(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定機において、前記制御装置は、前記測定アームの現在変位量と前記基準変位量とを比較して、その比較結果を測定力指標とすることを特徴とする測定機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような従来の測定機では、測定力を調整するときに、測定力を計測する精密な計測機器が別途必要である。このような計測機器は一般に高価であり、調整作業の準備のために移動させなければならず不便である。また、このような計測機器を用いて測定力を確認しながら調整することは調整作業が煩雑となる。
【0007】
本発明の目的は、測定力を計測する計測機器が不要で、必要な測定力を容易に調整できる測定機及びその測定力調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面性状測定機は、被測定物を載置するステージと、前記被測定物の表面に接触されるスタイラスを有する検出手段と、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構とを備え、前記検出手段は、本体と、前記本体に支持軸を支点として揺動可能に支持されかつ先端にスタイラスを有する測定アームと、前記スタイラスの変位量を検出する変位検出器とを有し、前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として揺動可能に支持された第1測定アームと、前記第1測定アームに着脱可能に設けられて前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成された測定機において、前記スタイラスに付与される測定力が所定の基準測定力であるときに、前記スタイラスが接触することで弾性変形して前記測定アームを所定の基準変位量だけ変位させる測定部を有する変位量測定治具と、前記変位検出器によって検出された前記測定アームの現在変位量に対応した測定力指標を演算する制御装置とを備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、「スタイラスの変位量を検出する変位検出器」には、スタイラスの変位量を検出するために、直接的には、測定アームにおけるスタイラスが取り付けられた部分の変位量を検出し、検出されたこの変位量から間接的にスタイラスの変位量を検出する変位検出器も含まれる。
このような構成によれば、制御装置で演算された測定力指標に基づいて、現在の測定力を基準測定力に一致させることができる。このため、測定力を計測する計測機器が不要で、必要な測定力を容易に調整できる。
【0010】
本発明の測定機において、前記測定力指標に基づき前記測定力を制御する測定力制御手段を備えることが好ましい。
このような構成によれば、測定力制御手段によって容易に現在の測定力を基準測定力に一致させることができ、必要な測定力を容易に調整できる。
【0011】
本発明の測定機において、前記検出手段は、前記測定アームに位置調整可能に設けられて前記スタイラスに測定力を付与するバランスウェイトを有し、前記測定力指標に関する情報を表示する表示装置を備えることが好ましい。
このような構成によれば、表示装置に表示される測定力指標に関する情報に基づいて、バランスウェイトの位置を変化させて調整することにより、現在の測定力を基準測定力に一致させることができる。このため、必要な測定力を容易に調整できる。
【0012】
本発明の測定機において、前記制御装置は、前記測定アームの現在変位量と前記基準変位量とを比較して、その比較結果を測定力指標とすることが好ましい。
このような構成によれば、測定力指標としては、例えば、基準変位量に対応した測定力を基準測定力とし、この基準測定力の指標を基準指標とすると、基準指標に対してどの程度大きいか、又はどの程度小さいかを示す基準指標に対する割合などが用いられる。このような測定力指標に基づいて必要な測定力を調整できるため、容易に必要な測定力を調整できる。
【0013】
本発明の測定機において、前記変位量測定治具は基台を備え、前記測定部は、前記基台に設けられ、前記基台を構成する材料とは異なる材料から形成され、前記測定アームに取り付けられたスタイラスが前記測定部に接触したときの前記測定部の変形量が、同じ種類の測定アームに取り付けられた同じ種類のスタイラスが前記基台に接触したときの前記基台の変形量と異なっていることが好ましい。
このような構成によれば、簡易な構成の変位量測定治具によって、測定部の変位量を容易に測定できる。
【0014】
本発明の測定機において、前記基準変位量は、少なくとも、異なる種類の測定アーム及び異なる種類のスタイラスの組合せと、各組合せに対応する前記基準変位量とを記憶した基準変位量テーブルから読み出されることが好ましい。
このような構成によれば、異なる種類の測定アームや異なる種類のスタイラスなどの各組合せに対応する基準変位量を迅速に把握することができる。
【0015】
本発明の測定機の測定力調整方法は、被測定物を載置するステージと、前記被測定物の表面に接触されるスタイラスを有する検出手段と、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構とを備え、前記検出手段は、本体と、前記本体に支持軸を支点として揺動可能に支持されかつ先端にスタイラスを有する測定アームと、前記スタイラスの変位量を検出する変位検出器とを有し、前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として揺動可能に支持された第1測定アームと、前記第1測定アームに着脱可能に設けられて前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成された測定機の測定力調整方法において、前記スタイラスに付与される測定力が所定の基準測定力であるときに、前記スタイラスが接触することで弾性変形して前記測定アームを所定の基準変位量だけ変位させる測定部を有する変位量測定治具を用い、前記変位量測定治具を前記ステージに載置して、前記測定アームの基準変位量を測定する準備工程と、前記変位検出器によって検出された前記測定アームの現在変位量と前記基準変位量とを比較して、前記現在変位量に対応した測定力指標を演算する検出工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、変位量測定治具を用いて測定アームの基準変位量を測定しておくだけで測定力を調整できるので、測定力を計測する計測機器が不要で、必要な測定力を容易に調整できる。
【0017】
本発明の測定機の測定力調整方法において、前記検出工程の後に、前記測定力指標に基づき前記測定力を制御する測定力制御工程を備えることが好ましい。
このような構成によれば、測定力が測定力指標に基づいて自動で制御されるため、容易に現在の測定力を基準測定力に一致させることができ、必要な測定力を容易に調整できる。
【0018】
本発明の測定機の測定力調整方法において、前記検出工程の後に、前記測定力指標に関する情報と、前記測定アームに位置調整可能に設けられて前記スタイラスに測定力を付与するバランスウェイトの位置情報とに基づいて前記バランスウェイトの位置を調整することにより、前記測定力が調整される調整工程を備えることが好ましい。
このような構成によれば、測定力指標に関する情報に基づいて、バランスウェイトの位置を変化させて調整することにより、現在の測定力を基準測定力に一致させることができる。このため、必要な測定力を容易に調整できる。
【0019】
本発明の測定機の測定力調整方法において、前記準備工程では、少なくとも、異なる種類の測定アーム及び異なる種類のスタイラスの組合せと、各組合せに対応する基準変位量とが記憶されることが好ましい。
このような構成によれば、検出工程において、異なる種類の測定アームや異なる種類のスタイラスなどの各組合せに対応する基準変位量を迅速に取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、各実施形態において、同一の構成部分には同じ符号を付すとともに、それらの説明を省略または簡略化する。
【0022】
<第1実施形態>
図1に示す測定機としての表面性状測定機1は、ベース10と、このベース10上に載置され上面に被測定物を載置するステージ11と、被測定物の表面に接触されるスタイラス26を有する検出手段としてのスタイラス変位検出手段20と、このスタイラス変位検出手段20とステージ11とを相対移動させる相対移動機構30とを備える。
【0023】
このような表面性状測定機1は、スタイラス26を被測定物の表面に接触させた状態において、相対移動機構30によりスタイラス変位検出手段20とステージ11とを相対移動させながら、変位検出器27(後述)によってスタイラス26のZ軸方向の変位量を検出し、この変位量から被測定物の表面性状を測定する。
【0024】
相対移動機構30は、ベース10とステージ11との間に設けられてステージ11を水平方向の一方向(Y軸方向)へ移動させるY軸駆動機構31と、ベース10の上面に立設されたコラム32と、このコラム32に上下方向(Z軸方向)へ移動可能に設けられたZスライダ33と、このZスライダ33を上下方向へ昇降させるZ軸駆動機構34と、Zスライダ33に設けられてスタイラス変位検出手段20をステージ11の移動方向(Y軸方向)およびZスライダ33の移動方向(Z軸方向)に対して直交する方向(X軸方向:後述する測定アーム24の軸方向)へ移動させるX軸駆動機構35とを備える。
【0025】
また、Zスライダ33とX軸駆動機構35との間には、X軸駆動機構35の移動方向をステージ11に対して傾斜させる旋回機構36が設けられている。旋回機構36により、X軸駆動機構35とともにスタイラス変位検出手段20が、水平姿勢のほか傾斜姿勢に姿勢変更可能に構成されている。
【0026】
Y軸駆動機構31およびZ軸駆動機構34は、図示省略されているが、例えば、ボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合されたナット部材とを有する送りねじ機構によって構成されている。
【0027】
X軸駆動機構35は、
図2に示すように、Zスライダ33に旋回機構36を介して固定された駆動機構本体351と、この駆動機構本体351にX軸方向と平行に設けられたガイドレール352と、このガイドレール352に沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたXスライダ353と、このXスライダ353のX軸方向位置を検出するX軸位置検出器354と、Xスライダ353をガイドレール352に沿って移動させる送り機構360とを備える。
【0028】
送り機構360は、駆動機構本体351にガイドレール352と平行に設けられXスライダ353に螺合された送りねじ軸361と、駆動源としてのモータ362と、このモータ362の回転を送りねじ軸361に伝達する回転伝達機構363とから構成されている。回転伝達機構363は、例えば、歯車列や、ベルトおよびプーリなどの機構によって構成されている。
【0029】
スタイラス変位検出手段20は、
図2に示すように、Xスライダ353にボルト21を介して着脱可能に吊り下げ支持された本体としてのブラケット22と、このブラケット22に支持軸としての回転軸23を支点として上下方向へ揺動(円弧運動)可能に支持された測定アーム24と、この測定アーム24の先端に下向きに突出して設けられたスタイラス26と、スタイラス26のZ軸方向の変位量を検出する変位検出器27と、測定アーム24を揺動方向の一方向(例えば、上方向)に付勢される姿勢および他方向(下方向)に付勢される姿勢に切り替えることによって、後述する測定力指標Pに基づいてスタイラス26に付与される測定力を制御する測定力制御手段40と、ブラケット22、測定アーム24、変位検出器27を覆うケーシング28とを含んで構成されている。
【0030】
測定アーム24は、ブラケット22に回転軸23を支点として上下方向へ揺動可能に支持された第1測定アーム241と、この第1測定アーム241の先端に着脱機構25を介して交換可能に取り付けられた第2測定アーム242とから構成されている。着脱機構25は、第1測定アーム241と第2測定アーム242とを磁力によって吸着するマグネット構造になっている。あるいは、着脱機構25は、図示しない取付ブラケットと取付ねじを備え、第1測定アーム241が取付ねじを用いて取付ブラケットに取り付けられ、この第1測定アーム241が取り付けられた取付ブラケットに第2測定アーム242が取り付けられる構造であってもよい。
【0031】
第2測定アーム242としては、長さや形状が異なる2種類のアームが交換可能に用意されており、測定アーム24としては、一方の第2測定アーム242と第1測定アーム241とを組み合わせた測定アーム24Aと、他方の第2測定アーム242と第1測定アーム241とを組み合わせた測定アーム24Bとが使用可能となっている。
【0032】
スタイラス26は、第2測定アーム242の先端に、第2測定アーム242に対して交換可能に取り付けられており、突出長さなどが異なる5種類のスタイラス261〜265が交換可能に用意されている。
なお、スタイラス26と第2測定アーム242とが一体とされたものでもよく、この場合には、5種類のスタイラス261〜265が第2測定アーム242と一体とされたものが用意されている。
【0033】
変位検出器27は、
図3に示すように、測定アーム24の揺動範囲に沿って設けられ、測定アーム24のうちスタイラス26が取り付けられた部分のZ軸方向の変位量に対応した数のパルス信号を出力する位置検出器によって構成されている。具体的には、測定アーム24に設けられ測定アーム24の揺動方向に湾曲したスケール27Aと、このスケール27Aに対向してブラケット22に取り付けられた検出ヘッド27Bとを備える。スケール27Aの検出面は、測定アーム24の軸線上でかつ測定アーム24の揺動面上に配置されている。これにより、スケール27Aの検出面、測定アーム24、スタイラス26の先端が同一軸上に配置されることになる。変位検出器27によって、測定アーム24のうちスタイラス26が取り付けられた部分のZ軸方向の変位量を検出することにより、スタイラス26のZ軸方向の変位量が検出される。
【0034】
測定力制御手段40は、
図2に示すように、第1測定アーム241の途中に設けられた円筒状の磁石41と、この磁石41内を通ってブラケット22に固定され測定アーム24を回転軸23を支点として揺動方向の一方向(上方向)および他方向(下方向)へ付勢するボイスコイル42と、後述する制御装置101から出力される測定力指令値に基づいてボイスコイル42に流す電流を制御する測定力制御回路43によって構成される。測定力制御回路43からボイスコイル42に電流が流されると、ボイスコイル42から発生する電磁力と磁石41の磁力により、磁石41が
図2中上下方向に移動させられ、測定アーム24の先端が上方向または下方向へ付勢される姿勢に切り替えられる。このように測定アーム24の姿勢が切り替えられることによって、スタイラス26に付与される測定力が制御されて減少または増加される。
【0035】
次に、本実施形態の表面性状測定機1の制御システム100について説明する。
図4に示すように、制御システム100は制御装置101を備え、制御装置101には、Y軸駆動機構31、Z軸駆動機構34、X軸駆動機構35、旋回機構36、スタイラス変位検出手段20に含まれる変位検出器27、ボイスコイル42(これは、測定力制御回路43を介して)が接続されているとともに、入出力手段102(
図1参照)や記憶装置104などが接続されている。
【0036】
図1に示すように、入出力手段102は例えばノート型のパーソナルコンピュータであり、表示装置103を備える。
入出力手段102からは、測定アーム24の種類とスタイラス26の種類とを指定する情報が入力される。
【0037】
記憶装置104は、変位検出器27によって検出された測定アーム24のZ軸方向の現在変位量hを記憶する記憶部105と基準変位量テーブル106とを備える。
基準変位量テーブル106には、
図10に示すように、異なる第2測定アーム242が取り付けられた異なる種類の測定アーム24と、異なる種類のスタイラス26との組合せごとに、予め、テーブル作成者によって後述する測定部62において測定されて設定された測定アーム24のZ軸方向の基準変位量Hが記憶されている。
【0038】
このような制御装置101は、入出力手段102で指定された測定アーム24の種類とスタイラス26の種類とに基づいた基準変位量Hを基準変位量テーブル106から読み出し、これらの情報から、変位検出器27によって検出された現在変位量hと基準変位量Hとを比較して、現在変位量hに対応した測定力の指標となる測定力指標Pを演算する。そして、制御装置101は、測定力指標Pに基づく測定力指令値を測定力制御回路43に出力する。
【0039】
測定力指標Pとしては、例えば、基準変位量Hに対応した測定力を基準測定力とし、この基準測定力の指標を基準指標Mとすると、基準指標Mに対してどの程度大きいか、又はどの程度小さいかを示す基準指標Mに対する割合などが用いられる。
【0040】
また、表面性状測定機1は、
図5に示すように、変位量測定治具60を備える。
変位量測定治具60は、例えば直方体形状をしており、ステンレスなどから形成されて中央部分が窪んだ断面視凹形状の基台61と、ゴムなどから形成され、基台61の中央部分に設けられた所定の厚さを有する測定部62とを備える。
測定部62は、測定力が所定の基準測定力であるときに、スタイラス26が接触することで弾性変形して測定アーム24を所定の基準変位量Hだけ変位させる部分である。
【0041】
このような変位量測定治具60は、使用される前には、表面性状測定機1の付属物として、表面性状測定機1が梱包などされる梱包ケースに表面性状測定機1とともに梱包されていてもよいし、あるいは、表面性状測定機1の所定部分、例えばベース10の内部に組み付けられていてもよい。
【0042】
次に、本実施形態の表面性状測定機1の測定力を調整する測定力調整方法について説明する。
この測定力調整方法は、
図6に示すような、テーブル作成者が予め基準変位量Hを測定する準備工程T1と、
図7に示すような、測定アーム24のZ軸方向の現在変位量hを検出して、検出された現在変位量hに対応した測定力指標Pを演算する検出工程T2、及び測定力指標Pに基づいて測定力を制御する測定力制御工程T3とを備える。以下では、各工程中の各動作ステップをS1,S2,・・・で示す。
【0043】
準備工程T1では、まず、テーブル作成者が、S1において、第1測定アーム241に一方の第2測定アーム242を組み合わせて測定アーム24Aとし、測定アーム24Aの先端にスタイラス261を取り付ける(
図10の最上段の組合せ)。
その後、S2において、測定力を電子天秤などで実測しながら、所定の基準測定力となるように、測定力制御回路43からボイスコイル42に所定の電流が流され、測定アーム24の姿勢を基準姿勢に調整する。
【0044】
次に、S3において、ステージ11に変位量測定治具60を載置し、
図8の(i)に示すように、基台61のうち測定部62よりも
図8中左側に位置する左側表面61Aにスタイラス261を接触させて、スケール27Aを原点に合わせる。続いて、
図8の(ii)に示すように、基台61のうち測定部62よりも
図8中右側に位置する右側表面61Bにもスタイラス261を接触させて、スケール27Aが原点に合っているかを確認する。なお、基台61は、スタイラス261によって押圧されるが、基台61の変形量はごくわずかである。
【0045】
その後、S4において、
図9に示すように、スタイラス261を測定部62に接触させる。測定部62はスタイラス261によって押圧変形され、測定アーム24Aが、測定部62の変形量と等しい量だけ
図9中下方向に揺動する。このとき、変位検出器27によって、測定アーム24Aの下方向の変位量が検出される。そして、この測定アーム24Aの下方向の変位量が基準変位量H1として測定・検出される。
そして、S5において、記憶部105が基準変位量H1を記憶する。続いてS6において、
図10に示す測定アーム24などの全ての組合せに対応する基準変位量Hが測定されたか否かが判定される。
【0046】
S6において、
図10に示す測定アーム24などの全ての組合せに対応する基準変位量Hが測定されたと判定された場合には、準備工程T1は終了する。一方、測定アーム24などの全ての組合せに対応する基準変位量Hはまだ測定されていないと判定された場合には、その他のスタイラス262〜265が取り付けられた組合せ(
図10中、一番上の組合せ以外の組合せ)に交換されて再びS1〜S5が行われ、全ての組合せに対応する基準変位量H1〜H5が測定されて記憶される。そして、
図10に示す異なる種類の測定アーム24A,24B及び異なる種類のスタイラス261〜265の組合せと、各組合せに対応する基準変位量H1〜H5とが基準変位量テーブル106として記憶装置104に記憶される。
【0047】
次に、
図7に示す検出工程T2と測定力制御工程T3とについて説明する。以下では、第1測定アーム241に一方の第2測定アーム242を組み合わせて測定アーム24Aとし、測定アーム24Aの先端にスタイラス261を取り付けた組合せ(
図10の最上段の組合せ)を例にとって説明する。なお、
図10の最上段の組合せ以外の組合せに関しても同様の検出や演算等が行われる。
【0048】
検出工程T2では、まず、S7において、S1と同様に、
図10の最上段の組合せを取り付ける。次に、S8において、S3と同様に、スケール27Aを原点に合わせる。
その後、S9において、
図9に示すように、スタイラス261を測定部62に接触させて、測定アーム24Aの下方向の現在変位量h1を変位検出器27で測定・検出する。
【0049】
次に、S10において、制御装置101が、入出力手段102で指定された測定アーム24の種類とスタイラス26の種類、すなわち
図10の最上段の組合せに基づいた基準変位量H1を基準変位量テーブル106から読み出し、これらの情報から、現在変位量h1と基準変位量H1とを比較して、現在変位量h1に対応した測定力の指標となる測定力指標P1を演算する。
【0050】
そして、測定力制御工程T3に移行する。測定力制御工程T3では、制御装置101が、測定力指標P1に基づく測定力指令値を測定力制御回路43に出力し、測定力指標P1に基づいて、測定力制御回路43がボイスコイル42へ流す電流を制御し、これにより、測定アーム24の先端の姿勢が制御され、スタイラス26に付与される測定力が制御されて減少または増加される。これによって、測定力を基準測定力に調整できる。
【0051】
以上のような本実施形態の表面性状測定機1及びその測定力調整方法では、以下の効果がある。
本実施形態の表面性状測定機1では、変位量測定治具60と、測定力指標Pを演算する制御装置101と、測定力制御手段40とを備え、これらを用いて測定力を基準測定力に調整する。このため、測定力を計測する計測機器が不要で、必要な測定力を容易に調整できる。
【0052】
また、本実施形態の表面性状測定機1の測定力調整方法では、準備工程T1と、検出工程T2と、測定力制御工程T3とを備えるため、変位量測定治具を用いて測定アーム24の基準変位量Hを測定しておくだけで測定力を調整できるので、測定力を計測する計測機器が不要で、必要な測定力を容易に調整できる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態の表面性状測定機1Aでは、第1実施形態の表面性状測定機1と異なり、スタイラス変位検出手段20には、磁石41とボイスコイル42と測定力制御回路43とから構成される測定力制御手段40は設けられておらず、代わりに、
図11に示すように、スタイラス変位検出手段20は、測定アーム24に位置調整可能に設けられてスタイラス26に測定力を付与するバランスウェイト29を備える。他の構成は第1実施形態の表面性状測定機1と同様である。
【0054】
バランスウェイト29は、回転軸23を支点として第1測定アーム241側の重量と、第2測定アーム242側の重量とがバランスするように、測定アーム24の軸方向へ位置調整可能に設けられている。具体的には、測定アーム24に雄ねじが形成され、この雄ねじにバランスウェイト29が位置調整可能に螺合されている。
バランスウェイト29は、重量が異なる3種類のバランスウェイト291〜293が交換可能に用意されている。
【0055】
次に、本実施形態の表面性状測定機1Aの制御システム110について説明する。
本実施形態の制御システム110では、第1実施形態の制御システム100と異なり、制御装置101にはボイスコイル42は接続されていない。一方で、記憶装置104は表示装置103に表示する表示画面データ107を備える。他の構成は制御システム100と同様である。
このような制御システム110では、入出力手段102からは、測定アーム24の種類と、スタイラス26の種類と、バランスウェイト29の種類とを指定する情報が入力される。
表示装置103は、測定力指標に関する情報例えば測定力指標Pと基準指標Mとの大小関係などの表示対象を一般的なドットマトリクス方式で表示する。
【0056】
基準変位量テーブル106には、
図14に示すように、異なる第2測定アーム242が取り付けられた異なる種類の測定アーム24と、異なる種類のスタイラス26と、異なる種類のバランスウェイト29との組合せごとに、予め、テーブル作成者によって測定部62において測定されて設定された測定アーム24のZ軸方向の基準変位量Hが記憶されている。
【0057】
本実施形態の制御装置101は、入出力手段102で指定された測定アーム24の種類と、スタイラス26の種類と、バランスウェイト29の種類とに基づいた基準変位量Hを基準変位量テーブル106から読み出し、これらの情報から、変位検出器27によって検出された現在変位量hと基準変位量Hとを比較して、現在変位量hに対応した測定力の指標となる測定力指標Pを演算する。
【0058】
現在変位量hが基準変位量Hよりも小さい場合には、測定力は基準測定力よりも小さくて基準測定力に達しておらず、測定力指標Pが基準指標Mに対して小さい位置に示される。逆に、現在変位量hが基準変位量Hよりも大きい場合には、測定力は基準測定力よりも大きくて基準測定力を超えており、測定力指標Pが基準指標Mに対して大きい位置に示される。
【0059】
このような測定力指標Pと基準指標Mとの大小関係は、表示画面データ107として記憶装置104で記憶され、制御装置101を介して表示装置103中の測定力バーB(
図15参照)で表示される。
図15に示す表示では、基準測定力が「設定値F0mN」と具体的に表示され、現在変位量hに対応した測定力が「測定値fmN」と具体的に表示されている。また、測定アーム24の軸方向におけるバランスウェイト29の現在の位置情報も、表示画面データ107として記憶装置104で記憶され、制御装置101を介して表示装置103に模式的に表示される。なお、表示装置103には、
図15に示すように、バランスウェイト29の現在の位置情報とともに、バランスウェイト29をどちらの方向に移動させればよいかが太字の矢印などでハイライト表示されてもよい。
【0060】
次に、本実施形態の表面性状測定機1Aの測定力を調整する測定力調整方法について説明する。
本実施形態の測定力調整方法は、第1実施形態の測定力調整方法と異なり、
図13に示すように、測定力制御工程T3の代わりにバランスウェイト29の位置を調整する調整工程T4を備える。他の準備工程T1及び検出工程T2を備える点は第1実施形態の測定力調整方法と同様である。
【0061】
本実施形態の準備工程T1の動作ステップは、原則、
図6に示すものと同様である。このため、準備工程T1に関しては、
図6を参照して説明する。
本実施形態の準備工程T1では、まず、テーブル作成者が、
図6のS1において、第1測定アーム241に一方の第2測定アーム242を組み合わせて測定アーム24Aとし、測定アーム24Aの先端にスタイラス261を取り付ける。そして、測定アーム24Aにバランスウェイト291を取り付ける(
図14の最上段の組合せ)。
【0062】
その後、
図6のS2において、測定力を電子天秤などで実測しながら、所定の基準測定力となるように、バランスウェイト291の位置を調整してバランスウェイト291を基準位置に位置させる。
その後、
図6のS3〜S6が行われる。これにより、
図14に示す異なる種類の測定アーム24A,24B、異なる種類のスタイラス261〜265、及び重量の異なるバランスウェイト291〜293の組合せと、各組合せに対応する基準変位量H1〜H5とが基準変位量テーブル106として記憶装置104に記憶される。
【0063】
次に、
図13に示す検出工程T2と調整工程T4とについて説明する。以下では、第1測定アーム241に一方の第2測定アーム242を組み合わせて測定アーム24Aとし、測定アーム24Aの先端にスタイラス261を取り付け、測定アーム24Aにバランスウェイト291を取り付けた組合せ(
図14の最上段の組合せ)を例にとって説明する。なお、
図14の最上段の組合せ以外の組合せに関しても同様の検出や演算等が行われる。
【0064】
検出工程T2では、まず、S11において、
図14の最上段の組合せを取り付ける。このとき、バランスウェイト291は任意の位置に配置されている。次に、S12において、S8と同様に、スケール27Aを原点に合わせる。
その後、S13において、S9と同様に、測定アーム24Aの下方向の現在変位量h1を変位検出器27で測定・検出する。
【0065】
次に、S14において、制御装置101が、入出力手段102で指定された測定アーム24の種類と、スタイラス26の種類と、バランスウェイト29の種類、すなわち
図14の最上段の組合せに基づいた基準変位量H1を基準変位量テーブル106から読み出し、これらの情報から、現在変位量h1と基準変位量H1とを比較して、現在変位量h1に対応した測定力の指標となる測定力指標P1を演算する。
【0066】
そして、調整工程T4に移行する。調整工程T4では、S15において、表示装置103は、
図15に示すように、測定力指標P1が、今回の組合せに対応する基準指標M1に対してどの程度大きいかを測定力バーBで表示する。また、表示装置103は、
図15に示すように、現在のバランスウェイト291の位置情報も模式的に表示する。
次にS16において、S15で表示された測定力指標P1や現在のバランスウェイト291の位置情報から、測定力指標P1が基準指標M1と一致しているか否かが判断される。
【0067】
S16において、測定力指標P1が基準指標M1と一致していると判断された場合には、調整工程T4は終了する。一方、測定力指標P1が基準指標M1と一致していないと判断された場合には、表示装置103に表示された測定力指標P1と基準指標M1との位置関係や、現在のバランスウェイト291の位置情報に基づいて、バランスウェイト291の位置を変化させて基準位置に調整することにより、測定力指標P1を基準指標M1に合わせる。
図14の最上段の組合せの場合には、
図15に示すように、測定力指標P1が、今回の組合せに対応する基準指標M1に対して大きいため、バランスウェイト291を
図15中左方向、すなわち回転軸23に近づく方向に移動させることによって測定力指標P1を基準指標M1に合わせる。これによって、測定力を基準測定力に調整できる。
【0068】
なお、表示装置103には、測定力指標Pと基準指標Mとの大小関係を示す測定力バーBだけが表示されればよく、バランスウェイト29の現在の位置情報は表示されなくてもよい。また、
図16に示すように、測定力バーBが縦に表示されてもよい。そして、測定力バーBだけが表示される場合には、
図16に示すように、被測定物の表面性状を測定するときの測定レンジモードと測定力を調整するときの測定力モードとに切替可能となっている。測定レンジモードでは、被測定物の表面性状に対応した指標が測定力バーBに表示され、測定力モードでは、前述した測定力指標Pと基準指標Mとの大小関係が表示される。
【0069】
以上のような本実施形態の表面性状測定機1A及びその測定力調整方法では、以下の効果がある。
本実施形態の表面性状測定機1Aでは、変位量測定治具60と、測定力指標Pを演算する制御装置101と、測定力指標Pと基準指標Mとの位置関係や、現在のバランスウェイト29の位置情報を表示する表示装置103とを備え、表示装置103に表示されたそのような情報に基づいて、バランスウェイト29の位置を調整することにより、測定力を基準測定力に調整する。このため、測定力を計測する計測機器が不要で、必要な測定力を容易に調整できる。
【0070】
また、本実施形態の表面性状測定機1Aの測定力調整方法では、準備工程T1と、検出工程T2と、調整工程T4とを備えるため、変位量測定治具60を用いて測定アーム24の基準変位量Hを測定しておくだけで測定力を調整できるので、測定力を計測する計測機器が不要で、必要な測定力を容易に調整できる。
【0071】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、測定機として表面性状測定機1,1Aについて説明したが、これには限定されず、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭形状測定機や、被測定物の真円度や円筒形状を測定する測定機であってもよく、測定力を調整する測定機であればよい。
【0072】
前記第1実施形態では、表示装置103に測定力指標Pに関する情報を表示させずに、測定力指標Pに基づいて測定力を制御していた。しかし、前記第1実施形態においても、記憶装置104に表示画面データ107が記憶されるようにしておき、測定力指標Pに基づいて測定力を制御する際に、測定力指標Pに関する情報を
図15又は
図16のように表示装置103に表示させてもよい。
【0073】
前記第2実施形態では、制御装置101は、測定アーム24の現在変位量hと基準変位量Hとを比較して、その比較結果を測定力指標Pとしていたが、測定力指標としては、測定アーム24の現在変位量hを用いてもよい。この場合、基準変位量Hは、例えば変位量測定治具60に関する使用マニュアルなどに記録されていて、表面性状測定機1Aの使用者が、検出された現在変位量hと記録されている基準変位量Hとに基づいて、バランスウェイト29の位置を調整する。
【0074】
前記各実施形態では、基台61の表面が測定部62の
図8中左右両側に位置していたが、測定部62の
図8中左右のどちらか一方の側だけに位置していてもよい。この場合には、基台61の表面は、
図6のS3でスケール27Aの原点合わせが可能程度の所定長さを有している。
【0075】
前記各実施形態では、測定部62はゴムから形成されていたが、これには限定されず、基台61と異なる材料から形成されて押圧変形可能であり、同じ種類の測定アーム24に取り付けられた同じ種類のスタイラス26が接触した時の測定部62の変形量が基台61における変形量と異なっていれば、測定部62はゴム以外の材料から形成されていてもよい。
【0076】
また、変位量測定治具としては、
図5に示すものには限定されず、
図17に示す変位量測定治具70であってもよい。
変位量測定治具70は、直方体形状の基台71と、板ばねで形成されて基台71に片持ち支持されて設けられた測定部72とを備える。基台71の上面と測定部72の上面とは面一となっている。
なお、
図5に示す基台61と同様に、基台71を中央部分が窪んだ断面視凹形状とし、その窪んだ部分に測定部72を設け、基台71における窪んだ部分よりも左右両側に位置する部分で測定部72を両持ち支持してもよい。あるいは、測定部72を変形可能なダイアフラムや、ガスを封入したピストンで形成してもよい。
【0077】
また、前記各実施形態では、基準変位量Hを基準変位量テーブル106から読み出していたが、基準変位量テーブル106自体が作成されず、基準変位量Hだけが記憶装置104に記憶され、基準変位量Hに関する情報が記憶装置104から読み出されてもよい。
【0078】
前記各実施形態では、基準変位量テーブル106には、
図10及び
図14に示す5組の組合せに関する情報があったが、測定アーム24の種類やスタイラス26の種類、およびバランスウェイト29の種類を増減させて、2〜4組の組合せ又は5組より多くの組合せに関する情報があってもよい。
【0079】
前記各実施形態では、一種類の変位量測定治具60を用いていたが、これには限定されず、複数種類の変位量測定治具を用いてもよい。この場合には、複数種類の変位量測定治具について準備工程T1を行い、各変位量測定治具に対応した基準変位量が別個の複数の基準変位量テーブルに記憶される。その後、検出工程T2のS8,S12において、使用する変位量測定治具をステージ11に載置するときに、いずれの変位量測定治具が載置されているのかについて、変位量測定治具の種類を特定する情報が入出力手段102から入力される。そして、S10,S14において、制御装置101が、使用する変位量測定治具に対応した基準変位量が記憶された基準変位量テーブルを読み出し、測定力指標を演算する。