(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984855
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】テトラアザペロピレン化合物及びそのn型半導体としての使用
(51)【国際特許分類】
C07D 487/06 20060101AFI20160823BHJP
H01L 51/46 20060101ALI20160823BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20160823BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20160823BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20160823BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20160823BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
C07D487/06CSP
H01L31/04 154C
H01L29/28 100A
H01L29/28 250H
H01L29/28 310J
H01L29/78 618B
H05B33/22 B
H05B33/14 A
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-558536(P2013-558536)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公表番号】特表2014-514281(P2014-514281A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】IB2012050990
(87)【国際公開番号】WO2012123848
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/452,675
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ ガーデ
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ マーテンス
(72)【発明者】
【氏名】ソーニャ ガイプ
【審査官】
瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−535830(JP,A)
【文献】
Martens, Susanne C.; Riehm, Till; Geib, Sonja; Wadepohl, Hubert; Gade, Lutz H.,Substituent effects in the periphery of 2,9-Bisaryl-tetraazaperopyrene dyes,Journal of Organic Chemistry,2011年,76(2),609-617
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/06
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/40
H01L 51/46
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、各存在において、独立してH、Cl及びBrから選択されるが、但し、
R1、R2、R3及びR4はClまたはBrであり、
R
9、R
10は、各存在において、独立してH、C
1〜30アルキル基、C
1〜C
30ハロアルキル基、C
6〜14アリール基、5〜14員環原子を有するヘテロアリール基、及びC
7〜20アリールアルキル基から選択され、その際、アリール、ヘテロアリール及びアリールアルキルは、任意に1つ以上のハロゲン、C
1〜4ハロアルキル、−CN、−NO
2、−CHO、−COOH、−CONH
2、−CO(C
1〜14アルキル)、−COO(C
1〜14アルキル)、−CONHC(C
1〜14アルキル)及び−CON(C
1〜14アルキル)
2基で置換されてよい)
のテトラアザペロピレン化合物。
【請求項2】
R5、R6、R7及びR8がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R9及びR10がC1〜10ハロアルキル基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R9及びR10がC1〜6パーフルオロアルキル基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R9及びR10が1個以上のハロゲン原子でそれぞれ置換されたC6〜14アリール基又はC7〜20アリールアルキル基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
R9及びR10が1〜5個のフッ素原子で置換されたフェニル基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
以下の式(II)
【化2】
(式中、R
9は請求項1に規定される通りである)
のテトラアザペロピレンを、塩素化剤又は臭素化剤を用いて、塩素化又は臭素化する工程を含む、式(I)の化合物の製造方法。
【請求項8】
R1、R2、R3及びR4がCl又はBrであり、R5、R6、R7、R8がHであり、塩素化剤がN,N’−ジクロロイソシアヌル酸であり且つ臭素化剤がN,N’−ジブロモイソシアヌル酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
テトラアザペロピレン(II)が、4,9−ジアミノペリレンキノン−3,10−ジイミン(III)
【化3】
とカルボン酸クロリド(IV)
【化4】
(式中、R
9は請求項1に規定される通りである)
とを反応させることによって得られる、請求項
7又は
8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の1種以上の化合物を含む薄膜半導体。
【請求項11】
請求項10に記載の薄膜半導体を含む電界効果トランジスタ素子。
【請求項12】
請求項10に記載の薄膜半導体を含む光起電力素子。
【請求項13】
請求項10に記載の薄膜半導体を含む有機発光ダイオード素子。
【請求項14】
請求項10に記載の薄膜半導体を含むユニポーラ又は相補回路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、テトラアザペロピレン化合物及びそのn型半導体としての使用に関する。
【0002】
有機ベースの発光ダイオード(OLED)における近年の発展は、光起電力(OPV)、及び電界効果トランジスタ(OFET)が、有機エレクトロニクスの分野で多くの機会を広げてきた。この分野での課題の1つは、高い易動度を有する環境的に安定した電子伝達(n型)有機半導体を有する薄膜デバイスを開発することである。有機n型材料の性能と安定性は、そのp型の対応品に著しく遅れを取っていた。有機n型材料の技術を前進させるための幾つかの課題として、周囲条件(例えば、空気)及び溶液加工性に対するそれらの脆弱性が挙げられる。例えば、これらの材料が安価な印刷プロセス用のインクに配合され得るように通常の溶媒に溶解性であることが望ましい。
【0003】
最もよく見られる空気安定性のn型有機半導体としては、過フッ化銅フタロシアニン(CuF
16Pc)、フルオロアシルオリゴチオフェン(例えば、DFCO−4TCO)、N,N’−フルオロカーボン置換ナフタレンジイミド(例えば、NDI−F、NDI−XF)、シアノ置換ペリレンジイミド(例えば、PDI−FCN
2)、及びシアノ置換ナフタレンジイミド(例えば、NDI−8CN
2)が挙げられる。例えば、Baoらの、(1998), J. Am. Chem. Soc, 120: 207-208; de Oteyzaらの、(2005), Appl. Phys. Lett, 87: 183504; Scheonらの、(2000), Adv Mater. 12: 1539-1542; Yeらの、(2005), Appl. Phys. Lett, 86: 253505; Yoonらの、(2006), J. Am. Chem. Soc, 128: 12851 -12869; Tongらの、(2006), J. Phys. Chem. B., 110: 17406-17413; Yuanらの、(2004), Thin Solid Films, 450: 316-319; Yoonらの、(2005), J. Am. Chem. Soc, 127: 1348-1349; Katzらの、(2000), J. Am. Chem. Soc., 122: 7787-7792; Katzらの、(2000), Nature (London), 404: 478-481 ; Katzらの、(2001), Chem. Phys. Chem., 3: 167-172; Jungらの、(2006), Appl. Phys. Lett, 88: 183102; Yooらの、(2006), IEEE Electron Device Lett, 27: 737-739; Jonesらの、(2004), Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 43: 6363-6366;及びJonesらの、(2007), J. Am. Chem. Soc, 129: 15259-15278を参照されたい。
【0004】
従って、高スループットのリールトゥリール製造(reel-to-reel manufacture)によって製造できる安価で且つ広範囲の有機エレクトロニクスにおける可能性のある用途を考慮すると、当該技術分野は新規な有機n型半導体化合物、特に、空気安定性、高電荷輸送効率、及び良好な通常の溶媒への溶解性を有する化合物を要求している。
【0005】
コア置換のないテトラアザペロピレンは、a) T. Riehm, Dissertation, Universitaet Heidelberg, 2008;b) T. Riehm, G. De Paoli, A. E. Konradsson, L. De Cola, H. Wadepohl, L. H. Gade, Chem.-Eur. J. 2007, 13, 7317、及びc) S. C. Martens, T. Riehm, S. Geib, H. Wadepohl及びL. H. Gade, J. Org. Chem. 2011, 76, 609-617に記載されている。
【0006】
前述を踏まえると、本発明の課題は、有機半導体として利用できる化合物及び関連材料、組成物、複合材、及び/又は上記に概説されたものなどの、様々な欠陥及び技術水準の欠点に対処できるデバイスを提供することである。
【0007】
この課題は、以下の式I:
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、各存在において、独立してH、Cl及びBrから選択されるが、但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8のうち少なくとも1つはCl又はBrであり、
R
9、R
10は、各存在において、独立してH、C
1〜30アルキル基、C
1〜C
30ハロアルキル基、C
6〜14アリール基、5〜14員環原子を有するヘテロアリール基、及びC
7〜20アリールアルキル基から選択され、その際、アリール、ヘテロアリール及びアリールアルキルは、任意に1つ以上のハロゲン、C
1〜4ハロアルキル、−CN、−NO
2、−CHO、−COOH、−CONH
2、−CO(C
1〜14アルキル)、−COO(C
1〜14アルキル)、−CONHC(C
1〜14アルキル)及び−CON(C
1〜14アルキル)
2基で置換されてよい)
のテトラアザピレン化合物によって解決される。
【0008】
本発明のコアハロゲン化テトラアザペロピレン化合物が半導体活性を有することが判明した。これらの化合物から製造された材料は、予想外の特性を示した。本発明の化合物が、電界効果デバイス(例えば、薄膜トランジスタ)において高いキャリア移動度及び/又は良好な電流変調特性を有し得ることが発見された。更に、本発明の化合物は、関連した代表的化合物と比べて一定の加工上の利点、例えば、溶液加工性を可能にする良好な溶解性及び/又は周囲条件での良好な安定性、例えば、空気安定性を有し得ることが発見された。更に、化合物は、種々の半導体ベースのデバイスでの利用のために他の成分が埋込まれてよい。
【0009】
R
9及びR
10はC
1〜30アルキル基であってよい。本願明細書で使用される、「アルキル」とは、直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、n−プロピル及びイソプロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル)、ペンチル基(例えば、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、及びヘキシル(例えば、n−ヘキシル)が挙げられる。アルキル基は、1〜30個の炭素原子、例えば、1〜20個の炭素原子を有し得る(即ち、C
1〜20アルキル基)。低級アルキル基は通常、4個の炭素原子を有する。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、n−プロピル及びイソプロピル)、及びブチル基(例えば、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル)が挙げられる。
【0010】
R
9及びR
10はC
1〜30ハロアルキル基であってよい。本願明細書で使用される、「ハロアルキル」とは、1個以上のハロゲン置換基を有するアルキル基を意味する。ハロアルキル基は、1〜30個の炭素原子、例えば、1〜10個の炭素原子を有し得る(即ち、C
1〜10ハロアルキル基)。ハロアルキル基の例としては、CF
3、C
2F
5、CHF
2、CH
2F、CCl
3、CHCl
2、CH
2Cl、C
2Cl
5等が挙げられる。パーハロアルキル基、即ち、水素原子の全てがハロゲン原子(例えば、CF
3及びC
2F
5)で置き換えられているアルキル基は、「ハロアルキル」の定義内に含まれている。例えば、C
1〜20ハロアルキル基は、式−C
aH
2a+1−bX
bを有してよく、その際、Xは、各存在において、F、Cl、Br、又はIであり、aは1〜20の範囲の整数であり、且つbは1〜41の範囲の整数であるが、但し、bは2a+1以下であることを条件とする。
【0011】
好ましいハロアルキル基は、C
1〜6ハロゲン化物、特にC
1〜4ハロアルキル基である。特に好ましいのは、1個以上のフッ素置換基を有するハロアルキル基である。特定のハロアルキル基の例は、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9及び−CH
2C
3F
7である。
【0012】
R
9及びR
10は6〜14個の炭素原子を有するアリール基であってよい。本願明細書で使用される、「アリール」とは、2つ以上の芳香族炭化水素環が一緒に縮合するか又は少なくとも1つの芳香族単環式炭化水素環が1つ以上のシクロアルキル及び/又はシクロヘテロアルキル環に縮合する、芳香族単環式炭化水素環系又は多環式環系を意味する。芳香族炭素環のみを有するアリール基の例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等の基が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1つの芳香族炭素環が1つ以上のシクロアルキル又はシクロヘテロアルキル環に縮合される多環系の例としては、とりわけ、シクロペンタン(即ち、5,6−二環式シクロアルキル/芳香環系である、インダニル基)、シクロヘキサン(即ち、6,6−二環式シクロアルキル/芳香環系である、テトラヒドロナフチル基)、イミダゾリン(即ち、5,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香環系である、ベンズイミダゾリニル基)、及びピラン(即ち、6,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香環系である、クロメニル(chromenyl)基)のベンゾ誘導体が挙げられる。アリール基の他の例としては、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル(benzodioxolyl)、クロマニル、インドリニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様では、アリール基は、別のアリール基で置換されたアリール基であり且つビアリール基を意味し得る。ビアリール基の例は、ビフェニル基及びテルフェニル基である。ある実施態様では、アリール基はフェニル基である。
【0013】
R
9及びR
10は、上で定義されるように、1つ以上の、例えば、1〜5つの、ハロゲン、−CN、−NO
2、−CF
3、−OCF
3、−CO
2(C
1〜14アルキル)、−CHO、C
1〜C
14アルキルスルホン、C
6〜14アリールスルホン、スルホン酸C
1〜14アルキルエステル又は−C
6〜14アリールエステル基、−CONH(C
1〜14アルキル)及び−CON(C
1〜14アルキル)
2から独立して選択される電子求引基で置換された、アリール基であってよい。幾つかの好ましい実施態様では、電子求引基はハロゲン、−COO(C
1〜14アルキル)、−CN、−NO
2、−CF
3、又は−OCF
3である。ある実施態様では、電子求引基はF、Cl、Br、I、又は−CNである。
【0014】
ある実施態様では、アリール基は、1〜5個のハロゲン原子で置換されたフェニル基である。幾つかの好ましい実施態様では、R
9、R
10は1〜5個のF原子で置換されたフェニル基である。幾つかの実施態様では、アリール基は、過ハロゲン化されており、即ち、水素原子の全てがハロゲン原子、特に、F原子で置き換えられる。好ましい過ハロゲン化アリール基の1つはペンタフルオロフェニルである。
【0015】
R
9及びR
10は7〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル基であってよい。アリールアルキル基中で結合されるアリール基は、本願明細書で定義される通り、アルキレン基、一般にC
1〜6アルキレン基を介してテトラアザピレンコアに結合される、6〜14個の炭素原子を有する(任意に置換された)アリール基であってよい。アリールアルキル基の例は、ベンジル、フェニルエチル及びフェニルプロピルである。
【0016】
R
9及びR
10は、ハロゲン、−COO(C
1〜14アルキル)、−CN、−NO
2、−CF
3、又は−OCF
3から選択される1つ以上の電子求引基で置換されるアリールアルキル基であってよい。ある実施態様では、電子求引基は、F、Cl、Br、I、又は−CN、特にFである。アリールアルキル基は、過ハロゲン化されてよく、即ち、水素原子の全てがハロゲン原子、特にF原子で置換されている。
【0017】
R
9及びR
10は、5〜14個の環原子を有するヘテロアリール基であってよい。本願明細書で使用される、「ヘテロアリール」とは、O、N、S、Si、及びSeから選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子を有する芳香族単環式環系又は環系に存在する少なくとも1つの環が芳香族であり且つ少なくとも1つの環ヘテロ原子を有する多環式環系を意味する。多環式ヘテロアリール基は、一緒に縮合した2つ以上のヘテロアリール環及び1つ以上の芳香族炭素環、非芳香族炭素環、及び/又は非芳香族シクロヘテロアルキル環に縮合した単環式ヘテロアリール環を含む。ヘテロアリール基は、概して、5〜14個の環原子を有し(例えば、5〜14員のヘテロアリール基)且つ1〜5個の環ヘテロ原子を有し得る。ヘテロアリール基は、安定な構造をもたらすヘテロ原子又は炭素原子で規定の化学構造に結合され得る。一般に、ヘテロアリール環は、O−O、S−S、又はS−O結合を有していない。しかしながら、ヘテロアリール基中の1つ以上のN又はS原子は酸化され得る(例えば、ピリジンN−オキシド、チオフェンS−オキシド、チオフェンS,S−ジオキシド)。ヘテロアリール基の例としては、例えば、以下に示す5員又は6員の単環式及び5〜6員の二環式環系が挙げられる:
【化2】
(式中、TはO、S、NH、N−アルキル、N−アリール、N−(アリールアルキル)(例えば、N−ベンジル)、SiH
2、SiH−(アルキル)、Si(アルキル)
2、SiH−(アリールアルキル)、Si−(アリールアルキル)
2、又はSi(アルキル)(アリールアルキル)である)。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル等が挙げられる。ヘテロアリール基の更なる例としては、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリル、ベンゾチエノピリジル、ベンゾフロピリジル等が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施態様では、ヘテロアリール基は本願明細書で開示されるように置換され得る。
【0018】
クロロ置換又はブロモ置換されたテトラアザピレンは、塩素化剤又は臭素化剤を用いる塩素化又は臭素化によって式(II)のテトラアザピレンから得られる。
【化3】
【0019】
好ましくは、式(I)中のR
5、R
6、R
7及びR
8は水素である。
【0020】
好ましい実施態様の1つでは、R
1、R
2、R
3及びR
4はCl又はBrである。テトラハロゲン化テトラアザペロピレンは、以下の反応スキームによって、塩素化剤としてのN,N’−ジクロロイソシアヌル酸と臭素化剤としてのN,N’−ジブロモイソシアヌル酸を用いて式(II)のテトラアザピレンから得られる:
【化4】
【0021】
臭素化テトラアザペロピレンは、臭素化剤として、濃硫酸中の分子臭素を用いても得られる。
【0022】
FeCl
3及びFeBr
3は、それぞれ、触媒として添加され得る。
【0023】
式(II)の2,7−置換テトラアザピレンは、以下の反応スキームbによって残基R
9又はR
10を有するカルボン酸塩化物と4,9−ジアミノペリレンキノン−3,10−ジイミン(III)とを反応させることによって得られる:
【化5】
【0024】
種々の異なるR
9について式(II)の化合物の合成は、a)T. Riehm, Dissertation, Universitaet Heidelberg, 2008;b)T. Riehm, G. De Paoli, A. E. Konradsson, L. De Cola, H. Wadepohl, L. H. Gade, Chem.-Eur. J. 2007, 13, 7317、及びc)S.C. Martens, T. Riehm, S. Geib, H. Wadepohl及びL.H. Gade, J. Org. Chem. 2011, 76, 609-617に記載されている。
【0025】
好適なカルボン酸無水物は、例えば、1〜6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基を有する、ペンタフルオロ安息香酸クロリド及びペルフルオロアルカンカルボン酸クロリドである。
【0026】
化合物(III)は、a)L. H. Gade, C. H. Galka, K. W. Hellmann, R. M. Williams, L. De Cola, I. J. Scown, M. McPartlin, Chem.-Eur. J. 2002, 8, 3732に記載されるように合成され得る。
【0027】
アリール置換テトラアザピレンは、対応するアリールボロン酸、例えば、フェニルボロン酸を用いて塩素又は臭素の置換によってクロロ又はブロモ置換テトラアザピレンから得られる。
【0028】
本願明細書で開示された化合物が通常の溶媒に溶解するので、本発明は、薄膜半導体、電界効果デバイス、有機発光ダイオード(OLED)、有機光電素子、光検出器、コンデンサ、及びセンサなどの電気機器を製造することに加工上の利点があり得る。本願明細書で使用される化合物は、少なくとも1mgの化合物が1mlの溶媒に溶解できる時に、溶媒に溶解可能であると考えられる。通常の有機溶媒の例としては、石油エーテル;アセトニトリル;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びメシチレン;ケトン、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びt−ブチルメチルエーテル;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール及びイソプロピルアルコール;脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン;アセテート、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、及び酢酸ブチル;アミド、例えば、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド;スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド;ハロゲン化脂肪族及び芳香族炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、エチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼン;及び環状溶剤、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及び2−メチルピロリドン(methypyrrolidone)が挙げられる。
【0029】
従って、本発明は、液体媒体、例えば、有機溶媒、水又はイオン液体、又はそれらの組み合わせに溶解又は分散される本願明細書に開示される1種以上の化合物を含む組成物を更に提供する。幾つかの実施態様では、該組成物は、更に、洗浄剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、保湿剤、消泡剤、湿潤剤、pH調整剤、殺生剤、及び静菌薬から独立して選択される1種以上の添加剤を含み得る。例えば、界面活性剤及び/又は他のポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ−アルファ−メチルスチレン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等)が分散剤、結合剤、相溶化剤、及び/又は消泡剤として含まれ得る。幾つかの実施態様では、かかる組成物は、本願明細書に開示される1種以上の化合物を含んでよく、例えば、本発明の2種以上の異なる化合物が有機溶媒に溶解して堆積用の組成物を製造し得る。ある実施態様では、該組成物は2種以上の位置異性体を含み得る。更に、本願明細書に記載されるデバイスも、1種以上の本発明の化合物、例えば、本願明細書に記載される2種以上の位置異性体を含み得ることが理解されるべきである。
【0030】
多様な堆積技術、例えば、種々の溶液処理技術が有機エレクトロニクスの製造に使用されてきた。例えば、印刷エレクトロニクス技術の多くは、この技術が特徴位置と多層位置合わせを大きく制御するので、主としてインクジェット印刷に焦点を合わせてきた。インクジェット印刷は非接触プロセスであり、これは(接触印刷技術と比較して)予備成形されたマスター、並びにインク噴射のデジタル制御を必要とせず、それによってドロップオンデマンド印刷をもたらす利点がある。マイクロ分配は、別の非接触印刷法である。しかしながら、接触印刷技術は、非常に速いロールツーロール法に良く適しているという重要な利点を有する。例示的な接触印刷技術としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、リソグラフィ印刷、パッド印刷、及びミクロ接触印刷が挙げられるが、これらに限定されない。本願明細書に使用される「印刷」には、例えば、インクジェット印刷、マイクロ分配等の非接触プロセス、及び、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、リソグラフィ印刷、パッド印刷、ミクロ接触印刷等の接触プロセスが含まれる。他の溶液処理技術としては、例えば、スピンコーティング、ドロップキャスト法、ゾーンキャスト法、ディップコーティング、ブレードコーティング、又はスプレーが挙げられる。更に、堆積工程は、真空蒸着によって実施され得る。
【0031】
従って、本発明は、更に半導体材料の製造方法を提供する。本方法は、本願明細書に開示される1種以上の化合物を含む半導体材料(例えば、薄膜半導体)を提供するために、溶媒又は溶媒の混合物などの液体媒体中に溶解又は分散される本願明細書に開示された1種以上の化合物を含む組成物を製造し、該組成物を基材の上に堆積させることを含んでよい。種々の実施態様では、液体媒体は、有機溶媒、無機溶媒、例えば、水、又はそれらの組み合わせであってよい。幾つかの実施態様では、該組成物は、更に、粘度調整剤、洗浄剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、保湿剤、消泡剤、湿潤剤、pH調整剤、殺生剤、及び静菌薬から独立して選択される1種以上の添加剤を含んでよい。例えば、界面活性剤及び/又はポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ−アルファ−メチルスチレン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート等)は、分散剤、結合剤、相溶化剤、及び/又は消泡剤として含まれてよい。幾つかの実施態様では、堆積工程は、インクジェット印刷及び種々の接触印刷技術(例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、パッド印刷、リソグラフィ印刷、フレキソ印刷、及びマイクロコンタクト印刷)を含む、印刷によって実施されてよい。他の実施態様では、堆積工程は、スピンコーティング、ドロップキャスト法、ゾーンキャスト法、ディップコーティング、ブレードコーティング、又はスプレーによって実施されてよい。
【0032】
電子デバイス、光学デバイス、及び光電子デバイス、例えば、電界効果トランジスタ(例えば、薄膜トランジスタ)、光電素子、有機発光ダイオード(OLED)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、相補型インバータ、D型フリップフロップ、整流器、及びリング発振器などの多様な製品、本願明細書に開示される化合物及び半導体材料の使用並びにそれらの製造方法は、本発明の範囲内である。
【0033】
従って、本発明は、本発明の半導体材料、基材成分、及び/又は誘電体成分を有する複合材を含む本願明細書に記載される種々のデバイスなどの製品を提供する。基材成分は、ドープされたシリコン、インジウム錫酸化物(ITO)、ITO被覆ガラス、ITO被覆ポリイミド又は他のプラスチック、単独の又はポリマー若しくは他の基材の上に被覆されたアルミニウム又は他の金属、ドープされたポリチオフェン又は他のポリマー等から選択され得る。誘電体成分は、無機誘電体材料、例えば、種々の酸化物(例えば、SiO
2、Al
2O
3、HfO
2)、種々のポリマー材料(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリハロエチレン、ポリアクリレート)、自己組織化超格子/自己組織化ナノ誘電体(SAS/SAND)材料(例えば、Yoon, M-H.ら, PNAS, 102 (13): 4678-4682 (2005)に記載されており、その全開示は本願明細書に援用されている)、及びハイブリッド有機/無機誘電体材料(例えば、米国特許出願第11/642,504号に記載されており、その全開示が本願明細書に援用されている)から製造され得る。幾つかの実施態様では、誘電体成分は、米国特許出願第11/315,076号、同第60/816,952号、及び同第60/861,308号に記載されており、その全開示は、それぞれ、本願明細書に援用されている。複合材は1つ以上の電気的な接点を含み得る。ソース電極、ドレン電極、ゲート電極に適した材料としては、金属(例えば、Au、Al、Ni、Cu)、透明導電性酸化物(例えば、ITO、IZO、ZITO、GZO、GIO、GITO)、導電ポリマー(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy))が挙げられる。本願明細書に記載される1種以上の複合材が、多様な有機電子デバイス、光学デバイス、及び光電子デバイス、例えば、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、特に、有機電界効果トランジスタ(OFET)、並びにセンサ、コンデンサ、単極回路、相補回路(例えば、インバータ回路)等内に導入され得る。
【0034】
従って、本発明の一態様は、本発明の半導体材料を導入する有機電界効果トランジスタの製造方法に関する。本発明の半導体材料は、トップゲートトップコンタクト型コンデンサ構造、トップゲートボトムコンタクト型コンデンサ構造、ボトムゲートトップコンタクト型構造、及びボトムゲートボトムコンタクト型キャパシタ構造を含む種々の有機電界効果トランジスタを製造するために使用され得る。
【0035】
ある実施態様では、OTFTデバイスは、トップコンタクト構造で、誘電体としてSiO
2を用いて、ドープされたシリコン基材の上に本発明の化合物で製造され得る。特定の実施態様では、本発明の少なくとも1種の化合物を導入する活性な半導体層は、真空蒸着によって、室温で又は高められた温度で堆積され得る。他の実施態様では、本発明の少なくとも1種の化合物を導入する活性な半導体層は、溶液ベースのプロセス、例えば、スピンコーティング又はジェット印刷によって適用され得る。トップコンタクトデバイスの場合、金属接触は、シャドウマスクを用いてフィルムの上にパターン形成され得る。
【0036】
ある実施態様では、OTFTデバイスは、トップゲートボトムコンタクト型の構造で、誘電体としてポリマーを用いて、本発明の化合物でプラスチック箔の上に作製され得る。特定の実施態様では、本発明の少なくとも1種の化合物を導入する活性な半導体層は、室温で又は高められた温度で堆積され得る。他の実施態様では、本発明の少なくとも1種の化合物を導入する活性な半導体層は、本願明細書に記載されるようなスピンコーティング又は印刷によって適用され得る。ゲート及びソース/ドレインコンタクトは、Au、他の金属、又は導電性ポリマーで作られ且つ蒸着及び/又は印刷によって堆積され得る。
【0037】
本発明の化合物が有用である他の製品は、光電装置又は太陽電池である。本発明の化合物は、広い光学吸収及び/又はかなり正にシフトした還元電位を示すので、これらをかかる用途にとって望ましくすることができる。従って、本願明細書に記載される化合物は、p−n接合を形成する隣接するp型半導体材料を含む、光電装置の設計においてn型半導体として使用され得る。これらの化合物は、薄膜半導体の形であってよく、基材の上に堆積される薄膜半導体の複合材であってよい。本発明の化合物のかかるデバイスでの利用は、当業者の知識内である。
【0038】
従って、本発明の別の態様は、本発明の1つ以上の半導体材料を導入する、有機発光トランジスタ、有機発光ダイオード(OLED)又は有機光起電力素子の製造方法に関する。
【0039】
以下の実施例は、更に例示し且つ本発明の理解を容易にするために提供されており、決して本発明を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は基材Aを用いる薄膜誘電体を有するTFTの構造を示す。
【
図2】
図2は基材Bを用いる薄膜誘電体を有するTFTの構造を示す。
【
図3】
図3は、基材Aを有するTFTにおいて、ドレイン電流(A)がゲート−ソース電圧(V)に対してプロットされた、出力特性と伝達曲線を示す。
【
図4】
図4は、基材Aを有するTFTにおいて、電子移動度(cm
2/Vs)がゲート−ソース電圧(V)に対してプロットされた、出力特性と伝達曲線を示す。
【
図5】
図5は、基材Aを有するTFTにおいて、ドレイン電流(A)がドレイン−ソース電圧(V)に対してプロットされた、出力特性と伝達曲線を示す。
【
図6】
図6は、基材Bを有するTFTにおいて、ドレイン電流(A)がゲート−ソース電圧(V)に対してプロットされた、出力特性、伝達曲線及び長期安定性を示す。
【
図7】
図7は、基材Bを有するTFTにおいて、電子移動度(cm
2/Vs)がゲート−ソース電圧(V)に対してプロットされた、出力特性、伝達曲線及び長期安定性を示す。
【
図8】
図8は、基材Bを有するTFTにおいて、ドレイン電流(A)がゲート−ソース電圧(V)に対してプロットされた、出力特性、伝達曲線及び長期安定性を示す。
【
図9】
図9は、基材Bを有するTFTにおいて、電子移動度(cm
2/Vs)が空気に対する曝露(日数)に対してプロットされた、出力特性、伝達曲線及び長期安定性を示す。
【0041】
実施例
実施例1
テトラアザペロピレン(TAPP)及びその2,9−二置換誘導体の合成
【化6】
親化合物、1,3,8,10−テトラアザペロピレンは、触媒量のギ酸の存在下で、DPDIをトリエチルオルトホルメートで処理し、且つ高真空下での昇華によって精製することによって製造した。その元素分析は、C
22H
10N
4の配合と一致している。黄褐色の化合物は、有機溶媒にほんのわずかしか溶解しないが、H
2SO
4には溶解し易い。N−重水素化テトラカチオンの溶液を
1H及び
13C NMR分光法によって特徴付けた。2,9−二置換誘導体は、THF中でトリエチルアミンの存在下で対応するカルボン酸塩化物若しくは無水物(2モル当量)を用いて又は還流下にてニトロベンゼン中で大過剰の酸塩化物又は無水物を用いてDPDIを処理することによって容易に利用できる。
【0042】
実施例2
4,7,11,14−テトラクロロ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化7】
100mg(0.3ミリモル)のテトラアザペロピレンの10ml濃硫酸の溶液に、暗所で360mg(1.8ミリモル)のジクロロイソシアヌル酸を添加し、反応混合物を7日間100℃で撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、氷の上に注いで水性NaOHで中和した。沈殿物を濾過し、水で洗い、溶液が無色になるまでジクロロメタンで繰り返し抽出した。溶媒を真空下で除去し、残留物をTHFから再結晶させ、ペンタンで洗って減圧乾燥した。生成物を、収率16%(23mg、0.05ミリモル)で、黄土色に着色された固体として単離した。
【0043】
実施例3
2,9−二置換テトラアザペロピレンの合成のための一般的な実験手順
濃硫酸中の2,9−二置換テトラアザペロピレンの溶液に、ジクロロイソシアヌル酸(DIC)を添加し、反応混合物を3日間35℃で撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、マゼンタに着色された反応混合物を氷の上に注ぎ、この沈殿を水で洗った。沈殿を、溶液が無色になるまでジクロロメタンで抽出した。溶媒を真空下で除去し、残留物をTHFから再結晶させ、ペンタンで洗って減圧乾燥した。
【0044】
実施例4
2,9−ビス−(トリフルオロメチル)−4,7,11,14−テトラクロロ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化8】
一般式によれば、10mlの濃硫酸中の110mg(0.24ミリモル)の2,9−ビス−(トリフルオロメチル)−1,3,8,10−テトラアザペロピレンを、260mg(1.3モル)のDICと反応させた。生成物が、収率55%(80mg、0.13ミリモル)で橙色の固体として得られた。
【0045】
実施例5
2,9−ビス−(ペンタフルオロエチル)−4,7,11,14−テトラクロロ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化9】
一般的な手順によれば、10ml濃硫酸中の80mg(0.14ミリモル)の2,9−ビス−(ペンタフルオロエチル)−1,3,8,10−テトラアザペロピレンと145mg(0.73ミリモル)のDICとを反応させた。生成物は、収率43%(42mg、0.06ミリモル)で赤色の固体として得られた。
【0046】
実施例6
2,9−ビス−(ヘプタフルオロプロピル)−4,7,11,14−テトラクロロ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化10】
一般的な実験手順によれば、10mlの濃硫酸中の70mg(0.11ミリモル)の2,9−ビス−(ヘプタフルオロプロピル)−4,7,11,14−テトラクロロ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンを、120mg(0.61ミリモル)のDICと反応させた。生成物が、収率66%(55mg、0.07ミリモル)で橙色の固体として得られた。
【0047】
実施例7
2,9−ビス−(ノナフルオロブチル)−4,7,11,14−テトラクロロ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化11】
一般的な実験手順によれば、5mlの濃硫酸中の35mg(0.05ミリモル)の2,9−ビス−(ノナフルオロブチル)−1,3,8,10−テトラアザペロピレンを52mg(0.26ミリモル)のDICと反応させた。生成物が収率40%(18mg、0.02ミリモル)で橙色の固体として得られた。
【0048】
実施例8
2,9−ビス−(ペンタフルオロフェニル)−4,7,11,14−テトラクロロ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化12】
一般的な手順に従って、10mlの濃硫酸中の85mg(0.13ミリモル)の2,9−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−1,3,8,10−テトラアザペロピレンを、260mg(1.3ミリモル)のDICと反応させた。生成物は85%(88mg、0.11ミリモル)の収率で黄色固体として得られた。
【0049】
実施例9
4倍のフェニル置換TAPPの一般的な製造手順:
オーブン乾燥したシュレンク管に100mg(0.1ミリモル)の2,9−ビス−ヘプタフルオロプロピル−4,7,11,14−テトラブロモ−1,3,8,10−テトラアザペロピレン、0.6ミリモルの対応するフェニルボロン酸誘導体、7.3mg(0.01ミリモル)のPd(dppf)Cl
2及び228mg(0.7ミリモル)のCs
2CO
3を装入し、排気して、アルゴンで3回満たした。25mlのabs.1,4−ジオキサンを添加し、得られた混合物を101℃で48時間撹拌した。次に、反応混合物をセライト上に直接分散させ、カラムクロマトグラフィー(ペンタン−酢酸エチル、2:1)によって精製すると、生成物が固体として得られた。
【0050】
実施例9a
2,9−ビス−トリフルオロメチル−4,7,11,14−テトラブロモ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化13】
【0051】
実施例9b
2,9−ビス−ペンタフルオロエチル−4,7,11,14−テトラブロモ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化14】
【0052】
実施例9c
2,9−ビス−ヘプタフルオロプロピル−4,7,11,14−テトラブロモ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化15】
【0053】
実施例10
2,9−ビス−ノナフルオロブチル−4,7,11,14−テトラブロモ−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化16】
【0054】
実施例11
4倍のフェニル置換TAPPの一般的な製造手順:
オーブン乾燥したシュレンク管に100mg(0.1ミリモル)の2,9−ビス−ヘプタフルオロプロピル−4,7,11,14−テトラブロモ−1,3,8,10−テトラアザペロピレン、0.6ミリモルの対応するフェニルボロン酸誘導体、7.3mg(0.01ミリモル)のPd(dppf)Cl
2及び228mg(0.7ミリモル)のCs
2CO
3を装入し、排気して、アルゴンで3回満たした。25mlのabs.1,4−ジオキサンを添加し、得られた混合物を101℃で48時間撹拌した。次に、反応混合物をセライト上に直接分散させ、カラムクロマトグラフィー(ペンタン−酢酸エチル、2:1)によって精製すると、生成物が固体として得られた。
【0055】
実施例11a
2,9−ビス−ヘプタフルオロプロピル−4,7,11,14−テトラ−4−トリフルオロメチルフェニル−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【0056】
実施例12
2,9−ビス−ヘプタフルオロプロピル−4,7,11,14−テトラピレニル−1,3,8,10−テトラアザペロピレンの合成
【化17】
オーブン乾燥したシュレンク管をグローブボックスに入れて、100mg(0.1ミリモル)の2,9−ビス−ヘプタフルオロプロピル−4,7,11,14−テトラブロモ−1,3,8,10−テトラアザペロピレン、200mg(0.8ミリモル)のピレンボロン酸、10mg(0.01ミリモル)のPd
2(dba)
3、2mg(0.015ミリモル)のP(
tBu)
3及び325mg(1.0ミリモル)のCs
2CO
3を装入した。25mlのabs.1,4−ジオキサンを添加し、得られた混合物を101℃で48時間撹拌した。次に、得られた混合物をセライト上に直接分散させ、カラムクロマトグラフィー(ペンタン−酢酸エチル、2:1)によって精製すると、生成物が暗緑色の固体として得られた。
【0057】
実施例13
蒸着OFETの製造
トップコンタクト構造の蒸着OFETの一般的な製造手順
図1は基材Aを用いる薄膜誘電体を有するTFTの構造を示す。
図2は基材Bを用いる薄膜誘電体を有するTFTの構造を示す。
【0058】
高度にドープしたp型シリコン(100)ウェーハ(1)(0.01〜0.02Ω・cm)を基材Aとして使用した。100nm厚さの熱的に成長したSiO
2層(2)(キャパシタンス34nF/cm
2)を有する高度にドープしたp型シリコン(100)ウェーハ(1)(0.005〜0.02Ω・cm)を基材Bとして使用した。
【0059】
基材Aの上に、30nm厚さのアルミニウム(2)の層を、Leybold UNIVEX 300真空蒸着器内で、タングステンワイヤから、2×10
−6ミリバールの圧力で且つ1nm/sの蒸発速度で熱蒸着によって堆積させる。アルミニウム層の表面を、オックスフォード反応性イオンエッチング装置(RIE、酸素流量:30sccm、圧力:10mトール、プラズマ電力:200W、プラズマ持続時間30秒)内で酸素プラズマへの短時間暴露によって酸化させ、次いで基材をホスホン酸の2−プロパノール溶液(1ミリモルのC
14H
29PO(OH)
2[TDPA]の溶液又は1ミリモルのC
7F
15C
11H
22PO(OH)
2[FODPA]の溶液)中に浸し、この溶液中に1時間置いた結果、酸化アルミニウム表面(3a)上にホスホン酸分子の自己組織化単分子膜(SAM)(3b)が形成される。基材を溶液から取出し、純粋な2−プロパノールで濯ぎ、窒素の蒸気中で乾燥させ、100℃の温度でホットプレート上に10分間置いた。基材A上のAlO
x/SAMゲート誘電体の全キャパシタンスは、C
14H
29PO(OH)
2の場合は810nF/cm
2であり、C
7F
15C
11H
22PO(OH)
2の場合は710nF/cm
2である。
【0060】
基材B上に、約8nm厚さのAl
2O
3(3a)の層をCambridge NanoTech Savannah内で原子層堆積によって堆積させる(250℃の基材温度で80サイクル)。酸化アルミニウム層の表面を、オックスフォード反応性イオンエッチング装置(RIE、酸素流量:30sccm、圧力:10ミリトール、プラズマ電力:200W、プラズマ持続時間30秒)内で酸素プラズマに短時間暴露することによって活性化し、次いで基材をホスホン酸の2−プロパノール溶液(1ミリモルのC
14H
29PO(OH)
2[TDPA]の溶液又は1ミリモルのC
7F
15C
11H
22PO(OH)
2[FODPA]の溶液)中に浸し、この溶液中に1時間置いた結果、酸化アルミニウム表面上にホスホン酸分子の自己組織化単分子膜(SAM)(3b)が形成される。基材を溶液から取出し、純粋な2−プロパノールで濯ぎ、窒素の蒸気中で乾燥させて、100℃の温度でホットプレート上に10分間置いた。基材B上のSiO
2/AlO
x/SAMゲート誘電体の全キャパシタンスは32nF/cm
2である(ホスホン酸の選択による)。
【0061】
TDPA処理した基材上の水の接触角は108°であり、FOD−PA処理した基材上では118°である。
【0062】
膜厚30nmの有機半導体(4)を、モリブデンボートから、2×10
−6ミリバールの圧力で、且つ0.3nm/sの蒸発速度で、Leybold UNIVEX 300真空蒸着器内で熱昇華によって蒸着させる。ソース接点とドレイン接点(5)及び(6)の場合、30nmの金がタングステンボートから、2×10
−6ミリバールの圧力で、且つ0.3nm/sの蒸発速度で、Leybold UNIVEX 300真空蒸着器内でシャドウマスクを通して蒸発する。トランジスタは、10〜100μmの範囲のチャネル長(L)と50〜1000μmの範囲のチャネル幅(W)を有する。シリコンウェーハの裏面に接触させるために、ウェーハ(トランジスタのゲート電極の役割もする)の背面をスクラッチして銀インクで被覆する。
【0063】
トランジスタの電気特性を、Agilent 4156C半導体パラメータ分析器を用いてマイクロマニピュレーター6200プローブステーションで測定する。全ての測定を室温にて空気中で行う。トランジスタのソース接点とドレイン接点を、金の接点の頂部に慎重に置くことによって、これらの接点とプローブの針とを接触させる。ゲート電極を、ウェーハが測定の間置かれる金属基材ホルダーを通して接触させる。
【0064】
伝達曲線を得るために、ドレイン−ソース電圧(V
DS)を3V(基材Aの場合)又は40V(基材Bの場合)に保持する。ゲート−ソース電圧V
GSは、0.03Vずつ0〜3Vの媒体速度で(基材A)又は0.4Vずつ0〜40Vの媒体速度で(基材B)掃引して戻る。電荷キャリア移動度は、(l
D)
1/2対V
GSの勾配から飽和レジームで抽出される。
【0065】
出力特性を得るために、ドレイン−ソース電圧(V
DS)を、0.03Vずつ0〜3V(基材A)及び0.4Vずつ0〜40V(基材B)の中速で掃引する一方で、ゲート−ソース電圧V
GSを8つの異なる電圧(例えば、基材Aの場合、0V、0.5V、1V、1.5V、2V、2.5V、3V又は基材Bの場合0V、10V、20V、30V、40V)以下に保持する。結果を表1にまとめる。
【0066】
図3、4、5は、薄いゲート誘電体(基材A)を有するTFTにおける実施例6の化合物の出力特性と伝達曲線を示す。
図3では、ドレイン電流(A)を、ゲート−ソース電圧(V)に対してプロットする。
図4では、電子移動度(cm
2/Vs)を、ゲート−ソース電圧(V)に対してプロットする。ドレイン−ソース電圧は3.0Vであった。
図5では、ドレイン電流(A)をドレイン−ソース電圧(V)に対してプロットする。ゲート−ソース電圧では、3.0V(最上の曲線)、2.7V、2.4V、2.1V及び1.8V(最下の曲線)であった。
【0067】
図6、7、8、9は、薄いゲート誘電体(基材B)を有するTFTにおける、実施例6の化合物の出力特性、伝達曲線及び長期安定性を示す。
図6では、ドレイン電流(A)をゲート−ソース電圧(V)に対してプロットする。
図7では、電子移動度(cm
2/Vs)をゲート−ソース電圧(V)に対してプロットする。ドレイン−ソース電圧は40Vであった。
図8では、ドレイン電流(A)をドレイン−ソース電圧(V)に対してプロットする。ゲートソース電圧は40V(最上の曲線)、35V、30V及び25V(最下の曲線)であった。
図9では、電子移動度(cm
2/Vs)を空気に対する曝露(日数)に対してプロットする。
【0068】
表1は、周囲空気中で測定された、ある基材温度(T
sub)でのSAMに対するC
14H
29PO(OH)
2[TDPA]による薄い(基材A)及び厚い(基材B)ゲート誘電体を有する実施例6、9a、9b及び9cの化合物に関する電界効果移動度(μ)及びオン/オフ比(I
オン/I
オフ)を示す。
【表1】