特許第5986811号(P5986811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986811
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 651J
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-131031(P2012-131031)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-254906(P2013-254906A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】五師 源太郎
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−108402(JP,A)
【文献】 特開2006−326429(JP,A)
【文献】 特開2012−49446(JP,A)
【文献】 特開2008−084890(JP,A)
【文献】 特開2008−066495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理容器と、
前記基板の処理に使用する基板処理流体を所定の圧力で供給する流体供給源と、
前記流体供給源から前記基板処理流体を昇圧させずに一定の圧力で前記処理容器に供給する定圧供給流路と、
前記流体供給源から前記基板処理流体を昇圧機構で所定の圧力に昇圧して前記処理容器に供給する昇圧供給流路と、
前記定圧供給流路と前記昇圧供給流路とを切換える制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記定圧供給流路から一定の圧力の前記基板処理流体を前記処理容器に供給し、前記処理容器の内部圧力が所定の圧力となった場合に、前記昇圧供給流路から昇圧した前記基板処理流体を前記処理容器に供給して、前記処理容器の内部圧力を上昇させるように制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記処理容器は、前記基板の表面に付着した液体を前記基板処理流体で超臨界状態又は亜臨界状態に加圧した後に除去することによって前記基板の表面を乾燥処理し、
前記制御手段は、前記基板の表面に付着した液体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力にまで前記処理容器の内部圧力を上昇させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理容器は、前記基板の表面に付着した液体を超臨界状態又は亜臨界状態の前記基板処理流体に置換した後に除去することによって前記基板の表面を乾燥処理し、
前記制御手段は、前記基板処理流体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力にまで前記処理容器の内部圧力を上昇させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記昇圧機構は、前記基板処理流体を冷却して液体とする冷却器と、液体にした前記基板処理流体を所定の圧力に昇圧して圧送するポンプとを有する構成としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記昇圧機構は、前記基板処理流体を冷却して液体とする冷却器と、液体にした前記基板処理流体を密閉した状態で貯留する密閉容器と、前記密閉容器を加熱することで貯留した前記基板処理流体を所定の圧力に昇圧する加熱器とを有する構成としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記密閉容器は、内側容器の外周に外側容器を設けた二重構造としたことを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記密閉容器は、内部に酸化触媒を収容したことを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記定圧供給流路及び前記昇圧供給流路に濾過器を設け、前記濾過器の上流側に加熱器を設けるとともに、前記濾過器の下流側の前記処理容器に接続された配管を断熱又は加熱したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
所定の圧力で流体供給源から供給される基板処理流体を昇圧させずに一定の圧力で定圧供給流路から処理容器に供給し、前記処理容器の内部圧力が所定の圧力となった後に、前記流体供給源から供給される前記基板処理流体を昇圧機構で所定の圧力に昇圧して昇圧供給流路から前記処理容器に供給することで、前記処理容器の内部圧力を上昇させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
前記処理容器の内部圧力は、前記処理容器に供給した前記基板処理流体の圧力によって前記基板の表面に付着した液体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力とし、
前記基板の表面に付着した液体を前記基板処理流体で超臨界状態又は亜臨界状態に加圧した後に除去することによって前記基板の表面を乾燥処理することを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記処理容器の内部圧力は、前記基板処理流体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力とし、
前記基板の表面に付着した液体を超臨界状態又は亜臨界状態の前記基板処理流体に置換した後に除去することによって前記基板の表面を乾燥処理することを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記昇圧機構は、前記基板処理流体を冷却して液体とした後に密閉容器に密閉した状態で貯留し、貯留した前記基板処理流体を加熱することで所定の圧力に昇圧させることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記定圧供給流路及び前記昇圧供給流路に濾過器を設け、前記濾過器の上流側に加熱器を設けるとともに、前記濾過器の下流側の前記処理容器に接続された配管を断熱又は加熱することを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれかに記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関するものであり、特に、基板を超臨界状態又は亜臨界状態で乾燥処理する基板処理装置及び基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体部品やフラットパネルディスプレイなどを製造する場合には、半導体ウエハや液晶基板などの基板に対して基板処理装置を用い、各種の処理液で洗浄やエッチング等の液処理を施した後に、基板に残留した処理液を除去する乾燥処理を施す。
【0003】
この基板処理装置では、基板の表面に形成される回路パターンやエッチングマスクパターンなどの基板表面パターンの微細化による高アスペクト比化に伴って、乾燥処理時に基板に残留した処理液等の液体の表面張力の作用で基板表面パターンが倒壊する現象が生じていた。
【0004】
そのため、従来の基板処理装置では、基板液処理装置を用いて基板を処理液で液処理し、その後、基板乾燥処理装置を用いて基板の表面に付着する液体を超臨界状態の基板処理流体(二酸化炭素等)に置換し、その後、基板の表面から超臨界流体を除去することで基板の表面を乾燥処理している。
【0005】
この超臨界状態で乾燥処理を行う基板処理装置では、気体状の基板処理流体を供給するための流体供給源と基板を処理するための処理容器とを供給流路で接続し、供給流路の中途部に基板処理流体を所定の圧力に昇圧して送出するための昇圧機構(ポンプ)を介設している。
【0006】
そして、基板処理装置では、流体供給源から供給される基板処理流体を昇圧機構で超臨界状態となる圧力にまで昇圧させてから処理容器に供給し、超臨界状態の基板処理流体を用いて基板の乾燥処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−66495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来の基板処理装置では、供給流路に設けた昇圧機構によって基板処理流体を常に加圧してから処理容器に供給しているために、基板処理流体が昇圧機構を通過する際に昇圧機構で生じた塵等のパーティクルが基板処理流体に混入するおそれがあった。
【0009】
特に従来の基板処理装置では、処理容器に基板処理流体を供給する際に常に昇圧機構を通過させていたために、基板処理流体にパーティクルが混入する頻度が増加し、混入したパーティクルによって基板の表面が汚染されてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明では、基板処理装置において、基板を処理する処理容器と、前記基板の処理に使用する基板処理流体を所定の圧力で供給する流体供給源と、前記流体供給源から前記基板処理流体を昇圧させずに一定の圧力で前記処理容器に供給する定圧供給流路と、前記流体供給源から前記基板処理流体を昇圧機構で所定の圧力に昇圧して前記処理容器に供給する昇圧供給流路と、前記定圧供給流路と前記昇圧供給流路とを切換える制御手段とを有し、前記制御手段は、前記定圧供給流路から一定の圧力の前記基板処理流体を前記処理容器に供給し、前記処理容器の内部圧力が所定の圧力となった場合に、前記昇圧供給流路から昇圧した前記基板処理流体を前記処理容器に供給して、前記処理容器の内部圧力を上昇させるように制御することにした。
【0011】
また、前記処理容器は、前記基板の表面に付着した液体を前記基板処理流体で超臨界状態又は亜臨界状態に加圧した後に除去することによって前記基板の表面を乾燥処理し、前記制御手段は、前記基板の表面に付着した液体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力にまで前記処理容器の内部圧力を上昇させるように制御することにした。
【0012】
また、前記処理容器は、前記基板の表面に付着した液体を超臨界状態又は亜臨界状態の前記基板処理流体に置換した後に除去することによって前記基板の表面を乾燥処理し、前記制御手段は、前記基板処理流体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力にまで前記処理容器の内部圧力を上昇させるように制御することにした。
【0013】
また、前記昇圧機構は、前記基板処理流体を冷却して液体とする冷却器と、液体にした前記基板処理流体を所定の圧力に昇圧して圧送するポンプとを有する構成とすることにした。
【0014】
また、前記昇圧機構は、前記基板処理流体を冷却して液体とする冷却器と、液体にした前記基板処理流体を密閉した状態で貯留する密閉容器と、前記密閉容器を加熱することで貯留した前記基板処理流体を所定の圧力に昇圧する加熱器とを有する構成とすることにした。
【0015】
また、前記密閉容器は、内側容器の外周に外側容器を設けた二重構造とすることにした。
【0016】
また、前記密閉容器は、内部に酸化触媒を収容することにした。
【0017】
また、前記定圧供給流路及び前記昇圧供給流路に濾過器を設け、前記濾過器の上流側に加熱器を設けるとともに、前記濾過器の下流側の前記処理容器に接続された配管を断熱又は加熱することにした。
【0018】
また、本発明では、基板処理方法において、所定の圧力で流体供給源から供給される基板処理流体を昇圧させずに一定の圧力で定圧供給流路から処理容器に供給し、前記処理容器の内部圧力が所定の圧力となった後に、前記流体供給源から供給される前記基板処理流体を昇圧機構で所定の圧力に昇圧して昇圧供給流路から前記処理容器に供給することで、前記処理容器の内部圧力を上昇させることにした。
【0019】
また、前記処理容器の内部圧力は、前記処理容器に供給した前記基板処理流体の圧力によって前記基板の表面に付着した液体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力とし、前記基板の表面に付着した液体を前記基板処理流体で超臨界状態又は亜臨界状態に加圧した後に除去することによって前記基板の表面を乾燥処理することにした。
【0020】
また、前記処理容器の内部圧力は、前記基板処理流体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力とし、前記基板の表面に付着した液体を超臨界状態又は亜臨界状態の前記基板処理流体に置換した後に除去することによって前記基板の表面を乾燥処理することにした。
【0021】
また、前記昇圧機構は、前記基板処理流体を冷却して液体とした後に密閉容器に密閉した状態で貯留し、貯留した前記基板処理流体を加熱することで所定の圧力に昇圧させることにした。
【0022】
また、前記定圧供給流路及び前記昇圧供給流路に濾過器を設け、前記濾過器の上流側に加熱器を設けるとともに、前記濾過器の下流側の前記処理容器に接続された配管を断熱又は加熱することにした。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、基板処理流体にパーティクルが混入するのを低減することができるので、基板の汚染を抑制することができ、基板処理装置の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】基板処理装置を示す斜視図。
図2】同平面模式図。
図3】基板乾燥処理装置を示すブロック図。
図4】処理容器を示す平面断面図。
図5】同正面断面図。
図6】同側面断面図。
図7】他の昇圧供給流路の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る基板処理装置及びこの基板処理装置で用いる基板処理方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、基板処理装置1は、前端部に基板搬入出部2を形成し、基板搬入出部2の後方に基板搬送部3を形成し、基板搬送部3の後方に基板処理部4を形成している。
【0027】
基板搬入出部2は、基板搬入出台5の上部に複数個(ここでは、4個)のキャリア6を左右に並べて載置可能としている。キャリア6は、複数枚(たとえば、25枚)の基板7(ここでは、半導体ウエハ)を収容している。
【0028】
基板搬送部3は、前側に基板搬送装置8を収容し、後側に基板受渡台9を上下に並べて収容している。この基板搬送部3では、基板搬送装置8を用いて基板搬入出部2に載置されたいずれかのキャリア6と上下いずれかの基板受渡台9との間で基板7を搬送する。
【0029】
基板処理部4は、中央部に前後に伸延する基板搬送室10を上下に並べて配置している。この基板搬送室10は、内部に基板搬送装置11を収容し、前端部を基板搬送部3の基板受渡台9に連通させ、後端部に基板7を冷却するための基板冷却装置12を設置し、天井部に送風装置13を設置している。
【0030】
また、基板処理部4は、基板搬送室10の左右両側に前後に伸延する基板処理室14,15を上下に並べて配置している。各基板処理室14(15)の内部には、中間部に基板7を処理液で液処理するための基板液処理装置16,16を前後に並べて配置するとともに、前後端部に基板7を超臨界状態又は亜臨界状態で乾燥処理するための基板乾燥処理装置17,17を配置している。
【0031】
この基板処理部4では、基板搬送装置11を用いて基板7を基板受渡台9から基板液処理装置16に搬送して液処理を行う。この液処理においては、基板7の表面にフッ化水素等の薬液を供給して洗浄処理を行った後に、基板7の表面に純水等のリンス液を供給してリンス処理を行い、さらに、基板7の表面にイソプロピルアルコールやハイドロフルオロエーテル等の乾燥防止用の液体を供給して基板7の表面を乾燥防止用液体で被覆する乾燥防止処理を行う。その後、基板7の表面を乾燥防止用の液体(たとえば、イソプロピルアルコール等)で被覆した状態のまま基板7を基板液処理装置16から基板乾燥処理装置17に搬送して乾燥処理を行う。この乾燥処理については後述する。その後、基板乾燥処理装置17から基板冷却装置12に搬送して冷却処理を行い、その後、基板冷却装置12から基板受渡台9に搬送する。
【0032】
基板乾燥処理装置17は、図3に示すように、基板7を乾燥処理する乾燥処理手段18と、乾燥処理手段18に高圧の基板処理流体(たとえば、二酸化炭素ガス等)を供給する流体供給手段19と、乾燥処理手段18から基板処理流体等を排出する流体排出手段20とを有し、これらの乾燥処理手段18と流体供給手段19と流体排出手段20を制御手段21(コンピュータ)で制御する。制御手段21は、記録媒体に記録された基板処理プログラムに従って基板乾燥処理装置17の乾燥処理手段18と流体供給手段19と流体排出手段20を制御する。なお、制御手段21は、基板乾燥処理装置17だけでなく基板処理装置1の全体を制御する。
【0033】
乾燥処理手段18は、図3図6に示すように、流体供給手段19と流体排出手段20との間に矩形箱型状の処理容器22を接続し、処理容器22の内部を処理容器22を介して間接的に加熱する間接加熱器23を処理容器22の外部に設けるとともに、処理容器22の内部を直接的に加熱する直接加熱器24を処理容器22の内部に設けている。
【0034】
この処理容器22は、基板7を処理する処理空間25を内部に形成した容器本体26の前端に基板搬送体27を前後にスライド移動可能に取付けている。
【0035】
容器本体26は、処理空間25の左右端部に前後に伸延する流体供給路28と流体排出路29を形成し、流体供給路28の後端部に流体供給手段19を接続し、流体排出路29の後端部に流体排出手段20を接続している。これにより、処理容器22は、流体供給手段19から供給される流体を流体供給路28から処理空間25に供給し、処理後の流体を流体排出路29から流体排出手段20に排出する。
【0036】
基板搬送体27は、処理空間25の前端開口部を密閉する蓋体30の後部に基板7を載置する基板載置台31を取付けている。これにより、処理容器22は、基板搬送体27を前方に移動させて処理空間25を開放した状態で基板搬送装置11と基板載置台31との間で基板7の受取りや受渡しを行い、基板搬送体27を後方に移動させて処理空間25を密閉した状態で基板7の乾燥処理を行う。なお、蓋体30は、裏面に容器本体26の前端面と密接する断面略U字バネ状のパッキン32を取付けている。このパッキン32の少なくとも容器本体側表面や処理容器22の内部表面は、容器本体26を形成するステンレス等の母材に金メッキ又はプラチナメッキを施している。
【0037】
間接加熱器23は、容器本体26の上面及び下面にヒータープレートを取付けている。この間接加熱器23は、ヒータープレートで容器本体26の上下壁面を加熱することで、容器本体26の上下壁面を介して処理空間25の内部を間接的に加熱する。この間接加熱器23は、処理空間25の内部を加熱して超臨界状態又は亜臨界状態とする際に使用される。
【0038】
直接加熱器24は、容器本体26の内部の処理空間25に形成された流体供給路28及び流体排出路29と前端開口部にシーズヒーターを取付けている。この直接加熱器24は、シーズヒーターで処理空間25の内部を直接的に加熱する。この直接加熱器24は、処理容器22から流体排出手段20で超臨界状態又は亜臨界状態の流体(基板処理流体や乾燥防止用の液体)を排出する際に、急速な減圧に伴う温度低下によってミスト状に液化して基板7に付着するのを防止するために使用される。
【0039】
流体供給手段19は、基板処理流体を所定の圧力で供給する流体供給源33に浄化装置34を接続し、浄化装置34の送出管35に定圧供給流路36と昇圧供給流路37の上流端部を接続し、定圧供給流路36と昇圧供給流路37の下流端部に供給管38を接続し、供給管38を処理容器22の流体供給路28に接続している。
【0040】
定圧供給流路36は、流体供給源33から基板処理流体を昇圧させずに一定の圧力で処理容器22に供給する流路である。ここで、一定の圧力とは、流体供給源33で供給される基板処理流体の圧力又はそれより低い圧力であり、流体供給源33からそのままの圧力で供給する場合に限られず、レギュレーター等で減圧した圧力で供給してもよい。
【0041】
この定圧供給流路36には、上流側から順に加熱器39、濾過器40、流量調整器41が接続されている。
【0042】
そして、定圧供給流路36は、加熱器39で基板処理流体を加熱した状態で濾過器40を通過させることで不純物を除去するとともに、流量調整器41で設定された流量で基板処理流体を処理容器22に供給する。
【0043】
昇圧供給流路37は、流体供給源33から基板処理流体を昇圧機構42で所定の圧力に昇圧して処理容器22に供給する流路である。ここで、所定の圧力とは、流体供給源33で供給される基板処理流体の圧力よりも高い圧力である。
【0044】
この昇圧供給流路37には、上流側から順に昇圧機構42、加熱器43、濾過器44、流量調整器45が接続されている。昇圧機構42は、冷却装置46とポンプ47で構成している。
【0045】
そして、昇圧供給流路37は、冷却装置46で基板処理流体を冷却して液体状にしてからポンプ47で所定の圧力に昇圧して圧送し、流量調整器45で設定された流量で基板処理流体を処理容器22に供給する。また、昇圧供給流路37は、加熱器43で基板処理流体を加熱した状態で濾過器44を通過させることで不純物を除去する。
【0046】
これらの定圧供給流路36と昇圧供給流路37は、制御手段21で流量調整器41,45を制御することで切換えられ、いずれかの流路36,37から基板処理流体が処理容器22に供給される。その際に、基板処理流体に溶解したハイドロカーボン類等の一部の不純物が濾過器40,44を通過した後に基板処理流体の温度低下に伴って析出してしまうおそれがある。そのため、定圧供給流路36や昇圧供給流路37の濾過器40,44よりも下流側から処理容器22までの間の配管に断熱材やヒーターを巻回して基板処理流体を断熱又は加熱して基板処理流体の温度低下を抑制するのが好ましい。
【0047】
上記昇圧供給流路37では、昇圧機構42を冷却装置46とポンプ47とで構成しているが、この構成に限られない。たとえば、図7に示す昇圧供給流路37'では、昇圧機構42'として上流側から冷却器48、流入側開閉弁49、密閉容器50、流出側開閉弁51を接続し、密閉容器50に加熱器52を設けるとともに、流量調整器45に並列して大気開放弁53を接続している。
【0048】
この昇圧機構42'では、流出側開閉弁51を閉じるとともに流入側開閉弁49を開くことで、流体供給源33から供給される基板処理流体を冷却器48で冷却して密閉容器50に貯留し、その後、流入側開閉弁49を閉じて密閉容器50の内部に基板処理流体を密閉した状態で加熱器52で加熱することで基板処理流体の温度及び圧力を上昇させ、その後、流出側開閉弁51を開くことで密閉容器50から処理容器22に昇圧させた基板処理流体を供給する。
【0049】
この昇圧機構42'では、冷却器48の上流側において一部の基板処理流体を分岐して開閉弁54を介して冷却器48の外周に大気圧に減圧させた状態で供給することで、減圧によって温度低下した基板処理流体を用いて冷却器48の内部を通過する基板処理流体を冷却するように構成している。
【0050】
昇圧機構42'では、密閉容器50の内部を内部容器の外周に外部容器を同心円上に配置した二重構造として熱損失を低減させた構造としてもよい。また、密閉容器50の内部に酸化触媒を収容してハイドロカーボン類等の不純物を二酸化炭素や水に分解して除去する構造としてもよい。この場合に、密閉容器50の内部に酸化触媒を活性させる酸素を供給する構成としてもよい。
【0051】
流体排出手段20は、図3に示すように、処理容器22の流体排出路29に接続した排出管55を外部の廃棄機構に開閉弁56を介して接続している。これにより、流体排出手段20は、開閉弁56を開放することで処理容器22の内部から基板処理流体等を外部の廃棄機構に廃棄する。なお、排出管55の基端部に分岐管57を接続し、直接加熱器24を分岐管57から外部に配線し、分岐管57の端部において封止体58で封止している。このように、排出管55から分岐させた分岐管57で封止することで、封止部で塵等のパーティクルが発生しても、流体排出時に排出管55から排出することができ、基板7を汚染するおそれがない。
【0052】
基板処理装置1は、以上に説明したように構成しており、制御手段21で制御することで、基板7を基板液処理装置16で液処理した後に、基板乾燥処理装置17で乾燥処理する。
【0053】
この乾燥処理においては、基板7の表面を乾燥防止用の液体(イソプロピルアルコール等)で被覆した状態で基板液処理装置16から基板乾燥処理装置17の処理容器22に搬入し、処理容器22で基板7の乾燥を行う。
【0054】
その際に、基板処理装置1では、開閉弁56を閉じた状態で処理容器22の内部に高圧の基板処理流体を供給して、高圧の基板処理流体の圧力の作用で基板7の表面に付着(被覆)する乾燥防止用の液体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力にまで処理容器22の内部圧力を上昇させる。その後、間接加熱器23で処理容器22の内部温度を上昇させて、基板7の表面に付着する乾燥防止用の液体を超臨界状態又は亜臨界状態に状態変化させる。その後、開閉弁56を開くことで処理容器22から超臨界状態又は亜臨界状態の液体と基板処理流体を排出する。基板7の表面では液体が超臨界状態又は亜臨界状態となっているために、表面張力が作用せず、これにより、基板表面パターンが倒壊するのを防止できる。
【0055】
基板処理装置1では、上記した基板7の表面に付着する乾燥防止用の液体を超臨界状態又は亜臨界状態として乾燥処理する場合に限られず、基板処理流体を超臨界状態又は亜臨界状態として乾燥処理してもよい。この場合には、開閉弁56を閉じた状態で間接加熱器23で加熱した処理容器22の内部に高圧の基板処理流体を供給して、基板処理流体が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力にまで処理容器22の内部圧力を上昇させる。その後、基板7の表面に付着(被覆)する乾燥防止用の液体を超臨界状態又は亜臨界状態となった基板処理流体に置換する。その後、開閉弁56を開くことで処理容器22から超臨界状態又は亜臨界状態の基板処理流体と液体を排出する。この場合も、基板7の表面では基板処理流体が超臨界状態又は亜臨界状態となっているために、表面張力が作用せず、基板表面パターンが倒壊するのを防止できる。
【0056】
そして、上記基板処理装置1では、上記の乾燥処理にかかわらず、処理容器22に基板処理流体を供給する際に、まず、定圧供給流路36から一定の圧力の基板処理流体を処理容器22に供給し、処理容器22の内部圧力が所定の圧力となった場合に、昇圧供給流路37から昇圧機構42で昇圧した基板処理流体を処理容器22に供給して、処理容器22の内部圧力を上昇させるように制御する。
【0057】
このように、上記基板処理装置1では、常に昇圧機構42を介して基板処理流体を処理容器22に供給するのではなく、昇圧機構42を介さずに定圧供給流路36から基板処理流体を処理容器22に供給して、処理容器22の内部圧力を増加させ、その後に、昇圧機構42を介して昇圧供給流路37から基板処理流体を処理容器22に供給する。そのため、上記基板処理装置1では、昇圧機構42を通過する頻度が低下し、昇圧機構42から基板処理流体にパーティクルが混入するのを低減させることができる。これにより、基板7の汚染を抑制することができて、基板処理装置1の歩留まりを向上させることができる。
【0058】
特に、上記基板処理装置1において、定圧供給流路36や昇圧供給流路37に濾過器40,44を設け、濾過器40,44の上流側に加熱器39,43を設けるとともに、濾過器40,44の下流側の処理容器22に接続された配管を断熱又は加熱した場合には、加熱器39,43による加熱によって濾過器40,44の捕捉効率を向上させることができるとともに、濾過器40,44で捕捉できなかった基板処理流体に溶解したハイドロカーボン類等の不純物が濾過器40,44を通過した後に基板処理流体の温度低下に伴って析出してしまうのを防止することができ、これによっても、基板7の汚染を抑制し、基板処理装置1の歩留まりを向上させることができる。
【0059】
また、機械構造物であるポンプ47を用いた昇圧機構42ではなく、冷却器48と密閉容器50と加熱器52とを有する構成で化学的な状態変化を用いて昇圧させる昇圧機構42'とした場合には、昇圧機構42'を通過する際のパーティクルの混入を防止することができ、これにより、基板7の汚染を防止して基板処理装置1の歩留まりを向上させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 基板処理装置
7 基板
21 制御手段
22 処理容器
33 流体供給源
36 定圧供給流路
37 昇圧供給流路
42 昇圧機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7