(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された感光性樹脂組成物フィルムを備えた支持体フィルムから、転写により前記感光性樹脂組成物フィルムを透明基板に貼り合わせる工程と、
前記感光性樹脂組成物フィルムを遮光マスクを介して露光し、アルカリ性現像液を用いて前記露光での未露光部分を現像により除去することで、前記透明基板上に形成された透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された導電膜からなる透明電極を形成する工程と、
前記透明電極の表面に引き出し電極を形成する工程とを備え、
前記透明電極を形成する工程では、前記透明基板のタッチする基板面に対して、基板裏面上に第1透明樹脂層があり、次に前記第1透明樹脂層に対して透明樹脂中に金属ナノワイヤを含有した第1導電膜の層が積層され、次に第2透明樹脂層が積層され、次に前記第2透明樹脂層に対して透明樹脂中に金属ナノワイヤを含有した第2導電膜の層が積層されて、前記第1導電膜の層と前記第2導電膜の層とが前記第2透明樹脂層を介して交差することで、XとYの位置を検出するタッチパネル電極となることを特徴とする表示装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、表示装置の一例として、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリックス方式の表示装置は、薄型、軽量といった利点を有し、テレビ、コンピュータ、携帯電話や小型携帯機器、車載機器他の様々な電子機器の表示装置として一般的に用いられている。
【0003】
これらの表示装置の多くは、液晶表示装置、あるいは、有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。液晶表示装置は、1対の透明基板で液晶を挟持した液晶セルと、液晶セルの両外側に貼り合わせた光学異方性フィルムと、表示光源となるバックライトとの組み合わせからなる表示装置である。有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス材料を電極間に挟み込んで、電極への印加電力を発光に変えて自発光する表示装置である。
【0004】
一方、タッチパネルは、表示装置の表示領域に対応する画面を指やペンでタッチすることで位置を検知して、位置座標などを、表示装置と組み合わせることで表示装置に入力する機能を有する機器である。このタッチパネルは、その動作原理において様々は方式が存在するが、最近では、小型携帯機器用途において静電容量結合方式のタッチパネルが主体となっている。
【0005】
静電容量結合方式のタッチパネルは、表示装置の表示領域に対応するタッチパネル基板上のタッチパネル画面に、タッチされた位置を検出するパターン化させた透明電極が形成されている。このタッチパネル画面の周辺には、透明電極からの位置検出信号を取り出す配線が形成され、位置検出信号を外部の検出回路に出力するための配線回路などを備えている。
【0006】
この静電容量結合方式のタッチパネルでは、高速にタッチされた位置を検出できる利点があり、指タッチを基本として、指先と位置検出電極との間での静電容量の変化を捉えて位置を検出する。例えば、XY位置を検出する場合に、XY位置検出電極間は絶縁された構造を有している。
【0007】
このようなタッチパネルでは、インジウムスズ酸化物などの金属酸化物導電体が、導電性と光透過性の点で、上述の透明電極に標準的に用いられている。しかし、金属酸化物膜は、通常、スパッタ法を用いて真空成膜しているので形成コストを要する課題がある。また、特にインジウムスズ酸化物では導電性と光透過性に優れた膜を形成するに200℃近い高温条件を要し、形成された膜の内部応力が大きく成膜した基板に応力負荷がかかるなどの課題がある。
【0008】
このような課題がある金属酸化物膜に替わり、近年、金属ナノワイヤを含有する導電膜が知られている。特に、金属ナノワイヤを塗膜溶液に含有させて、基板上にインクジェット法やディスペンス法、スクリーン印刷法を用いて塗工、乾燥して、透明導電膜を形成することが知られている。
【0009】
例えば、静電容量結合方式のタッチパネルと表示装置とを組み合わせた例としては、特許文献1が知られている。特許文献1には、有機エレクトロルミネッセンスの構成に静電容量結合方式のタッチパネルを組み合わせた入力機能付き有機エレクトロルミネッセンス装置が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0023】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0024】
[本発明の実施の形態の概要]
本発明の実施の形態の表示装置は、以下の特徴を有している(一例として、()内に対応する構成要素、符号などを付記)。
【0025】
本実施の形態の表示装置は、対向配置される第1基板(表示回路基板11)と第2基板(透明基板15)とを有し、前記第1基板側にマトリクス状に配置される薄膜トランジスタ回路の画素集合体である表示領域(表示回路層12)を有する表示装置であって、以下の特徴を有するものである。前記表示装置は、前記第2基板は透明基板からなり、前記第2基板上にXY位置座標を検出する透明電極(透明電極142,143)が設けられ、前記透明電極に対してタッチされた位置を静電容量結合により検出する静電容量結合方式タッチパネル(静電容量検出タッチパネル回路層14)を入力装置として備えている。
【0026】
そして、前記タッチパネルは、前記透明電極が透明樹脂中に含有された金属ナノワイヤの導電膜からなり、前記導電膜の一部表面に積層する、前記タッチパネルの外部回路と接続するための引き出し電極(引き出し配線144、接続電極145)を備え、前記透明樹脂の表面層から前記金属ナノワイヤが露出し、前記露出した金属ナノワイヤと前記引き出し電極とが接合する構造であることを特徴とする。
【0027】
特に、前記表示装置としては、前記第1基板と前記第2基板とにより液晶層(挟持液晶層23)を挟持し、表示光源となるバックライト(バックライト26)を備えた液晶表示装置、または、前記第1基板上に、前記薄膜トランジスタ回路につながる電極層間に有機エレクトロルミネッセンス層(有機エレクトロルミネッセンス発光回路層36)を形成した発光素子を備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置であることを特徴とする。
【0028】
さらに好ましくは、上記表示装置において、以下の特徴を有している。前記金属ナノワイヤは、断面直径が10〜100nmの範囲であり、かつ、長さが1〜100μmの範囲である。前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである。前記タッチパネルは、前記透明基板の表面に対して前記導電膜の透明樹脂が接合する構造であり、前記導電膜の表面層の10〜200nmの範囲の厚さに前記金属ナノワイヤが含有されている。前記導電膜の透明樹脂は、感光性樹脂絶縁物からなる。前記導電膜は、可視光領域で光透過率が80%以上である。
【0029】
また、本実施の形態の表示装置において、入力装置として備えている静電容量結合方式タッチパネルは、以下の工程により製造される特徴を有している(一例として、()内に対応する構成要素、符号、図面などを付記)。すなわち、透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された感光性樹脂組成物フィルム(感光性樹脂組成物フィルム51,53)を備えた支持体フィルム(支持体フィルム52)から、転写により前記感光性樹脂組成物フィルムを前記透明基板に貼り合わせる工程(
図6−(2)、
図6−(4))と、前記感光性樹脂組成物フィルムを所望の形状に遮光マスクを介して露光し、アルカリ性現像液を用いて前記露光での未露光部分を現像により除去することで、前記透明基板上に所望の形状で形成された透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された導電膜からなる前記透明電極を形成する工程(
図6−(3)、
図7−(5))と、前記導電膜の一部表面に積層して、前記透明樹脂の表面層から露出された前記金属ナノワイヤと接合され、前記タッチパネルの外部回路と接続するための引き出し電極を形成する工程(
図7−(6))とから実現される。
【0030】
上述した透明樹脂はフィルム状で、金属ナノワイヤは固体物中に固定されていて、金属ナノワイヤ同士の相対位置関係は、フィルム転写や露光、現像により導電膜を形成した後も変動はない。このため、フィルム初期に設計された導電特性は、導電膜を形成した後も変動することはないので、これを導電膜として用いることで高品位の静電容量検出を実現する静電容量結合方式タッチパネルを実現することが可能となる。
【0031】
この静電容量結合方式タッチパネルを備えた第2基板と、マトリクス状に配置される薄膜トランジスタ回路の画素集合体である表示領域を有する第1基板とを対向させることで、静電容量結合方式タッチパネルを備えた表示装置を実現する。例えば、液晶表示装置の場合は、第1基板と第2基板とを基板外周部において接着封止材料で密封して、第1基板と第2基板との間に液晶層を挟持させることで、液晶セルを実現し、表示光源となるバックライトを備えて液晶表示装置となる。また、有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、第1基板である薄膜トランジスタ回路基板上に、電極層間に有機エレクトロルミネッセンス層を発光素子として形成することで、自発光の有機エレクトロルミネッセンス表示装置となる。
【0032】
以上説明した本発明の実施の形態の概要に基づいた各実施の形態を、以下において図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0033】
[実施の形態1]
本実施の形態の表示装置を、
図1〜
図7を用いて説明する。
【0034】
<表示装置>
図1を用いて、本実施の形態の表示装置について説明する。
図1は、この表示装置の一例を説明するための概略断面図である。
【0035】
本実施の形態の表示装置は、静電容量結合方式タッチパネルを入力装置として備える表示装置であり、表示回路基板11、表示回路層12、挟持層13、静電容量検出タッチパネル回路層14、透明基板15などから構成される。
【0036】
本実施の形態の表示装置では、表示回路基板11上にマトリクス状に配置される薄膜トランジスタ回路の画素集合体である表示回路層12を備える。この表示回路層12の対向面に、静電容量検出タッチパネル回路層14を備える透明基板15があり、この対向する表示回路基板11と透明基板15により挟持層13が形成されている。
【0037】
この表示装置では、背面側の表示回路基板11上に備える表示回路層12からの発光が、挟持層13、静電容量検出タッチパネル回路層14、前面側の透明基板15を透過して表示光となり、静電容量結合方式タッチパネルを備えた表示装置を実現することができる。
【0038】
<静電容量結合方式タッチパネル>
図2を用いて、
図1に示した表示装置において、この表示装置に含まれる静電容量結合方式タッチパネルについて説明する。
図2は、この静電容量結合方式タッチパネルの一例を説明するための基板平面図である。
図2に示す静電容量結合方式タッチパネルは、
図1に示した静電容量検出タッチパネル回路層14を備える透明基板15の部分である。
【0039】
本実施の形態の静電容量結合方式タッチパネルは、透明基板15、タッチ画面141、透明電極(X位置座標)142、透明電極(Y位置座標)143、引き出し配線144、接続電極145、接続端子146などから構成される。
【0040】
本実施の形態の静電容量結合方式タッチパネルでは、透明基板15の片面にタッチ位置座標を検出するためのタッチ画面141があり、この領域に静電容量変化を検出して、X位置座標とする透明電極142と、Y位置座標とする透明電極143を備えている。なお、
図2においては、区別して分かり易くするため、X位置座標とする透明電極142は横線で図示し、Y位置座標とする透明電極143は縦線で図示している。
【0041】
これらのX、Y位置座標とするそれぞれの透明電極142,143には、タッチパネルとしての電気信号を制御するドライバー素子回路と接続するための引き出し配線144と、その引き出し配線144と透明電極142,143を接続する接続電極145が配置されている。さらに、引き出し配線144の接続電極145と反対側の端部には、ドライバー素子回路と接続する接続端子146が配置されている。
【0042】
透明基板15としては、ソーダガラスや、ホウケイ酸ガラスなどのアルカリガラスや、無アルカリガラス、化学強化ガラスなどのガラス基板が適している。また、透明性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、耐熱性と透明性の高いポリイミドフィルムも知られており、透明性を有するこのような樹脂系基板を用いることも可能である。
【0043】
透明電極142,143は、透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された導電膜からなる。金属ナノワイヤは、断面直径が10〜100nm、長さが1〜100μmの範囲である。この金属ナノワイヤは、透明樹脂の表面層から露出し、この露出した金属ナノワイヤと引き出し配線144に繋がる接続電極145とが接合する構造である。
【0044】
金属ナノワイヤとしては、Au、Ag、Pt、Cu、Co、C、Pdなどのナノワイヤを用いることができる。この中でも、導電膜としての導電性と光透過性の観点からAgナノワイヤが好適な構成材料であり、本実施の形態ではAgナノワイヤを用いた例を説明する。
【0045】
また、透明電極142,143は、透明基板15の表面に対して導電膜の透明樹脂が接合する構造であり、導電膜の表面層の10〜200nmの範囲の厚さに金属ナノワイヤが含有されている。この導電膜の透明樹脂は感光性樹脂絶縁物からなり、導電膜の光透過率は可視光領域で80%以上である。
【0046】
引き出し配線144は、スパッタ法や蒸着法で成膜される金属電極が適している。具体的には、Ag−Pd−Cu、Al−Cu、Ni−Cu、Al、Cu,Niなどの合金、積層、単独構成の電極が挙げられる。また、Ag導電ペーストを用いて形成することも可能である。
【0047】
<透明電極と引き出し配線の接続部>
図3を用いて、
図2に示した静電容量結合方式タッチパネルにおいて、透明電極と引き出し配線の接続部の断面構造について説明する。
図3は、この透明電極と引き出し配線の接続部を説明するためのタッチパネル断面図であり、
図2のc部切断面を示す。
図3においては、Y位置座標の透明電極143と引き出し配線144の接続部について示すが、X位置座標の透明電極142と引き出し配線144の接続部についても同様である。
【0048】
透明電極143と引き出し配線144を接続する接続電極145は、引き出し配線144を形成する際に、透明電極143の端部に積層する構造で形成されるものであり、特に引き出し配線144と個別の工程が必要とされるものではない。
【0049】
透明電極143は、透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された導電膜からなり、透明基板15の表面に積層された透明樹脂層143aと、この透明樹脂層143aの表面に積層された金属ナノワイヤ含有層143bから構成されている。金属ナノワイヤ含有層143bの金属ナノワイヤは表面層から露出しており、この露出した金属ナノワイヤと引き出し配線144に繋がる接続電極145が接合されている。例えば、金属ナノワイヤ含有層143bでは、金属ナノワイヤの端部などが表面から突出したりして、部分的に露出した構造となる。
【0050】
このような構造により、Y位置座標の透明電極143と接続電極145と引き出し配線144とは電気的に接続された構造となる。同様に、X位置座標の透明電極142と接続電極145と引き出し配線144とは電気的に接続された構造となる。透明電極としては、X、Y位置座標とするそれぞれの透明電極142,143を備えている。
【0051】
<XY位置座標の透明電極の交差部>
図4および
図5を用いて、
図2に示した静電容量結合方式タッチパネルにおいて、XY位置座標の透明電極の交差部の断面構造について説明する。
図4および
図5は、このXY位置座標の透明電極の交差部を説明するためのタッチパネル断面図であり、それぞれ、
図4は
図2のa−a’切断面を示し、
図5は
図2のb−b’切断面を示す。
【0052】
X位置座標の透明電極142は、透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された導電膜からなり、絶縁樹脂からなる透明樹脂層142aと、この透明樹脂層142aに積層された金属ナノワイヤ含有層142bから構成されている。また、Y位置座標の透明電極143も同様に、透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された導電膜からなり、絶縁樹脂からなる透明樹脂層143aと、この透明樹脂層143aに積層された金属ナノワイヤ含有層143bから構成されている。
【0053】
このような構成からなるXY位置座標の透明電極142,143の交差部において、X位置座標の透明電極142に対して、Y位置座標の透明電極143の交差部は、
図4に示すように、絶縁樹脂からなる透明樹脂層143aにより、絶縁された交差構造となっている。また、Y位置座標の透明電極143に対して、X位置座標の透明電極142の交差部は、
図5に示すように、絶縁樹脂からなる透明樹脂層143aにより、絶縁された交差構造となっている。これにより、X位置座標の透明電極142とY位置座標の透明電極143とは絶縁された構造からなる。
【0054】
これらのXY位置座標の透明電極142,143では、前述したように、Au、Ag、Pt、Cu、Co、C、Pdなどの金属ナノワイヤの中でも、導電膜としての導電性と光透過性の観点からAgナノワイヤが最も適している。
【0055】
また、透明電極142,143では、透明基板15の表面に対して透明樹脂層142a,143aが接合され、金属ナノワイヤ含有層142b,143bの表面層の10〜200nmの厚さに金属ナノワイヤが含有されている。この導電膜の透明樹脂は感光性樹脂絶縁物からなり、導電膜の光透過率は可視光領域で80%以上となっている。
【0056】
<静電容量結合方式タッチパネルの製造方法>
図6および
図7を用いて、
図2に示した静電容量結合方式タッチパネルの製造方法について説明する。
図6および
図7は、この静電容量結合方式タッチパネルの製造方法の一例を説明するための工程断面図であり、
図6の後に
図7が続く断面図となっている。
図6および
図7において、(1)〜(3)は
図4と同様の切断面の断面図を示し、(4)〜(5)は
図5と同様の切断面の断面図を示し、(6)は
図3と同様の切断面の断面図を示す。
【0057】
図2に示したタッチパネルを、以下の条件で作製した。
【0058】
まず、(1)に示すように、透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された感光性樹脂組成物フィルム51を備えた支持体フィルム52を用意する。これは、感光性樹脂組成物フィルム51を支持するための支持体フィルム52に、感光性樹脂組成物フィルム51が積層されたフィルム構造の部材である。この感光性樹脂組成物フィルム51では、金属ナノワイヤが透明樹脂による固体物中に固定されている。このフィルム構造の部材としては、感光性樹脂組成物フィルム51の支持体フィルム52とは反対側に、ベースフィルムが積層された構造の部材を用いることも可能である。
【0059】
次に、(2)に示すように、感光性樹脂組成物フィルム51を備えた支持体フィルム52から、フィルム転写により感光性樹脂組成物フィルム51を透明基板15に貼り合わせる。このフィルム転写により、透明基板15には、支持体フィルム52から剥離された感光性樹脂組成物フィルム51の部分が貼り合わされた構造となる。
【0060】
そして、(3)に示すように、感光性樹脂組成物フィルム51を所望の形状に遮光マスクを介して露光し、アルカリ性現像液を用いて露光工程での未露光部分を除去し、透明基板15上に所望の形状で形成された透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された導電膜からなるX位置座標となる透明電極142を形成する。
【0061】
次に、X位置座標となる透明電極142の形成後は、Y位置座標となる透明電極143を形成するために、(4)に示すように、上記(2)と同様に、再度、フィルム転写により感光性樹脂組成物フィルム53を透明基板15に貼り合わせる。
【0062】
そして、(5)に示すように、上記(3)と同様に、所望の形状に遮光マスクを介して露光し、アルカリ性現像液を用いて露光工程での未露光部分を除去し、透明基板15上に所望の形状で形成された透明樹脂中に金属ナノワイヤが含有された導電膜からなるY位置座標となる透明電極143を形成する。
【0063】
次に、(6)に示すように、透明基板15の表面に、外部回路と接続するための引き出し配線144と、この引き出し配線144と透明電極143(142)を接続する接続電極145を形成する。ここでは、フレーク形状のAgを含有する導電ペースト材料を使ってスクリーン印刷法を用いて、引き出し配線144、接続電極145を同時に形成している。
【0064】
上述した(1)〜(6)の工程により、金属ナノワイヤが透明樹脂による固体物中に固定されている感光性樹脂組成物フィルム51,53を用いて、金属ナノワイヤ同士の相対位置関係はフィルム転写や露光、現像により導電膜を形成した後も変動はないので、高品位のXY位置座標の透明電極142,143を有する静電容量結合方式タッチパネルを作製することが可能となる。
【0065】
このようにして、高品位の静電容量検出を実現する静電容量結合方式タッチパネルを得ることが可能となり、これにより、静電容量結合方式タッチパネルを備えた透明基板を対向基板とする表示装置を実現することができる。
【0066】
<本実施の形態の効果>
以上説明した本実施の形態の表示装置によれば、対向配置される表示回路基板11と透明基板15とを有し、表示回路基板11側にマトリクス状に配置される薄膜トランジスタ回路の画素集合体である表示回路層12を有する表示装置において、透明基板15上にXY位置座標を検出する透明電極142,143が設けられ、これらの透明電極142,143に対してタッチされた位置を静電容量結合により検出する静電容量検出タッチパネル回路層14を含む静電容量結合方式タッチパネルを入力装置として備える構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
(1)静電容量結合方式タッチパネルにおいて、透明電極142,143が透明樹脂中に含有された金属ナノワイヤの導電膜からなり、この導電膜の一部表面に積層する、引き出し配線144に繋がる接続電極145を備え、透明樹脂の表面層から金属ナノワイヤが露出し、この露出した金属ナノワイヤと、引き出し配線144に繋がる接続電極145とが接合する構造であることにより、導電特性の変動を抑えた金属ナノワイヤを含有する導電膜を用いて、高品位の静電容量検出を実現する静電容量方式タッチパネルを入力装置として備える表示装置を実現することができる。
【0068】
すなわち、透明電極142,143を形成するための部材は感光性樹脂組成物フィルム51からなるフィルム状で、金属ナノワイヤは固体物中に固定されていて、金属ナノワイヤ同士の相対位置関係は、フィルム転写や露光、現像により導電膜を形成した後も変動はない。このため、フィルム初期に設計された導電特性は、導電膜を形成した後も変動することはないので、これを導電膜として用いることで、高品位の静電容量結合による検出を実現する静電容量結合方式タッチパネルを入力装置として備える表示装置を実現することが可能となる。
【0069】
(2)上記(1)において、特に、以下の条件により、透明電極142,143の導電膜として、導電性と光透過性の観点から最適にすることができる。(2−1)金属ナノワイヤ含有層142b,143bの金属ナノワイヤは、断面直径が10〜100nmの範囲であり、かつ、長さが1〜100μmの範囲である。(2−2)金属ナノワイヤ含有層142b,143bの金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである。(2−3)透明基板15の表面に対して接合された透明電極142,143の導電膜は、導電膜の表面層の10〜200nmの範囲の厚さに、金属ナノワイヤが含有された金属ナノワイヤ含有層142b,143bを有している。(2−4)透明電極142,143の導電膜の透明樹脂層142a,143aおよび金属ナノワイヤ含有層142b,143b中の透明樹脂は、感光性樹脂絶縁物からなる。(2−5)透明電極142,143の導電膜の透明樹脂層142a,143aおよび金属ナノワイヤ含有層142b,143b中の透明樹脂は、可視光領域で光透過率が80%以上である。上記(2−1),(2−2)の条件は導電性の観点で適し、上記(2−3),(2−4),(2−5)の条件は光透過性の観点で適している。
【0070】
[実施の形態2]
本実施の形態の表示装置を、
図8を用いて説明する。本実施の形態は、液晶表示装置に適用した例である。
【0071】
図8を用いて、本実施の形態の液晶表示装置について説明する。
図8は、この液晶表示装置の一例を説明するための概略断面図である。
【0072】
本実施の形態の液晶表示装置は、静電容量結合方式タッチパネルを入力装置として備える表示装置であり、表示回路透明基板21、表示回路層22、挟持液晶層23、静電容量検出タッチパネル回路層24、透明基板25、バックライト26、偏光板27、偏光板28、基板周辺液晶シール材29などから構成される。
【0073】
本実施の形態の液晶表示装置では、表示光源となるバックライト26を備え、液晶による光透過、遮閉のためにバックライト26からの光を偏光とする偏光板27と、偏光を透過させる表示回路透明基板21上にマトリクス状に配置される薄膜トランジスタ回路の画素集合体である表示回路層22を備える。この表示回路層22の対向面には、静電容量検出タッチパネル回路層24を備える透明基板25があり、偏光板27と対をなす偏光板28を備えている。対向する表示回路透明基板21と透明基板25を基板周辺で接合させる基板周辺液晶シール材29により、基板間の空間に挟持液晶層23を挟持する。この挟持液晶層23によりバックライト26からの光が対向する偏光板28を透過して表示光となり、静電容量結合方式タッチパネルを備えた液晶表示装置を実現することができる。
【0074】
以上説明した本実施の形態の液晶表示装置によれば、表示回路透明基板21と透明基板25とにより挟持液晶層23を挟持し、表示光源となるバックライト26を備えた構成において、静電容量結合方式タッチパネルを入力装置として備えることで、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0075】
[実施の形態3]
本実施の形態の表示装置を、
図9を用いて説明する。本実施の形態は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に適用した例である。
【0076】
図9を用いて、本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置について説明する。
図9は、この有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を説明するための概略断面図である。
【0077】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、静電容量結合方式タッチパネルを入力装置として備える表示装置であり、表示回路基板31、表示回路層32、挟持透明接着層33、静電容量検出タッチパネル回路層34、透明基板35、有機エレクトロルミネッセンス発光回路層36などから構成される。
【0078】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置では、表示回路基板31上にマトリクス状に配置される薄膜トランジスタ回路の画素集合体である表示回路層32を備え、その上層に薄膜トランジスタ回路とつながる電極層間に有機エレクトロルミネッセンス材料の極薄膜を形成して、電極へ電流印加により有機エレクトロルミネッセンス材料が発光する有機エレクトロルミネッセンス発光回路層36を備えている。この有機エレクトロルミネッセンス発光回路層36の対向面には、静電容量検出タッチパネル回路層34を備える透明基板35がある。対向する表示回路基板31と透明基板35は、光透過のために透明な挟持透明接着層33で接合されている。有機エレクトロルミネッセンス発光回路層36からの発光が、挟持透明接着層33、静電容量検出タッチパネル回路層34、透明基板35を透過して表示光となり、静電容量結合方式タッチパネルを備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置を実現することができる。
【0079】
以上説明した本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置によれば、表示回路基板31上に、薄膜トランジスタ回路につながる電極層間に有機エレクトロルミネッセンス発光回路層36を形成した発光素子を備えた構成において、静電容量結合方式タッチパネルを入力装置として備えることで、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。