(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986066
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】シリコン及びシリコン含有膜の原子層堆積
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20160823BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/24
【請求項の数】26
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-502686(P2013-502686)
(86)(22)【出願日】2011年3月26日
(65)【公表番号】特表2013-524516(P2013-524516A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011030116
(87)【国際公開番号】WO2011123369
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2013年10月21日
(31)【優先権主張番号】12/751,774
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ジョー,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ガンジー,ミーナクシサンダラム
【審査官】
正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−057319(JP,A)
【文献】
特開昭64−010622(JP,A)
【文献】
特開平03−064019(JP,A)
【文献】
特表2009−505419(JP,A)
【文献】
特開2005−183514(JP,A)
【文献】
特開平06−196406(JP,A)
【文献】
特開平05−267166(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/029661(WO,A1)
【文献】
特開2011−18707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上へシリコン含有膜を堆積するための方法であり、前記方法は:
前記シリコン含有膜の原子層堆積(ALD)を実施するように構成されたバッチプロセスシステム内に基板を配置し;
前記基板をシリコンを含む第1の前駆体の非飽和量に暴露し;
前記バッチプロセスシステムから前記第1の前駆体を真空除去又はパージし;
前記基板をシリコン又はドーパントを含む第2の前駆体の飽和量に暴露し、
ここで前記第1及び第2の前駆体の1つのみがハロゲンを含み、かつ前記第1及び第2の前駆体の前記基板上での反応がシリコン含有膜と揮発性水素ハロゲン化物(HX)副生成物を形成し;
前記第2の前駆体及び前記HX副生成物を前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージし;及び
前記暴露及び真空除去又はパージするステップを、前記シリコン含有膜が望ましい厚さを持つまで繰り返す、ことを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、
前記第1の前駆体がシリコン水素化合物を含むがハロゲンを含まずかつ前記第2の前記がシリコンハロゲン化合物又はハロゲン化ドーパントを含むか、又は
前記第1の前駆体がシリコンハロゲン化合物を含みかつ前記第2の前駆体がシリコン水素化合物を含むがハロゲンは含まない、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であり、前記シリコン水素化合物が、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)又はそれらの組合せを含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であり、前記シリコンハロゲン化合物が、ハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランを含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であり、前記ハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランが、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、Si2Cl6、SiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3F又はSi2F6又はそれらの2又はそれ以上の組合せを含む、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であり、前記ハロゲン化ドーパントが、リン、ホウ素、ヒ素又はゲルマニウム又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であり、前記ハロゲン化ドーパントが、PCl3、PCl5、PF3、PF5、PBr3、PBr5、BCl3、BF3又はGeCl4又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であり、前記水素を含むがハロゲンを含まない前記ドーパントが、リン、ホウ素、ヒ素又はゲルマニウム又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であり、前記水素を含むがハロゲンを含まない前記ドーパントが、PH3、BH3、B2H6、AsH3、炭化水素又はGeH4又はそれらの2又はそれ以上の組合せを含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であり、さらに:
前記繰り返しの前に、不活性ガス、H2ガス又は不活性ガスとH2ガスの組合せのガスによって前記シリコン含有膜を周期的にプラズマ処理することを含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であり、さらに:
前記繰り返しの前に、プラズマの存在しない状態で不活性ガス、H2ガス又は不活性ガスとH2ガスの組合せのガスによって前記シリコン含有膜を周期的に処理することを含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であり、前記シリコン含有膜がシリコン膜である、方法。
【請求項13】
基板上へシリコン含有膜を堆積するための方法であり、前記方法は:
前記シリコン含有膜の原子層堆積(ALD)を実施するように構成されるバッチプロセスシステム内に前記基板を配置し;
前記基板に、第1のシリコン前駆体の非飽和量を暴露し;
前記バッチプロセスシステムから前記第1のシリコン前駆体を真空除去又はパージし;
前記基板を第2のシリコン前駆体の飽和量に暴露し、
ここで前記第1及び第2のシリコン前駆体の1つのみがハロゲンを含み、かつ前記基板上で前記第1及び第2のシリコン前駆体の反応が前記シリコン含有膜と揮発性の水素ハロゲン化物(HX)副生成物を形成し;
前記バッチプロセスシステムから、前記第2のシリコン前駆体と前記HX副生成物を真空除去又はパージし;及び
前記暴露及び真空除去又はパージするステップを、前記シリコン含有膜が望ましい厚さを持つまで繰り返し;及び
前記繰り返しの前に、前記シリコン含有膜を、不活性ガス、H2ガス又は不活性ガス及びH2ガスの組合せで周期的に処理することを含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であり、
前記第1のシリコン前駆体がシリコン水素化合物を含むがハロゲンを含まず、かつ前記第2のシリコン前駆体がシリコン水素化合物を含むか、又は
前記第1の前駆体がシリコンハロゲン化合物を含み、かつ前記第2の前駆体がシリコン水素化合物を含むがハロゲンを含まない、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であり、前記シリコン水素化合物が、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)又はこれらの組合せを含む、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であり、前記シリコンハロゲン化合物が、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、Si2Cl6、SiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3F又はSi2F6又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含むハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランを含む、方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であり、前記処理が、不活性ガス、H2ガス又は不活性ガスとH2ガスの組合せで前記シリコン含有膜を周期的にプラズマ処理することを含む、方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であり、前記処理が、不活性ガス、H2ガス又は不活性ガスとH2ガスの組合せで前記シリコン含有膜を周期的に、プラズマの存在なしで処理することを含む、方法。
【請求項19】
基板上へドープシリコン膜を堆積するための方法であり、前記方法は:
前記シリコン含有膜の原子層堆積(ALD)を実施するように構成されるバッチプロセスシステム内に前記基板を配置し;
前記基板に、第1のシリコン前駆体の非飽和量を暴露し;
前記バッチプロセスシステムから前記第1のシリコン前駆体を真空除去又はパージし;
前記基板を、ドーパントを含む第2の前駆体の飽和量に暴露し、
ここで前記第1及び第2の前駆体の1つのみがハロゲンを含み、かつ前記基板上で前記第1及び第2の前駆体の反応が前記ドープシリコン膜と揮発性の水素ハロゲン化物(HX)副生成物を形成;
前記バッチプロセスシステムから、前記第2の前駆体と前記HX副生成物を真空除去又はパージし;及び
前記暴露及び真空除去又はパージするステップを、前記ドープシリコン膜が望ましい厚さを持つまで繰り返す、ことを含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であり、前記第1の前駆体がシリコン水素化合物を含むがハロゲンは含まず、かつ前記第2の前駆体がハロゲン化ドーパントを含むか、又は
前記第1の前駆体がシリコンハロゲン化合物を含み、かつ前記第2の前駆体が水素を含むがハロゲンを含まないドーパントを含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であり、前記シリコン水素化合物が、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)又はこれらの組合せを含む、方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であり、前記シリコンハロゲン化合物が、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、Si2Cl6、SiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3F又はSi2F6又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含むハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランを含む、方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法であり、前記ハロゲン化ドーパントが、PCl3、PCl5、PF3、PF5、PBr3、PBr5、BCl3、BF3CCl4又はGeCl4又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む、方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であり、前記水素を含むがハロゲンを含まないドーパントが、PH3、BH3、B2H6、AsH3、炭化水素又はGeH4又はそれらの2又はそれ以上の組合せを含む、方法。
【請求項25】
請求項19に記載の方法であり、さらに:前記繰り返しの前に、不活性ガス、H2ガス又は不活性ガスとH2ガスの組合せで前記ドープシリコン膜を周期的に、プラズマ処理することを含む、方法。
【請求項26】
請求項19に記載の方法であり、さらに:前記繰り返しの前に、不活性ガス、H2ガス又は不活性ガスとH2ガスの組合せで前記ドープシリコン膜を周期的に、プラズマの存在なしで処理することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体プロセス、より具体的には基板上のシリコン及びシリコン含有膜の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン及びシリコン含有膜は、半導体工業において広い種類の応用のために使用される。シリコン膜は、多結晶性シリコン(poly−Si)及びエピタキシャルシリコンを含み、及びシリコン含有膜は、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンゲルマニウムカーバイド(SiGeC)、シリコン炭化物(SiC)及びシリコン窒化物(SiN)を含む。回路の大きさがより小さいサイズに縮小するにつれて、より低い堆積温度が好ましくなる。というのは例えば新材料を半導体装置へ導入するため、及びソース及びドレイン領域における浅いインプラントの熱量の削減のためである。さらに、シリコン含有膜の非選択的(ブランケット)及び選択的堆積が将来の装置のために必要となるということは明らかである。例えば、半導体製造は、エピタキシャルシリコン膜について、厚さ及び抵抗への厳しい仕様制限を必要とする。エピタキシャルシリコン堆積は1つのプロセスフローでの最初のステップであり、そこでは前記バルクシリコンの結晶格子が新たなシリコン含有層(前記バルクとは異なるドーピングレベルを持ち得る)の成長を通じて拡大されていく。目標とするエピタキシャル膜厚及び抵抗値パラメータは、正しく機能する装置への続く製造のために重要である。
【0003】
エピタキシャルシリコン含有膜の選択的堆積の使用の1例は、凸構造を持つソース及びドレインを持つシリコン・オン・インシュレーター(SOI)の製造のためである。SOI装置製造の際に、プロセスはソース及びドレイン領域内の全シリコンを消費し、それによりこれらの領域での余分のシリコンを必要とし、これはシリコン含有膜の選択的エピタキシャル成長(SEG)により与えられる。シリコン含有膜の選択的エピタキシャル堆積は、必要とされるフォトリソグラフィー及びエッチングプロセスの数を減らすことができ、これにより装置製造に関わる全費用及び複雑さを減らすことができる。より低温度での堆積が好ましいにも拘わらず、従来のシラン(SiH
4)及びジクロロシラン(DCS、SiCl
2H
2)ソースガスを用いるエピタキシャルシリコンの熱分解は一般的に高温度(例えば約850から900℃を超える)であり、これは装置の製造のためのプロセスへ導入されるプロセスのために十分高い堆積速度を達成するために必要である。
【0004】
将来の装置生成は、改良された材料及び電気特性を持つシリコン及びシリコン含有膜(例えばピンホール欠陥を持たないより薄い膜)を堆積するためのより低い熱量を持つ新たな方法が必要となるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子層堆積(ALD)による基板上へシリコン及びシリコン含有膜を堆積するための方法が提供される。ここでシリコン含有膜の例はドープシリコン膜を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施態様によると、シリコン又はシリコン含有膜を堆積するための方法が提供される。前記方法は、前記シリコン又はシリコン含有膜のALDを実施するように構成されたバッチプロセスシステム内に前記基板を準備・配置し、前記基板をシリコンを含む第1の前駆体の非飽和量へ暴露し、前記バッチプロセスシステムから前記第1の前駆体を真空除去又はパージすることを含む。前記方法はさらに、前記基板をシリコン又はドーパントを含む第2の前駆体の飽和量へ暴露し、ここで前記第1及び第2の前駆体の1つのみがハロゲンを含み、かつ前記第1及び第2の前駆体の基板上での反応がシリコン又はシリコン含有膜および揮発性ハロゲン化水素(HX)を副生成物として形成し、前記第2の前駆体と前記ハロゲン化水素(HX)副生成物を前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージし、及び前記シリコン又はシリコン含有膜が望ましい厚さになるまで前記暴露及び真空除去又はパージすることを繰り返すことを含む。
【0007】
他の実施態様によれば、シリコン膜を堆積するための方法が提供される。前記方法は、前記シリコン膜のALDを実施するように構成されるバッチプロセスシステムに前記基板を配置し、前記基板を第1のシリコン前駆体の非飽和量に暴露し、前記バッチプロセスシステムから前記第1のシリコン前駆体を真空除去又はパージすることを含む。前記方法はさらに、前記基板を第2のシリコン前駆体の飽和量へ暴露し、ここで前記第1及び第2のシリコン前駆体の1つのみがハロゲンを含み、かつ前記第1及び第2のシリコン前駆体の基板上での反応がシリコン膜および揮発性ハロゲン化水素(HX)を副生成物として形成し、前記第2のシリコン前駆体と前記ハロゲン化水素(HX)副生成物を前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージし、及び前記シリコン膜が望ましい厚さになるまで前記暴露及び真空除去又はパージすることを繰り返すことを含む。
【0008】
他の実施態様によれば、ドープシリコン膜の堆積のための方法が提供される。前記方法は、前記シリコン膜のALDを実施するように構成されるバッチプロセスシステムに前記基板を配置し、前記基板をシリコンを含む第1の前駆体の非飽和量に暴露し、前記バッチプロセスシステムから前記第1の前駆体を真空除去又はパージすることを含む。前記方法はさらに、前記基板をドーパントを含む第2の前駆体の飽和量へ暴露し、ここで前記第1及び第2の前駆体の1つのみがハロゲンを含み、かつ前記第1及び第2の前駆体の基板上での反応がドープシリコン膜および揮発性ハロゲン化水素(HX)を副生成物として形成し、前記第2の前駆体と前記ハロゲン化水素(HX)副生成物を前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージし、及び前記ドープシリコン膜が望ましい厚さになるまで前記暴露及び真空除去又はパージすることを繰り返すことを含む。
【0009】
1つの実施態様によると、シリコン又はシリコン含有膜を堆積するための方法が提供される。前記方法は、前記シリコン又はシリコン含有膜のALDを実施するように構成されるバッチプロセスシステムに前記基板を配置し、前記基板をシリコンを含む第1の前駆体の飽和量に暴露し、前記バッチプロセスシステムから前記第1の前駆体を真空除去又はパージすることを含む。前記方法はさらに、前記基板をシリコン又はドーパントを含む第2の前駆体の飽和量へ暴露し、ここで前記第1及び第2の前駆体の1つのみがハロゲンを含み、かつ前記第1及び第2の前駆体の基板上での反応がシリコン又はシリコン含有膜および揮発性ハロゲン化水素(HX)を副生成物として形成し、前記第2の前駆体と前記ハロゲン化水素(HX)副生成物を前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージし、及び前記シリコン又はシリコン含有膜が望ましい厚さになるまで前記暴露及び真空除去又はパージすることを繰り返し、及び周期的に前記シリコン含有膜を前記繰り返す前にクリーニングガスで処理することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明によるバッチプロセスシステムの1つの単純化されたブロックダイヤグラムを示す。
【
図2】
図2は、本発明の1つの実施態様によるALDによる、基板上へのシリコン含有膜の形成のためのフローダイヤグラムを示す。
【
図3】
図3は、本発明の他の実施態様によるALDによる、基板上へのシリコン膜を形成するためのフローダイヤグラムを示す。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施態様によるALDによる、基板上へのシリコン含有膜を形成するためのフローダイヤグラムを示す。
【
図5A】
図5Aから5Fは、本発明の実施態様による、基板上へのシリコン又はシリコン含有膜の堆積を模式的に示す。
【
図5B】
図5Aから5Fは、本発明の実施態様による、基板上へのシリコン又はシリコン含有膜の堆積を模式的に示す。
【
図5C】
図5Aから5Fは、本発明の実施態様による、基板上へのシリコン又はシリコン含有膜の堆積を模式的に示す。
【
図5D】
図5Aから5Fは、本発明の実施態様による、基板上へのシリコン又はシリコン含有膜の堆積を模式的に示す。
【
図5E】
図5Aから5Fは、本発明の実施態様による、基板上へのシリコン又はシリコン含有膜の堆積を模式的に示す。
【
図5F】
図5Aから5Fは、本発明の実施態様による、基板上へのシリコン又はシリコン含有膜の堆積を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施態様は、ALDによる基板上へのシリコン及びシリコン含有膜を堆積するための方法を説明する。
【0012】
以下の説明では、本発明の十分な理解を容易にするため、かつ説明のためであり限定するためではなく、前記バッチプロセスの形状及び種々の部品の説明などの具体的な詳細が提示されている。しかし理解されるべきことは、本発明はこれらの具体的な詳細から離れて他の実施態様においても実施され得る、ということである。
【0013】
図1は、本発明の1つの実施態様によるバッチプロセスシステムの1つの単純化されたブロックダイヤグラムである。前記バッチプロセスシステム1は、プロセスチャンバ10及びプロセスチューブ25を含み、これは排気パイプ80に接続された上端部23及び円筒状マニホールド2の縁部27へ密閉結合された下部端部24を含む。前記排気パイプ80は前記プロセスチューブ25から真空ポンプシステム88へガスを放出して、前記バッチプロセスシステム1内の既定の大気圧又は大気圧以下の圧力に維持する。複数の基板(ウェハ)40を段々に積まれた(垂直にある間隔でそれぞれ水平に置かれた面)ように保持するための基板ホルダー35は前記プロセスチューブ25内に配置される。前記基板ホルダー35は、前記縁部27を通過する回転シャフト21上に設けられ、モーター28で駆動されるターンテーブル26上に設けられる。前記ターンテーブル26は、処理中に回転でき、全体の膜均一性を改善し得る。又は前記ターンテーブルは処理中は静止され得る。前記縁部27は、前記基板ホルダー35を前記プロセスチューブ25の内外へ移送するためにエレベータ22上に設けられる。前記縁部27がその際上部位置に位置付けされると、前記縁部27は前記マニホールド2の前記開口端部に近くなるように適合される。
【0014】
ガス輸送システム97は、ガスを前記プロセスチャンバ10に導入するようにされている。複数のガス供給ラインが、複数のガスを前記ガス供給ラインを通じて前記プロセスチューブ25内に供給するようにマニホールド2の回りに配置されている。
図1では、複数のガス供給ラインの中でも1つのみのガス供給ライン45が示されている。前記ガス供給ライン45は第1のガスソース94と接続されている。一般的に、前記第1のガスソース94は基板40を処理するためにガスを供給できる。これには前記基板上に膜を形成(即ちシリコン及びシリコン含有膜を堆積するためのシリコン含有ガス及びドーパント)するためのガスを含む。
【0015】
加えて又はこれに代えて、1又はそれ以上のガスが操作的に第2のガスとカップルされる(遠隔の)プラズマソース95から前記ガス供給ライン45により前記プロセスチャンバ10へ供給されることができる。前記プラズマ励起ガスは、前記ガス供給ライン45により前記プロセスチューブ25内に導入される。前記プラズマソース95は、例えばマイクロ波プラズマソース、ラジオ周波数(RF)プラズマソース又は光励起によるプラズマソースであり得る。マイクロ波プラズマソースの場合に、前記マイクロ波パワーは、約500ワット(W)と約5000ワット(W)との間である。前記マイクロ波周波数は、例えば2.45GHz又は8.3GHzであり得る。1つの実施態様では、前記遠隔プラズマソースは、Downstream Plasma Source Type AX7610(MKS Instruments、Wilmington、Massachusetts、USA)である。
【0016】
円筒状熱反射装置30が前記反応チューブ25をカバーするように設けられている。
前記熱反射装置30は鏡面仕上の内部表面を有し、メインヒーター20、ボトムヒーター65、トップヒーター15及び排気パイプヒーターからに放射熱の消散を抑制する。螺旋冷却水通路(図示されていない)が、冷却媒体通路として前記プロセスチャンバ10の壁内に形成され得る。前記ヒーター20、65及び15は、例えば前記基板を約20℃と約90℃との間に維持する。
【0017】
前記真空ポンプシステム88は真空ポンプ86、トラップ84及び自動圧力制御装置(APC)82を含む。前記真空ポンプ86は、例えば20000リットル/秒まで(及びそれより大きい)のポンプ速度が可能なドライ真空ポンプを含む。処理の間、ガスは、前記ガス輸送システム97の前記ガス供給ライン45を介して前記プロセスチャンバ10内に導入され、前記プロセス圧力は前記APC82で調節され得る。前記トラップ84は前記プロセスチャンバ10からの未反応前駆体材料及び副生成物を回収する。
【0018】
前記プロセスモニタシステム92は、リアルタイムプロセスモニタ可能なセンサ75を含み、かつ例えば質量分析装置(MS)、FTIR分光装置又はパーティクルカウンターを含むことができる。制御装置90はマイクロプロセッサ、メモリ及び、前記バッチプロセスシステム1からのモニタ出力と同様に前記バッチプロセスシステムへ交信し入力を開始させるために十分な制御電圧を生成することができるデジタルI/Oポートを含む。さらに、前記制御装置90は前記ガス輸送システム97、モーター28、プロセスモニタシステム92、ヒーター20、15、65及び70、及び真空ポンプシステム88に接続され情報を交換できる。前記制御装置90は、DELL PRECISION WORKSTATION 610
TMとして実装され得る。前記制御装置90はまた、汎用コンピュータ、プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサなどとして実装され、コンピュータ読み取り可能媒体に含まれた1又はそれ以上の命令の1又はそれ以上の手順を実行する前記制御装置90に応じて基板処理装置が本発明の処理ステップの1部分又は全てを実行させる。前記コンピュータ読み取り可能媒体又はメモリは、本発明の教示によりプログラムされた命令を保持するため、及びデータ構造、テーブル、レコード又はここで説明されたその他のデータを含むためである。コンピュータ読み取り可能媒体の例は、コンパクトディスク、ハードディスク、フロッピーディスク、テープ、光磁気ディスク、PROM(EPROM、EEPROM、フラッシュEPROM)、DRAM、SRAM、SDRAM又は全ての他の磁気媒体、コンパクトディスク(例えばCD−ROM)、又は全てのその他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、又はその他の穴パターン付き物理的媒体、キャリア波(以下説明する)、又はその他の全てのコンピュータ読み取り可能な媒体を含む。
【0019】
前記制御装置90は、前記バッチプロセスシステム1に対して近くに設けられる得るか、又はインターネットやイントラネットを介して前記バッチプロセスシステムに対して離れて設けられ得る。従って、前記制御装置90は、直接接続、イントラネット及びインターネットの少なくとも1つを用いて前記バッチプロセスシステム1とデータを交換可能である。前記制御装置90は、顧客位置(即ちデバイスメーカなど)でイントラネットへ接続されることができ、又は販売者(装置製造者)でイントラネットへ接続され得る。さらに、他のコンピュータ(即ち制御装置、サーバなど)が制御装置90にアクセスして、直接接続、イントラネット及びインターネットの少なくとも1つを介してデータを交換することができる。
【0020】
理解されるべきことは、
図1に記載の前記バッチプロセスシステム1は例示目的のみで示されているということ、具体的なハードウェアの多くの変更が本発明を実施するために使用され得るということ、及びこれらの変更は当業者には容易に分かるものである、ということである。
図1の前記バッチプロセスシステム1は、例えば200mm基板、300mm基板又はそれより大きい基板などの全てのサイズの基板を処理することができる。さらに、前記バッチプロセスシステム1は、約200枚まで又はそれ以上の基板を同時に処理することができる。又は、前記バッチプロセスシステム1は、約25枚までの基板を同時に処理することができる。
【0021】
図2及び5Aから5Fを参照する。
図2は本発明の1つの実施態様によるALDによる基板上へシリコン又はシリコン含有膜を形成するためのフローダイヤグラムであり、
図5Aから5Eは本発明の実施態様による基板へのシリコン又はシリコン含有膜の堆積を模式的に示す。
図2では、前記処理200は202で開始される。202で、基板500はバッチプロセスシステムのプロセスチャンバに配置される。前記プロセスチャンバは、例えば
図1に示される前記バッチプロセスシステム1の前記プロセスチャンバ10であり得る。前記基板500は、例えばSi、SiGe、SiGeC、SiC、SiN、SiCN、SiCO、Geを含み、ガラス基板、LCD基板又は化合物半導体基板であり、かつ数多くのアクティブデバイス及び/又は分離領域を含み得る。さらに、前記基板500は、パターン化基板であってよく、ビア又はトレンチ又はそれらの組合せを含み得る。
【0022】
図5Aに示されるように、基板500はその上に酸化物層502を含む。前記酸化物層502は、前記シリコン又はシリコン含有膜を堆積する前に203で基板500から除去され得る。前記酸化物層502及び全てのその他の表面汚染の除去は、
図5Bに示されるようにクリーンな基板表面を生成し、これによりSi又はSiGe膜などのエピタキシャルシリコン又はシリコン含有膜を基板表面503上へ堆積させることを可能とし、前記バルク基板500の結晶格子が前記新たなシリコン又はシリコン含有膜の成長を通じて拡大する。前記酸化物層502は、室温においても空気へ暴露することでシリコン基板上に容易に形成される自然酸化物であり得る。適切な膜シーディング及びエピタキシャル膜成長の妨害に加えて、酸化物層の存在はまた、異なる基板材料上への選択的堆積を減少させ得る。又は、例えば前記プロセスチャンバ内に配置される際に前記基板500がクリーンである場合、又はエピタキシャル膜の堆積が望まれない場合には酸化物除去ステップは省略され得る。基板500から酸化物層502を除去するための例示的方法及びシステムは、米国特許第7501349号、米国特許出願公開第2007/0039924号に開示されている。これらの両方の特許文献の全内容はここで参照されて本明細書に援用される。1つの例では、前記酸化物除去処理及び続くALDによるシリコン含有膜の堆積は同じプロセスチャンバ内で実施されることができ、前記処理の間の基板500の酸化を最小限にすることができる。
【0023】
前記酸化物除去処理に続いて、前記基板500は、シリコン及びシリコン含有膜のALDが可能となる温度範囲内の温度へ加熱され得る。ALD処理は、前記処理が自己限定的であるプロセス条件下で実施され得る。1つの例では、シリコンを含む第1の前駆体の非飽和量が基板表面上に吸収され、及びその後シリコン又はドーパントを含む第2の前駆体の飽和量が前記第1の前駆体の前記吸収された層を含む前記基板へ暴露される。前記吸収処理の自己限定的性質により、前記堆積は前記第2の暴露後自動的に停止する。前記自己限定的性質は正確な膜厚の制御を与え、これは有益であり得る。前記基板500の温度は、約25℃と650℃の間、又は200℃と450℃の間であり得る。当業者であれば、異なるシリコン前駆体は、ALD処理のための異なる温度範囲を持つ、ということは理解できるであろう。前記プロセスチャンバ内のガス圧力は、例えば0.1と100トール(Torr)の間であり得る。かつ前記プロセスチャンバ内へのガスフローは1sccmと10000sccmの間又は10sccmと1000sccmの間であり得る。
【0024】
204で、基板500は、シリコンを含む第1の前駆体の非飽和量へ暴露される。前記暴露は、前記第1の前駆体の非飽和層504又は前記第1の前駆体の断片を前記基板500上に形成する時間間隔の間実施され得る。前記非飽和暴露は、前記シリコンを含む第1の前駆体の飽和暴露の90、80、70、60、50、40、30、20又は10%未満であり得る。
【0025】
206で、シリコンを含む前記第1の前駆体への暴露に続いて、前記第1の前駆体は前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージされる。前記パージは、N
2又は希ガスなどの不活性ガスを使用することができる。
【0026】
208で、前記基板500が、シリコン又はドーパントを含む第2の前駆体の飽和量に暴露され、シリコン又はシリコン含有膜506を形成する。前記第2の前駆体への暴露は、前記非飽和層504を飽和させ、シリコン又はシリコン含有膜506を形成する。いくつかの例では、前記シリコン又はシリコン含有膜506はさらに、前記第2の前駆体の断片を含む。例えば、前記第2の前駆体がSiH
4を含む場合に、前記断片はSiH
x(ここでx<4)を含み得る。本発明の実施態様により、ALDによる低温度でのシリコン又はシリコン含有膜506の堆積が、熱力学的に安定なかつ揮発性のハロゲン化水素副生成物(HX、ここでXはハロゲン)の形成により可能となる。これは、前記第1及び第2の前駆体を、前記第1及び第2の前駆体の1つのみがハロゲンを含むように選択することで達成される。本発明の実施態様によれば、前記第1の前駆体はシリコン水素化合物を含むがハロゲンは含まず、さらに前記第2の前駆体はシリコンハロゲン化合物又はシリコンハロゲン化合物又はハロゲン化ドーパントを含む。前記暴露は、前記基板500上に前記第1及び第2の前駆体の反応を飽和させ、かつ前記シリコン又はシリコン含有膜506と揮発性HX副生成物を形成する時間間隔の間実施され得る。
【0027】
シリコン水素化合物は、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)又はこれらの組合せを含み得る。前記シリコンハロゲン化合物は、ハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランを含む。前記ハロゲン化シラン及びハロゲン化ジシランは、SiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2、SiH
3Cl、Si
2Cl
6、SiF
4、SiHF
3、SiH
2F
2、SiH
3F又はSi
2F
6又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む。前記ハロゲン化ドーパントは、リン(P)、ホウ素(B)、ヒ素(As)、炭素(C)又はゲルマニウム又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む。前記ハロゲン化ドーパントには、PCl
3、PCl
5、PF
3、PF
5、PBr
3、PBr
5、BCl
3、BF
3、CCl
4又はGeCl
4又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む。
【0028】
本発明の他の実施態様によれば、前記第1の前駆体はシリコンハロゲン化合物を含み、前記第2の前駆体はシリコン水素化合物を含むがハロゲンを含まず、又は水素を含むドーパントを含むがハロゲンを含むドーパントは含まない。前記シリコンハロゲン化合物及びハロゲンを含まないシリコン水素化合物は上で説明した前駆体から選択され得る。水素を含むがハロゲンを含まないドーパントは、リン、ホウ素、ヒ素、炭素又はゲルマニウム、又はそれらの2又はそれ以上の組合せを含む。水素を含むがハロゲンを含まないドーパントは、PH
3、BH
3、B
2H
6、AsH
3、炭化水素(例えばCH
4、C
2H
4)又はGeH
4、又はそれらの2又はそれ以上の組合せを含む。
【0029】
210で、前記第2の前駆体及び前記HX副生成物(例えば、HF、HCl)は、前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージされる。前記パージは、N2又は希ガスなどの不活性ガスを使用し得る。
【0030】
本発明のいくつかの実施態様によれば、前記シリコン含有膜506が場合により211で処理され得る。前記選択的な処理は、前記シリコン又はシリコン含有膜506内の汚染(即ちハロゲン)の量をさらに低減するために使用され得る。前記選択的に処理はステップ210の後に周期的、例えばステップ210の後毎回又はより少なく、例えばステップ210の2回後、3回後又は4回の抽出などで実施され得る。本発明の1つの実施態様によると、前記繰り返しの前に、前記シリコン又はシリコン含有膜506が、不活性ガス、H
2ガス又は不活性ガスとH
2ガスの組合せを含むプロセスガス507でプラズマ処理され得る。他の実施態様によると、前記繰り返しの前に、前記シリコン又はシリコン含有膜506は、不活性ガス、H
2ガス又は不活性ガスとH
2ガスの組合せで、プラズマの存在なしで処理され得る。
【0031】
212では、前記暴露及び真空除去又はパージステップ204から210及び選択的なステップ211が、前記シリコン又はシリコン含有膜508が望ましい厚さを得るまで繰り返される。いくつかの例では、前記シリコン又はシリコン含有膜508は、1nmと1000nmとの間、又は10nmと100nmとの間の厚さを持ち得る。しかし他の厚さもまた含まれ、使用され得る。
【0032】
図3及び5Aから5Fを参照する。
図3は、本発明の他の実施態様によるALDによる基板上へシリコン膜を形成するための1つのフローダイヤグラムである。
図3の前記フローダイヤグラムは
図2のフローダイヤグラムと類似しており、
図3では前記プロセス300は302で開始される。302で、基板500は、バッチプロセスシステムのプロセスチャンバに準備される。前記プロセスチャンバは、例えば
図1で示される前記バッチプロセスシステム1の前記プロセスチャンバ10であり得る。前記基板500は、例えばSi、SiGe、SiGeC、SiC、SiN、SiCN、SiCO、Geを含み、またガラス基板、LCD基板又はは化合物基板であり得る、また種々のアクティブデバイス及び/又は分離領域を含み得る。さらに、前記基板はパターン化基板であり、ビアやトレンチ又はそれらの組合せを含み得る。
【0033】
303で、酸化物層502が前記基板500から除去される。
【0034】
304で、基板500は第1のシリコン前駆体の非飽和量へ暴露される。前記暴露は、前記基板500上へ前記第1の前駆体の非飽和層504又は前記前駆体の断片が形成される時間間隔の間実施され得る。
【0035】
306で、前記シリコン前駆体は前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージされる。前記パージはN
2又波希ガスなどの不活性ガスを使用し得る。
【0036】
308で、前記基板500は、第2のシリコン前駆体の飽和量に暴露されてシリコン膜506を形成する。前記第2のシリコン前駆体への暴露は、前記非飽和層504を飽和させシリコン膜506を形成する。いくつかの例では、前記シリコン含有膜506は前記第2のシリコン前駆体の断片を含み得る。例えば、前記シリコン膜506は、多結晶Si膜(poly−Si−film)又はエピタキシャルシリコン膜であり得る。本発明の実施態様によると、ALDによる低温度でシリコン膜506を堆積することは、熱力学的に安定な揮発性水素ハロゲン化物(HX)副生成物を形成することで可能となる。これは、前記第1及び第2のシリコン前駆体を、前記第1及び第2のシリコン前駆体の1つのみがハロゲンを含むように選択されることで達成される。
【0037】
本発明の1つの実施態様によると、前記第1のシリコン前駆体はシリコン水素化合物を含むがハロゲンは含まず、また前記第2の前駆体はシリコンハロゲン化合物を含む。前記暴露は、前記基板500上で前記第1及び第2のシリコン前駆体の反応を飽和させ、シリコン膜506と揮発性HX副生成物を形成する時間間隔で実施され得る。
【0038】
前記シリコン水素化合物は、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)又はこれらの組合せを含み得る。前記シリコンハロゲン化合物は、ハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランを含み得る。前記ハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランは、SiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2、SiH
3Cl、Si
2Cl
6、SiF
4、SiHF
3、SiH
2F
2、SiH
3F又はSi
2F
6、又はそれらの2又はそれ以上の組合せを含み得る。
【0039】
本発明の他の実施態様によると、前記第1の前駆体はシリコンハロゲン化合物を含み、かつ前記第2のシリコン前駆体はシリコン水素化合物を含むがハロゲンは含まない。前記シリコンハロゲン化合物及びハロゲンを含まないシリコン水素化合物は上で説明された前駆体から選択され得る。
【0040】
310で、前記第2のシリコン前駆体及び前記HX副生成物は前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージされる。前記パージは、N
2又は希ガスなどの不活性ガスを使用し得る。
【0041】
本発明者は次のことを見出した。即ち、304で前記第1のシリコン前駆体の非飽和量の暴露及び308で前記第2のシリコン前駆体の飽和量の暴露が、独立に、前記基板500上のハロゲン対水素の比を制御可能とする、ということである。このことは、前記シリコン含有膜506からハロゲンを前記揮発性HX副生成物の形でハロゲン除去を最大化し、それにより前記シリコン膜506のハロゲン含有量を低減するために利用され得る。
【0042】
本発明のいくつかの実施態様によると、前記シリコン膜506は311で選択的に洗浄ガスで処理され得る。前記選択的処理は、前記シリコン膜506中の汚染(例えばハロゲン)量をさらに低減するために使用され得る。前記選択的な処理は、ステップ310の後に規則的、例えばステップ310の後毎回又はより少なく実施され得る。例えばステップ310を2回行った後、3回行った後又は4回行った後など、である。本発明の1つの実施態様によると、前記繰り返しの前に、前記シリコン膜506は、不活性ガス、H
2ガス又は不活性ガスとH
2ガスの組合せを含む洗浄(クリーニング)ガス507でプラズマ処理され得る。他の実施態様によると、前記繰り返しの前に、前記シリコン膜506は、不活性ガス、H
2ガス又は不活性ガスとH
2ガスの組合せを含むクリーニングガス507でプラズマの不存在下で処理され得る。
【0043】
312で、前記暴露及び真空除去又はパージステップ304から310及び選択的ステップ311が、前記シリコン膜508が望ましい厚さを持つまで繰り返される。いくつかの例では、前記シリコン膜508は、1nmと1000nmの間、又は10nmと100nmの間の厚さを持ち得る。しかし他の厚さをここに含まれ使用され得る。
【0044】
他の実施態様によると、シリコン又はシリコン含有膜の堆積のための方法が提供される。前記方法は、シリコン又はシリコン含有膜のALDを実行するように構成されるバッチプロセスシステムに前記基板を配置し、前記基板をシリコンを含む第1の前駆体の飽和量へ暴露し、前記バッチプロセスシステムから前記第1の前駆体を真空除去又はパージすることを含む。前記方法はさらに、前記基板をシリコン又はドーパントを含む第2の前駆体の飽和量へ暴露し、ここで前記第1及び第2の前駆体の1つのみがハロゲンを含み、かつ前記第1及び第2の前駆体の基板上での反応がシリコン又はシリコン含有膜および揮発性ハロゲン化水素(HX)を副生成物として形成し、前記第2の前駆体と前記ハロゲン化水素(HX)副生成物を前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージし、及び前記シリコン又はシリコン含有膜が望ましい厚さになるまで前記暴露及び真空除去又はパージすることを繰り返し、及び周期的に前記シリコン含有膜を前記繰り返す前にクリーニングガスで処理することを含む。
【0045】
図4及び5Aから5Fを参照する。
図4は、本発明の1つの実施態様によりALDによる基板上へドープシリコン膜を形成するための1つのフローダイヤグラムである。
図4の前記フローダイヤグラムは、
図2のフローダイヤグラムと類似するが、
図4では前記プロセス400は402で開始される。402で、基板500は、バッチプロセスシステムのプロセスチャンバ内に準備される。前記プロセスチャンバは、例えば
図1に示される前記バッチプロセスシステム1の前記プロセスチャンバ10である得る。前記基板500は、例えばSi、SiGe、SiGeC、SiC、SiN、SiCN、SiCO、Geを含み、またガラス基板、LCD基板又はは化合物基板であり得る、また種々のアクティブデバイス及び/又は分離領域を含み得る。さらに、前記基板はパターン化基板であり、ビアやトレンチ又はそれらの組合せを含み得る。
【0046】
403で、酸化物層502が基板500から除去される。
【0047】
404で、基板500は第1のシリコン前駆体の非飽和量へ暴露される。前記暴露は、前記基板500上へ前記第1の前駆体の非飽和層504又は前記前駆体の断片が形成される時間間隔の間実施され得る。前記非飽和暴露は、シリコンを含有する前記第1の前駆体の飽和暴露の、90、80、70、60、50、40、30、20又は10%未満であり得る。
【0048】
406で、前記シリコン前駆体は前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージされる。前記パージはN
2又波希ガスなどの不活性ガスを使用し得る。
【0049】
408で、前記基板は、ドーパントを含む第2の前駆体の飽和量に暴露されてドープシリコン膜506を形成する。前記第2の前駆体の暴露が前記非飽和層504を飽和させて前記ドープシリコン膜506を形成する。いくつかの例では、前記ドープシリコン膜506は前記第2の前駆体の断片を含み得る。本発明の実施態様によると、ALDによる低温度でのドープシリコン膜506の前記堆積は、熱力学的に安定な揮発性HX副生成物を形成することで可能となる。これは、前記第1及び第2の前駆体を、前記第1及び第2の前駆体の1つのみがハロゲンを含むように選択することで達成される。本発明の1つの実施態様によると、前記第1の前駆体はシリコン水素化合物を含むがハロゲンは含まず、また前記第2の前駆体はハロゲン化ドーパントを含む。前記暴露は、基板500上の前記第1及び第2の前駆体の反応を飽和させ、前記ドープシリコン膜と揮発性HX副生成物を形成することで実行され得る。
【0050】
本発明の他の実施態様によると、前記第1の前駆体がシリコンハロゲン化物を含み、かつ前記第2の前駆体が水素を含むがハロゲンを含まないドーパントを含む。
【0051】
前記シリコン水素化合物は、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)又はこれらの組合せを含み得る。前記シリコンハロゲン化合物は、ハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランを含み得る。前記ハロゲン化シラン又はハロゲン化ジシランは、SiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2、SiH
3Cl、Si
2Cl
6、SiF
4、SiHF
3、SiH
2F
2、SiH
3F又はSi
2F
6又はそれらの2又はそれ以上の組合せを含み得る。前記ハロゲン化ドーパントは、リン(P)、ホウ素(B)、ヒ素(As)、炭素(C)又はゲルマニウム又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む。前記ハロゲン化ドーパントには、PCl
3、PCl
5、PF
3、PF
5、PBr
3、PBr
5、BCl
3、BF
3、CCl
4又はGeCl
4又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含む。前記水素を含むがハロゲンを含まないドーパントは、リン、ホウ素、ヒ素、炭素又はゲルマニウム、又はこれらの2又はそれ以上の組合せを含み得る。水素を含むがハロゲンを含まないドーパントは、PH
3、BH
3、B
2H
6、AsH
3、炭化水素(例えばCH
4、C
2H
4)又はGeH
4又はそれらの2又はそれ以上の組合せを含む。
【0052】
本発明者は次のことを見出した。即ち、404で前記第1の前駆体の暴露と308でドーパントを含む前記第2の前駆体の暴露とを別々に暴露することは、独立に、前記基板500上のハロゲン対水素の比を制御可能とする、ということである。このことは、前記シリコン含有膜506からハロゲンを前記揮発性HX副生成物の形でハロゲン除去を最大化し、それにより前記シリコン膜506のハロゲン含有量を低減するために利用され得る。さらに、前記別々の暴露は、シリコンの前記ドーパントとの比を制御し、従って前記ドープシリコン膜の前記ドーピングレベルを制御するために利用され得る。
【0053】
410で、前記第2の前駆体と前記HX副生成物(例えば、HF、HCl)は前記バッチプロセスシステムから真空除去又はパージされる。前記パージは、N
2又は希ガスなどの不活性ガスを使用し得る。
【0054】
本発明のいくつかの実施態様によると、前記シリコン含有膜506は411で選択的に処理され得る。前記選択的処理は、前記シリコン膜506中の汚染(例えばハロゲン)量をさらに低減するために使用され得る。前記選択的な処理は、ステップ410の後に規則的、例えばステップ310の後毎回又はより少なく実施され得る。例えばステップ310を2回行った後、3回行った後又は4回行った後など、である。本発明の1つの実施態様によると、前記繰り返しの前に、前記シリコン含有膜506は、不活性ガス、H
2ガス又は不活性ガスとH
2ガスの組合せを含プロセスガス507でプラズマ処理され得る。他の実施態様によると、前記繰り返しの前に、前記シリコン含有膜506は、不活性ガス、H
2ガス又は不活性ガスとH
2ガスの組合せを含むクリーニングガス507でプラズマの不存在下で処理され得る。
【0055】
412で、前記暴露及び真空除去又はパージステップが、前記シリコン含有膜508が望ましい厚さを持つまで繰り返される。いくつかの例では、前記シリコン含有膜508は、1nmと1000nmの間、又は10nmと100nmの間の厚さを持ち得る。しかし他の厚さをここに含まれ使用され得る。
【0056】
ここまで、ALDによりシリコン又はシリコン含有膜を堆積するための複数の実施態様が開示された。本発明の実施態様のこれまでの説明は、例示及び説明を目的として提示されてきた。これは、本発明を開示されたものだけに限定することを意図するものではない。この記載及び以下の特許請求の範囲は、説明を目的として使用され限定的に解釈されない用語を含む。例えば、ここで(特許請求の範囲を含む)使用される用語「上」は、パターン化基板「上」の膜が前記膜の上にかつ直接接触することを必要とする場合だけでなく、前記膜と前記パターン化基板との間に第2の膜やその他の構成がある場合も含まれる。
【0057】
当業者は、これまでの教示に照らして、種々の修正及び変更が可能であることを理解することができる。当業者は、
図1に示された種々の要素について種々の均等な組合せ及び置換を認識できるであろう。従って、本発明の範囲は、これらの詳細な説明により限定されるものではなく、むしろ特許請求の範囲により限定されるべきものである。