特許第5986136号(P5986136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986136
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】MoSi2製発熱体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/64 20060101AFI20160823BHJP
   H05B 3/42 20060101ALI20160823BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H05B3/64
   H05B3/42
   H05B3/14 D
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-93680(P2014-93680)
(22)【出願日】2014年4月30日
(62)【分割の表示】特願2009-241291(P2009-241291)の分割
【原出願日】2009年10月20日
(65)【公開番号】特開2014-160673(P2014-160673A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年4月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(72)【発明者】
【氏名】高村 博
(72)【発明者】
【氏名】成田 里安
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−056725(JP,A)
【文献】 国際公開第03/075613(WO,A1)
【文献】 特開2004−047282(JP,A)
【文献】 特表2007−535782(JP,A)
【文献】 特開平10−324571(JP,A)
【文献】 特表2005−519427(JP,A)
【文献】 米国特許第02992959(US,A)
【文献】 特開2006−302887(JP,A)
【文献】 特開平07−025685(JP,A)
【文献】 実開平02−020293(JP,U)
【文献】 特開2007−128796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00 − 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状端子部と板状発熱部が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体の製造方法であって、円柱状のMoSi製原材料を曲げ加工によりU字型とした後、中央の発熱部となる位置を切削加工する際に、MoSi製の円柱の一方の曲面から削除を開始して、板状発熱部の一方の面を平面に加工し、板状発熱部の他方の面については、円柱の曲面が残るように切削加工して、該発熱部の板幅が円柱状端子部の直径の0.7〜1.0に、板状発熱部の断面積が円柱状端子部の断面積の0.15〜0.3倍にすることを特徴とするMoSi製発熱体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱状端子部と板状発熱部が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体であり、従来の棒状のヒーターよりも省エネルギーであり、均熱性改善効果を得ることが可能であるMoSi製発熱体及び同発熱体の製造方法に関する。
なお、本明細書で使用するMoSi製板状発熱体は、純MoSi乃至MoSiにSiO等の絶縁性酸化物等を含有させて(通常、MoSiは70wt%以上含有する)電気抵抗を増加させたMoSi主成分とする発熱体を含む。
【背景技術】
【0002】
二珪化モリブデン(MoSi)を主成分とする発熱体は、優れた耐酸化特性を有するため、特に大気又は酸化性雰囲気下で使用する超高温発熱体として1950〜1960年頃から市販され、現在まで幅広い用途で使用されている。この発熱体は主成分として、MoSiを70wt%以上含有している。
従来、ガラス工業やセラミックス焼成等の多くの分野で使用されている発熱体は発熱部(なお、通常「発熱部」は、通電時に主に発熱する、発熱体の径が細い部分(端子部以外)を意味する。)が1つのU字形を成す形状(2シャンク型)をしており、炉の天井や側壁から宙吊りに取り付けられ、その炉の最高使用温度は1700〜1800°Cに達する。
【0003】
MoSiを主成分とする発熱体は、図2に示すように、通常棒状の発熱体素材をU字形に曲げ、この発熱部の両端に端子部を溶接したU字形発熱体が使用されている。図2において、このU字形発熱体は発熱部3、溶接部4、グリップ(端子)部2、給電部1からなる。
【0004】
現在、市販されているMoSiを主成分とするU字形ヒーターの規格は、発熱部と端子部の線径が、それぞれφ3/φ6、φ4/φ9、φ6/φ12、φ9/φ18、φ12/φ24等になる。これはMoSiヒーターの場合は、基本的に発熱部と端子部は同じ組成になるため、素線の直径(断面積)で電気抵抗を変化させ、発熱量をコントロールする必要があるためである。従ってヒーターに通電すると、高抵抗の細い径の部分が高温になり加熱体としての役割を担い、低抵抗の太い径の部分は発熱を抑え、給電する部分を低温に保つための端子部の役割を担う。
【0005】
MoSiヒーターでは、この機能を引き出すには発熱部の断面積は端子部の断面積の1/4以下にする必要があり、つまりヒーターの線径では、市販されている規格にあるとおり、発熱部は端子部の1/2以下にする必要があった。
このため、従来の棒状ヒーターでは、発熱部線幅と端子部線幅の比は1:2もしくは4:9となり、つまり発熱部線幅/端子部線幅の比率は0.44〜0.50が常識となっている。
【0006】
伝熱には熱伝導、熱対流、熱輻射の3形態あるが、抵抗加熱炉における被熱処理体への伝熱は、ヒーターからの熱輻射の割合が高いと言われている。輻射エネルギーの伝熱量Qは、Q=σ(T−T)・A・Fという式で表され、ここでσはステファン・ボルツマン定数、T1,Tは絶対温度になり、抵抗加熱炉においてはヒーターと被熱処理体の絶対温度に相当し、またAは面積、Fは形態係数になる。
形態係数Fは、二つの面の幾何学的関係を表す数値で、一方の面のすべての位置から発射された輻射線が相手の面内に到達する割合を足し合わせた値を意味し、0〜1で表示される。
【0007】
従って抵抗加熱炉において同一の表面積を有する被熱処理体に輻射エネルギーの伝熱量Qを多くするには、ヒーターの絶対温度を高くするか、もしくは形態係数を大きくするかになる。絶対温度を高くする場合は、それだけ多くの電力が必要となるため、省エネルギーの観点からは効果がない。
一方、ヒーターから発射される輻射線が被熱処理体に到達する割合、つまり形態係数を大きくすることができれば、効果的に被熱処理体へ伝熱が可能となり、省エネルギー化が達成できると考えられる。
【0008】
そこで本発明者らは、発熱部を従来の棒状から断面積は同一のまま板状にすることによって、被熱処理体と対面する発熱部の面積を大きくすることを考えた。発熱部線幅/端子部線幅の比率を従来の0.44〜0.50から0.7〜1.0に大きくすれば、形態係数も大きくなり、同じヒーターの表面温度でも輻射エネルギーの伝熱量が多くなると考えられる。
板状のMoSiヒーターについては、以前、本発明者によって特許出願を行なっているが、棒状に押し出した後、加熱変形させて板状にする場合(文献1参照)は、形状安定性が非常に難しかった。
【0009】
また、帯状(板状)に押し出し成形して作製する場合(特許文献2参照)場合は、端子部も板状となり、炉の構造を見直す必要があり、また端子部周辺の付属品を特別に調達する必要があり、従来の棒状ヒーターからの置き換えが非常に不便であった。
また、板状に押し出し発熱部と棒状の端子部を接合する方法は、溶接が安定しない問題があった。このようなことから最近は、形状安定性に優れ、溶接部の問題がなく、既存ヒーターの容易に置き換え可能なヒーターが要求されていた。
【0010】
炉の構造やヒーター周辺の付属品を変更することなく従来品と置き換えを可能にするには、端子部は従来通り棒状にしておく必要がある。また、U字形のピッチを市販の規格と同一にしておく必要がある。
現在、市場で販売されている発熱部と端子部の線径がφ4/φ9、φ6/φ12、φ9/φ18のヒーターにおいて発熱部(線径が細い部分)の標準U字ピッチは、それぞれ、25mm(φ4材使用)、40mm(φ6材)、50mm(φ9材)となっている。
【0011】
この部分を、端子部の太い材料で25mm(φ9材)、40mm(φ12材)、50mm(φ18材)を用いて通電加熱しながら曲げようとした場合、従来は断線するか、曲がってもU字頂点部にクラックが入るために、加工が非常に難しく、行われていなかった。また、仮にU字型に曲がっても、U字部が同一平面に乗るのが難しく、そのまま発熱部を研削すると、厚みばらつきが生じ、均一に発熱するヒーターを作製するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3947661号
【特許文献2】WO20020871
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、円柱状端子部と板状発熱部が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体であって、棒状の素線を通電加熱によりU字曲げ加工した後、発熱部とする領域を研削することにより、U型平面を有する発熱部と、棒状の端子部で構成されるハイブリッド形状のヒーターを提供する。
平面状の発熱部は従来の棒状より断面積は同一だが表面積は大きく、輻射エネルギーの伝熱効率を高め、従来の棒状ヒーターより省エネや均熱性改善の効果を得ることができるようにする。
一方、棒状の端子部は、一般に市場で使用されているMoSiを主成分とするヒーターと同形状とし、ヒーターを炉に装着する時に使用される図3で示したホルダー5やクリップ6、接続帯7等の付属品をそのまま使用できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究の結果、端子部となる太い棒状の部分を、それより半分の細さで行なわれていたU字曲げのピッチと同じ小さいピッチで曲げることができるようになった。またU字曲げた後の形状が同一平面にない場合は矯正することによって、発熱部となる中央部からU字形まで研削加工した場合に発熱の厚みが均一にすることができるとの知見を得た。
【0015】
本発明はこの知見に基づき、
1)両端が円柱状端子部、その間をつなぐ板状発熱部からなる発熱体であって、発熱部の板幅が円柱状端子部の直径の0.7〜1.0であり、板状発熱部の断面積が円柱状端子部の断面積の0.15〜0.3倍であることを特徴とするMoSi製発熱体
2)板状発熱部がU字形であり、円柱状端子部が給電部に接合できる構造を備えていることを特徴とする上記1)記載のMoSi製発熱体
3)板状発熱部の片面が円柱状端子部の曲面を有することを特徴とする上記1)又は2)記載のMoSi製発熱体、を提供する。
【0016】
また本発明は、
4)円柱状端子部と板状発熱部が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体の製造方法であって、円柱状のMoSi製原材料を曲げ加工によりU字形とした後、中央の発熱部となる位置を切削加工して、該発熱部の板幅が円柱状端子部の直径の0.7〜1.0に、板状発熱部の断面積が円柱状端子部の断面積の0.15〜0.3倍にすることを特徴とするMoSi製発熱体の製造方法
5)円柱状のMoSi製原材料を曲げ加工によりU字形とした後、中央の発熱部となる位置を切削加工する際に、MoSi製の円柱の一方の曲面から削除を開始して、板状発熱部の一方の面を平面に加工し、板状発熱部の他方の面が円柱の曲面が残るように加工することを特徴とする前記4)記載のMoSi製発熱体、を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、両端が円柱状端子部、その間をつなぐ板状発熱部からなる発熱体であって、棒状の素線を通電加熱によりU字曲げ加工した後、発熱部とする領域を研削することにより、U型平面を有する発熱部と、棒状の端子部で構成されるハイブリッド形状のヒーターを提供することが可能となった。
また、平面状の発熱部は従来の棒状より大面積とし、輻射エネルギーの伝熱効率を高め、従来の棒状ヒーターより省エネや均熱性改善の効果を得ることができる効果を得ることができる。さらに、棒状の端子部は、一般に市場で使用されているMoSiを主成分とするヒーターと同形状とすることができるので、ヒーターを炉に装着する時に使用されるホルダーやクリップ、接続帯等の付属品はそのまま使用することが可能で、従来ヒーターからの置き換えが容易となる効果を有する。
【0018】
さらに、本発明のMoSi製板状発熱体及び同発熱体の製造方法は、加熱時の変形(あばれ)やショート等の故障が少なく、溶接部の剥離もない。また発熱体の交換が容易でありメンテナンスコストを低減できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】円柱状端子部と板状発熱部が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体であり、発熱部が板状であり、端子部が円柱状である本発明のMoSi製板状発熱体の例を示す模式図である。
図2】従来の棒状体から作製されたU字形発熱部を有する発熱体の模式図である。
図3】ヒーターを炉に装着する時に使用する接続帯等の付属品の説明図である。
図4】本発明の円柱状端子部と板状発熱部が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体の模式図であり、上図は、上面と下面が平面である平板状板状発熱部を示す図であり、下図は、上面が平面であり、下面が円柱の曲面である平板状板状発熱部を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のMoSi製板状発熱体を製造するには、まず発熱体の原料粉末をバインダーと混合し、この混合物を型から押出して円柱状の成形体(グリーン)とする。そして、脱脂を行なった後、一次焼結及び通電焼結により原料粉末を焼結させて、緻密で直進性の良い円柱状の原材料を作製する。
図1に、本発明のMoSi製板状発熱体の代表的な形状例を示す。同図において、符号1は電極部、符号2は端子部、符号3は発熱部をそれぞれ示す。
【0021】
図4は、本発明の円柱状端子部2と板状発熱部3が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体の2種類の例を示す図である。上図は、上面と下面が平面である平板状板状発熱部3を示し、図4の下図は、上面が平面であり、下面が円柱の曲面である平板状板状発熱部3を示す。
上記の通り、円柱状端子部2の構造は従来品と同様であり、両端の円柱状端子部の末端に電極部を構成することができる。したがって、市販の付属品を利用して給電できる。
【0022】
発熱部3の一方の面を板状に、他方の面を円柱状の曲面とした場合は、双方の面で表面積が異なるので、熱放射に異方性を持たせることができる。通常は、被熱処理体には形態係数を大きくして輻射伝熱量を多くするためにフラットな面を向けるが、炉体全体を均一に加熱したい場合は曲面側を炉内の内側に向けても良い。
片側が曲面である板状発熱部3は、図4に示すように片側から加工するだけで良いので、作業が簡略化でき、低コストで作製できるメリットがある。また図4の下図のような断面にした場合に板厚を少し肉厚にできる点や、エッジでのチッピングを低減できる等で材料の信頼性を向上させる効果もある。
【0023】
この例は、発熱体の原料粉末をバインダーと混合し、この混合物を型から押出して板状の成形体(グリーン)を作製したものである。しかし、この原料となる円柱状の成形体の製造方法は、円柱状の成形体を得ることができれば、押し出しに限定される必要はないことは容易に理解できるであろう。例えば、プレス成型により円柱状の成型体とすることもできる。密度の高いより精密な焼結体を得ることができれば、いずれの原材料を使用しても良い。
【0024】
このように作製した円柱状の原材料は、通電加熱し、高温下で曲げ加工することができる。円柱状のMoSi製原材料を、所定のピッチに曲げ加工によりU字形とした後、中央の発熱部となる位置を切削加工して、該発熱部の板幅が円柱状端子部の直径の0.7〜1.0に、板状発熱部の断面積が円柱状端子部の断面積の0.15〜0.3倍にする。これにより、円柱状端子部と板状発熱部が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体を得ることができる。
【0025】
上記のように、円柱状の原材料を通電加熱し高温下で曲げ加工した後、両端に円柱状端子部を残してその間を切削し、円柱状端子部の間をつなぐ板状発熱部を形成するものであるから、板状発熱部の向きを任意に形成できる。
通常、図1及び図2に示すように、板状発熱部3はU字形の面と平行な面となるように切削する。しかし、U字形の面に垂直な面になるように切削することもできることも容易に理解できるであろう。すなわち、加熱する対象物によって、板状発熱部3の面の向きを変えることができる。
【0026】
太い端子部となる素線をそのままU字曲げして、その後に発熱部となる部分を厚み方向に研削して薄くすることにより、端子部より十分に高抵抗にしてヒーターの構造をとる。この時、研削してフラットになった発熱部の板幅は、端子部の線幅の0.7〜1.0になり、従来品より大きくすることができるという大きな効果を得ることができる。これは、本願発明の製造方法において初めて達成することが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、円柱状端子部と板状発熱部が同一材料からなる一体型MoSi製発熱体であって、棒状の素線を通電加熱によりU字曲げ加工した後、発熱部とする領域を研削することにより、U型平面を有する発熱部と、棒状の端子部で構成されるハイブリッド形状のヒーターとして利用できる。
また、平面状の発熱部は従来の棒状より大面積とし、輻射エネルギーの伝熱効率を高め、従来の棒状ヒーターより省エネや均熱性改善の効果を得ることができる効果を得ることができ、棒状の端子部は、一般に市場で使用されているMoSiを主成分とするヒーターと同形状とすることができるので、ヒーターを炉に装着する時に使用されるホルダーやクリップ、接続帯(図示)等の付属品はそのまま使用することが可能で、従来ヒーターからの置き換えが容易となる。
【符号の説明】
【0028】
1: 給電部
2: 端子部
3: 発熱部
4: 溶接部
5: ヒーターホルダー
6: クリップ
7: 接続帯
図1
図2
図3
図4