特許第5988087号(P5988087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988087
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/02 20060101AFI20160825BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 303/00 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 309/00 20060101ALI20160825BHJP
   C07B 41/10 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 67/12 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 69/92 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 69/90 20060101ALI20160825BHJP
   C07D 317/32 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 69/94 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 249/16 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 251/88 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 231/02 20060101ALI20160825BHJP
   C07C 237/22 20060101ALI20160825BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C07C68/02 B
   C07C69/96 Z
   C07C303/00
   C07C309/00
   C07B41/10
   C07C67/12
   C07C69/92
   C07C69/90
   C07D317/32
   C07C69/94
   C07C249/16
   C07C251/88
   C07C231/02
   C07C237/22
   C07F7/10 P
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-129727(P2012-129727)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-253041(P2013-253041A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】堀口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 良夫
(72)【発明者】
【氏名】林 正直
(72)【発明者】
【氏名】楠本 哲生
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−053543(JP,A)
【文献】 特開2007−126400(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/052517(WO,A1)
【文献】 特表2000−505100(JP,A)
【文献】 特開2007−39345(JP,A)
【文献】 Keller, P. A.,Science of Synthesis,2006年,Vol.20a,p.617-641
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのカルボキシル基を有する一般式(I)
【化1】
(式中、Gは下記式(i)
【化2】
(式中、Aは各々独立して1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基又は単結合を表すが、これらの基は無置換又は、各々独立してハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルフラニル基又は炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されていても良いが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置換されても良く、AはP−Sp−で表される基(式中、Pは下記の式(P−1)から式(P−17)
【化3】
から選ばれる基を表し、Spは1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)で置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す。)によって置換されてもいても良く、Z11及びZ12は各々独立して−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)、−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表すが、このアルキレン基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキレン基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良く、m11は0から8の整数を表す。)を表し、R及びWは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1から20のアルキル基又はP−Sp−(式中、PはA中のPと同じ意味を表し、SpはAは中のSpと同じ意味を表す。ただし同一の基であっても異なる基であってもよい。)を表すが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良いが、R及びWのうち少なくとも一方はカルボキシル基を表す。)で表される化合物(1)と、塩基(2)とを予め混合すること無く、酸ハロゲン化合物(3)に対し同時に加え反応させる混合酸無水物(4)の製造方法。
【請求項2】
少なくとも一つのカルボキシル基を有する請求項1記載の前記一般式(I)で表される化合物(1)と、塩基(2)とを予め混合すること無く、酸ハロゲン化合物(3)に対し同時に加え反応させ混合酸無水物(4)とした後に、少なくとも一つのヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を有する化合物(5)を更に反応させるエステル化合物及び/又はアミド化合物(6)の製造方法。
【請求項3】
少なくとも一つのカルボキシル基を有する請求項1記載の前記一般式(I)で表される化合物(1)が、芳香族カルボン酸又は脂肪族カルボン酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
少なくとも一つのヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を有する化合物(5)が、アルコール類、フェノール類、チオール類、チオフェノール類、芳香族アミン及び/又は脂肪族アミンであることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
酸ハロゲン化合物(3)が、スルホン酸ハロゲン化合物、カルボン酸ハロゲン化合物又はハロゲンギ酸エステル化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
少なくとも一つのヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を有する化合物(5)が、下記一般式(II)
【化4】
(式中、Gは下記式(ii)
【化5】
(式中、Aは各々独立して1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基又は単結合を表すが、これらの基は無置換又は、各々独立してハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルフラニル基又は炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されていても良いが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良く、AはP−Sp−(式中、Pは請求項1記載のA中のPと同じ意味を表し、Spは請求項1記載のA中のSpと同じ意味を表す。ただし同一の基であっても異なる基であってもよい。)で表される基によって置換されてもいても良く、Z21及びZ22は各々独立して−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)、−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表すが、このアルキレン基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキレン基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良く、m21は0から8の整数を表す。)を表し、R及びWは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1から20のアルキル基又はP−Sp−(式中、PはA中のPと同じ意味を表し、SpはAは中のSpと同じ意味を表す。ただし同一の基であっても異なる基であってもよい。)を表すが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)で置換されても良いが、R及びWのうち少なくとも一方はヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を表す。)で表される化合物である請求項2記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエステル結合又は/及びアミド結合を有する化合物の製造法、当該製造法により得られた化合物を含有する組成物及び当該組成物を用いた医薬品、農薬、液晶材料、ポリマー、樹脂、顔料、染料、化粧品、食品、インキ、粘着剤、接着剤、印刷物、光学異方体、表示素子及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エステル結合又は/及びアミド結合を有する化合物は、合成樹脂、液晶材料、医薬品、農薬、顔料、染料、食品、合成繊維、プラスチック、添加剤又は化粧品を始めとする種々の用途に利用されている。いずれの用途においても、品質、安全性及び信頼性の観点からそれらの化合物は高純度であることが望まれる。また、収益性の観点からは収率良くそれらの化合物を製造することが重要である。
【0003】
特に電子材料分野においては使用する化合物の純度が高いことが望まれる。例えば、電子材料分野における光学異方体の分野に重合性液晶材料が使用されている。光学異方体は重合性液晶組成物を液晶状態で配列させた後、重合させることにより、均一な配向を有するフィルムや樹脂として得ることができる。このようにして作製したフィルムや樹脂は、液晶ディスプレイに必要な偏光板、位相差板などに使用することができる。多くの場合、要求される光学特性、重合速度、溶解性、融点、ガラス転移温度、フィルムの透明性、機械的強度、表面硬度、耐熱性及び耐光性を満たすために、2種類以上の重合性化合物からなる組成物が使用される。しかしながら、組成物を構成する重合性化合物に不純物が混入していると、作製したフィルムや樹脂にムラや変色等の問題が発生することがある。ムラや変色のあるフィルムを例えば液晶ディスプレイ用の光学フィルムとして使用すると、画面の明るさが不均一になったり、ディスプレイの色味が不自然になったりするため、液晶ディスプレイの表示品質を大きく低下させてしまう。このため、電子材料分野に使用される場合にはppmオーダーでの不純物の管理が要求される。
【0004】
エステル結合又は/及びアミド結合を有する化合物の製造方法としては種々の方法が知られているが、カルボキシル基を有する前駆体の混合酸無水物と、水酸基、アミノ基又は/及びメルカプト基を有する前駆体とを塩基存在下反応させることによる製造方法は、反応条件が穏和で、用いる原料が安価であることから広く用いられている。しかしながら、当該製造方法を公知の反応条件によって実施した場合、目的の化合物への転換率が低いために未反応の原料を除去する精製工程が必要となり、単離収率が低くなってしまったり、目的の化合物の純度が低下してしまったりする問題があった。また、精製後においても未反応の原料や副生成物が残留する問題があった。このようなエステル結合又は/及びアミド結合を有する化合物を含有する重合性液晶組成物を使用して作製したフィルムは、ムラが生じたり、重合させた後若しくは完全硬化のためにポストベーク処理を行った後に変色が起こったりしてしまい、そのようなフィルムを例えば液晶ディスプレイの部材として使用した場合、製品の品質を大きく低下させてしまう問題があった。そのため、エステル結合又は/及びアミド結合を有する化合物を収率良く高純度で得ることのできる製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−057635号公報
【特許文献2】WO2009−122868A1号公報
【特許文献3】特開平9−104642号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】The Journal of Organic Chemistry、1991、56(1)、405−411
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明が解決しようとする課題は、高収率かつ不純物含有量の少ないエステル結合又は/及びアミド結合を有する化合物の製造方法及び、当該製造方法により得られる高純度化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物と、塩基とを予め混合すること無く、同時に酸ハロゲン化合物に対し加え反応させることを特徴とする製造方法及び、当該製造方法により得られる高純度化合物を提供し、更に当該高純度化合物を中間体とする化合物及びその製造方法並びに、当該高純度化合物を使用した高純度組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の製造方法により製造されるエステル結合又は/及びアミド結合を有する化合物は、高収率かつ不純物含有量が少ないことから、種々の組成物の構成部材として有用である。また、本願発明の製造方法により製造される化合物を含有する組成物は医薬品、農薬、液晶材料、ポリマー、樹脂、顔料、染料、化粧品、食品、インキ、粘着剤、接着剤、印刷物、光学異方体、表示素子及び電子デバイスの用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物(1)と、塩基(2)とを予め混合すること無く、酸ハロゲン化合物(3)に対し同時に加え反応させる混合酸無水物(4)の製造方法を提供し併せて、少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物(1)と、塩基(2)とを予め混合すること無く、酸ハロゲン化合物(3)に対し同時に加え反応させ混合酸無水物(4)とした後に、少なくとも一つのヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を有する化合物(5)を更に反応させるエステル化合物及び/又はアミド化合物(6)の製造方法を提供する。
【0011】
これらの実施形態において、少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物(1)は、芳香族カルボン酸又は脂肪族カルボン酸であることが好ましい。
【0012】
少なくとも一つのヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を有する化合物(5)は、アルコール類、フェノール類、チオール類、チオフェノール類、芳香族アミン及び又は脂肪族アミンであることが好ましい。
【0013】
酸ハロゲン化合物(3)は、スルホン酸ハロゲン化合物、カルボン酸ハロゲン化合物又はハロゲンギ酸エステル化合物であることが好ましい。
【0014】
塩基(2)は、アミン、アミド、カルバメート、イミド、スルホンアミド、グアニジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ヒドラジン、複素環アミン、それらの塩、金属アルコキシド又は金属水酸化物であることが好ましい。
【0015】
更に、少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物(1)は、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、Gは下記式(i)
【0018】
【化2】
【0019】
(式中、Aは各々独立して1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基又は単結合を表すが、これらの基は無置換又は、各々独立してハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルフラニル基又は炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されていても良いが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置換されても良く、AはP−Sp−で表される基(式中、Pは下記の式(P−1)から式(P−17)
【0020】
【化3】
【0021】
から選ばれる基を表し、Spは1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)で置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す。)によって置換されてもいても良く、Z11及びZ12は各々独立して−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)、−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表すが、このアルキレン基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキレン基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良く、m11は0から8の整数を表す。)を表し、R及びWは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1から20のアルキル基又はP−Sp−(式中、PはA中のPと同じ意味を表し、SpはAは中のSpと同じ意味を表す。ただし同一の基であっても異なる基であってもよい。)を表すが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良いが、R及びWのうち少なくとも一方はカルボキシル基を表す。)
更に少なくとも一つのヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を有する化合物(5)は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
(式中、Gは下記式(ii)
【0024】
【化5】
【0025】
(式中、Aは各々独立して1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基又は単結合を表すが、これらの基は無置換又は、各々独立してハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルフラニル基又は炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されていても良いが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良く、AはP−Sp−(式中、PはA中のPと同じ意味を表し、SpはAは中のSpと同じ意味を表す。ただし同一の基であっても異なる基であってもよい。)で表される基によって置換されてもいても良く、Z21及びZ22は各々独立して−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY=CY−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)、−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表すが、このアルキレン基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキレン基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良く、m21は0から8の整数を表す。)を表し、R及びWは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1から20のアルキル基又はP−Sp−(式中、PはA中のPと同じ意味を表し、SpはAは中のSpと同じ意味を表す。ただし同一の基であっても異なる基であってもよい。)を表すが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)で置換されても良いが、R及びWのうち少なくとも一方はヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を表す。)
更に、酸ハロゲン化合物(3)は、下記式(III−1)又は式(III−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0026】
【化6】
【0027】
(式中、Uは有機基を表し、Uは水素原子又は有機基を表し、Vはハロゲンを表す。)
混合酸無水物(4)は、下記一般式(IV)で表される化合物であることが好ましい。
【0028】
【化7】
【0029】
(式中、R、G及びWは各々一般式(I)におけるR、G及びWと同じ意味を表すが、一般式(I)においてR及び/又はWがカルボキシル基を表す場合には、対応するR及び/又はWは下記式(IV−1)又は式(IV−2)
【0030】
【化8】
【0031】
(式中、U及びUは式(III−1)及び式(III−2)におけるU及びUと同じ意味を表す。)で表される。)
エステル化合物及び/又はアミド化合物(6)は、下記一般式(V−1)から一般式(V−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0032】
【化9】
【0033】
(式中、Gは一般式(I)におけるGと同じ意味を表し、Gは一般式(II)におけるGと同じ意味を表し、Q及びQは各々独立して−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COS−又は−SCO−を表し、R及びWは各々独立して一般式(I)におけるR又はW若しくは一般式(II)におけるR又はWと同じ意味を表す。) Pで表される基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合及びアニオン重合により硬化する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(P−1)、式(P−2)、式(P−3)、式(P−4)、式(P−5)、式(P−7)、式(P−11)、式(P−13)又は式(P−15)が好ましく、式(P−1)、式(P−2)、式(P−7)、式(P−11)又は式(P−13)がより好ましく、式(P−1)又は式(P−2)が特に好ましい。
【0034】
Spは1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)に置き換えられても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表すが、本願発明の製造方法により製造される化合物を液晶材料に使用する場合には、液晶性及び他の成分との相溶性の観点から1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−又は−C≡C−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基を表す。)に置き換えられても良い炭素原子数1から12のアルキレン基又は単結合が好ましく、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−COO−又は−OCO−に置き換えられても良い炭素原子数1から12のアルキレン基又は単結合がより好ましく、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−COO−又は−OCO−に置き換えられても良い炭素原子数1から8のアルキレン基又は単結合が特に好ましい。
【0035】
さらに一般式(I)及び一般式(II)で表される化合物は合成の容易さの観点及び、液晶材料に使用する場合には液晶性の観点から、A及びAは各々独立して無置換又は、各々独立してシアノ基、ニトロ基、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く又は/及びこのアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−に置き換えられても良い炭素原子数1から10のアルキル基若しくは、P−Sp−で表される基によって置換されても良い1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基である場合が好ましく、各々独立して無置換又は、各々独立してシアノ基、ニトロ基、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く又は/及びこのアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−に置き換えられても良い炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されても良い1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基である場合がより好ましく、各々独立して無置換又は、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子により置き換えられても良く又は/及びこのアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−に置き換えられても良い炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されても良い1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基である場合が特に好ましく、
11、Z12、Z21及びZ22は各々独立して−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−CY=CY−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基を表す。)、−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く又は/及び1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−COO−、−OCO−に置き換えられても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合が好ましく、各々独立して−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−CY=CY−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基を表す。)、−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子により置き換えられても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合がより好ましく、
m11及びm21は各々独立して1から5の整数である場合が好ましく、1から3の整数である場合がより好ましく、1又は2である場合が特に好ましく、
及びWは各々独立してR及びWのうち両方がカルボキシル基を表すか若しくは、R及びWのうち一方がカルボキシル基を表し、他方が水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く又は/及び1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−COO−、−OCO−に置き換えられても良い炭素原子数1から20のアルキル基又はR及びWはP−Sp−で表される基を表す場合が好ましく、R及びWのうち両方がカルボキシル基を表すか若しくは、R及びWのうち一方がカルボキシル基を表し、他方が水素原子、フッ素原子又は、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子により置き換えられても良い炭素原子数1から12のアルキル基又はR及びWはP−Sp−で表される基を表す場合がより好ましく、
及びWは各々独立してR及びWのうち両方がヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を表すか若しくは、R及びWのうち一方がヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を表し、他方が水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く又は/及び1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−COO−、−OCO−に置き換えられても良い炭素原子数1から20のアルキル基又はR及びWはP−Sp−で表される基を表す場合が好ましく、R及びWのうち両方がヒドロキシル基を表すか若しくは、R及びWのうち一方がヒドロキシル基を表し、他方が水素原子、フッ素原子又は、各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子により置き換えられても良い炭素原子数1から12のアルキル基又はR及びWはP−Sp−で表される基を表す場合がより好ましく、
及びWの両方がカルボキシル基を表す場合には、R及びWの一方のみがヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を表す場合が好ましく、R及びWの一方のみがヒドロキシル基を表す場合がより好ましく、
及びWの両方がヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を表す場合には、R及びWの一方のみがカルボキシル基を表す場合が好ましい。
【0036】
以下にさらに具体的な実施形態を記載するが、単純化のため少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物(1)をカルボン酸、少なくとも一つのヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を有する化合物(4)を求核剤と表記する。
【0037】
酸ハロゲン化合物(3)は、スルホン酸ハロゲン化合物又はカルボン酸ハロゲン化合物であることが好ましいが、塩基存在下カルボン酸と反応することにより、脱離性の置換基を有するカルボン酸誘導体を生じさせ、さらに、当該カルボン酸誘導体が求核剤と反応することにより脱離性の置換基が効率良く脱離するものが好ましい。入手容易な酸ハロゲン化合物として、例えば、メタンスルホン酸クロリド、トルエンスルホン酸クロリド、アセチルクロリド等が挙げられる。
【0038】
使用する酸ハロゲン化合物(3)の量は特に制限は無いが、カルボン酸に対して1当量未満の場合には反応後に未反応のカルボン酸が残留する。そのため、反応後の精製によって未反応のカルボン酸を除去しなければならない。通常、カラムクロマトグラフィー、再結晶、再沈殿、蒸留、昇華等の方法によってカルボン酸を除去することが可能である。一方、酸ハロゲン化合物の量がカルボン酸に対して1当量より多い場合には反応後に酸ハロゲン化合物が残留する。その場合にも同様の方法によって精製が可能である。好ましくはカルボン酸に対して0.1〜10当量であり、精製の容易さの観点からより好ましくは0.5〜2当量であり、さらに好ましくは0.8〜1.5当量である。
【0039】
塩基(2)は、アミン、アミド、カルバメート、イミド、スルホンアミド、グアニジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ヒドラジン、複素環アミン、それらの塩、金属アルコキシド又は金属水酸化物であることが好ましいが、収率の観点から第三級アミン又は芳香族アミン並びに当該アミン塩がより好ましい。入手容易な塩基として例えば、トリメチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルペンチルアミン、N,N−ジエチルプロピルアミン、N,N−ジプロピルエチルアミン、N,N−ジプロピルメチルアミン、N,N−ジエチルペンチルアミン、N−エチル−N−メチルペンチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジブチルメチルアミン、N,N−ジブチルエチルアミン、N,N−ジブチルプロピルアミン、N−エチル−N−メチルプロピルアミン、N,N−ジプロピルメチルアミン、N,N−ジプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N−メチルジイソプロピルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、N−プロピルジイソプロピルアミン、N−ブチルジイソプロピルアミン、ピリジン、N−メチルピリジン、2−クロロピリジン、2−ブロモピリジン、ピペリジン、ピリミジン、キノリン、アクリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、ピコリン、ビピリジン、2,6−ルチジン、クロロクロム酸ピリジニウム、ピリジニウムパラトルエンスルホナート等が挙げられる。塩基は一種類のみを用いても、二種類以上を用いても良い。また、カルボン酸と塩基とを予め混合すること無く、酸ハロゲン化合物に対し加え反応させる工程と、求核剤を反応させる工程とからなる製造方法を実施する場合には、塩基を第一工程(少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物(1)、塩基(2)及び酸ハロゲン化合物(3)から混合酸無水物(4)を得る工程)においてのみ使用しても良く若しくは、第一工程及び第二工程(混合酸無水物(4)及び、少なくとも一つのヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基から選ばれる基を有する化合物(5)からエステル化合物及び/又はアミド化合物(6)を得る工程)の両方において使用しても良い。
【0040】
第一工程及び第二工程ともに反応温度は通常−50℃から150℃であるが、溶媒を用いる場合には−50℃から溶媒の還流温度である。収率の観点から−50℃から60℃が好ましく、作業の効率性の観点から−10℃から40℃がより好ましい。
【0041】
酸ハロゲン化合物(3)はそのまま用いても、溶媒に溶解させ溶液として用いても、溶媒に懸濁させ懸濁液として用いても良いが、収率及び反応制御の観点から溶液又は懸濁液として用いることが好ましい。
【0042】
カルボン酸、塩基(2)及び求核剤は、各々そのまま用いても、溶媒に溶解させ溶液として用いても、溶媒に懸濁させ懸濁液として用いても良いが、収率及び反応制御の観点から溶液又は懸濁液として用いることが好ましく、溶液として用いることがより好ましい。
【0043】
カルボン酸と、塩基とを予め混合すること無く、酸ハロゲン化合物に対し加え反応させる第一工程は下記化学式
(カルボン酸)+k(酸ハロゲン化合物)+k(塩基)→(混合酸無水物)+k(塩)
(式中、kはカルボン酸1当量に対し必要となる、酸ハロゲン化合物及び塩基の当量数を表す。)で表すことができる。収率の観点から、カルボン酸と塩基とを混合せずに同時に加えることが好ましく、カルボン酸と塩基の滴下速度が、
(カルボン酸の滴下速度):(塩基の滴下速度)=k:1
であることがより好ましい。
【0044】
第一工程により得られた混合酸無水物(4)は、単離しても良く、単離せずにそのまま第二工程へと用いても良い。単離する場合は、通常の方法により後処理及び精製を行うことができる。収率及び作業効率の観点から、単離せずにそのまま第二工程へと用いるワンポット反応が好ましい。
求核剤を反応させる第二工程は下記化学式
(混合酸無水物)+l(求核剤)+l(塩基)→(目的物)+l(塩)
(式中、lは混合酸無水物1当量に対し必要となる、求核剤及び塩基の当量数を表す。)で表すことができる。第一工程及び第二工程で必要となる塩基の当量はカルボン酸に対し(k+l)倍である。ワンポットで反応を行う場合には、第一工程において(k+l)当量の塩基を加えても良く、第一工程においてk当量の塩基を加え、第二工程においてl当量の塩基を加えても良い。また、塩基の当量は理論上必要となる量であっても良く、小過剰又は大過剰であっても良い。収率及び経済性の観点から、塩基の量は理論上必要となる量に対し小過剰であることが好ましい。
【0045】
第一工程及び第二工程ともに反応時間は化合物にもよるが通常数分間〜数日間であり、好ましくは数十分から数時間である。
【0046】
第一工程及び第二工程ともに反応溶媒としては、反応過程において目的の化合物を与えるものであれば特に制限は無いが、好ましい反応溶媒として例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、1−クロロブタン、二硫化炭素、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、クロロベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸2−メトキシエチル、ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、スチレン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、ピリジン、1−メチル−2−ピロリジノン、1,1,1−トリクロロエタン、トルエン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘプタン、ベンゼン、メチルイソブチルケトン、tert−ブチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチルブチルケトン、ジエチルケトン、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリットが挙げられる。化合物の溶解性の観点から、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1−メチル−2−ピロリジノン、トルエン、tert−ブチルメチルエーテル、メチルエチルケトンが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明を更に記述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0048】
化合物の純度はGC又はHPLCによって分析した。分析条件は以下の通りである。
(GC分析条件)
カラム:J&W DB−1,30m×0.25mm×0.25μm
温度プログラム:100℃(1分間)−(10℃/分間)−300℃(12分間)
注入口温度:300℃
検出器温度:300℃
(HPLC分析条件)
カラム:Inertsil ODS−3,5μm,4.6mmφ×250mm
溶出溶媒:アセトニトリル/水(90:10)
流速:0.5mL/min
検出器:UV,210nm
カラムオーブン:40℃
(実施例1)式(I−1)で表される化合物(特許文献3記載の化合物)の製造
【0049】
【化10】
【0050】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下ロートを備えた反応容器にクロロギ酸エチル5.00g(46ミリモル)及びテトラヒドロフラン25mLを加えた。氷冷しながら酢酸2.77g(46ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液10mL及びトリブチルアミン10.2g(55ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液20mLを各々別の滴下ロートから(酢酸溶液):(トリブチルアミン溶液)=1:2の滴下速度で同時に滴下した。氷冷下30分間撹拌した後、ジクロロメタンを用いて分液処理し溶媒を留去することにより式(I−1)で表される化合物7.16gを得た。収率98%、純度99.97%であった。得られた化合物のH NMR、13C NMR及びマススペクトルを測定した結果、特許文献3記載の方法によって得られた化合物の測定データと一致した。
(比較例1)特許文献3記載の製法
撹拌装置、温度計及び滴下ロートを備えた反応容器に、クロロギ酸エチル5.00g(46ミリモル)及びテトラヒドロフラン25mLを加えた。−10℃に冷却しながら酢酸2.77g(46ミリモル)のトリブチルアミン10.2g(55ミリモル)及びテトラヒドロフラン 20mLからなる溶液を0℃以下で滴下した。氷冷下30分間撹拌した後、ジクロロメタンを用いて分液処理し溶媒を留去することにより式(I−1)で表される化合物を得た。収率92%、純度99.89%であった。
(実施例2)式(I−2)で表される化合物(特許文献3記載の化合物)の製造
【0051】
【化11】
【0052】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応容器にメタンスルホニルクロリド15.0g(0.13モル)及びテトラヒドロフラン30mLを加えた。氷冷しながら式(I−2−1)で表される化合物34.6g(0.13モル)のテトラヒドロフラン溶液200mL及びトリブチルアミン28.9g(0.16モル)のテトラヒドロフラン溶液100mLを各々別の滴下装置から(式(I−2−1)で表される化合物の溶液):(トリブチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。氷冷しながら1時間撹拌した後、ジクロロメタンを用いて分液処理し溶媒を留去することにより式(I−2)で表される化合物43.9gを得た。収率98%、純度95.53%であった。得られた化合物のH NMR、13C NMR及びマススペクトルを測定した結果、特許文献3記載の方法によって得られた化合物の測定データと一致した。
(比較例2)
実施例2と同様の反応スケールで比較例1と同様の方法により式(I−2)で表される化合物を製造した。収率94%、純度95.50%であった。
(実施例3)式(I−3)で表される化合物の製造
【0053】
【化12】
【0054】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応装置にメタンスルホニルクロリド5.00g(43.6ミリモル)及びテトラヒドロフラン10mLを加えた。氷冷しながら式(I−3−1)で表される化合物12.9g(44.1ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液60mL及びトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液30mLを各々別の滴下装置から(式(I−3−1)で表される化合物の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。氷冷しながら1時間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン2.64g(21.6ミリモル)及び2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール2.69g(19.4ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)を滴下した。7時間撹拌した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン及び5%塩酸を加え分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し中和した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)及び再沈殿(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行い、式(I−3)で表される化合物12.2gを得た。収率82%、純度99.63%であった。
H NMR(CDCl)δ 1.45−1.54(m,8H),1.72(m,4H),1.83(m,4H),3.08(t,2H),4.03(quin,4H),4.18(quin,4H),4.51(t,2H),5.83(d,2H),6.13(dd,2H),6.38(d,2H),6.89(d,2H),6.96(d,2H),7.15(d,2H),7.32(d,2H),7.96(d,2H),8.13(d,2H)ppm.
LRMS(EI) m/z 686(100).
(比較例3〜6)
実施例3と同様の反応スケールで第一工程における試薬の加え方のみを下記の方法に変更し式(I−3)で表される化合物を製造した。
比較例3の試薬の加え方:メタンスルホニルクロリドと式(I−3−1)で表される化合物を混合したテトラヒドロフラン溶液に対し、トリエチルアミンのテトラヒドロフラン溶液を滴下した。
比較例4の試薬の加え方:トリエチルアミンのテトラヒドロフラン溶液に対し、メタンスルホニルクロリドと式(I−3−1)で表される化合物を混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下した。
比較例5の試薬の加え方:メタンスルホニルクロリドのテトラヒドロフラン溶液に対し、トリエチルアミンのテトラヒドロフラン溶液を滴下し、その後、式(I−3−1)で表される化合物のテトラヒドロフラン溶液を滴下した。
比較例6の試薬の加え方:メタンスルホニルクロリドのテトラヒドロフラン溶液に対し、トリエチルアミンと式(I−3−1)で表される化合物を混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下した。
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【化13】
【0057】
(実施例4)式(I−4)で表される化合物の製造
【0058】
【化14】
【0059】
実施例3において式(I−3−1)で表される化合物を式(I−4−1)で表される化合物に置き換えた以外は実施例3と同様の方法によって、式(I−4)で表される化合物を製造した。収率79%、純度99.55%であった。
H NMR(DMSO−d)δ 2.11(m,4H),3.05(t,2H),4.15(t,2H),4.18(t,2H),4.28(m,4H),4.46(t,2H),5.96(d,2H),6.19(dd,2H),6.32(d,2H),7.04(d,2H),7.12(d,2H),7.19(d,2H),7.39(d,2H),7.88(d,2H),8.06(d,2H)ppm.
13C NMR(DMSO−d)δ 28.3,34.2,61.5,65.1,65.3,114.9,115.1,121.5,122.2,122.4,128.7,130.3,131.6,132.0,132.0,132.4,136.2,149.7,162.8,163.5,164.6,165.7,165.9ppm.
LRMS(EI) m/z 602(100).
(比較例7)
実施例4と同様の反応スケールで第一工程における試薬の加え方のみを、メタンスルホニルクロリドのテトラヒドロフラン溶液に対し、トリエチルアミンと式(I−4−1)で表される化合物を混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下する方法に変更し、式(I−4)で表される化合物を製造した。収率76%、純度99.05%であった。
(実施例5)式(I−5)で表される化合物の製造
【0060】
【化15】
【0061】
実施例4と同様の方法によって、式(I−4−2)で表される化合物を含む反応液を調製した。即ち、撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応装置にメタンスルホニルクロリド5.00g(43.6ミリモル)及びテトラヒドロフラン10mLを加えた。氷冷しながら式(I−4−1)で表される化合物11.0g(44.1ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液50mL及びトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液25mLを各々別の滴下装置から(式(I−4−1)で表される化合物の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。
【0062】
その後氷冷しながら1時間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン0.53g(4.3ミリモル)及びメチルヒドロキノン2.68g(21.6ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)を滴下した。1時間撹拌した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン及び5%塩酸を加え分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し中和した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)及び再沈殿(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行い、式(I−5)で表される化合物12.3gを得た。収率97%、純度99.73%であった。
H NMR(CDCl)δ 2.22(m,7H),4.17(t,4H),4.39(t,4H),5.85(d,2H),6.14(dd,2H),6.43(d,2H),6.99(dd,4H),7.08(dd,1H),7.14(d,1H),7.18(d,1H),8.16(dd,4H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 16.4,28.5,61.6,64.6,114.2,114.3,120.0,121.7,121.9,122.9,124.1,128.2,131.0,131.7,132.3,147.0,148.4,163.0,163.1,164.4,164.8,166.1ppm.
LRMS(EI) m/z 588(100).
(比較例8)
実施例5と同様の反応スケールで第一工程における試薬の加え方のみを、メタンスルホニルクロリドのテトラヒドロフラン溶液に対し、トリエチルアミンと式(I−4−1)で表される化合物を混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下する方法に変更し、式(I−5)で表される化合物を製造した。収率93%、純度99.65%であった。
(実施例6)式(I−6)で表される化合物の製造
【0063】
【化16】
【0064】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応容器にメタンスルホニルクロリド5.00g(43.6ミリモル)及びテトラヒドロフラン10mLを加えた。氷冷しながら4−アセトキシ安息香酸7.95g(44.1ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液50mL及びトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液25mLを各々別の滴下装置から(4−アセトキシ安息香酸の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。氷冷しながら30分間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン0.53g(4.3ミリモル)及び2,4−ジメチルフェノール5.32g(43.6ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)を滴下した。1時間撹拌した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン及び5%塩酸を加え分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し中和した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)及び再沈殿(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行い、式(I−6−2)で表される化合物12.0g(42.2ミリモル)を得た。収率97%、純度99.85%であった。
【0065】
撹拌装置及び滴下装置を備えた反応容器に式(I−6−2)で表される化合物12.0g(42.2ミリモル)を加え、トルエン20mL及びテトラヒドロフラン20mLに溶解させた。ブチルアミン4.62g(63.3ミリモル)を滴下し室温で7時間撹拌した。5%塩酸及び食塩水で分液及び洗浄処理した後、再結晶(メタノール/水)により精製を行い、式(I−6−3)で表される化合物10.0g(41.3ミリモル)を得た。
【0066】
撹拌装置、温度計及び滴下装置を備えた反応容器に式(I−6−3)で表される化合物10.0g(41.3ミリモル)、式(I−4−1)で表される化合物10.3g(41.3ミリモル)及び4−ジメチルアミノピリジン0.50g(4.1ミリモル)を加え、ジクロロメタン50mLに懸濁させた。氷冷しながらN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド6.25g(49.5ミリモル)を反応温度が15℃を超えないよう滴下した。室温で5時間撹拌した後、溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)及び再沈殿(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行い、式(I−6)で表される化合物16.9g(35.5ミリモル)を得た。
H NMR(CDCl)δ 2.19〜2.25(m,5H),2.34(s,3H),4.17(t,2H),4.39(t,2H),5.85(dd,1H),6.14(dd,1H),6.42(dd,1H),6.98〜7.08(m,5H),7.36(d,2H),8.16(d,2H),8.29(d,2H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 16.1,20.8,28.5,61.1,64.7,113.1,114.3,121.3,121.6,122.0,127.0,127.5,128.2,129.8,131.0,131.7,131.8,132.4,135.6,147.2,155.2,163.3,164.2,164.3,166.1ppm.
LRMS(EI)m/z 474(100)
(比較例9)
実施例6と同様の反応スケールで第一工程における試薬の加え方のみを、メタンスルホニルクロリドのテトラヒドロフラン溶液に対し、トリエチルアミンと4−アセトキシ安息香酸を混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下する方法に変更し、式(I−6−2)で表される化合物を製造した。収率94%、純度99.68%であった。
【0067】
その後、実施例6と同様の方法によって式(I−6)で表される化合物を製造した。
(実施例7)式(I−7)で表される化合物(学術文献1記載の化合物)の製造
【0068】
【化17】
【0069】
学術文献1記載の方法によって式(I−7−1)で表される化合物を製造した。
【0070】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応容器にクロロギ酸メチル11.6mL(150ミリモル)及びジクロロメタン50mLを加えた。氷冷しながら式(I−7−1)で表される化合物14g(75.2ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液50mL及びトリエチルアミン21mL(150ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液25mLを各々別の滴下装置から(式(I−7−1)で表される化合物の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。氷冷しながら2時間撹拌した後、溶媒を留去した。ジエチルエーテルに懸濁させ、濾過及び濃縮することにより式(I−7−2)で表される化合物17.1g(69.9ミリモル)を得た。
【0071】
得られた式(I−7−2)で表される化合物17.1g(69.9ミリモル)を用いて学術文献1記載の方法によって還元し、式(I−7)で表される化合物7.82gを得た。収率65%、純度99.98%であった。得られた化合物のH NMR及びマススペクトルを測定した結果、非特許文献1記載の方法によって得られた化合物の測定データと一致した。
H NMR δ 5.86(m,1H),5.46(d,1H),5.28(d,1H),3.29(d,1H),2.44(s,1H),1.51(s,1H),1.44(s,3H),1.33(s,3H)ppm.
LRMS(EI) m/z 173,157,141,83,69.
(比較例10)非特許文献1記載の製法
非特許文献1記載の方法によって式(I−7−1)で表される化合物を製造した。
【0072】
撹拌装置、温度計及び滴下装置を備えた反応容器に式(I−7−1)で表される化合物14g(75.2ミリモル)のジクロロメタン溶液50mLに氷冷しながらトリエチルアミン21mL(150ミリモル)及びクロロギ酸メチル11.6mL(150ミリモル)を滴下した。氷冷しながら2時間撹拌した後、溶媒を留去した。ジエチルエーテルに懸濁させ、濾過及び濃縮することにより式(I−7−2)で表される化合物16.4gを得た。得られた式(I−7−2)で表される化合物16.4gを用いて非特許文献1記載の方法によって還元し、式(I−7)で表される化合物7.03gを得た。収率54%、純度99.34%であった。
(実施例8)式(I−8)で表される化合物(特許文献2記載の化合物)の製造
【0073】
【化18】
【0074】
特許文献2記載の製造方法において、3,4−ジ−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸のテトラヒドロフラン溶液50mL及びジイソプロピルエチルアミンのテトラヒドロフラン溶液50mLを各々別の滴下装置から(3,4−ジ−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸の溶液):(ジイソプロピルエチルアミン溶液)=1:1の滴下速度で同時に滴下した以外は同様の方法によって式(I−8)で表される化合物を製造した。収率46%、純度99.30%であった。得られた化合物のIRスペクトル、H NMR及びマススペクトルを測定した結果、特許文献2記載の方法によって得られた化合物の測定データと一致した。
IR(KBr) 2937,1717,1632,1598,1516,1495,1474,1410,1295,1265,1207,1189,1160,1078,992,812,756cm−1
H NMR δ 0.95(t,3H),1.50−1.91(m,18H),2.63(q,2H),4.08−4.21(m,8H),5.82−6.44(m,8H),6.70(d,1H),6.95(d,1H),7.41−7.17(m,4H),7.69(d,1H),7.73(d,1H),7.84−8.23(m,4H),8.82(s,1H)ppm.LRMS(EI)m/z 820(100).
(比較例11)特許文献2記載の製法
0℃以下で、メタンスルホン酸クロリドのテトラヒドロフラン溶液に対し、3,4−ジ−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸及びジイソプロピルエチルアミンのテトラヒドロフラン溶液を滴下した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌し、マイクロスパチュラ一片の4−ジメチルアミノピリジンとジイソプロピルエチルアミンとテトラヒドロフランの混合溶液を、−10℃以下に保ちながら滴下した。そのまま2時間撹拌を行った後に、反応液を水で洗浄し、1%塩酸とトルエンを加え、油水分離後、有機層を水で2回洗浄した。減圧下、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製し、ついでメタノールより再沈殿を行い、析出物を濾過して式(I−8)で表される化合物を製造した。収率26%、純度99.31%であった。
(実施例9)式(I−9)で表される化合物(特許文献1記載の化合物)の製造
【0075】
【化19】
【0076】
特許文献1記載の製造方法において、式(I−3−1)で表される化合物のテトラヒドロフラン溶液300mL及びトリエチルアミンのテトラヒドロフラン溶液100mLを各々別の滴下装置から(式(I−3−1)で表される化合物の溶液):(トリエチルアミン溶液)=3:1の滴下速度で同時に滴下した以外は同様の方法によって式(I−9)で表される化合物を製造した。収率82%、純度99.35%であった。得られた化合物のH NMR及びマススペクトルを測定した結果、特許文献1記載の方法によって得られた化合物の測定データと一致した。
H NMR(CDCl) δ 8.70(s,2H),8.49(s,1H),8.18−8.11(m,4H),7.93(d,2H),7.40−7.26(m,4H),6.99(d,4H),6.41(d,2H),6.13(dd,2H),5.83(d,2H),4.20−4.06(m,8H),3.60(s,3H),1.85−1.70(m,8H),1.57−1.20(m,8H)ppm.
LRMS(EI) m/z 846(100).
(比較例12)
実施例9と同様のスケールで比較例1と同様の製造方法によって式(I−9)で表される化合物を製造した。収率72%、純度99.31%であった。
(実施例10)式(I−10)で表される化合物(EP0888281B1号公報記載の化合物)の製造
【0077】
【化20】
【0078】
実施例3と同様の方法によって式(I−3−2)で表される化合物の溶液を調製した。即ち、撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応装置にメタンスルホニルクロリド5.00g(43.6ミリモル)及びテトラヒドロフラン10mLを加えた。氷冷しながら式(I−3−1)で表される化合物12.9g(44.1ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液60mL及びトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液30mLを各々別の滴下装置から(式(I−3−1)で表される化合物の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。
【0079】
その後、氷冷しながら1時間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン0.54g(4.41ミリモル)及び式(I−10−1)で表される化合物9.52g(43.6ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)を滴下した。3時間撹拌した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン及び5%塩酸を加え分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し中和した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)及び再沈殿(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行い、式(I−10)で表される化合物19.5gを得た。収率91%、純度99.43%であった。得られた化合物のH NMR、13C NMR及びマススペクトルを測定した結果、特表2000−507932号公報記載の方法によって得られた化合物の測定データと一致した。
H NMR(CDCl)δ 0.91(t,3H),1.09(m,2H),1.19−1.54(m,12H),1.73(quin,2H),1.86(m,6H),2.49(t,1H),4.05(t,2H),4.18(t,2H),5.82(d,1H),6.12(dd,1H),6.40(d,1H),6.95(d,2H),7.10(d,2H),7.24(d,2H),8.13(d,2H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 14.4,20.0,25.7,25.7,28.5,29.0,33.5,34.4,37.0,39.7,44.1,64.4,68.0,114.2,121.3,121.8,127.7,128.5,130.5,132.2,145.2,148.9,163.3,165.1,166.3ppm.
LRMS(EI) m/z 492(100).
(比較例13)
実施例10と同様のスケールで、式(I−3−1)で表される化合物及びトリエチルアミンを混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下した以外は実施例10と同様の方法によって式(I−10)で表される化合物を製造した。収率87%、純度99.41%であった。
(比較例14)EP0888281B1号公報記載の製法
実施例10と同様のスケールで、EP0888281B1号公報記載の方法によって式(I−10)で表される化合物を製造した。収率70%、純度99.01%であった。
(実施例11)式(I−11)で表される化合物(EP1786887B1号公報記載の化合物)の製造
【0080】
【化21】
【0081】
実施例10において、式(I−10−1)で表される化合物を式(I−11−1)で置き換えた以外は実施例10と同様の方法によって、式(I−11)で表される化合物を製造した。収率87%、純度99.41%であった。得られた化合物のH NMR、13C NMR及びマススペクトルを測定した結果、EP1786887B1号公報記載の方法によって得られた化合物の測定データと一致した。
H NMR(CDCl)δ 1.51(m,4H),1.73(quin,2H),1.85(quin,2H),3.84(s,3H),4.06(t,2H),4.19(t,2H),5.82(d,1H),6.12(dd,1H),6.40(d,1H),6.89(d,2H),6.98(d,2H),7.25(d,1H),7.43(m,3H),7.62(d,1H),8.17(d,2H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 25.7,25.7,28.5,28.9,55.3,64.4,68.1,86.2,90.5,114.0,114.4,114.7,120.7,122.6,123.9,127.1,128.5,130.5,130.7,132.5,132.9,133.1,147.0,159.9,163.7,163.8,166.3ppm.
LRMS(EI) m/z 532(100).
(比較例15)
実施例11と同様のスケールで、式(I−3−1)で表される化合物及びトリエチルアミンを混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下した以外は実施例11と同様の方法によって式(I−11)で表される化合物を製造した。収率85%、純度99.40%であった。
(比較例16)EP1786887B1号公報記載の製法
実施例11と同様のスケールで、EP1786887B1号公報記載の方法によって式(I−11)で表される化合物を製造した。収率65%、純度98.60%であった。
(実施例12)式(I−12)で表される化合物(WO2009−060843号公報に記載の化合物)の製造
【0082】
【化22】
【0083】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応容器にメタンスルホニルクロリド5.00g(43.6ミリモル)及びジクロロメタン10mLを加えた。氷冷しながら式(I−12−1)で表される化合物5.72g(43.6ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液20mL及びトリエチルアミン5.29g(52.3ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液20mLを各々別の滴下装置から(式(I−12−1)で表される化合物の溶液):(トリエチルアミン溶液)=1:1の滴下速度で同時に滴下した。氷冷しながら30分間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン0.53g(4.3ミリモル)及び式(I−12−2)で表される化合物8.43g(43.6ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン5.29g(52.3ミリモル)を滴下した。1時間撹拌した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン及び5%塩酸を加え分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し中和した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製を行い、式(I−12)で表される化合物11.2g(42.2ミリモル)を得た。収率84%、純度99.93%であった。得られた化合物のH NMR、13C NMR及びマススペクトルを測定した結果、WO2009−060843号公報に記載の方法によって得られた化合物の測定データと一致した。
(比較例17)
実施例12と同様のスケールで、式(I−12−1)で表される化合物及びトリエチルアミンを混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下した以外は実施例12と同様の方法によって式(I−12)で表される化合物を製造した。収率82%、純度99.90%であった。
(実施例13)式(I−13)で表される化合物(Journal of the American Chemical Society,131巻,p.3812−3813(2009年)記載の化合物)の製造
【0084】
【化23】
【0085】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応容器にメタンスルホニルクロリド7.50g(65.5ミリモル)及びジクロロメタン10mLを加えた。氷冷しながら式(I−13−1)で表される化合物37.5g(66.2ミリモル)のジクロロメタン溶液120mL及びトリエチルアミン7.29g(72.1ミリモル)のジクロロメタン溶液60mLを各々別の滴下装置から(式(I−13−1)で表される化合物の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。氷冷しながら30分間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン0.80g(6.6ミリモル)及び式(I−13−2)で表される化合物7.50g(62.9ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン7.29g(72.1ミリモル)を滴下した。1時間撹拌した後、溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製を行い、式(I−13)で表される化合物36.9gを得た。収率88%、純度99.91%であった。得られた化合物のH NMR、13C NMR及びマススペクトルを測定した結果、Journal of the American Chemical Society,131巻,p.3812−3813(2009年)記載の方法で得られた化合物の測定データと一致した。
H NMR(C)δ 7.82(s,1H),7.15(s,1H),6.90(s,1H),6.78(1H),6.69(dd,1H),5.82(d,1H),5.65(dd,1H),4.22(m,4H),4.16(d,1H),3.24(m,1H),3.14(m,1H),3.12(s,3H),3.02(s,2H),2.80(m,1H),2.66(m,1H),1.49(s,3H),1.47(s,3H),0.94(m,4H),−0.07(s,9H),−0.11(s,9H)ppm.
13C NMR (C)δ 201.1,169.3,154.1,153.7,152.6,141.7,140.5,139.8,130.5,126.7,126.2,116.5,116.0,110.1,88.2,67.0,63.3,57.7,46.2,39.7,27.6,22.7,18.0,17.6,16.4,−1.6,−1.7ppm.
LRMS(EI) m/z 666(100).
(比較例18)
実施例13と同様のスケールで、式(I−13−1)で表される化合物及びトリエチルアミンを混合したジクロロメタン溶液を滴下した以外は実施例13と同様の方法によって式(I−13)で表される化合物を製造した。収率85%、純度99.88%であった。
(実施例14)式(I−14)で表される化合物の製造
【0086】
【化24】
【0087】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(式(I−14−1)で表される化合物) 100g(0.53モル)、酢酸300mL、無水酢酸65.1g(0.64モル)、硫酸5gを加え、60℃に加熱し8時間反応させた。反応液に水1Lを加え氷冷しながら1時間撹拌した後、析出した固体を濾過した。得られた固体を水1Lで2度分散洗浄した。固体を乾燥させることにより式(I−14−2)で表される化合物 118.7gを得た。
【0088】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応容器にメタンスルホニルクロリド5.00g(43.6ミリモル)及びテトラヒドロフラン10mLを加えた。氷冷しながら式(I−14−2)で表される化合物10.2g(44.1ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液50mL及びトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液25mLを各々別の滴下装置から(4−アセトキシ安息香酸の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。氷冷しながら30分間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン0.53g(4.3ミリモル)及び2,4−ジメチルフェノール5.32g(43.6ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)を滴下した。1時間撹拌した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン及び5%塩酸を加え分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し中和した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)及び再沈殿(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行い、式(I−14−4)で表される化合物14.1g(42.2ミリモル)を得た。収率97%、純度99.57%であった。
【0089】
撹拌装置及び滴下装置を備えた反応容器に式(I−14−4)で表される化合物14.1g(42.2ミリモル)を加え、トルエン30mL及びテトラヒドロフラン30mLに溶解させた。ブチルアミン4.62g(63.3ミリモル)を滴下し室温で7時間撹拌した。5%塩酸及び食塩水で分液及び洗浄処理した後、再結晶(メタノール/水)により精製を行い、式(I−14−5)で表される化合物12.1g(41.3ミリモル)を得た。
【0090】
撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応容器にメタンスルホニルクロリド4.73g(41.3ミリモル)及びテトラヒドロフラン10mLを加えた。氷冷しながら式(I−14−6)で表される化合物10.3g(41.3ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液50mL及びトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液25mLを各々別の滴下装置から(4−アセトキシ安息香酸の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。氷冷しながら30分間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン0.53g(4.3ミリモル)及び式(I−14−5)で表される化合物12.1g(41.3ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)を滴下した。1時間撹拌した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン及び5%塩酸を加え分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し中和した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)及び再沈殿(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行い、式(I−14)で表される化合物20.8g(39.6ミリモル)を得た。収率96%、純度99.68%であった。
H NMR(CDCl)δ 2.20〜2.26(m,5H),2.35(s,3H),4.18(t,2H),4.40(t,2H),5.85(dd,1H),6.14(dd,1H),6.43(dd,1H),7.01(d,2H),7.07(s,2H),7.11(s,1H),7.46(dd,1H),7.77(d,1H),7.93(d,1H),8.06(d,1H),8.20(d,2H),8.24(dd,1H),8.82(d,1H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 16.2,20.8,28.5,61.1,64.7,114.3,118.8,121.6,121.6,122.5,126.2,126.6,127.5,128.1,128.2,129.8,130.4,131.0,131.6,131.8,132.4,135.7,136.4,147.3,150.8,163.2,164.7,165.0,166.1ppm.
LRMS(EI)m/z 524(100).
(比較例19)
実施例14と同様の反応スケールで式(I−14−4)で表される化合物を得る工程及び、式(I−14)で表される化合物を得る工程における試薬の加え方のみを、メタンスルホニルクロリドのテトラヒドロフラン溶液に対し、トリエチルアミン及びカルボン酸を混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下する方法に変更し、式(I−14)で表される化合物を製造した。各々の工程において得られた化合物は、収率95%、純度98.57%及び、収率92%、純度99.37%であった。
(実施例15)式(I−14)で表される化合物の製造
【0091】
【化25】
【0092】
実施例3と同様の方法によって式(I−3−2)で表される化合物の溶液を調製した。即ち、撹拌装置、温度計及び2つの滴下装置を備えた反応装置にメタンスルホニルクロリド5.00g(43.6ミリモル)及びテトラヒドロフラン10mLを加えた。氷冷しながら式(I−3−1)で表される化合物12.9g(44.1ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液60mL及びトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)のテトラヒドロフラン溶液30mLを各々別の滴下装置から(式(I−3−1)で表される化合物の溶液):(トリエチルアミン溶液)=2:1の滴下速度で同時に滴下した。
【0093】
その後、氷冷しながら1時間撹拌した後、4−ジメチルアミノピリジン0.54g(4.41ミリモル)及び式(I−6−3)で表される化合物10.6g(43.6ミリモル)を加えた。氷冷しながらトリエチルアミン5.25g(51.9ミリモル)を滴下した。3時間撹拌した後、溶媒を留去し、ジクロロメタン及び5%塩酸を加え分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し中和した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)及び再沈殿(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行い、式(I−15)で表される化合物21.6gを得た。収率96%、純度99.55%であった。
H NMR(CDCl)δ 1.45〜1.57(m,4H),1.73(quin,2H),1.85(quin,2H),2.19(s,3H),2.34(s,3H),4.06(t,2H),4.18(t,2H),5.82(dd,1H),6.12(dd,1H),6.41(dd,1H),6.97〜7.08(m,5H),7.36(d,2H),8.15(d,2H),8.29(d,2H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 16.1,20.8,25.6,25.7,28.5,28.9,64.4,68.1,114.3,121.0,121.6,122.0,126.9,127.2,127.5,128.5,129.8,130.5,131.7,131.8,132.4,135.6,147.2,155.2,163.7,164.3,164.3,166.3ppm.
LRMS(EI)m/z 516(100).
(比較例20)
実施例15と同様のスケールで、式(I−3−1)で表される化合物及びトリエチルアミンを混合したテトラヒドロフラン溶液を滴下した以外は実施例15と同様の方法によって式(I−15)で表される化合物を製造した。収率88%、純度99.43%であった。
(実施例16〜25及び比較例21〜33)フィルムの評価
下記化合物(A):30%、化合物(B):40%及び化合物(C):30%からなる母体組成物(M)を調製した。
【0094】
【化26】
【0095】
母体組成物(M)67.9%、本願発明の製造方法及び公知の製造方法によって製造した式(I−3)、式(I−4)、式(I−5)、式(I−6)、式(I−8)、式(I−9)、式(I−10)及び式(I−11)で表される化合物をそれぞれ29.1%及び光重合開始剤イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%含有する重合性組成物(N)を調整した。この重合性組成物(N)のシクロペンタノン溶液(重合性組成物(N)の濃度25%)を、ラビング処理したポリイミド付きガラスにスピンコート法で塗布し、65℃で3分乾燥した。得られた塗膜を60℃のホットプレート上に置き、紫外線を20mW/cmの強度で60秒間照射した。得られた重合体の外観及びイエローインデックス(YI)を評価した。目視によって重合体上にムラ等が無く全体に均一であれば◎、ムラが僅かに見られる場合には△、ムラが多く見られる場合は×とした。また、イエローインデックスはJASCO UV/VIS Spectrophotometer V−560で重合体の吸収スペクトルを測定し、付属のカラー診断プログラムで黄色度(YI)を計算した。YIは、
YI=100(1.28X−1.06Z)/Y (JIS K7373)
から算出した。
【0096】
その後、得られた重合体を200℃で60分ポストベークした。ポストベーク後のYIについても同様に上記式より算出した。
【0097】
なお化合物(I−9)については、化合物そのものが黄色を呈しているため、YIの測定を行わなかった。また、比較例5において製造を検討した化合物(I−3)は、反応収率が低く単離が困難であったことから評価を行っていない。結果を下表に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
以上のように、本願発明の製造方法は高収率に目的化合物を得ることができた。また、製造時に生じる不純物含有量が少ないことも確認できた。不純物含有量が多くなるとそれを用いて重合体とした際にムラが生じ、またYIが悪化する。本願製造方法で得られた化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて作製した重合体は、ムラが無く、重合後及びポストベーク後のイエローインデックスが十分低い値即ち、変色がほとんど起こらないことが分かった。このため本願発明の製造方法により製造される化合物は特にフィルムの用途に有用である。