(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流を直流に変換するスイッチング電源回路と、該スイッチング電源回路により変換された直流にてモータを駆動するインバータ回路と、該インバータ回路をPWM制御するPWM制御回路と、前記スイッチング電源回路により変換される直流の電圧を制御する制御回路とを備えたモータ駆動装置において、
前記制御回路は、
前記スイッチング電源回路の出力電圧と、前記インバータ回路の出力電圧との差分に応じた電圧を出力する減算回路と、
前記スイッチング電源回路の出力電圧が前記インバータ回路の出力電圧より所定電圧高くなるように、前記減算回路の出力電圧に応じたデューティ比を有するスイッチング信号を前記スイッチング電源回路に与えるスイッチング信号出力回路と、
前記スイッチング電源回路の出力電圧の下限が制限されるように、前記制御回路の動作を制御する最小電圧制限回路と
を備え、
前記スイッチング信号出力回路は、
前記減算回路から出力される電圧が大きい程、スイッチング信号のデューティ比が小さくなるように構成されており、
前記最小電圧制限回路は、
前記スイッチング電源回路の出力電圧を分圧する最小電圧制限用の分圧抵抗と、
該分圧抵抗によって分圧された電圧と、前記減算回路の出力端の電圧とを比較する第1比較器と、
該第1比較器の出力端にカソードが接続された整流素子と
を備え、
該整流素子のアノードと、前記減算回路の出力端とが接続されている
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置は、例えば、交流を直流に変換するスイッチング電源回路と、該スイッチング電源回路により変換された直流にてモータを駆動するインバータ回路と、該インバータ回路をPWM制御するPWM制御回路と、前記スイッチング電源回路により変換される直流の電圧を制御する制御回路とを備える。
【0003】
半導体製造装置及び液晶製造装置などに使用されるリニアモータを駆動するには、加減速時に高電圧の電源が必要であるが一定速度動作および停止時には比較的低い電圧で足りる。
しかし、従来のインバータ回路は常に加減速に必要な高電圧の電源でリニアモータを駆動するため、効率が悪く、大型化、ひいてはコスト増となっていた。
また、インバータ回路はPWM制御によりモータ電流を制御するが、PWM制御に使用するスイッチ素子には立ち上がり、立ち下がりの遅延時間があり、高電圧の電源で微小電流を制御するとスイッチ素子のオン期間が短くなる。このため、オン期間に対するデットタイム期間の割合が大きくなり、電流を精密に制御できない問題がある。
これを回避するため電圧切替型のスイッチング電源回路を設けて上位側コントローラなどからの外部信号を基にスイッチング電源の出力電圧を切り替える方法がある。
【0004】
また、特許文献1には、交流電源を直流に変換する整流回路及び昇圧回路と、変換された直流にてモータを駆動するインバータ回路と、モータ制御装置とを備え、PWM制御及びPAM制御を組み合わせてモータを駆動する装置が開示されている。モータ制御装置には、交流電源からの入力電流、昇圧回路の出力電圧及びモータの回転数等の検出信号、外部回路から与えられたモータの速度指令等が入力するように構成されている。また、モータ制御装置は、最適な入力電流と、昇圧回路の電圧との関係を記憶した記憶装置を備えており、入力された各種信号、速度指令、記憶装置が記憶する情報等に基づいて複雑な演算処理を実行し、昇圧回路及びインバータ回路のスイッチング制御を行っている。モータ制御装置によるスイッチング制御により、昇圧回路はインバータ回路の出力電圧よりも少し高い直流電圧を出力することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電圧切替型のスイッチング電源回路を設けて該スイッチング電源回路の出力電圧を制御する従来技術においては、外部からの信号が必要であるため回路構成が複雑化し、且つ、切り替え時の電圧安定性に問題がある。
また、特許文献1に係るモータ駆動装置においては、複雑な各種演算が必要であるため、回路構成が複雑化するという問題がある。また、各種検出信号、速度指令、記憶装置の情報を用いて演算処理を行うため、動作の安定性に難があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、上位側コントローラ等、外部からの制御信号が不要で、且つ従来技術に比べ簡単な回路構成で小型化でき、精密な電流制御が可能となり、モータを精密に制御できるモータ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るモータ駆動装置は、交流を直流に変換するスイッチング電源回路と、該スイッチング電源回路により変換された直流にてモータを駆動するインバータ回路と、該インバータ回路をPWM制御するPWM制御回路と、前記スイッチング電源回路により変換される直流の電圧を制御する制御回路とを備えたモータ駆動装置において、前記制御回路は、前記スイッチング電源回路の出力電圧と、前記インバータ回路の出力電圧との差分に応じた電圧を出力する減算回路と、前記スイッチング電源回路の出力電圧が前記インバータ回路の出力電圧より所定電圧高くなるように、前記減算回路の出力電圧に応じたデューティ比を有するスイッチング信号を前記スイッチング電源回路に与えるスイッチング信号出力回路と
、前記スイッチング電源回路の出力電圧の下限が制限されるように、前記制御回路の動作を制御する最小電圧制限回路とを備え
、前記スイッチング信号出力回路は、前記減算回路から出力される電圧が大きい程、スイッチング信号のデューティ比が小さくなるように構成されており、前記最小電圧制限回路は、前記スイッチング電源回路の出力電圧を分圧する最小電圧制限用の分圧抵抗と、該分圧抵抗によって分圧された電圧と、前記減算回路の出力端の電圧とを比較する第1比較器と、該第1比較器の出力端にカソードが接続された整流素子とを備え、該整流素子のアノードと、前記減算回路の出力端とが接続されている。
【0009】
本発明にあっては、減算回路は、スイッチング電源回路の出力電圧と、インバータ回路の出力電圧との差分に応じた電圧を出力し、スイッチング信号出力回路は、減算回路の出力電圧に応じたデューティ比を有するスイッチング信号を前記スイッチング素子に与える。スイッチング電源回路はスイッチング信号に従って動作し、直流電圧を出力する。スイッチング電源回路から出力される直流の電圧は、インバータ回路の出力電圧よりも所定電圧だけ高い電圧となる。
本発明にあっては、スイッチング電源回路からの出力電圧は所定の最小制限電圧以上となる。
本発明にあっては、スイッチング電源回路の出力電圧は分圧抵抗によって分圧され、分圧された電圧は第1比較器によって減算回路の出力電圧と比較される。前記分圧された電圧が減算回路の電圧よりも低くなると、電流が減算回路から第1比較回路に流れ込み、減算回路の出力端の電圧の上限が制限されることになる。前記分圧された電圧が減算回路の電圧よりも高くなると、前記第1比較器から電流が流れ出すように動作するのであるが、第1比較器の出力端には整流素子が逆接続されているため、第1比較器からの電流は制限される。従って、減算回路の出力電圧が、いわば支配的になり、スイッチング信号出力回路に入力されるようになる。
一方、スイッチング信号出力回路は、減算回路から出力される電圧が大きい程、スイッチング信号のデューティ比が小さくなるように構成されている。よって、スイッチング信号出力回路の出力電圧の下限が制限されることになる。
【0010】
本発明に係るモータ駆動装置は、前記減算回路は、前記スイッチング電源回路の出力電圧と、前記インバータ回路の出力電圧との差分に応じた差動増幅電圧を出力する差動増幅器を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、差動増幅器がスイッチング電源回路の出力電圧と、前記インバータ回路の出力電圧との差分に応じた差動増幅電圧を出力する。
【0016】
本発明に係るモータ駆動装置は、前記スイッチング電源回路の出力電圧の上限が制限されるように、前記制御回路の動作を制御する最大電圧制限回路を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、スイッチング電源回路からの出力電圧は所定の最大制限電圧以下となる。
【0018】
本発明に係るモータ駆動装置は、前記スイッチング信号出力回路は、前記減算回路から出力される電圧が大きい程、スイッチング信号のデューティ比が小さくなるように構成されており、前記最大電圧制限回路は、前記スイッチング電源回路の出力電圧を分圧する最大電圧制限用の分圧抵抗と、該分圧抵抗によって分圧された電圧と、前記減算回路の出力端の電圧とを比較する第2比較器と、該第2比較器の出力端にアノードが接続された整流素子とを備え、該整流素子のカソードと、前記減算回路の出力端とが接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、スイッチング電源回路の出力電圧は分圧抵抗によって分圧され、分圧された電圧は第2比較器によって減算回路の出力電圧と比較される。前記分圧された電圧が減算回路の電圧よりも高くなると、電流が第2比較器から減算回路に流れ出し、減算回路の出力端の電圧の下限が制限されることになる。前記分圧された電圧が減算回路の出力電圧よりも低くなると、減算回路から第2比較器に流れ込むように動作するのであるが、第2比較器の出力端には整流素子が順接続されているため、第2比較器からの電流は制限される。従って、減算回路の出力電圧が、いわば支配的になり、スイッチング信号出力回路に入力されるようになる。
一方、スイッチング信号出力回路は、減算回路から出力される電圧が大きい程、スイッチング信号のデューティ比が小さくなるように構成されている。よって、スイッチング信号出力回路の出力電圧の上限が制限されることになる。
【0020】
本発明に係るモータ駆動装置は、前記スイッチング信号出力回路は、前記減算回路の出力電圧と、所定の基準電圧との差分に応じた電圧を出力する増幅器と、三角波電圧又はのこぎり波電圧を発振する発振回路と、前記増幅器の出力電圧と、前記発振回路の出力電圧との比較結果に応じたスイッチング信号を出力する第3比較器とを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、増幅器は、減算回路の出力電圧と、所定の基準電圧との差分に応じた電圧を出力し、第3比較器は、増幅器の出力電圧と、発振回路から発振される三角波電圧又はのこぎり波電圧との比較結果に応じたスイッチング信号を出力する。第3比較器から出力される信号は、パルス信号であり、そのデューティ比は、減算回路の出力電圧に応じて増減する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上位側コントローラ等、外部からの制御信号が不要で、且つ従来技術に比べ簡単な回路構成で小型化でき、精密な電流制御が可能となり、モータを精密に制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本実施の形態に係るモータ駆動装置の一例を示したブロック図である。本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置は、交流電源1から供給された交流を直流に変換する安定化電源としてのスイッチング電源回路2と、該スイッチング電源回路2により変換された直流にてモータ4を駆動する電流アンプとしてのインバータ回路3と、該インバータ回路3をPWM制御するPWM制御回路3aと、スイッチング電源回路2により変換される直流の電圧を制御する制御回路5とを備える。
【0025】
図2は、本実施の形態に係るスイッチング電源回路2、インバータ回路3及びモータ4の回路図である。スイッチング電源回路2は、整流回路及び昇圧回路を有する。
整流回路は、直列接続された2組の整流ダイオードD21,D22と、整流ダイオードD23,D24とを並列接続してなるダイオードブリッジを構成しており、交流電源1から供給された交流を直流に整流して昇圧回路へ出力する。詳細には、整流ダイオードD21,D22は順接続されており、交流電源1の一の出力端が整流ダイオードD21のアノードに接続されている。整流ダイオードD23,24も順接続されており、交流電源1の他の出力端が整流ダイオードD23のアノードに接続されている。整流ダイオードD23のカソードは、整流ダイオードD21のカソードに接続され、整流ダイオードD24のアノードは,整流ダイオードD22のアノードに接続されている。
昇圧回路は、整流回路の正出力側に、直列的に接続されたインダクタンス素子L21及び整流ダイオードD25と、整流ダイオードD25の出力側に接続された充電及び平滑用のコンデンサC21と、インダクタンス素子L21の出力側を昇圧チョッパするスイッチング素子S21とを有する。詳細には、インダクタンス素子L21の一端は整流ダイオードD21,D23のカソードに接続され、他端は整流ダイオードD25のアノードに接続されている。整流ダイオードD25のカソードは、コンデンサC21の一端に接続され、コンデンサC21の他端は整流ダイオードD22,D24のアノードに接続されている。スイッチング素子S21の各端はインダクタンス素子L21の前記一端と、コンデンサC21の前記他端に接続されている。スイッチング素子S21を適宜のデューティ比でオンオフさせることにより、整流回路から出力される直流電圧の昇圧レベルを調節することができる。
【0026】
インバータ回路3は、モータ4をインバータ制御にて駆動する3相ブリッジのインバータ回路であり、6個のスイッチング素子S31,S32,S33,S34,S35,S36、例えばバイポーラパワートランジスタ、MOSFET、IGBT等のパワートランジスタを有する。インバータ回路3の正側入力端子には、スイッチング素子S31,S33,S35の一端が接続され、スイッチング素子S31,S33,S35の他端には、スイッチング素子S32,S34,S36の一端が接続されている。スイッチング素子S32,S34,S36の他端は、インバータ回路3の負側入力端子に接続されている。各スイッチング素子S31,S32,S33,S34,S35,S36には必要に応じてフライホイールダイオード(不図示)が設けられている。また、スイッチング素子S32,S34,S36の一端と、インバータ回路3の出力端子との間にはローパスフィルタ31が設けられている。スイッチング素子S31,S32,S33,S34,S35,S36のPWM信号入力端は、PWM制御回路3aに接続され、PWM制御回路3aは、各スイッチング素子S31,S32,S33,S34,S35,S36をオンオフすることで、モータ4の動作を制御する。スイッチング素子S31,S32,S33,S34,S35,S36の一端は、例えば、MOSFETのドレイン、バイポーラパワートランジスタ及びIGBTのコレクタであり、他端は、MOSFETのソース、バイポーラパワートランジスタ及びIGBTのエミッタである。またPWM信号入力端は、例えば、MOSFETのゲート、バイポーラパワートランジスタ及びIGBTのベースである。
【0027】
モータ4は、例えば、Y結線されたコイルを備えた3相ブラシレスモータであり、スイッチング素子S32,S34,S36の一端は、ローパスフィルタ31を介してモータ4を構成するコイルU,V,Wの端子に夫々接続されている。
本発明では、電源1は単相交流で説明したが、三相交流を電源として用いてもよい、その際は本発明のモータ駆動装置の回路構成を3相に合わせ適宜設定すれば良い。例えば、スイッチング電源回路2の整流回路部分を、三相交流を整流する整流回路部に置換すれば良い。
【0028】
図3は、制御回路5の一構成例を示したブロック図である。制御回路5は、スイッチング電源回路2の出力電圧Viと、インバータ回路3の出力電圧Voとの差分に応じた電圧を出力する減算回路8と、スイッチング電源回路2の出力電圧Viが前記インバータ回路3の出力電圧Voより所定電圧高くなるように、減算回路8の出力電圧に応じたデューティ比を有するスイッチング信号FBを前記スイッチング素子に与えるスイッチング信号出力回路9と、スイッチング電源回路2の出力電圧Viの下限を制限する最小電圧制限回路6と、スイッチング電源回路2の出力電圧Viの上限を制限する最大電圧制限回路7とを有する。
【0029】
図4は、最小電圧制限回路6、最大電圧制限回路7及び減算回路8の回路図である。
減算回路8は、スイッチング電源回路2の出力電圧Viと、インバータ回路3の出力電圧Voとの差分に応じた差動増幅電圧を出力する第1差動増幅器81を有する。第1差動増幅器81の非反転入力端子には、スイッチング電源回路2の出力電圧Viを分圧する分圧抵抗器R81,82が設けられており、分圧された電圧が非反転入力端子に入力するように構成されている。詳細には、分圧抵抗器R81の一端がスイッチング電源回路2の出力端子に接続され、分圧抵抗器R81の他端が分圧抵抗器R82の一端に接続されている。分圧抵抗器R82の前記一端は第1差動増幅器81の非反転入力端子に接続され、他端は接地されている。
第1差動増幅器81の反転入力端子には、抵抗器R83を介してインバータ回路3の出力電圧Voが入力するように構成されている。具体的には、インバータ回路3の各出力端子、言い換えるとモータ4を構成するコイルUVWの端子に夫々に整流ダイオードD1,D2,D3のアノードが接続され、各整流ダイオードD1,D2,D3のカソードが抵抗器R83の一端に接続されている。抵抗器R83の他端は第1差動増幅器81の反転入力端子に接続されている。整流ダイオードD1,D2,D3によって、U相、V相及びW相の交流の最大電圧が抵抗器R83を介して、第1差動増幅器81の反転入力端子に入力される。
また、第1差動増幅器81の出力端と、反転入力端子との間には負帰還抵抗器R84が設けられている。抵抗器R83及びR84の抵抗値は、それぞれ分圧抵抗器R81,R82の抵抗値と同じ値である。
第1差動増幅器81の出力端には増幅回路が設けられている。具体的には、第1差動増幅器81の出力端は、第2差動増幅器82の非反転入力端子に接続されている。第2差動増幅器82の反転入力端子には抵抗器R85の一端が接続され、抵抗器R85の他端は接地されている。また、第2差動増幅器82の出力端と、反転入力端子との間には負帰還抵抗器R86が設けられている。更に、第2差動増幅器82の出力端と、減算回路8の出力端との間に抵抗器R87が設けられている。
【0030】
このように構成された減算回路8によれば、スイッチング電源回路2の出力電圧Viと、インバータ回路3の出力電圧Voの差分に応じた電圧が出力される。第1差動増幅器81は、(Vi−Vo)×R84/R83[V]の電圧を出力し、第2差動増幅器82は、第1差動増幅器81の出力電圧を(R85+R86)/R85倍にして出力する。例えば、分圧抵抗器R81,R83の抵抗値が220kΩ、分圧抵抗器R82,R84の抵抗値が10kΩ、抵抗器R85の抵抗値が5kΩ、抵抗器R86の抵抗値が10KΩの場合、減算回路8の出力電圧は(Vi−Vo)×3/22[V]となる。後述するように、減算回路8の出力端の電圧は3[V]で安定化するように構成されているため、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは、Vo+22[V]となるように電圧制御される。つまり、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは、インバータ回路3の出力電圧Voよりも所定電圧だけ高くなるように電圧制御される。所定電圧は、インバータ回路3におけるPWM制御での電圧降下分を見込んで適宜決定される。
【0031】
最小電圧制限回路6は、スイッチング電源回路2の出力電圧Viを分圧する分圧抵抗器R61,R62と、分圧抵抗器R61,R62によって分圧された電圧を増幅する第1比較器61と、整流素子D61を介して設けられた負帰還抵抗器R63とを有する。詳細には、分圧抵抗器R61の一端がスイッチング電源回路2の出力端子に接続され、分圧抵抗器R61の他端が分圧抵抗器R62の一端に接続されている。分圧抵抗器R62の前記一端は第1比較器61の非反転入力端子に接続され、他端は接地されている。整流素子D61のカソードは第1比較器61の出力端に接続され、整流素子D61のアノードと、第1比較器61の反転入力端子との間には負帰還抵抗器R63が設けられている。
【0032】
このように構成された最小電圧制限回路6によれば、分圧抵抗R61,R62によって分圧されたスイッチング電源回路2の電圧が、減算回路の出力電圧よりも低くなった場合、電流が最小電圧制限回路6に流れ込むため、出力電圧Vi、Voの値に拘わらず減算回路8の出力電圧は基準電圧に保持される。基準電圧については後述する。スイッチング電源回路2の出力電圧Viの下限が制限された状態で、インバータ回路3の出力電圧Voが降下した場合、出力電圧Viと、出力電圧Voとの差分が大きくなり、減算回路8から電流が流れ出し、該減算回路8の出力電圧が上昇する方向に動作するが、最小電圧制限回路6に電流が流れ込むため、減算回路8の出力電圧が前記基準電圧に保持される。従って、スイッチング信号のデューティ比も出力電圧Voの降下に伴って小さくなることは無く、スイッチング電源回路2の出力電圧の下限が制限される。
例えば、分圧抵抗器R61、R62の抵抗値がそれぞれ300kΩ、10kΩである場合、第1比較器61は、スイッチング電源回路2の出力電圧ViのR62/(R61+R62)=1/31倍の電圧と、減算回路の出力電圧とを比較する。後述するように、減算回路8の出力端の電圧は基準電圧の約3[V]で安定化するように構成されているため、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは、3×31=93[V]未満にならないように電圧制御される。
なお、スイッチング電源回路2の出力電圧Viが93[V]以上になった場合、第1比較器61から電流が流れ出すように動作するのであるが、第1比較器61の出力端には整流素子D61が逆接続されているため、第1比較器61からの電流は制限される。従って、減算回路8の出力電圧が、いわば支配的になり、スイッチング信号出力回路9に入力されるようになる。
【0033】
最大電圧制限回路7は、スイッチング電源回路2の出力電圧Viを分圧する分圧抵抗器R71,R72と、分圧抵抗器R71,R72によって分圧された電圧を増幅する第2比較器71と、整流素子D71を介して設けられた負帰還抵抗器R73とを有する。詳細には、分圧抵抗器R71の一端がスイッチング電源回路2の出力端子に接続され、分圧抵抗器R71の他端が分圧抵抗器R72の一端に接続されている。分圧抵抗器R72の前記一端は第2比較器71の非反転入力端子に接続され、他端は接地されている。整流素子D71のアノードは第2比較器71の出力端に接続され、整流素子D71のカソードと、第2比較器71の反転入力端子との間には負帰還抵抗器R73が設けられている。
【0034】
このように構成された最大電圧制限回路7によれば、分圧抵抗R71,R72によって分圧されたスイッチング電源回路2の電圧が、減算回路8の基準電圧よりも高くなった場合、電流が最大電圧制限回路7から流れ出し、出力電圧Vi、Voの値に拘わらず減算回路8の出力電圧は基準電圧に保持される。スイッチング電源回路2の出力電圧Viの上限が制限された状態で、インバータ回路3の出力電圧Voが上昇した場合、出力電圧Viと、出力電圧Voとの差分が小さくなり、減算回路8に電流が流れ込み、該減算回路8の出力電圧が低下する方向に動作するが、最大電圧制限回路7から電流が減算回路8へ流れ出すため、減算回路8の出力電圧が前記基準電圧に保持される。従って、スイッチング信号のデューティ比も出力電圧Voの上昇に伴って大きくなることは無く、スイッチング電源回路2の出力電圧の上限が制限される。
例えば、分圧抵抗器R71、R72の抵抗値がそれぞれ980kΩ、10kΩである場合、第2比較器71は、スイッチング電源回路2の出力電圧ViのR72/(R71+R72)=1/99倍の電圧と、減算回路8の出力電圧とを比較する。後述するように、減算回路8の出力端の電圧は約3[V]で安定化するように構成されているため、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは、3×99=297[V]以上にならないように電圧制御される。
なお、スイッチング電源回路2の出力電圧Viが297[V]未満になった場合、第2比較器71に電流が流れ込むように動作するのであるが、第2比較器71の出力端には整流素子D71が順接続されているため、第2比較器71への電流は制限される。従って、減算回路8の出力電圧が、いわば支配的になり、スイッチング信号出力回路9に入力されるようになる。
【0035】
図5は、スイッチング信号出力回路9の回路図である。スイッチング信号出力回路9は、減算回路8の出力電圧と、所定の基準電圧との差分に応じた電圧を出力するスイッチング用増幅器92と、三角波電圧を発振する三角波発振回路94と、スイッチング用増幅器92の出力電圧と、三角波発振回路94の出力電圧との比較結果に応じたパルス状のスイッチング信号を出力する第3比較器93とを有する。詳細には、スイッチング用増幅器92の非反転入力端子には基準電圧の正極が接続され、反転入力端子には減算回路8の接続端Vcが接続されている。また、スイッチング用増幅器92の出力端と、反転入力端子との間には、負帰還抵抗器R91が設けられている。また負帰還抵抗器R91の両端には、直列接続されたコンデンサC91及び抵抗器R92が並列的に接続されている。コンデンサC91及び抵抗器R92によってノイズが除去される。第3比較器93の非反転入力端子には、スイッチング用増幅器92の出力端が接続され、反転入力端子には、三角波発振回路94が接続されている。
なお、ここでは、三角波電圧を発振する三角波発振回路94を例に説明したが、のこぎり波を発振する、のこぎり波発振回路を用いて、スイッチング信号出力回路9を構成しても良い。
【0036】
このように構成されたスイッチング信号出力回路9によれば、減算回路8の出力電圧から基準電圧を減じた差分電圧が、大きくなった場合、第3比較器93の非反転入力端子に入力される電圧が低下し、第3比較器93から出力されるスイッチング信号のデューティ比が小さくなる。つまり、スイッチング素子S21のオン期間が短くなる。逆に、減算回路8の出力電圧から基準電圧を減じた差分電圧が、小さくなった場合、第3比較器93の非反転入力端子に入力される電圧が上昇し、第3比較器93から出力されるスイッチング信号のデューティ比が大きくなる。つまり、スイッチング素子S21のオン期間が長くなる。
スイッチング用増幅器92は増幅率が大きいため、このようなスイッチイング信号出力回路9の動作により、スイッチング用増幅器92の反転入力端子の電圧が基準電圧に等しくなるように保持される。また、減算回路8の出力電圧も基準電圧と等しくなるように保持される。
【0037】
図6は、スイッチング電源回路2及びインバータ回路3の出力電圧の関係を示したグラフである。横軸は時間、縦軸は電圧であり、インバータ回路3の出力電圧が時間と共に上昇した場合のスイッチング電源回路2の出力電圧Viの時間変化を示している。スイッチング電源回路2の出力電圧Viを実線、インバータ回路3の出力電圧Voを破線で示している。以上のように構成された制御回路5による電圧制御によって、
図6に示すように、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは、インバータ回路3の出力電圧Voに所定電圧を加算した電圧になるように制御され、かつ、出力電圧は所定最小制限電圧以上、所定最大制限電圧以下の範囲で制御される。具体的な制御動作は以下の通りである。
減算回路8の出力電圧は、スイッチング電源回路2の出力電圧Viと、インバータ回路3の出力電圧Voに所定電圧、例えば22[V]を加算した電圧とが等しい場合、基準電圧に等しくなる。スイッチング電源回路2の出力電圧Viと、インバータ回路3の出力電圧Voとの差分電圧が所定電圧よりも高くなった場合、減算回路8の出力電圧は基準電圧より高くなる。この場合、スイッチング信号のデューティ比が小さくなり、スイッチング電源回路2の出力電圧が低くなる方向に制御される。
逆に、スイッチング電源回路2の出力電圧Viと、インバータ回路3の出力電圧Voとの差分電圧が所定電圧より低くなった場合、減算回路8の出力電圧から基準電圧より低くなる。この場合、スイッチング信号のデューティ比が大きくなり、スイッチング電源回路2の出力電圧が高くなる方向に制御される。
このように、減算回路8及びスイッチング信号出力回路9の制御により、減算回路8の出力電圧は基準電圧に保持されており、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは、インバータ回路3の出力電圧Voの変動に伴って、出力電圧Vi,Voの差分を一定に保持したまま変動する。
ここで、スイッチング電源回路2の出力電圧Viが、所定の最大制限電圧よりも高くなった場合、最大電圧制限回路7から電流が流れ出し、出力電圧Vi,Voの差分に拘わらず、減算回路8の出力電圧が所定電圧、即ち基準電圧に保持されるため、これ以上デューティ比は大きくならず、スイッチング電源回路2の出力電圧Viの上限が制限される。
逆に、スイッチング電源回路2の出力電圧Viが、所定の最小制限電圧よりも低くなった場合、最小電圧制限回路6に電流が流れ込み、出力電圧Vi,Voの差分に拘わらず、減算回路8の出力電圧が所定電圧、即ち基準電圧に保持されるため、これ以上デューティ比は小さくならず、スイッチング電源回路2の出力電圧Viの下限が制限される。
【0038】
図7は、PWM信号のデューティ比と、スイッチング電源回路2及びインバータ回路3の出力電圧の時間変化を示したグラフである。横軸は時間、縦軸は電圧である。
時間t0〜t1の期間は、モータ4が停止している期間であり、PWM制御回路3aから出力されるPWM信号のデューティ比DTは0である。該期間においては、制御回路5からスイッチング電源回路2へ出力されるスイッチング信号のデューティ比は最小になり、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは最小制限電圧となる。
時間t1〜t2の期間は、モータ4が加速動作している期間であり、PWM制御回路3aから出力されるPWM信号のデューティ比DTは0%から80%に増加し、インバータ回路3の出力電圧Voも増加している。出力電圧Voに所定電圧を加算した電圧は、最小制限電圧未満であるため、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは最小制限電圧のままである。
時間t2〜t3期間においては、インバータ回路3の出力電圧Voが更に増加し、出力電圧Voに所定電圧を加算した電圧が最小制限電圧を超え始める。該期間においては、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは、インバータ回路3の出力電圧Voに所定電圧を加算した電圧になるように制御され、インバータ回路3の出力電圧Voの増加に伴って、出力電圧Viが上昇する。
時間t3〜t4の期間は、PWM制御回路3aから出力されるPWM信号のデューティ比DTは80%でモータ4が減速し始める期間である。該期間においては、必要な電力が徐々に低下するため、インバータ回路3の出力電圧Voが低下し始める。該期間においても、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは、インバータ回路3の出力電圧Voに所定電圧を加算した電圧になるように制御され、インバータ回路3の出力電圧Voの低下に伴って、出力電圧Viが低下している。
期間t4〜t5においては、PWM制御回路3aから出力されるPWM信号のデューティ比DTが80%から0%に減少し、インバータ回路3の出力電圧Voも減少している。出力電圧Voに所定電圧を加算した電圧は、最小制限電圧未満であるため、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは最小制限電圧に保持される。
期間t5以降の期間はモータ4が停止している期間であり、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは最小制限電圧に保持される。
このようにスイッチング電源回路2の出力電圧Viは、最小制限電圧と、最大制限電圧との間で、必要に応じて動的に増減する。具体的には、モータ4が停止している場合又は等速運動している場合、スイッチング電源回路2の出力電圧Viは低い電圧に制御されるため、モータ4のPWM信号のオン期間を比較的大きく保ったまま、モータ4の精密な通電制御が可能になる。また、加減速時には、スイッチング電源回路2の出力電圧Viが上昇するため、モータ4の加減速に必要な電力を供給することができる。
【0039】
このように本実施の形態にあっては、上位側コントローラ等、外部からの制御信号が不要で、且つ従来技術に比べ簡単な回路構成で小型化でき、精密な電流制御が可能となり、モータ4を精密に制御できる。
【0040】
また、各種検出信号、速度指令、記憶装置の情報を用いたCPUによる複雑な各種演算が不要であるため、回路構成が簡単で安定した電圧制御が可能になる。
【0041】
なお、本実施の形態の回路構成は一例であり、同様の電圧制御が可能な範囲で適宜の設計変更が可能である。例えば、制御対象の電圧によっては、減算回路8の第2差動増幅器82を廃することも可能である。また、減算回路の出力電圧の高低と、スイッチング信号出力回路から出力されるスイッチング信号のデューティ比の大小の関係が逆になるように構成しても良い。
【0042】
(変形例1)
図8は、変形例1に係るスイッチング電源回路102の回路図である。変形例1に係るモータ駆動装置は、スイッチング電源回路102の昇圧回路部分の構成のみが異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。変形例1に係るスイッチング電源回路102は、実施の形態と同様の整流回路と、昇圧回路を構成するインダクタンス素子L21、整流ダイオードD25、コンデンサC21及びスイッチング素子S21とを有する。変形例1においては、インダクタンス素子L21の出力側である他端には、コンデンサC22の一端が接続され、コンデンサC22の他端が整流ダイオードD25のアノードに接続されている。また、コンデンサC22の他端及び整流ダイオードD25のアノードにはインダクタンス素子L22の一端が接続され、インダクタンス素子L22の他端が接地されている。
【0043】
変形例1にあっては、スイッチング電源回路102の出力電圧を、電源1の電圧に拘わらず昇圧及び降圧することができる。
【0044】
(変形例2)
図9は、変形例2に係るモータ駆動装置のブロック図、
図10は、変形例2に係るスイッチング電源回路2、インバータ回路203及びモータ204の回路図である。変形例2に係るモータ駆動装置は、インバータ回路203及びモータ204の構成のみが異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。変形例2に係るモータ駆動装置は、単相のモータ204を駆動するインバータ回路203を備える。
インバータ回路203は、4個のスイッチング素子S231,S232,S233,S234、例えばバイポーラパワートランジスタ、MOSFET、IGBT等のパワートランジスタを有する。インバータ回路203の正側入力端子には、スイッチング素子S231,S233の一端が接続され、スイッチング素子S231,S233の他端には、スイッチング素子S232,S234の一端が接続されている。スイッチング素子S232,S234の他端は、インバータ回路203の負側入力端子に接続されている。各スイッチング素子S231,S232,S233,S234にはフライホイールダイオード(不図示)が設けられている。また、スイッチング素子S232,S234の一端と、インバータ回路203の出力端子との間にはローパスフィルタ231が設けられている。スイッチング素子S231,S232,S233,S234のPWM信号入力端は、PWM制御回路3aに接続され、PWM制御回路3aは、各スイッチング素子S231,S232,S233,S234をオンオフすることで、モータ204の動作を制御する。
また、制御回路5の第1差動増幅器81の反転入力端子には、抵抗器R83を介してインバータ回路203の出力電圧Voが入力するように構成されている。具体的には、インバータ回路203の各出力端子に夫々に整流ダイオードD1,D2のアノードが接続され、各整流ダイオードD1,D2のカソードが、制限回路を構成する抵抗器R83の一端に接続されている。
【0045】
モータ204は、単相モータであり、スイッチング素子S232,S234の一端は、ローパスフィルタ231を介してモータ204を構成するコイルの端子に夫々接続されている。
【0046】
変形例2にあっても、実施の形態と同様の作用効果を奏し、精密な電流制御が可能となり、モータ204を精密に制御できる。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。