特許第5987646号(P5987646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5987646
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】有機物含有水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/76 20060101AFI20160825BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20160825BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20160825BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20160825BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20160825BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20160825BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20160825BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20160825BHJP
   C02F 9/08 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C02F1/76 Z
   C02F1/44 F
   B01D61/14 500
   B01D61/04
   B01D61/22
   B01D61/58
   C02F1/72 Z
   C02F3/12 S
   C02F9/08
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-246230(P2012-246230)
(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-94335(P2014-94335A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】中原 禎仁
(72)【発明者】
【氏名】奥村 敬
(72)【発明者】
【氏名】小田 康雄
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−240902(JP,A)
【文献】 特開昭56−084688(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/109556(WO,A1)
【文献】 特開昭59−036592(JP,A)
【文献】 特開2012−139659(JP,A)
【文献】 特開平08−071593(JP,A)
【文献】 特開2002−018455(JP,A)
【文献】 特開昭59−162995(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02351711(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/76− 9/14
B01D 61/00−17/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有水を生物処理し、分離膜で膜処理する工程と、
前記膜処理にて前記分離膜を透過した透過水に、液体または固体の酸化剤を添加する工程と、
前記酸化剤が添加された透過水を、マンガンを含有する金属系固体触媒を含む固体粒子が充填された容器に通液する工程と、
前記容器から排出された透過水を、逆浸透膜でろ過する工程と、を含み、
前記容器から排出される透過水中の前記酸化剤の濃度が0.01mg/L以下である有機物含有水の処理方法。
【請求項2】
前記酸化剤が塩素系酸化剤である、請求項1に記載の有機物含有水の処理方法。
【請求項3】
前記膜処理を停止し、前記分離膜を、液体または固体の酸化剤を含有する洗浄液で洗浄する工程を含み、
前記透過水への液体または固体の酸化剤の少なくとも一部の添加を、前記洗浄液を前記透過水に添加することにより行う、請求項1または2に記載の有機物含有水の処理方法。
【請求項4】
前記膜処理にて前記分離膜を透過した透過水のCODMn値を測定する工程と、
前記CODMn値が変動したときに、該CODMn値に応じて、前記透過水の前記容器内での通液量を変動させる工程と、を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機物含有水の処理方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有水の処理方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水、生活排水などの有機物含有排水の処理方法として、活性汚泥中の微生物の作用により汚濁物質を生物分解する生物処理と、分離膜により固液分離する膜処理とを組み合わせて、浮遊物のない処理水を得る膜分離活性汚泥処理(MBR)法がある。
排水のCOD(化学的酸素要求量)対策は急務である。MBRは、殆どの場合には有効な手段だが、CODの低減、特に難分解性有機物を含む排水のCOD低減については、その効果に限界がある。
【0003】
生物処理の前段に、フェントン酸化法を適用する例が過去から多く見られる。しかしここで加える触媒が余剰汚泥の量を大幅に増加させ、余剰汚泥が排出される際の処理費用が嵩む問題点があった。
生物処理やMBRの後段に、有機物を化学的に酸化分解する酸化処理を行う方法も検討されてきた。生物処理の後段で実施する酸化処理としては、オゾンと紫外線または過酸化水素とを併用する方法(特許文献1〜4)、塩素系酸化剤の存在下で過酸化ニッケル担持触媒と接触させる方法(特許文献5)、フェントン酸化法(特許文献6)等が検討されている。生物処理に関する記載はないが、被処理水に塩素系酸化剤を添加し、マンガン系ろ過材に通水して有機物を接触酸化分解してCODを除去する方法も検討されている(特許文献7〜8)。
【0004】
分離膜で膜処理された被処理水(分離膜を透過した透過水)をさらに逆浸透膜やナノろ過膜で膜処理する方法も検討されている。逆浸透膜の透過性や分離性能の成果を防止するために、逆浸透膜による膜処理の前段に、殺菌処理として、紫外線処理を行い、さらに必要に応じて、重金属イオンと還元剤とを組み合わせた処理、オゾン処理、過酸化水素処理、塩素処理、光酸化触媒処理等を行う方法(特許文献9)、逆浸透膜やナノろ過膜による膜処理の後段に、膜を透過しなかった濃縮水に対し、オゾン処理、紫外線処理、過酸化水素処理、触媒処理の少なくとも2つを組み合わせた促進酸化処理を行う方法(特許文献10)等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−76295号公報
【特許文献2】特開平11−33581号公報
【特許文献3】特開2000−202476号公報
【特許文献4】特開2000−126787号公報
【特許文献5】特開2004−358421号公報
【特許文献6】特開2005−58854号公報
【特許文献7】国際公開第2010/109556号
【特許文献8】国際公開第2010/109838号
【特許文献9】特開2007−69204号公報
【特許文献10】特開2002−306930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の処理方法は、有機物含有水、特に難分解性有機物を含む有機物含有水のCODを充分に低減しようとすると、コストがかかる問題がある。また、COD低減効果にも未だ改善の余地がある。
たとえば、難分解性有機物を含む有機物含有水の場合、上述したように、生物処理ではCODを充分に低減することは難しい。
生物処理と酸化処理とを組み合わせる方法もあるが、従来の方法は、充分な効果を得ようとするとコストがかかる。
たとえば生物処理と組み合わせる酸化処理としては、難分解性有機物に対する分解性に優れることから、特許文献1〜4に記載のように、オゾン処理、またはオゾン処理と紫外線照射または過酸化水素添加とを組み合わせた促進酸化処理が主に用いられる。オゾン処理は、被処理水にオゾンを注入し、オゾンの気泡と有機物の接触により有機物を分解する方法である。オゾン処理と紫外線照射または過酸化水素添加とを組み合わせた促進酸化処理では、ヒドロキシラジカルが発生し、より優れた酸化力が発揮される。しかし、オゾン処理は、オゾン発生装置が高価である問題点がある。また、被処理水中での気泡の浮上時間が限られており、その間に確実な接触を安定的に行うことが困難である場合がある。オゾン処理と紫外線照射または過酸化水素添加とを組み合わせた促進酸化処理でも同様の問題がある。
紫外線を照射する方法では、均質な処理がなされるが、ランニングコストが高く、特に排水処理における大型処理場への適用は困難である。
酸化剤等の酸化剤と触媒を併用すると酸化効果は向上するが、それでも難分解性有機物の分解性が不充分であったり、触媒が高価でコストがかかることがある。
したがって、オゾンや紫外線を用いなくても、有機物含有水が難分解性有機物を含む場合でも、オゾンや紫外線、高価な触媒を用いることなく、CODを充分に低減でき、コストの低減が可能な処理方法が求められる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、低コストで優れたCOD低減効果が得られる有機物含有水の処理方法及び処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
[1]有機物含有水を生物処理し、分離膜で膜処理する工程と、
前記膜処理にて前記分離膜を透過した透過水に、液体または固体の酸化剤を添加する工程と、
前記酸化剤が添加された透過水を、マンガンを含有する金属系固体触媒を含む固体粒子が充填された容器に通液する工程と、
前記容器から排出された透過水を、逆浸透膜でろ過する工程と、を含み、
前記容器から排出される透過水中の前記酸化剤の濃度が0.01mg/L以下であるを含む有機物含有水の処理方法。
[2]前記酸化剤が塩素系酸化剤である、[1]に記載の有機物含有水の処理方法。
]前記膜処理を停止し、前記分離膜を、液体または固体の酸化剤を含有する洗浄液で洗浄する工程を含み、
前記透過水への液体または固体の酸化剤の少なくとも一部の添加を、前記洗浄液を前記透過水に添加することにより行う、[1]または[2]に記載の有機物含有水の処理方法。
[4]前記膜処理にて前記分離膜を透過した透過水のCODMn値を測定する工程と、
前記CODMn値が変動したときに、該CODMn値に応じて、前記透過水の前記容器内での通液量を変動させる工程と、を含む、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機物含有水の処理方法
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低コストで優れたCOD低減効果が得られる有機物含有水の処理方法及び処理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態で用いる処理システム1の概略構成図である。
図2】本発明の第二実施形態で用いる処理システム2の概略構成図である。
図3】本発明の第三実施形態で用いる処理システム3の概略構成図である。
図4】本発明の第四実施形態で用いる処理システム4の概略構成図である。
図5】本発明の第五実施形態で用いる処理システム5の概略構成図である。
図6】本発明の第六実施形態で用いる処理システム6の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の有機物含有水の処理方法について、実施形態例を示して説明する。ただし本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態の有機物含有水の処理方法に用いる処理システム1の概略構成図である。処理システム1は、
有機物含有水を生物処理し、分離膜で膜処理(固液分離)する膜分離活性汚泥処理装置10と、
膜分離活性汚泥処理装置10から排出された処理水(分離膜を透過した透過水)に、液体または固体の酸化剤を添加する酸化剤添加手段30と、
固体粒子が充填された通液塔(容器)50と、
を備える。
【0013】
[膜分離活性汚泥処理装置10]
膜分離活性汚泥処理装置10は、生物処理槽11と、分離膜を備える膜モジュール12と、を備える。
生物処理槽11は、有機物含有水を、活性汚泥の作用により生物処理するものである。
生物処理槽11には、有機物含有水を生物処理槽11に供給する流路21が接続されている。
膜モジュール12は、生物処理槽11内に配置されている。膜モジュール12では、生物処理された有機物含有水が分離膜で膜処理される。
膜モジュール12には流路22が接続され、流路22に吸引ポンプ23が設置されている。これにより、膜モジュール12の分離膜を透過した透過水を膜分離活性汚泥処理装置10から排出できるようになっている。
【0014】
膜モジュール12としては、公知の分離膜(ろ過膜)を備えた公知の膜モジュールを用いることができる。
分離膜の種類としては、精密ろ過膜(MF膜)または限外ろ過膜(UF膜)が好ましい。
分離膜の形状としては、中空糸膜、平膜、管状膜、袋状膜等が挙げられる。これらのうち、容積ベースで比較した場合に膜面積の高度集積が可能であることから、中空糸膜が好ましい。
分離膜の材質としては、有機材料(セルロース、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等)、金属(ステンレス等)、無機材料(セラミック等)が挙げられる。分離膜の材質は、有機物含有水の性状に応じて適宜選択する。
分離膜の孔径は、処理の目的に応じて適宜選択すればよい。膜分離活性汚泥法において、分離膜の孔径は、0.001〜3μmが好ましい。孔径が0.001μm未満では、膜の抵抗が大きくなる。孔径が3μmを超えると、活性汚泥を完全に分離することができないため、透過水の水質が悪化するおそれがある。分離膜の孔径は、精密ろ過膜の範囲とされる0.04〜1.0μmがより好ましい。
生物処理槽11内に設置される膜モジュール12は1つでも複数でもよい。
【0015】
膜分離活性汚泥処理装置10は、散気管13をさらに備える。
散気管13は、生物処理槽11内の、膜モジュール12の下方に設置されている。
散気管13には、散気管13にエアを供給する導入管14が接続され、導入管14にブロワ15が設置されている。これにより、膜モジュール12をエアスクラビング(バブリング)できるようになっている。
【0016】
[酸化剤添加手段30]
酸化剤添加手段30は、液体または固体の酸化剤を貯留する酸化剤貯留槽31と、酸化剤貯留槽31から酸化剤を排出する供給路32と、供給路32に設置された吸引ポンプ33とを備える。供給路32の下流側末端は、吸引ポンプ23と通液塔50との間の位置で流路22に接続されている。
【0017】
液体または固体の酸化剤としては、透過水に溶解または分散して有機物を酸化分解し得る酸化作用を発揮するものであればよい。たとえば次亜塩素酸、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等の塩素系酸化剤、過酸化水素、等が挙げられる。これらのなかでも、コスト、取扱い性等の点で、塩素系酸化剤が好ましく、次亜塩素酸塩が特に好ましい。
酸化剤が液体である場合は、酸化剤そのものを酸化剤貯留槽31に貯留してもよく、酸化剤に水等を添加して希釈した希釈液を酸化剤貯留槽31に貯留してもよい。酸化剤が固体である場合は、酸化剤に水等を添加して希釈した希釈液を酸化剤貯留槽31に貯留することが好ましい。ただし本発明はこれに限定されるものではなく、酸化剤が固体である場合は、酸化剤添加手段30としてホッパー等の紛体供給装置を用い、酸化剤を直接透過水に添加してもよい。
【0018】
[通液塔50]
通液塔50は、直胴部と、直胴部の上端を塞ぐ半球状の上側ドーム部と、直胴部の下端を塞ぐ半球状の下側ドーム部とから構成される。直胴部に固体粒子が充填され、固体粒子層51が形成されている。下側ドーム部に流路22が接続され、上側ドーム部に流路24が接続されている。
【0019】
固体粒子としては、通液塔50を通液する透過水に溶解しないものが用いられる。
固体粒子は、マンガンを含有する金属系固体触媒(以下、マンガン系触媒ともいう。)を含む。
本発明で用いることができるマンガン系触媒の触媒機能上の主成分は、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物やマンガン錯体等のマンガン化合物である。
マンガン触媒は均一系不均一系のいずれでもよく、触媒の担持体として二酸化ケイ素や活性炭を含んでいてもよい。また固体粒子全体としてみた場合、担持体をはじめとするマンガン化合物外以外の成分が組成比上の主成分であってもよい。
マンガン系触媒としては、酸化マンガン、少なくともマンガンを含む2種以上の金属の複合酸化物等の活性成分からなる触媒粒子、粒子状の担体の表面に前記活性成分を担持させた触媒担持粒子等が挙げられる。
有機物含有水と接する粒子表面に活性成分が存在していれば充分な触媒作用が得られることから、コストを考慮すると、マンガン系触媒としては、触媒担持粒子が好ましい。
【0020】
触媒担持粒子としては、二酸化マンガンの結晶を担体の表面に担持させたものが好ましい。特に、以下の組成と理化学物性とを有するものが好ましい。このような触媒担持粒子としては、たとえば国際公開第2010/109556号、国際公開第2010/109838号等に開示されるマンガン系ろ過材が挙げられる。
[触媒担持粒子の組成]SiO含量:30.0〜75.0質量%、Al含量:1.0〜20.0質量%、MnO含量:3.0〜50.0質量%、KO含量:0.0〜3.0質量%、NaO含量:0.0〜3.0質量%、その他(不純物等)の含量:0.0〜5.0質量%。
[触媒担持粒子の理化学物性]粒度:有効径(ES)が0.35〜1.0mmで均等係数(UC)が1.5以下、密度:2.5g/cm前後、嵩密度:1.2g/cm前後、磨滅率:2.8%以下。なお嵩密度は、例えばJIS Z8901に定められた方法に準拠する方法で求めることができる。
【0021】
固体粒子層51は、固体粒子として、マンガン系触媒以外の固体粒子を含んでもよい。マンガン系触媒を用いることの効果を考慮すると、固体粒子全体に対するマンガン系触媒の割合は、5質量%以上が好ましく、30質量%以上が好ましく、100質量%が特に好ましい。
マンガン系触媒以外の固体粒子としては、マンガン系触媒以外の金属系触媒(たとえばニッケル錯体粒子等のニッケル系触媒、銀系触媒、パラジウム系触媒等)、触媒活性を有さない固体粒子(例えば活性炭等)等が挙げられる。
【0022】
固体粒子層51の嵩密度は、0.8〜2.0g/cmが好ましく、1.0〜1.5g/cmがより好ましい。固体粒子層51の嵩密度が0.8g/cm未満であると、粉体として軽量で取り扱い性が良好である。2.0g/cmを超えると、固体粒子が密に詰まりすぎることにより、通過流速の低下につながるおそれがある。なお固体粒子層51の嵩密度は、JIS Z8901に定められた方法に準拠する方法等の公知の方法で求めることができる。
【0023】
通液塔50の下部には流路22が接続されている。
本実施形態においては、膜モジュール12から透過水を排出する排出手段である透過水流路22および吸引ポンプ23が、膜モジュール12から排出された透過水を通液塔50に通液する通液手段としても機能する。吸引ポンプ23によって膜モジュール12から排出された透過水は、酸化剤添加手段30によって液体または固体の酸化剤が添加された後、通液塔50の下部から通液塔50内に導入され、固体粒子層51を通過し、通液塔50の上部に接続された流路24から排出されるようになっている。
【0024】
図1に示す処理システム1を用いた有機物含有水の処理方法は、
有機物含有水を、膜分離活性汚泥処理装置10の生物処理槽11で生物処理し、膜モジュール13で膜処理(固液分離)する工程(以下、膜分離活性汚泥処理工程)と、
膜モジュール13の分離膜を透過した透過水に、酸化剤添加手段30によって液体または固体の酸化剤を添加する工程(以下、酸化剤添加工程)と、
前記酸化剤が添加された透過水を、固体粒子が充填された通液塔50に通液する工程(以下、固液接触工程)と、
を含む。
【0025】
[膜分離活性汚泥処理工程]
膜分離活性汚泥処理(MBR)工程では、まず、有機物含有水を、流路21を経て膜分離活性汚泥処理装置10の生物処理槽11に供給して生物処理(活性汚泥処理)を行う。生物処理によって、有機物含有水中の比較的分解しやすい有機物を分解することができる。
有機物含有水としては、有機物を含有するものであれば特に限定されず、たとえば工場排水(化学、製薬、製紙、飲料、製油、半導体、電子等)、畜産排水等の排水が挙げられる。
有機物含有水を膜分離活性汚泥処理装置10に供給する前にあらかじめ、有機物含有水の粗大な浮遊物質、土砂等を除去したり、pHを調整したり、希釈したりしてもよい。
生物処理は公知の方法により実施できる。
【0026】
生物処理槽11内で生物処理された有機物含有水は、膜モジュール12で膜処理される。具体的には、吸引ポンプ23を作動させて膜モジュール12内を減圧することによって、生物処理された有機物含有水が、膜モジュール12の分離膜を透過する液体分(透過水)と、分離膜を透過しない固体分(活性汚泥等)とに分離される。
膜処理の際、ブロア15を作動させて散気管13からエアを供給することが好ましい。これにより、膜モジュール12の分離膜の表面を洗浄しながら膜処理を行うことができ、処理効率が向上する。
膜処理条件は、排水等を処理する際の一般的な膜処理条件(たとえばモジュールのエレメント部投影面積当たり、膜フラックス0.4〜0.5m/m/day、エア量100〜150Nm(m・hr))と同様であってよい。
【0027】
膜モジュール12の分離膜を透過した透過水は、流路22を介して膜分離活性汚泥処理装置10から排出される。
【0028】
[酸化剤添加工程]
酸化剤添加工程では、膜モジュール13の分離膜を透過した透過水に、酸化剤添加手段30によって液体または固体の酸化剤を添加する。具体的には、吸引ポンプ33を作動させることによって、酸化剤貯留槽31内の酸化剤が、供給路32を介して、流路22を流通する透過水中に供給され、混合されつつ通液塔50に供給される。
液体または固体の酸化剤についての説明は前記と同様である。
【0029】
液体または固体の酸化剤の添加量は、添加後の透過水中の酸化剤の濃度が0.1〜5.0mg/Lの範囲内となる量が好ましく、0.5〜3.0mg/Lの範囲内となる量がより好ましい。透過水中の酸化剤の濃度が0.1mg/L以上であると、有機物の酸化分解を充分に行うことができる。5.0mg/L以下であると、酸化剤のほぼ全量が有機物の酸化分解により消費され、通液塔50から排出された透過水が、酸化剤がほとんど残留していないものとなる。酸化剤の使用量が過剰とならず、コストも低減できる。
【0030】
[固液接触工程]
酸化剤添加手段30によって酸化剤が添加され、通液塔50の下部に供給された透過水は、通液塔50内を上昇し、マンガン系触媒を含む固体粒子層51を通過し、通液塔50の上部から流路24を介して排出される。
透過水の通液塔50への通液条件としては、特に限定されないが、空間速度SV(Space Velocity)が0.5〜50h−1であることが好ましく、1〜10h−1であることがより好ましく、3〜20h−1であることがさらに好ましく、5〜7h−1であることが特に好ましい。
SVは、通液塔50を透過する透過水の流速[m/h]を、通液塔50に充填された固体粒子の容積(固体粒子層51の容積)[m]で除した値である。
通液塔50への通液時の透過水の温度は、特に限定されず、常温(たとえば20℃程度)等であってよい。
【0031】
以上説明した処理方法においては、MBR工程の後段に酸化剤添加工程および固液接触工程を行うことで、MBR工程で得られた透過水中に含まれる有機物を効果的に酸化分解できる。
つまり、MBR工程ではそもそも、膜処理を行わない場合に比べて、高MLSS(活性汚泥浮遊物質濃度)が実現できるため、有機物の分解性が高く、比較的分解しやすい有機物はこの生物処理の段階で分解される。更には膜処理で余分なSS(浮遊物質)がカットされる。そのため、MBR工程の後段の酸化処理では、透過水中に残留する比較的分解しにくい有機物のみをアタックすればよいので選択性が高く効率が良い。
また、通液塔50に充填された固体粒子は、通液塔50を通液する透過水の流れを攪乱する。透過水に酸化剤を添加し、通液塔50内の固体粒子層51を通過させると、固体粒子による撹拌作用によって、透過水に含まれる有機物と酸化剤とが効率よく接触する。その接触効率は、オゾンのような気体の酸化剤を用いる場合に比べて高い。
また、マンガン系触媒は、前記酸化剤に対する触媒活性が高く、これを固体粒子として含むことで、酸化剤による有機物の酸化分解作用が増大し、優れた酸化分解効果が得られる。
さらに、本実施形態の処理方法においては、通液塔50への透過水の通液を、通液塔50の下部から行うことで、固体粒子との接触時間、ひいては酸化処理時間をコントロールしやすい。たとえば透過水の流速を遅くすることで、透過水が通液塔50内を上昇する速度が遅くなり、固体粒子との接触時間を長くすることができる。通液塔50の上部から通液を行う場合、通液塔50内の透過水量が少ないと、供給された透過水がそのまま通液塔50の下部まで落下するため、接触時間をコントロールすることは難しい。
したがって、上記の処理方法によれば、難分解性有機物であっても、充分に酸化分解することができる。そのため、有機物含有水が難分解性有機物を含む場合でも、通液塔50から排出された透過水をそのまま外部に放流することも可能な程度にCODを低減することができる。なお、CODはその測定方法によりCODCr、CODMn等複数の指標が知られているが、以下においては、日本国内において最も一般的に用いられているCODMnを用いて説明する。
【0032】
また、上記の処理方法は、実施に必要なコストも少ない。
たとえばマンガン系触媒は、前記酸化剤に対する触媒活性が高いだけでなく、他の金属触媒(たとえばニッケル系、銀系、パラジウム系等)に比べて安価である。
また、液体または固体の酸化剤やこれを添加するための装置は、オゾン処理や紫外線処理を行うために必要な装置に比べて安価である。
また、MBR工程の後段に酸化処理を行うため、生物処理の前段にフェントン酸化処理を行う場合のような、触媒等の添加による余剰汚泥としての排泥増加がない。そのため、排泥の処理コストの増加を抑制できる。
さらに、上記の処理方法においては、MBR工程の後段に酸化処理を行うため、生物処理効率の低下が生じにくい。生物処理の前段で液体または固体の酸化剤を注入すると、酸化剤の添加量によっては、有機物含有水中に酸化剤が残留し、活性汚泥中の微生物の生物活性が低下し、生物処理効率が低下するおそれがある。
【0033】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態の有機物含有水の処理方法について説明する。なお、以下に記載する実施形態において、第一実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図2は、本実施形態の処理方法に用いる処理システム2の概略構成図である。処理システム2は、通液塔50の下流側に、通液塔50から排出された透過水を逆浸透膜でろ過する逆浸透膜ろ過装置70を備える以外は、第一実施形態で説明した処理システム1と同様の構成である。
【0034】
逆浸透膜ろ過装置70には流路24が接続され、流路24には吸引ポンプ25が設置されている。これにより、通液塔50から排出された透過水を逆浸透膜ろ過装置70に供給できるようになっている。
逆浸透膜ろ過装置70には、逆浸透膜ろ過装置70の逆浸透膜を透過しなかった濃縮水を排出する流路26と、逆浸透膜を透過した精製水を排出する流路27とが接続されている。
流路26の下流側末端は、吸引ポンプ25と逆浸透膜ろ過装置70との間の位置で流路24に接続されている。
【0035】
[逆浸透膜ろ過装置70]
逆浸透膜ろ過装置70は、1つ以上の逆浸透膜モジュールを具備するものである。
逆浸透膜モジュールは、逆浸透膜を透過した精製水と逆浸透膜を透過しない濃縮水とを分離できる形態であればよく、特に限定はされない。
逆浸透膜モジュールとしては、例えば、集水管のまわりに逆浸透膜を巻き回した円柱状の逆浸透膜エレメントを円筒状のケーシングに収納した、いわゆるスパイラル型逆浸透膜モジュール等が挙げられる。
逆浸透膜の材質としては、ポリアミド、ポリスルフォン、セルロースアセテート等が挙げられる。
【0036】
図2に示す処理システム2を用いた有機物含有水の処理方法は、
前述したMBR工程、酸化剤添加工程および固液接触工程に加えて、
通液塔50から排出された透過水を、逆浸透膜ろ過装置70の逆浸透膜でろ過する工程(以下、逆浸透膜ろ過工程)を含む以外は、第一実施形態の処理方法と同様である。
【0037】
[逆浸透膜ろ過工程]
吸引ポンプ25を作動させることによって、通液塔50から排出された透過水が、逆浸透膜ろ過装置70に供給され、逆浸透膜を透過する精製水と逆浸透膜を透過しない濃縮水とに分離される。
逆浸透膜ろ過装置70から排出された精製水は、流路26を介して、そのまま、または必要に応じてオゾン処理、紫外線照射等の処理が施された後、外部に放流される。
逆浸透膜ろ過装置70から排出された精製水は、流路27を介して、逆浸透膜ろ過装置70の上流側に返送され、通液塔50から排出された透過水に添加され、再度、逆浸透膜ろ過装置70で処理される。
【0038】
本実施形態の処理方法においては、第一実施形態の処理方法と同様の作用効果が得られるほか、通液塔50から排出された透過水に対して逆浸透膜ろ過工程を行うことで、塩素イオン等、膜ろ過では分離不可能な不純物の除去が可能となる。
なお、酸化剤添加工程で塩素系酸化剤を添加する場合、その大部分は通液塔50内で消費されるが、塩素系酸化剤が、逆浸透膜ろ過装置70に供給される透過水中に含まれると、逆浸透膜に悪影響を与えるおそれがある。したがって、酸化剤添加工程で塩素系酸化剤を添加し、かつ逆浸透膜ろ過工程を行う場合、酸化剤添加工程での塩素系酸化剤の添加量は、通液塔50から排出される透過水中の塩素系酸化剤の濃度が0.01mg/L以下となる量とすることが好ましい。0.01mg/L以下であれば、逆浸透膜への悪影響はほとんど見られない。
【0039】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三の実施形態の有機物含有水の処理方法について説明する。
図3は、本実施形態の処理方法に用いる処理システム3の概略構成図である。処理システム3は、膜分離活性汚泥処理装置10と通液塔50との間(詳細には、吸引ポンプ23の設置位置よりも下流側で、酸化剤添加手段30による酸化剤の供給位置よりも上流側)に、透過水貯留槽91を備える以外は、第二実施形態で説明した処理システム2と同様の構成である。
【0040】
本実施形態において、流路22は、透過水貯留槽91に接続されている。また、透過水貯留槽91と通液塔50とが流路28で接続されており、流路28に、酸化剤添加手段30の供給路32の下流側末端が接続されている。流路28上の、供給路32の接続位置の上流側に吸引ポンプ29が設置されている。
【0041】
処理システム3を用いた有機物含有水の処理方法においては、膜分離活性汚泥処理装置10から排出された透過水が、一旦、透過水貯留槽91で保持される。その後、吸引ポンプ29を作動させることによって、透過水貯留槽91内の透過水が、流路28を介して移送され、途中で酸化剤添加手段30により酸化剤が添加されて通液塔50に供給される。
【0042】
本実施形態の処理方法によれば、透過水貯留槽91から通液塔50に移送する透過水の量を吸引ポンプ29によって調整できる。そのため、膜分離活性汚泥処理装置10から排出される透過水量に変動があった場合でも、通液塔50に供給される透過水量の変動を抑制できる。たとえば通液塔50に供給される透過水量が急激に増大すると、酸化処理が充分に行われないおそれがある。通液塔50に供給される透過水量の変動を抑制することで、CODMnが充分に低減された透過水を安定して得ることができる。
【0043】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四の実施形態の有機物含有水の処理方法について説明する。
図4は、本実施形態の処理方法に用いる処理システム4の概略構成図である。処理システム4は、膜分離活性汚泥処理装置10と通液塔50との間(詳細には、吸引ポンプ23の設置位置よりも下流側で、酸化剤添加手段30による酸化剤の供給位置よりも上流側)に一端が接続され、他端が流路21に接続された透過水返送路92と、透過水返送路92に設置された流量調整バルブ93とを備える以外は、第二実施形態で説明した処理システム2と同様の構成である。
【0044】
処理システム4を用いた有機物含有水の処理方法においては、膜分離活性汚泥処理装置10から排出された透過水の一部を、透過水返送路92および流路21を介して、膜分離活性汚泥処理装置10の生物処理槽11に返送できる。
返送する透過水の量は、流量調整バルブ93によって調整できる。
【0045】
本実施形態の処理方法によれば、前記第三実施形態の処理方法と同様に、膜分離活性汚泥処理装置10から排出される透過水量に変動があった場合でも、通液塔50に供給される透過水量の変動を抑制できる。たとえば排出される透過水量が増大したときに、流路22を移送されている透過水の一部を返送することで、通液塔50に供給される透過水量の増大を抑制できる。
【0046】
<第五実施形態>
次に、本発明の第五実施形態の有機物含有水の処理方法について説明する。
図5は、本実施形態の有機物含有水の処理方法に用いる処理システム5の概略構成図である。処理システム5は、流路22に透過水のCODMn値を測定するCODMn測定手段41と、吸引ポンプ23の作動状態を制御する吸引ポンプ制御手段C1とを備える以外は、第二実施形態で説明した処理システム2と同様の構成である。
【0047】
CODMn測定手段41としては、吸光度法を利用した測定装置が挙げられる。このような測定装置としては、たとえば透過水の吸光度を計測する計測手段と、該計測手段にて測定された吸光度の値と予めプログラムされた検量線とから透過水のCODMnを算出する演算手段と、を備える装置が挙げられる。
吸引ポンプ制御手段C1は、CODMn測定手段41、吸引ポンプ23それぞれと電気的に接続されており、CODMn測定手段41で測定されたCODMn値に応じて吸引ポンプ23の作動状態を制御し、透過水の通液塔50内での通液量を変動させることができるようになっている。
吸引ポンプ制御手段C1は、たとえば、CODMn測定手段41で測定されたCODMn値が所定の範囲内である場合は、吸引ポンプ23の作動回数を所定の値に維持し、CODMn値が所定の範囲の上限値を超えた場合は、吸引ポンプ23の作動回数を減少させ、CODMn値が所定の範囲の下限値に満たない場合は、吸引ポンプ23の作動回数を増加させるように設定される。
【0048】
処理システム5を用いた有機物含有水の処理方法においては、CODMn測定手段41により、膜分離活性汚泥処理装置10から排出された処理水(分離膜を透過した透過水)のCODMn値を測定する。
吸引ポンプ制御手段C1は、CODMn測定手段41で測定されたCODMn値が所定の範囲の上限値を超えた場合は、吸引ポンプ23の作動回数を減少させ、CODMn値が所定の範囲の下限値に満たない場合は、吸引ポンプ23の作動回数を増加させる。
【0049】
分離膜を透過した透過水のCODMn値が高くなると、同じ酸化処理では、通液塔50から排出される透過水のCODMn値が高くなる。そのため吸引ポンプ23の作動回数を減少させ、流路22を移送される透過水量を減少させることで、通液塔50における透過水と固体粒子との接触時間が長くなり、CODMn値を充分に低減できる。
分離膜を透過した透過水のCODMn値がそれほど高くない場合は、酸化処理時間を短くしてもCODMn値を充分に低減できる。そのため、吸引ポンプ23の作動回数を増大させ、流路22を移送される透過水量を増大させることで、通液塔50における透過水と固体粒子との接触時間が短くなり、処理効率が向上する。
【0050】
<第六実施形態>
次に、本発明の第六実施形態の有機物含有水の処理方法について説明する。
図6は、本実施形態の処理方法に用いる処理システム6の概略構成図である。処理システム6は、液体または固体の酸化剤を含有する洗浄液で膜モジュール12の分離膜を洗浄する洗浄手段60と、前記洗浄液を酸化剤添加手段30に供給する洗浄液移送手段80とを備える以外は、第二実施形態で説明した処理システム2と同様の構成である。
洗浄手段60は、液体または固体の酸化剤を含有する洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽61と、洗浄液貯留槽61と流路22とを接続する第一洗浄液供給路62と、第一洗浄液供給路62に設置された吸引ポンプ63とを備える。
洗浄液移送手段80は、第一洗浄液供給路62から分岐して酸化剤貯留槽31に接続する第二洗浄液供給路81と、第二洗浄液供給路81に設置された吸引ポンプ82とを備える。
【0051】
処理システム6を用いた有機物含有水の処理方法は、MBR工程を停止し、膜処理洗浄手段60により、膜モジュール12の分離膜を洗浄する工程を含む。該工程では、具体的には、吸引ポンプ63を作動させ、洗浄液貯留槽61内の洗浄液を、第一洗浄液供給路62および流路22を介して膜モジュール12に供給する。これにより、膜モジュール12の分離膜を逆洗できる。
【0052】
本実施形態の処理方法においては、上記の洗浄後、該洗浄に使用されずに洗浄液貯留槽61内に残留する洗浄液を、洗浄液移送手段80により酸化剤添加手段30に供給することが好ましい。具体的には、吸引ポンプ82を作動させ、洗浄液貯留槽61内の洗浄液を、第二洗浄液供給路81を介して酸化剤添加手段30の酸化剤貯留槽31に供給することが好ましい。
該洗浄液には液体または固体の酸化剤が含まれるため、MBR工程を再開したときに、該洗浄液を、酸化剤貯留槽31から、流路22を移送される透過水に添加することで、液体または固体の酸化剤の使用量を低減できる。また、使用せずに残った洗浄液は、一般的には、そのまま放流できず、還元処理を施す必要があるが、酸化剤貯留槽31に供給することで、還元処理に必要なコストも低減できる。
洗浄液に用いられる酸化剤としては次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤が一般的に用いられる。そのため、本実施形態の処理方法において透過水に添加される酸化剤は、少なくとも塩素系酸化剤を含むことが好ましい。
【0053】
以上、本発明について、第一実施形態〜第六実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、第一実施形態〜第六実施形態では、MBR工程に用いる膜分離活性汚泥処理装置として、活性汚泥による生物処理が行われる生物処理槽内に分離膜を浸漬する浸漬型(一体型)の膜分離活性汚泥処理装置10を用いる例を示したが、生物処理槽と、分離膜を浸漬した膜分離槽とをそれぞれ設け、生物処理槽での生物処理後に膜分離槽で膜分離を行うようにした、いわゆる槽外型(別置型)の膜分離活性汚泥処理装置であってもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
有機物含有水の処理を、第一実施形態に示した処理システム1を用い、第一実施形態に示した処理方法にて実施した。
有機物含有水としては、難分解性有機物としてフェノール、ナフタレン等の芳香族系有機化合物を含む化学工業排水を使用した。該化学工業排水の処理前のCODMnは289mg/Lであった。
有機物含有水の処理量は、7.2m/dとした。
【0055】
有機物含有水のMBRを以下に示す条件で実施した。
MBRで分離膜を透過した透過水(以下「MBR処理水」という。)のCODMnを測定したところ、40〜54mg/Lであった。
MBR処理水に次亜塩素酸を注入した後、後段の通液塔50へ導入し、通液させた。
次亜塩素酸の注入量は、注入後のMBR処理水中の次亜塩素酸の濃度が5mg/Lとなる量とした。
通液塔50への通液は、空間速度SVが10h−1となるように行った。
通液塔50から排出されたMBR処理水のCODMnを測定したところ、28〜35mg/Lであった。
【0056】
(MBR条件)
有機物含有水の処理量:7.2m/d
膜フラックス(透過流束):0.4m/d
膜面積:18m(膜面積6mの中空糸膜モジュール×3基)
散気管13から供給するエア量:150m/d
膜の種類:ポリフッ化ビニリデンを主成分とする公称孔径0.4μmの中空糸形状のMF膜。
【0057】
(通液塔50のスペック)
通液塔50の有効高さ:1200mm。
通液塔50の内径:280mm。
通液塔50内の、直胴部と下側ドーム部との境界部分には、固体粒子が下部へ流れないように、50メッシュのステンレス製金網を設置し、その上に、固体粒子として、二酸化マンガンが担体の表面に担持されたマンガン系触媒((株)アサカ理研製)を、約1000mmの高さになるように充填した。使用したマンガン系触媒の組成と理化学物性を以下に示す。
[組成]SiO含量:62.0質量%、Al含量:16.0質量%、MnO含量:10.0質量%、KO含量:2.5質量%、NaO含量:1.8質量%、その他(不純物等)の含量:4.7質量%。
[理化学物性]粒度:ESが0.35mmでUCが1.4、密度:2.5g/cm前後、嵩密度:1.2g/cm前後、磨滅率:2.8%以下。
【0058】
上記結果に示すとおり、本発明によれば、オゾンや紫外線を用いることなく、安価な酸化剤を用いて、難分解性有機物を含む有機物含有水のCODMnを35mg/L以下に低減できた。
【符号の説明】
【0059】
1〜6 処理システム
10 膜分離活性汚泥処理装置
11 生物処理槽
12 膜モジュール
13 散気管
30 酸化剤添加手段
50 通液塔(容器)
51 固体粒子層
60 洗浄手段
70 逆浸透膜ろ過装置
80 洗浄液移送手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6