(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリルアミド1kgに対して2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルを2〜100mg、マンガンイオンを0.2〜2.0mgの割合で含有する、アクリルアミド水溶液であって、
前記アクリルアミド水溶液中のアクリルアミド濃度が前記アクリルアミド水溶液全体の質量に対して30〜60質量%であるアクリルアミド水溶液。
アクリルアミド水溶液中に、アクリルアミド1kgに対して2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルを2〜100mg、マンガンイオンを0.2〜2.0mgの割合で存在させ、前記アクリルアミド水溶液中のアクリルアミド濃度が前記アクリルアミド水溶液全体の質量に対して30〜60質量%であるアクリルアミド水溶液の安定化方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することが可能である。
本明細書において引用した全ての刊行物、例えば、技術文献および公開公報、特許公報その他の特許文献は、その全体が本明細書において参考として組み込まれる。
【0010】
<アクリルアミド水溶液>
本発明のアクリルアミド水溶液は、アクリルアミドに対してTEMPOおよびマンガンイオンをそれぞれ所定の割合で含有する。従来のアクリルアミド水溶液にはTEMPOおよびマンガンイオンは含まれていない。TEMPOおよびマンガンイオンを所定の濃度となるように添加することで、アクリルアミド水溶液の品質の低下や重合操作への悪影響を生じることなくアクリルアミドの重合を抑制できる。そのため本発明のアクリルアミド水溶液は安定性に優れている。
TEMPOの含有量は、アクリルアミド1kgに対して2〜100mgであり、5〜50mgが好ましい。
マンガンイオンの含有量は、アクリルアミド1kgに対して0.2〜2.0mgであり、0.4〜1.2mgが好ましい。
TEMPO含有量、マンガン含有量がそれぞれアクリルアミド1kgに対して2mg未満、0.2mg未満であると、アクリルアミドの重合を抑制する安定化効果は小さい。アクリルアミド1kgに対してTEMPOを100mgより多く含有させると、アクリルアミド水溶液が橙色に着色し品質の低下を招き、アクリルアミド1kgに対してマンガンイオンを2mgより多く含有させると、アクリルアミド重合体を製造する際に、重合操作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
本発明のアクリルアミド水溶液は、アクリルアミド濃度が前記アクリルアミド水溶液全体の質量に対して30〜60質量%であることが好ましく、35〜55質量%がより好ましく、40〜50質量%が更に好ましい。
前記アクリルアミド濃度が60質量%よりも高い場合、常温近くでアクリルアミドの結晶が析出しやすくなるため、加熱装置が必要となり設備コストが増加するだけでなく、温度管理などの操作性も複雑化する。したがって、本発明におけるアクリルアミド水溶液のアクリルアミド濃度は、常温近くでもアクリルアミドの結晶が析出することのない範囲であるかぎり特に限定されないが、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。
一方、アクリルアミド濃度が30質量%よりも低いと、貯蔵や保管に用いるタンク容積が過大となったり、輸送コストが増大して、工業的には経済的に不利となる。したがって、アクリルアミド水溶液のアクリルアミド濃度は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、最も好ましくは40質量%以上である。
アクリルアミド水溶液のアクリルアミド濃度は、製造条件によって調整できる。たとえば後述するように生体触媒の存在下でアクリロニトリルを水和してアクリルアミドを生成させる場合、反応原料中のアクリロニトリル濃度、用いる生体触媒の種類や形態、又は反応条件(反応温度、反応時間、又は反応器の数等)等によって調整できる。
【0012】
本発明のアクリルアミド水溶液は、さらに、安定化を補助する目的で、炭素数2以上の水溶性モノカルボン酸塩の少なくとも1種を含有してもよい。
前記水溶性モノカルボン酸塩は、飽和モノカルボン酸塩、不飽和モノカルボン酸塩のいずれでもよい。飽和カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、又はn−カプロン酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、又はビニル酢酸などが挙げられる。塩としては、前記水溶性モノカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩が代表的である。
前記水溶性モノカルボン酸塩の含有量は、アクリルアミド1kgに対し、酸として20〜5000mgが好ましい。
本発明のアクリルアミド水溶液は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、既知の安定化剤を含有してもよい。
【0013】
本発明のアクリルアミド水溶液の製造方法としては、公知の方法によって製造されたアクリルアミド水溶液(TEMPOおよびマンガンイオンを含まないアクリルアミド水溶液。以下「製品アクリルアミド水溶液」)にTEMPOおよびマンガンイオンをそれぞれ所定の濃度となるように添加する方法、製品アクリルアミド水溶液の製造に用いられる反応原料に対しTEMPOおよびマンガンイオンをそれぞれ所定の濃度となるように添加する方法、又は製品アクリルアミド水溶液を製造する任意の工程でTEMPOおよびマンガンイオンをそれぞれ所定の濃度となるように添加する方法、が挙げられる。これらの方法においては、製品アクリルアミド水溶液に対し、または製品アクリルアミド水溶液の製造に用いられる反応原料に対し、または製品アクリルアミド水溶液を製造する任意の工程で、炭素数2以上の水溶性モノカルボン酸塩、その他の既知の安定化剤等を添加してもよい。
上記の中でも、TEMPO濃度およびマンガンイオン濃度の調整が容易であることから、製品アクリルアミド水溶液に添加する方法が好ましい。
製品アクリルアミド水溶液の製造方法については後で詳しく説明する。
マンガンイオンの添加方法としては、水溶性のマンガン塩を直接添加する方法、水溶性のマンガン塩を水に溶解し、その水溶液を添加する方法等が挙げられる。水溶性のマンガン塩としては、硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、リン酸マンガン、又はリン酸水素マンガン等が挙げられる。
製品アクリルアミド水溶液へのTEMPO添加量が極微量となる場合は、添加し易いようにTEMPOを希釈した液を添加することもできる。同様に、製品アクリルアミド水溶液へのマンガンイオン添加量が極微量となる場合は、添加し易いようにマンガンイオンを希釈した液を添加することもできる。その際、TEMPOおよびマンガンイオンは、同じ希釈液に含有させてもよく、異なる希釈液に含有させてもよい。希釈液には水を用いても良いが、希釈液添加によるアクリルアミド濃度の低下が好ましくない場合は、所望のアクリルアミド濃度の製品アクリルアミド水溶液を希釈液として用いてもよい。
【0014】
本発明のアクリルアミド水溶液には上記所定量のTEMPOおよびマンガンイオンが含まれているが、それらの重合への悪影響(所望する高分子量の重合体が得られ難い、重合速度が低下する等)はほとんどない。したがって、本発明の製造方法により得られるアクリルアミド水溶液は、その後の用途に応じて、TEMPOおよびマンガンを含有したまま重合工程に供して所望のアクリルアミド重合体を得ることができる。
【0015】
(製品アクリルアミド水溶液の製造方法)
製品アクリルアミド水溶液の製造方法は特に限定されず、公知の方法が利用できる。通常、アクリロニトリルを水和してアクリルアミドを生成させる方法が好ましく用いられる。アクリロニトリルの水和方法としては、アクリルアミドの初期の工業的製法である硫酸水和法、現在の主な工業製法である銅触媒法、近年工業化された生体触媒法、等が挙げられ、何れの方法を用いてもよい。
上記のなかでも、反応副生物が少なく高純度なアクリルアミドが得られる点で、生体触媒法が好ましい。
生体触媒法は、生体触媒の存在下でアクリロニトリルを水和してアクリルアミドを生成する方法であり、数多くの文献、例えば、特公昭56−17918号公報、特公昭59−37951号公報、特開平2−470号公報および国際公開第2009/113654号公報等に記載されている。本発明においては、それら公知の方法を利用できる。
【0016】
ここで、生体触媒としては、目的とする反応を触媒する酵素(ニトリルヒドラターゼ)を含有する動物細胞、植物細胞、細胞小器官、微生物の菌体(生菌体又は死滅体)およびそれらの処理物が含まれる。
前記処理物としては、動物細胞、植物細胞、細胞小器官または微生物の菌体から抽出された酵素(粗酵素または精製酵素);動物細胞、植物細胞、細胞小器官、微生物の菌体または酵素自体を担体に固定化したもの;等が挙げられる。
固定化方法としては、包括法、架橋法、担体結合法等が挙げられる。包括法とは、菌体又は酵素を高分子ゲルの微細な格子の中に包み込むか、半透膜性の高分子の皮膜によって被覆する方法である。架橋法とは、酵素を2個又はそれ以上の官能基を持った試薬(多官能性架橋剤)で架橋する方法である。担体結合法とは、水不溶性の担体に酵素を結合させる方法である。
固定化に用いる単体(固定化担体)としては、例えば、ガラスビーズ、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カラギーナン、アルギン酸、寒天及びゼラチン等が挙げられる。
【0017】
生体触媒としては、特に、微生物の菌体又はその処理物が好ましい。
前記微生物としては、例えば、ノカルディア(Nocardia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobavter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属及びシュードノカルディア(Pseudonocardia)属等に属する微生物等が挙げられる。
【0018】
生体触媒を用いた製品アクリルアミド水溶液の製造は、連続的にアクリルアミドを生成させる連続反応により行ってもよく、非連続的にアクリルアミドを生成させるバッチ反応により行ってもよく、限定はされないが、連続反応により行うことが好ましい。
連続反応により行う場合、反応器への反応原料(生体触媒、原料水及びアクリロニトリルを含む)の連続的又は間歇的な導入と、反応器からの反応混合物(生成したアクリルアミドを含む)の連続的又は間歇的な取り出しを行いながら、反応器内の反応混合物を全量抜き出すことなく連続的に製品アクリルアミド水溶液を製造する。
バッチ反応により行う場合、反応原料を反応器に一度に全量仕込んでから反応させることにより、又は反応原料の一部を反応器に仕込んだ後、連続的又は間歇的に残りの反応原料を供給して反応させることにより、製品アクリルアミド水溶液を製造する。
反応器の形式としては、撹拌槽型、固定層型、流動層型、移動層型、管型、又は塔型等、種々の形式の反応器を用いることができる。反応器は、1つのみを使用してもよいし、複数を併用してもよい。複数の反応器を併用した場合、下流側ほど取り出される反応混合物中のアクリルアミド濃度が高くなる。そのため、反応器の数により、最終的に得られる製品アクリルアミド水溶液のアクリルアミド濃度を調節できる。
複数の反応器を用いて連続的に反応を行う場合、生体触媒、アクリロニトリルを導入する反応器は、反応の効率等を悪化させすぎない範囲内であれば、最も上流に位置する反応器のみには限定されず、それよりも下流の反応器に導入してもよい。
【0019】
反応原料のうち、原料水は、アクリルアミドを生成する際に、アクリロニトリルとの水和反応に利用されるものである。原料水としては、水;若しくは酸、又は塩類等を水に溶解した水溶液等が挙げられる。酸としては、リン酸、酢酸、クエン酸、又はホウ酸等が挙げられる。塩類としては、前記酸のナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等が挙げられる。原料水の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば純水、市水、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、又はホウ酸緩衝液などが挙げられる。原料水のpH(25℃)は、5〜9が好ましい。
生体触媒の使用量は、用いる生体触媒の種類、形態によっても異なるが、反応器中に導入する生体触媒の活性が、反応温度10℃で乾燥菌体1mg当たり50〜500U程度となるように調整することが好ましい。ただし、前記単位U(ユニット)とは、1分間にアクリロニトリルからアクリルアミドを1マイクロモル生成させることを意味し、製造に用いるアクリロニトリルを用いて測定した値である。
アクリロニトリルの使用量は、用いる生体触媒の種類、形態によっても異なるが、反応原料中のアクリロニトリルの濃度が反応原料全体の質量に対して0.5〜15.0質量%程度となるように調整することが好ましい。
【0020】
反応温度(反応混合物温度)は、限定はされないが、10〜50℃であることが好ましく、20〜40℃であることがより好ましい。反応温度が10℃以上であれば、生体触媒の反応活性を充分に高められる。また、反応温度が40℃以下であれば、生体触媒の失活を抑制しやすい。
反応時間は、限定はされないが、1〜50時間であることが好ましく、3〜30時間であることがより好ましい。
製品アクリルアミド水溶液の製造を連続反応により行う場合、反応器中から反応混合物を取り出す際の流体速度は、反応器内の反応混合物を全量抜き出すことなく連続的に製造できるように、アクリロニトリル及び生体触媒の導入速度に合わせて決定すればよい。
【0021】
<アクリルアミド水溶液の安定化剤>
本発明の安定化剤は、アクリルアミド水溶液の安定化に用いられるもので、TEMPOおよびマンガンイオンを含む。
本発明の安定化剤中、TEMPOとマンガンイオンとの質量比は、TEMPO:マンガンイオン=2〜100:0.2〜2であることが好ましく、5〜50:0.4〜1.2であることがより好ましい。
本発明の安定化剤は、TEMPOおよびマンガンの安定化効果を低下させるものでないかぎり、TEMPOおよびマンガンイオン以外の他の成分を含んでいてもよい。
本発明の安定化剤の使用量は、特に限定されるものではなく適宜加減することができるが、当該安定化剤が添加されたアクリルアミド水溶液において所望のTEMPO濃度(例えば、アクリルアミド1kgに対して2〜10mg)およびマンガンイオン濃度(例えば、アクリルアミド1kgに対して0.2〜2mg)を達成できる量とすることが好ましい。
本発明の安定化剤は、他の既知の安定化剤と混合して用いることもできる。
【0022】
<アクリルアミド水溶液の安定化方法>
本発明の安定化方法では、アクリルアミド水溶液中に、アクリルアミド1kgに対してTEMPOを2〜100mg、マンガンイオンを0.2〜2.0mgの割合で存在させる。上述したように、従来のアクリルアミド水溶液(製品アクリルアミド水溶液)にはTEMPOおよびマンガンイオンは含まれていないが、そこにTEMPOおよびマンガンイオンを所定の濃度で存在させることで、アクリルアミド水溶液の品質の低下や重合操作への悪影響を生じることなくアクリルアミドの重合を抑制し、アクリルアミド水溶液の安定性を向上させることができる。
TEMPO濃度およびマンガンイオン濃度の調整は、TEMPOおよびマンガンの添加によって行うことができるが、これらに限定されるものではない。
TEMPOおよびマンガンの添加は、上述したように、製品アクリルアミド水溶液に対して行ってもよいし、製品アクリルアミド水溶液の製造に用いられる反応原料に対して行ってもよいし、製品アクリルアミド水溶液を製造する任意の工程で行ってもよい。TEMPO濃度およびマンガンイオン濃度の調整が容易であることから、製品アクリルアミド水溶液に対して添加することが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の各例において「%」は、特に限定のない限り、「質量%」を示す。
pHは、25℃における値をガラス電極法により測定した。
【0024】
[実施例1:アクリルアミド1kgに対してTEMPO2mg、マンガンイオン0.2mg含有アクリルアミド水溶液]
50%アクリルアミド水溶液(pH6.8で、アクリルアミド1kgに対してアクリル酸を200mg含むもの。TEMPOおよびマンガンイオンは含まない。以下「アクリルアミド水溶液A」という。)を、微生物法によりアクリロニトリルを水和させて製造した。より詳細には、日本国特許第2548051号公報の実施例2に記載の方法に従って、アクリロニトリルからアクリルアミド水溶液Aを製造した。
TEMPO(関東化学株式会社製)を純水で希釈してTEMPO濃度50mg/kgのTEMPO水溶液(以下「50mg/kgTEMPO水溶液」という。)を調整した。
硫酸マンガン五水和物(関東化学株式会社製)を純水で希釈して、マンガンイオン濃度100mg/kgのマンガン水溶液(以下「100mg/kgマンガン水溶液」という。)を調整した。
アクリルアミド水溶液A500gに、50mg/kgTEMPO水溶液を10.0g、100mg/kgマンガン水溶液を0.5g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してに対してTEMPOを2mg、マンガンイオンを0.2mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液B」という。)を得た。
【0025】
(アクリルアミド水溶液の外観の評価)
アクリルアミド水溶液Bの外観(着色の有無)を目視で観察したところ、着色はなかった。
(アクリルアミド水溶液の安定性の評価)
アクリルアミド水溶液Bを30g取り、50mLのポリプロピレン製容器(アズワン株式会社製、アイボーイ広口びん)に入れた。
ステンレスワッシャー(SUS304、内径9mm、外径18mm)をアセトンで洗浄した後、純水で洗浄し乾燥させた。乾燥後、このワッシャーを、アクリルアミド水溶液Bの入っている50mLのポリプロピレン製容器内へ入れた。このポリプロピレン製容器を70℃に保持した恒温器内へ入れ、アクリルアミド水溶液B中のアクリルアミドが重合するまで(ポップコーン状の重合物が生成するまで)の日数を測定した。
その結果、41日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0026】
[実施例2:アクリルアミド1kgに対してTEMPO100mg、マンガンイオン0.2mg含有アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液A500gに、TEMPOを0.025g、100mg/kgマンガン水溶液を0.5g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してに対してTEMPOを100mg、マンガンイオンを0.2mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液C」という。)を得た。
得られたアクリルアミド水溶液Cについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、着色はなく、52日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0027】
[実施例3:アクリルアミド1kgに対してTEMPO2mg、マンガンイオン2.0mg含有アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液A500gに、50mg/kgTEMPO水溶液を10.0g、100mg/kgマンガン水溶液を5.0g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してに対してTEMPOを2mg、マンガンイオンを2.0mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液D」という。)を得た。
得られたアクリルアミド水溶液Dについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、着色はなく、44日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0028】
[実施例4:アクリルアミド1kgに対してTEMPO100mg、マンガンイオン2.0mg含有アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液A500gに、TEMPOを0.025g、100mg/kgマンガン水溶液を5.0g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してに対してTEMPOを100mg、マンガンイオンを2.0mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液E」という。)を得た。
得られたアクリルアミド水溶液Eについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、着色はなく、53日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0029】
[比較例1:TEMPO、マンガンイオン無添加アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液Aについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、着色はなかったが、3日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0030】
[比較例2:アクリルアミド1kgに対してTEMPO1mg、マンガンイオン0.1mg含有アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液A500gに、50mg/kgTEMPO水溶液を5.0g、100mg/kgマンガン水溶液を0.25g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してに対してTEMPOを1mg、マンガンイオンを0.1mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液F」という。)を得た。
得られたアクリルアミド水溶液Fについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、着色はなかったが、6日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0031】
[比較例3:アクリルアミド1kgに対してTEMPO1mg、マンガンイオン3.0mg含有アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液A500gに、50mg/kgTEMPO水溶液を5.0g、100mg/kgマンガン水溶液を7.5g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してTEMPOを1mg、マンガンイオンを3.0mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液G」という。)を得た。
得られたアクリルアミド水溶液Gについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、着色はなかったが、8日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0032】
[比較例4:アクリルアミド1kgに対してTEMPO150mg、マンガンイオン0.1mg含有アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液A500gに、TEMPOを0.0375g、100mg/kgマンガン水溶液を0.25g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してTEMPOを150mg、マンガンイオンを0.1mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液H」という。)を得た。
得られたアクリルアミド水溶液Hについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、橙色に着色していた。また、31日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0033】
[比較例5:アクリルアミド1kgに対してTEMPO2mg、マンガンイオン0.1mg含有アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液A500gに、50mg/kgTEMPO水溶液を10.0g、100mg/kgマンガン水溶液を0.25g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してTEMPOを2mg、マンガンイオンを0.1mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液I」という。)を得た。
得られたアクリルアミド水溶液Iについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、着色はなかったが、9日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0034】
[比較例6:アクリルアミド1kgに対してTEMPO1mg、マンガンイオン0.2mg含有アクリルアミド水溶液]
アクリルアミド水溶液A500gに、50mg/kgTEMPO水溶液を5.0g、100mg/kgマンガン水溶液を0.5g添加することにより、アクリルアミド1kgに対してTEMPOを1mg、マンガンイオンを0.2mg含有するアクリルアミド水溶液(以下「アクリルアミド水溶液J」という。)を得た。
得られたアクリルアミド水溶液Jについて、実施例1と同様の手順で外観および安定性を評価したところ、着色はなかったが、5日後にポップコーン状の重合物が生成した。
【0035】
【表1】
【0036】
上記結果に示すとおり、アクリルアミド水溶液中に、アクリルアミド1kgに対してTEMPOを2〜100mg、マンガンイオンを0.2〜2.0mgの割合で含有させることで、アクリルアミドの品質を低下させることなく、アクリルアミドの重合を抑制でき、アクリルアミド水溶液の安定性を大幅に向上させることができた。