(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、シランカップリング剤は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体層と第二の樹脂層との層間接着に用いられることが多く、エチレン−ビニルアルコール系共重合体自体の改質においては、シランカップリング剤の化学安定性や反応中のゲル化などが問題となり、アミノ基を多量変性することは難しい。
【0010】
また、特許文献2では、この場合は末端のみにアミノ基が導入されていることから、所望の反応性を得ることは難しい。
また、特許文献3では、4級アンモニウム基が導入されることから、所望の反応性は得られず、また溶融時にゲル化するなど、官能基導入後の成形性も著しく低下するという問題を抱えていた。
【0011】
さらに、特許文献4では、成形された重合体に対して放射線を照射してグラフト重合体を行うため、重合体の形状によってはグラフト率が均一にならず、所望の反応性が得られない場合がある。さらに実施例で用いられているグラフト鎖を導入されたポリプロピレンは、放射線照射下で崩壊型を示すため、得られたグラフト共重合体の成形性が著しく劣るといった欠点をも抱えていた。
【0012】
従って、本発明の目的は、アミノ基が側鎖に導入された化学反応性に富む新規なエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体、その製造方法、および該グラフト共重合体を用いた金属イオン吸着材料および接着材料を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、溶融成形性に優れるエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体、その製造方法、および該グラフト共重合体を用いた金属イオン吸着材料および接着材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して、特定のN−ビニルカルボン酸アミドをグラフト重合させ、それを加水分解すると、アミノ基を有するグラフト鎖を多量にエチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して導入することが可能であることを見出し、さらに該重合体を用いた金属回収材料が、優れた金属イオン吸着性能を発現すること、また該重合体が優れた接着特性を発現することを見出し、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる主鎖と、この主鎖に結合したグラフト鎖とで構成されたエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であって、グラフト鎖が、下記一般式(1)で示される構造単位を含む、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体である。
【0016】
【化1】
【0017】
式(1)中、R1は水素原子または炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖アルキル鎖(好ましくは水素原子または炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖アルキル鎖);nは1以上の整数を表す。)
【0018】
グラフト重合性を向上させる観点から、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体のエチレン含有量は、例えば、30モル%〜60モル%であってもよい。
【0019】
また、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体中の全構造単位を100モル%とした場合、一般式(1)で示される構造単位を1〜80モル%含んでいてもよい。
【0020】
前記エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体が溶融成形に優れる場合、そのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、例えば、0.1g/分以上であってもよい。
【0021】
また、本発明は、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を製造する方法についても包含し、前記方法は、
エチレン−ビニルアルコール系共重合体を準備する工程と、
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して、下記一般式(2)で示される構造単位のグラフト鎖を導入するグラフト鎖導入工程と、
前記一般式(2)で示される構造単位のグラフト鎖を有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を加水分解する加水分解工程と、
を備えている。
【0022】
【化2】
【0023】
(式(2)中、R1は水素原子または炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖アルキル鎖;R2は水素原子または炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖アルキル鎖;nは1以上の整数を表す。)
【0024】
前記製造方法において、グラフト鎖導入工程は、
エチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して、電離放射線を照射する照射工程と、
前記照射されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体と不飽和単量体と接触させてグラフト鎖を導入する工程と、を備えていてもよい。
【0025】
また、本発明は、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を含む、接着材料、樹脂積層体、金属イオン吸着材についても包含する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して、アミノ基を有するグラフト鎖を多量に導入することが可能であるため、化学反応性に優れており、そのような反応性を利用して、例えば、液中の金属イオンを吸着する金属回収材料や、接着材料などとして利用することができる。
【0027】
特に、本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、溶融成形可能であるため、一旦グラフト重合を行った後に、所望の形状に加工することが可能である。
【0028】
また、本発明のグラフト共重合体の製造方法では、上記のような優れた性能を有するグラフト共重合体を、効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、以降は特に断りのない限り、グラフト鎖を導入する前の状態をエチレン−ビニルアルコール系共重合体、グラフト鎖を導入した後の状態をエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体、と表現する。
【0030】
(エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体)
本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる主鎖と、この主鎖に結合したグラフト鎖とで構成されたエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であって、グラフト鎖が、下記一般式(1)で示される構造単位を含む、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体である。
【0032】
(式(1)中、R1は水素原子または炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖アルキル鎖;nは1以上の整数を表す。)
【0033】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、上記式(1)に示される構造単位をグラフト鎖として有する。繰り返し単位中にアミノ基を有するため、本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は反応性が高い。
【0034】
反応性の観点から、式(1)において、R1は水素原子または炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖アルキル鎖であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。また、Xは直接結合、または炭素数1〜3の直鎖アルキレン基であることが好ましく、直接結合であることがより好ましい。また、グラフト鎖において、繰り返し単位を表わすnは1以上であればよいが、アミノ基を多量に変性可能である観点から、nは2以上であるのが好ましい。
【0035】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体における、式(1)に示される構造単位の含有率は特に限定されないが、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体中の全構造単位を100モル%として、好ましくは1〜80モル%、より好ましくは5〜70モル%、さらに好ましくは10〜65モル%である。1モル%未満の場合は、十分な反応性が得られない場合がある。80モル%を超える場合は、加水分解時の樹脂膨潤が激しく、単離が困難な場合がある。
【0036】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、吸着剤、抽出剤、界面活性剤、架橋剤、酸化防止剤、光安定化剤、等の他成分を含んでいてもよい。
【0037】
(グラフト共重合体の製造方法)
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の製造方法は、
エチレン−ビニルアルコール系共重合体を準備する工程と、
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して、下記一般式(2)で示される構造単位のグラフト鎖を導入するグラフト鎖導入工程と、
前記一般式(2)で示される構造単位のグラフト鎖を有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を加水分解する加水分解工程と、
を備えている。
【0039】
(式(2)中、R1は水素原子または炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖アルキル鎖;R2は水素原子または炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖アルキル鎖;nは1以上の整数を表す。)
【0040】
(エチレン−ビニルアルコール系共重合体の準備工程)
本発明のグラフト共重合体の基材として用いられるエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、上記の性質を有するグラフト共重合体を得ることができる限り特に限定されないが、例えば、そのエチレン含有量は、30〜60モル%程度であってもよく、40〜50モル%程度が好ましい。エチレン含量が30モル%未満の場合、グラフト重合時の反応性が低下する虞がある。一方、エチレン含量が60モル%を越えると製造が難しく入手が困難である。
【0041】
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のけん化度は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99.5モル%以上が特に好ましい。けん化度が90モル%未満の場合、成形性が悪くなる虞がある。
【0042】
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)についても特に限定されないが、0.1g/分以上が好ましく、0.5g/分以上がより好ましい。0.1g/分未満の場合、強度が低下する虞がある。なお、メルトフローレートの上限は通常用いられる範囲であればよく、例えば、25g/分以下であってもよい。
【0043】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で別の不飽和単量体単位を含んでいてもよい。該不飽和単量体単位の含量は、10モル%以下であることが好ましく、5%モル以下であることがより好ましい。
このようなエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
グラフト重合に用いるエチレン−ビニルアルコール系重合体の形態としては、特に限定されないが、グラフト率を向上させる観点から、粒子状であることが好ましい。粒子状である場合、適宜粉砕などにより目的の粒子径の粒子を用いることができるが、平均粒子径としては10μm〜2000μmであることが好ましく、30μm〜1500μmがさらに好ましく、40μm〜1000μmが最も好ましい。平均粒子径が10μm以下の場合、微粉が舞い易いなど取り扱いが難しい。平均粒子径が2000μm以上の場合、グラフト率が上がらず目的の化学反応性を充分に得られないことがある。
【0045】
(グラフト鎖導入工程)
上記のエチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して、一般式(2)で示される構造単位のグラフト鎖を導入する導入工程では、種々の公知の方法が利用可能であり、そのような方法としては、例えば、重合開始剤を用いたラジカル重合を利用してグラフト鎖を導入する方法、電離放射線を用いてラジカルを発生させ、グラフト鎖を導入する方法などが挙げられる。これらのうち、グラフト鎖の導入効率が高い観点から、電離放射線を用いて、グラフト鎖を導入する方法が好ましく用いられる。
【0046】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体をグラフト重合させる際に用いる電離放射線としては、α線、β線、γ線、加速電子線、紫外線などがあるが、実用的には加速電子線またはγ線が好ましい。
【0047】
電離放射線を照射する線量としては、特に限定されないが、5〜230kGyが好ましく、10〜190kGyがより好ましく、15〜140kGyがさらに好ましい。20〜90kGyが最も好ましい。5kGy未満の場合、線量が少な過ぎるためグラフト率が低下し目的のグラフト共重合体が得られないことがある。230kGy以上の場合、処理工程にコストがかかる、照射時に樹脂が劣化する懸念がある。
【0048】
電離放射線を照射するエチレン−ビニルアルコール系共重合体の形態としては特に限定されず、粒子、もしくはペレット、繊維、シート、フィルムなど、予め溶融成形加工された状態であってもよい。
【0049】
電離放射線を用いて、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に不飽和単量体をグラフト重合させる方法としては、該重合体と不飽和単量体の共存下、電離放射線を照射する同時照射法と、該重合体のみに予め電離放射線を照射した後、不飽和単量体と該重合体とを接触させる前照射法のいずれでも可能であるが、前照射法がグラフト重合以外の副反応を生成しにくい特徴を有する。
【0050】
グラフト重合の際に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と、液状の不飽和単量体あるいは不飽和単量体の溶液と直接接触させる液相重合法が好適に用いられる。不飽和単量体の溶液を調製する際の溶媒は特に限定されず、不飽和単量体の溶解性に合わせて適宜変更できる。
【0051】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール類;テトラヒドロフラン;ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;水等が挙げられる。中でも、エチレン−ビニルアルコール系重合体の溶剤親和性の観点から、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類が好ましい。
【0052】
なお、溶液の濃度は特に限定されないが、不飽和単量体の含有量が10〜70質量%であることが好ましい。10質量%以下の場合は、十分な付加量が得られない。また、70質量%を超える場合は、選定する溶媒にもよるが、樹脂膨潤により単離困難な場合がある。また、反応温度は50℃以上に設定することが好ましい。好適には70℃以上である。
【0053】
グラフト鎖として導入される下記式(2)に示される構造単位は、グラフト鎖として導入した後、アミド構造を加水分解によって開裂させることでアミノ基を誘導することができる。
【0055】
式(2)中、R1およびnは式(1)と同義であり、R2は水素原子または炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖アルキル鎖である。加水分解の容易さの観点から、R2は水素原子であることが好ましい。
【0056】
グラフト重合によって式(2)の単位構造を与える不飽和単量体としては、下記式(3)で示されるN−ビニルカルボン酸アミド類が挙げられる。
【0058】
式(3)中、R1、R2およびnは式(2)と同義である。一般式(3)で表わされる不飽和単量体は、単独で、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記式(3)で表わされる化合物のうち、好ましい不飽和単量体としては、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−エチル−N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルホルムアミド類;N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−エチル−N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアセトアミド類;N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミドなどのN−ビニルアセトアミド類、N−ビニルブチルアミドなどが挙げられる。中でも、加水分解の容易さの観点から、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミドが好ましく、N−ビニルホルムアミドがより好ましい。
【0060】
(加水分解工程)
本発明の実施の形態に係るエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の製造方法において、グラフト重合後に不飽和単量体由来の単位構造を加水分解させる方法としては、酸性加水分解、塩基性加水分解いずれも適用できる。酸性加水分解を行う場合は、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、トリフルオロ酢酸等の酸触媒が使用できる。塩基性加水分解を行う場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基触媒が使用できる。但し、酸性加水分解の場合は、加水分解後、グラフト鎖に導入されたアミノ基と酸触媒が塩を形成してしまうことから、塩基性加水分解がより好適に用いられる。
【0061】
加水分解の工程における前述の触媒添加量は、グラフト鎖に導入された単位構造に対して1〜50モル等量が好ましく、2〜20モル等量がより好ましく、5〜15モル等量がさらに好ましい。1モル%未満の場合はアミドを完全に加水分解させることが難しい。50モル等量を超える場合は、加水分解後触媒の除去が困難である。加水分解させる場合の溶媒は、水、水とメタノール、エタノール等の低級アルコールの混合溶媒が用いられる。また、低級アルコールのみで加メタノール分解させることも可能である。加水分解時の反応温度は、40〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
【0062】
また、アミドを加水分解させる場合には、ゲル化防止剤として塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等のゲル化防止剤を添加することもできる。添加量は、グラフト鎖に導入された単位構造に対して0.2モル等量以上が好ましい。0.2モル等量未満の場合は、ゲル化を十分に抑制できない場合がある。好ましくは0.5モル等量以上、より好ましくは1モル等量以上である。
【0063】
このようにして、加水分解することにより、グラフト鎖として導入された上記式(2)に示される構造単位を開裂させ、上記式(1)で示される構造単位をグラフト鎖に含むエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を製造することができる。
【0064】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、成形体、塗料、接着剤等の広範な用途に使用できる。成形体としては、食品、医薬品、化粧品などの包装材料として利用できる。特に、本発明のグラフト共重合体が溶融成形可能である場合、一旦グラフト重合を行った後に、所望の形状へ成形することが可能である。その形状は、グラフト共重合体の適用箇所に応じて、繊維やその集合である織布や不織布、粒子、シート、フィルムあるいはそれらの加工品など各種の形状から選択することができる。
【0065】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体が溶融成形性を有する場合、例えば、そのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)が0.1g/分以上であってもよく、0.5g/分以上がより好ましい。0.1g/分未満の場合、成形体の強度が低下する。なお、メルトフローレートの上限は、例えば、25g/分以下であってもよい。メルトフローレートは、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
【0066】
(接着材料)
溶融成形可能であるエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、接着材料としても利用可能であり、接着材料として用いた場合、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルとその共重合体、6−ナイロン、6,6−ナイロンなどのポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどの各種熱可塑性樹脂に対する接着材料として利用することが可能である。
【0067】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、特に、グラフト鎖にアミノ基を有していることから、例えば、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、酸無水物が導入された変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂との積層体において高い層間接着力を発現することができる。
【0068】
(樹脂積層体)
また、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、樹脂で形成された積層体の材料として利用することが可能である。このような樹脂積層体は、前記樹脂で形成された樹脂シート(または樹脂フィルム)と、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体から形成されたシート(またはフィルム)とが直接積層された樹脂積層体であってもよい。または、一般のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を主成分として、本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を副成分として含む混合物から形成されたシート(またはフィルム)と、前記樹脂で形成された樹脂シート(または樹脂フィルム)とが積層された樹脂積層体であってもよい。
【0069】
エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を含む樹脂積層体は、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の溶融成形性を利用して、押出成形、射出成形等の公知の方法などにより製造することが可能である。例えば、押出成形方法としては、多重・複層のT−ダイ押出成形、インフレーション成形、ブロー押出成形、二軸延伸成形等が採用される。また、該積層体は押出ラミネート、ドライラミネート等のラミネート技術やコーティング技術によっても成形可能である。
【0070】
(金属イオン吸着材)
さらに、本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、グラフト鎖に導入したアミノ基の反応性を活かし、金属イオン吸着材としても好適に利用することができる。金属イオン吸着材として加工する方法としては、予めエチレン−ビニルアルコール系共重合体を所望の形状に加工した後、グラフト重合、加水分解の工程を経て、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の金属イオン吸着材を作製する方法と、グラフト重合、加水分解の工程を経て合成したエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を所望の形状に成形して、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の金属イオン吸着材を作製する方法が挙げられる。
【0071】
しかし、前者の手法では、グラフト重合層を均質に形成することが難しく、成形体を所望の形状範囲に制御することが難しい。一方、本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、成形性にも優れることから、グラフト重合後の成形加工が容易であり、所望の形状範囲で加工することができる。
【0072】
本発明の金属イオン吸着材の形状は、特に限定されず、繊維やその集合である織布や不織布、粒子、シート、フィルムあるいはそれらの加工品など各種の形状で利用することができるが、粒子状であることが好ましい。
【0073】
本発明の金属イオン吸着材を粒子化する方法は、特に限定されないが、例えば、本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の溶融物のストランドをカットして粒子化する方法、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の溶融コンパウンドをそのまま遠心粉砕機、ハンマーミル等で粉砕、微粒子化する方法などが挙げられる。
【0074】
粒子径は10μm〜2000μmが好ましく、30μm〜1500μmがさらに好ましく、40μm〜1000μmが最も好ましい。粒子径が10μm以下の場合、微粉が舞い易いなど取り扱いが難しい。粒子径が2000μm以上の場合、金属イオンの吸着性能が充分に得られないことがある。
【0075】
本発明の金属イオン吸着材は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、架橋剤、無機微粒子、光安定剤、酸化防止剤、などの添加剤を含んでいても良い。
【0076】
(金属イオン回収方法)
本発明の金属イオン吸着材は、各種金属(特に白金族金属)を、簡単な操作で、高効率かつ低コストで金属イオンとして回収することができる。金属イオン回収方法としては、本発明の金属イオン吸着材を用いる限り特に限定されず、金属イオン吸着材の形状に応じてさまざまな回収方法を利用することができる。
【0077】
例えば、金属イオン回収方法は、本発明の金属イオン吸着材と、目的とする金属イオンを含有する金属イオン含有液とを接触させ、前記吸着材に金属イオンを吸着させる吸着工程と、
金属イオンを吸着した吸着材を回収し、前記吸着材と溶離液とを接触させ、吸着材から金属イオンを溶離させる溶離工程とを備えていてもよい。
吸着工程および溶離工程においては、必要に応じて、液体中で吸着材を撹拌してもよい。
【0078】
本発明の金属イオン吸着材の回収対象となる金属としては、特に限定されないが、白金族金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)、金、銀、銅、ニッケル、クロム、バナジウム、コバルト、鉛、亜鉛、水銀、カドミウム等が挙げられ、とりわけ白金族金属、金の回収に好適である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
【0080】
[メルトフローレート(MFR)]
JIS K 7210に準じて、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体のメルトフローレート(g/分)を、温度210℃、荷重2160gで測定した。0.5g/分以上である場合をAとして評価した。
【0081】
[接着性評価]
実施例で得られたプレスフィルムを15mm×15mmにカットした切出片を作製した。次に、15mm×80mmの短冊状にカットした厚み100μmのPETフィルム2枚を、互いの末端15mm×15mmが重なるように、前述の切出片を介して重ね合わせた。該三層フィルムを、210℃で75秒圧着し、PET接着フィルムを作製した。該PET接着フィルムを、株式会社島津製作所製オートグラフ「AG−5000」を用いて、チャック間距離115mm、引張速度100mm/分の速度で引っ張り、接着層が剥れるまでにかかる最大応力を測定した。3回の測定平均値が10kgf/mm
2以上の場合はA、10kgf/mm
2未満の場合はBとした。
【0082】
[金属吸着量]
金属イオン吸着材50mgを白金族金属イオンの濃度が100mg/Lである0.1規定の塩酸溶液200mLに投入し、25℃にて60分間攪拌する。その後、上澄み液1mLをサンプリングし50mLにメスアップした後、ICP発光分析装置(日本ジャーレルアッシュ製、IRIS−AP)にて測定した金属濃度をC(mg/L)とする。以下の式より、金属吸着量を求める。
サンプル1gあたりの金属吸着量(mg/g)=200−C(mg/L)
【0083】
[実施例1]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、E105、エチレン含有量44モル%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径425μm〜710μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に200kGyのγ線を照射し、該粒子を80℃窒素置換したN−ビニルホルムアミド(以下、NVFと表記)の40質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をアセトンで洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を調製した。該粒子の官能基導入量を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で確認したところ、28モル%であった。さらに、該グラフト共重合体50質量部、塩酸ヒドロキシルアミン30質量部を1Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃で3時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、メタノール/アセトン混合溶媒で洗浄することで、目的のアミノ基が導入されたエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を得た。該グラフト共重合体を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で分析したところ、ビニルホルムアミド部位の加水分解率は100%であった。該エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体をラボプラストミルにて、210℃で3分溶融混練し(メルトフローレート:A)、得られたコンパウンドを210℃で150秒プレス成形して、厚み150μmのプレスフィルムを作製した。また、コンパウンドを遠心粉砕機で粉砕し、篩を用いて粒子を212μm〜500μmに分級することで、金属イオン吸着材を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、E105、エチレン含有量44モル%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径80μm〜212μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyのγ線を照射した後、該粒子を80℃窒素置換したNVFの30質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をアセトンで洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を調製した。該粒子の官能基導入量を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で確認したところ、33モル%であった。さらに、該グラフト共重合体50質量部、塩酸ヒドロキシルアミン35質量部を1Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃で3時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、メタノール/アセトン混合溶媒で洗浄することで、目的のアミノ基が導入されたエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を得た。該グラフト共重合体を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で分析したところ、ビニルホルムアミド部位の加水分解率は100%であった。該エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体をラボプラストミルにて、210℃で3分溶融混練し(メルトフローレート:A)、得られたコンパウンドを210℃で150秒プレス成形して、厚み150μmのプレスフィルムを作製した。また、コンパウンドを遠心粉砕機で粉砕し、篩を用いて粒子を212μm〜500μmに分級することで、金属イオン吸着材を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
【0085】
[実施例3]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、E105、エチレン含有量44モル%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径425μm〜710μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に200kGyのγ線を照射した後、該粒子を80℃窒素置換したNVFの60質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をアセトンで洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を調製した。該粒子の官能基導入量を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で確認したところ、45モル%であった。さらに、該グラフト共重合体50質量部、塩酸ヒドロキシルアミン48質量部を1Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃で3時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、メタノール/アセトン混合溶媒で洗浄することで、目的のアミノ基が導入されたエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を得た。該グラフト共重合体を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で分析したところ、ビニルホルムアミド部位の加水分解率は100%であった。該エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体をラボプラストミルにて、210℃で3分溶融混練し(メルトフローレート:A)、得られたコンパウンドを210℃で150秒プレス成形して、厚み150μmのプレスフィルムを作製した。また、コンパウンドを遠心粉砕機で粉砕し、篩を用いて粒子を212μm〜500μmに分級することで、金属イオン吸着材を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
【0086】
[実施例4]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン含有量32モル%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径425μm〜710μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に200kGyのγ線を照射した後、該粒子を80℃窒素置換したNVFの60質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をアセトンで洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を調製した。該粒子の官能基導入量を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で確認したところ、17モル%であった。さらに、該グラフト共重合体50質量部、塩酸ヒドロキシルアミン25質量部を1Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃で3時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、メタノール/アセトン混合溶媒で洗浄することで、目的のアミノ基が導入されたエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を得た。該グラフト共重合体を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で分析したところ、ビニルホルムアミド部位の加水分解率は100%であった。該エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体をラボプラストミルにて、210℃で3分溶融混練し(メルトフローレート:A)、得られたコンパウンドを210℃で150秒プレス成形して、厚み150μmのプレスフィルムを作製した。また、コンパウンドを遠心粉砕機で粉砕し、篩を用いて粒子を212μm〜500μmに分級することで、金属イオン吸着材を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
【0087】
[
参考例5]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、L104、エチレン含有量27モル%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径425μm〜710μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に200kGyのγ線を照射した後、該粒子を80℃窒素置換したNVFの60質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をアセトンで洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を調製した。該粒子の官能基導入量を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で確認したところ、9.4モル%であった。さらに、該グラフト共重合体50質量部、塩酸ヒドロキシルアミン9.5質量部を1Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃で3時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、メタノール/アセトン混合溶媒で洗浄することで、目的のアミノ基が導入されたエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を得た。該グラフト共重合体を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で分析したところ、ビニルホルムアミド部位の加水分解率は100%であった。該エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体をラボプラストミルにて、210℃で3分溶融混練し(メルトフローレート:A)、得られたコンパウンドを210℃で150秒プレス成形して、厚み150μmのプレスフィルムを作製した。また、コンパウンドを遠心粉砕機で粉砕し、篩を用いて粒子を212μm〜500μmに分級することで、金属イオン吸着材を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
【0088】
[実施例6]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、E105、エチレン含有量44モル%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径80μm〜212μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に200kGyのγ線を照射した後、該粒子を80℃窒素置換したN−ビニルアセトアミド(以下、NVAと表記)の60質量%イソプロパノール溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をアセトンで洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を調製した。該粒子の官能基導入量を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で確認したところ、62モル%であった。さらに、該グラフト共重合体50質量部、塩酸ヒドロキシルアミン55質量部を5Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃で3時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、メタノール/アセトン混合溶媒で洗浄することで、目的のアミノ基が導入されたエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を得た。該グラフト共重合体を
1H−NMR(溶媒:d−DMSO)で分析したところ、アセトアミド部位の加水分解率は43%であった。該エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体をラボプラストミルにて、210℃で3分溶融混練し(メルトフローレート:A)、得られたコンパウンドを210℃で150秒プレス成形して、厚み150μmのプレスフィルムを作製した。また、コンパウンドを遠心粉砕機で粉砕し、篩を用いて粒子を212μm〜500μmに分級することで、金属イオン吸着材を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
【0089】
[比較例1]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、E105、エチレン含有量44モル%)をラボプラストミルにて、210℃で3分溶融混練し(メルトフローレート:A)、得られたコンパウンドを210℃で150秒プレス成形して、厚み150μmのプレスフィルムを作製した。また、コンパウンドを遠心粉砕機で粉砕し、篩を用いて粒子を212μm〜500μmに分級することで、金属イオン吸着材を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
【0090】
[比較例2]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、E105、エチレン含有量44モル%)100質量部に100kGyのγ線を照射した後、該粒子を70℃窒素置換した塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドの30質量%水溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をメタノールで洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を調製した。該エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体をラボプラストミルにて、210℃で溶融混練したところ、トルクが上昇、コンパウンド全体がゲル化し、目的のフィルムや金属イオン吸着材として加工することはできなかった。
【0091】
[比較例3]
市販のポリプロピレン(株式会社プライムポリマー社製 F113G)を粉砕した後、篩を用いて粒子径420μm〜710μmの粒子を作製した。該粒子100質量部に200kGyのγ線を照射した後、80℃窒素置換したNVFの60質量%水溶液に浸漬し、90分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をアセトンで洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体を調製した。該粒子は溶媒に不溶であり、官能基導入量を同定できなかった。さらに、該グラフト共重合体50質量部、塩酸ヒドロキシルアミン20質量部を1Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃で3時間攪拌して加水分解反応を行った。反応後、メタノール/アセトン混合溶媒で洗浄することで、アミノ基が導入されたポリプロピレングラフト共重合体を得た。該ポリプロピレングラフト共重合体をラボプラストミルにて、230℃で3分溶融混練したところ、樹脂の劣化が著しく、目的のフィルムや金属イオン吸着材として加工することはできなかった。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例1〜
4及び6に示すように、本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、他の熱可塑性樹脂との接着が良好であり、また金属イオン吸着材として加工した場合は、優れた金属イオン吸着性能を発現する。比較例1のように、通常のエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、熱可塑性樹脂との接着性を示さず、また金属イオン吸着性能も無い。比較例2のように、4級アンモニウム塩を官能基として導入した場合は、溶融時のゲル化が著しく、加工性に劣る。比較例3のように、基材にポリプロピレンを用いた場合は、グラフト共重合体を成形する際の劣化が著しく、加工性に劣る。