【実施例】
【0083】
[実施例1]
実施例1では、本発明のホログラフィックメモリの記録方法および再生方法を用いて、16値空間直交振幅変調信号(16−SQAM)の記録および再生のシミュレーションを行った結果を示す。
【0084】
信号点を円上に並べるだけでは8つ程度の位相状態より多くを配列しようとすると互いの信号波形が類似してしまい、位相変調だけで多くの信号状態を詰め込むのは好ましくない。そこで、位相変調に振幅変調も加えることでより多くの信号状態を持たせた変調方式が空間直交振幅変調(SQAM)である。
【0085】
変調する信号の同相成分をIとし、直交成分をQとしたとき、これらの信号はそれぞれ以下のように表すことができる。
【数3】
【0086】
ここで、光波の角周波数をωとし、時間をtとし、波数をkとし、空間変数をrとすると、三角関数の加法定理より、
【数4】
と表される。すなわち、信号の同相成分Iおよび直交成分Qを変調することは、光波の振幅Aと位相φを変調することと等価である。以上より、空間直交振幅変調信号の記録および再生が可能であるということは、多値位相変調信号、多値振幅変調信号およびこれらを組み合わせた様々な変調信号を記録再生することが可能であることを意味する。
【0087】
本実施例で用いた16値空間直交振幅変調信号(16−SQAM)のダイアグラムを
図19に示す。図の横軸は「実軸」または「I軸」と呼ばれ、縦軸は「虚軸」または「Q軸」と呼ばれる。これらは、式(3)の変数IおよびQに対応する。ダイアグラム上にプロットされている点は、「信号点」と呼ばれる。複数の信号点によって、1セットの変調符号が表される。また、このダイアグラムが表す複素平面は、両軸の「0」点を中心として信号の振幅および位相を示している。「0」点からの距離が振幅を表し、「0」点に対する角度が位相を表している。したがって、中心から等距離に位置するが、中心に対して異なる角度に位置する複数のシンボルは、信号波形の振幅は等しいが、位相は互いに異なっている。
【0088】
本実施例では、本発明の記録方法および再生方法を用いて、16値空間直交振幅変調信号(16−SQAM)を記録および再生した場合のシミュレーションを行った。数値解析ツールは、FFT−BPM(高速フーリエ変換ビーム伝搬法)を用いた(Junya Tanaka, Atsushi Okamoto and Motoki Kitano, "Development of Image-Based Simulation for Holographic Data Storage System by Fast Fourier Transform Beam-Propagation Method", Japanese Journal of Applied Physics, Vol.48, No.3 (Issue 2), pp.03A028(1-5).)。数値解析に用いたパラメータを表1に示す。
【表1】
【0089】
記録に用いた信号ページデータ(空間直交振幅変調信号)を
図20に示す。
図20に示されるように、信号ページデータの大きさは32×32ピクセルである。信号ページデータの各ピクセルは、
図20Aに示される位相情報φ(x,y)および
図20Bに示される振幅情報A(x,y)の両方の値を有している。すなわち、
図20Aに示される位相情報φ(x,y)および
図20Bに示される振幅情報A(x,y)を合わせて1つの信号ページデータが表現される)。
図20Aに示される位相情報は、可視化のためグレースケールで描かれている。
【0090】
また、記録および再生に用いた参照光の強度パターンを
図21に示す。
図21Aは、部分参照光Aの強度パターンであり、外周部外側に位置している。
図21Bは、部分参照光Bの強度パターンであり、外周部内側に位置している(
図8参照)。
【0091】
今回のシミュレーションでは、記録媒体として標準的なフォトポリマーを仮定し、信号ページデータ(信号光)および干渉光を多重記録した。記録されたホログラム(ホログラムAおよびホログラムB)に、参照光(部分参照光Aおよび部分参照光B)を照射して、ホログラムAの回折光およびホログラムBの回折光を発生させた。
【0092】
(マルチショット・デュアルステージモードによる復調)
マルチショット・デュアルステージモード(
図14参照)では、再生時に部分参照光Bの位相をSLMによって0,π/2,π,3π/2と順次変化させて、ホログラムBの回折光の位相を0,π/2,π,3π/2と順次変化させることで、4枚の2段目のホログラム(デジタルホログラム)が得られた。これら4枚のデジタルホログラムを光電変換して得られる信号強度分布を
図22に示す。
図22Aは、部分参照光Bの位相が0のときのデジタルホログラムであり、
図22Bは、部分参照光Bの位相がπ/2のときのデジタルホログラムであり、
図22Cは、部分参照光Bの位相がπのときのデジタルホログラムであり、
図22Dは、部分参照光Bの位相が3π/2のときのデジタルホログラムである。
【0093】
これらの4枚の信号強度分布から、上記式(1)および式(2)を用いて復調したページデータを
図23に示す。
図23Aは、復調したページデータの位相情報であり、
図23Bは、復調したページデータの振幅情報である(
図20と比較参照)。
【0094】
図24は、復調したページデータの信号点分布を示すグラフである。このグラフから、16値空間直交振幅変調信号(16−SQAM)が明瞭に分離されていることがわかる。
【0095】
今回のシミュレーションで生じたエラーの数は2個であった。ページデータのシンボル数は1024個(32×32)であることから、シンボルエラーレートは1.95×10
−3である。これは、現状のホログラフィックメモリにおけるエラー訂正能力(1×10
−2)を考慮すると、実用上十分な性能といえる。
【0096】
(シングルショット・デュアルステージモードによる復調)
シングルショット・デュアルステージモード(
図15参照)では、記録時に干渉光の位相をSLMによって変化させることで、1つの信号データピクセルの中に4つの異なる位相(0,π/2,π,3π/2)を持った1枚の2段目のホログラム(デジタルホログラム)が得られた。このデジタルホログラムを光電変換して得られる信号強度分布を
図25に示す。
図25に示される信号領域(中央の四角い部分)は、
図22と比較すると縦横それぞれ2倍、すなわち4倍の細かさを有している。
【0097】
この信号強度分布から、上記式(1)および式(2)を用いて復調したページデータを
図26に示す。
図26Aは、復調したページデータの位相情報であり、
図26Bは、復調したページデータの振幅情報である(
図20と比較参照)。
【0098】
図27は、復調したページデータの信号点分布を示すグラフである。このグラフから、16値空間直交振幅変調信号(16−SQAM)が明瞭に分離されていることがわかる。
【0099】
今回のシミュレーションで生じたエラーの数は3個であった。前述の通り、ページデータのシンボル数は1024個であることから、シンボルエラーレートは2.93×10
−3である。これは、現状のホログラフィックメモリにおけるエラー訂正能力(1×10
−2)を考慮すると、実用上十分な性能といえる。
【0100】
[実施例2]
実施例2では、本発明のホログラフィックメモリの記録方法および再生方法において、1つの干渉光に対して複数の信号ページデータを多重記録する場合の動作検証を行った。
【0101】
本実施例では、4値空間位相変調信号(4−SPM)を記録および再生した場合のシミュレーションを行った。数値解析ツールとしては、実施例1と同一のFFT−BPM(高速フーリエ変換ビーム伝搬法)を用いた。数値解析に用いたパラメータは、実施例1と同様である(表1参照)。
【0102】
記録に用いた3枚の信号ページデータ(4値位相変調信号)を
図28に示す。
図28Aは、信号ページデータ#1の位相情報φ(x,y)を示し、
図28Bは、信号ページデータ#2の位相情報φ(x,y)を示し、
図28Cは、信号ページデータ#3の位相情報φ(x,y)を示している。各ピクセルの位相は、0,π/2,π,3π/2の4値のいずれかである。
図28に示されるように、信号ページデータの大きさは32×32ピクセルである。
図28に示される位相情報は、可視化のためグレースケールで描かれている。
【0103】
今回のシミュレーションでは、記録媒体として標準的なフォトポリマーを仮定し、1つの干渉光に対して3枚の信号ページデータを多重記録した。記録されたホログラム(ホログラムAおよびホログラムB)に、参照光(部分参照光Aおよび部分参照光B)を照射して、ホログラムAの回折光およびホログラムBの回折光を発生させた。
【0104】
(マルチショット・デュアルステージモードによる復調)
マルチショット・デュアルステージモード(
図14参照)を用いて得られる4枚の2段目のホログラムから、上記式(1)および式(2)を用いて復調したページデータ(アナログデータ)を
図29に示す。
図29Aは、復調した信号ページデータ#1の位相情報を示し、
図29Bは、復調した信号ページデータ#2の位相情報を示し、
図29Cは、復調した信号ページデータ#3の位相情報を示している。
【0105】
図29の信号ページデータは、演算直後のアナログ値であるため、閾値処理により位相4値のデジタルデータに変換した。変換されたページデータ(デジタルデータ)を
図30に示す。
図30Aは、復調した信号ページデータ#1の位相情報を示し、
図30Bは、復調した信号ページデータ#2の位相情報を示し、
図30Cは、復調した信号ページデータ#3の位相情報を示している(
図28と比較参照)。
【0106】
図31は、復調した各ページデータの信号点分布を示すグラフである。
図31Aは、信号ページデータ#1の信号点分布を示し、
図31Bは、信号ページデータ#2の信号点分布を示し、
図31Cは、信号ページデータ#3の信号点分布を示している。これらのグラフから、4値空間位相変調信号(4−SPM)が明瞭に分離されていることがわかる。
【0107】
今回のシミュレーションで生じたエラーの数は、3枚の信号ページデータの合計で1個であった。ページデータのシンボル数は3072個(32×32×3)であることから、シンボルエラーレートは3.26×10
−4である。これは、現状のホログラフィックメモリにおけるエラー訂正能力(1×10
−2)を考慮すると、実用上十分な性能といえる。
【0108】
[実施例3]
実施例3では、本発明のホログラフィックメモリの記録方法および再生方法を用いて、2値空間位相変調信号(2−SPM)の記録および再生を実際に行った結果を示す。
【0109】
図32は、実験に用いたホログラフィックメモリ記録再生装置の構成を示す模式図である。このホログラフィックメモリ記録再生装置は、コリニア・ホログラフィ法によりホログラム(ホログラムAおよびホログラムB)の記録および再生を行う。2値空間位相変調信号の検出は、直接検出モードで行った(
図13参照)。
【0110】
図32に示されるように、ホログラフィックメモリ記録再生装置は、レーザ光源(Laser)、ビーム拡大光学系(BE)、半波長板(HWP)、偏光子(Pol.)、ランダム位相板(RPM)、強度変調空間光変調器(SLM(Intensity))、第1のレンズ(Lens 1)、ミラー(Mirror)、第2のレンズ(Lens 2)、ビームスプリッタ(BS)、位相変調空間光変調器(SLM(Phase))、第3のレンズ(Lens3)、第4のレンズ(Lens 4)、第5のレンズ(Lens 5)、第6のレンズ(Lens 6)、NDフィルタ(NDF)、第7のレンズ(Lens 7)およびCCDカメラ(CCD)を有する。このホログラフィックメモリ記録再生装置は、第5のレンズ(Lens 5)と第6のレンズ(Lens 6)との間に記録媒体(Media)を設置して、記録および再生を行う。記録媒体には、ホログラム記録に一般的に使用されているフォトポリマーを使用した。
【0111】
図32に示されるように、レーザ光源から射出された光は、ビーム拡大光学系(BE)で適切な大きさに拡大され、半波長板(HWP)により偏光方向が調整される。ランダム位相板(RPM)には、光にランダムな位相を付与することで、ホログラムの中心部に光強度が集中することを防ぐ効果がある。
【0112】
強度変調SLMは、SLM本体と、その両側に配置された2つの偏光子により構成される。強度変調SLMは、部分参照光Aと部分参照光Bとの切り替え、および信号光の照射切り替えに使用される。すなわち、ホログラムBを記録する時には、強度変調SLMは、部分参照光Bおよび干渉光(全領域において同一強度かつ同一位相の信号光)を透過させる。ホログラムAを記録する時には、強度変調SLMは、部分参照光Aおよび信号光を透過させる。一方、ホログラムAおよびホログラムBを再生する時には、強度変調SLMは、部分参照光Aおよび部分参照光Bを透過させるが、信号光は透過させない。強度変調SLMを透過した光は、位相変調SLMにおいて所定の位相変調が加えられる。
【0113】
図33は、ホログラムBを記録する時の位相変調SLMのパターンを示す図である。
図33に示されるように、部分参照光Bは外周部に位置し、干渉光は中央部に位置する。部分参照光Bおよび干渉光は、いずれも全領域に亘って同一の位相である。
【0114】
図34は、ホログラムAを記録する時の位相変調SLMのパターンを示す図である。本実験では、2枚の信号ページデータ(16×16)を多重記録した。
図34Aは、信号ページデータ#1を記録する時の位相変調SLMのパターンを示す図であり、
図34Bは、信号ページデータ#2を記録する時の位相変調SLMのパターンを示す図である。
図34に示されるように、部分参照光Aは外周部に位置し、信号光は中央部に位置する。部分参照光Aおよび部分参照光Bは、いずれも外周部に位置するが、互いに重なっていない(
図33と
図34を比較参照)。また、信号ページデータ#1を記録する時の部分参照光Aの位相パターンと、信号ページデータ#2を記録する時の部分参照光Aの位相パターンとは、互いに異なる(
図34Aと
図34Bを比較参照)。
図34に示される位相情報は、可視化のためグレースケールで描かれている。2値の位相は、白色=0、黒色=πである。
【0115】
位相変調SLMで生成された干渉光および部分参照光B(
図33参照)をフォトポリマー(記録媒体)に照射してホログラムBを記録した。次いで、位相変調SLMで生成された信号ページデータ#1を含む信号光と信号ページデータ#1を記録するための部分参照光A(
図34A参照)とをフォトポリマーに照射して、信号ページデータ#1のホログラムAを記録した。次いで、位相変調SLMで生成された信号ページデータ#2を含む信号光と信号ページデータ#2を記録するための部分参照光A(
図34B参照)とをフォトポリマーに照射して、信号ページデータ#2のホログラムAを記録した。
【0116】
図35は、ホログラムAおよびホログラムBを再生する時の位相変調SLMのパターンを示す図である。
図35Aは、信号ページデータ#1を再生する時の位相変調SLMのパターンを示す図であり、
図35Bは、信号ページデータ#2を再生する時の位相変調SLMのパターンを示す図である。
図35に示されるように、参照光は、部分参照光Aおよび部分参照光Bを含む。
【0117】
位相変調SLMで生成された参照光(
図35参照)をフォトポリマーに照射してホログラムAおよびホログラムBを再生し、CCDカメラで信号ページデータの強度分布を検出した(直接検出モード)。
【0118】
図36は、CCDカメラで検出した信号強度分布を示す画像である。
図36Aは、信号ページデータ#1の信号強度分布を示す画像であり、
図36Bは、信号ページデータ#2の信号強度分布を示す画像である。
【0119】
図37は、
図36に示される画像に対して2値の閾値処理を行って、2値のデジタルデータに変換した画像(再生ページデータ)である。
図37Aは、信号ページデータ#1の再生ページデータであり、
図36Bは、信号ページデータ#2の再生ページデータである。
【0120】
なお、
図36および
図37に示されるパターンは、
図34に示されるパターンの左右反転像である。これは、
図32に示されるように、位相変調空間光変調器(SLM(Phase))から出た信号パターンが、ビームスプリッタ(BS)によって反射された後に、CCDカメラ(CCD)で検出されるためである。
【0121】
今回の実験で生じたエラーの数は、2枚の信号ページデータの合計で2個であった。信号ページデータのシンボル数は512個(16×16×2)であることから、シンボルエラーレートは4×10
−3である。これは、現状のホログラフィックメモリにおけるエラー訂正能力(1×10
−2)を考慮すると、実用上十分な性能といえる。
【0122】
[実施例4]
実施例4では、本発明の記録方法および再生方法を用いて、2値空間位相変調信号(2−SPM)の記録および再生のシミュレーションを行った結果を示す。なお、本実施例では、コリニア・ホログラフィ法ではなく2光束干渉法により、2値空間位相変調信号(2−SPM)の記録および再生を行った。数値解析ツールとしては、実施例1と同一のFFT−BPM(高速フーリエ変換ビーム伝搬法)を用いた。数値解析に用いたパラメータは、実施例1と同様である(表1参照)。
【0123】
記録に用いた信号ページデータ(2値空間位相変調信号)を
図38Aに示し、干渉光の位相パターンを
図38Bに示す。
図38Aおよび
図38Bに示される位相情報は、可視化のためグレースケールで描かれている。
図38Aに示されるように、信号ページデータの大きさは32×32ピクセルである。信号ページデータの各ピクセルは、0(黒色で示す)またはπ(白色で示す)の2値の位相情報φ(x,y)を有している。信号ページデータの各ピクセルの強度は、一定である。また、
図38Bに示されるように、干渉光は、32×32ピクセルの平面波(位相および強度が空間的に一定)である。
【0124】
また、部分参照光Aの強度パターンを
図38Cに示し、部分参照光Bの強度パターンを
図38Dに示し、参照光(部分参照光Aおよび部分参照光B)の強度パターンを
図38Eに示す。
図38Eに示されるように、部分参照光Aおよび部分参照光Bは、互いに重なっていない。部分参照光Aおよび部分参照光Bの強度分布は、flat cosine-squared window function(Shun-Der Wu and Elias N. Glytsis, "Finite-number-of-periods holographic gratings with finite-width incident beams: analysis using the finite-difference frequency-domain method", J. Opt. Soc. Am. A, Vol.19, No.10, pp.2018-2029 (2002))により得られる。
【0125】
今回のシミュレーションでは、記録媒体として標準的なフォトポリマーを仮定し、信号ページデータ(信号光)および干渉光を2光束干渉法で多重記録した(
図11参照)。記録されたホログラム(ホログラムAおよびホログラムB)に、参照光(部分参照光Aおよび部分参照光B)を照射して、ホログラムAの回折光およびホログラムBの回折光を発生させ、これらの回折光により生成される干渉縞の強度分布を検出した(
図12参照)。本実施例では、記録されているページデータが2値位相変調信号であるため、直接検出モードで位相変調信号を復調することができる。
図38Fは、強度変調信号として再生されたページデータ(再生ページデータ)である。
【0126】
これらの結果から、2光束干渉法を利用しても、本発明の記録方法および再生方法により、信号ページデータの記録および再生を行いうることがわかる。
【0127】
[実施例5]
実施例5では、本発明の記録方法および再生方法を用いて、38値空間直交振幅変調信号(38−SQAM)の記録および再生のシミュレーションを行った結果を示す。なお、本実施例では、コリニア・ホログラフィ法により、38値空間直交振幅変調信号(38−SQAM)の記録および再生を行った。数値解析ツールとしては、実施例1と同一のFFT−BPM(高速フーリエ変換ビーム伝搬法)を用いた。数値解析に用いたパラメータは、実施例1と同様である(表1参照)。
【0128】
記録に用いた5枚の信号ページデータ(38値空間直交振幅変調信号)を
図39に示す。
図39Aは、信号ページデータ#1の振幅情報A(x,y)を示し、
図39Bは、信号ページデータ#2の振幅情報A(x,y)を示し、
図39Cは、信号ページデータ#3の振幅情報A(x,y)を示し、
図39Dは、信号ページデータ#4の振幅情報A(x,y)を示し、
図39Eは、信号ページデータ#5の振幅情報A(x,y)を示している。また、
図39Fは、信号ページデータ#1の位相情報φ(x,y)を示し、
図39Gは、信号ページデータ#2の位相情報φ(x,y)を示し、
図39Hは、信号ページデータ#3の位相情報φ(x,y)を示し、
図39Iは、信号ページデータ#4の位相情報φ(x,y)を示し、
図39Jは、信号ページデータ#5の位相情報φ(x,y)を示している。これらの図において、中央部の正方形の領域が信号ページデータ(信号光)のパターンであり、周辺部の円環状の領域が部分参照光Aのパターンである。信号ページデータの大きさは、32×32ピクセルである。
図39F〜Jに示される位相情報は、可視化のためグレースケールで描かれている。
【0129】
今回のシミュレーションでは、記録媒体として標準的なフォトポリマーを仮定し、1つの干渉光に対して5枚の信号ページデータを多重記録した。このとき、
図17に示されるように、信号光および干渉光について1つのデータピクセルを4つのサブピクセルに分割するとともに、信号光と干渉光の両方に位相分布を加えた。記録されたホログラム(ホログラムAおよびホログラムB)に、参照光(部分参照光Aおよび部分参照光B)を照射して、ホログラムAの回折光およびホログラムBの回折光を発生させ、シングルショット・デュアルステージモードにより位相変調信号を復調した。
【0130】
図17に示される例において、信号光の4つのサブピクセルに加える位相値をそれぞれα1,α2,α3,α4とする。また、干渉光の4つのサブピクセルの位相値をβ1,β2,β3,β4とする。このとき、
β1−α1=0 …(A1)
β2−α2=π/2(または−3π/2) …(A2)
β3−α3=π(または−π) …(A3)
β4−α4=3π/2(または−π/2) …(A4)
を満たすように、α1〜α4およびβ1〜β4の値を選択した。このとき、α1,α2,α3,α4は、互いに異なる位相値である。また、β1,β2,β3,β4も、互いに異なる位相値である。
【0131】
図40Aは、信号ページデータ#1の位相情報(32×32ピクセル)である(
図39Fと同じ)。
図40Bは、信号光に加える位相分布(64×64ピクセル)である。
図40Cは、
図40Aに示される信号ページデータ#1の位相情報に、
図40Bに示される位相分布を加えた後の、信号ページデータ#1の位相情報(64×64ピクセル)である。これらの図に示されるように、オリジナルの信号ページデータ(
図40A参照)に、上記式(A1)〜(A4)を満たす位相分布(
図40B参照)を加えることで得られる信号ページデータ(
図40C参照)をSLMで生成して、記録媒体に記録した。
【0132】
図41Aは、干渉光の位相情報(32×32ピクセル)である。
図41Bは、干渉光に加える位相分布(64×64ピクセル)である。
図41Aにおいて、周辺部の円環状の領域は、部分参照光Bの位相分布を示している。これらの図に示されるように、干渉光(
図41A参照)に、上記式(A1)〜(A4)を満たす位相分布(
図41B参照)を加えることで得られる干渉光をSLMで生成して、記録媒体に記録した。このように、干渉光の各サブピクセルの位相の組み合わせを、信号光のデータピクセルごとに異なる値とすることで、信号光および干渉光のスペクトルが記録媒体の特定位置に集中することを避けることができ、結果としてエラーの低減を期待することができる。
【0133】
図42は、復調したページデータの信号点分布を示すグラフである。
図42Aは、信号光に位相分布を加えずに干渉光のみに位相分布を加えて、シングルショット・デュアルステージモードにより位相変調信号を復調した結果である(上記式(A1)〜(A4)において、α1=α2=α3=α4=0、β1=0,β2=π/2,β3=π,β4=3π/2)。一方、
図42Bは、信号光および干渉光の両方に位相分布を加え、かつ干渉光の各サブピクセルの位相の組み合わせをデータピクセルごとに変えて、シングルショット・デュアルステージモードにより位相変調信号を復調した結果である(
図40および
図41に示される方法)。これらのグラフから、いずれの復調方法においても、38値空間直交振幅変調信号(38−SQAM)が明瞭に分離されていることがわかる。
【0134】
干渉光のみに位相分布を加えてシングルショット・デュアルステージモードで復調した場合(
図42A参照)、シンボルエラーレートは0.8%であった。一方、信号光および干渉光の両方に位相分布を加え、かつ干渉光の各サブピクセルの位相の組み合わせをデータピクセルごとに変えて、シングルショット・デュアルステージモードで復調した場合(
図42B参照)、シンボルエラーレートは0.5%であった。
【0135】
これらの結果から、シングルショット・デュアルステージモードにより復調する際に、信号光および干渉光の両方に上記式(A1)〜(A4)を満たす位相分布を加え、かつ干渉光の各サブピクセルの取りうる位相の組み合わせをデータピクセルごとに変えることで、復調の精度を向上させうることがわかる。
【0136】
本出願は、2011年7月11日出願の特願2011−152685に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。