(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、樹脂コーティング表面の平面度を向上させるとともに、樹脂コーティングの膜厚を均一化することができ、これにより、流体制御弁の閉塞時におけるシール性を向上させるとともに、長期間に亘って耐久性を維持して安定性を向上させることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る弁要素は、弁座面又は当該弁座面に着座する着座面の一方を構成する弁要素であって、前記弁座面又は前記着座面の他方に対向する対向面に形成された凹部と、前記凹部内に形成され、前記弁座面又は前記着座面の他方に接触する樹脂コーティング膜とを有することを特徴とする。
【0009】
このような弁要素であれば、弁要素の対向面に凹部を形成し、当該凹部に樹脂コーティング膜を形成しているので、当該樹脂コーティング膜が前記弁座面又は前記着座面の他方に接触することで、閉塞時におけるシール性を向上させることができる。
また、凹部内に樹脂コーティング膜を形成しているので、当該樹脂コーティング膜の表面を研磨するときに、当該凹部以外の対向面部分が表面研磨のガイドとなり、樹脂コーティング膜の平面度を向上させつつ、当該樹脂コーティング膜の膜厚を均一にすることができる。
さらに、対向面を有する弁要素本体に対して樹脂コーティング膜の膜厚が小さいので、弁要素本体の熱膨張量に対して樹脂コーティング膜の熱膨張量を小さくすることができ、樹脂コーティング膜を形成することによる温度影響を小さくすることができる。
加えて、樹脂コーティング膜によりシール性を確保しているので、当該樹脂コーティング膜に前記弁座面又は前記着座面の他方が接触したときに樹脂コーティング膜の弾性変形量を小さくすることができ、樹脂コーティング膜に形がつきにくく、長期間に亘ってシール性を確保することができる。
以上から、流体制御弁の閉塞時におけるシール性を向上させるとともに、長期間に亘って耐久性を維持して安定性を向上させることができる。
【0010】
前記対向面における前記凹部の周辺部が、前記樹脂コーティング膜の表面研磨における研磨制限ガイド部であることが望ましい。
これならば、研磨制限ガイド部によって、研磨部材を研磨制限ガイド部に押し当てることにより研磨部材の傾きを防止して、樹脂コーティング膜の膜厚を均一することができる。ここで、研磨制限ガイド部が凹部の外周部により構成されていることが望ましい。これならば、仮に研磨制限ガイド部に対して研磨部材の一部が浮いて傾いたとしても、研磨制限ガイド部の内側にある樹脂コーティング膜は、当該研磨制限ガイド部により保護される。また、研磨制限ガイドの外側に樹脂コーティングがされている場合には、当該外側の樹脂コーティング膜が余計に削られることになるが、当該外側の樹脂コーティング部分は弁シールに寄与しないもののため、何ら問題は無い。なお、弁シールに寄与しない余計な樹脂コーティング部分を無くすとともに、研磨制限ガイド部にガイドされた研磨を安定して行うためには、前記研磨制限ガイド部が、前記対向面の最周端部に形成されていることが望ましい。
【0011】
前記対向面が、前記弁要素を駆動するための駆動機構に接触する駆動力作用面を有するものであり、前記駆動力作用面には、樹脂コーティング膜が形成されていないことが望ましい。
これならば、駆動機構によるストローク量をロスなく弁要素に伝達することができるため、シール性を長期間に亘って確保することができるとともに、流量制御を精度良く行うことができる。
なお、駆動力作用面に樹脂コーティング膜が形成されている場合には、駆動機構が駆動力作用面に駆動力を作用させるときに、樹脂コーティング膜が弾性変形して、駆動機構によるストローク量を一部吸収してしまうため、シール性を長期間に亘って確保することが難しく、また、流量制御を精度良く行うことが難しい。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、対向面に凹部を形成して、当該凹部に樹脂コーティング膜を形成しているので、樹脂コーティング表面の平面度を向上させるとともに、樹脂コーティングの膜厚を均一化することができ、これにより、流体制御弁の閉塞時におけるシール性を向上させるとともに、長期間に亘って耐久性を維持して安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下に、本発明に係る弁要素を有する流体制御弁を組み込んだマスフローコントローラ100の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態のマスフローコントローラ100は、半導体製造装置に用いられるものであって、
図1に示すように、測定対象となる例えば半導体プロセスに用いられるガス等の流体が流れる流路51を形成したボディ5と、このボディ5の流路51を流れる流体の流量をセンシングする流量検知機構2と、前記流路51を流れる流体の流量を制御する流体制御弁3と、前記流量検知機構2の出力する測定流量を予め定めた設定流量に近づけるべく流体制御弁3の弁開度を制御する制御部(図示しない)とを具備する。以下に各部を詳述する。
【0016】
前記ボディ5は、前述した流路51が貫通するブロック状をなすものであり、当該流路51の上流端が、上流側ポート5Aとして外部流入配管(図示しない)に接続されるとともに、下流端が下流側ポート5Bとして外部流出配管(図示しない)に接続されている。
【0017】
流量検知機構2としては、熱式、コリオリ式や超音波式など種々考えられるが、ここでは、いわゆる熱式流量検知機構を採用している。この熱式流量検知機構2は、前記流路51を流れる流体のうちの所定割合の流体が導かれるように当該流路51と並列接続した細管21と、この細管21に設けたヒータ24及びその前後に設けた一対の温度センサ22、23とを具備したものである。そして、前記細管21に流体が流れると、二つの温度センサ22、23の間にその質量流量に対応した温度差が生じることから、この温度差に基づいて流量を測定するように構成してある。
【0018】
この実施形態では、前記細管21、ヒータ24、温度センサ22、23及びその周辺の電気回路を収容する長尺状の筐体25を設ける一方、ボディ5の流路51から一対の分岐流路2a、2bを設け、この筐体25を前記ボディ5に取り付けることによって、前記細管21の導入口が上流側の分岐流路2aに接続され、該細管21の導出口が下流側の分岐流路2bに接続されるように構成してある。なお、流量センサはこの方式に限定されるものではない。
【0019】
流体制御弁3は、前記流路51上に設けられたノーマルクローズタイプのもので、前記ボディ5内に収容された一対の弁要素である弁座部材4及び弁体部材6と、前記弁体部材6を駆動して弁開度、すなわち弁座部材4と弁体部材6との離間距離を設定するアクチュエータ7とを備えたものである。
【0020】
弁座部材4は、弁座となるものであり、
図2に示すように、その下面に弁体部材6側に突出した弁座面4aを有する概略回転体形状をなすものであり、その内部には内部流路41が形成されている。本実施形態の内部流路41は、一端が弁座面4aに開口し、他端が弁座部材4の上面に開口する第1の内部流路411と、一端が弁座部材4の上面に開口し、他端が弁座部材4の側周面に開口する第2の内部流路412とからなる。また、第1の内部流路411は、後述するアクチュエータ7の駆動軸(当接軸部722)が挿入されている。ここで、第1の内部流路411の一端開口は、弁座面4aの中央部に開口しており、これにより弁座面4aは、平面視概略円環状をなすものとなる。さらに第1の内部流路411及び第2の内部流路412は、弁座部材4の上面に形成された凹部と当該凹部を塞ぐダイアフラム部材721により形成される空間を介して連通している。なお、内部流路41は、第1の内部流路411及び第2の内部流路412からなる構成に限られず、弁座部材4の内部で連通する構成としても良い。
【0021】
この弁座部材4は、ボディ5に設けた円柱状の収容凹部52に収容されている。この収容凹部52は、ボディ5の流路51を分断するように配置してあり、この収容凹部52によって分断された流路51のうち、上流側の流路(以下、上流側流路とも言う)51(A)が、例えば当該収容凹部52の底面中央部に開口し、この収容凹部52より下流側の流路(以下、下流側流路とも言う)52(B)が、例えばこの収容凹部52の底面周縁部又は側面に開口するように構成してある。
【0022】
そして、弁座部材4を収容凹部52に収容した状態では、当該弁座部材4の外側周面と収容凹部52の内側周面との間に隙間が形成され、ボディ5の下流側流路51(B)が前記内部流路41に収容凹部52の側周面を介して連通することとなる。
【0023】
弁体部材6は、弁体となるものであり、ボディ5の収容凹部52において前記弁座部材4に対向配置されるとともに、収容凹部52の内側周面に接触することなく当該内側周面から所定の間隔を介して配置され、その上面に着座面6aを有する概略回転体形状をなすものである。
【0024】
そして、この弁体部材6は、駆動機構たるアクチュエータ7により駆動力を受けて付勢されて、弁座部材4に接触して上流側流路51(A)及び下流側流路51(B)を遮断する閉状態から、弁座部材4から離間して上流側流路51(A)及び下流側流路51(B)を連通させる開状態に移動する。このように閉状態から開状態に向かう方向、つまり、弁体部材6に対するアクチュエータ7の駆動力の作用方向が開弁方向である。一方、開状態から閉状態に向かう方向、つまり、弁体部材6に対するアクチュエータ7の駆動力の作用方向とは反対方向が閉弁方向である。
【0025】
アクチュエータ7は、例えば、ピエゾ素子を複数枚積層して形成されるピエゾスタック71と、当該ピエゾスタックの伸長により変位する作動体72とを備えたものである。このピエゾスタック71は、前記ケーシング部材73内に収容されており、その先端部が中間接続部材74を介して作動体72に接続してある。本実施形態の作動体72は、ダイアフラム部材721と、当該ダイアフラム部材721の中心に設けられて、前記弁座部材4の中心(第1の内部流路411)を貫通して弁体部材6の上面に当接する当接軸部722とを有する。そして、一定電圧が印加されることによってピエゾスタック71が伸長することで作動体72が弁体部材6を開弁方向に付勢して、弁座面4aが着座面6aから離間して開状態となる。また、一定電圧を下回る電圧であれば、その電圧値に応じた距離だけ弁座面4aと着座面6aとが離間する。そして、この隙間を通じて上流側流路51(A)と下流側流路(B)とが連通する。
【0026】
また、弁体部材6には、当該弁体部材6を閉弁方向に付勢する弁体戻しばね8が接触して設けられている。この弁体戻しばね8により、アクチュエータ7に電圧を印加しないノーマル状態においては、弁体部材6が閉状態となる。
【0027】
この弁体戻しばね8は、ボディ5の収容凹部52内に収容されたばねガイド部材10に支持される板ばねであり、
図2に示すように、弁体部材6の下向き面に接触して設けられている。なお、弁体戻しばね8は、弁体部材6を付勢するものであれば板ばね以外の弾性体を用いても良い。弾性体は弁体部材6を直接的又は間接的に付勢しても良い。
【0028】
ばねガイド部材10は、収容凹部52内にばね8を支持するための、断面凹形の概略回転体形状をなすものであり、その底壁には、収容凹部52の底面に開口する上流側流路51(A)に連通する開口部10xが形成されるとともに、その側周壁の上端部が弁座部材4の周縁部に接触する。そして、その内側周面に前記弁体戻しばね8が設けられている。このように本実施形態では、弁座部材4及びばねガイド部材10により形成される空間内に弁体部材6が収容される構成としている。また、弁体部材6は、ばねガイド部材10の内側周面から所定の間隔を介して配置されており、弁体部材6の外側周面は、当該外側周面に対向するばねガイド部材10の内側周面から離間している。
【0029】
しかして本実施形態の弁要素の一方である弁体部材6は、弁座部材4の弁座面4aに対向する対向面(上面)に凹部61が形成されており、当該凹部61内に弁座部材4の弁座面4aに接触する樹脂コーティング膜62が形成されている。なお、弁体部材6は、耐熱性及び耐食性に優れた材料から形成されており、本実施形態では、ステンレス鋼から形成されている。なお、その他、ハステロイ等の高耐熱耐食合金から形成されるものとしても良い。
【0030】
凹部61は、前記アクチュエータ7の当接軸部722が接触して駆動力を受ける駆動力作用面6bを囲むように形成されており、平面視概略円環形状をなし、断面概略上向きコの字状をなすものである。駆動力作用面6bは、弁体部材6の上面中央部に形成されており、前記当接軸部722との接触面積よりも若干大きくなるように形成されている。このように駆動力作用部6b及び凹部61は、上面において同心円状に形成されている。
【0031】
この凹部61は、弁座面4aに対応した形状を有するものであり、弁体部材6が弁座部材4に着座した状態において弁座面4aの範囲を包含する範囲を有する形状である。また、その凹部61の深さは、例えば50〜150μmである。
【0032】
さらに、凹部61の外周部に形成された凸条部は、研磨制限ガイド部63として機能する。この研磨制限ガイド部63は、対向面(上面)における最周端部に形成された、平面視概略円環形状をなすものである。この研磨制限ガイド部63の上面は、前記駆動力作用面6bと同一平面に位置する。このように凹部61及び研磨制限ガイド部63は、上面において同心円状に形成されている。
【0033】
そして、凹部61に形成される樹脂コーティング膜62は、凹部61内に塗装されて形成されており、その平面視形状は、前記凹部61と同一形状であり、本実施形態では、概略円環形状である。そして、この凹部61に形成された樹脂コーティング膜62に弁座面4a全体が接触する。また、樹脂コーティング膜62の膜厚は、前記凹部61の深さと同じであり、例えば50〜150μmである。このように樹脂コーティング膜62の膜厚が、凹部61の深さと同一であることから、凹部61の外周部の上面と、樹脂コーティング膜62の上面とは同一平面に位置する構成となる。さらに、樹脂コーティング膜62は、耐熱性、耐食性、耐薬品性及び低摩擦特性に優れた例えばフッ素系樹脂を用いて形成されており、本実施形態ではPFA(ポリテトラフルオロエチレン)を用いている。
【0034】
また、本実施形態では、凹部61の内面と樹脂コーティング膜62との接着性を向上させるために、凹部61の内面と樹脂コーティング膜62との間に接着成分を有するプライマー樹脂を介在させている。本実施形態のプライマー樹脂は、接着成分及び例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂を混合したものである。その他、凹部61の底面をブラスト加工等の粗面化処理によって前記接着性を向上させることが考えられる。
【0035】
次に本実施形態の弁体部材6の製造方法について
図4を参照して説明する。
まず、弁体部材6の上面に凹部61を形成する。この形成方法としては、切削加工等の機械加工である。このとき凹部61の底面を、粗面化処理により微小な凹凸形状とすることで、凹部61の内面と樹脂コーティング膜62との接着性を向上させることができる。
【0036】
次に、凹部61を含む弁体部材6の上面全体にプライマー樹脂であるPTFEを塗装して、プライマー層を形成する。その後、そのプライマー層の上面に例えばPFA等のフッ素系樹脂を数回にわたって薄膜コーティング等により塗装し、樹脂コーティング膜62となるトップコート層を形成する。このとき、前記プライマー層及び前記トップコート層の合計膜厚が、前記凹部61の深さ(例えば120μm)以上となるようにする。
【0037】
その後、上面に形成されたプライマー層及びトップコート層を平面ラップング等の研磨処理によって研磨する。このときの研磨量は、例えば50μm程度である。つまり、弁体部材6の上面に形成されたプライマー層及びトップコート層を研磨するだけでなく、弁体部材6の上面に形成された凹部61の内周部(駆動力作用面6bに対応する部分)及び外周部(研磨制限ガイド部63)も併せて研磨する。このような研磨によって、凹部61内にのみ樹脂が残る構成となり、凹部61内に残った樹脂が樹脂コーティング膜62となる。このように凹部61の内周部及び外周部も併せて研磨することによって、凹部61内の樹脂を研磨しすぎることを防止するとともに、凹部61内の樹脂を均一の膜厚に研磨することができる。また、研磨制限ガイド部63が周方向全体に形成されており、この研磨制限ガイド部63も併せて研磨されることから、凹部61内の樹脂を片削りする心配も無い。
【0038】
このように構成した本実施形態のマスフローコントローラ100によれば、弁体部材6の対向面に凹部61を形成し、当該凹部61に樹脂コーティング膜62を形成しているので、当該樹脂コーティング膜62が弁座部材4の弁座面4aに接触することで、閉塞時におけるシール性を向上させて、内部漏れ量を低減することができる。
また、凹部61内に樹脂コーティング膜62を形成しているので、当該樹脂コーティング膜62の表面を研磨するときに、当該凹部61以外の対向面部分(特に研磨制限ガイド部63)が表面研磨を行うためのガイドとなり、樹脂コーティング膜62表面の平面度を確保しつつ、当該樹脂コーティング膜62の膜厚を均一にすることができ、着座面6aを精度の良い平面度とすることができる。
さらに、弁体部材6全体に対して樹脂コーティング膜62の膜厚が小さいので(例えば50〜150μm)、弁体部材6の熱膨張量に対して樹脂コーティング膜62の熱膨張量を小さくすることができ、樹脂コーティング膜62を形成することによる温度影響を小さくすることができる。
加えて、例えば50〜150μmといった薄膜の樹脂コーティング膜62によりシール性を確保しているので、当該樹脂コーティング膜62に弁座部材4の弁座面4aが接触したときに樹脂コーティング膜62の弾性変形量を小さくすることができ、樹脂コーティング膜62に形がつきにくく、長期間に亘ってシール性を確保することができる。
以上から、流体制御弁3の閉塞時におけるシール性を向上させるとともに、長期間に亘って耐久性を維持して安定性を向上させることができる。したがって、マスフローコントローラに組み込んだ場合には、長期に亘って安定かつ高精度な流量コントロールを行うことができる。
【0039】
<実施例>
次に、本発明の流量制御弁と、従来の流量制御弁との性能比較実験の結果を示す。なお、本発明の流量制御弁は前記実施形態の流体制御弁であり、従来の流量制御弁は、弁座部材及び弁体部材の両方が、樹脂コーティングされずに、SUSからなる弁座面とSUSからなる着座面とにより構成されるものである。
【0040】
図5に従来の流量制御弁における出流れ量(内部漏れ量)(Pa・cm
3/sec(He))を示す。また、
図6に本発明の流量制御弁における出流れ量(内部漏れ量)(Pa・cm
3/sec(He))を示す。
図5から分かるように、流量制御弁を使用するに連れて、出流れ量が次第に多くなっていることが分かる。一方で、
図6から分かるように、本発明の流量制御弁においては、使用しても出流れ量が横ばいでほぼ一定であることが分かる。このように、凹部内に樹脂コーティングを施すことによって、出流れ量をほぼ一定に保ち長期的に安定して使用することができる。また、
図5及び
図6を比較すると、凹部内に樹脂コーティングを施すことによって、出流れ量自体も低減させることができることが分かる。
【0041】
次に、本発明の流量制御弁と、従来の流量制御弁とのバルブ昇温特性を
図7に示す。なお、本発明の流量制御弁は前記実施形態の流体制御弁であり、従来の流量制御弁は、弁座部材及び弁体部材の両方が、樹脂コーティングされずに、SUSからなる弁座面とSUSからなる着座面とにより構成されるものである。
【0042】
図7に示すバルブ昇温特性は、周囲温度を変化させたときの初期基準値に対する流量変化率を示すものである。ここで、初期基準値は、周囲温度25℃で、アクチュエータに100V電圧を印加した場合に流れた流量である。
図7に示すように、本発明の流量制御弁は、従来の流量制御弁とほぼ同様の昇温特性を示しており、樹脂コーティング膜を形成することによって、従来の流量制御弁に対して昇温特性が劣化していないことが分かる。
【0043】
なお本発明は前記第1実施形態に限られるものではない。例えば、前記第1実施形態では、弁体部材6が中実形状であったが、
図8及び
図9に示すように、弁体部材6の内部に、一端が下面に開口し、他端が上面に開口する1又は複数の内部流路601を形成したものでも良い。1つの内部流路601を形成した場合には、当該内部流路601の上面における開口は、前記内部流路41の弁座面4aにおける開口とは互いに重ならないようにする。また、複数の内部流路601を形成した場合には、当該複数の内部流路601の上面(着座面6a)における開口は円状に形成されるとともに(
図9参照)、前述した複数の内部流路41の弁座面4aにおける開口とは同心円状に配置されて互いに重ならないようにする。
【0044】
この場合、弁体部材6の上面の各部の配置構成としては、中央部に駆動力作用面6bが形成され、当該駆動力作用面6bを囲むように樹脂コーティング膜62が形成された凹部61が形成され、当該凹部61を囲むように内部流路601の開口形成領域6cが形成され、当該開口形成領域6cを囲むように樹脂コーティング膜62が形成された凹部61が形成され、その凹部61を囲むように研磨制限ガイド部63が形成される。
図9においては、弁座部材4の下面に、同心円状に内側及び外側に内部流路41の開口が形成されているため、これに対応して、弁体部材6の上面に同心円状に内側及び外側に樹脂コーティング膜62が形成された凹部61が形成されている。なお、弁座部材4の内部流路41の開口の配置によって、樹脂コーティング膜62が形成された凹部61の配置態様は種々変更可能である。
【0045】
<第2実施形態>
この第2実施形態に係る流体制御弁3は、ノーマルオープンタイプ(NOタイプ)のものであり、前記第1実施形態とは異なり、弁座部材4と弁体部材6の配置が逆になっている。なお、前記第1実施形態に対応する部材には同一の符号を付している。
【0046】
すなわち、
図10に示すように、アクチュエータ7のダイアフラム部材721が前記実施形態に対応する弁体部材6となり、このダイアフラム部材721よりもボディ5側に弁座部材4が設けられている。弁座部材4は、ボディ5に設けた収容凹部52に嵌め込まれている。この収容凹部52は前記第1実施形態同様、ボディ5の流路51を分断するように配置してある。
【0047】
本実施形態の弁座部材4は、その上面に弁座面4aを有する概略回転体形状をなすものであり、その内部には上流側内部流路413及び下流側内部流路414が形成されている。本実施形態の上流側内部流路413は、一端が弁座面4aに開口し、他端が弁座部材4の下面に開口している。そして、この上流側内部流路413の他端は、収容凹部52の底面に開口する上流側流路51(A)に連通する。また、下流側内部流路414は、一端が弁座部材4の弁座面4a以外の部分に開口し、他端が弁座部材4の下面に開口している。そして、この下流側内部流路414の他端は、収容凹部52の底面に開口する下流側流路51(B)に連通する。
【0048】
そして、アクチュエータ7に電圧を印加しないノーマル状態では、ダイアフラム部材721の着座面6aが弁座部材4の弁座面4aから離間した開状態であり、アクチュエータ7に電圧を印加してこれを伸長させると、ダイアフラム部材721が閉弁方向に移動し、ダイアフラム部材721の着座面6aが弁座部材4の弁座面4aに密着して閉状態となる。
【0049】
そして、特に
図11に示すように、ダイアフラム部材721において、弁座部材4に対向する対向面である下面に凹部61が形成されており、当該凹部61内に弁座部材4の弁座面4aに接触する着座面6aを有する樹脂コーティング膜62が形成されている。
【0050】
本実施形態の弁座面4aは、弁座部材4の中央部に形成された円環形状をなすものであり、前記ダイアフラム部材721に形成された凹部61は、当該弁座面4aを包含する大きさとしている。その他、凹部61の深さ、樹脂コーティング膜62の構成、及び製造方法は前記第1実施形態と同様である。
【0051】
また、この場合の研磨制限ガイド部63は、凹部61の外周部により形成されるものであるが、本実施形態では、ダイアフラム部材721において凹部61が形成された中央部を除く部分が研磨制限ガイド部63となる。さらに、ダイアフラム部材721の周縁部は、ボディ5に取り付ける際にシール部材9が接触するシール部材接触面となる。
【0052】
このように構成した本実施形態の流体制御弁3においても、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は第2実施形態に限られるものではない。例えば前記第2実施形態では、アクチュエータのダイアフラム部材721が弁体部材として機能するものであったが、当該ダイアフラム部材721と弁座部材4との間に、前記ダイアフラム部材721により駆動される弁体部材を設けても良い。この場合であっても、当該弁体部材における弁座部材4との対向面(下面)に樹脂コーティング膜を形成した凹部を設ける。
【0054】
また、前記各実施形態においては、樹脂コーティング膜62が形成された凹部61が弁体部材に設けられた構成について例示したが、弁座部材における弁体部材との対向面に凹部を設け、当該凹部に着座面に接触する樹脂コーティング膜を形成しても良い。
【0055】
さらに、弁要素は、弁体部材全体又は弁座部材全体を構成するものの他、その一部を構成するものであっても良い。つまり、弁体部材が複数の部材からなる場合において、弁要素を着座面を有する部材としても良いし、弁座部材が複数の部材からなる場合において、弁要素を弁座面を有する部材としても良い。
【0056】
前記各実施形態では流量制御弁であったが、ON/OFF開閉弁にも本発明を適用できる。また、アクチュエータはピエゾ式に限らず、電磁コイル等を用いてもよい。さらに、流体制御弁を組み込んだマスフローコントローラに限られず、流体制御弁単体で構成しても良い。その他、流体制御弁として、流体の圧力を制御する圧力制御弁としても良い。
【0057】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。