(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機ケイ素化合物中、(A)成分の含有量が20〜80質量部であり、(B)成分の含有量が20〜80質量部であり、無機酸化物微粒子と有機ケイ素化合物の質量比率が10/90〜60/40である請求項1記載の光硬化性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の(i)又は(i')成分としての複合樹脂は、有機ケイ素化合物として(A)ビスシラン化合物、及び(B)不飽和基含有シラン化合物を、必要により(D)無機酸化物微粒子の存在下に加水分解・縮合させたものである。
【0010】
必須成分であるビスシラン化合物(A)は、下記一般式(1)で表すことができる。
X
nR
3-nSi−C
2H
4−C
mF
2m−C
2H
4−SiR
3-nX
n (1)
(式中、Rは1価の炭化水素基であり、XはOH基又は加水分解性基であり、n=1、2又は3である。m=2〜20の整数である。)
【0011】
mが1では十分な硬化性が得られない場合がある。また、mが20を超過すると、架橋密度が不十分となる結果、硬化被膜が柔軟になり、良好な耐擦傷性が得られないおそれがある。シラン化合物の沸点が著しく上昇する結果、精製が難しくなり、経済的にも不利となる場合があることからmは4〜12の範囲を満たすのがより好ましい。特に好ましくは、4〜8の範囲を満たすのがよい。
【0012】
Rは、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル基などの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基等のアリール基等の1価の炭化水素基を表し、炭素数1〜10のものが好ましい。
【0013】
Xは、OH基、又は加水分解性基として、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、アシルオキシ基、アルケノキシ基、ケトオキシム基、アルコキシアルコキシ基又は−NCO基を表す。具体的には、OH基、Clなどのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、イソプロペノキシ基などのアルケノキシ基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、メチルエチルケトキシム基等のケトオキシム基、メトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、−NCO基などを挙げることができる。メトキシ基、エトキシ基のアルコキシ基が取り扱いやすく、加水分解時の反応の制御もしやすいため、好ましい。
【0014】
シロキサン架橋可能な基Xの個数を示すnは、1、2、3のいずれでも採ることが可能であるが、2、3が硬化性の観点から好ましい。架橋密度を上げて、耐擦傷性を良好なレベルにするためには、n=3とするのがよい。
【0015】
以上を満たすビスシラン化合物の具体例としては、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
2−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
4−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
6−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
8−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
10−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
12−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
16−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
20−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(C
2H
5O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
4−C
2H
4−Si(OC
2H
5)
3、
(C
2H
5O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
6−C
2H
4−Si(OC
2H
5)
3、
(C
3H
7O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
4−C
2H
4−Si(OC
3H
7)
3、
(C
3H
7O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
6−C
2H
4−Si(OC
3H
7)
3、
(CH
3O)
2(CH
3)Si−C
2H
4−(CF
2)
4−C
2H
4−Si(CH
3)(OCH
3)
2、
(CH
3O)
2(CH
3)Si−C
2H
4−(CF
2)
6−C
2H
4−Si(CH
3)(OCH
3)
2、
(CH
3O)
2(C
6H
5)Si−C
2H
4−(CF
2)
4−C
2H
4−Si(C
6H
5)(OCH
3)
2、
(CH
3O)
2(C
6H
5)Si−C
2H
4−(CF
2)
6−C
2H
4−Si(C
6H
5)(OCH
3)
2
【0016】
これらの中でも、好ましくは、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
4−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
6−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−(CF
2)
8−C
2H
4−Si(OCH
3)
3
の各ビスシラン化合物を使用するのがよい。
【0017】
有機ケイ素化合物100質量部中、(A)成分は、20〜80質量部配合することが好ましい。20質量部より少ないと硬化性が悪化するおそれがあり、80質量部を超える量であると、安定性が悪化するおそれがある。
【0018】
本発明においては、上記ビスシラン化合物(A)に加えて、不飽和基含有シラン化合物(B)を共加水分解・縮合するもので、(B)成分を共加水分解することにより、安定性が向上する。
【0019】
不飽和基含有シラン化合物(B)としては、(メタ)アクリロキシアルキル基を有するアルコキシシラン、スチリル基を有するアルコキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリロキシアルキル基を有するアルコキシシランとしては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、8−(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。スチリル基を有するアルコキシシランとしては、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
有機ケイ素化合物100質量部中、(B)成分は、20〜80質量部配合することが好ましい。20質量部より少ないと硬化性や安定性が悪化するおそれがあり、80質量部を超える量であると、耐擦傷性が悪化するおそれがある。
【0021】
このビスシラン化合物、不飽和基含有シラン化合物と併用可能なシラン化合物について説明すると、それらのシラン化合物以外に、求める諸特性に影響を与えない範囲内で、下記化合物を併用することができる。ただし配合するシラン化合物は、有機ケイ素化合物100質量部中、20質量部以内とする。好ましくは10質量部以内とする。
【0022】
具体的には、テトラエトキシシラン等のシリケート類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類、フェニルトリメトキシシラン等のフェニルアルコキシシラン類、クロロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン等のハロゲン置換アルキルアルコキシシラン類、
CF
3(CF
2)
7SO
2NH−C
3H
6−Si(OCH
3)
3、
CF
3(CF
2)
7CONH−C
3H
6−Si(OCH
3)
3、
パーフルオロポリエーテル基含有メトキシシラン等のフッ素含有置換基を有するアルコキ
シシラン類、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
6H
12−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
2(CH
3)Si−C
2H
4−Si(CH
3)(OCH
3)
2、
(CH
3O)(CH
3)
2Si−C
2H
4−Si(CH
3)
2(OCH
3)、
(C
2H
5O)
3Si−C
2H
4−Si(OC
2H
5)
3、
Cl
3Si−C
2H
4−SiCl
3、
(CH
3COO)
3Si−C
2H
4−Si(OCOCH
3)
3、
(CH
3O)
3Si−C
6H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
2(CH
3)Si−C
6H
4−Si(CH
3)(OCH
3)
2、
(CH
3O)(CH
3)
2Si−C
6H
4−Si(CH
3)
2(OCH
3)、
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−C
6H
4−C
2H
4−Si(OCH
3)
3、
(CH
3O)
2(CH
3)Si−C
2H
4−C
6H
4−C
2H
4−Si(CH
3)(OCH
3)
2、
(CH
3O)(CH
3)
2Si−C
2H
4−C
6H
4−C
2H
4−Si(CH
3)
2(OCH
3)
等のフッ素置換基を含有しないビスアルコキシシラン化合物及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0023】
(D)成分である無機酸化物微粒子は、従来公知のものを使用することができる。無機質としては、Si、Ti、Zn、Sb、Y、La、Zr、Al、In、Sn、Ce、Feなどの各種金属酸化物が可能であるが、特にSiO
2、TiO
2、ZrO
2、ZnO、CeO
2系を主成分とするものがよい。更に好ましくはSiO
2系を主成分とするものがよい。なお、ここでの主成分とは、無機酸化物微粒子中、50質量%以上、特に80質量%以上で100質量%以下含有することを意味する。
【0024】
無機酸化物微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜80nm、より好ましくは3〜60nm、更に好ましくは5〜50nmの範囲を満たすのがよい。平均粒子径がこの下限未満であると、粒子が凝集しやすく、不安定となるおそれがある。上限を超過すると、硬化被膜の透明性が低下するおそれがある。なお、この平均粒子径は、動的光散乱法による体積平均粒子径D50に基づく。
【0025】
この無機酸化物微粒子は、水、あるいは有機溶媒に分散したものを用いるのがよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、キシレン、トルエン等を具体例として挙げることができる。
また、粒子は多孔質及び/又は内部に空隙を有する無機酸化物微粒子を用いてもよい。
【0026】
有機ケイ素化合物との質量比率は、無機酸化物微粒子/有機ケイ素化合物=0/100〜60/40、特に無機酸化物微粒子を含有する場合は、10/90〜60/40の範囲を満たすのがよい。この範囲を外れると、十分な耐摩耗性、硬度が得られなくなるおそれがある。更に好ましくは、20/80〜50/50、特に好ましくは、30/70〜45/55の範囲を満たすのがよい。
【0027】
本発明では、必要により無機酸化物微粒子(D)の存在下に、ビスシラン化合物(A)を含む有機ケイ素化合物を、加水分解・縮合させることにより、得られる複合樹脂を用いる。この加水分解・縮合させる方法としては、従来公知の方法を適用することができる。
【0028】
この加水分解・縮合を行う際に、触媒として下記のものを使用することができる。塩酸、硝酸、酢酸、マレイン酸等の酸類、NaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン等のアミン化合物、及びアミン化合物の塩類、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩等の塩基類、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムのようなフッ化塩、固体酸性触媒あるいは固体塩基性触媒(例えばイオン交換樹脂触媒など)、鉄−2−エチルヘキソエート、チタンナフテート、亜鉛ステアレート、ジブチル錫ジアセテートなどの有機カルボン酸の金属塩、テトラブトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタン、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタンなどの有機チタンエステル、テトラブトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウムエステル、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムアセチルアセトナート錯体等のアルミニウムキレート化合物等の有機金属化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキル置換アルコキシシランが例示され、これらを単独で又は混合して使用してもよい。
【0029】
この触媒の添加量は、有機ケイ素化合物100質量部に対し0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部である。この量が0.01質量部よりも少ないと、反応完結までに時間がかかり過ぎ、反応が進行しない場合がある。また、10質量部より多いとコスト的に不利であり、得られる反応物が着色してしまったり、副反応が多くなったり、不安定化するおそれがある。
【0030】
加水分解・縮合反応は、溶剤で稀釈した系で実施するのがよい。この溶剤としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、キシレン、トルエン等が挙げられる。溶剤の添加量は任意だが、溶液中の有効成分の量が、0.5〜50質量%であるように調節するのがよい。好ましくは1〜30質量%であるのがよい。
【0031】
加水分解・縮合反応は、無機酸化物微粒子と、ビスシラン化合物を含む有機ケイ素化合物とを、上記有機溶媒中に分散・混合し、ここに必要に応じて前記加水分解・縮合触媒を添加し、更に加水分解用水を添加し、加水分解・縮合を行う。加水分解に使用する水の量は、全有機ケイ素化合物の加水分解性基(SiX)の合計モル数に対して、0.3〜10倍モルの水を使用するのがよい。この量未満では、加水分解が十分進行せず、無機酸化物微粒子と有機ケイ素化合物から誘導されるバインダーとの架橋が十分進行しないおそれがある。また、これを超えると、コーティング溶液とした場合、残存する水が十分揮発せず、被膜が白化してしまう危険性が発生する場合がある。より好ましくは、0.5〜5倍モルの水を使用するのがよい。有機ケイ素化合物は、無機酸化物微粒子の存在下に一度に全量加水分解してもよいし、多段階に分割して添加し、加水分解してもよい。
【0032】
(ii)成分の硬化触媒は各種金属化合物である。具体的には、テトラブトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタン、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタンなどの有機チタンエステル、テトラブトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウムエステル、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムアセチルアセトナート錯体等のアルミニウムキレート化合物、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Zn、Ga、In、Ge、Sn等の加水分解性誘導体等を例示することができるが、これに限定されるものではない。
その中でも、アルミニウムアセチルアセトナート錯体が安定性、硬化性を両立させる点で好ましい。
【0033】
光照射時に発生する熱エネルギーや、光照射することにより進行する反応に伴い発生する反応熱を利用して、本硬化触媒がシラノールの縮合触媒として作用すると考えている。
【0034】
この硬化触媒の添加量は、(i)又は(i')成分の固形分100質量部に対し0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部である。この量が0.1質量部よりも少ないと、硬化性が低下したり、安定性が悪化する場合がある。また、10質量部より多いと得られる反応物が着色してしまったり、耐擦傷性が低下するおそれがある。
【0035】
(iii)成分のラジカル開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから選択することができる。ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、チオキサントン誘導体、ベンゾインエチルエテル、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルファイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシエトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルファイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシエトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物が、表面硬化性が良好である点から好ましい。
【0036】
このラジカル開始剤の添加量は、(i)又は(i')成分の固形分100質量部に対し0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部である。この量が0.1質量部よりも少ないと、硬化性が低下する。また、10質量部より多いと得られる反応物が着色してしまったり、耐擦傷性が低下するおそれがある。
【0037】
(iv)成分の溶剤は、先に述べた反応溶剤と同様であり、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、キシレン、トルエン等が挙げられる。溶剤の添加量は任意だが、溶液中の固形分(有効成分)の量が、0.5〜50質量%であるように調節するのがよい。好ましくは1〜30質量%であるのがよい。
【0038】
本発明の複合樹脂と有機溶剤とを含む光硬化性樹脂組成物は、コーティング剤組成物として使用することができる。このコーティング剤組成物には、必要に応じて、含ケイ素系、あるいは含フッ素系界面活性剤を添加してもよい。具体的には、各種ポリエーテル変性シリコーン化合物、及び住友スリーエム社(商品名:フルオラード)、デュポン社(フルオロアルキルポリエーテル)、旭硝子社(商品名:サーフロン)から販売されている各種含フッ素系界面活性剤、及びパーフルオロシランを単独で加水分解・縮合したSiOH基末端のオリゴマーを挙げることができる。添加量は、コーティング剤組成物中の固形分に対して、0.01〜10質量%の範囲であればよく、塗装時のレベリング性を確保するのに有効である。
【0039】
上記方法にて得られた本発明のコーティング剤組成物に、更に有機系及び無機系の紫外線吸収剤、系内のpHをシラノール基が安定に存在しやすいpH2〜7に制御するための緩衝剤、例えば、酢酸−酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム−クエン酸などの任意成分が含まれていてもよい。
【0040】
本発明による光硬化性樹脂組成物乃至コーティング剤組成物によって基材表面に形成される膜の膜厚は、通常0.01〜10μmに制御するのがよい。本組成物を基材表面にコーティングする方法としては、ディッピング法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法など特に限定されるものではないが、膜厚の制御を容易に行うことができることから、ディッピング法、スプレー法及びロールコート法で所定の膜厚になるように行うのが好ましい。
【0041】
本光硬化性樹脂組成物を合成樹脂製透明基材に塗装する。合成樹脂の具体例としては、光学的特性に優れるものであれば全て適用可能であるが、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリアルキレンテレフタレート樹脂、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート等の液晶性樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、トリメチルペンテン、ポリビニルノルボルネン、環構造含有ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン樹脂、及びこれらの複合化樹脂を例示することができるが、これに限定されるものではない。特に好ましくは、ポリカーボネート樹脂、PET等のポリアルキレンテレフタレート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。透明基材は、成型部品、板状、フィルム状いずれでもよい。
【0042】
本樹脂組成物を基材に塗布した場合、本樹脂組成物は、光照射による光硬化処理を行う。その光照射を行う前もしくは後に、より硬化を促進させる目的で、加熱による熱硬化処理を行うことも可能である。
【0043】
硬化させるための光源としては、通常、200〜450nmの範囲の波長の光を含む光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯等を使用することができる。照射量は特に制限されないが、10〜5,000mJ/cm
2、特に20〜2,000mJ/cm
2であることが好ましい。光照射機による硬化はバッチ式とコンベア式があるが、生産性の高いコンベア式が好ましい。硬化時間は、通常0.01〜60秒、好ましくは0.1〜10秒である。その際の塗工ラインの搬送速度は特に制限は無いが0.1〜40m/min、特に1〜20m/minの範囲が好ましい。搬送速度が遅いと生産性が悪く、速いと搬送時に傷がつきやすいという問題がある。
【0044】
追加で行う熱硬化の条件としては、120℃以下、10分以内である。より好ましくは、80℃以下、5分以内で硬化させることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は質量%、部は質量部を示す。
【0046】
[
参考例1]
撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ビスシラン化合物
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−C
4F
8−C
2H
4−Si(OCH
3)
3
を200部、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを63部、イソプロピルアルコールを1,090部、陽イオン交換樹脂を5部仕込み、25℃で撹拌・混合した。ここに、水を58部、10分かけて滴下した。更に40℃で3時間撹拌し、加水分解・縮合を終了した。この溶液をイソプロピルアルコールで不揮発分3%まで稀釈し、陽イオン交換樹脂を濾別し、ポリエーテル変性シリコーンを4.5部、及びアルミニウム・アセトアセテート(アルミニウムアセチルアセトナート)を22部、IRGACURE907を22部加え、コーティング剤溶液(1)を調製した。
【0047】
[
参考例2]
撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ビスシラン化合物
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−C
4F
8−C
2H
4−Si(OCH
3)
3
を93部、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを174部、イソプロピルアルコールを1,090部、陽イオン交換樹脂を5部仕込み、25℃で撹拌・混合した。ここに、水を60部、10分かけて滴下した。更に40℃で3時間撹拌し、加水分解・縮合を終了した。この溶液をイソプロピルアルコールで不揮発分3%まで稀釈し、陽イオン交換樹脂を濾別し、ポリエーテル変性シリコーンを4.5部、及びアルミニウム・アセトアセテートを22部、IRGACURE907を22部加え、コーティング剤溶液(2)を調製した。
【0048】
[実施例
1]
撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ビスシラン化合物
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−C
4F
8−C
2H
4−Si(OCH
3)
3
を162部、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを51部、メタノールシリカゾル(日産化学工業社製、シリカ濃度30%含有)を127部、イソプロピルアルコールを1,030部、陽イオン交換樹脂を5部仕込み、25℃で撹拌・混合した。ここに、水を47部、10分かけて滴下した。更に40℃で3時間撹拌し、加水分解・縮合を終了した。この溶液をイソプロピルアルコールで不揮発分3%まで稀釈し、陽イオン交換樹脂を濾別し、ポリエーテル変性シリコーンを4.5部、及びアルミニウム・アセトアセテートを22部、IRGACURE907を22部加え、コーティング剤溶液(3)を調製した。
【0049】
[比較例1]
撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ビスシラン化合物
(CH
3O)
3Si−C
2H
4−C
4F
8−C
2H
4−Si(OCH
3)
3
を262部、イソプロピルアルコールを1,090部、陽イオン交換樹脂を5部仕込み、25℃で撹拌・混合した。ここに、水を57部、10分かけて滴下した。更に40℃で3時間撹拌し、加水分解・縮合を終了した。この溶液をイソプロピルアルコールで不揮発分3%まで稀釈し、陽イオン交換樹脂を濾別し、ポリエーテル変性シリコーンを4.5部、及びアルミニウム・アセトアセテートを22部、IRGACURE907を22部加え、コーティング剤溶液(4)を調製した。
【0050】
[比較例2]
参考例1と同様に行いIRGACURE907を22部のみを加えずに、コーティング剤溶液(5)を調製した。
【0051】
[比較例3]
参考例1と同様に行い、アルミニウム・アセトアセテート22部のみを加えずに、コーティング剤溶液(6)を調製した。
【0052】
〔塗装方法〕
ジペンタエリスリトールトリアクリレートを主成分とするUV硬化型アクリレートが塗布されたPET基材に、膜厚100nmとなるようにバーコーターで塗布し、160W高圧水銀灯を持つコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィクス社製)を用いて硬化皮膜を作製した。その際の条件は、搬送速度2m/minで積算照射量は1,000mJ/cm
2だった。
〔外観〕
目視により塗膜の透明性、欠損の有無を確認した。
〔碁盤目密着性〕
1mm×1mmの100個のマス目にセロテープ(登録商標)を貼り付け、剥離した際に、すべての膜が残ったものを100/100、すべて剥離したものを0/100とした。
〔鉛筆硬度〕
鉛筆の芯による、45°引掻きで、傷が生じるときの鉛筆の芯の硬さで判定する。
〔テーバー摩耗試験〕
テーバー摩耗試験機(摩耗輪CS−10F使用)を用いて硬化皮膜の摩耗試験(500g荷重、100回転)を行い、摩耗試験前後の硬化皮膜のHazeを、濁度計(NDH2000、日本電色工業製)を用いて測定し、摩耗試験後のHaze−摩耗試験前のHazeをΔHazeとした。
〔水接触角〕
接触角計(協和界面科学社製A3型)を用いて測定した。
〔保存安定性〕
コーティング剤溶液を25℃に30日放置し、粘度変化がないものを○とする。
【0053】
【表1】