特許第5986503号(P5986503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986503固定用インサート、電極アセンブリおよびプラズマ処理チャンバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986503
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】固定用インサート、電極アセンブリおよびプラズマ処理チャンバー
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20160823BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H05H1/46 M
   C23C16/44 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-502094(P2012-502094)
(86)(22)【出願日】2010年3月15日
(65)【公表番号】特表2012-521638(P2012-521638A)
(43)【公表日】2012年9月13日
(86)【国際出願番号】US2010027273
(87)【国際公開番号】WO2010111055
(87)【国際公開日】20100930
【審査請求日】2013年3月11日
【審判番号】不服2015-5968(P2015-5968/J1)
【審判請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】12/409,984
(32)【優先日】2009年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーディン・ランダル
(72)【発明者】
【氏名】キール・ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ライトル・デュアン
【合議体】
【審判長】 伊藤 昌哉
【審判官】 川端 修
【審判官】 森林 克郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−103589(JP,A)
【文献】 特公昭48−14969(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/54
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
H01L 21/302、 21/304、21/461、21/3065、21/205、21/31、21/365、21/469、21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面と、正面と、複数のシャワーヘッド通路と、複数の裏面凹部と、複数の裏面インサートと、を備えるシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記複数のシャワーヘッド通路が、前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記裏面から前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記正面に伸長し、
前記複数の裏面凹部が、前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記裏面に形成され、前記裏面凹部は、前記凹部と前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記正面との間に所定の厚さのシリコンベース電極材を残すように形成され、
前記裏面インサートが、前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記裏面に沿って前記裏面凹部内に配置され、
前記裏面インサートが、ネジ付き外径部と、ネジ付き内径部と、前記ネジ付き内径部内に形成されたツール係合部と、を備え、
前記裏面インサートの前記ツール係合部が、前記裏面インサートの回転軸の周りに配置される複数のトルク受容スロットを備え、
前記トルク受容スロットが、対向する対のトルク受容スロットを介した前記裏面インサートの軸上回転を避けるように、配置され
前記裏面インサートの前記ツール係合部が、対向するn(n−1)/2対のトルク受容スロットを形成するように、前記裏面インサートの回転軸の周りに配置されるn個のトルク受容スロットを備え、
nは奇数であり、
前記トルク受容スロットが、前記対向するn(n−1)/2対のトルク受容スロットの各対を介した前記裏面インサートの軸上回転を避けるように、かつ、前記回転軸の周りに等間隔に配置される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記裏面インサートが、さらに、前記裏面インサートの前記ツール係合部に係合されたツールが前記裏面インサートの前記ネジ付き外径部を越えて伸長することを防止するために、前記ツール係合部と前記ネジ付き外径部との間に1つ以上の側面保護部を備えるように、前記ツール係合部が形成される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。
【請求項3】
請求項1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記裏面インサートの前記ツール係合部が、対向する3対のトルク受容スロットを形成するように、前記裏面インサートの回転軸の周りに配置される3つのトルク受容スロットを備え、
前記トルク受容スロットが、前記対向する3対のトルク受容スロットの各対を介した前記裏面インサートの軸上回転を避けるように配置される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。
【請求項4】
請求項に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
=3またはn=5である、シリコンベース・シャワーヘッド電極。
【請求項5】
請求項1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記トルク受容スロットが、前記裏面インサートの前記回転軸に平行な方向に沿って次第に狭くならない断面形状を規定する、シリコンベース・シャワーヘッド電極。
【請求項6】
請求項1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記トルク受容スロットが、前記回転軸に平行に伸長する、尖端部を持たない側壁によって規定される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的にはプラズマ処理に関し、具体的にはプラズマ処理チャンバーおよびその内部で用いられる電極アセンブリに関する。プラズマ処理装置を用いて、以下に限定されるものではないが、エッチング、物理蒸着、化学蒸着、イオン注入、レジスト除去等を含む様々な手法で基板の処理を行なうことができる。以下に限定されるものではないが、たとえば、1つのプラズマ処理チャンバーは、通常シャワーヘッド電極と称される上部電極と、下部電極と、を備える。両方の電極間に電場を形成して、処理ガスをプラズマ状態に励起させ、反応チャンバー内の基板を処理する。
【発明の概要】
【0002】
本開示の一つの態様は、電極裏面に沿って形成された裏面凹部に裏面インサートを配置させた、シリコンベース・シャワーヘッド電極である。裏面インサートは、ネジ付き外径部と、ネジ付き内径部と、ネジ付き内径部内に形成されたツール係合部と、を備える。裏面インサートが、さらに、裏面インサートのツール係合部に係合されたツールが裏面インサートのネジ付き外径部を越えて伸長することを防止するために、ツール係合部とネジ付き外径部との間に1つ以上の側面保護部を備えるように、ツール係合部が形成される。
【0003】
別の態様において、裏面インサートのツール係合部は、裏面インサートの回転軸の周りに配置される複数のトルク受容スロットを備える。トルク受容スロットは、対向する対のトルク受容スロットを介した裏面インサートの軸上回転を避けるように、配置される。また別の態様は、本明細書に開示するように製造されるシリコンベース・シャワーヘッド電極を備えるプラズマ処理チャンバーに関する。
【0004】
以下の図面は、以下に記載する本開示の実施例の説明の理解を助けるものであり、同じ参照番号は同じ構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の実施例の特徴を備えるプラズマ処理チャンバーを示す概略図。
図2】本開示の一実施例におけるシャワーヘッド電極の裏面を示す平面図。
図3】本開示の一実施例におけるシャワーヘッド電極の一部を示す断面図。
図4】本開示の一実施例におけるシャワーヘッド電極の裏面方向と厚さ方向の等角投影図。
図5】本開示の一実施例における固定部を備える電極アセンブリを示す断面図。
図6】本開示の別の実施例における固定部を備える電極アセンブリの一部を示す断面図。
図7】本開示の別の実施例における固定部を備える電極アセンブリの一部を示す断面図。
図8A】本開示の別の実施例における固定部を備える電極アセンブリの一部を示す断面図。
図8B図8Aに示す構造と動作とを明確にするための概略図。
図8C図8Aに示す構造と動作とを明確にするための概略図。
図9】本開示の別の実施例における固定部を備える電極アセンブリの一部を示す断面図。
図10】本開示のさらに別の実施例における固定部とこれと相補的な電極アセンブリの機械加工部を示す図。
図11】本開示のさらに別の実施例における固定部とこれと相補的な電極アセンブリの機械加工部を示す図。
図12】本開示の他の態様における裏面インサートを示す等角投影図。
図13】本開示の他の態様における裏面インサートを示す等角投影図。
図14】本開示の裏面インサートにおけるトルク受容スロットの他の配置例を示す概略図。
図15】本開示の裏面インサートにおけるトルク受容スロットの他の配置例を示す概略図。
図16図12および図13に示す裏面インサートを係合して回転させるツールを示す等角投影図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
プラズマ処理チャンバー10と関連させて本開示の様々な態様を例示するが、本開示の概念を、本開示の要旨に不可欠なものではない特定のプラズマ処理の構成や構成要素に限定されることを防ぐために、プラズマ処理チャンバー10は、図1にその概要を図示するにとどめる。図1にその概要を示すように、プラズマ処理チャンバー10は、真空源20と、処理ガス源30と、プラズマ電源40と、下部電極アセンブリ55を有する基板支持部50と、上部電極アセンブリ100と、を備える。
【0007】
図2図5に、本開示の一実施例における上部電極アセンブリ100を示す。電極アセンブリ100は、一般的に、固定部60と、アラインメント・ピン66と、温度制御板70と、シリコンベース・シャワーヘッド電極80と、温度制御板70の正面74とシリコンベース・シャワーヘッド電極80の裏面82との間に配置される熱伝導性ガスケット75と、を備える。さらに具体的に説明すると、温度制御板70は、裏面72と、正面74と、処理ガスを温度制御板70の正面74に流すように構成される1つ以上の処理ガス流路76と、を備える。本開示は、特定の温度制御板の材料や処理ガス流路の構成に限定されるものではないが、温度制御板の材料に適したものとしては、アルミニウム、アルミニウム合金やこれらと同等の熱伝導体が上げられる。さらに、温度制御板の設計における様々な詳細に関しては、これに限定されるものではないが、米国特許出願2005/0133160の記載を参照されたい。
【0008】
シリコンベース・シャワーヘッド電極80は、裏面82と、正面84と、シリコンベース・シャワーヘッド電極80の裏面82からシリコンベース・シャワーヘッド電極80の正面84に伸長する複数のシャワーヘッド通路86と、を備える。シリコンベース・シャワーヘッド電極80は、さらに、電極80の裏面82に形成される複数の裏面凹部88を備える。図5に示すように、裏面凹部88は、凹部88と電極80の正面84との間に、厚さxのシリコンベース電極材を残すように形成される。裏面インサート90は、電極80の裏面82に沿って裏面凹部内に配置される。凹部88とシャワーヘッド電極80の正面84との間に存在するシリコンベース電極材により、裏面インサート90と固定部60とをプラズマチャンバー内の反応種から隔絶することができるため、プラズマ処理チャンバー10における潜在的汚染源を最小限に抑えることができる。電極80の寿命期間にわたって上述した隔絶状態を維持できるように、厚さxは、少なくとも約0.25cm、または、言い換えると、シリコンベース・シャワーヘッド電極80全体の厚さの少なくとも約25%であることが望ましい。
【0009】
図1に示すように、密閉されたプラズマ空間65を規定するように温度制御板70とシリコンベース・シャワーヘッド電極80とを構成することにより、この隔絶状態を強化することができ、プラズマ処理チャンバー10の真空部分15内部のガスおよび反応種が固定部60やインサートに到達することはない。プラズマ空間65をどのように規定するかは、温度制御板70とシャワーヘッド電極80の各々の構成に応じて変わる。多くの場合、温度制御板70とシャワーヘッド電極80とを形成する各々の材料が、プラズマ空間の大部分を規定すると考えられる。さらに、特に、温度制御板70とシャワーヘッド電極80との間の接合部分やプラズマ処理チャンバー10の他の構成部品との間の接合部分において、種々の密閉部材を用いて、このプラズマ空間を強化することができる。
【0010】
図5に示すように、シリコンベース・シャワーヘッド電極80の裏面82に対して埋め込まれるように、あるいは、少なくとも裏面82と同一平面上になるように裏面凹部88内に裏面インサート90を配置させることにより、上述したプラズマ処理チャンバー10内における反応種からの裏面インサート90と固定部60との隔絶をさらに強化することができる。同様に、温度制御板70の裏面72に対して埋め込まれるように、あるいは、少なくとも裏面72と同一平面上になるように、固定部60を温度制御板70の固定部通路78内に配置させる。
【0011】
処理ガス流路76に加えて、温度制御板70は、固定部通路78を備え、固定部通路78は、シリコンベース・シャワーヘッド電極80の裏面82に沿って裏面凹部88内に配置される裏面インサート90に固定部60が到達できるように構成される。固定部60と裏面インサート90とを用いて、温度制御板70とシリコンベース・シャワーヘッド電極80とを係合することができる。係合状態で、温度制御板70の正面74がシリコンベース・シャワーヘッド電極80の裏面82に面し、シリコンベース・シャワーヘッド電極80のシャワーヘッド通路86が、温度制御板70の処理ガス流路76と一直線上に並ぶ。さらに、固定部通路78が、電極80の裏面82に沿って裏面凹部88内に配置される裏面インサート90と一直線上に並ぶ。この結果、固定部60は、温度制御板70の固定部通路78を通って伸長し、電極80の裏面82に沿って裏面凹部88内に配置される裏面インサート90に係合することができる。
【0012】
固定部60および裏面インサート90は、温度制御板70とシリコンベース・シャワーヘッド電極80との間の係合を維持するように構成される。さらに、固定部60および裏面インサート90は、温度制御板80とシャワーヘッド電極80との係合を解除可能なように構成される。図5に示す実施例および本明細書に記載する他の実施例において、係合および係合解除の際に、裏面インサート90の比較的弾力性のある材料により、シリコンベース・シャワーヘッド電極80のシリコンベース電極材は、固定部60と摩擦接触することがない。裏面インサート90のこの働きにより、プラズマチャンバー10内で汚染源となる、固定部60によるシリコンベース電極材の摩耗を抑制することができる。裏面インサート90が弾力性を持つことにより、温度制御板70とシリコンベース・シャワーヘッド電極との間で、非破壊的な係合および係合解除を繰り返すことが可能になる。
【0013】
熱可塑性物質や他の種類の樹脂、合成ゴム、セラミックス、金属等、様々な材料を選択して裏面インサート90を形成可能であり、あるいは、複合材料層からインサートを形成可能であるが、本開示の実施例において、裏面インサート90は、裏面インサートの硬さがシリコンベース電極材の硬さを越えないように調製され製造される多量のポリエーテル・エーテルケトン(PEEK)を含有する。他に、利用可能な材料としては、以下に限定されるものではないが、ホモポリマーまたは共重合体を充填したまたは充填しないで調製されるDelrin(登録商標)または他のアセタール樹脂エンジニアリングプラスチック、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0014】
温度制御板70とシリコンベース・シャワーヘッド電極80との間は、本開示の概念に従う様々な方法で係合可能であるが、図5および図7図11に示す各実施例において、裏面インサート90を、シリコンベース・シャワーヘッド電極80の裏面82に形成された裏面凹部88内に収容される固定具として構成するようにしてもよい。もっと具体的に説明すると、図5に示す実施例では、裏面インサート90は、シリコンベース電極材にネジ付き部を備えることにより、裏面凹部に固定される。インサート90を所定の位置に配置し、たとえばネジまたはボルトを有する固定部60を裏面インサート90に係合することにより、温度制御板70にシャワーヘッド電極80を固定する。図7に示す実施例では、接着剤を用いて、裏面インサートを裏面凹部に固定する。図8A図8Cに示す実施例では、裏面凹部88が逃げ溝部89を備えるように機械加工して、裏面インサート90を裏面凹部88に挿入して、裏面インサート90を裏面凹部88の逃げ溝部89内に回転させることにより、インサート90を凹部88に固定する。
【0015】
図9に示すように、裏面インサート90を、温度制御板70の各固定部通路78に伸長するように構成される裏面伸長部92を有するスタッドとして構成するようにしてもよい。この場合、固定部60は、たとえば、ネジ係合を介して、固定部通路78内に収容される裏面インサート90の裏面伸長部92に到達できるように構成される。
【0016】
1つまたは複数の裏面インサート90を用いる本明細書で開示される実施例のいずれにおいても、熱負荷時に、固定部60と裏面インサート90とが係合状態の場合に、裏面インサートが裏面凹部から外れることなく、裏面凹部内で固定部と共に移動可能であるように、固定部60と、裏面インサート90と、裏面凹部88と、を構成することが好適である。たとえば、図10および図11に示す本開示の実施例は、図8A図8Cを参照して上述した逃げ溝部を備える実施例の変形例であり、裏面インサート90は、シャワーヘッド電極80の電極材に形成された逃げ溝部89と相互補完的に構成されるタブ95を備える。タブ95を電極80内の対応する溝85と一直線上に配置し、インサート90を凹部88に挿入し、溝85に規定されるようにインサート90を回転させることにより、インサート90を凹部88内に固定することができる。
【0017】
図10および図11に示す実施例では、インサート90の埋設端部96の小径部94の周りにバネを配設することにより、バネ荷重状態で、インサート90を凹部88内に固定できる。インサート90の外径およびタブ95の大きさと形状は、バネ荷重状態で、裏面凹部88内でのインサート90の動きを可能にするように、選択される。結果として、プラズマ処理において通常みられる熱負荷時に、裏面インサート90が裏面凹部88から外れることなく、また、固定部60とインサート90との間の係合に悪影響を与えることなく、裏面インサート90を、固定部60と共に、裏面凹部88内で動かすことができる。
【0018】
本発明の発明者らは、凹部88近傍における電極材との摩耗接触が、プラズマ処理チャンバー10内での潜在的汚染源となりうることを見出した。したがって、図10および図11に示す実施例の場合のように、ネジ回しやその他摩耗を起こす可能性のあるツールを用いて本開示の裏面インサート90の取り付けや取り外しをする構成の場合、裏面インサート90の溝付き頭部の溝端部に、または、取り外しツールに対応する他の係合部に、側面保護部98を設けるようにしてもよい。一般的に言えば、裏面インサート90は、ツールがインサートの周縁部を越えて伸長し電極材の凹部内径に接触することがないように、ツールを裏面インサートのツール係合部に係合させることができる、1つ以上の側面保護部98を備えるようにしてもよい。
【0019】
さまざまなバネ荷重構成を利用して、プラズマ処理の際の熱負荷によって生じる応力による固定部60の係合解除を抑制することができる。たとえば、温度制御板70とシリコンベース・シャワーヘッド電極80との間をバネ荷重で係合する構成の例を図5図7に示す。図5および図7に示す例では、裏面インサート90が、シャワーヘッド電極80の裏面82に形成された各裏面凹部88に収容される固定具として構成される。また、固定部60は、固定部60が裏面インサート90に到達する際の係合力に抗するバネ荷重ワッシャ62の形のバネ部材を備える。図6に示す例では、裏面インサートがなく、電極材に形成されたネジ穴と直接ネジ係合されている。あるいは、図9に示すように、バネ部材を、固定部通路78内に収容される固定部60の長手方向伸長部の周りに配設されるコイルバネ64としてもよい。
【0020】
図12図14に、本開示の他の実施例の裏面インサート110を示す。上述した実施例と同様に、図12図14に示す裏面インサート110は、シリコンベース・シャワーヘッド電極の裏面に沿って裏面凹部内に配置される。図12図14に示す実施例では、裏面インサート110は、ネジ付き外径部112と、ネジ付き内径部114と、ネジ付き内径部114内に形成されるツール係合部116と、を備える。図10および図11に示す裏面インサート110の場合と同様に、裏面インサート110は、ツール係合部116とネジ付き外径部112との間に1つ以上の側面保護部115を備える。側面保護部115を設けたことにより、裏面インサート110のツール係合部116に係合したツールが、インサート110のネジ付き外径部112を越えて伸長するのを防ぐことができる。上述したように、これにより、ツールがシリコンベース・シャワーヘッド電極に接触するのを防ぐことができ、電極材の一部が汚染物質として剥がれ落ちるのを防ぐことができる。
【0021】
図12図14に示すように、裏面インサート110のツール係合部116は、裏面インサート110の回転軸130の周りに配置される複数のトルク受容スロット120を備える。ユーザーがマイナスドライバーやプラスドライバー等の従来のツールを用いてインサートを取り外そうとすることがないように、トルク受容スロット120は、たとえば、マイナスドライバーを用いて対向する対のトルク受容スロット120を係合しようとしてもインサート110が軸外回転してしまうように、構成される。もっと具体的に言えば、図14の対向する対のトルク受容スロット120間に引いた点線で示すように、対向する対のトルク受容スロット間の係合は、完全に軸外になってしまう。これに対して、図16に示すような相互補完的形状の取り付け/取り外しツール200を用いれば、回転軸130を中心とした望ましい軸上回転をさせることができる。
【0022】
図12図14および図16に示す実施例では、裏面インサート110のツール係合部116は、対向する3対のトルク受容スロット120を形成するように回転軸130の周りに配置される3つのトルク受容スロット120を備えているが、裏面インサート110のツール係合部116は、対向するn(n−1)/2対のトルク受容スロットを形成するように、裏面インサートの回転軸の周りに配置されるn個のトルク受容スロットを備えるようにすればよい。図14および図15に示す例では、トルク受容スロット120は、回転軸の周りに等間隔で配置され、n=3(図14)またはn=5(図15)である。別の実施例において、一部のマルチスロット構成が軸上回転を避ける度合いを低下させる可能性があるが、トルク受容スロットを回転軸の周りに等間隔または非等間隔で配置し、3つ、4つまたは5つのスロット120(nは3以上5以下)を備えるようにする構成も望ましい。
【0023】
図12および図13に示すように、トルク受容スロット120は、断面積が小さくなっていくことなく、均一に、インサート110本体内で下向きに形成され、すなわち、次第に狭くならない断面形状を有する。これに対して、十字ネジ等の多くの従来のネジは、ネジとネジ回しとの係合を強固にするために深さ方向に狭くなる断面形状を有している。しかし、本発明の発明者らは、このような狭窄は、取り付け/取り外しツールとインサートとの過剰な摩擦接触を招き、潜在的な汚染源として作用する可能性があるため、本開示においては望ましくないことを見出した。
【0024】
取り外しツールと裏面インサート110との間の接触により生じる汚染を防ぐために、回転軸130と並行に伸長する側壁118が尖端部を持たない側壁となるようにトルク受容スロット120を設計するようにしてもよい。もっと具体的に言えば、側壁118は、2つの直線的な壁部が接続する部分に通常形成されるような尖った幾何学的に不連続な部分を持たない。このように幾何学的に不連続な部分およびこれに対応する取り付け/取り外しツールの相互補完的な部分は、比較的もろく、壊れやすい尖端部を形成し、接触により破損したり、機械的係合の場合に合わせ面から汚染物質が剥がれたりする可能性があるため、大きな汚染源に成り得る。図12および図13に示すように、スロット120は、曲線的な側壁部と直線的な側壁部とが接続する部分を備えていてもよいが、直線同士で尖端部を形成するような接続部を持たないように設計する必要がある。したがって、図16に例示したような取り付け/取り外しツール200も、直線同士の側壁接続部で通常みられるような、もろくて壊れやすい尖端部を持たないように設計することができる。
【0025】
本発明のさまざまな概念を、単結晶シリコン、多結晶シリコン、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のシリコンベース電極材に関連して、本明細書中で説明してきたが、本発明は、シリコンベース電極材が炭化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムまたはこれらの組み合わせを含有するもの等、さまざまな状況で有用である。さらに、シリコンベース・シャワーヘッド電極80は、以下に限定されるものではないが、たとえば、一体型円形シャワーヘッド構成や、円形の中央電極と中央電極外周の周りに配置される1つ以上の周囲電極とを備えるマルチコンポーネント型円形シャワーヘッド構成等、本開示の要旨の範囲内でさまざまな構成で実施可能である。
【0026】
ある部品が特定の方法で特定の特性や機能を具現化するように「構成される(configured)」と本明細書中に記載した場合、予想される使用法を説明しているのではなく、構造を説明しているということに留意していただきたい。もっと具体的に言えば、本明細書中で、ある部品が「構成される(configured)」様体に言及することは、その部品の現在の物理的状態を示し、その部品の構造的特徴を明確に説明するものであるとみなすべきである。
【0027】
「好適には(preferably)」、「一般的には(commonly)」および「通常は(typically)」等の用語を本明細書で用いる場合、何ら本発明の範囲を限定したり、ある特徴が本発明の構造または機能に対して必須、必要不可欠、または重要ということを意味したりするものではないことに留意していただきたい。これらの用語は、単に、本開示の実施例の特定の態様を識別したり、本開示の特定の実施例に用いられる、または、用いられない、別のまたは付加的な特徴を際立たせたりするものに過ぎない。
【0028】
本発明を説明し規定する目的で、用語「約(approximately)」は、本来的な不確実性の度合いを示すために本明細書中で用いられるものであって、定量的な比較、値、測定値や他の表示に起因するものである。また、この用語は、対象となる特徴の基本的な機能を変化させることなく、記述されている参照値から変動可能な定量的表示の度合いを示すために本明細書中で用いられるものである。
【0029】
以上、いくつかの実施例を参照して、本発明を詳細に説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、さまざまに変形および変更が可能である。すなわち、本発明のいくつかの態様を本明細書中で「好適な」あるいは「特に望ましい」と記述したが、本発明は、何ら、このような好適な態様に限定されるものではない。
【0030】
以下に示す1つまたは複数の請求項において、「であって(wherein)」という用語を移行句として用いている。本発明を規定する目的で、この用語は、一連の構造的特徴を列挙するために用いられるオープンエンドな(制約のない)移行句として請求項に導入されるものであって、前文で用いられるオープンエンドな用語「を備える(comprising)」と同様な意味に解釈されるべきものである。
本発明は、たとえば、以下のような態様で実現することもできる。

適用例1:
裏面と、正面と、複数のシャワーヘッド通路と、複数の裏面凹部と、複数の裏面インサートと、を備えるシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記複数のシャワーヘッド通路が、前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記裏面から前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記正面に伸長し、
前記複数の裏面凹部が、前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記裏面に形成され、前記裏面凹部は、前記凹部と前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記正面との間に所定の厚さのシリコンベース電極材を残すように形成され、
前記裏面インサートが、前記シリコンベース・シャワーヘッド電極の前記裏面に沿って前記裏面凹部内に配置され、
前記裏面インサートが、ネジ付き外径部と、ネジ付き内径部と、前記ネジ付き内径部内に形成されたツール係合部と、を備え、
前記裏面インサートの前記ツール係合部が、前記裏面インサートの回転軸の周りに配置される複数のトルク受容スロットを備え、
前記トルク受容スロットが、対向する対のトルク受容スロットを介した前記裏面インサートの軸上回転を避けるように、配置される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。

適用例2:
適用例1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記裏面インサートが、さらに、前記裏面インサートの前記ツール係合部に係合されたツールが前記裏面インサートの前記ネジ付き外径部を越えて伸長することを防止するために、前記ツール係合部と前記ネジ付き外径部との間に1つ以上の側面保護部を備えるように、前記ツール係合部が形成される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。

適用例3:
適用例1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記裏面インサートの前記ツール係合部が、対向する3対のトルク受容スロットを形成するように、前記裏面インサートの回転軸の周りに配置される3つのトルク受容スロットを備え、
前記トルク受容スロットが、前記対向する3対のトルク受容スロットの各対を介した前記裏面インサートの軸上回転を避けるように配置される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。

適用例4:
適用例1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記裏面インサートの前記ツール係合部が、対向するn(n−1)/2対のトルク受容スロットを形成するように、前記裏面インサートの回転軸の周りに配置されるn個のトルク受容スロットを備え、
前記トルク受容スロットが、前記対向するn(n−1)/2対のトルク受容スロットの各対を介した前記裏面インサートの軸上回転を避けるように配置される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。

適用例5:
適用例4に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記トルク受容スロットが、前記回転軸の周りに等間隔に配置され、n=3またはn=5である、シリコンベース・シャワーヘッド電極。

適用例6:
適用例4に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記トルク受容スロットが、前記回転軸の周りに等間隔にまたは非等間隔に配置され、nは3以上5以下である、シリコンベース・シャワーヘッド電極。

適用例7:
適用例1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記トルク受容スロットが、前記裏面インサートの前記回転軸に平行な方向に沿って次第に狭くならない断面形状を規定する、シリコンベース・シャワーヘッド電極。

適用例8:
適用例1に記載のシリコンベース・シャワーヘッド電極であって、
前記トルク受容スロットが、前記回転軸に平行に伸長する、尖端部を持たない側壁によって規定される、シリコンベース・シャワーヘッド電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16