特許第5987105号(P5987105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5987105ITOスパッタリングターゲット及びその製造方法
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  • 特許5987105-ITOスパッタリングターゲット及びその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987105
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ITOスパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20160823BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20160823BHJP
   C04B 35/00 20060101ALI20160823BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160823BHJP
   H01B 5/14 20060101ALN20160823BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C23C14/08 D
   C04B35/00 J
   H01B13/00 503B
   !H01B5/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-508113(P2015-508113)
(86)(22)【出願日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2014050912
(87)【国際公開番号】WO2014156234
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-71342(P2013-71342)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】栗原 敏也
(72)【発明者】
【氏名】掛野 崇
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−233969(JP,A)
【文献】 特開2003−301265(JP,A)
【文献】 特開平03−044465(JP,A)
【文献】 特開2009−040620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C04B 35/00
H01B 13/00
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム(In)、錫(Sn)、酸素(O)、不可避的不純物からなる焼結体であって、錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)が0.3以上14.5at.%以下であり、バルク抵抗率が0.1mΩ・cm〜1.4mΩ・cmであり、ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異が20%以下であり、さらに相対密度が90%以上であることを特徴とするITOスパッタリングターゲット。
【請求項2】
ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異が15%以下であることを特徴とする請求項1に記載のITOスパッタリングターゲット。
【請求項3】
インジウム(In)、錫(Sn)、酸素(O)、不可避的不純物からなる焼結体であって、錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)が0.3以上14.5at.%以下である焼結体ITOスパッタリングターゲットの製造方法であって、酸化インジウム粉及び酸化錫粉からなる原料粉の焼結に際し、焼結温度を1300〜1600°Cとし、焼結時の最高温度から1000℃までの平均冷却速度を0.1〜3.0℃/minとすると共に、降温時冷却中の雰囲気を大気雰囲気(酸素分圧比30%未満)とすることを特徴とする焼結体ITOスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項4】
バルク抵抗率が0.10〜1.40mΩ・cmで、ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異を20%以下とすることを特徴とする請求項3に記載の焼結体ITOスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項5】
ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異を15%以下とすることを特徴とする請求項3又は4に記載のITOスパッタリングターゲットの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ITO膜形成に好適なITOスパッタリングターゲットに関する。特に、ターゲットのスパッタリング初期から終了時にかけて、膜特性の変化が少ないITOスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ITO(インジウム−錫の複合酸化物)膜は、液晶ディスプレーを中心とする表示デバイスにおける透明電極(導電膜)として、広く使用されている。このITO膜を形成する方法として、真空蒸着法やスパッタリング法など、一般に物理蒸着法と言われている手段によって行われている。特に操作性や被膜の安定性からマグネトロンスパッタリング法を用いて形成することが多い。
【0003】
スパッタリング法による膜の形成は、陰極に設置したターゲットにArイオンなどの陽イオンを物理的に衝突させ、その衝突エネルギーによってターゲットを構成する材料を放出させて、対面している陽極側の基板にターゲット材料とほぼ同組成の膜を積層することによって行われる。スパッタリング法による被覆法は、処理時間や供給電力等を調整することによって、安定した成膜速度で数nmの薄い膜から数十μmの厚い膜まで形成することができるという特徴を有している。
【0004】
近年、静電容量式、抵抗膜式タッチパネルなどに用いられるITO膜の需要があり、従来から広く用いられている3.7at.%程度の錫(Sn)を含有するITOスパッタリングターゲット以外にも、求められる膜抵抗により酸化錫を0.3以上14.5at.%以下の広い範囲で組成を振ったターゲットの開発が行われている。例えば、特許文献1には、20〜50wt%の酸化錫を含有する酸化インジウムとの混合粉末をプレス成型し、この成形体を純酸素雰囲気中、温度1500〜1650℃、圧力0.15〜1MPaで加圧焼結してITOスパッタリングターゲットを製造することが知られている。
【0005】
ITOスパッタリングターゲットで代表的な特許を挙げると、下記に示す特許文献1がある。この特許は、「酸化インジウムと酸化錫を主成分とした原料から粉末冶金法にて製造されたITOスパッタリングタ−ゲットであって、表面粗さRaが0.5 μm以下で、かつ密度D(g/cm )とバルク抵抗値ρ(mΩcm)が下記2つの式を同時に満たして成るITOスパッタリングタ−ゲット。a) 6.20 ≦ D ≦ 7.23、 b」 −0.0676D+0.887 ≧ ρ ≧−0.0761D+0.666 。」というもので、約20年前の技術である。
この特許は、スパッタリング時に異常放電やノジュ−ルを発生することが殆どない上にガスの吸着も極力少なく、そのため良好な成膜作業下で品質の高いITO膜を安定して得ることのできるITO焼結タ−ゲットを実現することができるという、当時としては画期的な発明と言える。
【0006】
また、ITOターゲット密度を上げる対策として、例えば、下記特許文献2には、粒度分布から求めたメジアン径が0.40(0.40を除く)〜1.0μmの範囲にあり、かつ粒度分布から求めた90%粒径が3.0μm以下の範囲にある酸化錫粉末を用いて形成したITOターゲットが記載されている。
しかし、このような酸化錫粉末を使用して、従来よりも多くの酸化錫を含有するITOターゲットを製造した場合は、焼結体内部にマクロポア及びマイクロクラックが発生して、焼結体の加工中や加工終了後の保管中に、割れやひびが発生することがあった。そして、それらはターゲットとしての製品の出荷に影響を及ぼすことがあった。
【0007】
この他、下記特許文献3には、ITOに関する技術として、主結晶粒であるIn母相内にInSn12からなる微細粒子が存在するITO焼結体であって、前記微粒子が粒子の仮想中心から放射線状に針状突起が形成された立体星状形状を有すことを特徴とし、バルク抵抗の低いITOスパッタリングターゲットを提供するという技術が開示されている。
【0008】
また、下記特許文献4には、In、Sn、Oからなり、焼結密度が7.08g/cm3以上、バルク抵抗率が80μΩcm〜100μΩcm、O/(In+Sn+O)が1.75%以下(重量比)、かつInSn12相の(200)面のX線回折ピークの積分強度の30%以下であるITO焼結体であり、この焼結体は、In、Sn、Oからなる成形体を焼結する際に、焼結温度を1400℃以上となったとき、焼結雰囲気を酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気へと切り替える技術が開示されている。
【0009】
ITOスパッタリングターゲットのように、不定比性を有する酸化物では、高温での熱平衡酸素欠損濃度は室温と比較して高いため、焼結での降温時には雰囲気中の酸素は焼結体に取り込まれ、焼結体表面から内部に拡散するが、拡散速度は温度と共に急速に低下するため、有限の降温時間では酸素欠損濃度は均一にはならず、室温での表面近傍の酸素欠損濃度は低く、内部に行くに従い高くなる。
一般に、ターゲットとして使用される板状の焼結体では、この濃度分布はターゲットの厚み方向に発生する。また、この濃度分布は焼結温度パターン、および雰囲気の酸素分圧に依存する。
【0010】
一方、酸化物ターゲットの酸素欠損濃度は、膜の導電性などの特性に影響を及ぼす。例えば、ITOターゲットを用いたスパッタ成膜では、スパッタガスに1%程度の酸素を導入するが、膜抵抗が極小となる酸素分圧はターゲットの酸素欠損濃度に依存する。
従って、スパッタガスの最適酸素分圧は、ターゲットがエロージョンされスパッタ表面が内部になるに従い、変化していく。言い換えれば、スパッタガスの酸素分圧が一定の場合、スパッタ時間に伴い膜特性が変化することになる。
【0011】
上記で示した従来の技術では、ITOスパッタリングターゲットの密度を上げること、あるいは低抵抗率化を図る提案がなされているが、ターゲットの表面近傍の酸素欠損濃度が低く、内部に行くに従い高くなり、ターゲットとして使用される板状の焼結体では、この濃度分布はターゲットの厚み方向に発生するという問題があるという認識がなく、またこれを解決しようとする試みもなされていなのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2750483号
【特許文献2】特開2009−29706号公報
【特許文献3】特開2009−40621号公報
【特許文献4】特開2000−233969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ITO膜形成に好適なITOスパッタリングターゲットに関し、特にターゲットのスパッタリング初期から終了時にかけて、膜特性の変化が少ないITOスパッタリングターゲットを提供するものである。すなわち、ITOスパッタリングターゲットの厚み方向の酸素欠損の変動を少なくすることにより、スパッタリングが進行するに伴う膜特性の変化を少なくし、成膜の品質の向上と信頼性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の発明を提供するものである。
1)インジウム(In)、錫(Sn)、酸素(O)、不可避的不純物からなる焼結体であって、錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)が0.3以上14.5at.%以下である焼結体ITOスパッタリングターゲットであって、バルク抵抗率が0.1mΩ・cm〜1.4mΩ・cmであり、ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異が20%以下であることを特徴とするITOスパッタリングターゲット、を提供する。
【0015】
スパッタリング中に板厚が減少し抵抗率が変化してくるが、ターゲットの全ライフに亘って、このバルク抵抗率の変化を少なくし、膜特性の変動を少なくすることが望まれる。本発明は、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率の差異を20%以下とすることにより、良好な膜特性を得ることを目的とする。
【0016】
ここで、前記「板厚方向の任意の地点」とは、ターゲットの厚さをtとすると、t未満の厚さの位置を示すものであり、その位置の厚さにおいて測定したバルク抵抗率である。また、「差異」とは、測定したバルク抵抗率の大きい方を基準として、例えばバルク抵抗率をR1、R2とし、R1>R2とした場合、(R1−R2)/R1×100(%)として計算したものである。
なお、製造されたターゲットは基本的にターゲットの厚み中心部が最低バルク抵抗率となり、中心部を過ぎるとバルク抵抗率が上昇し、裏面は表面とほぼ同じバルク抵抗率になる。従って、ターゲットの加工の際に表面を研削した場合であっても、裏面までの厚みには、少なくとも元の厚みの中心の最低バルク抵抗率が存在することになる。
【0017】
また、研削等の加工前の焼結体の状態での表面が最もバルク抵抗率が高いので、バルク抵抗率の最大差は、通常研削等の加工前の焼結体での表面のバルク抵抗率と厚み中心部のバルク抵抗率との差異となる。従ってターゲットの加工の際に表面を研削した場合は、厚み方向での差異は最大差よりも小さな値となり得る。このような場合は、裏面の方が表面よりも高くなる場合もあり得る。
【0018】
2)また、本発明はターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異が15%以下であることを特徴とする上記1)に記載のITOスパッタリングターゲット、を提供する。
【0019】
3)また、本発明はインジウム(In)、錫(Sn)、酸素(O)、不可避的不純物からなる焼結体であって、錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)が0.3以上14.5at.%以下である焼結体ITOスパッタリングターゲットの製造方法であって、酸化インジウム粉及び酸化錫粉からなる原料粉の焼結に際し、焼結温度を1300〜1600°Cとし、焼結時の最高温度から1000℃までの平均冷却速度を0.1〜3.0℃/minとすると共に、降温時冷却中の雰囲気を大気雰囲気(酸素分圧比30%未満)とすることを特徴とする焼結体ITOスパッタリングターゲットの製造方法、を提供する。
【0020】
4)また、本発明はバルク抵抗率が0.10〜1.40mΩ・cmで、ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異を20%以下とすることを特徴とする上記3)に記載の焼結体ITOスパッタリングターゲットの製造方法、を提供する。
5)また、本発明はターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異を15%以下とすることを特徴とする上記3)又は4)に記載のITOスパッタリングターゲットの製造方法、を提供する。
【0021】
6)また、本発明はインジウム(In)、錫(Sn)、酸素(O)、不可避的不純物からなる焼結体であって、錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)が0.3以上14.5at.%以下である焼結体ITOスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングしたITOスパッタ膜であって、ターゲットライフの初期とターゲットライフの後期の膜の抵抗率の差異が5%以下であることを特徴とするITOスパッタ膜、を提供する。
【0022】
ここで、ターゲットライフ初期は、ターゲットの最もエロージョンを受けた部位のエロージョンが1mm未満までの間、ターゲットライフ後期は、ターゲットの最もエロージョンを受けた部位であって、その部位のターゲットの残りの厚みが0.01mm〜1mmの間と言うこともできる。
【発明の効果】
【0023】
ITO膜形成に好適なITOスパッタリングターゲットに関し、特にターゲットのスパッタリング初期から終了時にかけて、膜特性の変化が少ないITOスパッタリングターゲットを提供することができる優れた効果を有する。すなわち、ITOスパッタリングターゲットの厚み方向の酸素欠損の変動を少なくし、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異を20%以内とすることにより、スパッタリングが進行することに伴う膜特性の変化を少なくし、成膜の品質の向上と信頼性を確保することができる。この結果、ITOターゲットの生産性や信頼性を向上することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ターゲットの厚さをtとした場合の厚さtの時のバルク抵抗率とt未満の時のバルク抵抗率のバルク抵抗率の最大差が13%となった例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明において、ITOスパッタリングターゲットの組成は、インジウム(In)、錫(Sn)、酸素(O)、不可避的不純物からなる焼結体であって、錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)が0.3以上14.5at.%以下である。
このようなターゲットを使用することにより、液晶テレビやプラズマテレビだけでなく、静電容量式及び抵抗膜式タッチパネルなどに好適な、スパッタリング初期から終了時にかけて、膜特性の変化が少ないITOスパッタリングターゲットを提供することができる。
【0026】
本発明の酸化インジウム−酸化錫系酸化物(ITO)焼結体ターゲットを製造するに際しては、各原料粉の混合、粉砕、成型、焼結のプロセスによって作製することができる。原料粉としては、酸化インジウム粉、および酸化錫粉であって、比表面積が約5m/g程度のものを使用する。
【0027】
具体的には、酸化インジウム粉は、かさ密度:0.3〜0.8g/cm、メジアン径(D50):0.5〜2.5μm、比表面積:3.0〜6.0m/g、酸化錫粉:かさ密度:0.2〜0.6g/cm、メジアン径(D50):1.0〜2.5μm、比表面積:3.0〜6.0m/gを使用する。
【0028】
各原料粉を所望の組成比となるように秤量後、混合粉砕を行う。粉砕方法には求める粒度、被粉砕物質に応じて様々な方法があるが、ビーズミル等の湿式媒体攪拌ミルが適している。これは、粉体を水に分散させたスラリーを、硬度の高い材料であるジルコニア、アルミナ等の粉砕媒体と共に強制的に攪拌するものであり、高効率で粉砕粉を得ることが出来る。しかし、この際に粉砕媒体も磨耗するために、粉砕粉に粉砕媒体自身が不純物として混入するので、長時間の処理は好ましくない。
【0029】
粉砕量を粉砕前後の比表面積の差で定義すれば、湿式媒体攪拌ミルでは粉砕量は粉体に対する投入エネルギーにほぼ比例する。従って、粉砕を行う際には、湿式媒体攪拌ミルは積算電力を管理することが重要である。粉砕前後の比表面積の差(ΔBET)は、0.5〜5.0m/g、粉砕後のメジアン径(D50)は、2.5μm以下とする。
【0030】
次に、微粉砕したスラリーの造粒を行う。これは、造粒により粉体の流動性を向上させることで、次工程のプレス成型時に粉体を均一に金型へ充填し、均質な成形体を得るためである。造粒には様々な方式があるが、プレス成型に適した造粒粉を得る方法の一つに、噴霧式乾燥装置(スプレードライヤー)を用いる方法がある。これは粉体をスラリーとして、熱風中に液滴として分散させ、瞬間的に乾燥させる方法であり、10〜500μmの球状の造粒粉が連続的に得ることが出来る。
【0031】
また、スラリー中にポリビニルアルコール(PVA)等のバインダーを添加し造粒粉中に含有させることで、成形体強度を向上させることが出来る。PVAの添加量は、PVA4〜10wt.%が含有水溶液を原料粉に対して50〜250cc/kg添加する。
【0032】
さらに、バインダーに適した可塑剤も添加することで、プレス成型時の造粒粉の圧壊強度を調節することも出来る。また、得られた造粒粉に、少量の水を添加し湿潤させることで成形体強度を向上する方法もある。スプレードライヤーによる乾燥では熱風の入口温度、および出口温度の管理が重要である。
【0033】
入口と出口との温度差が大きければ単位時間当たりの乾燥量が増加し生産性が向上するが、入口温度が高すぎる場合には粉体、および添加したバインダーが熱により変質し、望まれる特性が得られない場合がある。また、出口温度が低すぎる場合は造粒粉が十分に乾燥されない場合がある。
【0034】
次に、プレス成型を行う。造粒粉を金型に充填し、400〜1000kgf/cmの圧力を、1〜3分間保持して成形する。圧力400kgf/cm未満であると、充分な強度と密度の成形体を得ることができず、また圧力1000kgf/cm以上では、成形体を金型から取り出す際に、成形体自身が圧力から解放されることによる変形のため破壊する場合があり、生産上好ましくない。
【0035】
電気炉を使用し、酸素雰囲気中で成形体を焼結し、焼結体を得る。焼結温度は1300〜1600°Cとして焼結する。この場合、焼結温度が1300°Cより低いと、高密度の焼結体を得ることが出来ない。また、1600°Cを超える焼結温度では、酸化錫の揮発により、焼結密度の低下や組成ずれが生じ、また炉ヒーター寿命が低下してしまうというコスト的問題もあるので、上限は1600°Cとすることが望ましい。焼結温度までの昇温途中で、必要に応じて脱バインダー工程等を導入しても良い。
【0036】
焼結温度における保持時間が1時間より短いと、焼結が充分進まず、焼結体の密度が充分高くならなかったり、焼結体が反ってしまったりする。保持時間が100時間を越えても、不必要なエネルギーと時間を要する無駄が生じて生産上好ましくない。好ましくは、5〜30hrである。
降温時冷却中の雰囲気を大気雰囲気(酸素分圧比30%未満)とし、前記焼結時の最高温度から1000℃までの平均冷却速度を0.1〜3.0℃/minとする。
【0037】
バルク抵抗率の測定方法については、例えばエヌピイエス株式会社製、型式:Σ−5+を用いて測定することができる。測定に際し、まず試料の表面に金属製の探針を4本一直線上に立て、外側の二探針間に一定電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定し抵抗を求める。求めた抵抗に試料厚さ、補正係数RCF(Resistivity Correction Factor)をかけて、体積抵抗率(バルク抵抗率)を算出することができる。
【0038】
このような条件で焼結された焼結体は、相対密度が90%以上、バルク抵抗率が0.10〜1.40mΩ・cmで、ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異を20%以内とすることができる。これが本願発明の大きな特徴である。
すなわち、インジウム(In)、錫(Sn)、酸素(O)、不可避的不純物からなる焼結体であって、錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)が0.3以上14.5at.%以下からなる焼結体ITOスパッタリングターゲットにおいて、バルク抵抗率が0.1mΩ・cm〜1.4mΩ・cmであるときに、ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異を20%以内、さらには15%以内とすることができる。
【0039】
この代表例を図1に示す。この図1においては、ターゲットの厚さをtとした場合の厚さtの時のバルク抵抗率とt未満の時のバルク抵抗率のバルク抵抗率の最大差が13%となった例を示す。通常、ターゲットを研削する前の焼結体の厚さをTとした場合、Tのバルク抵抗率とT/2のバルク抵抗率の差が最大となるので、ターゲットのT/2のバルク抵抗率を測定することにより、ターゲット内部(厚み方向)のバルク抵抗の、およその特性を知ることができる。
【0040】
本発明の焼結体ITOスパッタリングターゲットの製造に際しては、錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)が0.3以上14.5at.%以下、残余が酸化インジウムとなるように酸化インジウム粉及び酸化錫粉を調製し、この原料粉を焼結温度:1300〜1600°Cとし、所定の圧力で焼結する。そして、焼結時の最高温度から1000℃までの平均冷却速度を0.1〜3.0℃/minとすると共に、降温時冷却中の雰囲気を大気雰囲気(酸素分圧比30%未満)とする。
【0041】
これによって、バルク抵抗率が0.10〜1.40mΩ・cmで、ターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異(双方のバルク抵抗率の差異)を20%以内とすること、さらにはターゲットの厚さをtとした場合、厚さtのバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率について、その差異(双方のバルク抵抗率の差異)を15%以内とすることができる。
【0042】
このようにして得られた焼結体の表面を研削し、さらに側辺をダイヤモンドカッターで127mm×508mmサイズに切断した。
次に、無酸素銅製のバッキングプレートを200°Cに設定したホットプレート上に設置し、インジウムをロウ材として使用し、その厚みが約0.2mmとなるように塗布した。このバッキングプレート上に、ITO焼結体を接合させ、室温まで放置冷却した。
【0043】
このターゲットをシンクロン製マグネトロンスパッタ装置(BSC−7011)に取り付け、投入パワーはDC電源で2.3W/cm、ガス圧は0.6Pa、スパッタガスはアルゴン(Ar)と酸素(O)でガス総流量は300sccm、酸素濃度は1%とした。ライフ初期とライフ後期で膜抵抗率の比較をするため、成膜温度200℃、膜厚150nmで成膜を行った。
【0044】
上記の焼結体ITOターゲットを用いてスパッタリングすることにより、ターゲットライフの初期とターゲットライフの後期の膜の抵抗率の差異が5%以下であるITOスパッタ膜を得ることができる。
下記に、実施例及び比較例に基づいて本発明を説明する。
【実施例】
【0045】
以下に示す実施例は、理解を容易にするためのものであり、これらの実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形及び他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【0046】
(実施例1)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を0.5℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.142mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.130mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が8%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で12%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も1.3%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(実施例2)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.138mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.125mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が9%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で13%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も0.6%と変動が小さかった。この結果を、同様に表1に示す。
【0049】
(実施例3)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.5℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.135mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.121mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が10%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で15%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も2.5%と変動が小さかった。
【0050】
(実施例4)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を2.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.134mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.119mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が11%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で17%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も1.2%と変動が小さかった。この結果を、同様に表1に示す。
【0051】
(実施例5)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を2.5℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.132mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.118mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が11%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で14%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も2.4%と変動が小さかった。この結果を、同様に表1に示す。
【0052】
(実施例6)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を3.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.130mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.116mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が11%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で13%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も3.5%と変動が小さかった。この結果を、同様に表1に示す。
【0053】
(比較例1)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を0.05℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.163mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.130mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が20%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で25%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も10.4%と大きく変動していた。この結果を、同様に表1に示す。
【0054】
(比較例2)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を5.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.131mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.106mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が19%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で24%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も9.4%と大きく変動していた。この結果を、同様に表1に示す。
【0055】
(比較例3)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%以上とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.160mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.130mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が19%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で23%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も10.0%と大きく変動していた。この結果を、同様に表1に示す。
【0056】
(比較例4)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)3.7at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を3.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%以上とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.152mΩ・cmでターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.123mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が19%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で24%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も11.7%と大きく変動していた。この結果を、同様に表1に示す。
【0057】
(実施例7)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)0.4at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.250mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.230mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が8%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で10%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も4.4%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0058】
(実施例8)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)0.4at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を3.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.231mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.209mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が10%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で12%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も1.6%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0059】
(実施例9)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)1.1at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.121mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.109mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が10%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で11%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も4.5%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0060】
(実施例10)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)1.1at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を3.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.113mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.101mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が11%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で14%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も2.2%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0061】
(実施例11)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)1.8at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.119mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.109mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が8%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で9%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も3.2%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0062】
(実施例12)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)1.8at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を3.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.110mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.100mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が9%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で11%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も1.6%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0063】
(実施例13)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)5.4at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.176mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.161mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が9%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で11%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も2.4%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0064】
(実施例14)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)5.4at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を3.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.167mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.155mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が7%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で9%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も4.2%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0065】
(実施例15)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)7.2at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.220mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.200mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が9%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で12%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も3.5%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0066】
(実施例16)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)7.2at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を3.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.200mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.180mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が10%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で11%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も2.1%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0067】
(実施例17)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)12.8at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を1.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が1.302mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が1.172mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が10%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で12%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も3.3%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0068】
(実施例18)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)12.8at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を3.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が1.251mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が1.151mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が8%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で10%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も2.1%と変動が小さかった。この結果を、表1に示す。
【0069】
(比較例5)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)0.4at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を0.05℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.277mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.228mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が18%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で22%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も9.9%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0070】
(比較例6)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)0.4at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を5.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.228mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.187mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が18%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で23%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も10.3%と変動と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0071】
(比較例7)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)1.1at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を0.05℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.131mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.105mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が20%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で25%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も10.8%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0072】
(比較例8)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)1.1at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を5.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.105mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.085mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が19%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で21%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も11.1%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0073】
(比較例9)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)1.8at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を0.05℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.129mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.104mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が19%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で22%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も7.4%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0074】
(比較例10)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)1.8at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を5.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.101mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.083mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が18%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で22%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も10.7%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0075】
(比較例11)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)5.4at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を0.05℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.191mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.155mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が19%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で24%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も9.0%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0076】
(比較例12)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)5.4at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を5.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.160mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.128mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が20%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で22%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も12.3%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0077】
(比較例13)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)7.2at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を0.05℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.259mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.213mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が18%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で23%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も13.8%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0078】
(比較例14)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)7.2at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を5.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が0.184mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.142mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が23%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で26%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も7.9%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0079】
(比較例15)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)12.8at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を0.05℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が1.355mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が1.070mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が21%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で25%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も10.3%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【0080】
(比較例16)
錫(Sn)の含有量が(原子組成比:at.%)12.8at.%とした酸化錫粉を用い、残余が酸化インジウムに調整した焼結原料を用いて焼結した。最高焼結温度1560℃から1000℃までの降温時平均冷却速度を5.0℃/minとし、降温時の雰囲気を酸素分圧比30%未満とした。この結果、ターゲットライフ初期のバルク抵抗率が1.259mΩ・cmで、ターゲットライフ後期のバルク抵抗率が0.944mΩ・cmであり、ターゲットライフ初期と後期のバルク抵抗率の差が25%であった。
また、図1のように調査した結果、最大で30%の差異であった。このターゲットを用いてターゲットライフ初期と後期で成膜した結果、膜抵抗率の差も9.5%と大きく変動していた。この結果を、表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ITO膜形成に好適なITOスパッタリングターゲットに関し、特にターゲットのスパッタリング初期から終了時にかけて、膜特性の変化が少ないITOスパッタリングターゲットを提供することができる。すなわち、ITOスパッタリングターゲットの厚み方向の酸素欠損の変動を少なくし、ターゲットの厚さをtとした場合のターゲットの厚さtの時のバルク抵抗率と板厚方向の任意の地点でのバルク抵抗率の差異を20%以内とすることにより、スパッタリングが進行することに伴う膜特性の変化を少なくし、成膜の品質の向上と信頼性を確保することができる。この結果、ITOターゲットの生産性や信頼性を向上することができるという優れた効果を有する。本発明のITOスパッタリングターゲットは特にITO膜形成に有用である。
図1