半導体を含む光電変換装置を製造する方法に関する。本発明は、また、本発明の方法により得られる光電変換装置及び光電変換装置を含む光電池、特に太陽電池に関する。更に、本発明は、色素増感光電変換装置のエネルギー交換効率ηを向上させるための、本質的に透明なヒドロキサム酸又は本質的に透明なその塩の使用に関する。
【0002】
発明の背景
色素で増感された半導体金属酸化物を使用する光電変換装置(本明細書中以降、「色素増感光電変換装置」とする)並びにその材料及び製造方法は、例えば、U.S.Pat.No.4,927,721、U.S.Pat.No.5,350,644、U.S.Pat.No.6,245,988、WO2007/054470及びWO2009/013258に開示されている。色素増感光電変換装置は、二酸化チタンのような安価な金属酸化物半導体を高純度に精製することなく使用できるため、ケイ素系電池と比較して低い費用で製造することができる。
【0003】
例えば太陽電池に使用されるもののような光電変換装置の全体的な性能は、開路電圧(Voc)、短絡電流(Isc)、フィルファクター(FF)及びそれらから得られるエネルギー交換効率(η)のような幾つかのパラメーターにより特徴付けられる(例えば、Jenny Nelson“The Physics of Solar Cells”(2003),Imperial College Pressを参照すること)。
【0004】
従来の色素増感光電変換装置は、必ずしも十分に高い光電変換効率を有しているとは言えないため、多くの努力がこれらの装置を更に改善するためになされてきた。
【0005】
この目的のため、EP1473745は、疎水性部分及び固着基を有する化合物を、色素と一緒に半導体性金属酸化物に同時吸着することを提案し、これが開路電圧Vocの上昇をもたらすと記載されている。
【0006】
US6,586,670は、特定の尿素化合物で処理された半導体性金属酸化物を使用する色素増感光電変換装置が、エネルギー交換効率ηにおいて優れていることを報告している。
【0007】
光電変換装置を製造するための、固着基としてヒドロキサム酸塩部分を含む色素の使用は、例えばWO99/03868、WO2008/029523及びWO2006/010290から既知である。しかし、光電変換の文脈において、ヒドロキサム酸塩化合物が集光性色素を結合する目的以外に用いられることは、これまで報告されていない。
【0008】
色素増感光電変換装置の性能、特にエネルギー交換効率ηを更に改善する必要性は、依然としてある。
【0009】
したがって、向上したエネルギー交換効率ηを有する光電変換装置、前記装置を含む太陽電池及びその製造方法を提供することが、本発明の目的である。
【0010】
この目的は、下記に詳細に記載される方法及び装置により達成される。
【0011】
本発明は、少なくとも1つの発色物質が吸着されている少なくとも1つの半導体性金属酸化物を含有する感光層を含む色素増感光電変換装置を製造する方法であって、前記半導体性金属酸化物が400〜1000nm、好ましくは400〜800nmの電磁波波長範囲で本質的に透明である、少なくとも1つのヒドロキサム酸又は少なくとも1つのその塩で処理されている方法に関する。
【0012】
驚くべきことに、そのようなヒドロキサム酸/ヒドロキサム酸塩添加剤の、色素増感光電変換装置及びそのような装置を含む太陽電池への添加は、光を吸収するためにより少ない色素が電池に存在する場合であっても、装置の性能に劇的な改善をもたらす。
【0013】
本発明は、また、本発明の方法により得られ、下記に記載されたように特徴付けられる色素増感光電変換装置及びそのような装置を含む光電池、好ましくは太陽電池に関する。光電池は、色素増感光電変換装置を含み、電気回路の一部である。本発明は、更に、色素増感光電変換装置、またそれらを含む光電池、とりわけ太陽電池のエネルギー交換効率ηを向上させるための、上記及び下記に定義されているヒドロキサム酸及び/又はその塩の使用に関する。
【0014】
本発明の方法について下記になされる見解は、本発明の色素増感光電変換装置及び光電池にも適用される。
【0015】
「本質的に透明」は、文脈において、ヒドロキサム酸又はその塩が、400〜1000nm、好ましくは400〜800nmの波長範囲の電磁放射線を本質的に吸収しないこと、好ましくは本質的に反射もしないことを意味する。
【0016】
前記波長範囲で「本質的に吸収しないこと及び好ましくは本質的に反射もしないこと」は、ヒドロキサム酸又はその塩が、塩化メチレンで測定して、400〜1000nm、好ましくは400〜800nmの電磁波波長範囲で103L・mol-1・cm-1未満、好ましくは102L・mol-1・cm-1未満の吸光係数を有することを意味する。
【0017】
TiO2半導体性金属酸化物として使用される場合、ヒドロキサム酸またはこれらの塩は、TiO2吸収と重複する非常に弱い電荷移動吸収バンドを生じることがある。これらの電荷移動バンドの吸光係数は、400nm<1000l/(mol・cm)であり、光ボルタ電池の光電流にほとんど寄与しない。
【0018】
本発明の方法及び装置は、幾つかの利点を伴う。例えば、本発明の方法は、優れたエネルギー交換効率ηを特徴とし、太陽電池への使用に極めて適している耐久性のある光電変換装置の安価で容易な製造を可能にする。
【0019】
本発明の文脈において、一般的に使用される用語は、以下のように定義される。
【0020】
用語「カチオン等価物」は、ヒドロキサム酸塩アニオン(R1−C(O)−NR2−O-)を中和することができるカチオンの等価物を表す。例えば、Ca2+イオンは、2つのヒドロキサム酸塩基に結合することができ、すなわち、カチオン等価物がカルシウムイオン等価物である場合、1/2Ca2+が式(I’)のM+に対応する。
【0021】
特に記述のない限り、用語「アルキル」、「アルコキシ」、「アルキルチオ」、「ハロアルキル」、「ハロアルコキシ」、「ハロアルキルチオ」、「アルケニル」、「アルカジエニル」、「アルカトリエニル」、「アルキニル」、「アルキレン」及びこれらから誘導される基には、常に、非分岐鎖及び分岐鎖の両方の「アルキル」、「アルコキシ」、「アルキルチオ」、「ハロアルキル」、「ハロアルコキシ」、「ハロアルキルチオ」、「アルケニル」、「アルカジエニル」、「アルカトリエニル」、「アルキニル」及び「アルキレン」がそれぞれ含まれる。
【0022】
接頭辞Cn−Cm−は、炭化水素単位における炭素の対応する数を示す。特に示されない限り、ハロゲン化置換基は、好ましくは1〜5つの同一又は異なるハロゲン原子、とりわけフッ素原子又は塩素原子を有する。記載の文脈においてC0−アルキレン又は(CH20又は同様の表現は、特に示されない限り、単一結合を表す。
【0023】
用語「ハロゲン」は、それぞれの場合において、フッ素、臭素、塩素又はヨウ素、とりわけフッ素、塩素又は臭素を表す。
【0024】
アルキル及び例えばアルコキシ、アルキルチオ、アリールアルキル、ヘタリールアルキル、シクロアルキルアルキル又はアルコキシアルキルにおけるアルキル部分:1個以上のC原子、例えば1〜4、1〜6、1〜8、1〜10、1〜12又は1〜18個の炭素原子を有する飽和、直鎖又は分岐鎖炭化水素基、例えばC1〜C4−アルキル、例は、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、ブチル、1−メチルプロピル(sec−ブチル)、2−メチルプロピル(イソブチル)又は1,1−ジメチルエチル(tert−ブチル)、C1〜C6−アルキル、例は、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル又は1−エチル−2−メチルプロピル、C1〜C8−アルキル、例は、C〜C6−アルキルで前記に記述された基、更にまた、ヘプチル、2−メチル−ヘキシル、オクチル又は2,4−ジエチルヘキシル、更にそれらの位置異性体、C1〜C10−アルキル、例は、C1〜C8−アルキルで前記に記述された基、更にまた、ノニル、デシル、2,4−ジメチル−オクチル、更にそれらの位置異性体、C1〜C12−アルキル、例は、C1〜C10−アルキルで前記に記述された基、更にまた、ウンデシル、ドデシル、5,7−ジメチルデシル、3−メチルウンデシル、更にそれらの位置異性体、並びにC1〜C18−アルキル、例は、C1〜C12−アルキルで前記に記述された基、更にまた、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル及びそれらの位置異性体。
【0025】
3〜C10−アルキルは、3〜10個の炭素原子を有する飽和、直鎖又は分岐鎖炭化水素基である。例としては、プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、ブチル、1−メチルプロピル(sec−ブチル)、2−メチルプロピル(イソブチル)、1,1−ジメチルエチル(tert−ブチル)、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、ヘプチル、2−メチル−ヘキシル、オクチル、2,4−ジエチルヘキシル、ノニル、デシル、2,4−ジメチル−オクチル、更にこれらの位置異性体が挙げられる。
【0026】
3〜C12−アルキルは、3〜12個の炭素原子を有する飽和、直鎖又は分岐鎖炭化水素基である。例として、C3〜C10−アルキルについて上記に記述されたものの他に、ウンデシル、ドデシル、5,7−ジメチルデシル、3−メチルウンデシル、更にこれらの位置異性体が挙げられる。
【0027】
ハロアルキル:通常、上記に記述されたように1〜4、1〜6、1〜8、1〜10、1〜12又は1〜18個の炭素原子を有し、その水素原子がフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素のようなハロゲン原子で部分的又は完全に代えられているアルキル基、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2−ヨードエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−クロロ−2−フルオロエチル、2−クロロ−2,2−ジフルオロエチル、2,2−ジクロロ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル、2−フルオロプロピル、3−フルオロプロピル、2,2−ジフルオロプロピル、2,3−ジフルオロプロピル、2−クロロプロピル、3−クロロプロピル、2,3−ジクロロプロピル、2−ブロモプロピル、3−ブロモプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、3,3,3−トリクロロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、1−(フルオロメチル)−2−フルオロエチル、1−(クロロメチル)−2−クロロエチル、1−(ブロモメチル)−2−ブロモエチル、4−フルオロブチル、4−クロロブチル、4−ブロモブチル、ノナフルオロブチル、3−クロロペンチル、2−(フルオロメチル)−ヘキシル、4−ブロモヘプチル、1−(クロロメチル)−5−クロロオクチル、2,3−ジフルオロノニル、10−ブロモデシル、2,3,6−トリフルオロウンデシル、2−クロロドデシル。
【0028】
シクロアルキル及びシクロアルコキシ又はシクロアルキル−C1〜C6−アルキルにおけるシクロアルキル部分:3個以上のC原子、例えば3〜7個の炭素環員、例えば3、4、5、6又は7個の炭素環員を有する単環式、飽和炭化水素基、例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル。
【0029】
アルケニル及び例えばアリール−(C2〜C)−アルケニルにおけるアルケニル部分:2個以上のC原子、例えば2〜4、2〜6又は2〜12個の炭素原子を有し、1つの二重結合を任意の位置に有する単不飽和、直鎖又は分岐鎖炭化水素基、例えばC2〜C6−アルケニル、例は、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチルエテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−1−ブテニル、2−メチル−1−ブテニル、3−メチル−1−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、1,2−ジメチル−1−プロペニル、1,2−ジメチル−2−プロペニル、1−エチル−1−プロペニル、1−エチル−2−プロペニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−メチル−1−ペンテニル、2−メチル−1−ペンテニル、3−メチル−1−ペンテニル、4−メチル−1−ペンテニル、1−メチル−2−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−メチル−2−ペンテニル、4−メチル−2−ペンテニル、1−メチル−3−ペンテニル、2−メチル−3−ペンテニル、3−メチル−3−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−メチル−4−ペンテニル、2−メチル−4−ペンテニル、3−メチル−4−ペンテニル、4−メチル−4−ペンテニル、1,1−ジメチル−2−ブテニル、1,1−ジメチル−3−ブテニル、1,2−ジメチル−1−ブテニル、1,2−ジメチル−2−ブテニル、1,2−ジメチル−3−ブテニル、1,3−ジメチル−1−ブテニル、1,3−ジメチル−2−ブテニル、1,3−ジメチル−3−ブテニル、2,2−ジメチル−3−ブテニル、2,3−ジメチル−1−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−3−ブテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル、3,3−ジメチル−2−ブテニル、1−エチル−1−ブテニル、1−エチル−2−ブテニル、1−エチル−3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、2−エチル−2−ブテニル、2−エチル−3−ブテニル、1,1,2−トリメチル−2−プロペニル、1−エチル−1−メチル−2−プロペニル、1−エチル−2−メチル−1−プロペニル、1−エチル−2−メチル−2−プロペニル。
【0030】
アルキニル:2個以上のC原子、例えば2〜4、2〜6又は2〜12個の炭素原子を有し、1又は2つの三重結合を任意の位置であるが隣接しないで有する直鎖又は分岐鎖炭化水素基、例えば、C2〜C6−アルキニル、例は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−メチル−2−ブチニル、1−メチル−3−ブチニル、2−メチル−3−ブチニル、3−メチル−1−ブチニル、1,1−ジメチル−2−プロピニル、1−エチル−2−プロピニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−メチル−2−ペンチニル、1−メチル−3−ペンチニル、1−メチル−4−ペンチニル、2−メチル−3−ペンチニル、2−メチル−4−ペンチニル、3−メチル−1−ペンチニル、3−メチル−4−ペンチニル、4−メチル−1−ペンチニル、4−メチル−2−ペンチニル、1,1−ジメチル−2−ブチニル、1,1−ジメチル−3−ブチニル、1,2−ジメチル−3−ブチニル、2,2−ジメチル−3−ブチニル、3,3−ジメチル−1−ブチニル、1−エチル−2−ブチニル、1−エチル−3−ブチニル、2−エチル−3−ブチニル、1−エチル−1−メチル−2−プロピニル。
【0031】
アルカジエニル:4個以上の炭素原子、例えば4〜6、4〜10又は4〜12個の炭素原子及び2つの二重結合を任意の位置であるが隣接しないで有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、例は、2,4−ブタジエニル、2,4−ペンタジエニル、2−メチル−2,4−ペンタジエニル、2,4−ヘキサジエニル、2,4−ヘプタジエニル、2,4−オクタジエニル、2,4−ノナジエニル、2,4−デカジエニル、1,3−ブタジエニル、1,3−ペンタジエニル、2−メチル−1,3−ペンタジエニル、1,3−ヘキサジエニル、1,3−ヘプタジエニル、1,3−オクタジエニル、1,3−ノナジエニル、1,3−デカジエニルなど。
【0032】
アルカトリエニル:6個以上のC原子、例えば6〜8、6〜10又は6〜12個の炭素原子及び3つの二重結合を任意の位置であるが隣接しないで有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、例は、2,4,6−ヘキサトリエニル、2,4,6−ヘプタトリエニル、2−メチル−2,4,6−ヘプタトリエニル、2,4,6−オクタトリエニル、2,4,6−ノナトリエニル、2,4,6−デカトリエニル、2,4,6−ウンデカトリエニル、2,4,6−ドデカトリエニル、1,3,5−ヘキサトリエニル、1,3,5−ヘプタトリエニル、2−メチル−1,3,5−ヘプタトリエニル、1,3,5−オクタトリエニル、1,3,5−ノナトリエニル、1,3,5−デカトリエニル、1,3,5−ウンデカトリエニル、1,3,5−ドデカトリエニルなど。
【0033】
CH2基がO、NH又はSに代えられている基は、1つ以上の非隣接−CH2−基が互いに独立して−O−、−NH−又は−S−に代えられている炭化水素基を意味する。そのような基の例は、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2=CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−S−CH3などである。
【0034】
アルコキシ又は例えばアルコキシアルキルにおけるアルコキシ部分:
好ましくは1〜4、1〜6又は1〜12個のC原子を有し、O原子を介して結合している、上記に定義されたアルキル:例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、1−メチルエトキシ、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、2−メチルプロポキシ又は1,1−ジメチルエトキシ、ペントキシ、1−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、1,1−ジメチルプロポキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、2,2−ジメチルプロポキシ、1−エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1−メチルペントキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、4−メチルペントキシ、1,1−ジメチルブトキシ、1,2−ジメチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブトキシ、3,3−ジメチルブトキシ、1−エチルブトキシ、2−エチルブトキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1,2,2−トリメチルプロポキシ、1−エチル−1−メチルプロポキシ又は1−エチル−2−メチルプロポキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、2−メチル−ヘキソキシ、4−プロピル−ヘプトキシ、オクトキシ、2,4−ジエチルオクトキシ、ノノキシ、3,4−ジメチルノノキシ、デコキシ、3−エチル−デコキシ。
【0035】
3〜C10−アルコキシは、3〜10個の炭素原子を有する飽和、直鎖又は分岐鎖炭化水素基である。例として、プロポキシ、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、ブトキシ、1−メチルプロポキシ(sec−ブトキシ)、2−メチルプロポキシ(イソブトキシ)、1,1−ジメチルエトキシ(tert−ブトキシ)、ペントキシ、1−メチルブトキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、2,2−ジメチルプロポキシ、1−エチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、1,1−ジメチルプロポキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、1−メチルペントキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、4−メチルペントキシ、1,1−ジメチルブトキシ、1,2−ジメチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブトキシ、3,3−ジメチルブトキシ、1−エチルブトキシ、2−エチルブトキシ、1,1,2−トリメチルプロポキシ、1,2,2−トリメチルプロポキシ、1−エチル−1−メチルプロポキシ、1−エチル−2−メチルプロポキシ、ヘプチルオキシ、2−メチル−ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、2,4−ジエチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、2,4−ジメチル−オクチルオキシ、更にそれらの位置異性体が挙げられる。
【0036】
3〜C12−アルコキシは、3〜12個の炭素原子を有する飽和、直鎖又は分岐鎖炭化水素基である。例として、C3〜C10−アルコキシについて上記に記述されたものの他に、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、5,7−ジメチルデシルオキシ、3−メチルウンデシルオキシ、更にこれらの位置異性体が挙げられる。
【0037】
ハロアルコキシ:上記に記載されたアルコキシであり、これらの基の水素原子がハロゲン原子により部分的又は完全に代えられているもの、すなわち例えばC1〜C6−ハロアルコキシ、例は、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2−クロロエトキシ、2−ブロモエトキシ、2−ヨードエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2−クロロ−2−フルオロエトキシ、2−クロロ−2,2−ジフルオロエトキシ、2,2−ジクロロ−2−フルオロエトキシ、2,2,2−トリクロロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、2−フルオロプロポキシ、3−フルオロプロポキシ、2,2−ジフルオロプロポキシ、2,3−ジフルオロプロポキシ、2−クロロプロポキシ、3−クロロプロポキシ、2,3−ジクロロプロポキシ、2−ブロモプロポキシ、3−ブロモプロポキシ、3,3,3−トリフルオロプロポキシ、3,3,3−トリクロロプロポキシ、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、1−(フルオロメチル)−2−フルオロエトキシ、1−(クロロメチル)−2−クロロエトキシ、1−(ブロモメチル)−2−ブロモエトキシ、4−フルオロブトキシ、4−クロロブトキシ、4−ブロモブトキシ、ノナフルオロブトキシ、5−フルオロ−1−ペントキシ、5−クロロ−1−ペントキシ、5−ブロモ−1−ペントキシ、5−ヨード−1−ペントキシ、5,5,5−トリクロロ−1−ペントキシ、ウンデカフルオロペントキシ、6−フルオロ−1−ヘキソキシ、6−クロロ−1−ヘキソキシ、6−ブロモ−1−ヘキソキシ、6−ヨード−1−ヘキソキシ、6,6,6−トリクロロ−1−ヘキソキシ又はドデカフルオロヘキソキシ、とりわけ、クロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2−クロロエトキシ又は2,2,2−トリフルオロエトキシ。
【0038】
アルコキシアルキル:通常1〜4個のC原子を有するアルキル基であり、1個の水素原子が、通常1〜6又は1〜4個のC原子を有するアルコキシ基に代えられているもの。その例は、CH2−OCH3、CH2−OC25、n−プロポキシメチル、CH2−OCH(CH32、n−ブトキシメチル、(1−メチルプロポキシ)メチル、(2−メチルプロポキシ)メチル、CH2−OC(CH33、2−(メトキシ)エチル、2−(エトキシ)エチル、2−(n−プロポキシ)エチル、2−(1−メチルエトキシ)エチル、2−(n−ブトキシ)エチル、2−(1−メチルプロポキシ)エチル、2−(2−メチルプロポキシ)エチル、2−(1,1−ジメチルエトキシ)エチル、2−(メトキシ)プロピル、2−(エトキシ)プロピル、2−(n−プロポキシ)プロピル、2−(1−メチルエトキシ)プロピル、2−(n−ブトキシ)プロピル、2−(1−メチルプロポキシ)プロピル、2−(2−メチルプロポキシ)プロピル、2−(1,1−ジメチルエトキシ)プロピル、3−(メトキシ)プロピル、3−(エトキシ)プロピル、3−(n−プロポキシ)プロピル、3−(1−メチルエトキシ)プロピル、3−(n−ブトキシ)プロピル、3−(1−メチルプロポキシ)プロピル、3−(2−メチルプロポキシ)プロピル、3−(1,1−ジメチルエトキシ)プロピル、2−(メトキシ)ブチル、2−(エトキシ)ブチル、2−(n−プロポキシ)ブチル、2−(1−メチルエトキシ)ブチル、2−(n−ブトキシ)ブチル、2−(1−メチルプロポキシ)ブチル、2−(2−メチルプロポキシ)ブチル、2−(1,1−ジメチルエトキシ)ブチル、3−(メトキシ)ブチル、3−(エトキシ)ブチル、3−(n−プロポキシ)ブチル、3−(1−メチルエトキシ)ブチル、3−(n−ブトキシ)ブチル、3−(1−メチルプロポキシ)ブチル、3−(2−メチルプロポキシ)ブチル、3−(1,1−ジメチルエトキシ)ブチル、4−(メトキシ)ブチル、4−(エトキシ)ブチル、4−(n−プロポキシ)ブチル、4−(1−メチルエトキシ)ブチル、4−(n−ブトキシ)ブチル、4−(1−メチルプロポキシ)ブチル、4−(2−メチルプロポキシ)ブチル、4−(1,1−ジメチルエトキシ)ブチルなど。
【0039】
アルキルチオ:好ましくは1〜6又は1〜4個のC原子を有し、S原子を介して結合している、上記に定義されたアルキル、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオなど。
【0040】
ハロアルキルチオ:好ましくは1〜6又は1〜4個のC原子を有し、S原子を介して結合している、上記に定義されたハロアルキル、例えば、フルオロメチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、2−フルオロエチルチオ、2,2−ジフルオロエチルチオ、2,2,2−トリフルオロエチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2−フルオロプロピルチオ、3−フルオロプロピルチオ、2,2−ジフルオロプロピルチオ、2,3−ジフルオロプロピルチオ及びヘプタフルオロプロピルチオ。
【0041】
アリール:単環式、二環式又は三環式芳香族炭化水素基、例は、フェニル又はナフチル、とりわけフェニル。
【0042】
ヘテロシクリル:飽和(「ヘテロシクロアルキル」)又は部分的に不飽和であってもよく、通常3、4、5、6、7又は8個の環原子を有し、通常1、2、3又は4個、特に1、2又は3個の環原子が、環員としての炭素原子の他にN、S又はOのようなヘテロ原子である、複素環基。
【0043】
飽和複素環の例は、特に下記である:
ヘテロシクロアルキル:すなわち、通常3、4、5、6又は7個の環原子を有し、通常1、2又は3個の環原子が、環員としての炭素原子の他にN、S又はOのようなヘテロ原子である、飽和複素環基。これらには、例えば以下が含まれる:
C結合3〜4員飽和環、例は、
2−オキシラニル、2−オキセタニル、3−オキセタニル、2−アジリジニル、3−チエタニル、1−アゼチジニル、2−アゼチジニル。
【0044】
C結合5員飽和環、例は、
テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、テトラヒドロピロール−2−イル(ピロリジン−2−イル)、テトラヒドロピロール−3−イル(ピロリジン−3−イル)、テトラヒドロピラゾール−3−イル(ピラゾリジン−3−イル)、テトラヒドロピラゾール−4−イル(ピラゾリジン−4−イル)、テトラヒドロイソオキサゾール−3−イル(イソオキサゾリジン−3−イル)、テトラヒドロイソオキサゾール−4−イル(イソオキサゾリジン−4−イル)、テトラヒドロイソオキサゾール−5−イル(イソオキサゾリジン−5−イル)、1,2−オキサチオラン−3−イル、1,2−オキサチオラン−4−イル、1,2−オキサチオラン−5−イル、テトラヒドロイソチアゾール−3−イル(イソチアゾリジン−3−イル)、テトラヒドロイソチアゾール−4−イル(イソチアゾリジン−4−イル)、テトラヒドロイソチアゾール−5−イル(イソチアゾリジン−5−イル)、1,2−ジチオラン−3−イル、1,2−ジチオラン−4−イル、テトラヒドロイミダゾール−2−イル(イミダゾリジン−2−イル)、テトラヒドロイミダゾール−4−イル(イミダゾリジン−4−イル)、テトラヒドロオキサゾール−2−イル(オキサゾリジン−2−イル)、テトラヒドロオキサゾール−4−イル(オキサゾリジン−4−イル)、テトラヒドロオキサゾール−5−イル(オキサゾリジン−5−イル)、テトラヒドロチアゾール−2−イル(チアゾリジン−2−イル)、テトラヒドロチアゾール−4−イル(チアゾリジン−4−イル)、テトラヒドロチアゾール−5−イル(チアゾリジン−5−イル)、[1,2,3]トリアゾリジン−4−イル、[1,2,4]トリアゾリジン−3−イル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキソラン−4−イル、1,3−オキサチオラン−2−イル、1,3−オキサチオラン−4−イル、1,3−オキサチオラン−5−イル、1,3−ジチオラン−2−イル、1,3−ジチオラン−4−イル、1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル。
【0045】
C結合6員飽和環、例は、
テトラヒドロピラン−2−イル、テトラヒドロピラン−3−イル、テトラヒドロピラン−4−イル、ピペリジン−2−イル、ピペリジン−3−イル、ピペリジン−4−イル、テトラヒドロチオピラン−2−イル、テトラヒドロチオピラン−3−イル、テトラヒドロチオピラン−4−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、1,3−ジオキサン−4−イル、1,3−ジオキサン−5−イル、1,4−ジオキサン−2−イル、1,3−ジチアン−2−イル、1,3−ジチアン−4−イル、1,3−ジチアン−5−イル、1,4−ジチアン−2−イル、1,3−オキサチアン−2−イル、1,3−オキサチアン−4−イル、1,3−オキサチアン−5−イル、1,3−オキサチアン−6−イル、1,4−オキサチアン−2−イル、1,4−オキサチアン−3−イル、1,2−ジチアン−3−イル、1,2−ジチアン−4−イル、ヘキサヒドロピリミジン−2−イル、ヘキサヒドロピリミジン−4−イル、ヘキサヒドロピリミジン−5−イル、ピペラジン−2−イル、ヘキサヒドロピリダジン−3−イル、ヘキサヒドロピリダジン−4−イル、テトラヒドロ−1,3−オキサジン−2−イル、テトラヒドロ−1,3−オキサジン−4−イル、テトラヒドロ−1,3−オキサジン−5−イル、テトラヒドロ−1,3−オキサジン−6−イル、テトラヒドロ−1,3−チアジン−2−イル、テトラヒドロ−1,3−チアジン−4−イル、テトラヒドロ−1,3−チアジン−5−イル、テトラヒドロ−1,3−チアジン−6−イル、テトラヒドロ−1,4−チアジン−2−イル、テトラヒドロ−1,4−チアジン−3−イル、モルホリン−2−イル、モルホリン−3−イル、テトラヒドロ−1,2−オキサジン−3−イル、テトラヒドロ−1,2−オキサジン−4−イル、テトラヒドロ−1,2−オキサジン−5−イル、テトラヒドロ−1,2−オキサジン−6−イル。
【0046】
N結合5員飽和環、例は、
テトラヒドロピロール−1−イル(ピロリジン−1−イル)、テトラヒドロピラゾール−1−イル(ピラゾリジン−1−イル)、テトラヒドロイソオキサゾール−2−イル(イソオキサゾリジン−2−イル)、テトラヒドロイソチアゾール−2−イル(イソチアゾリジン−2−イル)、テトラヒドロイミダゾール−1−イル(イミダゾリジン−1−イル)、テトラヒドロオキサゾール−3−イル(オキサゾリジン−3−イル)、テトラヒドロチアゾール−3−イル(チアゾリジン−3−イル)。
【0047】
N結合6員飽和環、例は、
ピペリジン−1−イル、ヘキサヒドロピリミジン−1−イル、ヘキサヒドロピラジン−1−イル(ピペラジン−1−イル)、ヘキサヒドロ−ピリダジン−1−イル、テトラヒドロ−1,3−オキサジン−3−イル、テトラヒドロ−1,3−チアジン−3−イル、テトラヒドロ−1,4−チアジン−4−イル、テトラヒドロ−1,4−オキサジン−4−イル(モルホリン−4−イル)、テトラヒドロ−1,2−オキサジン−2−イル。
【0048】
通常4、5、6又は7個の環原子を有し、通常1、2又は3個の環原子が、環員としての炭素原子の他にN、S又はOのようなヘテロ原子である、部分不飽和複素環基。これらには、例えば以下が含まれる:
C結合5員部分不飽和環、例は、
2,3−ジヒドロフラン−2−イル、2,3−ジヒドロフラン−3−イル、2,5−ジヒドロフラン−2−イル、2,5−ジヒドロ−フラン−3−イル、4,5−ジヒドロフラン−2−イル、4,5−ジヒドロフラン−3−イル、2,3−ジヒドロチエン−2−イル、2,3−ジヒドロチエン−3−イル、2,5−ジヒドロチエン−2−イル、2,5−ジヒドロチエン−3−イル、4,5−ジヒドロチエン−2−イル、4,5−ジヒドロチエン−3−イル、2,3−ジヒドロ−1H−ピロール−2−イル、2,3−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル、2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−2−イル、2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル、4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−2−イル、4,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル、3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−イル、3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−3−イル、3,4−ジヒドロ−5H−ピロール−2−イル、3,4−ジヒドロ−5H−ピロール−3−イル、4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−3−イル、4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル、4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル、2,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−3−イル、2,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−イル、2,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル、4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル、4,5−ジヒドロイソオキサゾール−4−イル、4,5−ジヒドロイソオキサゾール−5−イル、2,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル、2,5−ジヒドロイソオキサゾール−4−イル、2,5−ジヒドロイソオキサゾール−5−イル、2,3−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル、2,3−ジヒドロイソオキサゾール−4−イル、2,3−ジヒドロイソオキサゾール−5−イル、4,5−ジヒドロイソチアゾール−3−イル、4,5−ジヒドロイソチアゾール−4−イル、4,5−ジヒドロイソチアゾール−5−イル、2,5−ジヒドロイソチアゾール−3−イル、2,5−ジヒドロイソチアゾール−4−イル、2,5−ジヒドロイソチアゾール−5−イル、2,3−ジヒドロイソチアゾール−3−イル、2,3−ジヒドロイソチアゾール−4−イル、2,3−ジヒドロイソチアゾール−5−イル、4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル、4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−4−イル、4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−5−イル、2,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル、2,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−4−イル、2,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−5−イル、2,3−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル、2,3−ジヒドロ−1H−イミダゾール−4−イル、4,5−ジヒドロオキサゾール−2−イル、4,5−ジヒドロオキサゾール−4−イル、4,5−ジヒドロオキサゾール−5−イル、2,5−ジヒドロオキサゾール−2−イル、2,5−ジヒドロオキサゾール−4−イル、2,5−ジヒドロオキサゾール−5−イル、2,3−ジヒドロオキサゾール−2−イル、2,3−ジヒドロオキサゾール−4−イル、2,3−ジヒドロオキサゾール−5−イル、4,5−ジヒドロチアゾール−2−イル、4,5−ジヒドロチアゾール−4−イル、4,5−ジヒドロチアゾール−5−イル、2,5−ジヒドロチアゾール−2−イル、2,5−ジヒドロチアゾール−4−イル、2,5−ジヒドロチアゾール−5−イル、2,3−ジヒドロチアゾール−2−イル、2,3−ジヒドロチアゾール−4−イル、2,3−ジヒドロチアゾール−5−イル、1,3−ジオキソール−2−イル、1,3−ジオキソール−4−イル、1,3−ジチオール−2−イル、1,3−ジチオール−4−イル、1,3−オキサチオール−2−イル、1,3−オキサチオール−4−イル、1,3−オキサチオール−5−イル。
【0049】
C結合6員部分不飽和環、例は、
2H−3,4−ジヒドロピラン−6−イル、2H−3,4−ジヒドロピラン−5−イル、2H−3,4−ジヒドロピラン−4−イル、2H−3,4−ジヒドロピラン−3−イル、2H−3,4−ジヒドロピラン−2−イル、2H−3,4−ジヒドロチオピラン−6−イル、2H−3,4−ジヒドロチオピラン−5−イル、2H−3,4−ジヒドロチオピラン−4−イル、2H−3,4−ジヒドロチオピラン−3−イル、2H−3,4−ジヒドロチオピラン−2−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン−6−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン−5−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン−4−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン−3−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン−2−イル、2H−5,6−ジヒドロピラン−2−イル、2H−5,6−ジヒドロピラン−3−イル、2H−5,6−ジヒドロピラン−4−イル、2H−5,6−ジヒドロピラン−5−イル、2H−5,6−ジヒドロピラン−6−イル、2H−5,6−ジヒドロチオピラン−2−イル、2H−5,6−ジヒドロチオピラン−3−イル、2H−5,6−ジヒドロチオピラン−4−イル、2H−5,6−ジヒドロチオピラン−5−イル、2H−5,6−ジヒドロチオピラン−6−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−2−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−3−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−4−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−5−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−6−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン−2−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン−3−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン−4−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン−5−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン−6−イル、4H−ピラン−2−イル、4H−ピラン−3−イル、4H−ピラン−4−イル、4H−チオピラン−2−イル、4H−チオピラン−3−イル、4H−チオピラン−4−イル、1,4−ジヒドロピリジン−2−イル、1,4−ジヒドロピリジン−3−イル、1,4−ジヒドロピリジン−4−イル、2H−ピラン−2−イル、2H−ピラン−3−イル、2H−ピラン−4−イル、2H−ピラン−5−イル、2H−ピラン−6−イル、2H−チオピラン−2−イル、2H−チオピラン−3−イル、2H−チオピラン−4−イル、2H−チオピラン−5−イル、2H−チオピラン−6−イル、1,2−ジヒドロピリジン−2−イル、1,2−ジヒドロピリジン−3−イル、1,2−ジヒドロピリジン−4−イル、1,2−ジヒドロピリジン−5−イル、1,2−ジヒドロピリジン−6−イル、3,4−ジヒドロピリジン−2−イル、3,4−ジヒドロピリジン−3−イル、3,4−ジヒドロピリジン−4−イル、3,4−ジヒドロピリジン−5−イル、3,4−ジヒドロピリジン−6−イル、2,5−ジヒドロピリジン−2−イル、2,5−ジヒドロピリジン−3−イル、2,5−ジヒドロピリジン−4−イル、2,5−ジヒドロピリジン−5−イル、2,5−ジヒドロピリジン−6−イル、2,3−ジヒドロピリジン−2−イル、2,3−ジヒドロピリジン−3−イル、2,3−ジヒドロピリジン−4−イル、2,3−ジヒドロピリジン−5−イル、2,3−ジヒドロピリジン−6−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−3−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−4−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−5−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−6−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−3−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−4−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−5−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−6−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−3−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−4−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−5−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−6−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−3−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−4−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−5−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−6−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−3−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−4−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−5−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−6−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−3−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−4−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−5−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−6−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−オキサジン−3−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−オキサジン−4−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−オキサジン−5−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−オキサジン−6−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−チアジン−3−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−チアジン−4−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−チアジン−5−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−チアジン−6−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−4−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−5−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−6−イル、3,4,5,6−テトラヒドロピリダジン−3−イル、3,4,5,6−テトラヒドロピリダジン−4−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリダジン−3−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリダジン−4−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリダジン−5−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリダジン−6−イル、1,2,3,6−テトラヒドロピリダジン−3−イル、1,2,3,6−テトラヒドロピリダジン−4−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,3−オキサジン−2−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,3−オキサジン−4−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,3−オキサジン−5−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,3−オキサジン−6−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,3−チアジン−2−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,3−チアジン−4−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,3−チアジン−5−イル、4H−5,6−ジヒドロ−1,3−チアジン−6−イル、3,4,5−6−テトラヒドロピリミジン−2−イル、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−5−イル、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−6−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピラジン−2−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピラジン−5−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−2−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−4−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−6−イル、2,3−ジヒドロ−1,4−チアジン−2−イル、2,3−ジヒドロ−1,4−チアジン−3−イル、2,3−ジヒドロ−1,4−チアジン−5−イル、2,3−ジヒドロ−1,4−チアジン−6−イル、2H−1,3−オキサジン−2−イル、2H−1,3−オキサジン−4−イル、2H−1,3−オキサジン−5−イル、2H−1,3−オキサジン−6−イル、2H−1,3−チアジン−2−イル、2H−1,3−チアジン−4−イル、2H−1,3−チアジン−5−イル、2H−1,3−チアジン−6−イル、4H−1,3−オキサジン−2−イル、4H−1,3−オキサジン−4−イル、4H−1,3−オキサジン−5−イル、4H−1,3−オキサジン−6−イル、4H−1,3−チアジン−2−イル、4H−1,3−チアジン−4−イル、4H−1,3−チアジン−5−イル、4H−1,3−チアジン−6−イル、6H−1,3−オキサジン−2−イル、6H−1,3−オキサジン−4−イル、6H−1,3−オキサジン−5−イル、6H−1,3−オキサジン−6−イル、6H−1,3−チアジン−2−イル、6H−1,3−オキサジン−4−イル、6H−1,3−オキサジン−5−イル、6H−1,3−チアジン−6−イル、2H−1,4−オキサジン−2−イル、2H−1,4−オキサジン−3−イル、2H−1,4−オキサジン−5−イル、2H−1,4−オキサジン−6−イル、2H−1,4−チアジン−2−イル、2H−1,4−チアジン−3−イル、2H−1,4−チアジン−5−イル、2H−1,4−チアジン−6−イル、4H−1,4−オキサジン−2−イル、4H−1,4−オキサジン−3−イル、4H−1,4−チアジン−2−イル、4H−1,4−チアジン−3−イル、1,4−ジヒドロピリダジン−3−イル、1,4−ジヒドロピリダジン−4−イル、1,4−ジヒドロピリダジン−5−イル、1,4−ジヒドロピリダジン−6−イル、1,4−ジヒドロピラジン−2−イル、1,2−ジヒドロピラジン−2−イル、1,2−ジヒドロピラジン−3−イル、1,2−ジヒドロピラジン−5−イル、1,2−ジヒドロピラジン−6−イル、1,4−ジヒドロピリミジン−2−イル、1,4−ジヒドロピリミジン−4−イル、1,4−ジヒドロピリミジン−5−イル、1,4−ジヒドロピリミジン−6−イル、3,4−ジヒドロピリミジン−2−イル、3.4−ジヒドロピリミジン−4−イル、3,4−ジヒドロピリミジン−5−イル又は3,4−ジヒドロピリミジン−6−イル。
【0050】
N結合5員部分不飽和環、例は、
2,3−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル、2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル、4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−イル、2,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−イル、2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−イル、2,5−ジヒドロイソオキサゾール−2−イル、2,3−ジヒドロイソオキサゾール−2−イル、2,5−ジヒドロイソチアゾール−2−イル、2,3−ジヒドロイソオキサゾール−2−イル、4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−1−イル、2,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−1−イル、2,3−ジヒドロ−1H−イミダゾール−1−イル、2,3−ジヒドロオキサゾール−3−イル、2,3−ジヒドロチアゾール−3−イル。
【0051】
N結合6員部分不飽和環、例は、
1,2,3,4−テトラヒドロピリジン−1−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−1−イル、1,4−ジヒドロピリジン−1−イル、1,2−ジヒドロピリジン−1−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−2−イル、2H−5,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−2−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−オキサジン−2−イル、2H−3,6−ジヒドロ−1,2−チアジン−2−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−オキサジン−2−イル、2H−3,4−ジヒドロ−1,2−チアジン−2−イル、2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−2−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリダジン−1−イル、1,2,5,6−テトラヒドロピリダジン−2−イル、1,2,3,6−テトラヒドロピリダジン−1−イル、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−3−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピラジン−1−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−1−イル、1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−3−イル、2,3−ジヒドロ−1,4−チアジン−4−イル、2H−1,2−オキサジン−2−イル、2H−1,2−チアジン−2−イル、4H−1,4−オキサジン−4−イル、4H−1,4−チアジン−4−イル、1,4−ジヒドロピリダジン−1−イル、1,4−ジヒドロピラジン−1−イル、1,2−ジヒドロピラジン−1−イル、1,4−ジヒドロピリミジン−1−イル又は3,4−ジヒドロピリミジン−3−イル。
【0052】
ヘタリール:通常1、2、3又は4個の窒素原子又は酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を有し、適切であれば、1、2又は3個の窒素原子を環員としての炭素原子の他に環員として有する、5員又は6員芳香族複素環基:例えば、
1、2、3又は4個の窒素原子又は酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を有し、適切であれば、1、2又は3個の窒素原子を環員として有する、C結合5員芳香族複素環基、例は、
2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、ピラゾール−3−イル、ピラゾール−4−イル、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、イソオキサゾール−5−イル、イソチアゾール−3−イル、イソチアゾール−4−イル、イソチアゾール−5−イル、イミダゾール−2−イル、イミダゾール−4−イル、オキサゾール−2−イル、オキサゾール−4−イル、オキサゾール−5−イル、チアゾール−2−イル、チアゾール−4−イル、チアゾール−5−イル、1,2,3−オキサジアゾール−4−イル、1,2,3−オキサジアゾール−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4,−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル、1,3,4−チアジアゾリル−2−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、テトラゾール−5−イル。
【0053】
1、2、3又は4個の窒素原子を環員として有するC結合6員芳香族複素環基、例は、
ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ピリダジン−3−イル、ピリダジン−4−イル、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−4−イル、ピリミジン−5−イル、ピラジン−2−イル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル、1,2,4−トリアジン−6−イル、1,2,4,5−テトラジン−3−イル。
【0054】
1、2、3又は4個の窒素原子を環員として有するN結合5員芳香族複素環基、例は、
ピロール−1−イル、ピラゾール−1−イル、イミダゾール−1−イル、1,2,3−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−1−イル、テトラゾール−1−イル。
【0055】
ヘテロシクリルには、また、前述の5員又は6員複素環の1つを有する二環式複素環及びそれに縮合した更なる飽和、不飽和又は芳香族炭素環が含まれ、例えば、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン若しくはシクロヘキサジエン環又はそれに縮合した更なる5員若しくは6員複素環であり、後者も同様に飽和、不飽和又は芳香族でありうる。これらには、例えば、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾ[b]チアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル及びベンゾイミダゾリルが含まれる。縮合ベンゼン環を含む5員〜6員芳香族複素環化合物の例には、ジヒドロインドリル、ジヒドロインドリジニル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、クロメニル及びクロマニルが含まれる。
【0056】
アリールアルキル:アルキレン基を介して、特にメチレン、1,1−エチレン又は1,2−エチレン基を介して結合している、上記に定義されたアリール基、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル及び2−フェニルエチル。
【0057】
アリールアルケニル:アルケニレン基を介して、特に1,1−エテニル、1,2−エテニル又は1,3−プロペニル基を介して結合している、上記に定義されたアリール基、例えば、2−フェニルエテン−1−イル及び1−フェニルエテン−1−イル。
【0058】
シクロアルコキシ:酸素原子を介して結合している、上記に定義されたシクロアルキル基、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ又はシクロヘキシルオキシ。
【0059】
シクロアルキルアルキル:アルキレン基を介して、特にメチレン、1,1−エチレン又は1,2−エチレン基を介して結合している、上記に定義されたシクロアルキル基、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル又はシクロヘキシルメチル。
【0060】
ヘテロシクロアルキル及びヘタリールアルキル:アルキレン基を介して、特にメチレン、1,1−エチレン又は1,2−エチレン基を介して結合している、上記に定義されたヘテロシクリル又はヘタリール基。
【0061】
表現「場合により置換されている」は、対応する部分が置換されている又はハロゲン、C1〜C4−アルキル、OH、SH、CN、CF3、O−CF3、COOH、O−CH2−COOH、C1〜C6−アルコキシ、C1〜C6−アルキルチオ、C3〜C7−シクロアルキル、COO−C1〜C6−アルキル、CONH2、CONH−C1〜C6−アルキル、SO2NH−C1〜C6−アルキル、CON−(C1〜C6−アルキル)2、SO2N−(C1〜C6−アルキル)2、NH−SO2−C1〜C6−アルキル、NH−CO−C1〜C6−アルキル、SO2−C1〜C6−アルキル、O−フェニル、O−CH2−フェニル(ベンゾキシ)、CONH−フェニル、SO2NH−フェニル、CONH−ヘタリール、SO2NH−ヘタリール、SO2−フェニル、NH−SO2−フェニル、NH−CO−フェニル、NH−SO2−ヘタリール及びNH−CO−ヘタリールから選択される1、2又は3つ、特に1つの置換基を有することを本発明の文脈において意味し、ここで、最後の11個の基のフェニル及びヘタリールは、非置換である又はハロゲン、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−ハロアルキル、C1〜C4−アルコキシ及びC1〜C4−ハロアルコキシから選択される1、2又は3つの置換基を有していてもよい。
【0062】
本発明の方法及び装置の好ましい実施態様に関して、とりわけ異なる反応体及び生成物の変数、並びに方法の反応条件の変数の好ましい意味について下記になされる見解は、単独又はとりわけ任意の考慮されうる互いの組み合わせで適用される。
【0063】
好ましいヒドロキサム酸及びその塩(ヒドロキサム酸塩)は、一般式(I)(遊離酸)及び一般式(I’)(塩)の化合物であり、
【化1】
【0064】
式中、
+は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属カチオンの等価物、NR’4カチオン(ここでR’は、互いに独立して、水素、C1〜C6−アルキル、フェニル及びベンジルから選択される)、ピリジニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオン(ここで、記述された最後の2個のイオンのヘタリール部分は、非置換でありうる又はC1〜C4−アルキル及びフェニルから選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよい)であり;
1は、C1〜C18−アルキル、C2〜C12−アルケニル、C4〜C12−アルカジエニル、C6〜C12−アルカトリエニル、C2〜C12−アルキニル(ここで、記述された最後の5個の基の1〜4個のCH2基は、O、NH若しくはSに代えられていてもよい、並びに/又は記述された最後の5個の基は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/若しくは1、2若しくは3個の置換基R1aを有していてもよい)、
3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−ヘテロシクリル、C3〜C7−ヘテロシクリル−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の4個の基のシクロアルキル及びヘテロシクリルは、1、2、3又は4個の基R1bを有していてもよい)、
アリール、ヘタリール、アリール−C1〜C6−アルキル、アリール−C2〜C6−アルケニル、ヘタリール−C1〜C4−アルキル又はヘタリール−C2〜C6−アルケニル(ここで、記述された最後の6個の基のアリール及びヘタリールは、非置換でありうる又は1、2、3若しくは4個の同一若しくは異なるR基1cを有していてもよい)であり;
1aは、OH、SH、NO2、COOH、CHO、NRa1a2、CN、OCH2COOH、CO−NH−OH、CO−NH−O-+、C1〜C12−アルコキシ、C1〜C12−ハロアルコキシ、C〜C7−シクロアルキルオキシ、C1〜C12−アルキルチオ、C1〜C12−ハロアルキルチオ、CO−C1〜C12−アルキル、CO−O−C1〜C12−アルキル、CONRa3a4、アリール、ヘタリール、アリール−C1〜C6−アルコキシ又はヘタリール−C1〜C4−アルコキシ(ここで、記述された最後の4個の基のアリール及びヘタリールは、非置換でありうる又は1、2、3若しくは4個の同一若しくは異なる基R1cを有していてもよい)から互いに独立して選択され;
1bは、OH、SH、NO2、COOH、CHO、NRb1b2、CN、OCH2COOH、ハロゲン、
アリール、アリール−C1〜C6−アルキル、アリール−C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の3個の基のアリールは、非置換でありうる又は1、2、3若しくは4個の同一若しくは異なる基R1cを有していてもよい)、
1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、C1〜C6−アルキルチオ(ここで、記述された最後の3個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又は1、2若しくは3個の置換基Rd1を有していてもよい)、
CO−C1〜C6−アルキル、CO−O−C1〜C6−アルキル又はCONRb3b4から互いに独立して選択され;
1cは、OH、SH、ハロゲン、NO2、NRc1c2、CN、COOH、OCH2COOH、C1〜C12−アルキル、C1〜C12−アルコキシ、C1〜C12−アルコキシ−C1〜C6−アルキル、C1〜C12−アルキルチオ(ここで、記述された最後の4個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又は1、2若しくは3個の置換基Rd1を有していてもよい)、
3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−シクロアルキルオキシ、C3〜C7−ヘテロシクリル、C3〜C7−ヘテロシクリル−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−ヘテロシクリルオキシ(ここで、記述された最後の6個の基のシクロアルキル及びヘテロシクリルは、1、2、3又は4個の基Rd2を有していてもよい)、
アリール、ヘタリール、O−アリール、O−CH2−アリール(ここで、記述された最後の3個の基は、アリール部分が非置換である又は1、2、3若しくは4個の基R1dを有していてもよい)、
CO−C1〜C6−アルキル、CO−O−C1〜C6−アルキル、CONRc3c4から互いに独立して選択されるか、或いは、
2個の基R1b又は2個の基R1cは、隣接するC原子と結合して、それらが結合しているC原子と一緒になって、環員としてO、N及びSの群からの1、2又は3個の異なる又は同一のヘテロ原子を有する、4員、5員、6員又は7員の場合により置換されている炭素環又は場合により置換されている複素環を形成し;
1dは、OH、SH、NO2、COOH、C(O)NH2、CHO、CN、NH2、OCH2COOH、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、C1〜C6−アルコキシ、C1〜C6−ハロアルコキシ、C1〜C6−アルキルチオ、C1〜C6−ハロアルキルチオ、CO−C1〜C6−アルキル、CO−O−C1〜C6−アルキル、NH−C1〜C6−アルキル、NHCHO、NH−C(O)C1〜C6−アルキル及びSO2−C1〜C6−アルキルから選択され;
a1、Rb1及びRc1は、互いに独立して、H、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、C1〜C6−ハロアルキル、1、2若しくは3個の置換基Rb1を有するC1〜C6−アルキル又はC2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニル、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C6−ヘテロシクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C6−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、CO−C1〜C6−アルキル、アリール、ヘタリール、O−アリール、OCH2−アリール、アリール−C1〜C4−アルキル、ヘタリール−C1〜C4−アルキル、CO−アリール、CO−ヘタリール(ここで、記述された最後の8個の基のアリール及びヘタリールは、非置換である又は1、2若しくは3個の置換基R1dを有する)であり、
a2、Rb2及びRc2は、互いに独立して、H、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、1、2若しくは3個の置換基Rb1を有するC1〜C6−アルキル又はC2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニル、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−ヘテロシクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C6−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、アリール、アリール−C1〜C4−アルキル、ヘタリール又はヘタリール−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の4個の基のアリール及びヘタリールは、非置換である又は1、2若しくは3個の置換基R1dを有する)であるか、或いは
2個の基Ra1とRa2又はRb1とRb2又はRc1とRc2は、N原子と一緒になって、環員としてO、N及びSの群からの1、2又は3個の異なる又は同一の更なるヘテロ原子を場合により有していてもよい、3員〜7員の場合により置換されている窒素複素環を形成し、
a3、Rb3及びRc3は、互いに独立して、H、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、1、2若しくは3個の置換基Rb1を有するC1〜C6−アルキル又はC2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニル、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−ヘテロシクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C6−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、アリール、アリール−C1〜C4−アルキル、ヘタリール又はヘタリール−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の4個の基のアリール及びヘタリールは、非置換である又は1、2若しくは3個の置換基R1dを有する)であり、
a4、Rb4及びRc4は、互いに独立して、H、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、1、2若しくは3個の置換基Rb1を有するC1〜C6−アルキル又はC2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニル、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−ヘテロシクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C1〜C6−アルコキシ−C1〜C4−アルキル、アリール、アリール−C1〜C4−アルキル、ヘタリール又はヘタリール−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の4個の基のアリール及びヘタリールは、非置換である又は1、2若しくは3個の置換基R1dを有する)であるか、或いは2個の基Ra3とRa4又はRb3とRb4又はRc3とRc4は、N原子と一緒になって、環員としてO、N及びSの群からの1、2又は3個の異なる又は同一の更なるヘテロ原子を場合により有していてもよい、3員〜7員の場合により置換されている窒素複素環を形成し;
d1は、OH、SH、NO2、COOH、CHO、NRa1a2、CN、OCH2COOH、C1〜C12−アルコキシ、C1〜C12−ハロアルコキシ、C3〜C7−シクロアルキルオキシ、CO−C1〜C12−アルキル、CO−O−C1〜C12−アルキル、CONRa3a4、アリール、ヘタリール、アリール−C1〜C6−アルコキシ及びヘタリール−C1〜C4−アルコキシ(ここで、記述された最後の4個の基のアリール及びヘタリールは、非置換でありうる又は1、2、3若しくは4個の同一若しくは異なる基R1dを有していてもよい)から互いに独立して選択され;
d2は、OH、SH、NO2、COOH、CHO、NRb1b2、CN、OCH2COOH、ハロゲン、アリール、アリール−C1〜C6−アルキル、アリール−C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の3個の基のアリールは、非置換でありうる又は1、2、3若しくは4個の同一若しくは異なる基R1dを有していてもよい)、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、C1〜C6−アルキルチオ(ここで、記述された最後の3個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又は1、2若しくは3個の置換基Rd1を有していてもよい)から互いに独立して選択され;そして
2は、H、C1〜C6−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフェニルである。
【0065】
2が水素である場合、ヒドロキサム酸塩の構造は、以下の式I”の互変異性体により表すこともできる:
【化2】
【0066】
しかし、ヒドロキサム酸の実際の構造は、本発明にとって重要ではない。したがって、以下において、式I’の構造は、ヒドロキサム酸塩の可能な全ての構造を表す。
【0067】
式(I’)の化合物において、イオンM+は、好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、ルビジウムイオン、マグネシウムイオン等価物(1/2Mg2+)、カルシウムイオン等価物(1/2Ca2+)又はNR’4イオン(ここでR’は、互いに独立して、水素、C1〜C4−アルキル及びベンジルから選択される)、ピリジニウムイオン又はイミダゾリウムイオンである。M+は、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン又はNR’4イオン(ここでR’は、互いに独立して、水素及びC1〜C6−アルキルから選択される)である。
【0068】
されにより好ましくは、M+は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン又はN(n−ブチル)4イオンである。
【0069】
化合物I及びI’の基R1において、基R1aは、存在する場合、好ましくはNO2、CN、CO−NH−OH、CO−NH−O-+、C1〜C12−アルコキシ、C1〜C12−ハロアルコキシ、アリール、ヘタリール、アリール−C1〜C6−アルコキシ及びヘタリール−C1〜C4−アルコキシ(ここで、記述された最後の4個の基のアリール及びヘタリールは、非置換でありうる又は1、2若しくは3個の同一又は異なる基R1cを有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0070】
より好ましくは、基R1aは、存在する場合、CO−NH−OH、CO−NH−O-+、C1〜C6−アルコキシ、フェニル及びフェニル−C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の基のフェニルは、非置換でありうる又は1、2若しくは3個の同一若しくは異なる基R1cを有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0071】
さらにより好ましくは、基R1aは、存在する場合、CO−NH−OH、CO−NH−O-+、フェニル及びフェニル−C1〜C3−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の基のフェニルは、非置換でありうる又はC3〜C12−アルキル、C3〜C12−アルコキシ及びベンゾキシ(ベンジルオキシ)から選択される1若しくは2個の同一若しくは異なる基を有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0072】
とりわけ、基R1aは、存在する場合、CO−NH−OH、CO−NH−O-+及びフェニル(ここで、フェニルは、非置換でありうる又はC3〜C12−アルコキシ及びベンゾキシ(ベンジルオキシ)から選択される1若しくは2個、好ましくは1個の同一若しくは異なる基を有していてもよい)から互いに独立して選択される。フェニルが1個の基を有する場合、これは、好ましくはパラ位置、すなわちフェニル環が基R1に結合している1位に対して4位に結合している。
【0073】
化合物I及びI’の基R1において、基R1bは、存在する場合、好ましくはNO2、CN、ハロゲン、アリール、アリール−C1〜C6−アルキル、アリール−C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の3個の基のアリールは、非置換でありうる又は1、2若しくは3個の同一若しくは異なる基R1cを有していてもよい)、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又は1若しくは2個の置換基Rd1を有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0074】
より好ましくは、基R1bは、存在する場合、ハロゲン、フェニル、フェニル−C1〜C6−アルキル、フェニル−C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の3個の基のフェニルは、非置換でありうる又はC1〜C12−アルキル、C1〜C12−アルコキシ及びO−CH2−アリールから選択される1若しくは2個の同一又は異なる基を有していてもよい)、C1〜C6−アルキル及びC1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後2個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又は1若しくは2個の置換基Rd1を有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0075】
さらにより好ましくは、基R1bは、存在する場合、フェニル、フェニル−C1〜C3−アルキル、フェニル−C1〜C3−アルコキシ(ここで、記述された最後の3個の基のフェニルは、非置換でありうる又はC3〜C12−アルキル、C3〜C12−アルコキシ及びベンゾキシから選択される基を有していてもよい)、C1〜C6−アルキル及びC1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後2個の置換基のアルキル部分は、非置換でありうる又はC3〜C12−アルコキシ及びベンゾキシから選択される基を有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0076】
化合物I及びI’の基R1、R1a及びR1bにおいて、基R1cは、存在する場合、好ましくはハロゲン、NO2、CN、C1〜C12−アルキル、C1〜C12−アルコキシ、C1〜C12−アルコキシ−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の3個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又は1若しくは2個の置換基Rd1を有していてもよい)、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C3〜C6−ヘテロシクリル、C3〜C6−ヘテロシクリル−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の4個の基のシクロアルキル及びヘテロシクリルは、1、2又は3個のRd2基を有していてもよい)、アリール、O−アリール及びO−CH2−アリール(ここで、記述された最後の3個の基は、アリール部分が非置換である又はハロゲン、NO2、CN、NH2、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、C1〜C6−アルコキシ及びC1〜C6−ハロアルコキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を互いに独立して有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0077】
より好ましくは、R1cは、存在する場合、ハロゲン、C1〜C12−アルキル、C1〜C12−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又は置換基Rd1を有していてもよい)、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の2個の基のシクロアルキル部分は、置換基Rd2を有していてもよい)、アリール及びO−CH2−アリール(ここで、記述された最後の2個の基は、アリール部分が非置換である又はハロゲン、NO2、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル及びC1〜C6−アルコキシから選択される1若しくは2個の基を互いに独立して有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0078】
さらにより好ましくは、R1cは、存在する場合、ハロゲン、C1〜C12−アルキル、C1〜C12−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の置換基のアリキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又はC3〜C12−アルコキシ、フェニル及びベンゾキシから選択される置換基を有していてもよい)、C3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の2個の基のシクロアルキル部分は、フェニル、フェニル−C1〜C3−アルキル、ベンゾキシ、C1〜C6−アルキル及びC1〜C6−アルコキシから選択される置換基を有していてもよい)、アリール及びO−CH2−アリール(ここで、記述された最後の2個の基は、アリール部分が非置換である又はハロゲン、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル及びC1〜C6−アルコキシから選択される置換基を有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0079】
とりわけ、R1cは、存在する場合、C1〜C12−アルコキシ及びO−CH2−アリールから、さらにとりわけC3〜C12−アルコキシ及びベンゾキシ(ベンジルオキシ)から互いに独立して選択される。
【0080】
化合物I及びI’のR1b及びR1cにおいて、基Rd1は、存在する場合、好ましくはOH、NO2、COOH、CN、C1〜C12−アルコキシ、C1〜C12−ハロアルコキシ、CO−C1〜C12−アルキル、CO−O−C1〜C12−アルキル、アリール及びアリール−C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の基のアリールは、非置換でありうる又はハロゲン、NO2、CN、NH2、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、C1〜C6−アルコキシ及びC1〜C6−ハロアルコキシから選択される1、2若しくは3個の基を互いに独立して有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0081】
より好ましくは、Rd1は、存在する場合、NO2、CN、C1〜C12−アルコキシ、C1〜C12−ハロアルコキシ、アリール及びアリール−C1〜C6−アルコキシ(記述された最後の2個の基のアリールは、非置換でありうる又はハロゲン、NO2、CN、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、C1〜C6−アルコキシ及びC1〜C6−ハロアルコキシから選択される1若しくは2個の基を互いに独立して有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0082】
さらにより好ましくは、Rd1は、存在する場合、C1〜C12−アルコキシ、フェニル及びベンゾキシ(ここで、記述された最後の2個の基のフェニルは、非置換でありうる又はハロゲン、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル及びC1〜C6−アルコキシから選択される1若しくは2個の基を互いに独立して有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0083】
化合物I及びI’の基R1b及びR1cにおいて、基Rd2は、存在する場合、好ましくはOH、NO2、COOH、CN、ハロゲン、アリール、アリール−C1〜C6−アルキル、アリール−C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の3個の基のアリールは、非置換でありうる又はハロゲン、NO2、CN、NH2、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、C1〜C6−アルコキシ及びC1〜C6−ハロアルコキシから選択される1、2若しくは3個の基を互いに独立して有していてもよい)、C1〜C6−アルキル及びC1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又はC1〜C12−アルコキシ、アリール及びアリール−C1〜C6−アルコキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を互いに独立して有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0084】
より好ましくは、Rd2は、存在する場合、NO2、CN、ハロゲン、アリール、アリール−C1〜C6−アルキル、アリール−C1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の3個の基のアリールは、非置換でありうる又はハロゲン、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル、C1〜C6−アルコキシ及びC1〜C6−ハロアルコキシから選択される1若しくは2個の基を互いに独立して有していてもよい)、C1〜C6−アルキル及びC1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又はC1〜C12−アルコキシ、アリール及びアリール−C1〜C6−アルコキシから選択される1若しくは2個の置換基を互いに独立して有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0085】
さらにより好ましくは、Rd2は、存在する場合、ハロゲン、フェニル、ベンジル、ベンゾキシ(ここで、記述された最後の3個の基のフェニルは、非置換でありうる又はハロゲン、C1〜C6−アルキル、C1〜C6−ハロアルキル及びC1〜C6−アルコキシから選択される1若しくは2個の基を互いに独立して有していてもよい)、C1〜C6−アルキル及びC1〜C6−アルコキシ(ここで、記述された最後の2個の置換基のアルキル部分は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又はC3〜C12−アルコキシ、フェニル及びベンゾキシから選択される1若しくは2個の置換基を互いに独立して有していてもよい)から互いに独立して選択される。
【0086】
式(I)及び(I’)の化合物において、基R1は、好ましくは、
1〜C10−アルキル、C2〜C10−アルケニル、C4〜C10−アルカジエニル(ここで、記述された最後の3個の基は、部分的若しくは完全にハロゲン化されていてもよい及び/又は1、2若しくは3個の置換基R1aを有していてもよく、R1aは、上記に提示された一般的な意味の1個を有する又は特に、上記に提示された好ましい意味の1個を有する);
3〜C7−シクロアルキル、C3〜C7−シクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C3〜C7−ヘテロシクリル、C3〜C7−ヘテロシクリル−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の4個の基のシクロアルキル及びヘテロシクリルは、1、2又は3個の基R1bを有していてもよく、R1bは、上記に提示された一般的な意味の1個を有する又は特に、上記に提示された好ましい意味の1個を有する);
アリール、ヘタリール、アリール−C1〜C6−アルキル又はヘタリール−C1〜C4−アルキル(ここで、記述された最後の4個の基のアリール及びヘタリールは、非置換でありうる又は1、2若しくは3個の同一若しくは異なる基R1cを有していてもよく、R1cは、上記に提示された一般的な意味の1個を有する又は特に、上記に提示された好ましい意味の1個を有する)
である。
【0087】
1は、より好ましくはC1〜C10−アルキル、C2〜C10−アルケニル又はC4〜C10−アルカジエニル(ここで、記述された最後の3個の基は、非置換でありうる又はCO−NH−OH、CO−NH−O-+、C1〜C6−アルコキシ、フェニル及びフェニル−C1〜C6−アルコキシから互いに独立して選択される1、2若しくは3個の置換基で置換されていてもよく、記述された最後の2個の基のフェニルは、非置換でありうる又はC3〜C12−アルキル、C3〜C12−アルコキシ、C3〜C12−アルコキシ−C1〜C4−アルキル及びフェニル−C1〜C6−アルコキシから互いに独立して選択される1、2若しくは3個の置換基で置換されていてもよい)である。
【0088】
さらにより好ましくは、R1は、C1〜C10−アルキル、C2〜C10−アルケニル又はC4〜C10−アルカジエニル(ここで、記述された最後の3個の基は、非置換でありうる又はCO−NH−OH、CO−NH−O-+、C1〜C6−アルコキシ、フェニル及びフェニル−C1〜C6−アルコキシから互いに独立して選択される1、2若しくは3個の置換基で置換されていてもよく、記述された最後の2個の基のフェニルは、非置換でありうる又はC3〜C12−アルキル、C3〜C12−アルコキシ及びベンゾキシ(ベンジルオキシ)から互いに独立して選択される1若しくは2個の置換基で置換されていてもよい)である。
【0089】
特に好ましくは、R1は、C1〜C10−アルキル又はC4〜C10−アルカジエニル(ここで、記述された最後の2個の基は、非置換でありうる又はCO−NH−OH、CO−NH−O-+及びフェニル(これは非置換でありうる又はC3〜C12−アルコキシ若しくはベンゾキシで置換されていてもよい)から選択される1個の置換基で置換されていてもよい)である。
【0090】
特に、R1は、C3〜C10−アルキル(これは非置換である又は基CO−NH−OH、CO−NH−O-+を有する)である又はC4〜C10−アルカジエニルである又はベンジル(これはC3〜C12−アルコキシ及びはベンジルオキシから、好ましくはC3〜C6−アルコキシ及びはベンジルオキシから選択される1個の置換基を有する)である。好ましくは、ベンジルは、パラ位置(4位)、すなわちベンジル部分のフェニル環がベンジル部分のCH2基に結合した1位に対して4位に置換基を有する。
【0091】
式(I)及び(I’)の化合物において、基R2は、好ましくは水素、C1〜C4−アルキル、シクロヘキシル又はフェニルである。
【0092】
2は、より好ましくは水素又はメチルである。
【0093】
さらにより好ましくは、基R2は水素である。
【0094】
本発明に使用されるヒドロキサム酸は、一般に市販されている又は当該技術に既知の方法によって製造することができる。ヒドロキサム酸塩も、市販されている又は既知の方法により、例えばヒドロキサム酸を、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアミンなどの塩基と反応させて、対応するヒドロキサム酸から製造することができる。
【0095】
本発明の色素増感光電変換装置の製造方法において、半導体性金属酸化物は、400〜1000nm、好ましくは400〜800nmの電磁波波長範囲で本質的に透明である少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩により処理される。したがって、少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩は、記述された波長幅で太陽の放射線を吸収しない又は僅かな程度しか吸収しない。したがって、記述された波長範囲で103L・mol-1・cm-1超、典型的には15,000〜150,000L・mol-1・cm-1、より典型的には20,000〜80,000L・mol-1・cm-1のはるかに高い吸光係数を有する、半導体性金属酸化物を増感するのに適した発色物質と明らかに区別される。本発明の少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩は、好ましくは一般式(I)又は(I’)それぞれの化合物であり、特に本明細書において好ましいと記述されているものである。
【0096】
用語「半導体性金属酸化物が少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩で処理される」は、半導体性金属酸化物を、光電変換装置の製造の次の工程が実施される前、例えば下記により詳細に記載される電荷移動層が適用される前に、1つ以上のヒドロキサム酸又はこれらの塩と所定時間接触させることを意味する。理論に束縛されるものではないが、処理後、半導体性金属酸化物は少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩を吸着形態で、一般に、用いられる量を下回ると推定される量で含むことが推定される。
【0097】
半導体性金属酸化物を、光電変換装置の製造の任意の段階で1つ以上のヒドロキサム酸又はこれらの塩で処理されうるが、好ましくは、層堆積を遮断した後(下記を参照のこと)又はより好ましくは単に半導体性金属酸化物層を堆積した後で、1つ以上のヒドロキサム酸又はこれらの塩により好ましく処理される。しかし、下記になされる見解は、任意の形態の半導体性金属酸化物の処理と半導体性金属酸化物層の形態の半導体性金属酸化物の処理の両方に適用される。好ましくは、半導体性金属酸化物層の処理に適用される。
【0098】
半導体性金属酸化物は、1つ以上のヒドロキサム酸若しくはこれらの塩を溶媒に溶解して製造した溶液(本明細書以降、「処理溶液」と呼ばれる)により又は1つ以上のヒドロキサム酸若しくはこれらの塩を溶媒に分散することにより製造した分散体(本明細書以降、「処理分散体」と呼ばれる)により処理されるのが好ましい。少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩が液体である場合、溶媒なしで使用することもできる。しかし、半導体性金属酸化物を処理溶液又は分散体、より好ましくは処理溶液で処理するのが好ましい。
【0099】
半導体性金属酸化物が2つ以上のヒドロキサム酸又はその塩で処理される場合、処理に意図されるヒドロキサム酸又はこれらの塩の総数よりもそれぞれ少なく含有する2つ以上の処理溶液又は処理分散体で連続的に処理してもよい。しかし、好ましくは半導体性金属酸化物は、処理に意図される全てのヒドロキサム酸又はこれらの塩を含有する1つの処理液又は1つの処理分散体で処理される。
【0100】
処理溶液又は処理分散体に使用される溶媒は、好ましくは有機溶媒である。有機溶媒は、1つ以上のヒドロキサム酸又はこれらの塩の溶解度に応じて適切に選択することができる。有機溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール及びベンジルアルコールのようなアルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル及び3−メトキシプロピオニトリルのようなニトリル溶媒;ニトロメタン;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム及びクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、ジオキサン及びテトラヒドロフランのようなエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド溶媒;N−メチルピロリドン;1,3−ジメチルイミダゾリジノン;3−メチルオキサゾリジノン;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル溶媒;炭酸ジエチル、炭酸エチレン及び炭酸プロピレンのような炭酸塩溶媒;アセトン、2−ブタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン溶媒;ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのような炭化水素溶媒、並びにこれらの混合物が含まれる。これらのうち、上記のアルコール溶媒、ニトリル溶媒及びアミド溶媒が特に好ましい。
【0101】
半導体性金属酸化物を、
(a)色素吸着後に少なくとも1つのヒドロキサム酸若しくはその塩で処理する方法(本明細書以降、「後処理法」とする)により;
(b)色素吸着中に少なくとも1つのヒドロキサム酸若しくはその塩で処理する方法(本明細書以降、「同時処理法」とする)により;又は
(c)色素吸着前に少なくとも1つのヒドロキサム酸若しくはその塩で処理する方法(本明細書以降、「前処理法」と呼する)により
少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩で処理することができる。
【0102】
これらの方法のうち、後処理法及び前処理法画好ましく、前処理法が特に好ましい。
【0103】
あるいは、これらの方法を互いに組み合わせて使用してもよい。このことは、半導体性金属酸化物を、1つ以上のヒドロキサム酸又はこれらの塩により複数回連続して又は段階的に処理してもよいことを意味する。例えば、前処理法及び同時処理法を含む2工程処理法を使用してもよい。1つ以上のヒドロキサム酸又これらの塩により複数の処理が実施される場合、それぞれの処理に使用される1つ以上のヒドロキサム酸又これらの塩は同一又は異なっていてもよい。
【0104】
処理溶液又は処理分散体(両方とも本明細書以降、「処理液」と呼ばれる)を使用する場合、半導体性金属酸化物を、浸漬、ソーキング、噴霧、被覆又はフラッシング/すすぎのような異なる方法により処理液で処理することができる。好ましくは、半導体性金属酸化物は、半導体性金属酸化物が処理液に浸漬又はソーキングされる浸漬又はソーキング処理法により、処理液で処理される。さらに、半導体性金属酸化物を、処理液が前処理法又は後処理法において半導体性金属酸化物に噴霧される噴霧処理法により、処理液で処理することができる。
【0105】
浸漬又はソーキング処理法では、処理液の温度及び処理時間は広範囲に変わりうるが、処理は、0〜100℃、好ましくは15〜80℃の液により、好ましくは1秒〜24時間、より好ましくは1秒〜3時間実施されることが好ましい。
【0106】
処理、とりわけ浸漬又はソーキング処理の後、半導体性金属酸化物は、好ましくは溶媒で洗浄される。溶媒は、好ましくは、処理液に使用されたものと同じであり、より好ましくは、上記に記述されたもの、例えばニトリル溶媒、アルコール溶媒又はアミド溶媒のような極性溶媒である。
【0107】
処理液(I)における少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩の濃度は、好ましくは1・10-6〜2mol/L、より好ましくは1・10-5〜1mol/L、特に1・10-4〜5・10-1mol/L、とりわけ5・10-4〜1・10-2mol/Lである。
【0108】
色素増感光電変換装置は、一般に、以下の要素:電気伝導層(作用電極又は陽極の一部である又はそれらを形成する)、一般に半導体性金属酸化物及び感光性色素を含む感光層、電荷移動層及び別の電気伝導層(対電極又は陰極の一部である又はそれらを形成する)を含む。
【0109】
したがって、本発明の光電変換装置は、好ましくは下記により詳細に記載される以下の要素:電気伝導層;色素(発色物質)により増感され、1つ以上のヒドロキサム酸又はその塩で処理された半導体性金属酸化物を含有する感光層;電荷移動層;及び対向電気伝導層を、典型的にはこの順序で加工して含む。下塗層を、電気伝導層と感光層の間に配置してもよい。
【0110】
この文脈における「層」は、それぞれの層が他の層と厳密に物理的に離れていることを必ずしも意味しない。事実、層は互いに浸透していてもよい。例えば、電荷移動層を構成する材料が一般に感光層に浸透して、半導体性金属酸化物及び色素と密接に接触し、これにより素早い電荷移動が可能になる。
【0111】
したがって、本発明は、また、色素増感光電変換装置を製造する方法であって、
i)電気伝導層を提供する工程;
ii)場合により下塗層をその上に堆積させる工程;
iii)感光層を工程i)で得た電気伝導層又は存在する場合、工程ii)で得た下塗層の上に堆積させる工程(ここで感光層は、発色物質で増感され、少なくとも1つのヒドロキサム酸又は少なくとも1つのその塩で処理された半導体性金属酸化物を含有する);
iv)電荷移動層を、工程iii)で得た感光層の上に堆積させる工程;及び
v)対向電気伝導層を、工程iv)で得た電荷移動層の上に堆積させる工程
を含む方法に関する。
【0112】
電気伝導層及び/又は対向電気伝導層を、基板(支持体又は担体とも呼ばれる)の上に配置して、光電変換装置の強度を改善することができる。本発明において、電気伝導層及びそれを上に配置した基材から構成される層は、伝導性支持体と呼ばれる。対向電気伝導層及び場合によりそれを上に配置した基板から構成される層は、対電極と呼ばれる。好ましくは、電気伝導層及び場合によりそれを上に配置した基板は、透明である。対向電気伝導層、また場合により、場合によりそれを上に配置した支持体も、透明であってもよいが、このことは重要ではない。
【0113】
本発明の方法により得られる光電変換装置に含まれるそれぞれの層を下記に詳細に説明する。
【0114】
(A)電気伝導層[工程(i)]
電気伝導層は、残りの層を支持するのにそのままで十分に安定している又は電気伝導層を形成する電気伝導性材料が基板(支持体又は担体とも呼ばれる)の上に配置される。好ましくは、電気伝導層を形成する電気伝導性材料が基板の上に配置される。基板の上に配置された電気伝導性材料の組み合わせを、以下「伝導性支持体」とする。
【0115】
一番目の場合では、電気伝導層は、好ましくは、十分な強度を有し、光電変換装置を十分に密閉することができる材料から作製され、例えば、白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウムのような金属及びこれらから構成される合金である。
【0116】
二番目の場合では、電気伝導性材料を含有する電気伝導層が上にある基材は、一般に感光層の反対側に配置されており、これによって電気伝導層は感光層と直接接触する。
【0117】
電気伝導性材料の好ましい例には、白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、インジウムのような金属及びこれらから構成される合金;炭素、とりわけカーボンナノチューブの形態のもの;並びに例えばインジウムスズ複合体酸化物、フッ素、アンチモン又はインジウムでドープされた酸化スズ及びアルミニウムでドープされた酸化亜鉛のような電気伝導性金属、とりわけ透明な伝導性酸化物(TCO)が含まれる。金属の場合、一般に薄膜の形態で使用され、これにより十分に透明な層を形成する。より好ましくは、電気伝導性材料は、透明な伝導性酸化物(TCO)から選択される。これらのうち、フッ素、アンチモン又はインジウムでドープされた酸化スズ及びインジウムスズ酸化物(ITO)が好ましく、フッ素、アンチモン又はインジウムでドープされた酸化スズがより好ましく、フッ素でドープされた酸化スズである。とりわけ、酸化スズはSnO2がとりわけ好ましい。
【0118】
電気伝導層は、好ましくは0.02〜10μM、より好ましくは0.1〜1μmの厚さを有する。
【0119】
一般に、光は、電気伝導層の側から(対向電気伝導層の側からではなく)照射される。したがって、既に記述されたように、電気伝導層を有する支持体、好ましくは伝導性支持体全体が実質的に透明であることが好ましい。ここで、用語「実質的に透明」は、光透過率が、可視領域から近赤外領域(400〜1000nm)の光に対して50%以上であることを意味する。光透過率は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に80%以上である。伝導性支持体は、特に好ましくは、感光層が感受性を有する光に対して高い光透過率を有する。
【0120】
基板を、強度に優れた低価格のソーダガラス及びアルカリ溶出による影響を受けない非アルカリ性ガラスのようなガラスから作製することができる。あるいは、透明ポリマー膜を基板として使用することができる。ポリマー膜の材料として使用されるものは、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、臭素化フェノキシ樹脂などでありうる。
【0121】
伝導性支持体は、好ましくは、電気伝導性材料を例えば被覆又は蒸着により基板上に配置することによって製造される。
【0122】
基板上に配置される電気伝導性材料の量は、十分な透明性が確保されるように選択される。適切な量は、使用される伝導性材料及び基板に左右され、それぞれの場合において決定される。例えば、伝導性材料がTCO、基板がガラスの場合、量は1m2あたり0.01〜100gに変わりうる。
【0123】
金属リード線を使用して伝導性支持体の抵抗を低減することが好ましい。金属リード線は、好ましくは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀などのような金属から作製される。金属リード線は、蒸着法、スパッタリング法などにより基板に提供されことが好ましく、その上に電気導電性層が配置される。金属リード線による入射光量の低減は、好ましくは10%以下、より好ましくは1〜5%以下に制限される。
【0124】
(B)下塗層(「緩衝層」)[任意工程(ii)]
工程(i)で得られた層を緩衝層で被覆することができる。これは、電荷移動層と電気伝導層の直接の接触を回避すること、したがって、特に電荷移動層が固体正孔輸送材料である場合に、短絡を防止することを目的とする。
【0125】
この「下塗」又は緩衝層材料は、好ましくは金属酸化物である。金属酸化物は、好ましくは、酸化チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、バナジウム又はニオブから選択され、例えばTiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、V25又はNb25であり、より好ましくはTiO2である。
【0126】
下塗層を、例えばElectrochim.Acta,40,643 to 652(1995)に記載されている噴霧熱分解法又は例えばThin Solid Films 445,251−258(2003)、Suf.Coat.Technol.200,967 to 971(2005)若しくはCoord.Chem.Rev.248(2004),1479に記載されているスパッタリング法により配置することができる。
【0127】
下塗層の厚さは、好ましくは5〜1000nm、より好ましくは10〜500nm、特に10〜200nmである。
【0128】
電荷移動層材料としてI-/I3-に基づいた液体電解質の場合、短絡の危険性はむしろ低く、したがって下塗層は原則的に不必要であり、省くことができる。そのような電池におけるこの任意層の不在は、下塗層が電流低減効果を有し、感光層と電気伝導層の接触も損なうことがあるので、光電変換装置の効率を向上させることができる。しかし、一方では下塗層は、望ましくない電荷再結合過程に伴う問題の回避に役立ち、これによりその適用が、とりわけ固体電荷移動層の場合では利点につながる。
【0129】
(C)感光層[工程(iii)]
感光層は、発色物質(色素又は感光色素)で増感された半導体性金属酸化物を含有する。色素増感半導体性金属酸化物は、感光物質として作用して光を吸収し、電荷分離を実施し、電子を生成する。一般的に知られているように、金属酸化物の薄層又は膜は、有用な固体の半導体性材料(n半導体)である。しかし、大きなバンドギャップのため、電磁スペクトルの可視領域では吸収しないが、UV領域では吸収する。したがって、太陽電池に光電変換装置を使用するには、約300〜2000nmで吸収する色素で増感する必要がある。感光層において、色素分子は、十分なエネルギーを有する浸入光の光量子を吸収する。このことは、色素分子の励起状態を作り出し、電子を半導体性金属酸化物の伝導帯に注入する。半導体性金属酸化物は、電子を受け取って、電気伝導層に、したがって作用電極に運搬する(下記を参照のこと)。
【0130】
(1)半導体性金属酸化物
伝導帯電子が光電子励起条件下で担体として作用して陽極電流を提供するn型半導体が、本明細書において好ましく使用される。
【0131】
適切な半導体性金属酸化物は、有機太陽電池に有用であることが知られている全ての金属酸化物である。これらには、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、セシウム、ニオブ又はタンタルの酸化物が含まれる。更に、M1x2yzのような複合半導体を本発明に使用することができ、ここで、M、M1及びM2は、独立して金属原子を表し、Oは酸素原子を表し、x、y及びzは、互いに組み合わされて中性分子を形成する数を表す。例として、TiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、SrTiO3、Ta25、Cs2O、スズ酸亜鉛、チタン酸バリウムのようなペロフスカイト型の複合酸化物、並びに二成分及び三成分酸化鉄が挙げられる。
【0132】
好ましい半導体性金属酸化物は、TiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25及びSrTiO3から選択される。これらの半導体のうち、TiO2、SnO2、ZnO及びこれらの混合物がより好ましい。TiO2、ZnO及びこれらの混合物がさらにより好ましく、TiO2が特に好ましい。
【0133】
金属酸化物は、好ましくは非晶質又はナノ結晶質の形態で存在する。より好ましくは、これらはナノ結晶多孔質層として存在する。そのような層は、多数の色素分子が吸収されうる大きな表面を有し、したがって浸入光の高い吸収をもたらす。金属酸化物層もナノロッドのような構造化形態で存在することができる。ナノロッドは、高い電子移動性及び色素による孔の改善された充填という利点をもたらす。
【0134】
2つ以上の金属酸化物が使用される場合、2つ以上の金属酸化物を、感光層が形成されるときに混合物として適用することができる。あるいは、金属酸化物の層を、それとは異なる1つ以上の金属酸化物で被覆してもよい。
【0135】
金属酸化物は、半導体上に、GaP、ZnP又はZnSのようにそれとは異なる層として存在してもよい。
【0136】
本発明に使用されるTiO2及びZnOは、好ましくはアナターゼ型結晶構造であり、これは好ましくはナノ結晶質である。
【0137】
半導体は、電子伝導性を増加するためにドーパントを含んでも、含まなくてもよい。好ましいドーパントは、金属、金属塩及び金属カルコゲニドのような金属化合物である。
【0138】
感光層において、半導体性金属酸化物層は、好ましくは多孔質、特に好ましくはナノ多孔質、とりわけメソ多孔質である。
【0139】
多孔質材料は、多孔質の非平滑表面により特徴付けられる。多孔度は、材料における空間の測度であり、総体積に対する空洞体積の割合である。ナノ多孔質材料は、ナノメートル範囲、すなわち約0.2nm〜1000nm、好ましくは0.2〜100nmの直径の孔を有する。メソ多孔質材料は、直径2〜50nmの孔を有するナノ多孔質材料の特定の形態である。この文脈における「直径」は、孔の最大直径を意味する。孔の直径は、光学的方法、吸水膨潤法、水分蒸発法、水銀圧入多孔度測定又はガス膨張法のような幾つかの多孔度測定法により決定することができる。
【0140】
半導体性金属酸化物層の製造に使用される半導体性金属酸化物の粒径は、一般にnmからμmの範囲である。投影面積に等しい円の直径から得られる一次半導体粒子の平均サイズは、好ましくは200nm以下、例えば5〜200nm、より好ましくは100nm以下、例えば5〜100nm又は8〜100nmである。
【0141】
異なる粒径分布を有する2つ以上の半導体性金属酸化物を、感光層の製造において混合することができる。この場合、小さいほうの粒子の平均粒径は、好ましくは25nm以下、より好ましくは10nm以下である。入射光線を散乱して光電変換装置の光捕獲率を改善するため、大きな粒径、例えばおよそ100〜300nmの直径を有する半導体性金属酸化物を感光層に使用することができる。
【0142】
半導体性金属酸化物を製造する方法として好ましいものは、例えばMateria,Vol.35,No.9,Page 1012 to 1018(1996)に記載されているゾルゲル法である。塩化物を酸水素塩による高温加水分解に付すことにより酸化物を製造することを含む、Degussa Companyにより開発された方法も好ましい。
【0143】
半導体性金属酸化物として酸化チタンを使用する場合、上記に記述されたゾルゲル法、ゲルゾル法、高温加水分解法が好ましく使用される。ゾルゲル法では、Barbe et al.,Journal of American Ceramic Society,Vol.80,No.12,Page 3157 to 3171(1997)及びBurnside et al,Chemistry of Materials,Vol.10,No.9,Page 2419 to 2425(1998)に記載のものも同様に好ましい。
【0144】
半導体性金属酸化物を工程(i)又は実施する場合は工程(ii)で得た層の上に、工程(i)又は(ii)で得た層を、粒子を含有する分散体又はコロイド溶液で被覆する方法、上記に記述されたゾルゲル法などにより適用することができる。湿潤型層形成法は、半導体性金属酸化物分散体の特性を改善するため、工程(i)又は(ii)で得た層の適合性を改善するためなど、光電変換装置の大量生産に比較的有利である。このような湿潤型層形成法として、被覆法、印刷法、電解析出法及び電着法が典型的である。更に、半導体性金属酸化物を、金属を酸化すること、金属溶液が配位子交換などに付されるLPD(液層析出)法、スパッタリング法、蒸着法、CVD(化学蒸着)法又は熱分解型金属酸化物前駆体を加熱基板に噴霧して金属酸化物を生成するSPD(噴霧熱分解析出)法により配置することができる。
【0145】
半導体性金属酸化物を含有する分散体を、上記に記述されたゾルゲル法、乳鉢で半導体を破砕すること、ミルで粉砕しながら半導体を分散すること、溶媒中で半導体性金属酸化物を合成及び沈殿することなどにより製造することができる。
【0146】
分散体の溶媒として、水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、シトロネロール、テルピネオール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチルなど、これらの混合物のような有機溶媒及びこれらの有機溶媒の1つ以上と水の混合物を使用することができる。ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤などを、必要であれば、分散剤として使用することができる。特に、ポリエチレングリコールを分散体に加えることができ、それは、分散体の粘度及び半導体性金属酸化物層の多孔度を、ポリエチレングリコールの分子量を変えることにより制御することができ、ポリエチレングリコールを含有する半導体性金属酸化物層が、ほとんど剥離しないためである。
【0147】
好ましい被覆法には、例えば半導体性金属酸化物を適用するにはローラー法及び浸漬法、例えば層を寸法規制するためにはエアナイフ法及びブレード法が含まれる。更に、適用と寸法規制を同時に実施可能な方法として好ましいものは、ワイヤーバー法、スライドホッパー法(例えばUS2,761,791に記載されているようなもの)、押出法、流し塗法などである。更に、スピン法及び噴霧法を使用することができる。湿潤型印刷法としては、凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、凹版印刷、ゴム印刷、スクリーン印刷などが好ましい。好ましい層形成法を、分散体の粘度及び望ましい湿潤厚さによってこれらの方法から選択することができる。
【0148】
既に記述されているように、半導体性金属酸化物層は、単層に限定されない。異なる粒径を有する半導体性金属酸化物をそれぞれ含む分散体を、多層被覆に付すことができる。更に、異なる種類の半導体性金属酸化物、結合剤又は添加剤をそれぞれ含有する分散体を、多層被覆に付すことができる。多層被覆は、単層の厚さが不十分な場合にも効果的に使用される。
【0149】
一般に、半導体性金属酸化物層の厚さが増して、感光層と同じ厚さになると、投影面積の単位あたりに組み込まれた色素の量が増し、高い光捕獲率をもたらす。しかし、生成された電子の拡散距離も延びるので、電荷の再結合によってより高い損失率が予測される。更に、フタロシアニン及びポルフィリンのような慣用的に使用される色素は高い吸収率を有するため、金属酸化物の薄層又は膜で十分である。したがって、半導体性金属酸化物層の好ましい厚さは、0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜50μm、さらにより好ましくは0.1〜30μm、特に0.1〜20μm、とりわけ0.5〜3μmである。
【0150】
基板1m2あたりの半導体性金属酸化物の被覆量は、好ましくは0.5〜100g、より好ましくは3〜50gである。
【0151】
半導体性金属酸化物を、工程(i)又は(ii)で得た層の上に適用した後、得られた生成物を、好ましくは熱処理(焼結工程)に付し、金属酸化物粒子を互いに電気的に接触させ、被覆強度及びその下の層との接着力を増加させる。加熱温度は、好ましくは40〜700℃、より好ましくは100〜600℃である。加熱時間は、好ましくは10分〜10時間である。
【0152】
しかし、電気伝導層が、ポリマー膜のような低融点又は軟化点を有する感熱材料を含有する場合、半導体性金属酸化物の適用後に得た生成物は、好ましくは高温処理に付されない。それはそのような基板を損傷しうるからである。この場合、熱処理は、好ましくは可能な限り低い温度、例えば50〜350℃で実施される。この場合、半導体性金属酸化物は、好ましくは、特に5nm以下の中央粒径を有する小さな粒子のものである。あるいは、鉱酸又は金属酸化物前駆体をそのような低温で熱処理することができる。
【0153】
更に、熱処理は、加熱温度を下げるために、半導体性金属酸化物に紫外線、赤外線、マイクロ波放射線、電場、超音波などを適用しながら実施してもよい。不必要な有機化合物などを除去するため、熱処理は、好ましくは、排気、酸素プラズマ処理、純水、溶媒又はガスでの洗浄などと組み合わせて実施される。
【0154】
望ましい場合、半導体性金属酸化物層の性能を改善するために、色素で増感する前に半導体性金属酸化物の層上に遮断層を形成することができる。そのような遮断層は、通常、前述の熱処理の後に導入される。遮断層の形成例として、半導体性金属酸化物層を、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド若しくはチタンブトキシドのような金属アルコキシド、塩化チタン、塩化スズ若しくは塩化亜鉛のような塩化物、窒化物又は硫化物の溶液に浸漬し、次に基板を乾燥又は焼結する方法が挙げられる。例えば、遮断層は、金属酸化物、例えばTiO2、SiO2、Al23、ZrO2、MgO、SnO2、ZnO、Eu23、Nb25若しくはこれらの組み合わせ、TiCl4又はポリマー、例えばポリ(フェニレンオキシド−コ−2−アリルフェニレンオキシド)若しくはポリ(メチルシロキサン)から作製される。そのような層の製造について詳細は、例えばElectrochimica Acta 40,643,1995;J.Am.Chem.Soc 125,475,2003;Chem.Lett.35,252,2006;J.Phys.Chem.B,110,199,2006に記載されている。好ましくは、TiCl4が使用される。遮断層は、通常、高密度及び緻密であり、通常、半導体性金属酸化物層よりも薄い。
【0155】
既に述べたように、半導体性金属酸化物層は、多数の色素分子を吸着するために大きな表面積を有することが好ましい。半導体性金属酸化物の表面積は、投影面積よりも好ましくは10倍以上、より好ましくは100倍以上大きい。
【0156】
(2)色素
感光層の発色物質として使用される色素は、特に可視領域及び/又は近赤外領域(とりわけ、約300〜2000nm)の光を吸収することができ、半導体性金属酸化物を増感することができるのであれば、特に限定されない。例として、金属錯体色素(例えば、US4,927,721、US5,350,644、EP−A−1176646、Nature 353,1991,737−740、Nature 395,1998,583−585、US5,463,057、US5,525,440、US6,245,988、WO98/50393を参照のこと)、インドリン色素、(例えば、Adv.Mater.2005,17,813を参照のこと)、オキサジン色素(例えば、US6,359,211を参照のこと)、チアジン色素(例えば、US6,359,211を参照のこと)、アクリジン色素(例えば、US6,359,211を参照のこと)、プロフィリン色素、メチン色素(好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、スクアリリウム色素などのようなポリメチン色素;例えば、US6,359,211、EP892411、EP911841、EP991092、WO2009/109499を参照のこと)並びにリレン色素(例えば、JP−A−10−189065、JP2000−243463、JP2001−093589、JP2000−100484、JP10−334954、New J.Chem.26,2002,1155−1160、特にDE−A−102005053995及びWO2007/054470を参照のこと)が挙げられる。
【0157】
色素は、好ましくは、金属錯体色素、ポルフィリン色素、メロシアニン色素及びリレン色素からなる群、より好ましくはルテニウム錯体色素及びリレン色素、特に好ましくはリレン色素(特に、DE−A−102005053995及びWO2007/054470に記載されているもの)から選択される。
【0158】
光電変換装置の光電変換波範囲を広げるため及び光電変換効率を挙げるため、2種類以上の色素を混合物として又は組み合わせて使用することができる。2種類以上の色素を使用する場合、色素の種類及び率は、波範囲及び光源の強度分布によって選択することができる。
【0159】
例えば、リレン色素の吸収は、共役系の程度に左右される。DE−A−102005053995のリレン誘導体は、400nm(ペリレン誘導体I)〜900nm(クアテリレン誘導体I)の吸収を有する。テリレン系色素は約400〜800nmを吸収する。したがって、電磁波の範囲にわたって可能な限り大きい吸収を得るため、異なる吸収極大を有するリレン色素の混合物を使用することが有利である。
【0160】
色素は、好ましくは、半導体性金属酸化物の表面と相互作用する又は表面に吸着することができる連結又は固着基を有する。好ましい連結基には、−COOH、−OH、−SO3H、−P(O)(OH)2及び−OP(O)(OH)2のような酸性基、並びにオキシム基、ジオキシム基、ヒドロキシキノリン基、サリチレート基及びα−ケトエノレート基のようなπ−伝導性キレート基が含まれる。無水基も、その場でカルボン酸基と反応するので適している。これらのうち、酸性基が好ましく、−COOH、−P(O)(OH)2及び−OP(O)(OH)2が特に好ましい。連結基は、アルカリ金属などと塩を形成することができる又は分子内塩を形成することができる。ポリメチン色素の場合、メチン鎖により形成されるスクアリリウム環基又はクロコニウム環基のような酸性基は、連結基として作用することができる。
【0161】
好ましくは、色素は、遠位末端(すなわち、固着基の反対側の色素分子の末端)に、電子を半導体性金属酸化物に供与した後に色素の再生を促進する、また場合により供与電子との再結合を防止する1個以上の電子供与基を有する。
【0162】
本発明に有用なリレン色素は、例えば、半導体太陽電池に使用される、JP3968819、JP4211120、JP10189065及びJP2000/100484に記載の多様なペリレン3,4:9,10−テトラカルボン酸誘導体である。これらの色素は、とりわけ、カルボキシアルキル、カルボキシアリール、カルボキシアリールアルキル若しくはカルボキシアルキルアリール基をイミド窒素原子に有する及び/又はパラ位置のアミノ基の窒素原子が2個の更なるフェニル基で置換されているか若しくは芳香族複素三環系の一部であるパラ−ジアミノベンゼンでイミド化されているペリレンテトラカルボキシイミド;イミド窒素原子を更に官能化することなく前述の基又はアルキル若しくはアリール基を有するペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸一無水物モノイミド又はペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物と1,2−ジアミノベンゼン若しくは1,8−ジアミノナフタレンとの半縮合物(これらは、第一級アミンにより更に変換されて対応するジイミド若しくは二重縮合物になる);カルボキシル又はアミノ基で官能化された、ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物と1,2−ジアミノベンゼンとの縮合物;並びに脂肪族又は芳香族ジアミンでイミド化されたペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドである。
【0163】
本発明に有用な更なるリレン色素は、New J.Chem.26,p.1155−1160(2002)に記載されているペリレン−3,4−ジカルボン酸誘導体である。9−ジアルキルアミノペリレン−3,4−ジカルボン酸無水物及びペリレン−3,4−ジカルボキシイミドに関して特定の記述があり、これらはジアルキルアミノ又はカルボキシメチルアミノにより9位で置換されており、イミド窒素原子にカルボキシメチル又は2,5−ジ(tert−ブチル)フェニル基を有する。
【0164】
本発明においてとりわけ使用されるリレン色素は、US2008/0269482に記載されているものであり、特に9−アミノ置換ペリレン−3,4−ジカルボン酸及び式(II):
【化3】
【0165】
〔式中、
Xは、O、NH、N−フェニル−COOH又はN−(CH2m−COOHであり、ここでmは、1〜4の整数であり;
nは、0又は1であり;
aは、水素、アリールオキシ、アリールチオ又はジアリールアミノであり、ここで、最後に記述された3個の基のアリール基は、非置換でありうる又は好ましくはアルキル、アルコキシ及びアリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよく;
a’は、Raと同様に定義され、好ましくは、n=0の場合は水素であり、好ましくは、n=1の場合はRaと同一であり;
bは、非置換でありうる又は好ましくはアルキル、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アリール及びヘタリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい、アリールであり;
b’は、Rbと同様に定義され、好ましくはRbと同一である、又は
bとRb’は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環を形成する〕
の対応するテリレン誘導体の無水物及びジカルボキシイミドである。
【0166】
本発明の文脈において特に好ましいものは、nが0であり、XがN−フェニル−COOH又はN−CH2−COOHである式(II)の色素である。とりわけ好ましいものは、U.B.Cappel et al.,J.Phys.Chem.C,113,33,14595−14597,2009に開示されているペリレン色素「ID176」であり、これは、XがN−CH2−COOHであり、nが0であり、Ra及びRa’が水素であり、Rb及びRb’がそれぞれ4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルである式(II)の化合物である。
【0167】
色素は、半導体性金属酸化物に、これらの成分を互いに接触させることにより、例えば、半導体性金属酸化物層を適用した後に得られた生成物を色素吸着溶液にソーキングすることにより又は色素吸着溶液を半導体性金属酸化物層に適用することにより吸着されうる。前者の場合、ソーキング法、浸漬法、ローラー法、エアナイフ法などを使用することができる。ソーキング法では、染料を室温又はJP7249790に記載されているように加熱しながら環流下で吸着させることができる。後者の適用方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、押出法、流し塗法、スピン法、噴霧法などを使用することができる。更に、色素をインクジェット法により画像で半導体性金属酸化物層に適用してもよく、これにより画像の形状を有する光電変換表面がもたらされる。これらの方法を、半導体性金属酸化物が少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩で処理されている間に、色素が半導体性金属酸化物に吸着される場合でも使用することができ、したがって色素吸着溶液は、1つ以上のヒドロキサム酸又はこれらの塩を含有することができる。好ましくは、例えば懸濁液又は溶液の形態の色素を、半導体性金属酸化物にこれが新たに焼結されたとき、すなわちまだ温かいうちに接触させる。接触時間は、金属酸化物の表面へ色素を吸着させるのに十分なほど長くあるべきである。接触時間は、典型的には0.5〜24時間である。
【0168】
2つ以上の色素が適用される場合、2つ以上の色素の適用を、例えば2つ以上の色素の混合物を使用して同時に又は色素を1つずつ続けて適用して実施することができる。
【0169】
色素を、また、少なくとも1つのヒドロキサム酸又はその塩との混合物により適用してもよい。追加的に又は代替的に、色素を電荷移動材料と組み合わせて適用してもよい。
【0170】
半導体性金属酸化物層に吸着されなかった色素は、好ましくは、吸着過程の直後、洗浄により除去される。洗浄は、好ましくは、極性溶媒、特に極性有機溶媒、例えばアセトニトリルにより又はアルコール溶媒により湿潤型洗浄浴で実施される。
【0171】
半導体性金属酸化物に吸着される色素の量は、好ましくは半導体性金属酸化物1gあたり0.01〜1mmolである。そのような色素の吸着量は、通常、半導体に対して十分な増感を実施する。色素の量が少なすぎると、増感効果は不十分なものとなる。一方、非吸着色素は、半導体性金属酸化物の上に浮遊して、増感効果の低下をもたらすことがある。
【0172】
色素の吸着量を増加するため、半導体性金属酸化物層を、色素が吸着される前に熱処理に付すことができる。熱処置の後、水が半導体性金属酸化物層に吸着するのを防止するため、層が室温に冷却する前に、色素が、60〜150℃の半導体性金属酸化物層に素早く吸着することが好ましい。
【0173】
(3)ヒドロキサム酸及びその塩
前記に述べられているものが参照される。
【0174】
(4)不動態化材料
半導体性金属酸化物と電荷移動層において電子の再結合を防止するために、不動態化層を半導体性金属酸化物に供給することができる。不動態化層を、色素、またヒドロキサム酸若しくはその塩の吸着の前又は色素吸着過程及びヒドロキサム酸若しくはその塩での処理の後に供給することができる。適切な不動態化材料は、アルミニウム塩、Al23、CH3SiCl3のようなシラン、金属有機錯体、とりわけAl3+錯体、4−tert−ブチルピリジン、MgO、4−グアニジノ酪酸及びヘキサデシルマロン酸である。
【0175】
不導体化層は、好ましくは非常に薄い。
【0176】
(D)電荷移動層[工程(iv)]
電荷移動層は、酸化された色素に電子を補充する。電荷移動層は、(i)イオン伝導性電解質組成物又は(ii)遊離電荷担体により仲介された電荷輸送を利用する電荷輸送材料から構成することができる。イオン伝導性電解質組成物(i)の例には、レドックス対を含有する溶融塩電解質組成物;レドックス対が溶媒に溶解している電解溶液;レドックス対を含む溶液がポリマーマトリックスに浸透している、いわゆるゲル電解質;固体電解質組成物などが含まれる。電荷輸送材料(ii)の例には、電子輸送材料及び正孔輸送材料が含まれる。これらの材料を互いに組み合わせて使用してもよい。
【0177】
本発明に使用される電荷移動層は、好ましくは固体であり、好ましくは正孔輸送材料から構成される(固体p半導体)。
【0178】
(1)溶融塩電解質組成物
溶融塩電解質組成物は、十分な耐久性が光電変換装置の良好なエネルギー変換効率ηと組み合わせて求められる場合、電荷移動層に使用されることがある。溶融塩電解質組成物は、低融点を有する溶融塩電解質を含む。本発明における使用では、多種多様な塩を溶融塩電解質として選択することができる。そのような塩の有用な例として、例えばWO95/18456及びEP0718288に開示されている、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩及びトリアゾリウム塩が挙げられる。溶融塩電解質は、好ましくは100℃以下の融点を有し、特に好ましくは室温で液体である。
【0179】
溶融塩電解質組成物は下記に記載される溶媒を含んでもよいが、特に好ましくは溶媒を含まない。溶融塩電解質の含有量は、電荷移動層の全組成物に基づいて、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。溶融塩電解質組成物に好ましく含有されているヨウ素塩の質量比は、含有されている全ての塩に基づいて、好ましくは50質量%以上である。
【0180】
溶融塩電解質組成物は、好ましくはヨウ素を含む。ヨウ素含有量は、組成物全体に基づいて好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0181】
溶融塩電解質組成物は、J.Am.Ceram.Soc.,80(12),3157 to 3171(1997)に記載されているように、t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジンなどのような塩基性化合物を含有することもできる。塩基性化合物の濃度は、好ましくは0.05〜2Mである。
【0182】
(2)電解溶液
本発明に使用される電解溶液は、好ましくは、電解質、溶媒及び場合により添加剤から構成される。電解質は、I2とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI及びCaI2のような金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージド及びイミダゾリウムヨージドのような第四級アンモニウムヨージドなど)との組み合わせ;Br2と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr及びCaBr2のような金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロミド及びピリジニウムブロミドのような第四級アンモニウムブロミドなど)との組み合わせ;フェロシアニド−フェリシアニド及びフェロセン−フェリシニウムイオンのような金属錯体;ナトリウムポリスルフィド及びアルキルチオール−アルキルジスルフィドのような硫黄化合物;ビオロゲン色素;ヒドロキノン−キノンなどでありうる。これらのうち、I2とLiIの組み合わせ又は第四級アンモニウムヨージドが好ましい。また、幾つかの電解質の混合物を使用することができる。
【0183】
電解溶液中の電解質の濃度は、好ましくは0.1〜10M、より好ましくは0.2〜4Mである。更に、電解溶液はヨウ素を含むことができ、ヨウ素の濃度は、好ましくは0.01〜0.5Mである。
【0184】
電解溶液に使用される溶媒は、好ましくは、低粘度を有する及び高いイオン移動度を可能にする、したがって良好なイオン伝導性を可能にするものである。溶媒の例には、炭酸エチレン及び炭酸プロピレンのような炭酸塩;3−メチル−2−オキサゾリジノンのような複素環化合物;ジオキサン及びジエチルエーテルのようなエーテル;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル及びポリプロピレングリコールジアルキルエーテルのような鎖エーテル;メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル及びポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルのようなアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びグリセリンのようなグリコール;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル及びベンゾニトリルのようなニトリル化合物;ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン;水などが含まれる。これらの溶媒を互いに組み合わせて使用してもよい。
【0185】
電解溶液は、J.Am.Ceram.Soc.,80(12),3157 to 3171(1997)に記載されているように、t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジンなどのような塩基性化合物を含有することもできる。塩基性化合物の濃度は、好ましくは0.05〜2Mである。
【0186】
(3)ゲル電解質組成物
上記に記述された溶融塩電解質組成物、電解溶液などをゲル化又は凝固して、ゲル電解質組成物を製造することができる。ゲル化は、ポリマーの添加、油ゲル化剤の添加、多官能モノマーを含むモノマーの重合、ポリマーの架橋反応などにより達成することができる。
【0187】
ゲル電解質組成物がポリマーの添加により製造される場合、“Polymer Electrolyte Reviews 1 and 2”edited by J.R.Mac−Callum and C.A.Vincent,Elsevier,London(1987 and 1989)に記載されている化合物をポリマーとして使用することができる。これらの化合物のうち、ポリアクリロニトリル及びポリ(フッ化ビニリデン)が好ましい。
【0188】
ゲル電解質組成物が油ゲル化剤の添加により製造される場合、J.Am.Chem.Soc.,111,5542(1989)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,390(1993)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,35,1949(1996)、Chem.Lett.,885(1996)、J.Chem.Soc,Chem.Commun.,545(1997)などに記載されている化合物を油ゲル化剤として使用することができる。これらの化合物のうち、アミド構造を有するものが好ましい。
【0189】
ゲル電解質組成物がポリマーの架橋反応により製造される場合、架橋反応性を有する基を含有するポリマーを架橋剤と組み合わせて使用することが好ましい。架橋反応性を有する基は、好ましくは、アミノ基又はピリジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、トリアゾリル基、モルホリル基、ピペリジル基、ピペラジル基などのような窒素含有複素環基である。架橋剤は、好ましくは、アミノ基又は前述された複素環基の窒素原子により攻撃されうる複数の官能基を有する求電子剤であり、例えば、多官能性アルキルハロゲン化物、アラルキルハロゲン化物、スルホネート、酸無水物、塩化アシル、イソシアネート、α,β−不飽和スルホニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−不飽和ニトリル化合物などである。
【0190】
(4)正孔輸送材料
本発明において、無機固体正孔輸送材料、有機固体正孔輸送材料又はこれらの組み合わせを電荷移動層に使用することができる。
【0191】
(a)無機正孔輸送材料
無機正孔輸送材料は、p型無機化合物半導体であってもよく、これは、好ましくはCul、CuSCN、CulnSe2、Cu(ln,Ga)Se2、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CulnS2、CuAlSe2などのような一価銅を含む化合物である。これらのうち、Cul及びCuSCNが好ましく、Culが最も好ましい。GaP、NiO、CoO、FeO、Bi、MoO、Crなどをp型無機化合物半導体として使用することもできる。
【0192】
(b)有機正孔輸送材料
本発明に有用な有機正孔輸送材料の例には、例えばK.Murakoshi,et al.,Chem.Lett.,471,1997に開示されたポリピロールのようなポリマー、“Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers”,Vols.1 to 4,published by H.S.Nalwa,Wiley(1997)に開示されたポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチエニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリトルイジン及びこれらの誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(4−ウンデシル−2,2’−ビオチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(トリフェニルジアミン)、並びにポリ(n−ビニルカルバゾール)のようなカルバゾールに基づいたポリマーが含まれる。
【0193】
また本発明に有用な低分子量の有機正孔輸送材料には、例えばNature,Vol.395,Oct.8,1998,Page 583 to 585、WO97/10617、US4,923,774及びUS6,084,176に開示されている芳香族アミン;例えばJP11176489に開示されているトリフェニレン;例えばAdv.Mater.,9,No.7,557,1997、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,34,3,303 to 307,1995、J.Am.Chem.Soc.,Vol.120,4,664 to 672,1998に開示されているオリゴチオフェン化合物;ヒドラゾン化合物、例えばUS4,950,950に開示されているシラザン化合物、シランアミン誘導体、ホスホアミン誘導体、キナクリドン化合物、4−ジ−p−トリルアミノ−スチルベン及び4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4−ジ−p−トリルアミノ)−スチリル]スチルベンのようなスチルベン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体及びポリシラン誘導体が含まれる。化合物は、単独で又は2つ以上を組み合わせて使用することができる。
【0194】
本発明に使用される好ましい有機正孔輸送材料は、スピロビフルオレンである(例えば、US2006/0049397を参照のこと)。特に好ましいスピロビフルオレンは、例えばU.Bach et al.,Nature 395,583−585,1998に開示されている2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニル−アミン)9,9’−スピロビフルオレン(「OMeTAD」)である。
【0195】
この参考文献には、有機正孔輸送材料に、N(PhBr)3SbCl6のようなドーパントを添加して、酸化により遊離電荷担体を正孔輸送材料に導入することができ、Li[CFsSO2)Nのような塩を導入して、酸化チタン半導体の表面に電位制御を達成可能であることも記載されている。
【0196】
既に述べられているように、電荷移動層は、好ましくは固体であり、より好ましくは固体正孔輸送材料、さらにより好ましくは固体有機正孔輸送材料、特にスピロビフルオレン誘導体を有機正孔輸送材料本として含む。
【0197】
本発明の特に好ましい実施態様によると、電荷移動層は、OMeTAD及びLi[CF3SO2)Nを含む。
【0198】
(5)電荷移動層の形成方法
電荷移動層は、例えば以下の2つの方法のいずれかにより提供されうる。一方は、対電極が感光層の上に前もって貼り付けられており、液体状態の電荷移動層の材料をその間のギャップに浸透させる方法である。他方は、電荷移動層を感光層の上に直接配置し、次に対電極をその上に配置する方法である。
【0199】
前者の方法では、電荷移動層の材料を、毛管現象を利用する常圧法により又は減圧法によりギャップに浸透させることができる。
【0200】
後者の方法により湿潤電荷移動層を提供する場合、湿潤電荷移動層を感光層に適用し、対電極を湿潤電荷移動層の上に乾燥することなく配置し、必要であればその端部を、液漏れを防ぐための処理に付す。後者の方法によりゲル電荷移動層を提供する場合、電荷移動材料を液体状態で適用し、重合などによりゲル化する。この場合、対電極を、電荷移動層の乾燥及び固定前又は後に電荷移動層に配置することができる。
【0201】
電解溶液、湿潤有機正孔輸送材料、ゲル電解質組成物などから構成される電荷移動層を、例えば、上記に記述された半導体に半導体性金属酸化物層を形成する又は色素を吸着する場合と同様に、ローラー法、浸漬法、エアナイフ法、押出法、スライドホッパー法、ワイヤーバー法、スピン法、噴霧法、流延法、多様な印刷法により配置することができる。
【0202】
固体電解質、固体正孔輸送材料などから構成される電荷移動層は、真空蒸着法及びCVD法のような乾燥皮膜形成法により形成し、続いてその上に対電極を配置することができる。有機正孔輸送材料を、真空蒸着法、流延法、被覆法、スピン被覆法、ソーキング法、電解質重合法、光重合法、これらの方法の組み合わせなどにより、感光層の中に浸透させることができる。無機正孔輸送材料を、流延法、被覆法、スピン被覆法、ソーキング法、電解析出法、無電解析出法などにより、感光層の中に浸透させることができる。
【0203】
(E)対電極[工程(v)]
既に記述されたように、対電極は対向電気伝導層であり、これは上記に定義されたように基板によって場合により支持されている。対向電気伝導層に使用される電気伝導性材料の例には、白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム及びインジウムのような金属;これらの、特にアルミニウム及び銀の混合物及び合金;炭素;インジウムスズ複合体酸化物及びフッ素ドープスズ酸化物のような電気伝導性金属酸化物が含まれる。これらのうち、金、銀、銅、アルミニウム及びマグネシウムが好ましく、銀又は金が特に好ましい。とりわけ、銀が使用される。適切な電極は、更に、LiF/Al電極のような混合無機/有機電極及び多層電極である。適切な電極は、例えばWO02/101838(とりわけpp18―20)に記載されている。
【0204】
対電極の基板は、好ましくは、電気伝導性材料が被覆又は蒸着されているガラス又はプラスチックにより作製される。対向電気伝導層は、好ましくは3nm〜10μmの厚さを有するが、厚さは特に限定されない。
【0205】
光を、工程(i)により提供される電気伝導層及び工程(v)により提供される対電極の一面又は両面から照射することができ、そのためこれらのうちの少なくとも一方は、光が感光層に到達するよう実質的に透明であるべきである。電気生成効率を改善する観点から、工程(i)により提供される電気伝導層は、入射光に対して実質的に透明である。この場合、対電極は、好ましくは光反射特性を有する。そのような対電極は、金属若しくは電気伝導性酸化物の蒸着層又は金属薄膜を有するガラス又はプラスチックから構成されうる。この種類の装置は、「コンセントレーター」とも呼ばれ、例えばWO02/101838(とりわけpp23−24)に記載されている。
【0206】
対電極は、金属めっき又は蒸着(物理的蒸着(PVD)、CVDなど)により、電気伝導性材料を電荷移動層に直接適用して配置することができる。伝導性支持体と同様に、金属リード線を使用して対電極の抵抗を低減することが好ましい。金属リード線は、特に好ましくは透明対電極に使用される。対電極に使用される金属リード線の好ましい実施態様は、上述された伝導層に使用される金属リード線と同じである。
【0207】
(F)他
保護層及び反射防止層のような機能層を、伝導層及び対電極のうちのいずれか一方又は両方に配置することができる。機能層を、被覆法、蒸着法及び粘着法のような、使用される材料によって選択された方法により配置することができる。
【0208】
(G)光電変換装置の内部構造
上記に記載されたように、光電変換装置は、所望の最終用途によって多様な内部構造を有することができる。構造は、両面から光の入射を可能にする構造と一面のみから光の入射が可能な構造の2つの主要形態に分類される。一番目の場合、感光層、電荷移動層及び他の場合により存在する層は、透明な電気伝導層と透明な対向電気伝導層の間に配置されている。この構造は、装置の両面からの光の入射を可能にする。二番目の場合、透明な電気伝導層及び透明な対向電気伝導層の一方が透明であり、他方が透明ではない。当然のことながら、電気伝導層が透明な場合、光は電気伝導層の側から侵入し、一方、対向電気伝導層が透明な場合、光は対電極の側から侵入する。
【0209】
本発明は、更に、本発明の方法により得られる光電変換装置に関する。
【0210】
したがって、本発明の光電変換装置は、その上に少なくとも1つの発色物質が吸着されている少なくとも1つの半導体性金属酸化物を含有する感光層を含み、ここで前記半導体性金属酸化物は、400〜1000nmの電磁波長範囲で本質的に透明である少なくとも1つのヒドロキサム酸及び/又は少なくとも1つのその塩で処理されている。適切で好ましい半導体性金属酸化物、ヒドロキサム酸及びこれらの塩、並びに装置の組立に関して、本明細書に前述されたものが参照される。
【0211】
より好ましくは、本発明の光電変換装置は、下記:
I)電気伝導層;
II)場合により下塗層;
III)感光層(ここで感光層は、発色物質で増感され、少なくとも1つの本質的に透明なヒドロキサム酸及び/又は少なくとも1つの本質的に透明なその塩で処理された半導体性金属酸化物を含有する);
IV)電荷移動層;並びに
V)対向電気伝導層
を含む。
【0212】
本発明の光電変換装置が構成される層及び成分に関し、上述されたものが参照される。既に記述されているように、この文脈における「層」は、それぞれの層が他の層と厳密に物理的に離れていることを必ずしも意味しない。事実、層は相互浸透していてもよい。例えば、電荷移動層を構成する材料が感光層に浸透して、半導体性金属酸化物及び色素と密接に接触することがあり、これにより素早い電荷移動が可能になる。
【0213】
本明細書前記に概説された光電変換装置において、n型半導体性金属酸化物を使用する場合、感光層に浸入した光は色素を励起し、励起された高エネルギー電子は、半導体性金属酸化物の伝導帯に輸送され、そこで拡散されて電気伝導層に到達する。この時点で、色素は酸化形態である。光電変換装置を含む光電池(下記を参照のこと)において、電気伝導層の電子は、外部回路で作用しながら対向電気伝導層及び電荷移動層を介して酸化色素に戻り、それによって色素が再生される。感光層は、一般に負極又は光陽極として作用し、対向電気伝導層は、一般に正極として作用する。電気伝導層と感光層の境界、感光層と電荷移動層の境界、電荷移動層と対向電気伝導層の境界などのようなそれぞれの層の境界において、それぞれの層の成分が拡散及び混合していてもよい。
【0214】
理論に束縛されるものではないが、1つ以上のヒドロキサム酸又はこれらの塩での処理は、金属酸化物の表面の陽子の濃度変化が、ヒドロキサム酸の場合、伝導帯を正電位側にシフトして色素からの電子注入を促進し、ヒドロキサム酸塩の場合、負電位側にシフトして開路電圧を上げるため、本発明の光電変換装置のエネルギー変換効率ηの向上をもたらすと考えられる。更に、とりわけヒドロキサム酸塩であるが、これのみではないこれらの添加剤は、色素凝集の低減、同時に色素分子間の空間の充填を助け、金属酸化物のより良好な表面被覆をもたらし、それによって、金属酸化物の電子と電荷輸送層の正孔との不要な電子再結合を低減することが提案される。また、固体状態色素増感太陽電池の、下塗層の品質への依存は、そのような添加剤の使用によって低下すると思われる。最後に、そのような添加剤は、装置の安定性に対して肯定的な影響を及ぼす傾向がある。
【0215】
これらの仮定は、用いる色素に応じて、ヒドロキサム酸の使用が特に短絡電流Iscの増加を多くの場合にもたらし、同時処理法又は前処理法のいずれかにおけるヒドロキサム酸塩の使用が特に開路電圧Vocの上昇をもたらすという事実によって、支持されている。
【0216】
光電池
本発明は、また、上記に記載された光電変換装置を含む光電池、好ましくは太陽電池に関する。
【0217】
光電池は、光電変換装置を外部回路に連結して、電気的に作用する又は外部回路に電気を生成することにより構成される。イオン伝導性材料から構成される電荷移動層を有するそのような光電池は、光電気化学電池と呼ばれる。太陽光を用いた電力生成を意図する光電池は、太陽電池と呼ばれる。
【0218】
したがって、本発明の光電池は、本発明の光電変換装置を外部回路に連結して、電気的に作用する又は外部回路に電気を生成することにより構成される。好ましくは、光電池は、太陽電池、すなわち太陽光を用いた電力生成を意図する電池である。
【0219】
光電池の側面は、好ましくはポリマー又は接着剤などで密閉され、電池の内容物の劣化及び揮発を防止する。外部回路は、伝導性支持体及び対電極にリード線を介して連結される。多様な既知の回路を本発明に使用することができる。
【0220】
本発明の光電変換装置が太陽電池に適用される場合、太陽電池の内部構造は、上述された光電変換装置と本質的に同じでありうる。本発明の光電変換装置を含む太陽電池は、既知のモジュール構造を有することができる。太陽電池の一般に既知のモジュール構造では、電池は、金属、セラミックなどの基板に設置され、被覆樹脂、保護ガラスなどで覆われ、光は基板の反対側から導入される。太陽電池モジュールは、電池が、強化ガラスのような透明材料の基板に設置されて、光を透明基板側から導入する構造を有することができる。とりわけ、超直線型モジュール構造、基板型モジュール構造、ポッティング型モジュール構造、非晶質ケイ素太陽電池で一般に使用される基板一体型モジュール構造などが、太陽電池モジュール構造として知られている。本発明の光電変換装置を含む太陽電池は、特定の用途に対応する要件に従って適合されうる例えば上記の構造から適切に選択されるモジュール構造を有することができる。
【0221】
本発明の太陽電池をタンデム型電池に使用することができる。したがって、本発明は、また、本発明の色素増感太陽電池及び有機太陽電池を含むタンデム型電池に関する。
【0222】
タンデム型電池は、たいてい知られており、例えばWO2009/013282に記載されている。本発明のタンデム型電池はWO2009/013282に記載されているように作製することができるが、本発明の太陽電池が、この参考文献に記載されている色素増感太陽電池に代わる。
【0223】
本発明は、色素増感光電変換装置、また当然のことながらそれらを含む光電池、とりわけ太陽電池のエネルギー交換効率ηを向上させるための、上記に定義されたドロキサム酸及び/又はその塩の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0224】
図1図1は、色素ID176で処理した3μm厚のメソ多孔質TiO2層(第2表に記載された電池に使用されたもの)の2つ吸光スペクトルを示す。
【0225】
実施例
本発明は、本発明の範囲をいかようにも制限することなく、以下の実施例によってより詳細に説明される。
【0226】
太陽電池の一般的製造:
太陽電池の添加剤としての式Iの化合物の安定性を試験するために、太陽電池を以下のように製造した。
【0227】
使用した基礎材料は、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)で被覆した、25mm×15mm×3mmの寸法のガラスプラーク(Hartford TEC15)であり、これを、ガラスクリーナー、完全脱塩水及びアセトンによりそれぞれの場合に5分間の超音波浴において連続的に処理し、次にイソプロパノールで10分間沸騰し、窒素流で乾燥した。
【0228】
固体TiO2からなる下塗層を、Electrochim.Acta,40,643 to 652(1995)に記載されている噴霧熱分解法を使用してFTOの上に堆積させた。下塗層の上に、TiO2のペースト(Dyesol,18NR−T)を分布し、450℃で1時間焼結して、厚さ3μmのTiO2のメソ多孔質層を得た。
【0229】
次に、この方法で製造した中間体を、M.Graetzel et al.,Adv.Mater.18,1202(2006)に記載されているようにTiCl4で処理した。焼結した後、試料を60〜80℃に冷却した。
【0230】
ヒドロキサム酸又はその塩による前処理の場合、試料を、処理液としてのエタノール中のヒドロキサム酸又はその塩の5mM溶液に浸け、純水エタノールの浴で洗浄し、窒素流で短時間乾燥し、続いてジクロロメタン中のペリレン色素ID176(Cappel et al.,J.Phys.Chem.Lett.C,2009,113,14595−14597)の0.5mM溶液に12時間浸漬した。その後、試料をジクロロメタンですすぎ、窒素流で乾燥した。この前処理法に使用したヒドロキサム酸を第2表に提示し、この前処理法に使用したヒドロキサム酸塩を第3表に提示する。
【0231】
ヒドロキサム酸又はその塩による後処理の場合、試料を最初にジクロロメタン中のペリレン色素ID176の0.5mM溶液に12時間浸漬した。次に、試料をジクロロメタンですすぎ、窒素流で乾燥した。その後、試料を、処理液としてのエタノール中のヒドロキサム酸又はその塩の5mM溶液に浸け、純水エタノールの浴で洗浄し、窒素流で短時間乾燥した。この後処理法に使用したヒドロキサム酸又はその塩を第4表に提示する。
【0232】
前処理又は後処理いずれかの後、電荷移動層としての正孔輸送材料を感光層に適用した。この目的のため、クロロベンゼン中のOMeTAD(Merck group)の溶液を調製し、シクロヘキサノン中のLiN(SO2CF32(Sigma−Aldrich group)の0.3 溶液と混合した。この溶液75μlを試料に堆積させ、30秒間染みこませた。その後、上澄み溶液を2000rpmの遠心分離で除去し、周囲空気で3時間乾燥した。
【0233】
対電極を、真空下での熱金属蒸着により適用した。この目的のために、それぞれ3mm×2mmの接触領域を介して電荷移動層と接触する、約5mm×4mmの寸法の4つの別々の長方形対電極を堆積させるために、試料にマスクを備えた。使用した金属は銀であり、これは圧力5×10-5mbar、速度0.1nm/sで気化し、200nm厚の層を形成した。
【0234】
エネルギー変換効率ηを決定するため、特定の電流/電圧特性を、太陽シミュレーターとしてAM1.5フィルター(LOT Oriel group)を備えたキセノンランプ(LOT Oriel group)で照射する、ソースメーターモデル2400(Keithley Instruments Inc.)で測定した。
【0235】
添加剤として試験したヒドロキサム酸又はこれらの塩を第1表に提示する。ヒドロキサム酸1〜5は市販のもの、ヒドロキサム酸塩6〜10は、NaOH、KOH、LIOH、CsOH又はテトラブチルアンモニウムヒドロキシドと反応させてヒドロキサム酸から調製した。前処理又は後処理法で用いたこれらの添加剤により得た試験結果を第2、3、4表、また図1に表す。
【0236】
第1表:エネルギー変換効率ηに関して試験した太陽電池に用いた添加剤
【表1】
【0237】
第2表:太陽シミュレーターで放射した太陽電池の電流/電圧特性から誘導された代表値(電池の感光層を、第1表に表したヒドロキサム酸による前処理に付した)
【表2】
【0238】
第3表:太陽シミュレーターで放射した太陽電池の電流/電圧特性から誘導された代表値(電池の感光層を、第1表に表したヒドロキサム酸塩による前処理に付した)
【表3】
【0239】
第4表:太陽シミュレーターで放射した太陽電池の電流/電圧特性から誘導された代表値(電池の感光層を、第1表に表したヒドロキサム酸塩による後処理に付した)
【表4】
【0240】
図1は、色素ID176で処理した3μm厚のメソ多孔質TiO2層(第2表に記載された電池に使用されたもの)の2つ吸光スペクトルを示す。上側のスペクトル(「前処理なし」)は、TiO2層をID176のみで処理することにより得た。下側のスペクトル(「5による前処理」)は、TiO2層を最初に実施例5のヒドロキサム酸(第1表を参照のこと)で処理し、次に前に記載されたようにID176を吸収させることにより得た。意外なことに、同様の電流を得たが、二番目の場合(5による前処理)では、一番目の場合(前処理なし)よりも少ない色素がTiO2層に吸収された。
【0241】
本発明の添加剤を含む太陽電池の効率ηが、添加剤なしの電池により提供される空試験値と比較して改善していることが、これらの結果から明らかである。このことは、主に短絡電流(Isc)の増加に起因する。感光層が、色素に加えて、試験した添加剤の1つも含む場合、波長範囲400〜700nmの光の吸収が低減することが確定したため、これは驚くべき所見である。結論として、本発明の添加剤は、量子効率の明確な増加をもたらす。
図1