特許第5986934号(P5986934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5986934保護膜形成用組成物、転写材料、導電膜積層体、タッチパネルおよび画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5986934
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】保護膜形成用組成物、転写材料、導電膜積層体、タッチパネルおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20160823BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20160823BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20160823BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C08F2/44 Z
   B32B7/02 104
   B32B15/08 P
   B32B27/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2013-11291(P2013-11291)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-141592(P2014-141592A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英明
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−338611(JP,A)
【文献】 特開2012−163735(JP,A)
【文献】 特開2010−031162(JP,A)
【文献】 特開2007−286487(JP,A)
【文献】 特開2012−252328(JP,A)
【文献】 特開2012−174368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08L 33/00− 35/08
C08F 20/00− 22/40
C08F 120/00−122/40
C08F 220/00−222/40
C08K 3/00− 13/08
B32B 7/02
B32B 15/08
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記一般式(A3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの還元性化合物(A)、ならびに、
トリアゾール構造、チアジアゾール構造およびベンズイミダゾール構造からなる群から選ばれる構造と、メルカプト基と、ヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基とを有し、前記炭化水素基中の炭素原子の合計数(なお、複数の前記炭化水素基がある場合、各炭化水素基中の炭素原子の数の合計数)が5以上である化合物(B)のうち少なくとも1種;
(C)透明樹脂;および
(D)重合性化合物
を含有し、
前記化合物(B)が、下記一般式(B1)、一般式(B2)および一般式(B3)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする保護膜形成用組成物。
【化1】
(一般式(A3)中、R9〜R12は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでもよいアリール基、または、これらを組み合わせた基を表す。ただし、R9〜R12の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は6以上である。)
【化2】
(一般式(B1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は前記炭化水素基を表し、R1およびR2の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。
一般式(B2)中、R3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R3中に含まれる炭素原子の数は5以上である。
一般式(B3)中、R4〜R7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R4〜R7の少なくとも一つは前記炭化水素基を表し、R4〜R7の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。)
【請求項2】
前記化合物(B)を含有し、
前記化合物(B)が、下記一般式(B1)、一般式(B2)および一般式(B3)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の保護膜形成用組成物。
【化3】
(一般式(B1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は前記炭化水素基を表し、R1およびR2の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。
一般式(B2)中、R3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R3中に含まれる炭素原子の数は5以上である。
一般式(B3)中、R4〜R7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R4〜R7の少なくとも一つは前記炭化水素基を表し、R4〜R7の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。)
【請求項3】
前記化合物(B)が、前記一般式(B1)および前記一般式(B2)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項4】
前記化合物(B)が、前記一般式(B1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項5】
前記化合物(B)を含み、
前記化合物(B)の質量Bと前記(C)透明樹脂の質量Cとの質量比であるB/Cが0.20以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項6】
さらに光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項7】
前記(C)透明樹脂の重量平均分子量が1万〜10万であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物。
【請求項8】
仮支持体と、請求項1〜のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物を含む層とを有し、
前記保護膜形成用組成物を含む層の厚さが1〜10μmであることを特徴とする転写材料。
【請求項9】
前記仮支持体と、前記保護膜形成用組成物を含む層との間に、さらに熱可塑性樹脂層を有することを特徴とする請求項に記載の転写材料。
【請求項10】
透明基板と、
該透明基板上に形成された銀を含む導電膜と、
請求項1〜のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物、あるいは、請求項またはに記載の転写材料を用いて、該導電膜の上に形成された保護膜と、
を備えることを特徴とする導電膜積層体。
【請求項11】
請求項10に記載の導電膜積層体を含むことを特徴とするタッチパネル。
【請求項12】
請求項11に記載のタッチパネルを備えることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用組成物、転写材料、導電膜積層体、タッチパネルおよび画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、券売機、銀行の端末などの電子機器では、近年、液晶装置などの表面にタブレット型の入力装置が配置され、液晶装置の画像表示領域に表示された指示画像を参照しながら、この指示画像が表示されている箇所に指またはタッチペンなどを触れることで、指示画像に対応する情報の入力が行えるものがある。
【0003】
このような入力装置(タッチパネル)には、抵抗膜型、静電容量型などがある。しかし、抵抗膜型の入力装置は、フィルムとガラスとの2枚構造でフィルムを押下してショートさせる構造のため、動作温度範囲の狭さや、経時変化に弱いという欠点を有している。
これに対して、静電容量型の入力装置は、単に一枚の基板に透光性導電膜を形成すればよいという利点がある。
【0004】
静電容量型の入力装置としては、前面板の非接触側表面に、電極パターン、保護膜などが一体に形成されている静電容量型タッチパネルが知られており、前面板が静電容量型入力装置と一体化しているため、薄層/軽量化が可能となる。
電極パターンとしては、ITOを主成分とする電極パターンが用いられることもあるが、導電性が高い銀を含む導電膜が電極パターンとして用いられることもある。しかしながら、銀を含む導電膜を用いると、電極を保護している保護膜中において、イオンマイグレーション現象が発生しやすいという問題があった。ここで、イオンマイグレーション(以下、マイグレーションと略すこともある。なお、エレクトロケミカルマイグレーションと言われることもある)現象とは、電気回路上の電極間の絶縁性が電気的、化学的また熱等の要因により不良となり、電極金属がイオンとして溶出・還元されることで短絡を起こす現象のことを言う。
【0005】
このような銀のマイグレーションを防止する方法として、例えば特許文献1や2に記載の方法が知られている。
【0006】
特許文献1には、アクリル系樹脂と、架橋剤と、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールとを含有することを特徴とする粘着剤組成物により、銀を導電体とする配線を備えている透明導電性部材において、配線間で発生し得るマイグレーションを防止することができると記載されている。
【0007】
特許文献2には、(a)基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、無電解メッキ触媒、又は、その前駆体と相互作用する官能基を有するグラフトポリマーを生成させるグラフトポリマー層形成工程、(b)該グラフトポリマー層に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する触媒付与工程、(c)無電解メッキを行い、該グラフトポリマー層に金属膜を形成する金属膜形成工程、(d)該金属膜の一部を除去して金属パターンを形成する金属パターン形成工程、及び、(e)該金属パターンの非形成領域のポリマー層に金属イオン吸着化合物を導入するイオン吸着化合物導入工程、を有することを特徴とする金属パターン材料の製造方法により、金属パターンの非形成領域における耐イオンマイグレーション性に優れた金属パターン材料の製造方法を提供できると記載されている。特許文献2にはポリマー層に金属イオン吸着化合物を導入する方法として、[0109]段落のベンズイミダゾール、ベンズトリアゾールおよび含チオール化合物をはじめとする金属イオン吸着化合物をポリマー層に添加する方法や、グラフトポリマー自体に特定の構造の金属イオン吸着性基を含有させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−077281号公報
【特許文献2】特開2008−192850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に、静電容量型の入力装置は、金属配線間の短絡が生じると操作性に著しく不都合が生じることから、高いイオンマイグレーション抑制効果が求められるものであった。また、静電容量型の入力装置の保護膜として用いる場合は、保護膜の厚さが1〜10μmとなることから、保護膜中の銀濃度が高くなりやすく、高いイオンマイグレーション抑制効果が求められるものであった。
特許文献1で開示される含チオール化合物などの金属イオンと有機金属塩を形成する化合物が導入されたポリマー層を銀または銀合金を含む金属配線上に設け、その絶縁信頼性について検討を行った結果、金属配線間においては配線間抵抗の顕著な低下が確認され、そのイオンマイグレーション抑制効果は昨今要求されるレベルを満たしておらず、さらなる改良が必要であった。
また、静電容量型タッチパネルの保護膜にマイグレーション防止機能を付与することは特許文献1および2には開示されていなかった。実際に特許文献1および2に開示されている化合物を、静電容量型タッチパネルの保護膜に添加しても、保護膜を形成するポリマー(透明樹脂)への溶解性が低く、マイグレーション防止効果が低いものであった。具体的には、特許文献1に記載の5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールをも保護膜を導入した場合にはマイグレーション防止効果が低い上、溶解性が低いことがわかった。また、特許文献2に開示されているメルカプトトリアゾールについても、同様にマイグレーション防止効果が低い上、溶解性が低いことがわかった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、銀を含む導電膜のイオンマイグレーションを防止することができる保護膜形成用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点について鋭意検討を行ったところ、特許文献1で開示される含チオール化合物などの金属イオン吸着化合物のポリマー層における分散性が影響していることを見出した。より具体的には、特許文献1で開示される含チオール化合物などの金属イオン吸着化合物は、その構造に起因して分散性が低い。そのため、該金属イオン吸着化合物をポリマー層(樹脂層)中に導入しようとしても、ポリマー層中で該化合物を均一に分散させることが困難であり、金属イオン(特に銀イオン)のマイグレーションを抑制する効果が得られない。また、多量の該金属イオン吸着化合物をポリマー層中に導入しようとすると、金属イオン吸着化合物がポリマー層中で析出し、ポリマーの劣化を引き起こし、電気信頼性の劣化を引き起こす。さらには、金属イオンの拡散の助長を促し、配線破壊を引き起こすなどの問題が生じる虞がある。
本発明者は、上記知見に基づき、特定の構造を有し、かつ炭素原子の数の合計数が特定の数以上である炭化水素基を有する化合物を用いることで、銀を含む導電膜のイオンマイグレーションを防止することができる保護膜形成用組成物を提供できることを見出して、以下に記載される本発明を提供するに至った。
【0012】
本発明の課題を解決するための具体的な手段である本発明は以下のとおりである。
[1] 下記一般式(A1)、一般式(A2)および一般式(A3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの還元性化合物(A)、ならびに、
トリアゾール構造、チアジアゾール構造およびベンズイミダゾール構造からなる群から選ばれる構造と、メルカプト基と、ヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基とを有し、前記炭化水素基中の炭素原子の合計数(なお、複数の前記炭化水素基がある場合、各炭化水素基中の炭素原子の数の合計数)が5以上である化合物(B)のうち少なくとも1種;
(C)透明樹脂;および
(D)重合性化合物を含有することを特徴とする保護膜形成用組成物。
【化1】
(一般式(A1)中、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、酸素原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、酸素原子を有していてもよい芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基を表す。Zは、水素原子、アシル基、またはRzOC(=O)基を表す。
Rzは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す。ただし、R1〜R5の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は4以上である。なお、R1〜R5は互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(A2)中、R6〜R8は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基を表す。ただし、R6〜R8の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は6以上である。
一般式(A3)中、R9〜R12は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでもよいアリール基、または、これらを組み合わせた基を表す。ただし、R9〜R12の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は6以上である。)
[2] [1]に記載の保護膜形成用組成物は、前記還元性化合物(A)を含有することが好ましい。
[3] [1]に記載の保護膜形成用組成物は、前記化合物(B)を含有することが好ましい。
[4] [1]または[3]に記載の保護膜形成用組成物は、前記化合物(B)が、下記一般式(B1)、一般式(B2)および一般式(B3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【化2】
(一般式(B1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は前記炭化水素基を表し、R1およびR2の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。
一般式(B2)中、R3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R3中に含まれる炭素原子の数は5以上である。
一般式(B3)中、R4〜R7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R4〜R7の少なくとも一つは前記炭化水素基を表し、R4〜R7の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。)
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物は、前記(C)透明樹脂の重量平均分子量が1万〜10万であることが好ましい。
[7] 仮支持体と、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物を含む層とを有し、前記保護膜形成用組成物を含む層の厚さが1〜10μmであることを特徴とする転写材料。
[8] [7]に記載の転写材料は、前記仮支持体と、前記保護膜形成用組成物を含む層との間に、さらに熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。
[9] 透明基板と、該透明基板上に形成された銀を含む導電膜と、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の保護膜形成用組成物、あるいは、[7]または[8]に記載の転写材料を用いて、該導電膜の上に形成された保護膜と、を備えることを特徴とする導電膜積層体。
[10] [9]に記載の導電膜積層体を含むことを特徴とするタッチパネル。
[11] [10]に記載のタッチパネルを備えることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、銀を含む導電膜のイオンマイグレーションを防止することができる保護膜形成用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の静電容量型入力装置の構成の一例を示す断面図である。
図1B】本発明の静電容量型入力装置の構成の他の一例を示す断面図である。
図1C】本発明の静電容量型入力装置の構成の他の一例を示す断面図である。
図2】本発明における前面板の一例を示す説明図である。
図3】本発明における第一の電極パターンおよび第二の電極パターンの一例を示す説明図である。
図4】開口部が形成された強化処理ガラスの一例を示す上面図である。
図5】マスク層が形成された前面板の一例を示す上面図である。
図6】第一の電極パターンが形成された前面板の一例を示す上面図である。
図7】第一および第二の電極パターンが形成された前面板の一例を示す上面図である。
図8】第一および第二の電極パターンとは別の導電性要素が形成された前面板の一例を示す上面図である。
図9】金属ナノワイヤー断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の転写材料、静電容量型入力装置の製造方法、静電容量型入力装置および画像表示装置について説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
[保護膜形成用組成物]
本発明の保護膜形成用組成物は、下記一般式(A1)、一般式(A2)および一般式(A3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの還元性化合物(A)、ならびに、
トリアゾール構造、チアジアゾール構造およびベンズイミダゾール構造からなる群から選ばれる構造と、メルカプト基と、ヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基とを有し、前記炭化水素基中の炭素原子の合計数(なお、複数の前記炭化水素基がある場合、各炭化水素基中の炭素原子の数の合計数)が5以上である化合物(B)のうち少なくとも1種;
(C)透明樹脂;および
(D)重合性化合物を含有することを特徴とする。
【化3】
(一般式(A1)中、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、酸素原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、酸素原子を有していてもよい芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基を表す。Zは、水素原子、アシル基、またはRzOC(=O)基を表す。
Rzは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す。ただし、R1〜R5の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は4以上である。なお、R1〜R5は互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(A2)中、R6〜R8は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基を表す。ただし、R6〜R8の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は6以上である。
一般式(A3)中、R9〜R12は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでもよいアリール基、または、これらを組み合わせた基を表す。ただし、R9〜R12の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は6以上である。)
このような構成により、本発明の保護膜形成用組成物は、銀を含む導電膜のイオンマイグレーションを防止することができる。
本発明の保護膜形成用組成物は、前記還元性化合物(A)および前記化合物(B)のうち少なくとも1種を含み、前記還元性化合物(A)および前記化合物(B)のいずれか一方を含むことが好ましい。
【0017】
<還元性化合物(A)>
本発明の保護膜形成用組成物に還元性化合物(A)を用いることにより、還元性化合物(A)が分散する前記(C)透明樹脂との相溶性を制御すると共に、導電膜(または金属配線)中の銀量を制御することにより、所望の効果が得られることを見出している。より具体的には、所定の還元性化合物(A)を使用することにより、前記(C)透明樹脂中での還元性化合物の分散性を向上させ樹脂の劣化を抑制できること、および、導電膜(または金属配線)中の銀量を所定値以下にすることにより所定の還元性化合物の還元特性がより向上することを見出している。特に、還元性化合物(A)が前記(C)透明樹脂中で良好に分散しているため、還元銀が局在化しにくいため、結果として可視域に吸収を持ち難く、着色やヘイズの悪化も抑制することができる。
また、導電膜(または金属配線)に銀ナノ粒子または銀ナノワイヤーが含まれる場合、銀量を制御することにより、導電膜中での銀成分の比表面積が大きくなり、還元性化合物(A)による改善効果がより向上する。
【0018】
前記還元性化合物(A)は、下記一般式(A1)、一般式(A2)および一般式(A3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つである。還元性化合物(A)が含まれることにより、銀のイオンマイグレーションがより抑制される。
この還元性化合物(A)は、銀イオンを還元する役割を果たす。つまり、銀を含む導電膜(金属配線)から銀イオンが溶出しても、還元性化合物(A)により銀イオンは銀に還元されて、イオンマイグレーションが抑制される。また、この還元性化合物(A)であれば、保護膜中での分散性に優れており、還元銀の局在化が抑制され、結果として保護膜の黄色化(可視光領域での吸収)を抑制することができる。
なお、保護膜中には、式(A1)〜式(A3)で表される還元性化合物(A)が2種以上含まれていてもよい。
【化4】
【0019】
一般式(A1)中、R1〜R5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、酸素原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、酸素原子を有していてもよい芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基を表す。なかでも、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、またはこれらを組み合わせた基が好ましい。
脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはこれらを組み合わせた基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、1〜40が好ましく、4〜20がより好ましい。
一般式(A1)中、Zは、水素原子、アシル基、またはRzOC(=O)基を表す。Rzは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す。なかでも、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、Zは水素原子が好ましい。
アシル基またはRzOC(=O)基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましい。
【0020】
なお、一般式(A1)中、R1〜R5の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は4以上である。つまり、R1〜R5の少なくとも一つは、炭素原子を含む基(上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基など)である。
炭素原子の合計数が該範囲であれば、銀のイオンマイグレーションが抑制され、金属配線間の絶縁信頼性が向上する。なお、該効果がより優れる点で、合計数は8以上が好ましく、10以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されないが、合成がより容易であり、絶縁樹脂への分散性がより優れる点から、合計数は50以下が好ましく、40以下がより好ましい。
なお、化合物中において、R1〜R5の一つのみが炭素原子を含む基(例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基など)の場合は、該基中の炭素原子の数が4以上であればよい。
また、化合物中において、R1〜R5のうち複数の基が炭素原子を含む基(例えば、アルキル基、アルコキシ基など)の場合は、各基中に含まれる炭素原子の数の合計が4以上であればよい。例えば、R1およびR2がアルキル基で、R3〜R5が水素原子の場合、R1のアルキル基中に含まれる炭素原子の数とR2のアルキル基中に含まれる炭素原子の数との合計数が4以上であればよい。
【0021】
また、R1〜R5は互いに結合して環を形成してもよい。形成される環の種類は特に制限されないが、例えば、5〜6員環構造を挙げることができる。
【0022】
1〜R5には、必要に応じて、公知の置換基がさらに含まれていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0023】
一般式(A2)中、R6〜R8は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基を表す。
脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはこれらを組み合わせた基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、1〜40が好ましく、2〜20がより好ましい。
【0024】
一般式(A2)中、R6〜R8の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は6以上である。炭素原子の合計数が該範囲であれば、銀のイオンマイグレーションが抑制され、金属配線間の絶縁信頼性が向上する。なお、該効果がより優れる点で、合計数は8以上が好ましく、10以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されないが、合成がより容易であり、絶縁樹脂への分散性がより優れる点から、合計数は50以下が好ましく、40以下がより好ましい。
なお、上記合計とは、例えば、R6〜R8がすべてアルキル基の場合、R6のアルキル基中に含まれる炭素原子の数と、R7のアルキル基中に含まれる炭素原子の数と、R8のアルキル基中に含まれる炭素原子の数との合計数が6以上であればよい。
なお、R6〜R8には、必要に応じて、公知の置換基がさらに含まれていてもよい。置換基の例としては、上述したR1〜R5に置換される置換基と同義である。
なお、R6〜R8は互いに結合して環を形成してもよい。
【0025】
一般式(A3)中、R9〜R12は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでもよいアリール基、または、これらを組み合わせた基を表す。
アルキル基またはアリール基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、1〜40が好ましく、2〜20がより好ましい。
なお、アルキル基またはアリール基には、ヘテロ原子が含まれていてもよい。含有されるヘテロ原子の種類は特に制限されないが、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子などが挙げられる。なかでも、銀のイオンマイグレーション抑制能が優れる点で、−X1−、−N(Ra)−、−C(=X2)−、−CON(Rb)−、−C(=X3)X4−、−SOn−、−SO2N(Rc)−、ハロゲン原子、またはこれらを組み合わせた基の態様で含まれることが好ましい。
1〜X4は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子からなる群から選択される。なかでも、取り扱いがより簡便である点から、酸素原子、硫黄原子が好ましい。
上記Ra、Rb、Rcは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基から選択される。
nは1〜3の整数を表す。
【0026】
一般式(A3)中、R9〜R12の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は6以上である。炭素原子の合計数が該範囲であれば、銀のイオンマイグレーションが抑制され、金属配線間の絶縁信頼性が向上する。なお、該効果がより優れる点で、合計数は8以上が好ましく、10以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されないが、合成がより容易であり、絶縁樹脂への分散性がより優れる点から、合計数は50以下が好ましく、40以下がより好ましい。
なお、上記合計とは、例えば、R9〜R12がすべてアルキル基の場合、R9のアルキル基中に含まれる炭素原子の数と、R10のアルキル基中に含まれる炭素原子の数と、R11のアルキル基中に含まれる炭素原子の数と、R12のアルキル基中に含まれる炭素原子の数との合計数が6以上であればよい。
なお、R9〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。
【0027】
(好適態様)
上述した一般式(A1)〜(A3)で表される化合物のなかでも、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、一般式(A4)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0028】
【化5】
【0029】
一般式(A4)中、Z、R1、R2、R3の定義は、一般式(A1)中の各基の定義と同義である。
一般式(A4)中、R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、酸素原子を含んでもよい脂肪族炭化水素基、酸素原子を含んでもよい芳香族炭化水素基を表す。なかでも、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、3級炭素原子あるいは4級炭素原子を含むアルキル基であることが好ましい。
脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、1〜40が好ましく、2〜20がより好ましい。特に、R14が炭素原子数1〜5個のアルキル基で、R15が炭素原子数10〜20個のアルキル基であることが好ましい。
【0030】
1、R2、R14およびR15のうち少なくとも一つに含まれる炭素原子の数が1〜40である。炭素原子の数が上記範囲内であれば、絶縁樹脂への溶解性が向上して、保護膜中における化合物の分散性が向上し、結果として銀のイオンマイグレーション抑制能が向上する。なかでも、炭素原子の数は8〜40が好ましく、10〜30がより好ましい。
【0031】
また、R1、R2、R14およびR15の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は4以上である。炭素原子の合計数が該範囲であれば、銀のイオンマイグレーションが抑制され、金属配線間の絶縁信頼性が向上する。なお、該効果がより優れる点で、合計数は8以上が好ましく、10以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されないが、合成がより容易であり、絶縁樹脂への分散性がより優れる点から、合計数は50以下が好ましく、40以下がより好ましい。
【0032】
また、上述した一般式(A1)〜(A3)で表される化合物のなかでも、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、一般式(A5)で表される化合物、または、一般式(A6)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0033】
【化6】
【0034】
一般式(A5)中、R31〜R36は、それぞれ独立に、水素原子、酸素原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、酸素原子を有していてもよい芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基)、またはこれらを組み合わせた基を表す。
37およびR38は、それぞれ独立に、−CH2−R40基、水酸基、または酸素原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表す。イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、酸素原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基は、直鎖状のアルキル基であることが好ましい。R40は、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基を表す。
脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、1〜40が好ましく、2〜20がより好ましい。
また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、または、環状のいずれであってもよい。
【0035】
39は、2価の脂肪族炭化水素基を表す。2価の脂肪族炭化水素基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、炭素数が1〜20が好ましく、1〜10が好ましい。例えば、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソノニリデン基、またはシクロヘキシリデン基などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
一般式(A6)中、R41〜R44は、それぞれ独立に、水素原子、酸素原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、酸素原子を有していてもよい芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基)、またはこれらを組み合わせた基を表す。
脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、1〜40が好ましく、2〜20がより好ましい。
また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、または、環状のいずれであってもよい。
【0037】
Lは、酸素原子を有していてもよい2価若しくは3価の脂肪族炭化水素基、酸素原子を有していてもよい2価若しくは3価の芳香族炭化水素基、−S−、または、これらを組み合わせた基を表す。
脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基に含まれる炭素原子の数は特に制限されないが、脂肪族炭化水素基は1〜40が好ましく、2〜20がより好ましい、また芳香族炭化水素基は6〜40が好ましく、6〜20がより好ましい。
また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、または、環状のいずれであってもよい。
nは、2または3の整数を表す。
【0038】
前記還元性化合物(A)としては、一般式(A1)〜(A3)で表される化合物の中でも一般式(A1)で表される化合物が好ましく、一般式(A1)で表される化合物の中でも一般式(A4)、(A5)または(A6)で表される化合物がより好ましく、一般式(A5)または(A6)で表される化合物が特に好ましい。
【0039】
一般式(A1)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化7】
【0040】
一般式(A4)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0041】
【化8】
【0042】
一般式(A5)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0043】
【化9】
【0044】
一般式(A6)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
一般式(A2)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
一般式(A3)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0050】
【化14】
【0051】
保護膜中における上記絶縁樹脂と上記還元性化合物との質量関係は特に制限されないが、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、還元性化合物(A)総質量Aと(C)透明樹脂の総質量Cとの質量比(A/C)は、0.20以下が好ましく、0.10以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、薄い保護膜でも所定も効果が得られる点で、0.0001以上が好ましく、0.0005以上が好ましく、0.005以上が特に好ましい。
なお、総質量Aは2種以上の還元性化合物(A)が含まれる場合、それらの合計質量を表す。総質量Cは、2種以上の(C)透明樹脂が含まれる場合、それらの合計質量を表す。
【0052】
<化合物(B)>
本発明の保護膜形成用組成物に化合物(B)(以後、SH基含有化合物とも称する)を用いることにより、該SH基含有化合物は主にSH基を介して金属配線と接触し、金属配線の腐食を抑制すると共に、保護膜中に分散して銀のイオンマイグレーションの発生を抑制する役割を果たす。
【0053】
前記化合物(B)は、トリアゾール構造、チアジアゾール構造およびベンズイミダゾール構造からなる群から選ばれる構造と、メルカプト基と、ヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基とを有し、前記炭化水素基中の炭素原子の合計数(なお、複数の前記炭化水素基がある場合、各炭化水素基中の炭素原子の数の合計数)が5以上である。
SH基含有化合物は、トリアゾール構造、チアジアゾール構造およびベンズイミダゾール構造からなる群から選ばれる構造を含む。なかでも、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、トリアゾール構造、チアジアゾール構造が好ましい。
なお、一般的に、メルカプト基は銀と共有結合を生成する反応性に富むことが知られている。上記トリアゾール構造、チアジアゾール構造およびベンズイミダゾール構造などを含まず、SH基を含む化合物Xは、該SH基含有化合物と同様に、SH基を介して銀イオンと塩を形成することができる。しかしながら、該化合物Xと銀イオンとから形成される塩が銀または銀合金を含む金属配線と直接接触する組成物中にあると、配線を溶かすなど金属配線に多大な影響を与える虞がある。一方、上記所定の構造を有するSH基含有化合物の場合、そのような金属配線への影響が抑制されると共に、銀のイオンマイグレーションの抑制効果にも優れる。
【0054】
なお、該構造をより具体的に例示すると、それぞれ以下の式(X)〜(Z)で表すことができる。
【0055】
【化15】
【0056】
SH基含有化合物には、メルカプト基(HS−)が含まれる。メルカプト基は銀と共有結合を生成する反応性に富む。該メルカプト基は、上記トリアゾール構造などの構造に結合する。
SH基含有化合物中におけるメルカプト基の量は特に制限されないが、化合物の絶縁樹脂中での分散性がより良好である点より、化合物の全分子量中に対してメルカプト基の原子量総量が占める割合が50%以下であることが好ましく、特に40%以下が好ましい。
なお、メルカプト基は、一つだけなく、複数含まれていてもよい。
【0057】
SH基含有化合物は、ヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基(以後、単に炭化水素基とも称する)を一つ以上有し、炭化水素基中の炭素原子の合計数(なお、複数の炭化水素基がある場合、各炭化水素基中の炭素原子の数を合計したものを意味する)が5以上である。該炭化水素基が化合物中に含まれることにより、絶縁樹脂との相溶性がより高くなると共に、銀のイオンマイグレーションを抑制する効果もより高まる。
【0058】
炭化水素基は、炭素原子と水素原子を含む基である。該炭化水素基は、通常、上記トリアゾール構造などに結合する。炭化水素基としては、より具体的には、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。
各炭化水素基中の炭素数は特に制限されず、後述する合計炭素数が5以上を示せば特に制限されないが、銀のイオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、4以上が好ましく、6以上がより好ましく、8以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、銀のイオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、炭素数62以下が好ましく、炭素数30以下がより好ましく、24以下がさらに好ましい。
【0059】
脂肪族炭化水素基としては、炭素数4以上が好ましく、炭素数6以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、銀のイオンマイグレーション抑制能がより優れる点で40以下が好ましい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、化合物の絶縁樹脂中における分散性がより優れる点で、直鎖状の脂肪族炭化水素部分の炭素原子数が18以下、または、第3級または第4級の炭素原子を含む分岐鎖状であることが好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6以上が好ましく、2置換以上の芳香族炭化水素基がより好ましい。
【0060】
上記構造に結合する全ての炭化水素基中の炭素原子の合計数は、5以上を示す。炭素原子の合計数が該範囲であれば、銀のイオンマイグレーションが抑制され、金属配線間の絶縁信頼性が向上する。なお、該効果がより優れる点で、合計数は6以上が好ましく、8以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されないが、合成がより容易であり、絶縁樹脂への分散性がより優れる点から、合計数は36以下が好ましく、24以下がより好ましい。
なお、化合物中において、炭化水素基の数が1つの場合は、該炭化水素基中の炭素原子の数が5以上であればよい。
また、化合物中において、複数の炭化水素基が含まれる場合は、各炭化水素基中に含まれる炭素原子の数の合計が5以上であればよい。より具体的には、2つの炭化水素基(炭化水素基A、炭化水素基B)が化合物中に含まれる場合、炭化水素基A中の炭素原子の数と炭化水素基B中の炭素原子の数の合計が5以上であればよい。
【0061】
なお、上記の炭素原子の合計数は、以下の式(A)で表すこともできる。
つまり、該化合物は、式(A)で表される合計炭素数TCが5以上であればよい。
【0062】
【数1】
【0063】
式(A)中、Ciは化合物中に含まれるi番目の炭化水素基中の炭素数を表し、iは1〜mの整数を表す。
【0064】
炭化水素基には、ヘテロ原子が含まれていてもよい。つまり、ヘテロ原子含有炭化水素基であってもよい。含有されるヘテロ原子の種類は特に制限されないが、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子などが挙げられる。なかでも、銀のイオンマイグレーション抑制能が優れる点で、−X1−、−N(Ra)−、−C(=X2)−、−CON(Rb)−、−C(=X3)X4−、−SOn−、−SO2N(Rc)−、ハロゲン原子、またはこれらを組み合わせた基の態様で含まれることが好ましい。
1〜X4は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子からなる群から選択される。なかでも、取り扱いがより簡便である点から、酸素原子、硫黄原子が好ましい。
上記Ra、Rb、Rcは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基から選択される。
nは1〜3の整数を表す。
【0065】
ヘテロ原子が炭化水素基中に含まれる場合、ヘテロ原子は炭化水素基の鎖中に存在するのでも、端部(末端部)に存在するものでもよい。なお、ヘテロ原子が炭化水素基中の端部に存在する場合、そのヘテロ原子を通じて上述したトリアゾール構造などに直接結合する形で、炭化水素基がトリアゾール構造などに結合していてもよい。つまり、炭化水素基中において、ヘテロ原子がトリアゾール構造などとの結合位置に配置されていてもよい。
ヘテロ原子が炭化水素基の結合位置に存在する場合の炭化水素基の具体例としては、例えば、−O−Rp、−S−Rq、−SOn−Rrなどが挙げられる。なかでも、銀のイオンマイグレーション抑制能がより安定的に優れる理由から、−S−Rqが好ましい。
ここで、Rp、Rq、Rrは、それぞれ独立に、−COO−または−CON<を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基である。なかでも、−COO−または−CON<を有していてもよい炭素数5〜20の炭化水素基であることが好ましい。
なお、ヘテロ原子が炭化水素基中に含まれる場合、メルカプト基(−SH)の態様で含まれていてもよい。
【0066】
炭化水素基の一つの好適態様としては、第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基が第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む場合、SH基含有化合物の絶縁樹脂中での分散性がより優れ、および/または、後述する溶媒(例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンなど)への溶解性がより優れる。結果として、銀のイオンマイグレーション抑制能がより均質に発現され、また、銀のイオンマイグレーションを誘発する微結晶や微結晶由来の気泡がより生じにくくなる。
炭化水素基が第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基である場合、第3級炭素原子および/または第4級炭素原子が不斉炭素原子であり、SH基含有化合物がエナンチオマーの混合物であることが好ましい。
また、炭化水素基は第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を複数含む炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基が第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を複数含む場合、SH基含有化合物の分散性がより優れる理由から、第3級炭素原子および/または第4級炭素原子が不斉炭素原子であり、SH基含有化合物がジアステレオマーの混合物であることが好ましい。
第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基の炭素数は、5〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましい。上記範囲であると、SH基含有化合物の分散性がより優れ、その結果、銀のイオンマイグレーション抑制能がより均質に発現される。また、上記範囲であると、SH基含有化合物中のメルカプト基の量の点から、銀のイオンマイグレーション抑制能がより優れる。
第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基の具体例としては、例えば、第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基などが挙げられる。
炭化水素基が第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む態様の具体例としては、例えば、以下の基を含む態様が挙げられる。ここで黒い丸は結合位置を表す。
【0067】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【0068】
炭化水素基の別の好適態様としては、下記式(B−1)〜(B−7)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基が下記式(B−1)〜(B−7)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む場合、上述した第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む場合と同様に、SH基含有化合物の絶縁樹脂中での分散性がより優れ、および/または、後述する溶媒(例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンなど)への溶解性がより優れる。結果として、銀のイオンマイグレーション抑制能がより均質に発現され、また、銀のイオンマイグレーションを誘発する微結晶や微結晶由来の気泡がより生じにくくなる。炭化水素基が下記式(B−1)〜(B−7)からなる群より選択される2種以上の基を含んでいてもよい。
【0069】
【化20】
【0070】
上記式(B−1)〜(B−7)中、Xaは酸素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子からなる群から選択される原子である。なかでも、取り扱いがより簡便である点から、酸素原子、硫黄原子が好ましい。複数あるXaは同一であっても異なっていてもよい。Xbは酸素原子または硫黄原子である。複数あるXbは同一であっても異なっていてもよい。*は結合位置を表す。
*に炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜30の芳香族炭化水素基が結合していてもよい。
上記式(B−1)〜(B−7)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む炭化水素基は、上記式(B−1)〜(B−7)中の複数の*の1つがトリアゾール構造、チアジアゾール構造およびベンズイミダゾール構造からなる群から選ばれる構造に直接結合する炭化水素基であってもよい。
【0071】
炭化水素基が上記式(B−1)または(B−2)で表される基を含む態様の具体例としては、例えば、以下の基を含む態様が挙げられる。ここで黒い丸は結合位置を表す。
【0072】
【化21】
【化22】
【0073】
炭化水素基が上記式(B−3)〜(B−7)で表される基のいずれかを含む態様の具体例としては、例えば、以下の基を含む態様が挙げられる。ここで黒い丸は結合位置を表す。
【0074】
【化23】
【0075】
SH基含有化合物の分子量は特に制限さないが、絶縁樹脂との相溶性がより優れる点から、50〜1000が好ましく、100〜600がより好ましい。
【0076】
(好適態様)
SH基含有化合物の好適態様としては、以下の一般式(B1)〜一般式(B3)で表される化合物が挙げられる。該化合物であれば、イオンマイグレーション抑制能により優れる。特に、本発明の効果がより優れる点で、一般式(B1)または一般式(B2)で表される化合物が好ましく、一般式(B1)で表される化合物がより好ましい。
【化24】
(一般式(B1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は前記炭化水素基を表し、R1およびR2の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。
一般式(B2)中、R3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R3中に含まれる炭素原子の数は5以上である。
一般式(B3)中、R4〜R7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R4〜R7の少なくとも一つは前記炭化水素基を表し、R4〜R7の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。)
【0077】
一般式(B1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2の少なくとも一方はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R1およびR2の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。
1およびR2の好適態様としては、−X1−、−N(Ra)−、−C(=X2)−、−CON(Rb)−、−C(=X3)X4−、−SOn−、−SO2N(Rc)−、またはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはそれらの組み合わせ)が挙げられる。X1〜X4、Ra〜Rc、nの定義は上述の通りである。なかでも、SH基含有化合物のマイグレーション抑制能がより優れる点で、アリール基、または、−X1−、−N(Ra)−、−C(=X2)−、−CON(Rb)−、または−C(=X3)X4−を含んでいてもよい炭化水素基が挙げられ、R1およびR2のうち少なくともどちらか一方が脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
なお、炭化水素基(脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基)の好適態様は、上述の通りであり、ヘテロ原子の種類も上述の通りである。
1およびR2の他の好適態様としては、第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基が挙げられる。第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基の具体例は上述の通りである。
1およびR2の別の好適態様としては、上記式(B−1)〜(B−7)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む炭化水素基が挙げられる。上記基を含む炭化水素基の具体例は上述の通りである。
これらの中でも、R1およびR2は、R1が第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基であり、かつ、R2がアリール基であることがより好ましく、R1が第3級炭素原子を含む炭化水素基であり、かつ、R2がフェニル基であることが特に好ましい。
【0078】
一般式(B1)において、R1およびR2の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。言い換えると、R1中の炭素原子の数と、R2中の炭素原子の数との合計数(合計炭素数)が5以上であればよい。なお、合計数の好適態様は、上述の通りである。
【0079】
一般式(B2)中、R3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R3中に含まれる炭素原子の数は5以上である。
該炭化水素基の定義は上述の通りである。なお、一般式(B2)中において、該炭化水素基の好適態様としては、−X1−、−N(Ra)−、−C(=X2)−、−CON(Rb)−、−C(=X3)X4−、−SOn−、−SO2N(Rc)−、またはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはそれらの組み合わせ)が挙げられ、なかでも、イオンマイグレーション抑制効果がより向上することから、−X1−、−N(Ra)−を有する炭化水素基(特に、脂肪族炭化水素基)が好ましい。さらに、イオンマイグレーション抑制効果がより向上することから、該炭化水素基が−X1−Rqであることがより好ましく、−S−Rqであることがさらに好ましい。
該炭化水素基の他の好適態様としては、第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基が挙げられる。第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基の具体例は上述の通りである。
該炭化水素基の別の好適態様としては、上記式(B−1)〜(B−7)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む炭化水素基が挙げられる。上記基を含む炭化水素基の具体例は上述の通りである。
【0080】
一般式(B3)中、R4〜R7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表し、R4〜R7の少なくとも一つは炭化水素基を表し、R4〜R7の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。
該炭化水素基の定義は上述の通りである。なお、一般式(B3)中における、該炭化水素基の好適態様としては、−X1−、−N(Ra)−、−C(=X2)−、−CON(Rb)−、−C(=X3)X4−、−SOn−、−SO2N(Rc)−、またはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはそれらの組み合わせ)が挙げられ、以下の一般式(B4)で表される基がより好ましい。該基であれば、SH基含有化合物の絶縁樹脂中における分散性がより優れ、イオンマイグレーション抑制効果がより向上する。
*−L1−R8 一般式(B4)
一般式(B4)中、L1は、単結合、−O−、−NR11−、−CO−、−C(R9)(R10)−またはこれらを組み合わせた基を表す。R9〜R11は、それぞれ独立に、水素原子または脂肪族炭化水素基を表す。
8は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基を表す。脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基の好適態様は、上述の通りである。
なお、一般式(B4)中、*は結合位置を表す。
該炭化水素基の他の好適態様としては、第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基が挙げられる。第3級炭素原子および/または第4級炭素原子を含む炭化水素基の具体例は上述の通りである。
該炭化水素基の別の好適態様としては、上記式(B−1)〜(B−7)からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む炭化水素基が挙げられる。上記基を含む炭化水素基の具体例は上述の通りである。
【0081】
一般式(B3)において、R4〜R7の少なくとも一つは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を表す。なかでも、マイグレーション抑制効果がより優れる点で、R4〜R7のうち1〜2個が該炭化水素基であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
また、R4〜R7の各基中に含まれる炭素原子の数の合計は5以上である。言い換えると、R4中の炭素原子の数と、R5中の炭素原子の数と、R6中の炭素原子の数と、R7中の炭素原子の数との合計数(合計炭素数)が5以上であればよい。なお、合計数の好適態様は、上述の通りである。
【0082】
本発明で用いられるSH基含有化合物の製造方法は、特に限定はなく、種々の方法により製造することができる。
上記一般式(B1)で表される化合物は、特公昭46−19039号、特開平9−319022号の明細書に記載の合成法を、一般式(B2)で表される化合物は、米国特許第3212892号の明細書に記載の合成法を、一般式(B3)で表される化合物は、欧州特許第742210号の明細書に記載の合成法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
組成物中における上記絶縁樹脂と上記化合物との質量関係は特に制限されないが、マイグレーション抑制能がより優れる点で、化合物(B)の質量Bと前記(C)透明樹脂の質量Cとの質量比(B/C)は、0.20以下が好ましく、0.10以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、少量の組成物で所定も効果が得られる点で、0.0001以上が好ましく、0.0005以上が好ましく、0.005以上が特に好ましい。
【0084】
<(C)透明樹脂>
本発明の保護膜形成用組成物は、前記(C)透明樹脂を含む。
前記(C)透明樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂が好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、特開2008−146018号公報の段落[0028]〜[0070]、特開2011−95716号公報の段落[0025]、特開2010−237589号公報の段落[0033]〜[0052]に記載のポリマーを用いることができる。これらの中でも、特開2008−146018号公報の段落[0028]〜[0070]に記載の樹脂が、前記還元性化合物(A)や前記化合物(B)との相溶性に優れる観点から好ましく、より好ましい範囲は特開2008−146018号公報に記載の好ましい範囲と同様であり、特開2008−146018号公報の段落[0061]に記載のP−25が特に好ましい。
本発明の保護膜形成用組成物は、前記(C)透明樹脂の重量平均分子量が1万〜10万であることが保護膜としての製膜性および、アルカリ現像液への溶解性の観点から好ましく、12000〜6万が更に好ましく、15000〜4.5万が特に好ましい。なお、重量平均分子量が前記範囲内であると、特開2008−146018号公報の段落[0065]に記載の理由からも好ましい。
【0085】
<(D)重合性化合物>
本発明の保護膜形成用組成物は、前記(D)重合性化合物を含む。
前記(D)重合性化合物としては、特許第4098550号の段落[0023]〜[0024]に記載の重合性化合物や、特開2012−78528号公報に記載の重合性化合物を用いることができる。これらの中でも、特開2012−78528号公報に記載の重合性化合物が、前記還元性化合物(A)や前記化合物(B)との相溶性に優れる観点から好ましく、より好ましい範囲は特開2012−78528号公報に記載の好ましい範囲と同様であり、特開2012−78528号公報の段落番号[0111]に記載の重合性化合物(b2−1)が特に好ましい。
【0086】
<重合開始剤または重合開始系>
本発明の保護膜形成用組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
前記光重合開始剤としては、特開2011−95716号公報の[0031]〜[0042]に記載の光重合開始剤を用いることができる。
【0087】
本発明の保護膜形成用組成物は、光硬化性であっても、熱架橋性(熱硬化性)であっても、光硬化性と熱架橋性(熱硬化性)を兼ね備えていてもよい。
本発明の保護膜形成用組成物は、光硬化性を少なくとも有することが好ましく、すなわち、本発明の保護膜形成用組成物は、前記透明硬化性樹脂層が光硬化性樹脂層であることが好ましい。本発明の保護膜形成用組成物は、光硬化性と熱架橋性(熱硬化性)を兼ね備えていることがより好ましい。
【0088】
さらに、本発明の保護膜形成用組成物には、添加剤を用いてもよい。前記添加剤としては、例えば特許第4502784号公報の段落[0017]、特開2009−237362号公報の段落[0060]〜[0071]に記載の界面活性剤や、特許第4502784号公報の段落[0018]に記載の熱重合防止剤、さらに、特開2000−310706号公報の段落[0058]〜[0071]に記載のその他の添加剤が挙げられる。
【0089】
また、本発明の保護膜形成用組成物の溶剤としては、特開2011−95716号公報の段落[0043]〜[0044]に記載の溶剤を用いることができる。
【0090】
《転写材料》
本発明の転写材料は、仮支持体と、本発明の保護膜形成用組成物を含む層とを有し、前記保護膜形成用組成物を含む層の厚さが1〜10μmであることを特徴とする。
このような構成により、銀を含む導電膜のイオンマイグレーションを防止することができる転写材料を提供することができる。いかなる理論に拘泥するものでもないが、電極パターン(好ましくはITO)と前記透明硬化性樹脂層の屈折率差を小さくすることにより、光反射が低減して電極パターンが見えにくくない、視認性を改善することができる。
以下、本発明の転写材料について説明する。なお、本発明の転写材料は、ネガ型材料であってもポジ型材料であってもよい。本発明の転写材料は、静電容量型入力装置の保護膜用、透明絶縁層または透明保護層用であることが好ましい。
【0091】
<仮支持体>
本発明の転写材料は、仮支持体を含む。前記仮支持体としては、可撓性を有し、加圧下または、加圧および加熱下で著しい変形、収縮もしくは伸びを生じない材料を用いることができる。このような仮支持体の例として、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられ、中でも2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0092】
前記仮支持体の厚みには、特に制限はなく、5〜200μmの範囲が一般的であり、取扱い易さ、汎用性などの点で、特に10〜150μmの範囲が好ましい。
また、前記仮支持体は透明でもよいし、染料化ケイ素、アルミナゾル、クロム塩、ジルコニウム塩などを含有していてもよい。
また、本発明の転写材料における前記仮支持体には、特開2005−221726号公報に記載の方法などにより、導電性を付与することができる。
【0093】
<保護膜形成用組成物を含む層>
本発明の転写材料は、本発明の保護膜形成用組成物を含む層を有し、前記保護膜形成用組成物を含む層の厚さが1〜10μmである。
本発明の転写材料は、前記保護膜形成用組成物を含む層が、透明硬化性樹脂層であることが好ましい。以下、保護膜形成用組成物を含む層のことを、透明硬化性樹脂層とも言う。
【0094】
前記保護膜形成用組成物を含む層の厚さは1〜10μmであり、より好ましい厚さは、用途によって異なる。
本発明の転写材料を用いて後述の絶縁層を形成する場合、前記透明硬化性樹脂層の層厚は、絶縁性の維持の観点から、1〜5μmが好ましく、1〜3μmが更に好ましく、1〜2μmが特に好ましい。
本発明の転写材料を用いて後述の保護膜または透明保護層を形成する場合、前記透明硬化性樹脂層の層厚は、十分な表面保護能を発揮させる観点から、1〜10μmが好ましく、1〜5μmが更に好ましく、1〜3μmが特に好ましい。
【0095】
本発明の転写材料の前記保護膜形成用組成物を含む層に好ましく用いられる材料は、本発明の保護膜形成用組成物に好ましく用いられる材料と同様である。
本発明の転写材料がネガ型材料である場合、前記保護膜形成用組成物を含む層が光硬化性樹脂層であるときの光硬化性樹脂層には、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、重合開始剤または重合開始系を含むことが好ましい。
本発明の転写材料がネガ型材料である場合を中心に説明したが、本発明の転写材料は、ポジ型材料であってもよい。本発明の転写材料がポジ型材料である場合、前記保護膜形成用組成物を含む層が光硬化性樹脂層である場合は光硬化性樹脂層に、例えば特開2005−221726号公報に記載の材料などが用いられるが、これに限られたものではない。
【0096】
<熱可塑性樹脂層>
本発明の転写材料は、前記仮支持体と、前記保護膜形成用組成物を含む層との間に、熱可塑性樹脂層が積層されたことが、ラミネート時の気泡発生を防止できる観点から好ましい。前記熱可塑性樹脂層はアルカリ可溶性であることが好ましい。熱可塑性樹脂層は、下地表面の凹凸(既に形成されている画像などによる凹凸等も含む。)を吸収することができるようにクッション材としての役割を担うものであり、対象面の凹凸に応じて変形しうる性質を有していることが好ましい。
【0097】
熱可塑性樹脂層は、特開平5−72724号公報に記載の有機高分子物質を成分として含む態様が好ましく、ヴィカー(Vicat)法〔具体的には、アメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法〕による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれる少なくとも1種を含む態様が特に好ましい。
【0098】
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニルまたはそのケン化物等とのエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステルまたはそのケン化物との共重合体、ポリ塩化ビニルや塩化ビニルと酢酸ビニルまたはそのケン化物等との塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルまたはそのケン化物等とのスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステルまたはそのケン化物等とのビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等との(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロン等のポリアミド樹脂などの有機高分子が挙げられる。
【0099】
本発明の転写材料は、前記熱可塑性樹脂層の層厚は、3〜30μmが好ましい。熱可塑性樹脂層の層厚が3μm未満の場合には、ラミネート時の追随性が不十分で、下地表面の凹凸を完全に吸収できないことがある。また、層厚が30μmを超える場合には、仮支持体への熱可塑性樹脂層の形成時の乾燥(溶剤除去)に負荷がかかったり、熱可塑性樹脂層の現像に時間を要したりし、プロセス適性を悪化させることがある。前記熱可塑性樹脂層の層厚としては、4〜25μmが更に好ましく、5〜20μmが特に好ましい。
【0100】
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性の有機高分子を含む調製液を塗布等して形成することができ、塗布等の際に用いる調製液は溶媒を用いて調製できる。溶媒には、該層を構成する高分子成分を溶解し得るものであれば特に制限なく、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。
【0101】
<熱可塑性樹脂層の粘度>
本発明の転写材料は、前記熱可塑性樹脂層の110℃で測定した溶融粘度ηcが250Pa・s〜3000Pa・sであることが好ましく、300〜2500Pa・sであることがより好ましく、500〜2000Pa・sであることが特に好ましい。
【0102】
ここで、各層の粘度は、次のようにして測定できる。大気圧および減圧乾燥により、熱可塑性樹脂層あるいは前記透明硬化性樹脂層から溶剤を除去して測定サンプルとし、例えば、測定器として、バイブロン(DD−III型:東洋ボールドウィン(株)製)を使用し、測定開始温度50℃、測定終了温度150℃、昇温速度5℃/分および振動数1Hz/degの条件で測定し、100℃の測定値を用いることができる。
【0103】
<他の層>
本発明の転写材料には、透明硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層との間に中間層を設けたり、あるいは透明硬化性樹脂層の表面に保護フィルムなどを更に設けたりして好適に構成することができる。
【0104】
本発明の転写材料には、複数層を塗布する際および塗布後の保存の際における成分の混合を防止する目的で、中間層を設けることが好ましい。中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜が好ましく、露光時の感度がアップし、露光機の時間負荷を低減し得、生産性が向上する。
【0105】
前記中間層および保護フィルムとしては、特開2006−259138号公報の段落[0083]〜[0087]および[0093]に記載のものを適宜使用することができる。
【0106】
<転写材料の作製方法>
本発明の転写材料は、特開2006−259138号公報の段落[0094]〜[0098]に記載の感光性転写材料の作製方法に準じて作製することができる。
具体的に中間層を有する本発明の転写材料を形成する場合には、仮支持体上に、熱可塑性の有機高分子と共に添加剤を溶解した溶解液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥させて熱可塑性樹脂層を設けた後、この熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤に樹脂や添加剤を加えて調製した調製液(中間層用塗布液)を塗布し、乾燥させて中間層を積層し、この中間層上に更に、中間層を溶解しない溶剤を用いて調製した本発明の保護膜形成用組成物を塗布し、乾燥させて透明硬化性樹脂層を積層することによって、好適に作製することができる。
【0107】
[導電膜積層体]
本発明の導電膜積層体は、透明基板と、該透明基板上に形成された銀を含む導電膜と、本発明の保護膜形成用組成物、あるいは、本発明の転写材料を用いて、該導電膜の上に形成された保護膜と、を備えることを特徴とする。
【0108】
<透明基板>
透明基板は、絶縁性であり、金属配線を支持できるものであれば、その種類は特に制限されない。例えば、有機基板、セラミック基板、ガラス基板などを使用することができる。
また、透明基板は、有機基板、セラミック基板、およびガラス基板からなる群から選ばれる少なくとも2つの基板が積層した構造であってもよい。
【0109】
有機基板の材料としては樹脂が挙げられ、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはそれらを混合した樹脂を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。
なお、有機基板の材料としては、ガラス織布、ガラス不織布、アラミド織布、アラミド不織布、芳香族ポリアミド織布や、これらに上記樹脂を含浸させた材料なども使用できる。
【0110】
本発明の導電膜積層体をタッチパネルに用いる場合、前記透明基板は、ガラス基板等の透明基板で構成されていることが好ましく、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを好ましく用いることができる。
【0111】
<導電膜>
導電膜は、銀を含む。導電膜は、金属配線であることが好ましい。銀は銀合金の形態で含まれていてもよく、導電膜が銀合金を含む場合、銀以外の含有される金属としては、例えば、錫、パラジウム、金、ニッケル、クロムなどが挙げられる。なお、導電膜中に、本発明の効果を損なわない範囲で、バインダーなどの樹脂成分や感光性化合物などが含まれていてもよく、更に必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。
また、導電膜は、銀または銀合金からなる金属ナノワイヤーを含有することが好ましい。なお、金属ナノワイヤーについては、後段で詳述する。
【0112】
金属配線の単位面積当たりに含まれる銀量は、50μg/mm2以下である。銀量を上記範囲にすることにより、金属配線の膜厚および幅を小さくすることが可能となり、高密度集積化の要望に対応することができる。銀量が多すぎると、金属配線間で短絡が生じやすくなる。なかでも、銀量は30μg/mm2以下であることが好ましく、15μg/mm2以下であることがより好ましい。下限に関しては特に制限されないが、金属配線の導電特性がより優れる点で、0.001μg/mm2以上であることが好ましく、0.005μg/mm2以上であることがより好ましい。
なお、金属配線中に含まれる銀量が少ない場合にイオンマイグレーションが起こると、金属配線を形成していた銀が溶出することによって、金属配線の断線が生じやすくなる。しかし、本発明においては、所定の化合物を含む保護膜で金属配線を覆うことにより、銀のイオンマイグレーションを抑制し、金属配線の断線を抑制することができる。
【0113】
銀量の測定方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、金属配線の断面SEM写真を観察して元素分析することにより銀量を測定することができる。また、金属配線を硝酸などの強酸と接触させて、金属配線中の銀を溶解させ、溶解した量から銀量を測定することもできる。また、銀ナノワイヤーや銀ナノ粒子を含む分散液を使用して金属配線を作製する場合は、金属配線を作製する際に使用した分散液の量から、金属配線中における銀量を計算により求めることもできる。
また、金属配線の単位面積当たりとは、金属配線の絶縁基板との接触部分の単位面積当たりを意味する。つまり、金属配線と絶縁基板との接触部分の面積のみを基準に銀量の計算を行う。言い換えると、金属配線と接触していない絶縁基板表面(例えば、金属配線間に位置する、金属配線と接触していない絶縁基板表面)の面積は、上記金属配線の単位面積当たりの計算には考慮にいれない。従って、金属配線の単位面積当たりに含まれる銀量とは、金属配線と絶縁基板との接触部分における単位面積あたり(mm2)に含まれる銀量を意味する。
【0114】
金属配線の幅は特に制限されないが、配線基板の高集積化部および引き出し配線部(リード配線部)における電気信頼性を確保する点から、0.1〜10000μmが好ましく、0.1〜300μmがより好ましく、0.1〜100μmがさらに好ましく、0.2〜50μmが特に好ましい。
金属配線間の間隔は特に制限されないが、配線基板の高集積化の点から、0.1〜1000μmが好ましく、0.1〜300μmがより好ましく、0.1〜100μmがさらに好ましく、0.2〜50μmが特に好ましい。
また、金属配線の形状は特に制限されず、任意の形状であってもよい。例えば、直線状、曲線状、矩形状、円状などが挙げられる。また、複数の金属配線が所望のパターン(例えば、ストライプ状)に配置されていてもよい。
【0115】
金属配線の厚みは特に制限されないが、配線基板の高集積化の点から、0.001〜1.0μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましく、0.01〜0.1μmがさらに好ましい。
【0116】
<保護膜>
前記保護膜は、本発明の保護膜形成用組成物、あるいは、本発明の転写材料を用いて、該導電膜の上に形成されたものである。前記保護膜を転写により形成する方法については、後述の本発明のタッチパネルの説明中において、前記保護膜を、本発明の転写材料を用いて形成する方法として説明する。
前記保護膜は、金属配線付き絶縁基板の金属配線側の表面に配置され、金属配線表面を覆い、金属配線間の銀のイオンマイグレーションを抑制するための層である。
なお、前記保護膜中には、銀イオンまたは金属銀が実質的に含まれていないことが好ましい。前記保護膜に過剰の銀イオンまたは金属銀が含まれていると、銀イオンマイグレーション抑制効果が低下する場合がある。
なお、銀イオンまたは金属銀が実質的に含まれないとは、前記保護膜中における銀イオンまたは金属銀の含有量が、1μmol/l以下であることを指し、0.1μmol/l以下であることがより好ましく、最も好ましくは0mol/lである。
【0117】
前記保護膜の厚さは特に制限されないが、1〜10μmであることが好ましく、保護膜のイオンマイグレーション抑制能がより優れる点でより好ましい厚さは、前記転写材料の前記保護膜形成用組成物を含む層のより好ましい厚さと同様である。
【0118】
《タッチパネル》
本発明のタッチパネルは、本発明の導電膜積層体を含むことを特徴とする。
本発明のタッチパネルは、前面板として用いられる透明基板と、前記保護膜に相当する絶縁層および透明保護層のうち少なくとも一方と、前記導電膜に相当する電極パターンを有する静電容量型入力装置(タッチパネル)であることが好ましい。
【0119】
本発明の静電容量型入力装置の構成について説明する。図1Aは、本発明の静電容量型入力装置の構成を示す断面概略図である。図1Aにおいて静電容量型入力装置10は、前面板1と、マスク層2と、第一の電極パターン3と、第二の電極パターン4と、透明絶縁層5と、導電性要素6と、保護膜7と、から構成されている。
【0120】
本発明の静電容量型入力装置は、前面板と、前記前面板の非接触側に前記前面板の非接触側に少なくとも下記(1)〜(5)の要素を有し、前記(5)の要素を本発明の転写材料を用いて形成することが好ましい。
(1)複数のパッド部分が接続部分を介して第一の方向に延在して形成された複数の第一の電極パターン
(2)前記第一の電極パターンと電気的に絶縁され、前記第一の方向に交差する方向に延在して形成された複数のパッド部分からなる複数の第二の電極パターン
(3)前記第一の電極パターンと前記第二の電極パターンとを電気的に絶縁する絶縁層
(4)前記第一の電極パターンおよび前記第二の電極パターンの少なくとも一方に電気的に接続され、前記第一の電極パターンおよび前記第二の電極パターンとは別の導電性要素
(5)前記(1)〜(4)の要素の全てまたは一部を覆うように設置された保護膜
【0121】
図1Bは、本発明の静電容量型入力装置の構成の他の一例を示す断面概略図である。図1Bにおいて静電容量型入力装置10は、前面板1と、マスク層2と、第一の電極パターン3と、保護膜7と、第二の電極パターン4と、保護膜7と、から構成されている。
なお、第一の電極パターン3(銀を含む導電膜)と、第二の電極パターン4(銀を含む導電膜)は、図示しない電極端子を介して図示しない外部検地回路と電気接続している。第一の電極パターン3(銀を含む導電膜)と、第二の電極パターン4(銀を含む導電膜)は、それぞれ等間隔にに配列した線状パターンである。第一の電極パターン3(銀を含む導電膜)と、第二の電極パターン4(銀を含む導電膜)は、それぞれのパターンが互いに略直交するように配置される。前面板1を指等でタッチすると、指等と第一の電極パターン3(銀を含む導電膜)または第二の電極パターン4(銀を含む導電膜)との間の静電容量の値に変化が生じる。この静電容量値の変化を外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。なお、図1Bにおいては線状の第一の電極パターン3(銀を含む導電膜)および第二の電極パターン4(銀を含む導電膜)のパターンを示したが、第一の電極パターン3(銀を含む導電膜)および第二の電極パターン4の形状および配置等は該態様には限定されず、公知の態様をとりうる。
【0122】
図1Cは、本発明の静電容量型入力装置の構成の他の一例を示す断面概略図である。図1Cにおいて静電容量型入力装置10は、前面板1と、マスク層2と、第一の電極パターン3と、透明保護層(以下、オーバーコート層とも言う)7’と、保護膜7と、第二の電極パターン4と、保護膜7と、から構成されている。このように、保護膜7が、第一の電極パターン(銀を含む導電膜)3と隣接しておらず、透明保護層(オーバーコート層)7’を介している積層されている場合であっても、本発明の効果を得ることができる。
なお、図1Aの構成においても同様に、保護膜7が、第一の電極パターン(銀を含む導電膜)3と隣接しておらず、透明保護層(オーバーコート層)7’を介している積層されている態様としてもよい(不図示)。
【0123】
(前面板)
前面板1は、ガラス基板等の透光性基板で構成されており、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを用いることができる。また、図1A図1Cにおいて、前面層1の各要素が設けられている側を非接触面と称する。本発明の静電容量型入力装置10においては、前面板1の接触面(非接触面の反対の面)に指などを接触などさせて入力が行われる。以下、前面板を、「基材」と称する場合がある。
【0124】
また、後の転写工程におけるラミネートによる前記透明硬化性樹脂層や前記感光性樹脂層の密着性を高めるために、予め基材(前面板)の非接触面に表面処理を施すことができる。前記表面処理としては、シラン化合物を用いた表面処理(シランカップリング処理)を実施することが好ましい。シランカップリング剤としては、感光性樹脂と相互作用する官能基を有するものが好ましい。例えばシランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄する。この後、加熱により反応させる。加熱槽を用いてもよく、ラミネータの基板予備加熱でも反応を促進できる。
【0125】
(保護膜、透明絶縁層、透明保護層)
図1Aにおいて、第一の電極パターン3と第二の電極パターン4は、透明絶縁層5によって電気的に絶縁されている。
また、図1Aおよび図1Bにおいては、各構成要素の全てを覆うように保護膜7が設置されている。保護膜7は、各構成要素の一部のみを覆うように構成されていてもよい。
また、図1Cにおいては、各構成要素の全てを覆うように透明保護層7’が設置され、該透明保護層7’の上に保護膜7が設置されている。
保護膜7と透明絶縁層5と透明保護層7’とは、同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよいが、同一材料であることが、電極パターンの視認性を改善できる観点や、透明絶縁層5と透明保護層7との間の界面における反射を抑制できる観点から好ましい。
特に静電容量型入力装置が透明絶縁層5と保護膜7をともに有する図1Aの構成の場合、保護膜7が第二の電極パターン4よりも前面板1側(上側)となり、透明絶縁層5が第二の電極パターン4よりも裏側(下側)となるが、電極パターンの上下の部材である透明絶縁層5と保護膜7がともに本発明の転写材料における前記透明硬化性樹脂層によって形成されることが、電極パターン視認性を改善する観点からより好ましい。
保護膜7と透明絶縁層5と透明保護層7’とを構成する材料は、本発明の転写材料における前記透明硬化性樹脂層に用いられる材料であることが好ましく、表面硬度、耐熱性が高いものが好ましい。
【0126】
本発明の静電容量型入力装置では、保護膜7と透明絶縁層5と透明保護層7’は、本発明の転写材料を用いて透明硬化性樹脂層を前面板1に転写することで形成することが好ましい。
例えば、透明絶縁層5を形成する場合には、前記透明硬化性樹脂層として絶縁性の透明硬化性樹脂層を有する本発明の転写材料を用いて、第一の電極パターンが形成された前記前面板1の表面に前記透明硬化性樹脂層を転写することで形成することができる。保護膜7や透明保護層7’を形成する場合には、透明の透明硬化性樹脂層を有する本発明の転写材料を用いて、各要素が形成された前記前面板1の表面に透明硬化性樹脂層を転写することで形成することができる。
前記保護膜7と透明絶縁層5と透明保護層7’を、本発明の転写材料を用いて形成すると、開口部を有する基板(前面板)でも開口部分からレジスト成分のモレがなく、開口部分近傍でも十分に電極パターン視認性を改善することができる。
【0127】
前記保護膜と透明絶縁層と透明保護層を、本発明の転写材料を用いて形成する方法について説明する。一般に転写フィルムを用いる場合、転写フィルムの前記透明硬化性樹脂層が光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層であれば通常のフォトリソグラフィー方式によって前記透明絶縁層および透明保護層を形成することができる。また、転写フィルムの前記透明硬化性樹脂層が光硬化性樹脂を含んでいない場合にはハーフカットによる転写方法によって、前記透明絶縁層および透明保護層を形成することができる。その中でも、本発明の静電容量型入力装置の製造方法では、フォトリソグラフィー方式が好ましい。
【0128】
(1)フォトリソグラフィー
フォトリソグラフィー方式を用いて前記保護膜、透明絶縁層および透明保護層を形成する場合について、パターニング方法を説明する。
本発明の転写材料は、基材(前面板)にラミネートされた後、必要なパターン様に露光され、ネガ型材料の場合は非露光部分、ポジ型材料の場合は露光部分を現像処理して除去することでパターンを得ることができる。この際、現像は熱可塑性樹脂層と、光硬化性樹脂層を別々の液で現像除去してもよいし、同一の液で除去してもよい。必要に応じて、ブラシや高圧ジェットなどの公知の現像設備を組み合わせてもよい。現像の後、必要に応じて、ポスト露光、ポストベークを行ってもよい。
【0129】
前記透明硬化性樹脂層が光硬化性樹脂層を有する場合に前記透明硬化性樹脂層パターンを形成する方法は、本発明の転写材料から前記保護フィルムを除去する保護フィルム除去工程と、前記保護フィルムが除去された本発明の転写材料の前記光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を基材上に転写する転写工程と、基材上に転写された前記光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を露光する露光工程と、露光された光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を現像してパターン画像を得る現像工程と、を有する方法が挙げられる。この場合、さらに前記転写工程後に、転写された光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層をポスト露光する工程を有することが好ましい。
【0130】
−転写工程−
前記転写工程は、前記保護フィルムが除去された本発明の転写材料の前記光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を基材上に転写する工程である。
この際、本発明の転写材料の光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を基材にラミネート後、仮支持体を除去することによって行う方法が好ましい。
光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層の基材表面への転写(貼り合わせ)は、光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を基材表面に重ね、加圧、加熱することに行われる。貼り合わせには、ラミネータ、真空ラミネータ、および、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネータを使用することができる。
【0131】
−露光工程、現像工程、およびその他の工程−
前記露光工程、現像工程、およびその他の工程の例としては、特開2006−23696号公報の段落番号[0035]〜[0051]に記載の方法を本発明においても好適に用いることができる。
【0132】
前記露光工程は、基材上に転写された前記光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を露光する工程である。
具体的には、前記基材上に形成された光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層の上方に所定のマスクを配置し、その後該マスク、熱可塑性樹脂層、および中間層を介してマスク上方から露光する方法が挙げられる。
ここで、前記露光の光源としては、光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。露光量としては、通常5〜200mJ/cm2程度であり、好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
【0133】
前記現像工程は、露光された光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層を現像する工程である。
前記現像は、現像液を用いて行うことができる。前記現像液としては、特に制約はなく、特開平5−72724号公報に記載のものなど、公知の現像液を使用することができる。尚、現像液は光硬化性樹脂層が溶解型の現像挙動をするものが好ましく、例えば、pKa=7〜13の化合物を0.05〜5mol/Lの濃度で含むものが好ましいが、更に水と混和性を有する有機溶剤を少量添加してもよい。水と混和性を有する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。該有機溶剤の濃度は0.1質量%〜30質量%が好ましい。 また、前記現像液には、更に公知の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の濃度は0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0134】
前記現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディプ現像等のいずれでもよい。ここで、前記シャワー現像について説明すると、露光後の光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、未硬化部分を除去することができる。尚、熱可塑性樹脂層や中間層を設けた場合には、現像の前に光硬化性樹脂を含む透明硬化性樹脂層の溶解性が低いアルカリ性の液をシャワーなどにより吹き付け、熱可塑性樹脂層、中間層などを除去しておくことが好ましい。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0135】
静電容量型入力装置の製造方法は、ポスト露光工程、ポストベーク工程等、その他の工程を有していてもよい。
【0136】
尚、パターニング露光は、仮支持体を剥離してから行ってもよいし、仮支持体を剥離する前に露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。マスクを介した露光でも良いし、レーザー等を用いたデジタル露光でも良い。
【0137】
(2)ハーフカットによる転写
ハーフカットによる転写方法では、まず、透明硬化性樹脂層の画像部と非画像部の境界に剃刀等でプレカット後、非画像部の保護フィルム、透明硬化性樹脂層及び中間層をテープで除去し、さらに画像部の保護フィルムを同様に除去して、基板に透明硬化性樹脂層パターンを転写することが好ましい。
引続き、現像により熱可塑性樹脂層と中間層を除去することで透明硬化性樹脂層パターンを形成することが可能である。
必要に応じて、ブラシや高圧ジェットなどの公知の現像設備を組み合わせてもよい。現像の後、必要に応じて、ポスト露光、ポストベークを行ってもよく、ポストベークを行うことが好ましい。
【0138】
ハーフカットによる転写方法は、前記本発明の転写フィルムの一部に前記透明硬化性樹脂層を貫通し、かつ前記仮支持体を貫通しない深さの切り込みを入れる工程と、前記切り込みによって囲まれた領域のうち少なくとも一部の領域の前記透明硬化性樹脂層を除去する工程と、前記一部の領域の前記透明硬化性樹脂層を除去した後の前記転写フィルムを用いて前記透明硬化性樹脂層を形成する工程と、を含むことが好ましい。
【0139】
前記転写フィルムの一部に前記透明硬化性樹脂層を貫通し、かつ前記仮支持体を貫通しない深さの切り込みを入れる工程を、透明硬化性樹脂層のうち転写する画像部を予めプレカットする工程とも言う。なお、このような深さの切り込みを入れることをハーフカットともいう。
【0140】
前記切り込みによって囲まれた領域のうち少なくとも一部の領域の前記透明硬化性樹脂層を除去する工程を、転写しない非画像部の透明硬化性樹脂層を除去する工程とも言う。
さらに本発明の転写フィルムが、保護フィルムや中間層や熱可塑性樹脂層を含む場合、前記切り込みによって囲まれた領域のうち少なくとも一部の領域の前記透明硬化性樹脂層を除去する工程は、非画像部の保護フィルム及び透明硬化性樹脂層、並びに画像部の保護フィルムを除去する工程であることが好ましい。
【0141】
前記一部の領域の前記透明硬化性樹脂層を除去した後の前記転写フィルムを用いて前記透明硬化性樹脂層を形成する工程を、前記画像部の透明硬化性樹脂層を基材上に転写する転写工程とも言う。
さらに本発明の転写フィルムが、保護フィルムや中間層や熱可塑性樹脂層を含む場合、前記一部の領域の前記透明硬化性樹脂層を除去した後の前記転写フィルムを用いて前記透明硬化性樹脂層を形成する工程は、前記保護フィルムが除去された前記転写フィルムの前記画像部の透明硬化性樹脂層を基材上に転写する転写工程であることが好ましい。
この場合、さらに前記一部の領域の前記透明硬化性樹脂層を除去した後の前記転写フィルムを用いて前記透明硬化性樹脂層を形成する工程は、基材上に転写された仮支持体を剥離する工程を含むことが好ましい。
この場合、さらに前記一部の領域の前記透明硬化性樹脂層を除去した後の前記転写フィルムを用いて前記透明硬化性樹脂層を形成する工程は、熱可塑性樹脂層と中間層を除去する工程を含むことが好ましい。
【0142】
本発明の製造方法は、本発明の転写フィルムの透明硬化性樹脂層のうち転写する画像部を予めプレカットする工程と、非画像部の保護フィルム及び透明硬化性樹脂層、並びに画像部の保護フィルムを除去する工程と、前記保護フィルムが除去された前記転写フィルムの前記画像部の透明硬化性樹脂層を基材上に転写する転写工程と、基材上に転写された仮支持体を剥離する工程と、熱可塑性樹脂層と中間層を除去する工程とを有する方法がより好ましい。
【0143】
−プレカット工程−
通常のフォトリソグラフィー方式で画像形成しない場合、転写以前に透明硬化性樹脂層に画像部を形成する必要がある。前記転写フィルムの一部に前記透明硬化性樹脂層を貫通し、かつ前記仮支持体を貫通しない深さの切り込みを入れる工程(プレカット工程)について、以下説明する。
前記切り込みを入れる方法としては特に制限は無く、刃、レーザーなど任意の方法で切り込みを入れることができ、刃で切り込みを入れることが好ましい。また、刃の構造は特に限定されることはない。
前記転写フィルムが、例えば、仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、透明硬化性樹脂層、保護フィルムの順に積層されて構成されるとき、例えば、刃もしくはレーザーを用いて、保護フィルムの上から、保護フィルム、透明硬化性樹脂層、中間層を貫き、熱可塑性樹脂層の一部にまで至る切り込みを入れることで、転写する画像部と転写しない非画像部の間を分離することができる。
【0144】
−非画像部の透明硬化性樹脂層を除去する工程−
プレカットした透明硬化性樹脂層の画像部を選択的に基板に転写するには非画像部を転写させない工夫が必要となる。一つの方法は転写前に非画像部の透明硬化性樹脂層を除去する方法であり、保護フィルム除去した後、非画像部の透明硬化性樹脂層と中間層を同時に剥離する方法である。もう一つは非画像部上の保護フィルムを剥がし、引き続いて透明硬化性樹脂層と中間層を同時に剥離し、さらに画像部上の保護フィルムを剥がす方法である。透明硬化性樹脂層の画像部を転写直前まで保護する観点から、後者の方が好ましい。
【0145】
−その他の工程−
保護フィルムを除去する工程と、前記保護フィルムが除去された前記転写フィルムの前記画像部の透明硬化性樹脂層を基材上に転写する転写工程と、基材上に転写された仮支持体を剥離する工程と、熱可塑性樹脂層と中間層を除去する工程については、フォトリソグラフィー方式と同様である。
【0146】
(マスク層)
本発明のタッチパネルは、さらにマスク層を有することも好ましい。
図1Aの前面板1の非接触面上にはマスク層2が設けられている。マスク層2は、タッチパネル前面板の非接触側に形成された表示領域周囲の額縁状のパターンであり、引回し配線等が見えないようにするために形成される。
本発明の静電容量型入力装置10には、図2に示すように、前面板1の一部の領域(図2においては入力面以外の領域)を覆うようにマスク層2が設けられている。更に、前面板1には、図2に示すように一部に開口部8を設けることができる。開口部8には、押圧によるメカニカルなスイッチを設置することができる。
【0147】
マスク層2等の前記(3)および(5)の要素以外の層を形成する方法については特に制限はないが、仮支持体と光硬化性樹脂層とをこの順で有する感光性フィルムを用いて形成することが好ましく、仮支持体と熱可塑性樹脂層と光硬化性樹脂層とをこの順で有する感光性フィルムを用いて形成することがより好ましい。なお、ここでいう前記感光性フィルムとして、本発明の転写材料を用いてもよく、本発明の転写材料以外の感光性フィルムを用いてもよい。
【0148】
前記マスク層2を、前記感光性フィルムを用いて光硬化性樹脂層を前面板1に転写することで形成する工程の好ましい範囲は、前記透明絶縁層および透明保護層を形成する方法におけるフォトリソグラフィー方式における各工程の好ましい範囲と同様である。
【0149】
ここで、前記マスク層2や、後述の第一の電極パターン3、第二の電極パターン4および導電性要素6などの永久材を前記フォトリソグラフィー方式によって形成する場合に用いられる前記感光性フィルムの好ましい態様としては、本発明の転写材料における前記透明硬化性樹脂層の代わりに任意の機能を有する光硬化性樹脂層を設けたものを挙げることができる。また、前記感光性フィルムにおける、光硬化性樹脂層以外の層の好ましい範囲は、本発明の転写材料における前記透明硬化性樹脂層以外の層の好ましい範囲と同様である。
前記マスク層2の形成に前記感光性フィルムを用いる場合には、光硬化性樹脂層に着色剤を含有させることが好ましい。
【0150】
マスク層2を前記感光性フィルムを用いて形成すると、開口部を有する基板(前面板)でも開口部分からレジスト成分のモレがなく、前面板の境界ギリギリまで遮光パターンを形成する必要のあるマスク層でのガラス端からのレジスト成分のはみ出しがないため基板裏側を汚染することなく、簡略な工程で、薄層/軽量化のメリットがあるタッチパネルの製造を可能となる。
さらに、遮光性が必要なマスク層2の形成に、光硬化性樹脂層と仮支持体との間に熱可塑性樹脂層を有する特定の層構成を有する前記感光性フィルムを用いることで感光性フィルムラミネート時の気泡発生を防止し、光モレのない高品位なマスク層2を形成することができる。
【0151】
また、前記感光性フィルムを用いてマスク層を形成する場合には、光硬化性樹脂層に着色剤を用いることができる。前記着色剤としては、公知の着色剤(有機顔料、無機顔料、染料等)を好適に用いることができる。
前記マスク層は、黒色のマスク層または白色のマスク層(加飾層と言われることもある)であることが好ましい。例えば黒色のマスク層2を形成する場合には、前記光硬化性樹脂層として黒色光硬化性樹脂層を有する感光性フィルムを用いて、前記前面板1の表面に前記黒色光硬化性樹脂層を転写することで形成することが好ましい。尚、黒色着色剤の他に、赤、青、緑色等の顔料の混合物等を用いることができる。
【0152】
前記光硬化性樹脂層を黒色のマスク層として用いる場合には、光学濃度の観点から、黒色着色剤を含むことが好ましい。黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンカーボン、酸化鉄、酸化チタン、黒鉛などが挙げられ、中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0153】
前記光硬化性樹脂層を白色のマスク層として用いる場合には、特開2005−7765号公報の段落[0015]や[0114]に記載のホワイト顔料を用いることができる。
前記光硬化性樹脂層をその他の色のマスク層として用いるためには、特許第4546276号公報の段落[0183]〜[0185]などに記載の顔料、あるいは染料を混合して用いてもよい。具体的には、特開2005−17716号公報の段落番号[0038]〜[0054]に記載の顔料および染料、特開2004−361447号公報の段落番号[0068]〜[0072]に記載の顔料、特開2005−17521号公報の段落番号[0080]〜[0088]に記載の着色剤等を好適に用いることができる。
【0154】
前記着色剤(好ましくは顔料、より好ましくはカーボンブラック)は、分散液として使用することが望ましい。この分散液は、前記着色剤と顔料分散剤とを予め混合して得られる組成物を、後述する有機溶媒(またはビヒクル)に添加して分散させることによって調製することができる。前記ビビクルとは、塗料が液体状態にある時に顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を形成する成分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。
前記顔料を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、朝倉邦造著、「顔料の事典」、第一版、朝倉書店、2000年、438項に記載されているニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の公知の分散機が挙げられる。更に該文献310頁記載の機械的摩砕により、摩擦力を利用し微粉砕してもよい。
【0155】
前記着色剤は、分散安定性の観点から、数平均粒径0.001μm〜0.1μmのものが好ましく、更に0.01μm〜0.08μmのものが好ましい。尚、ここで言う「粒径」とは粒子の電子顕微鏡写真画像を同面積の円とした時の直径を言い、また「数平均粒径」とは多数の粒子について前記の粒径を求め、この100個平均値をいう。
【0156】
着色剤を含む光硬化性樹脂層の層厚は、他層との厚み差の観点から、0.5〜10μmが好ましく、0.8〜5μmが更に好ましく、1〜3μmが特に好ましい。前記着色剤を含む光硬化性樹脂層の固形分中の着色剤の含有率としては、特に制限はないが、十分に現像時間を短縮する観点から、15〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましく、25〜50質量%であることが更に好ましい。
本明細書でいう全固形分とは着色剤を含む光硬化性樹脂層から溶剤等を除いた不揮発成分の総質量を意味する。
【0157】
(第一および第二の電極パターン、導電性要素)
前面板1の接触面には、複数のパッド部分が接続部分を介して第一の方向に延在して形成された複数の第一の電極パターン3と、第一の電極パターン3と電気的に絶縁され、第一の方向に交差する方向に延在して形成された複数のパッド部分からなる複数の第二の電極パターン4と、第一の電極パターン3と第二の電極パターン4を電気的に絶縁する絶縁層5とが形成されている。前記第一の電極パターン3と、第二の電極パターン4と、後述する導電性要素6は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透光性の導電性金属酸化膜や銀を含む導電膜で作製することができるが、本発明のタッチパネルでは、第一および第二の電極パターン、導電性要素のうち、少なくとも1つが前記銀を含む導電膜であり、前記第一の電極パターンが少なくとも前記銀を含む導電膜であることが好ましく、前記第一および第二の電極パターンがともに前記銀を含む導電膜であることが好ましい。
一方、銀を含む導電膜以外の金属膜としては、透光性の金属膜が好ましく、その場合は第一および第二の電極パターンや導電性要素が透明であることが好ましい。なお、第一および第二の電極パターンのうち、一方のみを銀を含む導電膜とし、他方を銀を含む導電膜以外の金属膜としてもよい。このような金属膜としては、ITO膜;Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等の金属膜;SiO2等の金属酸化膜などが挙げられる。この際、各要素の、膜厚は10〜200nmとすることができる。また、焼成により、アモルファスのITO膜を多結晶のITO膜とするため、電気的抵抗を低減することもできる。
また、前記第一の電極パターン3と、第二の電極パターン4と、後述する導電性要素6とは、前記導電性繊維を用いた光硬化性樹脂層を有する感光性フィルムを用いて製造することもできる。その他、ITO等によって第一の導電性パターン等を形成する場合には、特許第4506785号公報の段落[0014]〜[0016]等を参考にすることができる。
【0158】
また、第一の電極パターン3および第二の電極パターン4の少なくとも一方は、前面板1の非接触面およびマスク層2の前面板1とは逆側の面の両方の領域にまたがって設置することができる。図1Aにおいては、第二の電極パターンが、前面板1の非接触面およびマスク層2の前面板1とは逆側の面の両方の領域にまたがって設置されている図が示されている。このように、一定の厚みが必要なマスク層と前面板裏面とにまたがって感光性フィルムをラミネートする場合でも、前記感光性フィルムを用いることで真空ラミネータなどの高価な設備を用いなくても、簡単な工程でマスク部分境界に泡の発生がないラミネートが可能になる。
【0159】
図3を用いて第一の電極パターン3および第二の電極パターン4について説明する。図3は、本発明の静電容量型入力装置における第一の電極パターンおよび第二の電極パターンの一例を示す説明図である。図3に示すように、第一の電極パターン3は、パッド部分3aが接続部分3bを介して第一の方向に延在して形成されている。また、第二の電極パターン4は、第一の電極パターン3と絶縁層5によって電気的に絶縁されており、第一の方向に交差する方向(図3における第二の方向)に延在して形成された複数のパッド部分によって構成されている。ここで、第一の電極パターン3を形成する場合、前記パッド部分3aと接続部分3bとを一体として作製してもよいし、接続部分3bのみを作製して、パッド部分3aと第二の電極パターン4とを一体として作製(パターニング)してもよい。パッド部分3aと第二の電極パターン4とを一体として作製(パターニング)する場合、図3に示すように接続部分3bの一部とパッド部分3aの一部とが連結され、且つ、絶縁層5によって第一の電極パターン3と第二の電極パターン4とが電気的に絶縁されるように各層が形成される。
【0160】
図1Aにおいて、マスク層2の前面板1とは逆側の面側には導電性要素6が設置されている。導電性要素6は、第一の電極パターン3および第二の電極パターン4の少なくとも一方に電気的に接続され、且つ、第一の電極パターン3および第二の電極パターン4とは別の要素である。図1Aにおいては、導電性要素6が第二の電極パターン4に接続されている図が示されている。
【0161】
前記第一の透明電極パターン3、第二の透明電極パターン4および導電性要素6は、(1)導電性光硬化性樹脂層を有する前記感光性フィルムを用いて形成するか、(2)エッチング処理により形成することができる。
【0162】
(1)導電性光硬化性樹脂層を有する前記感光性フィルムを用いる方法
導電性光硬化性樹脂層を有する前記感光性フィルムを用いて、前記第一の透明電極パターン3、第二の透明電極パターン4および別の導電性要素6を形成する場合、前記前面板1の表面に前記導電性光硬化性樹脂層を転写することで形成することができる。
前記第一の透明電極パターン3等を、前記導電性光硬化性樹脂層を有する感光性フィルムを用いて形成すると、開口部を有する基板(前面板)でも開口部分からレジスト成分のモレがなく、基板裏側を汚染することなく、簡略な工程で、薄層/軽量化のメリットがあるタッチパネルの製造を可能となる。
【0163】
前記第一の透明電極パターン3、第二の透明電極パターン4および別の導電性要素6を、前記感光性フィルムを用いて光硬化性樹脂層を前面板1に転写することで形成する工程の好ましい範囲は、前記透明絶縁層および透明保護層を形成する方法におけるフォトリソグラフィー方式における各工程の好ましい範囲と同様である。
【0164】
さらに、第一の透明電極パターン3等の形成に、導電性光硬化性樹脂層と仮支持体との間に熱可塑性樹脂層を有する特定の層構成を有する前記感光性フィルムを用いることで前記感光性フィルムラミネート時の気泡発生を防止し、導電性に優れ抵抗の少ないに第一の透明電極パターン3、第二の透明電極パターン4および別の導電性要素6を形成することができる。
【0165】
前記導電性光硬化性樹脂層を積層した感光性フィルムを用いて、前記第一および第二の透明電極パターン、あるいは別の導電性要素の形成する場合には、以下の導電性繊維などを光硬化性樹脂層に用いることができる。
【0166】
導電性繊維の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中実構造および中空構造のいずれかが好ましい。
ここで、中実構造の繊維を「ワイヤー」と称することがあり、中空構造の繊維を「チューブ」と称することがある。また、平均短軸長さが5nm〜1,000nmであって、平均長軸長さが1μm〜100μmの導電性繊維を「ナノワイヤー」と称することがある。
また、平均短軸長さが1nm〜1,000nm、平均長軸長さが0.1μm〜1,000μmであって、中空構造を持つ導電性繊維を「ナノチューブ」と称することがある。
前記導電性繊維の材料としては、導電性を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属およびカーボンの少なくともいずれかが好ましく、これらの中でも、前記導電性繊維は、金属ナノワイヤー、金属ナノチューブ、およびカーボンナノチューブの少なくともいずれかが特に好ましい。
【0167】
−−金属ナノワイヤー−−
−金属−
前記金属ナノワイヤーの材料としては、特に制限はなく、例えば、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、および第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、および第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0168】
前記金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、これらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れる点で、銀を主に含有するもの、または銀と銀以外の金属との合金を含有するものが好ましい。
前記銀を主に含有するとは、金属ナノワイヤー中に銀を50質量%以上、好ましくは90質量%以上含有することを意味する。
前記銀との合金で使用する金属としては、白金、オスミウム、パラジウムおよびイリジウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0169】
−形状−
前記金属ナノワイヤーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状、断面の多角形の角が丸まっている断面形状が好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
前記金属ナノワイヤーの断面の角とは、断面の各辺を延長し、隣り合う辺から降ろされた垂線と交わる点の周辺部を意味する。また、「断面の各辺」とはこれらの隣り合う角と角を結んだ直線とする。この場合、前記「断面の各辺」の合計長さに対する前記「断面の外周長さ」との割合を鋭利度とした。鋭利度は、例えば図9に示したような金属ナノワイヤー断面では、実線で示した断面の外周長さと点線で示した五角形の外周長さとの割合で表すことができる。この鋭利度が75%以下の断面形状を角の丸い断面形状と定義する。前記鋭利度は60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。前記鋭利度が75%を超えると、該角に電子が局在し、プラズモン吸収が増加するためか、黄色みが残るなどして透明性が悪化してしまうことがある。また、パターンのエッジ部の直線性が低下し、ガタツキが生じてしまうことがある。前記鋭利度の下限は、30%が好ましく、40%がより好ましい。
【0170】
−平均短軸長さ径および平均長軸長さ−
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(「平均短軸径」、「平均直径」と称することがある)としては、150nm以下が好ましく、1nm〜40nmがより好ましく、10nm〜40nmが更に好ましく、15nm〜35nmが特に好ましい。
前記平均短軸長さが、1nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、150nmを超えると、金属ナノワイヤー起因の散乱が生じ、十分な透明性を得ることができないことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子(株)製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーの短軸が円形でない場合の短軸長さは、最も長いものを短軸長さとした。
【0171】
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)としては、1μm〜40μmが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
前記平均長軸長さが、1μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しく、十分な導電性を得ることができないことがあり、40μmを超えると、金属ナノワイヤーが長すぎて製造時に絡まり、製造過程で凝集物が生じてしまうことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子(株)製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均長軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、および曲率から算出される値を長軸長さとした。
【0172】
導電性光硬化性樹脂層の層厚は、塗布液の安定性や塗布時の乾燥やパターニング時の現像時間などのプロセス適性の観点から、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜18μmが更に好ましく、1〜15μmが特に好ましい。前記導電性光硬化性樹脂層の全固形分に対する前記導電性繊維の含有量は、導電性と塗布液の安定性の観点から、0.01〜50質量%が好ましく、0.05〜30質量%が更に好ましく、0.1〜20質量%が特に好ましい。
【0173】
また、前記感光性フィルムをリフトオフ材として用いて、第一の透明電極層、第二の透明電極層およびその他の導電性部材を形成することもできる。この場合、前記感光性フィルムを用いてパターニングした後に、基材全面に透明導電層を形成した後、堆積した透明導電層ごと前記光硬化性樹脂層の溶解除去を行うことにより所望の透明導電層パターンを得ることができる(リフトオフ法)。
【0174】
(2)エッチング処理を用いる方法
エッチング処理によって、前記第一の透明電極パターン3、第二の透明電極パターン4および別の導電性要素6を形成する場合、まずマスク層2等が形成された前面板1の非接触面上にITO等の透明電極層をスパッタリングによって形成する。次いで、前記透明電極層上に前記光硬化性樹脂層としてエッチング用光硬化性樹脂層を有する前記感光性フィルムを用いて露光・現像によってエッチングパターンを形成する。その後、透明電極層をエッチングして透明電極をパターニングし、エッチングパターンを除去することで、第一の透明電極パターン3等を形成することができる。
前記感光性フィルムをエッチングレジスト(エッチングパターン)として用いる場合にも、前記導電性光硬化性樹脂層を用いる方法と同様にして、レジストパターンを得ることができる。前記エッチングは、特開2010−152155号公報の段落[0048]〜[0054]等に記載の公知の方法でエッチング、レジスト剥離を適用することができる。
【0175】
例えば、エッチングの方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプまたはアルカリ性タイプのものを適宜選択すればよい。酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の酸性成分単独の水溶液、酸性成分と塩化第2鉄、フッ化アンモニウム、過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせたものを使用してもよい。また、アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせたものを使用してもよい。
【0176】
エッチング液の温度は特に限定されないが、45℃以下であることが好ましい。本発明でエッチングマスク(エッチングパターン)として使用される樹脂パターンは、上述した光硬化性樹脂層を使用して形成されることにより、このような温度域における酸性およびアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮する。したがって、エッチング工程中に樹脂パターンが剥離することが防止され、樹脂パターンの存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
前記エッチング後、ライン汚染を防ぐために必要に応じて、洗浄工程・乾燥工程を行ってもよい。洗浄工程については、例えば常温で純水により10〜300秒間基材を洗浄して行い、乾燥工程については、エアブローを使用して、エアブロー圧(0.1〜5kg/cm2程度)を適宜調整し行えばよい。
【0177】
次いで、樹脂パターンの剥離方法としては、特に限定されないが、例えば、30〜80℃、好ましくは50〜80℃にて攪拌中の剥離液に基材を5〜30分間浸漬する方法が挙げられる。本発明でエッチングマスクとして使用される樹脂パターンは、上述のように45℃以下において優れた薬液耐性を示すものであるが、薬液温度が50℃以上になるとアルカリ性の剥離液により膨潤する性質を示す。このような性質により、50〜80℃の剥離液を使用して剥離工程を行うと工程時間が短縮され、樹脂パターンの剥離残渣が少なくなるという利点がある。すなわち、前記エッチング工程と剥離工程との間で薬液温度に差を設けることにより、本発明でエッチングマスクとして使用される樹脂パターンは、エッチング工程において良好な薬液耐性を発揮する一方で、剥離工程において良好な剥離性を示すことになり、薬液耐性と剥離性という、相反する特性を両方とも満足することができる。
【0178】
剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ成分や、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等の有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、またはこれらの混合溶液に溶解させたものが挙げられる。前記の剥離液を使用し、スプレー法、シャワー法、パドル法等により剥離してもよい。
【0179】
本発明の製造方法の過程で形成される静電容量型入力装置の態様例として、図4〜8の態様を挙げることができる。図4は、開口部8が形成された強化処理ガラス11の一例を示す上面図である。図5は、マスク層2が形成された前面板の一例を示す上面図である。図6は、第一の電極パターン3が形成された前面板の一例を示す上面図である。図7は、第一の電極パターン3と第二の電極パターン4が形成された前面板の一例を示す上面図である。図8は、第一および第二の電極パターンとは別の導電性要素6が形成された前面板の一例を示す上面図である。これらは、上記説明を具体化した例を示すものであり、本発明の範囲はこれらの図面により限定的に解釈されることはない。
【0180】
《タッチパネル、画像表示装置の構成》
本発明の製造方法によって得られる静電容量型入力装置、および当該静電容量型入力装置を構成要素として備えた画像表示装置は、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行(株)テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用することができる。
【実施例】
【0181】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、特に断りのない限り、「%」および「部」は質量基準である。
【0182】
[実施例1]
(転写材料の作製)
<熱可塑性樹脂層および中間層の形成>
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。
次に、下記処方P1からなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。
(熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1)
・メタノール :11.1質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :6.36質量部
・メチルエチルケトン :52.4質量部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジル
メタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=
55/11.7/4.5/28.8、分子量=10万、Tg≒70℃)
:5.83質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=63/37、
重量平均分子量=1万、Tg≒100℃) :13.6質量部
・モノマー1(商品名:BPE−500、新中村化学工業(株)製)
:9.1質量部
・フッ素系ポリマー :0.54質量部
上記のフッ素系ポリマーは、C613CH2CH2OCOCH=CH2 40部と
H(OCH(CH3)CH27OCOCH=CH2 55部と
H(OCHCH27OCOCH=CH2 5部との共重合体で、
重量平均分子量3万、メチルエチルケトン30質量%溶液である
(商品名:メガファックF780F、大日本インキ化学工業(株)製)
(中間層用塗布液:処方P1)
・ポリビニルアルコール :32.2質量部
(商品名:PVA205、(株)クラレ製、鹸化度=88%、重合度550)
・ポリビニルピロリドン :14.9質量部
(商品名:K−30、アイエスピー・ジャパン(株)製)
・蒸留水 :524質量部
・メタノール :429質量部
【0183】
<透明硬化性樹脂層>
下記表1(化合物B−1を0.13質量%の処方)に記す組成によって調製した透明硬化性樹脂層用の材料を、2μmの膜厚になるように、塗布、乾燥させて、中間層上に透明硬化性樹脂層を形成した。最後に保護フイルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層と透明硬化性樹脂層とが一体となった転写材料を作製し、サンプル名を感光性フィルムW1とした。
なお、下記式(1)中、「wt%」は、質量%である。
【0184】
【表1】
【0185】
【化25】
【0186】
表1中、モノマー混合物に用いた特開2012−78528号公報の段落番号[0111]に記載の重合性化合物(b2−1)は下記式で表される構造であり、Xはすべてアクリロイル基であり、n=1:トリペンタエリスリトールオクタアクリレート含有率85%、不純物としてn=2及びn=3の合計が15%の混合物である。
【化26】
【0187】
表1中、ポリマー溶液1に用いた特開2008−146018号公報の段落番号[0061]に記載の下記構造式P−25の化合物は重量平均分子量3.5万であり、ポリマー溶液1は固形分45%の1−メトキシ−2−プロピルアセテート15%、1−メトキシ−2−プロパノール40%溶液である。
【化27】
【0188】
表1中、ポリマー溶液2に用いたポリマーは下記式(1)で表される構造である。
式(1)
【化28】
【0189】
<銀配線付絶縁基板の作製>
銅張積層板(日立化成社製MCL−E−679F、基板:ガラスエポキシ基板)を用いて、スクリーン印刷法により、L/S=200μm/200μmの銀配線を備える金属配線付き絶縁基板を製造した。金属配線付絶縁基板は、以下の方法により作製した。銅貼積層板の銅箔をエッチング処理により剥離した後、スクリーン印刷装置を用いて導電性銀ペースト(藤倉化成製FA−451)を、メタルマスクを通して基板上にパターニングした。その後、150℃の条件にて30分間加熱処理を行い、銀配線を硬化させ、L/S=200μm/200μmの櫛形銀配線基板(金属配線付絶縁基板)を得た。
【0190】
<化合物B−1含有保護膜の形成>
次に得られた金属配線付絶縁基板上に、感光性フィルムW1からカバーフィルムを除去し、除去後に露出した透明硬化性樹脂層の表面と前記櫛形銀配線基板(金属配線付絶縁基板)の表面とが接するように重ね合わせ、ラミネータ(株式会社日立インダストリイズ製(LamicII型))を用いて、前記100℃で加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。続いてポリエチレンテレフタレートの仮支持体を、熱可塑性樹脂層との界面で剥離し、仮支持体を除去した。仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板と露光マスク(金属配線部分を露光し、周囲の配線がない部分は露光されないように設計した石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該透明硬化性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cm2(i線)でパターン露光した。
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30質量%含有、商品名:T−PD2(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を33℃で60秒間、フラットノズル圧力0.1MPaでシャワー現像し、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基板上の液だまりを減らした。
その後、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム系現像液(商品名:T−CD1(富士フイルム(株)製)を純水で5倍に希釈した液)を用いて32℃でシャワー圧を0.1MPaに設定して、45秒現像し、純水で洗浄した。
引き続き、界面活性剤含有洗浄液(商品名:T−SD3(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.1MPaにてシャワーで吹きかけ、更にやわらかいナイロン毛を有する回転ブラシにより、形成されたパターン像を擦って残渣除去を行った。さらに、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で超純水を噴射して残渣除去を行った。
次いで大気下にて露光量1000mJ/cm2にてポスト露光を行い、さらに150℃60分間のポストベーク処理を行って、前記透明硬化性樹脂層由来の保護膜が形成された配線基板を得た。
上記にて得られた配線基板を、実施例1の導電膜積層体とした。
【0191】
<寿命測定>
得られた配線基板(実施例1の導電膜積層体)に関して、以下の寿命測定を行った。
【0192】
(評価方法(寿命延長効果測定)(以後、HAST試験とも称する)
得られた配線基板を用いて、湿度85%、温度130度、圧力1.2atm、電圧100Vの条件で寿命測定(使用装置:エスペック(株)社製、EHS−221MD)を行った。
評価方法としては、まず、金属配線付き絶縁基板上に、実施例1において使用した化合物A−1のみを除いた透明硬化性樹脂層由来の保護膜を形成して得られる比較配線基板を用いて上記条件で寿命測定を行い、銀配線間の抵抗値が1×105Ωになるまでの時間Xを測定した。
次に、実施例1で得られた保護膜を有する配線基板を用いて上記条件で寿命測定を行い、銀配線間の抵抗値が1×105Ωになるまでの時間Yを測定した。
得られた時間Xおよび時間Yを用いて寿命の改善効果(Y/X)を計算した。
実施例1で得られた配線基板の結果を、表2に示す。
【0193】
[実施例2]
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−2に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例2の導電膜積層体とした。
【0194】
【化29】
【0195】
<実施例3>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−3に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例3の導電膜積層体とした。
【0196】
【化30】
【0197】
<実施例4>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−4に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例4の導電膜積層体とした。
【0198】
【化31】
【0199】
<実施例5>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−5に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例5の導電膜積層体とした。
【0200】
【化32】
<実施例6>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−6に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例6の導電膜積層体とした。
【0201】
【化33】
<実施例7>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−7に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例7の導電膜積層体とした。
【0202】
【化34】
【0203】
<実施例8>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−8に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例8の導電膜積層体とした。
【0204】
【化35】
【0205】
<実施例9>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−9に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例9の導電膜積層体とした。
【0206】
【化36】
【0207】
<実施例10>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−10に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例10の導電膜積層体とした。
【0208】
【化37】
<実施例11>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−11に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例11の導電膜積層体とした。
【0209】
【化38】
【0210】
<実施例12>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−12に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例12の導電膜積層体とした。
【0211】
【化39】
【0212】
<実施例13>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−13に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例13の導電膜積層体とした。
【0213】
【化40】
【0214】
<実施例14>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−14に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例14の導電膜積層体とした。
【0215】
【化41】
【0216】
<実施例15>
実施例1中の化合物B−1を下記化合物B−15に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例15の導電膜積層体とした。
【0217】
【化42】
【0218】
[実施例16]
実施例1中の化合物B−1をトコフェロール(下記構造)に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例16の導電膜積層体とした。
【0219】
【化43】
【0220】
[実施例17]
実施例1中の化合物B−1を下記化合物A−1に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例17の導電膜積層体とした。
【0221】
【化44】
【0222】
[実施例18]
実施例1中の化合物B−1を下記化合物A−2に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例18の導電膜積層体とした。
【0223】
【化45】
【0224】
[実施例19]
実施例1中の化合物B−1を下記化合物A−3に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例19の導電膜積層体とした。
【0225】
【化46】
【0226】
[実施例20]
実施例1中の化合物B−1を下記化合物A−4に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、実施例20の導電膜積層体とした。
【0227】
【化47】
【0228】
[比較例1]
上記HAST試験に用いた、実施例1において使用した化合物B−1のみを除いた透明硬化性樹脂層由来の保護膜を形成して得られる比較配線基板を、比較例1の導電膜積層体とした。上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
【0229】
[比較例2]
実施例1中の化合物B−1を相溶性不足化合物:特開2008−192850号公報の[0109]記載のメルカプトトリアゾール(下記構造の5−メルカプト−1H−1,2,3−トリアゾール)に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、配線基板の製造を行い、上記HAST試験を実施した。表2に結果を示す。
得られた配線基板を、比較例2の導電膜積層体とした。
【0230】
【化48】
【0231】
【表2】
*比較例2では、塗布膜から化合物が析出したため評価不可能
【0232】
表2に示すように、本発明の保護膜形成用組成物を用いた転写材料の透明硬化性樹脂層よりなる保護膜を使用すると、得られた各実施例の導電膜積層体は顕著な寿命延長効果を有することが確認された。すなわち、本発明の保護膜形成用組成物は、銀を含む導電膜のイオンマイグレーションを十分に防止することができることがわかった。
一方、比較例2に示すように、炭化水素基を有さない化合物を用いて調製した保護膜形成用組成物を用いて転写材料を製造すると、透明樹脂との相溶性が不足し、析出が発生してしまった。
なお、特開2012−77281号公報に記載の5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを用いた場合も同様に透明樹脂との相溶性が不足し、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールの析出が発生してしまった。
【0233】
[実施例101〜120:静電容量型タッチパネルの製造]
《マスク層の形成》
(マスク層形成用感光性フィルムK1の調製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、実施例1の転写材料の作製に用いた前記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。次に、前記処方P1からなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。更に、下記処方K1からなる黒色光硬化性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。このようにして仮支持体の上に乾燥膜厚が15.1μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、光学濃度が4.0となるように乾燥膜厚が2.2μmの黒色光硬化性樹脂層を設け、最後に保護フイルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断膜)と黒色光硬化性樹脂層とが一体となった転写材料を作製し、サンプル名をマスク層形成用感光性フィルムK1とした。
【0234】
(黒色光硬化性樹脂層用塗布液:処方K1)
・K顔料分散物1 :31.2質量部
・R顔料分散物1(下記の組成) :3.3質量部
・MMPGAc(ダイセル化学(株)製) :6.2質量部
・メチルエチルケトン(東燃化学(株)製) :34.0質量部
・シクロヘキサノン(関東電化工業(株)製) :8.5質量部
・バインダー2(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比の
ランダム共重合物、重量平均分子量3.8万) :10.8質量部
・フェノチアジン(東京化成(株)製) :0.01質量部
・DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、 日本化薬(株)製)
のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(76質量%)
:5.5質量部
・2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビス(エトキシ
カルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン
:0.4質量部
・界面活性剤(商品名:メガファックF−780F、大日本インキ(株)製)
:0.1質量部
なお、黒色光硬化性樹脂層用塗布液K1の溶剤除去後の100℃の粘度は10000Pa・secであった。
【0235】
(K顔料分散物1の組成)
・カーボンブラック(商品名:Nipex35、デグッサ社製) :13.1質量%
・下記分散剤1 :0.65質量%
・バインダー1(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比の
ランダム共重合物、重量平均分子量3.7万) :6.72質量%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :79.53質量%
【0236】
【化49】
【0237】
−R顔料分散物1の組成−
・顔料(C.I.ピグメントレッド177) :18質量%
・バインダー1(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比の
ランダム共重合物、重量平均分子量3.7万) :12質量%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :70質量%
【0238】
(マスク層の形成)
次いで、開口部(15mmΦ)が形成された強化処理ガラス(300mm×400mm×0.7mm)に、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基材を基材予備加熱装置で140℃2分間加熱した。得られたシランカップリング処理ガラス基材に、上述から得られたマスク層形成用感光性フィルムK1から保護フィルムを除去し、除去後に露出した黒色光硬化性樹脂層の表面と前記シランカップリング処理ガラス基材の表面とが接するように重ね合わせ、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用いて、前記140℃で加熱した基材に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。続いてポリエチレンテレフタレートの仮支持体を、熱可塑性樹脂層との界面で剥離し、仮支持体を除去した。仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)で、基材と露光マスク(額縁パターンを有す石英露光マスク)とを垂直に立てた状態で、露光マスク面と該黒色光硬化性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cm2(i線)でパターン露光した。
【0239】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30質量%含有、商品名:T−PD2(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を33℃で60秒間、フラットノズル圧力0.1MPaでシャワー現像し、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した。引き続き、このガラス基材の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基材上の液だまりを減らした。
【0240】
その後、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム系現像液(商品名:T−CD1(富士フイルム(株)製)を純水で5倍に希釈した液)を用いて32℃でシャワー圧を0.1MPaに設定して、45秒現像し、純水で洗浄した。
【0241】
引き続き、界面活性剤含有洗浄液(商品名:T−SD3(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.1MPaにてシャワーで吹きかけ、更にやわらかいナイロン毛を有する回転ブラシにより、形成されたパターン像を擦って残渣除去を行った。さらに、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で超純水を噴射して残渣除去を行った。
【0242】
次いで大気下にて露光量1300mJ/cm2にてポスト露光を行い、さらに240℃80分間のポストベーク処理を行って、光学濃度4.0、膜厚2.0μmのマスク層が形成された前面板を得た。
【0243】
《導電性光硬化性樹脂層を積層した感光性フィルムC1の作製》
マスク層形成用感光性フィルムK1の調製において、黒色光硬化性樹脂層用塗布液を、下記処方C1からなる導電性光硬化性樹脂層形成用塗布液に代えた以外はマスク層形成用感光性フィルムK1の調製と同様にして、導電性光硬化性樹脂層を積層した感光性フィルムC1を得た(導電性光硬化性樹脂層の膜厚は2.0μm)。
【0244】
<導電性光硬化性樹脂層形成用塗布液の調製>
(銀ナノワイヤー分散物(1)の調製)
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した硝酸銀溶液を調製した。その後、前記硝酸銀溶液に1Nのアンモニア水を透明になるまで添加し、全量が100mLになるように、純水を添加して、添加液Aを調製した。
また、グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
更に、HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0245】
次いで、前記添加液A20.6mLを三口フラスコ内に入れ室温にて攪拌した。この液に純水41mL、添加液H20.6mL、および添加液G16.5mLの順でロートにて添加し、90℃で5時間、200rpmで攪拌しながら加熱することで、銀ナノワイヤー水分散物(1)を得た。
得られた銀ナノワイヤー水分散物(1)を冷却した後、ポリビニルピロリドン(商品名:K−30、和光純薬工業(株)製)を銀の質量1に対し0.05となるように撹拌しながら添加し、その後遠心分離し、伝導度が50μS/cm以下になるまで精製し、プロピレングリコールモノメチルエーテルで更に遠心分離を、行い水を除去し、最終的にプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、銀ナノワイヤー溶剤分散物(1)を調製した。
【0246】
(導電性光硬化性樹脂層形成用塗布液C1の調製)
下記組成を攪拌し、最終銀濃度が1.0質量%となるように銀ナノワイヤー分散物(1)と混合し、導電性光硬化性樹脂層形成用塗布液を調製した。
なお、導電性光硬化性樹脂層形成用塗布液C1の溶剤除去後の100℃の粘度は4500Pa・secであった。
【0247】
−導電性光硬化性樹脂層形成用塗布液C1の組成−
・前記バインダー3(固形分:45%) :3.80質量部
・KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) :1.59質量部
・2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(商品名:Irgacure379、BASF製) :0.159質量部
・EHPE−3150(ダイセル化学(株)製) :0.150質量部
・界面活性剤(商品名:メガファックF−781F、大日本インキ製)
:0.002質量部
・MMPGAc(ダイセル化学(株)製) :19.3質量部
【0248】
《透明電極パターンおよび絶縁層等の形成》
上記にて形成したマスク層が形成された前面板に対して、導電性光硬化性樹脂層を積層した感光性フィルムC1を用いて、第一の透明電極パターンの形成を行った。
まず、マスク層が形成された前面板を洗浄し、保護フィルムを除去した感光性フィルムC1をラミネートした(基材温度:120℃、ゴムローラー温度120℃、線圧100N/cm、搬送速度1.7m/分)。仮支持体を剥離後、露光マスク(透明電極パターンを有す石英露光マスク)面と該導電性光硬化性樹脂層の間の距離を100μmに設定し、露光量100mJ/cm2(i線)でパターン露光した。
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30質量%含有、商品名:T−PD2(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を30℃で60秒間、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム系現像液(商品名:T−CD1(富士フイルム(株)製)を純水で5倍に希釈した液)を25℃で60秒間、界面活性剤含有洗浄液(商品名:T−SD3(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて33℃で20秒間処理し、回転ブラシ、超高圧洗浄ノズルで残渣除去を行い、さらに230℃60分間のポストベーク処理を行って、マスク層、第一の透明電極パターンを形成した前面板を得た。
【0249】
《絶縁層の形成》
マスク層の形成と同様にして、前記第一の透明電極パターン付の前面板を洗浄、シランカップリング処理し、保護フィルムを除去した実施例1〜20の転写材料をラミネートした(基材温度:100℃、ゴムローラー温度120℃、線圧100N/cm、搬送速度2.3m/分)。仮支持体を剥離後、露光マスク(絶縁層用パターンを有す石英露光マスク)面と該エッチング用光硬化性樹脂層との間の距離を100μmに設定し、露光量30mJ/cm2(i線)でパターン露光した。
【0250】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30質量%含有、商品名:T−PD2(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を33℃で60秒間、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム系現像液(商品名:T−CD1(富士フイルム(株)製)を純水で5倍に希釈した液)を25℃で50秒間、界面活性剤含有洗浄液(商品名:T−SD3(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて33℃で20秒間処理し、回転ブラシ、超高圧洗浄ノズルで残渣除去を行い、さらに230℃60分間のポストベーク処理を行って、マスク層、第一の透明電極パターン、実施例1〜20の転写材料を用いて形成した絶縁層パターンを形成した前面板を得た。
【0251】
次いで、導電性光硬化性樹脂層を積層した感光性フィルムC1を用いて、第二の透明電極パターンの形成を行った。
【0252】
《第一および第二の透明電極パターンとは別の導電性要素の形成》
前記第一、および第二の透明電極パターンの形成と同様にして、第一の透明電極パターン、実施例1〜20の転写材料を用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターンを形成した前面板をDCマグネトロンスパッタリング処理し、厚さ200nmのアルミニウム(Al)薄膜を形成した前面板を得た。
【0253】
前記第一、および第二の透明電極パターンの形成と同様にして、エッチング用感光性フィルムE1を用いて、第一の透明電極パターン、実施例1〜20転写材料を用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターン、エッチング用光硬化性樹脂層パターンを形成した前面板を得た(ポストベーク処理;130℃30分間)。
さらに、第一の透明電極パターンの形成の形成と同様にして、エッチング(30℃50秒間)、エッチング用光硬化性樹脂層を除去(45℃200秒間)することにより、マスク層、第一の透明電極パターン、実施例1〜20の転写材料を用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターン、第一および第二の透明電極パターンとは別の導電性要素を形成した前面板を得た。
【0254】
《保護膜の形成》
絶縁層の形成と同様にして、前記第一および第二の透明電極パターンとは別の導電性要素まで形成した前面板に、保護フィルムを除去した実施例1〜20の転写材料をラミネートし、仮支持体を剥離後、露光マスクを介さずに露光量50mJ/cm2(i線)で前面露光し、現像、ポスト露光(1000mJ/cm2)、ポストベーク処理を行って、マスク層、第一の透明電極パターン、実施例1〜20の転写材料を用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターン、第一および第二の透明電極パターンとは別の導電性要素の全てを覆うように実施例1〜20の転写材料を用いて形成した保護膜を積層した前面板を得た。
【0255】
《画像表示装置(タッチパネル)の作製》
特開2009−47936号公報に記載の方法で製造した液晶表示素子に、先に製造した前面板を貼り合せ、公知の方法で静電容量型入力装置を構成要素として備えた実施例101〜120の画像表示装置(タッチパネル)を作製した。
【0256】
《画像表示装置の評価》
実施例101〜120の画像表示装置(タッチパネル)は、銀を含む導電膜の導電性には問題がなかった。すなわち、本発明の保護膜形成用組成物は、タッチパネル用の保護膜として用いた場合も、銀を含む導電膜のイオンマイグレーションを十分に防止することができることがわかった。
さらに、本発明の転写材料を用いて静電容量型入力装置の保護膜を形成すると、気泡等の欠陥がなく、表示特性に優れた画像表示装置が得られた。
【0257】
以上のように、本発明の保護膜形成用組成物を用いて製造した導電膜積層体を用いることで、銀を含む導電膜の寿命が改善され、薄層/軽量化のメリットがある静電容量型入力装置を、簡単な工程で高品位に製造可能にすることができた。
【符号の説明】
【0258】
1 前面板
2 マスク層
3 第一の電極パターン(銀を含む導電膜)
3a パッド部分
3b 接続部分
4 第二の電極パターン(銀を含む導電膜)
5 絶縁層
6 他の導電性要素
7 保護膜(還元性化合物(A)または化合物(B)を含む)
7’透明保護層
8 開口部
10 静電容量型入力装置
11 強化処理ガラス
C 第1の方向
D 第2の方向
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9