特許第5985896号(P5985896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5985896ウエーハの加工方法およびレーザー加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985896
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法およびレーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20160823BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20160823BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01L21/78 B
   H01L21/78 C
   B23K26/40
   B23K26/00 M
   B23K26/00 P
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-132976(P2012-132976)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-258253(P2013-258253A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】川合 章仁
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−177763(JP,A)
【文献】 特開2005−109324(JP,A)
【文献】 特開2010−024068(JP,A)
【文献】 特開2012−059986(JP,A)
【文献】 特開2011−187479(JP,A)
【文献】 特開2006−187782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00
B23K 26/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に格子状に形成された複数のストリートによって複数の領域が区画されるとともに該区画された領域にデバイスが形成されたウエーハの内部にストリートに沿って改質層を形成するウエーハの加工方法であって、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段の集光器を介してストリートまたはデバイスが形成されたデバイス領域を囲繞する外周余剰領域の内部に集光点を位置付けて照射し、検査用改質層を形成する検査用改質層形成工程と、
検査用改質層を形成する際の加工送り方向と直交する方向であって、レーザー光線照射手段に対して該集光器を挟んで配設された光線照射手段と受光手段とを備えた改質層確認手段により該検査用改質層が形成されたウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射すると共に、ウエーハの内部に透過して該ウエーハの下面にて反射した光に基づいて改質層の大きさおよび改質層が形成された位置を確認する改質層確認工程と、
該改質層確認工程によって確認された改質層の大きさおよび改質層が形成された位置に基づいて加工条件を設定する加工条件設定工程と、
該加工条件設定工程において設定されたレーザー光線をウエーハの内部に集光点を位置付けてストリートに沿って照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って改質層を形成する改質層形成工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に集光器を介してレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送り方向に加工送りする加工送り手段と、検査用改質層を形成する際の加工送り方向と直交する方向であって、レーザー光線照射手段に対して該集光器を挟んで配設された光線照射手段と受光手段とを備えた改質層確認手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該チャックテーブルに保持されたウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射し、ウエーハの内部に透過して該ウエーハの下面にて反射した光に基づいてウエーハに形成された検査用改質層の大きさおよび該検査用改質層が形成された位置を確認する検査用改質層確認手段を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のウエーハに形成されたストリートに沿ってウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射することによりウエーハの内部にストリートに沿って改質層を形成するウエーハの加工方法およびレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体基板の表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面にフォトダイオード等の受光素子やレーザーダイオード等の発光素子等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々のフォトダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射してウエーハの内部にストリートに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、ウエーハを個々のデバイスに分割する技術が実用化されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、シリコンウエーハに燐やホウ素等の不純物が添加されていると、添加されている不純物の種類、量によってレーザー光線の透過率、屈折率が異なり、同じ厚みのウエーハであっても集光点位置が変化して適正な位置に適正な大きさ(厚み)の改質層を形成することができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ウエーハに添加されている不純物に対応して適正な加工条件で改質層を形成することができるウエーハの加工方法およびレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術的課題を解決するため、本発明によれば、表面に格子状に形成された複数のストリートによって複数の領域が区画されるとともに該区画された領域にデバイスが形成されたウエーハの内部にストリートに沿って改質層を形成するウエーハの加工方法であって、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段の集光器を介してストリートまたはデバイスが形成されたデバイス領域を囲繞する外周余剰領域の内部に集光点を位置付けて照射し、検査用改質層を形成する検査用改質層形成工程と、
検査用改質層を形成する際の加工送り方向と直交する方向であって、レーザー光線照射手段に対して該集光器を挟んで配設された光線照射手段と受光手段とを備えた改質層確認手段により該検査用改質層が形成されたウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射すると共に、ウエーハの内部に透過して該ウエーハの下面にて反射した光に基づいて改質層の大きさおよび改質層が形成された位置を確認する改質層確認工程と、
該改質層確認工程によって確認された改質層の大きさおよび改質層が形成された位置に基づいて加工条件を設定する加工条件設定工程と、
該加工条件設定工程において設定されたレーザー光線をウエーハの内部に集光点を位置付けてストリートに沿って照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って改質層を形成する改質層形成工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に集光器を介してレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送り方向に加工送りする加工送り手段と、検査用改質層を形成する際の加工送り方向と直交する方向であって、レーザー光線照射手段に対して該集光器を挟んで配設された光線照射手段と受光手段とを備えた改質層確認手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該チャックテーブルに保持されたウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射し、ウエーハの内部に透過して該ウエーハの下面にて反射した光に基づいてウエーハに形成された検査用改質層の大きさおよび該検査用改質層が形成された位置を確認する検査用改質層確認手段を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるウエーハの加工方法においては、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段の集光器を介してストリートまたはデバイスが形成されたデバイス領域を囲繞する外周余剰領域の内部に集光点を位置付けて照射し、検査用改質層を形成する検査用改質層形成工程と、
検査用改質層を形成する際の加工送り方向と直交する方向であって、レーザー光線照射手段に対して該集光器を挟んで配設された光線照射手段と受光手段とを備えた改質層確認手段により該検査用改質層が形成されたウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射すると共に、ウエーハの内部に透過して該ウエーハの下面にて反射した光に基づいて改質層の大きさおよび改質層が形成された位置を確認する改質層確認工程と、
該改質層確認工程によって確認された改質層の大きさおよび改質層が形成された位置に基づいて加工条件を設定する加工条件設定工程と、
該加工条件設定工程において設定されたレーザー光線をウエーハの内部に集光点を位置付けてストリートに沿って照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って改質層を形成する改質層形成工程と、を含んでいるので、ウエーハに添加されている不純物に対応して適正な加工条件で改質層を形成することができる。
【0010】
また、本発明によるレーザー加工装置は、チャックテーブルに保持されたウエーハに対して透過性を有する波長の光を照射し、ウエーハの内部に透過して該ウエーハの下面にて反射した光に基づいてウエーハに形成された検査用改質層の大きさおよび該検査用改質層が形成された位置を確認する検査用改質層確認手段を具備しているので、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を内部に集光点を位置付けて照射して検査用改質層を形成し、この検査用改質層の大きさおよび改質層が形成された位置を改質層確認手段によって確認することによって、ウエーハに適した加工条件を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段のブロック構成図。
図3図1に示すレーザー加工装置に装備される加工ヘッドおよび改質層確認手段を示す斜視図。
図4図3に示す改質層確認手段を構成する光線照射手段および受光手段と被加工物との位置関係を示す説明図。
図5図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
図6図1に示すレーザー加工装置によって加工される被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
図7】本発明によるウエーハの加工方法における検査用改質層形成工程の説明図。
図8】本発明によるウエーハの加工方法における改質層確認工程の説明図。
図9図8に示す改質層確認工程によって表示装置に表示される検査用改質層の説明図。
図10】本発明によるウエーハの加工方法における改質層形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるウエーハの加工方法およびレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0014】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円形形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0015】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にX軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0016】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0017】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられた加工手段としてのレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す方向に移動可能に支持される。
【0019】
図示のレーザー光線照射手段52は、上記ユニットホルダ51に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング53を具備している。また、レーザー光線照射手段52は、図2に示すようにケーシング53内に配設されたパルスレーザー光線発振手段54と、該パルスレーザー光線発振手段54によって発振されたパルスレーザー光線の出力を調整する出力調整手段55と、ケーシング53の先端に配設されパルスレーザー光線発振手段54によって発振され出力調整手段55によって出力が調整されたパルスレーザー光線を上記チャックテーブル36に保持された被加工物に照射する加工ヘッド56を具備している。パルスレーザー光線発振手段54は、パルスレーザー光線発振器541と、これに付設された繰り返し周波数設定手段542とから構成されている。出力調整手段55は、パルスレーザー光線発振手段54によって発振されたパルスレーザー光線の出力を後述する制御手段からの制御信号に基づいて制御する。
【0020】
上記加工ヘッド56は、方向変換ミラー手段561と、該方向変換ミラー手段561の下部に装着された集光器562とからなっている。方向変換ミラー手段561は、ミラーケース561aと、該ミラーケース561a内に配設された方向変換ミラー561bを含んでいる。方向変換ミラー561bは、図2に示すように上記パルスレーザー光線発振手段54から発振され出力調整手段55によって出力が調整されたパルスレーザー光線を下方即ち集光器562に向けて方向変換する。集光器562は、集光器ケース562aと、該集光器ケース562a内に配設された集光レンズ562bとから構成されている。
【0021】
上記パルスレーザー光線発振手段54から発振され出力調整手段55によって出力が調整されたパルスレーザー光線は、方向変換ミラー561bによって90度方向変換されて集光器562に至り、集光器562の集光レンズ562bを通して上記チャックテーブル36に保持される被加工物に所定の集光スポット径で照射される。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、チャックテーブル36に保持された被加工物であるウエーハに対して透過性を有する光を照射し、ウエーハの内部に透過して反射した光に基づいてウエーハに形成された改質層の大きさまたは改質層が形成された位置を確認する改質層確認手段6を具備している。改質層確認手段6について、図3および図4を参照して説明する。図示の実施形態における改質層確認手段6は、図3に示すようにU字状に形成された枠体61を具備しており、この枠体61が支持ブラケット60を介して上記レーザー光線照射手段52のケーシング53に取り付けられている。枠体61には、上記集光器562を挟んで光線照射手段62と受光手段63が矢印Yで示す方向に対向して配設されている。また、図示の実施形態における改質層確認手段6は、上記光線照射手段62および受光手段63の傾斜角度を調整するための角度調整ツマミ62aおよび63aを備えている。この角度調整ツマミ62aおよび63aを回動することにより、図4に示す光線照射手段62から照射される光線の入射角θおよび受光手段63の受光角θを調整することができる。
【0023】
上記光線照射手段62は、図示の実施形態においては被加工物であるシリコンウエーハに対して透過性を有する波長の光線を照射するように構成されている。図示の実施形態においては、光線照射手段62は単一波長レーザー光線をスポット径400μmで照射する波長1.3μmLDまたは波長1.5μmLDの光源を備えている。このように構成された光線照射手段62は、図4で示すようにチャックテーブル36に保持された被加工物であるウエーハ10の照射面(上面)に対して所定の入射角θ(10〜45度)をもって赤外レーザー光線を照射する。
【0024】
上記受光手段63は、赤外線撮像素子(赤外線CCD)を備えており、受光面が図4で示すようにチャックテーブル36に保持されたウエーハ10の照射面(上面)に対して上記入射角θと同じ受光角θをもって配設されている。従って、上記光線照射手段62から照射された赤外レーザー光線は、被加工物であるウエーハ10の内部に透過し界面(下面)で反射して受光手段63によって受光される。このようにして光線照射手段62から照射された赤外レーザー光線の反射光を受光した受光手段63は、受光した光度に対応した電気信号を出力する。この受光手段63から出力された電気信号は、後述する制御手段に送られる。
【0025】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング53の前端部には、上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段7が配設されている。この撮像手段7は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0026】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、図5に示す制御手段8を具備している。制御手段8は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、入力インターフェース84および出力インターフェース85とを備えている。このように構成された制御手段8の入力インターフェース84には、上記改質層確認手段6を構成する受光手段63、撮像手段7、入力手段87等からの検出信号が入力される。また、出力インターフェース85からは、上記加工送り手段37のパルスモータ372、第1の割り出し送り手段38のパルスモータ382、第2の割り出し送り手段43のパルスモータ432、レーザー光線照射手段52のパルスレーザー光線発振手段54および出力調整手段55、集光点位置調整手段57のパルスモータ572、改質層確認手段6を構成する光線照射手段62、表示手段88等に制御信号を出力する。
【0027】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は以上のように構成されており、以下レーザー加工装置1を用いて実施するウエーハの加工方法について説明する。
図6には被加工物としての半導体ウエーハ10の斜視図が示されている。図6に示す半導体ウエーハ10は、シリコンウエーハからなっており、その表面10aに格子状に配列された複数のストリート101によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように構成された半導体ウエーハ10は、デバイス102が形成されているデバイス領域103と、該デバイス領域103を囲繞する外周余剰領域104を備えている。なお、シリコンウエーハからなる半導体ウエーハ10には燐やホウ素等の不純物が添加されている。
【0028】
上述したレーザー加工装置1を用い、上記半導体ウエーハ10の内部にストリート101に沿って改質層を形成するウエーハの加工方法について説明する。
先ず上述したレーザー加工装置1のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10を表面10a側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動してチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10を吸着保持する。従って、チャックテーブル36上に吸引保持された半導体ウエーハ10は、裏面10bが上側となる。このように、チャックテーブル36上に半導体ウエーハ10を吸着保持したならば、加工送り手段37を作動して半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36を撮像手段7の直下に位置付ける。
【0029】
チャックテーブル36が撮像手段7の直下に位置付けられると、撮像手段7および制御手段8によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段7および制御手段8は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されているストリート101と、該ストリート101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器562との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ10に形成されている複数のストリート101と直交する方向に形成されている複数のストリート101に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10の複数のストリート101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段7が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かしてストリート101を撮像することができる。
【0030】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持された半導体ウエーハ10に形成されているストリート101を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、加工送り手段37を作動して半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36をレーザー光線照射手段52の集光器562が位置するレーザー光線照射領域に移動し、図7の(a)に示すようにチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10の外周余剰領域104を集光器562の直下に位置付ける。そして、集光器562から照射されるパルスレーザー光線の集光点P1を半導体ウエーハ10の内部における所定位置に合わせる。そして、集光器562から半導体ウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射する。この結果、半導体ウエーハ10の外周余剰領域104における内部には、図7の(b)に示すように検査用改質層110が形成される(検査用改質層形成工程)。この検査用改質層110は、溶融再固化層として形成される。なお、検査用改質層形成工程は、ストリート101が位置する内部に改質層を形成してもよい。
【0031】
上記検査用改質層形成工程において照射するパルスレーザー光線の加工条件は、例えば純粋なシリコン基板に対して所定の位置に所定の大きさ(厚み)の改質層を形成する条件で、例えば次のように設定されている。
波長 :1300nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :90kHz
平均出力 :1W
パルス幅 :10ps
集光スポット径 :φ1μm
集光点位置 :照射面(上面)からL1μm
【0032】
上述したように検査用改質層110を形成する検査用改質層形成工程を実施したならば、検査用改質層110の大きさ(厚み)および改質層が形成された位置を確認する改質層確認工程を実施する。
改質層確認工程は、図8に示すように光線照射手段62から赤外レーザー光線621をチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10に向けて所定の入射角θをもって照射する。光線照射手段62から照射された赤外レーザー光線621は、図8に示すように半導体ウエーハ10の照射面(上面)から内部に透過し界面(下面)で反射し、反射光622が半導体ウエーハ10の内部を通って照射面(上面)から所定の反射角θをもって受光手段63の受光面に向けて出ていく。この反射光622が受光手段63によって受光される。しかるに、半導体ウエーハ10の内部に形成された検査用改質層110を通過する反射光622aは、回析する。即ち、検査用改質層110は上述したように溶融再固化層となっているので、他の部分と結晶構造が異なっており光が回析する。従って、検査用改質層110を通過する反射光622aは受光手段63によって受光されない領域が生じ、受光手段63は図8において一点鎖線で示す範囲が受光しない。このようにして、受光手段63によって受光した光は電気信号に変換されて制御手段8に送られる。制御手段8は、受光手段63から送られた電気信号に基づいて画像処理を行い表示手段88にその画像を表示する。即ち、制御手段8は、図9に示すように検査用改質層110の厚み(t)、半導体ウエーハ10の照射面(上面)である裏面10bから検査用改質層110までの距離(L)を表示手段88に表示する。従って、上記検査用改質層形成工程において形成された検査用改質層110の大きさ(厚み)および検査用改質層110が形成された位置を確認することができる。
【0033】
このように上記検査用改質層形成工程において形成された検査用改質層110の大きさ(厚み)および検査用改質層110が形成された位置を確認することにより、上記加工条件との関係を把握することができる。この検査用改質層110と上記加工条件との関係から実際に加工したい改質層の厚み(大きさ)を検査用改質層110の厚み(t)より例えば5μm厚くするとともに改質層の位置を半導体ウエーハ10の照射面(上面)である裏面10b側に5μm移動させたい場合には、後述する改質層形成工程における加工条件を例えば次のように設定する(加工条件設定工程)。
改質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定される。
波長 :1300nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :90kHz
平均出力 :(1+α)W
パルス幅 :10ps
集光スポット径 :φ1μm
集光点位置 :照射面(上面)から(L1−β)μm
加工送り速度 :100mm/秒
このように設定された加工条件は、入力手段87によって入力され、制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納される。
【0034】
上述したように加工条件設定工程を実施したならば、加工条件設定工程において設定されたレーザー光線を半導体ウエーハ10の内部に集光点を位置付けてストリート101に沿って照射し、半導体ウエーハ10の内部にストリート101に沿って改質層を形成する改質層形成工程を実施する。
改質層形成工程を実施するには、図10の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線照射手段52の集光器562が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート101の一端(図10の(a)において左端)をレーザー光線照射手段52の集光器562の直下に位置付ける。そして、集光器562から上記加工条件で設定されたパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図10の(a)において矢印X1で示す方向に100mm/秒の加工送り速度で移動せしめる。そして、図10の(b)で示すようにレーザー光線照射手段52の集光器562の照射位置がストリート101の他端(図10の(b)において右端)の位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、半導体ウエーハ10の内部には、図10の(b)に示すように改質層111が形成される。このように形成された改質層111は、半導体ウエーハ10に添加されている燐やホウ素等の不純物の量に対応して設定された厚み(大きさ)で所定位置に形成される。
【0035】
以上のようにして内部にストリート101に沿って改質層111が形成された半導体ウエーハ10は、外力を付与することにより改質層111が形成されることによって強度が低下せしめられたストリート101に沿って個々のデバイスに分割する分割工程に送られる。
【符号の説明】
【0036】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
31:案内レール
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
41:案内レール
42:可動支持基台
5:レーザー光線照射ユニット
52:レーザー光線照射手段
54:パルスレーザー光線発振手段
55:出力調整手段
56:加工ヘッド
562:集光器
57:集光点位置調整手段
6:改質層確認手段
62:光線照射手段
63:受光手段
7:撮像手段
8:制御手段
10:半導体ウエーハ
図1
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