(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を用いて、オーバーレイ測定の概要について説明する。
図1は、オーバーレイ測定の対象となるパターンの一例を示す図である。半導体ウェハは複数のレイヤが積層されて構成されており、積層されることによって、半導体回路を構成する。
図1は下層(レイヤ1)に拡散層、上層(レイヤ2)にゲート層を持つトランジスタ構造を示す図である。以下に説明する実施例では、主にこの2つのレイヤの相対的な位置を測定することによって、オーバーレイ測定を行う例について説明する。
【0016】
半導体の製造過程におけるオーバーレイ管理とその計測技術は半導体の量産工程において重要な役割を占めている。そして、近年の微細加工技術の進展によって、更なる高精度化が求められるようになってきた。特に、重ね合わせの要求精度が<5nm程度になると、実際のデバイスパターンで発生する誤差因子(レンズの熱収差やSTIのストレス)を無視できなくなる。
【0017】
露光装置によるショット領域の周辺(例えば四隅)に重ね合わせのための専用パターンを配置し、この形状の重ね合わせ状況を、光学式検査装置を用いて管理する手法では、光学式検査装置の光の波長故の分解能の限界があり、十分な精度での重ね合わせ誤差を評価することが難しい。また、露光装置のレンズの熱収差の影響によりショット内の広い領域内でのパターンのバラつきが大きくなっており、ショットの隅のパターンでの重ね合わせ管理では精度の観点で限界となっている。さらに、トランジスタのSTIレイヤでは周辺のコンタクトホールの影響によるゲート形状のストレスの影響によるゲート形状バラつきがある。
【0018】
よって、実パターン(実際にパターン形状を画像化したデータ)を用いた重ね合わせ管理を行うことが望ましい。
【0019】
そこで、本実施例では、光学式検査装置では取得することのできない高い倍率での画像取得が可能な走査電子顕微鏡やイオンビーム顕微鏡のような荷電粒子線装置によって得られる信号に基づいて、オーバーレイ測定を行う装置、当該測定をコンピューターに実行させるコンピュータープログラム、及び当該コンピュータープログラムを記憶する記憶媒体について説明する。
【0020】
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)によれば、5nm以下の精度の寸法測定が可能であり、本実施例ではパターン、或いは複数のパターン間の寸法を測定する測長用走査電子顕微鏡(Critical Dimension−SEM:CD−SEM)をオーバーレイ測定に用いる例について説明する。
【0021】
一方、CD−SEMは、例えば100nm以下の大きさの視野の画像を取得することが可能であるが、非常に高い倍率による測定、観察が可能であるが故に、オーバーレイ測定を行うに当たり、以下のような測定誤差要因がある。
【0022】
半導体デバイスの各レイヤに対する露光工程では、光近接効果を積極的に活用したいわゆる超解像度技術(RET)を用いたパターン形成が行われる。RETには、拡散層形成工程、ゲート層形成工程、配線工程等で用いられるOPC(光近接効果補正)処理やコンタクトホール形成工程等で代表されるSRAF(超解像度補助パターン)処理がある。
【0023】
このような処理が施されたパターンが表現されるSEM画像に基づくパターン評価を行う場合、パターン形状やパターンのトポロジーを要因とする光近接効果(Optical Proximity Effect:OPE)の影響により、当該パターンの位置が本来の位置からずれて解像される場合がある。
【0024】
すなわち、オーバーレイ誤差がある場合、パターンのずれと、OPEによるパターンのずれが混在することになり、オーバーレイ誤差の適性な評価が困難になる場合がある。本実施例では、特にOPEによるパターンの位置ずれに基づく、オーバーレイ誤差測定の誤差を抑制し、正確なオーバーレイ誤差測定を行う装置について説明する。具体的には、OPE等に基づく位置ずれ分を補正し、位置ずれのキャンセルを行った上で、レイヤ同士の重ね合わせ管理を行う例について説明する。
【0025】
図9は、パターン測定用の画像を取得する走査電子顕微鏡の一例を示す図である。電子源901から引出電極902によって引き出され、図示しない加速電極によって加速された電子ビーム903は、集束レンズの一形態であるコンデンサレンズ904によって、絞られた後に、走査偏向器905により、試料909上を一次元的、或いは二次元的に走査される。電子ビーム903は試料台908に内蔵された電極に印加された負電圧により減速されると共に、対物レンズ906のレンズ作用によって集束されて試料909上に照射される。
【0026】
電子ビーム903が真空チャンバ907内に配置された試料909に照射されると、当該照射個所から二次電子、及び後方散乱電子のような電子910が放出される。放出された電子910は、試料に印加される負電圧に基づく加速作用によって、電子源方向に加速され、変換電極912に衝突し、二次電子911を生じさせる。変換電極912から放出された二次電子911は、検出器913によって捕捉され、捕捉された二次電子量によって、検出器913の出力が変化する。この出力に応じて図示しない表示装置の輝度が変化する。例えば二次元像を形成する場合には、走査偏向器905への偏向信号と、検出器913の出力との同期をとることで、走査領域の画像を形成する。また、
図9に例示する走査電子顕微鏡には、電子ビームの走査領域を移動する偏向器(図示せず)が備えられている。この偏向器は異なる位置に存在する同一形状のパターンの画像等を形成するために用いられる。この偏向器はイメージシフト偏向器とも呼ばれ、試料ステージによる試料移動等を行うことなく、電子顕微鏡の視野(Field Of View:FOV)位置の移動を可能とする。イメージシフト偏向器と走査偏向器を共通の偏向器とし、イメージシフト用の信号と走査用の信号を重畳して、偏向器に供給するようにしても良い。
【0027】
なお、
図9の例では試料から放出された電子を変換電極にて一端変換して検出する例について説明しているが、無論このような構成に限られることはなく、例えば加速された電子の軌道上に、電子倍像管や検出器の検出面を配置するような構成とすることも可能である。制御装置914は、走査電子顕微鏡の各構成を制御すると共に、検出された電子に基づいて画像を形成する機能や、ラインプロファイルと呼ばれる検出電子の強度分布に基づいて、試料上に形成されたパターンのパターン幅を測定する機能を備えている。
【0028】
図10は、半導体計測システムの一例を示す図である。このシステムには、SEMによって得られた信号(画像データや輪郭線データ)に基づいてオーバーレイ誤差測定を実行するオーバーレイ誤差測定装置1001、設計データを記憶する設計データ記憶媒体1002、設計データに基づいてシミュレーションを実行するシミュレーター1003、測定に要する情報を入力する入力装置1004が含まれている。設計データは例えばGDSフォーマットやOASISフォーマットなどで表現されており、所定の形式にて記憶されている。なお、設計データは、設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき、図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。
【0029】
パターン選択部1005では、入力装置1004から入力された情報に基づいて、オーバーレイ誤差測定に供するパターンを選択する。この選択データは例えば測定条件として記憶され、SEM、及びオーバーレイ誤差測定装置1001の動作プログラム(レシピ)として、所定の記憶媒体に記憶される。輪郭線抽出部1006は、SEMによって取得された画像データに基づいて輪郭線を抽出する。輪郭線抽出は例えばSEM画像を二値化した後、エッジの細線化を行うことによって実行する。また、より高精度な輪郭線を形成する場合には、細線化されたエッジの垂線方向に輝度プロファイルを作成し、所定の輝度を持つ部分をエッジとするようにしても良い。また、SEMに輪郭線化機能が搭載されている場合には、輪郭線抽出部1006は不要になる。
【0030】
マッチング部1007は、輪郭線データと、設計データに基づく図形データ、或いは設計データに基づくシミュレーションデータとの間でパターンマッチングを実行する。マッチングの詳細については後述する。パターン位置補正部1009は、レイアウトデータ等と、輪郭線データとの重畳データの中のパターン選択部1005にて選択されたパターンについて、選択的に位置を補正する。補正条件は、補正条件データベース1008に記憶され、当該補正条件に基づいてパターンの選択的な移動を実行する。オーバーレイ測定部は、パターン位置補正部1009によって補正された補正データに基づいて、オーバーレイ誤差測定を実行する。
【0031】
上述したように、実パターンを用いた重ね合わせ計測の場合、一つの層に転写されているパターンが光近接効果の影響によりパターンの位置がシフトもしくは歪んでいる場合があり、このシフト分や歪み分を除外して、オーバーレイ評価を行う必要がある。即ちこのパターンシフトと層間のパターン位置ずれの切り分けを行い、真のオーバーレイエラーを検出する必要がある。
【実施例1】
【0032】
本実施例では主に以下の手順で、オーバーレイ誤差の測定を実行する。
ステップ1:オーバーレイ測定対象パターンの選択
ステップ2:測定レシピの自動生成
ステップ3:レシピを実行することによって画像を取得
ステップ4:OPE補正の実行
ステップ5:オーバーレイ誤差計測
以下、各ステップについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0033】
(1)オーバーレイ測定対象パターンの選択
まず、このステップでは半導体の設計データ(レイアウトデータ)、或いはシミュレーションデータを用いて、オーバーレイ測定対象パターンの選択を行う。この場合、例えば特定のパターン(拡散層とゲート層のような2層構造からなるトランジスタ等)や、その座標及び画像取得領域(視野)の大きさを、レイアウトデータやシミュレーションデータ上で選択することによって、パターン、或いは評価領域を決定する。入力装置1004は、設計データ記憶媒体1002に記憶されたレイアウトデータやシミュレーションデータのような図形データから所望の測定対象を選択するためのものである。
【0034】
(2)測定レシピの自動生成
次に、選択パターン、及び評価領域の画像の取得、及び取得画像に基づく測定を実行するためのレシピを自動生成する。設計データには、パターンの座標情報等が記憶されているため、当該座標にSEM等の視野が位置付けられるように、SEMのステージ移動条件、アドレッシングに要するパターンの自動選択、測長ボックスの設定を自動的、或いは半自動的に実行する。アドレッシングパターンは、例えばSEMのビームシフト可能領域内に、測定対象パターンとアドレッシングパターンが位置付けられるように選択する。アドレッシングパターンは、誤検出を防止するため、形状がユニークなものを選択する。
【0035】
図13は、測定条件を設定するためのGUI(Graphical User Interface)画面の一例を示す図である。この画面は例えば、入力装置1004の表示画面に表示する。このGUI画面では、オーバーレイの評価対象となるレイヤ(Layer)、評価対象領域、或いはパターン座標(位置:Location)、SEMの走査領域の大きさ(FOV size)の選択が可能となっている。このウィンドウへの入力に基づいて、ステージの移動条件やビームの偏向条件等が自動設定される。また、測定対象となるパターンの種類を選択するウィンドウ(Pattern Type)や光近接効果(Optical Proximity Effect:OPE)の距離を選択するウィンドウ(Distance of OPE)1301が設けられている。
【0036】
ウィンドウ1301には、測定対象と近接するパターンとの間の距離に関する情報を入力する。光近接効果によるパターンのシフトは、主に測定対象パターンと隣接するパターンとの間の距離に依存し、距離が近い程、影響が大きくなる。よって、例えば当該ウィンドウに入力された距離以下のものを予め記憶されているデータベースに従って位置補正し、その上でオーバーレイ測定を行えば、正確なオーバーレイ誤差の測定が可能となる。設計データを参照すれば、隣接パターン間の距離を求めることができるため、評価対象領域中であって同じレイヤ中に、上記距離以下のパターン間距離を持つパターンがあれば、データベースに記憶された条件に従って、パターンのシフト分を補正するようにすると良い。また、距離情報の入力は必ずしも必要ではなく、評価対象領域の全パターンについて補正を行うようにしても良い。
【0037】
図11は、補正条件データベース1008に記憶された補正データ(テーブル)の一例を示す図である。このテーブルには、測定対象となるパターンの種類(Pattern Type)と、近接するパターン(Adjacent pattern)の組み合わせ毎に、補正量(Shift amount)と補正方向(Direction)が記憶されている。光近接効果は近接するパターンの大きさや距離に応じて変化するため、それらの組み合わせ毎に補正量と補正方向を記憶しておくと良い。
【0038】
図12は、パターンA1202(上層パターン)、パターン1201(下層パターン)、及び隣接パターンb1205の位置関係を示す図である。この例では、パターンA1202とパターンb1205が同層パターンであり、パターン1201はこれらパターンの下層パターンである。また、線分1203、1204、1206は、それぞれパターン1201、パターンA1202、隣接パターンb1205のレイアウトデータである。
図11に示すテーブルには、パターンA1202と、隣接パターンb1205が近接した場合のOPEによるパターンのシフト量とその方向が記憶されている。オーバーレイ測定の際には、このテーブルに記憶された補正データを用いて、パターンA1202をシフトさせた上で、オーバーレイの測定を行うことで、OPEによるシフト分を除外したオーバーレイ測定を行うことが可能となる。
【0039】
また、光近接効果によってパターンがシフトするパターンは、オーバーレイ測定には適さないとの判断のもと、測定対象から除外するという考え方もある。
図14はその一例を示す図である。この例ではパターンの種類としてトランジスタが選択されている。トランジスタ1401、1402には近隣にOPEが懸念されるパターンがなく、トランジスタ1403の近隣には、隣接パターン1404が位置している。この3つのトランジスタの中で、OPEによるパターンシフトが懸念されるパターンはトランジスタ1403であるため、例えばウィンドウ1301への入力値X
0と、レイアウトデータ上のトランジスタ1403の上層パターンと隣接パターン1404との距離X
01が、「X
0≧X
01」となるような場合に、トランジスタ1403をオーバーレイ誤差測定対象から除外した上で、レシピを生成するようにしても良い。
【0040】
(3)レシピを実行することによって画像を取得
以上のようにして生成されたレシピを用いて、自動測定を行い、オーバーレイ誤差の測定対象であるパターンを含む画像を取得する。取得された画像は後述するようなオーバーレイ誤差測定に供される。
【0041】
(4)OPE補正の実行
次に、パターン位置補正部1009では、OPEによるシフト分を補正するように、上層パターンの位置をシフトする。具体的には
図12に例示するように、データベースに記憶された補正量(x
1,y
1)と補正方向(θ
1)に基づいて、パターンA1202の位置を選択的にシフトさせる。このように補正することによって、オーバーレイ誤差とOPEによるパターンシフトが混在し、オーバーレイの評価を行うことが困難なパターンであっても、適正な評価を行うことが可能となる。なお、実際にシフトさせることなく、演算のみでオーバーレイ誤差を求めることも可能である。なお、SEM画像は輪郭線化されており、当該輪郭線データについて、下層に属する輪郭線は動かすことなく、上層に属する輪郭線を選択的に移動させるようにする。
【0042】
(5)オーバーレイ誤差計測
オーバーレイ測定部1010では、ステップ4にてOPEによるパターンシフト分が補正されたパターンデータを用いて、オーバーレイ誤差測定を実行する。この場合、
図15に例示するように、下層パターンのレイアウトデータのエッジ1501と下層パターンの輪郭線1502との間で位置合わせ(マッチング)を行い、位置合わせが行われた上層パターンのレイアウトデータのエッジ1503の重心位置1506と、上層パターンの輪郭線1504の重心位置1507との間の寸法測定を実行する。下層パターン間の位置合わせは、例えばレイアウトデータと輪郭線との対応点間の距離1505の加算平均値が最小となる位置を探索することによって実行する。
図10に例示したブロック図では、マッチング部1007によってレイアウトデータと輪郭線の位置合わせ(マッチング)を行った後で、パターン位置補正部1009によるパターンの位置補正を行っているが、この順番はどちらでも良い。
【0043】
また、重心位置間を測定する理由は、パターンの変形等によらず、安定した測定が可能なことによるが、レイアウトデータと輪郭線のエッジ間の距離を測定することによって、オーバーレイ誤差を測定するようにしても良い。
【0044】
また、実パターンによる計測を行う場合、下層が上層に覆われてSEM画像上に表現されない場合もあるため、その場合には、オーバーレイ計測のための専用ターゲットパターンをチップ内もしくはショット内に複数配置しこのパターンを用いてオーバーレイ計測を行う(In chip overlay)と良い。この場合、下層が見える専用のコンタクトホールを、専用のターゲットとすることが考えられる。より具体的にはオーバーレイ計測を行う場合、半導体製造工程に於けるプロセス起因(例えば、リソ工程、エッチング工程、CMP工程等)により計測に用いる実パターンそのものの変動(変形等の出来栄え不良)が含まれていることがある。よって、安定したオーバーレイ計測を実現するためには、当該プロセス毎に最適なオーバーレイ計測の専用パターンをチップ内もしくはショット内に複数配置しこのパターンを用いてオーバーレイ計測を行うことが望ましい。
【0045】
近年のパターンの微細加工の進歩により、露光に用いるスキャナーのレンズ収差の影響が従来と比較して相対的に顕著になりつつあり、且つスキャナーの連続使用によるレンズの蓄熱の影響もより顕著になりつつある。よって露光領域内の異なる部位ごとに異なるパターンシフトが発生することが考えられる。よって、チップ内に複数の専用パターンを設け、複数のずれを求めることは非常に有効である。
【0046】
試料上のパターンの配置状況に応じて、OPEに基づくパターンシフトは、それぞれ異なる方向や距離で発生するため、本実施例では、各部位にてずれの補正を行い、正確なオーバーレイ誤差測定を行うと良い。また、オーバーレイ誤差を安定的に測定するために、各部位でのオーバーレイ誤差の統計値(例えば平均値)を求めるようにしても良い。
【実施例2】
【0047】
本実施例では、光近接効果による位置ずれの推定はXとY軸にそれぞれ対称なパターンを検出し、対称パターン間の距離より、位置ずれ量を算出し、この量を用いてオーバーレイ計測の対象パターンの位置の補正を行う例について説明する。
【0048】
図2は、6個のトランジスタが配置されたパターン構造を示す図である。SRAMなどでは
図2に例示するようなパターン構造が連続して配列される。ゲートを構成する上層(レイヤ2)は、図示するように2つのライン状のパターン201、202が隣接して配置されており、更にその外側のパターン203、204は、パターン201、202の中心について対称に配置されている。パターン201、202のような対称性パターンに含まれる一方のパターンの他方のパターンに対するOPEと、他方のパターンの一方のパターンに対するOPEはほぼ同じと考えられるため、OPEによるシフト量(絶対値)もほぼ同じであると考えられる。また、外側のパターン203、204も、パターン201と202との中心位置について、対称に配置されているため、やはりパターン201、202のシフト量はパターン201、202の中心を基準としたとき、反対の方向に同じ量、シフトすると考えられる。
【0049】
このように、対称パターンのOPEによるシフトは、おおよそ左右対称に発生すると考えられるため、2つのパターン201、202間の間隔が、設計データと同じになるように対称にシフトさせた位置が、OPEによるパターンシフトがない状態のパターン201、202の位置であると考えられる。
【0050】
本実施例では、OPEによるパターンシフトの把握が容易な対称パターンをオーバーレイの測定対象とすると共に、当該パターンシフトを補正した上で高精度にオーバーレイ誤差測定を行う例について説明する。本実施例では、以下の手順でオーバーレイ誤差測定を実行する例について説明する。
ステップ1:オーバーレイ対象パターンの決定
ステップ2:対称性パターンの探索
ステップ3:撮像レシピの自動生成
ステップ4:検査及びOPE補正用の画像取得
ステップ5:OPE補正計算処理
ステップ6:オーバーレイ計測
本実施例によれば以下の効果が期待できる。
【0051】
まず、実デバイスパターンのオーバーレイを直接計測、管理を行う手法(装置)を実現可能であり、露光装置のレンズの熱収差やゲート部分のストレスによるショット内の寸法不均一を考慮した重ね合わせ評価を行うことができ、クリティカルなレイヤの処理工程での高い歩留まりを期待することができる。
【0052】
更に、実デバイスの光近接効果によるパターンの位置ずれを補正することができる。この結果、複数工程で取得したパターンの輪郭線(Contour)同士を重ねたレイヤ間出来栄え評価を行うことができる。
【0053】
また、本実施例によれば、OPCキャリブレーションと検証(パターン間の位置補正)の目的として、本来の正しいパターン位置を求めることができる。従って、この情報をOPCモデリングに反映することで高精度OPCが可能となる。
【0054】
図6は、設計データ上、対称性パターン(同じ形状のパターンが近接して2以上配列されているパターン)の位置を適正に補正した上で、オーバーレイ誤差測定を行う工程を示す図である。対称性パターンの条件選択は例えば入力装置1004にて行う。
【0055】
ステップ1:オーバーレイ計測パターン決定
半導体の設計データ(レイアウトデータ)に基づき、2つのレイヤの重ね合わせ部分の座標とパターン形状を算出する。また、その結果を用いて撮像のためのレシピ情報を自動生成する。
【0056】
ステップ2:対称性パターン決定
半導体の設計データ(レイアウトデータ)に基づき、上記のオーバーレイ計測パターンに対応した対象性パターンの座標とパターン形状を算出する。また、その結果を用いて撮像のためのレシピ情報を自動生成する。対称パターンの選択は例えば同形状のパターンが所定の間隔より狭い範囲に配列されているか否かの判定に基づいて行うようにしても良いし、上層レイヤの製造の基となっているレイアウトの設計データを用いて対称パターンの抽出を行うようにしても良い。パターン選択部1005では、入力装置1004によって入力された対称パターンの条件に基づいて、その条件に見合ったパターンを選択する。
【0057】
ステップ3:対称性パターンによるOPE補正
CD−SEMで取得したSEM画像から輪郭形状を生成し、パターン形状の光近接効果の影響による位置の補正を行う。
図7は光近接効果の影響により、対称性パターンが同一量シフトする例を示している。
図7に例示するように、対称性パターンは左右に同じ量シフトする。よってOPEの影響を排除するために、設計データ(レイアウトデータ)あるいはシミュレーション形状データから、対称性パターンを構成する2のパターン間の距離(例えば重心点間の距離)Δxdを抽出すると共に、輪郭線データから対称性パターンを構成する2のパターン間の距離Δxcを求め、(Δxc−Δxd)/2を算出する。この算出結果を1のパターンのシフト量として、パターン位置補正部1009は、輪郭線データ内の対称パターンの位置をシフトさせる。
【0058】
ステップ4:オーバーレイ計測
上記で位置の補正を行った2つのレイヤの輪郭線形状データの重ね合わせを行い、オーバーレイ計測を行う。
【0059】
オーバーレイ誤差測定は、上述したようにパターンの重心点間の距離を求めるようにしても良いし、エッジ間距離を測定するようにしても良い。オーバーレイ測定部1010では、視野の大きさに対するエッジ間、或いは重心点間の距離に基づいて、オーバーレイ誤差測定を実行する。但し、パターンの変形によらず、高精度なずれを求めるためには、重心間のずれを求めることが望ましい。オーバーレイ測定部1010は2のパターンの重心、或いはエッジ位置から、オーバーレイ誤差の測定を実行する。より具体的には重心位置間の測定を行う場合には、レイアウトデータ、或いはシミュレーションデータ内の測定対象パターンの重心と、SEM画像に基づいて得られる輪郭線データ内の測定対象パターンの重心間の距離を求めることによって、オーバーレイ誤差を測定する。
【0060】
図8はオーバーレイ計測のための専用パターンを用いた計測方法の例である。計測対象となる当該工程毎に相当するパターン(例えばコンタクトホールと配線パターンの組み合わせ)を予め製品デバイスのマスクの空き領域に作成しておき、この2つのレイヤ間でのパターンの距離や幅を計測するものである。実際の製造工程では配線とコンタクトホールの上下関係が絶縁膜等で覆われている場合があり、計測対象となる2つのパターン同士のエッジが適切に見えない場合がある。このため、専用パターンでは例えば穴の底に配線パターンが見える様な構造として、2つのレイヤのパターンのエッジを検出可能とする。
【0061】
また、このパターンのサイズの目安は当該工程のデバイスレイヤのデザインルールに対して最も微細なルール値で現されるパターンサイズを使用する。これにより実際にデバイス製造時に影響が様々なプロセスの影響と同等な条件のもとでこのオーバーレイパターンも製造されるため、プロセス条件を加味したオーバーレイ計測が可能となる。
【0062】
尚、この専用のパターンのグループは各チップ内の複数の空き領域やダミーパターンの配置領域に配置(例えば数十〜100箇所)することでチップ内及びショット内毎のパターンずれのベクトルを検出することができ、この情報を露光装置管理の機能にフィードバックすることができる。
【0063】
図1は下層パターンと上層の配線やゲートパターンとのオーバーレイを計測する専用のターゲットパターンである。また、
図2は下層の配線と上層のコンタクトホールを開口し、オーバーレイを計測する専用のパターンである。
【0064】
以上、本実施例によれば、光学式検査装置に比べ、微細な検査パターンを用いることができるので、合わせずれの許容誤差を減らすことができる。また、実デバイスパターンと同サイズの検査パターンの使用による合わせずれ管理をデバイスレベルで実現できる。また、光学式装置にて発生するレンズ収差の影響のないオーバーレイ誤差測定が可能となる。更に、In−Chipで複数個所を計測できるためWafer面内での分布を管理可能となる。
【0065】
図3は、対称性パターンを用いたオーバーレイ誤差測定を行う他の例を示す図である。対称性パターンに含まれる一方のパターンの他方のパターンに対するOPEと、他方のパターンの一方のパターンに対するOPEはほぼ同じと考えられるため、OPEによるシフト量(絶対値)はほぼ同じであると考えられる。即ち、オーバーレイ誤差とOPEによるパターンシフトが混在した輪郭線データ301、302の重心303、304間の中心305は、OPEによるパターンシフトがないオーバーレイ誤差のみのパターン間の中心位置と同じ位置にあることになる。そこで本例では、中心305と、基準パターン306、307(レイアウトデータやシミュレーションデータの図形データ)の中心308との間の距離を、オーバーレイ誤差とする。すなわち、中心305の座標(x
305,y
305)と、中心308の座標(x
308,y
308)との差分(Δx,Δy)をオーバーレイ誤差量とし、Atan(Δy/Δx)をオーバーレイ誤差の方向とする。
【0066】
このような演算によれば、OPEの大小によらず、OPEの影響を排除したオーバーレイ誤差の測定が可能となる。
【実施例3】
【0067】
また、オーバーレイ誤差測定を高精度に行うためには高い倍率(狭い視野サイズ)での画像取得が求められる。一方、高倍率での画像取得を行おうとすると、上層パターンと下層パターンが1つの視野に収まらないことがある。そこで、高倍率で取得した画像を繋ぎ合わせて、広範囲に亘って分解能の高い画像を形成するパノラマ技術を用いて、オーバーレイ測定を行う例について説明する。
【0068】
パノラマ画像を形成する場合に、実施例2で説明したようなOPEによるパターンのシフトがあると、本来想定した位置にパターンがないことになるため、画像の繋ぎ合わせに失敗する可能性がある。
図4は下層レイヤのパターン401と、上層レイヤのパターン402、403が配置された回路パターンの一例を示す図である。レイアウトデータ404、405の位置に合わせて視野407、408が設定され、パターン401を含む視野406との間の重畳領域409、410が設定されている。視野間の重畳部分は、正確な繋ぎ合わせを行うために、少なくとも2方向のエッジが含まれている必要がある。これは、一方向にしかエッジがないと、二次元的な位置を特定できないことによる。
【0069】
以下に、正確な繋ぎ合わせを可能とすべく、実施例1にて説明したようなデータベースを参照して、適切な位置に視野を設定する例を説明する。
【0070】
図5は、パターンのシフト分を考慮して視野位置を設定した例を示す図である。視野501、502は
図11に例示したようなデータベースを参照して、パターンのシフト分、視野407、408をシフトした例を示す図である。
図5では、初期の視野設定位置(視野407、408)に対して、Δx分、パターンをシフトさせた例を示している。
【0071】
図16は、パノラマ画像を作成する際に、視野の初期設定位置を、データベースを参照して補正する工程を示すフローチャートである。
【0072】
まず、
図4に例示するように、レイアウトデータ上でパノラマ画像を形成するための複数の視野を設定する(ステップ1601)。この場合、複数の視野間では重畳領域を設け、且つ当該重畳領域の中には少なくとも2方向の線分が含まれるようにする。次に、
図11に例示するようなデータベースを参照して(ステップ1602)、パノラマ画像形成領域内にOPEによるパターンシフトが発生するものがないか判定を行い、パターンシフトが発生するパターンがある場合には、データベースに記憶されたシフト量やシフトの方向に基づいて、視野位置を移動させる。
【0073】
次に、位置補正前に視野の一部が重畳していた視野(視野406)と、視野移動後の視野との重畳状態を確認(ステップ1604)し、位置合わせに要するエッジが含まれていないと判断できる場合(2方向のエッジが含まれていない場合、視野が所定の大きさより小さい場合(重畳領域が小さすぎて重ね合わせ精度が確保できない場合)等)、視野406を分割して視野503、504を設定すると共に、視野406に対してΔx分、視野501、502に追従するように、位置をシフトさせる(ステップ1605)。この場合、シフト量<Δxであったとしても、重畳領域内に位置合わせに要するエッジが含まれていると判断できる場合には、そのシフト量分、視野503、504を移動させるようにしても良い。
【0074】
更に、視野移動による他の重畳領域の状態を確認し、重畳領域内に適切にエッジが含まれていると判断できる場合に、設定、或いは補正された視野位置を画像取得条件の1つとするSEMの撮像レシピとして登録する(ステップ1606)。このような撮像レシピは、例えば制御装置914や入力装置1004に内蔵されるメモリ等の記憶媒体に記憶させ、SEM稼動時の動作プログラムとして読み出される。
【0075】
以上のような構成によれば、OPEの存在によらず、適切な位置に視野を設定することが可能となる。また、オーバーレイ誤差測定を行う場合、広範囲に拡がる複数のパターンを用いて、高精度なオーバーレイ誤差測定を行うことが可能となる。
【実施例4】
【0076】
次に、シミュレーションデータ用いて、パノラマ画像の形成条件を設定する例について説明する。シミュレーションデータは、設計データ記憶媒体1002に記憶されたレイアウトデータに対し、パターン形成条件等を加味してパターンの形状予測を行った結果得られるものであり、シミュレーター1003によって行われる。
【0077】
パノラマ画像の形成条件を設定する上で重要な点は上述したように取得画像(視野)に適切な重なり部分(重畳領域)を持たせることにある。設計データを基準としてこのFOV位置を最適に配置するには、OPEによるパターンの変形やシフトを考慮する必要がある。
【0078】
本実施例では、シミュレーション形状と、設計データに基づくレイアウト形状との乖離の程度を求め、当該乖離の程度に基づいて、視野を適切な位置に設定する例を説明する。より具体的には、レイアウトデータとシミュレーションデータとの対応点(パターンの同一部位と見做せる点)間のEPE(Edge Placement Error)測長結果に基づいて、パターンの各部位の出来栄えを評価し、当該出来栄えに応じて、視野位置を設定する例について説明する。
【0079】
図17は、レイアウト形状1701とシミュレーション形状1702との間のEPE測長結果(EPE値)に基づいて、パターンの各部位の評価値(本例では両形状間の乖離度)を算出し、評価値の算出に基づいて、評価マップ1703を作成する例を示す図である。評価マップはパターンをマトリクス状に分割し、その各部位について、評価値を記憶するためのものである。各部位の評価値は、当該部位に属するEPE測長結果、或いは当該部位に属するEPE測長結果の平均値とすることができる。
【0080】
図20は、SEMの撮像レシピ作成装置となる入力装置1004、設計データ記憶媒体1002、及びシミュレーター1003を含む撮像レシピ作成システムの概要を示す図である。入力装置1004は、演算装置2001と、入力部2002を備えている。演算装置2001に含まれる視野位置設定部2003は、入力部2002から入力された条件等に基づいて、視野位置を設定する。例えば
図18に例示する3つのパターン1801〜1803のパノラマ画像を作成するための条件として、視野のサイズ(倍率)、重畳領域の大きさ、他のSEMの光学条件等を、入力部2002から入力する。また、
図18の例では、図の右側から順に視野1804、1805、1806、及び1807を設定する例を例示しているが、このような画像取得順序の入力も可能となっている。
【0081】
EPE測定部2004では、
図17に例示したように、パターンの複数の部位毎に、レイアウト形状1701と、シミュレーション形状1702との間の寸法を測定する。乖離度分布作成部2005では、得られたEPE測長結果に基づいて、所定の領域単位でのレイアウトデータとシミュレーションデータとの乖離の度合いを算出する。より具体的には各部位単位でのEPE値、平均値、或いは方向毎の重み付け平均値など、両者の乖離の度合いを示す指標値を求め、例えば評価マップ1703の部位1704、1705単位でメモリ2009に登録する。
【0082】
ベクトル演算部2006は、例えば視野間の重畳領域1808に含まれるエッジのベクトル計算を行い、水平成分(x成分)、垂直成分(y成分)の分布を計算する。例えば重畳領域1808に含まれるエッジの中でx成分がどの程度含まれるか、及びy成分がどの程度含まれるかを演算する。重み付け係数演算部2007では、乖離度分布作成部2005にて求められた指標値に基づいて重み付け係数を設定する。
【0083】
図19は
図18に例示した視野1804、1805の重畳領域1808の評価を行う例を示す図である。例えば部位1901における指標値に基づいて、乖離度分布作成部2005では、重み付け係数を設定する。具体的にはシミュレーションデータとレイアウトデータとの乖離が大きい個所は、実パターンの形状が安定せず、所定のエッジ形状が得られない個所であると考えられる。そこで、例えば各部位(例えば部位1901)にて、ベクトル演算を行い、x方向成分とy方向成分の存在量に関する指標値を算出すると共に、レイアウトデータ1904とシミュレーションデータ1902との間の乖離の度合いに応じて、当該指標値の係数を設定する。乖離の程度が大きい程、重み付け係数は小さくなる。
【0084】
視野位置設定部2003は、重畳領域1808に含まれる複数の部位のx方向及びy方向の「指標値×重み付け係数」の累積値が所定の条件(x方向、y方向共に重ね合わせに足る線分が確保できたと判断できる状態)を満たしたときに、その視野位置を画像取得条件として、メモリ2009に登録する。
【0085】
パターンマッチング部2008では、レイアウトデータとシミュレーションデータ、シミュレーションデータとSEM画像に基づくエッジデータ(例えばSEM画像から抽出された輪郭線データ)、或いはレイアウトデータとSEM画像に基づくエッジデータとの間でパターンマッチングを実行する。
【0086】
図21は、パノラマ画像形成のための視野位置を選択する工程を示すフローチャートである。
【0087】
まず、設計データ記憶媒体1002に記憶されたレイアウトデータと、シミュレーター1003にて作成されたシミュレーションデータを読み出して、両者間でパターンマッチングを実行する(ステップ2101)。次に、レイアウトデータとシミュレーションデータの対応点間の寸法測定(EPE測長)を実行する(ステップ2102)。このEPE測長結果に基づいて、パターンの部位毎の乖離状況をマップ化する(ステップ2103)。次に、シミュレーション形状に対してエッジのベクトル計算を行い、x方向の線分、及びy方向の線分の分布を演算する(ステップ2104)。次に指定された視野サイズやパノラマ画像形成の対象となる領域情報に基づいて、第1の視野(
図18の視野1804)を設定する(ステップ2105)。
図18の例の場合、図の右側から順に視野を位置付けると共に、パターン1801の右側のエッジから所定の距離に視野1804の右端が位置するように設定するように初期条件が設定されている。また、その条件下でパターン1801と視野1804との重畳領域が最も大きくなるように設定されている。
【0088】
次に第2の視野を設定する(ステップ2106)。第2の視野(視野1805)は、第1の視野と所定の大きさの重畳領域を設けつつ、パターン1802が極力視野に収まるように設定される。このとき、重畳領域1808について、上述のように所定の線分情報が含まれているか否か判断(ステップ2107)し、含まれていないと判断できる場合には、重畳領域1808の大きさを大きくする(ステップ2108)。
【0089】
この場合、例えば重畳領域1808にx方向の線分が十分に含まれていないと判断できる場合には、視野1805を右側にシフトさせることで、重畳領域1808のx方向の線分(パターン1801の下端部)をより多く重畳領域1808に含ませるようにする。または、パターン1802の上端部を重畳領域1808内に含ませるように、視野1805を上側にシフトするようにしても良い。
図18の例の場合、x方向の線分を重畳領域により多く含ませるように、重畳領域近傍のx方向線分をサーチし、複数の選択肢の中で、重畳領域の大きさが最も小さくなるような視野位置を選択する。重畳領域が大きい程、取得画像の数が増えるため、上記のような判断基準に基づいて、重畳領域に所定の線分を含みつつ、重畳領域が小さくなるように視野1805を選択する。
【0090】
視野1805をシフトさせる場合は、シフトと重畳領域の評価を交互に行うことで、重畳領域の大きさを過度に大きくすることなく、適正な視野位置を選択することができる。また、視野設定位置の移動によって、視野1805からパターン1802の一部がはみ出てしまうような場合は、はみ出た分の画像を取得すべく、新たな視野を選択するようにする。
【0091】
以上のような新たな視野位置の設定と、重畳領域の評価及び補正を繰り返すことによって、視野の増加を抑制しつつ、画像間の接続を高精度に実現し得る画像取得条件を見出すことができる。
【0092】
以上のような工程を経て、所望の全てのパターンエッジを視野内に収めたと判断できた場合に、その画像取得条件をレシピとしてメモリ2009等に登録する。
【実施例5】
【0093】
パノラマ画像を形成するために、複数の画像を合成する場合、重畳領域内のエッジの数が十分でないと、位置合わせ精度が低下する場合がある。これは転写パターンの出来栄えや撮像する際の装置のステージ精度に影響等の理由による。
【0094】
このような状態を補完するために、本実施例では視野1804と視野1805との間に新たな視野2201を設定する例について説明する。視野2201を新たに設定することによって、重畳領域に十分なエッジ数を確保することが可能となる。
【0095】
この場合、重ね合わせの位置精度を高めるために重ね合わせる処理の順序が重要であり、本例の場合、視野1804→視野2201→視野1805の順番で重ね合わせ処理を実行する。この順序は設計データあるいはシミュレーションデータの解析を行い各エッジ同士の接続の容易性と信頼性の評価を行い求めることができる。
【0096】
また、重畳領域1808に含まれるエッジについて、先の実施例にて説明したような評価を行い、所定の条件を満たさないと判断できる場合に選択的に視野2201を増やすことによって、必要最小限の視野数で高精度な合成処理を行うことが可能となる。