(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在市販されているプロセスチーズには、スティック状のものや、アルミ包材で個別包装されたもの、カートンに充填したものなど様々な形状のものがある。また、プロセスチーズとしては、シート状に薄く成形したスライスチーズと呼ばれている形態のチーズが知られている。
一般に、スライスチーズは1枚の厚さが約3〜5mmであり、8〜10cm四方の大きさを有しており、1枚ごとに包装用フィルムで巻かれた個別包装体となっている。そして、この個別包装体は5〜12枚程度重ねられた後、ガスバリア性の高い外装用フィルムに、不活性ガスとともに充填された形態で販売されている。
【0003】
このようなスライスチーズの個別包装体は、一般に、以下のようにして製造される。まず、
図5に示すような、長尺状の包装用フィルム300を用意する。この包装用フィルム300は、短手方向端部付近にヒートシール剤が等幅で連続的に塗布されたセンターシール部311を有している(塗布部は裏側)。また、参考までに
図5には、後述するサイドシール部Sとなる部位も示す。そして、包装用フィルム300を長手方向に扁平な円筒状となるよう、短手方向の両端部をともに手前に折り曲げ、センターシール部311が対向する包装用フィルム300に接するよう両端を重ね合わせて接着(センターシール)する。具体的には、後述する
図6(A)、(B)のような折り曲げ構造となる。
次に、この扁平な円筒状フィルムの内側に溶融状態のチーズを流し込み、圧伸して約3〜5mmの一定厚みにした長尺扁平な包装体とする。そしてローラーによってスライスチーズ個別包装体の左右の端部となるべき部分のチーズを排出し、その部分の包装用フィルム300を接着(サイドシール)したのち、水槽を通して冷却し、サイドシール部分をカットすることでチーズLが個別に充填された包装体350が製造される(
図6(A)、(B))。
【0004】
ここで、スライスチーズの包装に用いられるフィルムとしては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)や、二軸延伸ポリエステルフィルム(OPET)などが一般に用いられている。しかしながら、これらのフィルム単体を用いた場合、チーズを充填後、常温でローラーによりフィルム間隙のチーズを排出してサイドシールを行うと、シール強度が十分ではないためフィルムとチーズが剥離し、隙間(浮き)が生じることがある。そのため、フィルムの浮いた箇所からチーズの水分が蒸発することによる乾燥や、カビ・微生物汚染など品質に悪影響が生じるおそれがある。
そこで、ヒートシール剤を最内層に塗布したOPP基材に、脂肪酸アミド類を0.1〜2.0重量%含ませることでチーズ夾雑状態でも安定したサイドシールが可能となるスライスチーズ包装用フィルムが提案されている(特許文献1参照)。また、フィルム最内層とヒートシール層の間に100%モジュラスが100kg/cm
2以下の下塗り層を積層することでサイドシール部の熱接着性および開封性に優れたスライスチーズ用の包装体が提案されている(特許文献2参照)。さらに、個別包装用フィルム最内層にヒートシール剤を積層し、その上にショ糖脂肪酸エステルを2〜100重量部含むポリ塩化ビニリデン層を積層することでサイドシール部の接着が良好なスライスチーズ包装用フィルムが提案されている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの特許文献に記載されているように、ヒートシール剤を塗布させた包装用フィルムを使用する場合、ヒートシール剤が塗布された面同士が強く接着することになり、さらにセンターシールとサイドシールとの交差部分で、ヒートシールが2度行われることによりフィルム同士の接着が強固となり過ぎる。そのため、喫食の際にユーザーがフィルムを剥離しようとしても、接着が強固になった箇所において開封が困難となったり、あるいはフィルムの破れが発生したりするおそれがある。
【0007】
さらに、上述した各特許文献では、スライスチーズ包装用フィルムを製造するために、基材フィルムおよびヒートシール剤の他にコート剤などを用いたり、さらにヒートシール剤を積層したりしていることから、基材フィルムの変更や新たなコート剤の塗布が必要となる。すなわち、基材フィルムの原料調達の変更や製造工程の増加、そして製品製造時の条件の変更を伴うことになる。また、包装用フィルムと充填機との機械適性はフィルムの条件の変更によって大きく左右される場合もある。例えば包装用フィルム導入時に充填機との相性が悪いと、設定通りの製造が困難となり、製造条件やフィルム構成の変更等、工程管理も煩雑になるという問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、製造が簡便であって、内容物を充填して密封した後に安定した開封性と品質保持のための密封性を与える包装用フィルム、および当該フィルムに内容物を充填した包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく、本発明の包装用フィルムは、長尺状の包装用フィルムであって、当該フィルムの一方の表面は、ヒートシール剤が長手方向に連続して等幅に塗布された第1のヒートシール部を有するとともに、当該フィルムの短手方向端部より未塗布部A、前記第1のヒートシール部、および、未塗布部Bがこの順に構成され、当該フィルムの他方の表面は、ヒートシール剤が長手方向に連続して等幅に塗布された第2のヒートシール部および第3のヒートシール部を有するとともに、前記短手方向端部に対向する端部より第3のヒートシール部、未塗布部C、第2のヒートシール部、および未塗布部Dがこの順に構成され、当該フィルムを、前記第2、第3のヒートシール部を内側にして、長手方向に円筒を形成するように折り曲げたとき、前記第1のヒートシール部と前記他方の表面における未塗布部Cとを重ねてセンターシールできるよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第2のヒートシール部と第3のヒートシール部の間に未塗布部Cが設けられているため、包装用フィルムの短手方向両端部を重ねてヒートシールしたときに、第1のヒートシール部を、第2のヒートシール部や第3のヒートシール部に接しないように接着することができる。すなわち、第1のヒートシール部を未塗布部Cと接着することで接着強度を抑えることが可能となる。それ故、次に、サイドシールされても、センターシールとの交差部分について、ユーザーがシール部を剥離することが困難なほど強固にヒートシールされることがない。
また、センターシールにしてもサイドシールにしても、ヒートシールする際は、少なくとも一方のフィルム面に必ずヒートシール剤が塗布されているため、密封性は十分に高く、チーズ、ゼリー、羊羹、およびういろう等の可塑性の物質を充填して包装体とした場合に、内容物を乾燥から防ぎ、カビ・微生物などからの汚染を効果的に抑制することができる。
本発明により、用いる基材フィルムやヒートシール剤に大幅な変更を伴うことなく、安定した開封性と品質保持のための密封性を兼ね備えた包装用フィルムおよびその包装体を提供することが可能となる。
【0011】
また、本発明の包装用フィルムは、長尺状の包装用フィルムであって、当該フィルムの一方の表面は、ヒートシール剤が長手方向に連続して等幅に塗布された第4のヒートシール部を有するとともに、当該フィルムの短手方向端部より前記第4のヒートシール部、および未塗布部
Eがこの順に構成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成の本発明によれば、包装用フィルムのセンターシールは、ヒートシール部(ヒートシール剤塗布)と、ヒートシール剤が塗布されていないフィルム部位(センターシール部)とで行われるため、次に、サイドシールされても、センターシールとの交差部分について、ユーザーがシール部を剥離することが困難なほど強固にヒートシールされることがない。
また、センターシールにしてもサイドシールにしても、ヒートシールする際は、少なくとも一方のフィルム面に必ずヒートシール剤が塗布されているため、密封性は十分に高く、チーズ、ゼリー、羊羹、およびういろう等の可塑性の物質を充填して包装体とした場合に、内容物を乾燥から防ぎ、カビ・微生物などからの汚染を効果的に抑制することができる。
この構成の本発明により、用いる基材フィルムやヒートシール剤に大幅な変更を伴うことなく、安定した開封性と品質保持のための密封性を兼ね備えた包装用フィルムおよびその包装体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態における包装用フィルムは、可塑性の内容物が充填され、サイドシールを施され小分けされて包装体を構成するものである。充填される可塑性の内容物としては、食品に好ましく適用でき、例えば、チーズ、ゼリー、羊羹、ういろうなどである。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
(包装用フィルムの構成)
図1には、第1実施形態に係る包装用フィルム100を示す。
包装用フィルム100は、長尺状であり、基材フィルム10の一方の表面(裏側)に、ヒートシール剤が長手方向に連続して等幅に塗布された第1のヒートシール部111を有するとともに、フィルムの短手方向端部より未塗布部A、第1のヒートシール部111、および、未塗布部Bがこの順に構成されている。
【0015】
また、包装用フィルム100は、基材フィルム10の他方の表面(手前側)に、ヒートシール剤が長手方向に連続して等幅に塗布された第2のヒートシール部112および第3のヒートシール部113を有するとともに、前記短手方向端部の反対の端部より第3のヒートシール部113、未塗布部C、第2のヒートシール部112、および未塗布部Dがこの順に構成されている。具体的には、上述の未塗布部B(裏側)の反対側(手前側)に、第3のヒートシール部113、未塗布部C、第2のヒートシール部112が位置している。
【0016】
ここで、第1のヒートシール部111の幅は、未塗布部Cの幅と同じか狭いことが好ましい。そして、包装用フィルム100を、第2のヒートシール部112、第3のヒートシール部113を内側にして、長手方向に円筒を形成するように折り曲げたとき、第1のヒートシール部111が他方の表面における未塗布部Cの下側になるように重ねてセンターシールできるように構成されている。
なお、後述するサイドシールを施す部位をサイドシール部Sとして参考までに記載した。
【0017】
包装用フィルム100の基材としては、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムや、二軸延伸ポリエステルフィルム(OPET)が好ましく用いられる。なお、特に耐ピンホール性を重視する際は、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルムを用いてもよい。
【0018】
ヒートシール部を構成するためのヒートシール剤としては、ポリエステル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、およびポリ塩化ビニリデンや塩ビ・酢ビ共重合体等の塩素樹脂系などを用いることが好ましい。塗布量は、シール強度を制御するために適宜定めればよいが、1〜3μm程度の厚さにすることが好ましい。
このようなヒートシール剤としては、例えば、特開2000−44917号公報等に記載されているようなものを好適に用いることができる。
【0019】
(包装体およびその製造方法)
図2は、包装用フィルム100をセンターシールした後、可塑性の内容物L(チーズ)を充填し、サイドシールを施して小分けした後の包装体150を示す図である。ここで、
図2(A)は、包装体150を正面から見た図であり、
図2(B)は、
図2(A)の断面図である。
このような包装体150は、可塑性の内容物Lをチーズとした場合、スライスチーズを製造する際に用いられる一般的な装置を用いて以下の手順で製造できる。まず、長尺状の包装用フィルム100の短手方向両端部を重ね合わせて一定幅で接着(センターシール)して円筒状とする。具体的には、
図1の包装用フィルム100の下端部を手前方向に折り曲げ、その上に、包装用フィルム100の上端部を手前方向に折り曲げて重ねる。このとき、
図2(B)に示すように、円筒状となった包装用フィルム100を扁平な構造として、第1のヒートシール部111が、包装用フィルム100の反対側に位置する第2のヒートシール部112と第3のヒートシール部113の下側でかつそれらの間に来るように、すなわち、ヒートシール部111が未塗布部Cと接着(センターシール)できるように位置を決める。
【0020】
次に、センターシールが終了した後、円筒状となった包装用フィルム100の内側に溶融状態のチーズを流し込み、圧伸して厚さ約3〜5mmの一定厚とした1枚の長尺扁平の包装体とする。そしてローラーによってスライスチーズ包装体の左右の両端部となる部分のチーズを排出し、その部分の包装用フィルムをヒートシールしてサイドシール部Sを形成したのち、水槽を通して冷却し、サイドシール部Sをカットすることで個々の包装体150を製造する。なお、
図2(B)の断面図は、包装体150と内容物L(チーズ)の位置関係が理解しやすいよう模式的に示したものであり、内容物L(チーズ)は包装体150の内部に隙間なく充填密封されている。
【0021】
上述の実施形態によれば、第2のヒートシール部112と第3のヒートシール部113の間に未塗布部Cが設けられているため、包装用フィルム100の短手方向両端部を重ねてヒートシールしたときに、第1のヒートシール部111を、第2のヒートシール部112や第3のヒートシール部113に接しないように接着することができる。すなわち、第1のヒートシール部111が未塗布部Cと接着することで接着強度を抑えることが可能となる。それ故、次に、サイドシールされても、センターシールとの交差部分について、ユーザーがシール部を剥離する際に、フィルムが破れたり、フィルム同士が剥がれにくく開封が困難であったりするほど強固にヒートシールされることがない。
また、センターシールにしてもサイドシールにしても、ヒートシールする際は、少なくとも一方のフィルム面に必ずヒートシール剤が塗布されているため、密封性は十分に高く、包装体150の中のチーズを乾燥から防ぎ、カビ・微生物などからの汚染を効果的に抑制することができる。
なお、上述したように、包装用フィルム100や包装体150を製造する際に、先行技術のような煩雑な工程は不要である。
結局、本実施形態によれば、用いる基材フィルムやヒートシール剤に大幅な変更を伴うことなく、安定した開封性と品質保持のための密封性を兼ね備えた包装用フィルム100およびその包装体150(スライスチーズ)を提供することが可能となる。
【0022】
〔第2実施形態〕
(包装用フィルムの構成)
図3には、第2実施形態に係る包装用フィルム200を示す。
包装用フィルム200は、ヒートシール剤が長手方向に連続して等幅に塗布された第4のヒートシール部211(手前側)を有するとともに、当該フィルムの短手方向端部より前記第4のヒートシール部211、および未塗布部Eがこの順に構成されている。包装用フィルム200の反対側は何も塗布されていない。なお、後述するセンターシールを施す部位をセンターシール部212(裏側、未塗布)とし、サイドシールを施すための部位をサイドシール部Sとして参考までに記載した。
包装用フィルム200の基材や、ヒートシール剤は、第1実施形態と同様である。
【0023】
(包装体およびその製造方法)
図4は、包装用フィルム200をセンターシールした後、可塑性の内容物L(チーズ)を充填し、サイドシールを施して小分けした後の包装体250を示す図である。ここで、
図4(A)は、包装体250を正面から見た図であり、
図4(B)は、
図4(A)の断面図である。
このような包装体250は、可塑性の内容物Lをチーズとした場合、基本的に第1実施形態と同様な方法で製造できる。まず、長尺状の包装用フィルム200の短手方向両端部を重ね合わせて一定幅で接着(センターシール)して円筒状とする。具体的には、
図3の包装用フィルム200の下端部を手前方向に折り曲げ、その上に、包装用フィルム200の上端部を手前方向に折り曲げて重ねる。すなわち、
図4(B)のような折り曲げ構造とする。
以下の、チーズ充填工程およびサイドシール工程等は第一実施形態と同様である。
【0024】
上述の実施形態によれば、包装用フィルム200のセンターシールは、ヒートシール部211(ヒートシール剤塗布)と、ヒートシール剤が塗布されていないフィルム部位(センターシール部212)とで行われるため、次に、サイドシールされても、センターシールとの交差部分について、ユーザーがシール部を剥離する際に、フィルムが破れたり、フィルム同士が剥がれにくく開封が困難であったりするほど強固にヒートシールされることがない。
また、センターシールにしてもサイドシールにしても、ヒートシールする際は、少なくとも一方のフィルム面に必ずヒートシール剤が塗布されているため、密封性は十分に高く、包装体250の中のチーズを乾燥から防ぎ、カビ・微生物などからの汚染を効果的に抑制することができる。
また、第1実施形態と同様に、包装用フィルム200や包装体250を製造する際に、煩雑な工程は不要である。
結局、本実施形態によっても、用いる基材フィルムやヒートシール剤に大幅な変更を伴うことなく、安定した開封性と品質保持のための密封性を兼ね備えた包装用フィルム200およびその包装体250(スライスチーズ)を提供することが可能となる。
【0025】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、基材フィルムとしては、OPETやOPPのような二軸延伸フィルムでなくともよく、無延伸の熱可塑性樹脂フィルムを用いてもよい。
また、未塗布部は完全に未塗布状態でなくともよく、例えば、基材フィルムの片面あるいは両面に何らかの接着性樹脂が薄くコーティングされたものを基材フィルム10として用いてもよい。
上述の実施形態では、可塑性の内容物としてチーズを例示したが、内容物としては、ゼリー、羊羹、ういろうなどであってもよい。また、内容物としては食品に限らない。
【実施例】
【0026】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0027】
〔実施例1〕
(包装用フィルムの製造)
図1に基づいて、包装用フィルム100を製造する方法を具体的に説明する。基材フィルム10は、幅約21cm、長さ数千mの二軸延伸ポリエステルフィルム(OPET)である。基材フィルム10の外側(
図1では、裏側)に下端から約1cm(この距離は、0.5〜3cmの範囲で適宜設定すればよい)の位置より幅約1.5cmでヒートシール剤が、基材フィルム10の長手方向に連続的に塗布され、第1のヒートシール部111を構成している。この第1のヒートシール部111から約1.5cm離間した位置から幅約14cmでヒートシール剤が基材フィルム10の長手方向に連続して、基材フィルム10の内側(
図1では、手前(表側))に塗布され、第2のヒートシール部112を構成している。さらに、第2のヒートシール部112から約1.5cm離間した位置から基材フィルム10の端部まで幅約1cmで基材フィルム10の長手方向に連続して、基材フィルム10の内側(
図1では、手前(表側))にヒートシール剤が塗布され、第3のヒートシール部113を構成している。ここで、ヒートシール剤としては、ポリエステル樹脂系のヒートシール剤を用いた。このようにして、包装用フィルム100を得た。
【0028】
(包装体の製造)
図2に基づいて、包装体150の具体的製造方法を説明する。包装用フィルム100は、手前側が内側となるように、かつ包装用フィルム100の上端部が下端部の上側となるように、円筒状に形成される。このとき、第1のヒートシール部111は、第2のヒートシール部112と第3のヒートシール部113の間に位置する未塗布部Cに重なるように位置決めした。このような状態で、第1のヒートシール部111と未塗布部Cとを約2mm幅でヒートシールした(センターシール)。
次に、この円筒状の内側に溶融状態のチーズを流し込んだ後、圧伸して厚さ約4mmの一定厚の1枚のシート状の包装体とした。次に、シート状の包装体の左右の端部となる部分のチーズをローラーによって排出し、その箇所の包装用フィルム100をヒートシール(サイドシール)した。その後、このチーズを充填した包装体を、水槽を通すことによって冷却し、サイドシール部分をカットすることによって包装体150(スライスチーズ入り包装体)を製造した。
【0029】
シート状のチーズ包装体の左右の端部をヒートシール(サイドシール)するときに、第2のヒートシール部112と第3のヒートシール部113の間にヒートシール剤を塗布していない部分(未塗布部C)が設けられているため、サイドシールされても、センターシールとの交差部分について、ユーザーがシール部を剥離することが困難なほど強固にヒートシールされることがない。
【0030】
〔実施例2〕
(包装用フィルムの製造)
図3に基づいて、包装用フィルム200を製造する方法を具体的に説明する。基材フィルム10は、実施例1と同様の長尺状OPETである。基材フィルム10の内側(
図3では、表側)に下端から4.25cmより上の位置に基材フィルム10の長手方向に連続するようにヒートシール剤が等幅で塗布され、ヒートシール部211を構成している。すなわち、基材フィルム10の内側には下端から4.25cmの幅でヒートシール剤が塗布されていない未塗布部Eが構成される。用いたヒートシール剤は、実施例1と同様である。このようにして、包装用フィルム200を得た。
【0031】
(包装体の製造)
図4に基づいて、包装体250の具体的製造方法を説明する。包装用フィルム200は、図の表側が内側となるように、かつ包装用フィルム200の上端部が下端部の上側となるように、円筒状に形成される。具体的には、
図4(B)に示すように包装用フィルム200の上端部(ヒートシール部211)が下端部の未塗布部に重なって接する。この折り曲げた状態で、包装用フィルム200の上端から約2cmの箇所に約2mm幅でヒートシールを行った(センターシール部212)。
以下、実施例1と同様にして、包装体250(スライスチーズ)を製造した。
【0032】
センターシールが施されるとき、包装用フィルム200の一方の面にはヒートシール剤が塗布されているが、接着される対向面にはヒートシール剤が塗布されていない。それ故、サイドシールされても、センターシールとの交差部分について、ユーザーがシール部を剥離することが困難なほど強固にヒートシールされることがない。
【0033】
〔比較例1〕
(包装用フィルムの製造)
図5に基づいて、比較例1にかかる包装用フィルム300を製造する方法を具体的に説明する。基材フィルム10は、実施例1と同様の長尺状OPETである。基材フィルム10の外側(
図5では、裏側)に下端から約1cm(この距離は、0.5〜3cmの範囲で適宜設定すればよい)の位置より幅約1.5cmでヒートシール剤が、基材フィルム10の長手方向に連続的に塗布され、センターシール部311を構成している。ヒートシール剤は、実施例1と同様である。このようにして、包装用フィルム300を得た。
【0034】
次に、実施例2と同様にして包装体350を製造した(
図6(A)、(B))。
実施例1、2と同様、センターシールとサイドシールとの交差部分については、ユーザーがシール部を剥離することが困難なほど強固にヒートシールされてはいない。しかし、サイドシール部Sには、ヒートシール剤が塗布されていないため、密封性の点で必ずしも好ましいものではない。
【0035】
〔試験例1〕
実施例1にて得られた包装用フィルム100および比較例1にて得られた包装用フィルム300を用いて、センターシールおよびサイドシールを行い、サイドシール、およびセンターシールとサイドシールの交差部分(センターシール側)におけるシール強度を評価した。具体的には、ヒートシーラーを用いて熱接着を行った後、サンプルを1晩静置し、幅15mmに裁断後、市販の引張試験機を使用してシール強度(T剥離)を測定・比較した。シール条件は以下の通りである。
センターシール:シール温度200℃、シール時間0.1秒、シール圧力2.94×10
−2MPa
サイドシール:シール温度90℃、シール時間0.1秒、シール圧力2.94×10
−2MPa
【0036】
(評価結果)
(1)サイドシールのヒートシール強度
包装用フィルム100:14900Pa
包装用フィルム300: 980Pa
本試験により、包装用フィルム100(実施例1)のシール強度は比較例1の包装用フィルム300に比べ極めて強固であることがわかる。
(2)センターシールとサイドシールの交差部分におけるヒートシール強度
包装用フィルム100:7450Pa
包装用フィルム300:7260Pa
本試験により、包装用フィルム100(実施例1)のシール強度と比較例1の包装用フィルム300のシール強度は実質的に同じであることがわかる。
【0037】
以上の結果をまとめると、実施例1(本発明)の包装用フィルムを用いた場合、サイドシールにおいてはヒートシール強度が極めて強固になっているが、センターシールとサイドシールの交差部分においては比較例1と同等のヒートシール強度であることがわかる。すなわち、本発明の包装用フィルムを用いた包装体によれば、従来問題とされていたサイドシール部におけるフィルムの剥がれや浮きが抑えられると同時に、センターシールにおいては接着が強固になりすぎて開封が困難であったり、若しくはフィルムの破れが発生したりするといった課題も解決されていることが理解できる。