【実施例】
【0082】
<1.DNA断片の増幅>
配列番号3に示す塩基配列が挿入されたプラスミドを鋳型として用いるとともに、下記プライマー1およびプライマー2をプライマーとして用いたPCRによって、attB配列、亜リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ptxD遺伝子)およびHisタグ配列を含むDNA断片を増幅した。プライマー1およびプライマー2の塩基配列を以下に示す。なお、配列番号3に示す塩基配列は、配列番号2に示す亜リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含んだ塩基配列であるが、配列番号2に示す亜リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子における684番目の塩基「C」が塩基「A」へ置換されている。つまり、配列番号2のコドン「ACC」がコドン「ACA」へ置換されている。コドン「ACC」およびコドン「ACA」は共にスレオニンをコードするので、上記置換はタンパク質内のアミノ酸を変化させない置換である。
・プライマー1:5’-GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCATGAAGCCCAAAGTCGTCCTCAC-3’(配列番号4)、
・プライマー2:5’-GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTTCAGTGGTGGTGGTGGTGG-3’
(配列番号5)。
【0083】
増幅産物をアガロースゲル電気泳動にて分離し、所望のDNA断片が増幅されているか否か確認した。アガロースゲル電気泳動の結果を
図1に示す。なお、レーン「M」はマーカー(λ/HindIII digest)を示し、レーン「1」は増幅産物を示している。
図1に示すように、PCRによって、所望のDNA断片を増幅することができた。
【0084】
<2.エントリークローンの作製>
Gateway(登録商標) BP反応によって、上述したDNA断片をエントリーベクターであるpDONR207(INVITROGEN製)へ挿入した。当該エントリーベクターを用いて大腸菌を形質転換した後、上述したDNA断片が挿入されているpDONR207を保持している大腸菌を選択した。
【0085】
大腸菌の選択は、上記プライマー1およびプライマー2を用いたコロニーPCRによって行った。具体的には、4つの大腸菌コロニーに対して、コロニーPCRを行った。
【0086】
コロニーPCRの結果を
図2に示す。なお、レーン「M」はマーカー(λ/HindIII digest)を示し、レーン「1」〜「4」は、各大腸菌コロニーにおける増幅産物を示している。
図2に示すように、4つの大腸菌コロニーの全てが、上述したDNA断片が挿入されたpDONR207を保持していた。
【0087】
<3.発現ベクターの作製>
Gateway(登録商標) LR反応によって、pDONR207に挿入されているDNA断片を発現ベクターであるpBI−OX−GW(INPLANTA INNOVATIONS INC.製)へ挿入した。当該発現ベクターを用いて大腸菌を形質転換した後、上述したDNA断片が挿入されているpBI−OX−GWを保持している大腸菌を選択した。
【0088】
大腸菌の選択は、上記プライマー1およびプライマー2を用いたコロニーPCRによって行った。具体的には、4つの大腸菌コロニーに対して、コロニーPCRを行った。
【0089】
コロニーPCRの結果を
図3に示す。なお、レーン「M」はマーカー(φX174/HaeIII digest)を示し、レーン「1」〜「4」は、各大腸菌コロニーにおける増幅産物を示している。
図3に示すように、4つの大腸菌コロニーの全てが、上述したDNA断片が挿入されたpBI−OX−GWを保持していた。
【0090】
4つの大腸菌コロニーのうちの1つについて、上述したDNA断片が挿入されたpBI−OX−GWを精製し、市販のシークエンサーを用いて挿入されているDNA断片の塩基配列を確認した。その結果、所望のDNA断片がpBI−OX−GWに挿入されていることが確認できた。
【0091】
<4.アグロバクテリウムの形質転換>
上記発現ベクター(ptxD遺伝子が導入されたpBI―OX―GW、54.5ng)を、氷上で溶解した20μLのエレクトロポレーション用のアグロバクテリウムのコンピテントセル(GV3101)に加え、穏やかに混和した。
【0092】
上記コンピテントセルを、氷冷したキュベット(ギャップ間隔0.1cm)に移し、MIcro Pulser(Bio Rad社)を用いて1.8kVの条件でエレクトロポレーションを行った。
【0093】
速やかに0.5mLのLB液体培地をキュベットに加えて混合した後、全量を1.5mLのチューブに移し、28℃、180rpmの条件下にて1時間の培養を行った。
【0094】
50μLの培養液をLB寒天培地(50μg−カナマイシン/mL−培地)上に塗布した後、28℃にて2日間の培養を行い、形質転換されたアグロバクテリウムのコロニーを得た。
【0095】
<5.特性検討1(大腸菌を用いた亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の発現)>
本願の〔背景技術〕に記載したWO2010/058298A2には、Pseudomonas stutzeri WM88の亜リン酸デヒドロゲナーゼが開示されている。本願発明に用いる亜リン酸デヒドロゲナーゼは、P stutzeri WM88の亜リン酸デヒドロゲナーゼと比較して顕著に優れた性質を有している。特性検討1〜特性検討4では、これらの性質について具体的に説明する。
【0096】
周知の方法によって、プラスミドであるpET21b(Novagen社製)へ、上述した配列番号2に示す塩基配列、または、P stutzeri WM88の亜リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(配列番号6)を挿入した(配列番号6の塩基配列によってコードされているタンパク質のアミノ酸配列を配列番号7に示す)。これによって、配列番号1に示す亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質のC末端にHisタグが連結している融合タンパク質(
図4の「PtxD
4506」参照)、または、P stutzeri WM88の亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質のC末端にHisタグが連結している融合タンパク質(
図4の「PtxD
Pst」参照)の発現ベクターを作成した。
【0097】
周知の方法によって、上記発現ベクターの各々を用いて、コンピテントセルであるRosetta2(DE3)(Novagen社製)を形質転換した。
【0098】
上記形質転換体を、200mLのLB培地(培地1Lあたり、10gのpolypeptone、5gのyeast extract、および、5gのNaClを含む)へ植菌し、OD
600が0.5になるまで37℃にて培養した。その後、当該培養物に対して濃度が1mMになるようにIPTG(isopropyl thiogalactoside)を加え、28℃にて更に3時間の培養を行った。
【0099】
上記培養物を、6,000rpm、15分間の遠心分離処理にかけ、沈殿物である菌を回収した。当該菌を破砕用バッファー(50mM Tris−HCl(pH:7.4)、50mM NaCl)へ懸濁した後、当該懸濁物に対して超音波処理を施すことによって、菌を破砕した。この後、菌の破砕液に対して最終濃度が0.1%になるようにTween20(登録商標)を加えて、氷上で15分間静置した。なお、
図4において、当該破砕された菌を含む破砕用バッファーを「T」として示す。
【0100】
破砕された菌を含む破砕用バッファーに対して、15,000rpm、4℃、15分間の条件にて遠心分離処理を施した。遠心分離処理の後、上清と沈殿物とに分けた。なお、
図4において、当該上清を「S」として示し、当該沈殿物を「I」として示す。
【0101】
上記上清をHisTrapカラム(GEヘルスケア社製)へ供し、当該カラムに添付されたプロトコールにしたがって、配列番号1に示す亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質のC末端にHisタグが連結している融合タンパク質を精製した。
【0102】
上述した、破砕された菌を含む破砕用バッファー(T)、上清(S)および沈殿物(I)をSDS−PAGEにて分離した後、アクリルアミドゲルをCBBステインワン(ナカライ社製)にて染色して、亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の量を測定した。
【0103】
その結果を
図4に示す。
【0104】
P stutzeri WM88の亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質のC末端にHisタグが連結している融合タンパク質の場合には、融合タンパク質の約18.4%が上清(S)中に存在し、融合タンパク質の約81.6%が沈殿物(I)中に存在していた。一方、配列番号1に示す亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質のC末端にHisタグが連結している融合タンパク質の場合には、融合タンパク質の約91.4%が上清(S)中に存在し、融合タンパク質の約8.6%が沈殿物(I)中に存在していた。以上の結果から、配列番号1に示す亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質のC末端にHisタグが連結している融合タンパク質は、劇的に可溶性が上昇していることが明らかになった。
【0105】
<6.特性検討2(亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の耐熱性)>
<5.特性検討1(大腸菌を用いた亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の発現)>にてHisTrapカラムを用いて精製したPtxD
4506およびPtxD
Pstについて、耐熱性を検討した。以下に、耐熱性の測定方法について説明する。
【0106】
精製したPtxD
4506およびPtxD
Pstの各々を、最終濃度が0.2mg/mLになるように50mM MOPSバッファー(pH7.4)へ加え、酵素溶液を調製した。100μLの上記酵素溶液を1.5mLの容量のチューブへ入れ、蒸発を防ぐために、当該酵素溶液に対して100μLのmineral oilを添加した。当該チューブを、10℃〜60℃の温度で12時間維持した。経時的に10μL(2μg)の酵素溶液をサンプリングして、当該酵素溶液に対して、1mMのNAD
+および1mMの亜リン酸を含む20mMのMOPS―KOH buffer(pH7.4)490μLを加えて、合計500μLの反応系で、亜リン酸デヒドロゲナーゼ活性の測定を行った。
【0107】
図5に測定結果を示す。
【0108】
図5に示すように、PtxD
Pstは、約35℃にて比活性が最も高く、35℃よりも低い温度であっても、35℃よりも高い温度であっても、急激に比活性が低下することが明らかになった。つまり、PtxD
Pstは、最適温度が低い(約35℃)とともに、反応に適した温度の範囲が非常に狭いことが明らかになった。
【0109】
一方、PtxD
4506は、約50℃にて比活性が最も高く、50℃よりも低い温度であっても、50℃よりも高い温度であっても、広い温度範囲において高い比活性を維持できることが明らかになった。具体的には、PtxD
4506は、35℃〜55℃における比活性の平均値が高く、40℃〜52.5℃における比活性の平均値が更に高く、40℃〜50℃における比活性の平均値が更に高いことが明らかになった。
【0110】
<7.特性検討3(亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の反応速度論的解析)>
<5.特性検討1(大腸菌を用いた亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の発現)>にてHisTrapカラムを用いて精製したPtxD
4506およびPtxD
Pstについて、反応速度を比較した。以下に、反応速度の測定方法について説明する。
【0111】
本願に記載した(反応式1)に基づいて、PtxD
4506およびPtxD
Pstの反応速度を算出した。
【0112】
具体的には、(反応式1)に示す反応系において、7.5μgの融合タンパク質を用い、基質(NAD
+)の濃度を0.5microMから200microMへと変化させながら、NADHの生産速度を測定した。なお、融合タンパク質PtxD
4506の反応温度は、40℃であり、融合タンパク質PtxD
Pstの反応温度は、28℃であった。
【0113】
測定された基質(NAD
+)の濃度およびNADHの生産速度に基づいて、周知の酵素反応速度論的手法(例えば、「蛋白質・酵素の基礎実験法(改訂第2版)、発行所:株式会社 南江堂」参照)に基づいて、Km(μM)、Vmax(μmol/min/m)、Kcat(min
−1)、Kcat/Kmの値を算出した。なお、上述した各種パラメータは、3回行った実験の各々について算出するとともに、3回行った実験の平均値として算出した。また、Kcatは、「Kcat=Vmax(μmol/min/mg)×(MW/10
3)」の式にて算出した。
【0114】
実験結果を、下記表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
表1から明らかなように、PtxD
4506のKmは、PtxD
PstのKmの約1/3であった。また、PtxD
4506のVmaxは、PtxD
Pstの約1.4倍であった。また、PtxD
4506のKcatは、237.4(min
−1)であり、PtxD
PstのKcatは、169.6(min
−1)であった。
【0117】
以上の実験データから、PtxD
4506のKcat/Kmは、PtxD
PstのKcat/Kmの約4.4倍であることが明らかになった。つまり、PtxD
4506は、PtxD
Pstよりも高い反応効率を有することが明らかになった。
【0118】
<8.特性検討4(阻害剤存在下における亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の活性)>
<5.特性検討1(大腸菌を用いた亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の発現)>にてHisTrapカラムを用いて精製したPtxD
4506およびPtxD
Pstについて、様々な阻害剤が存在する環境下においても触媒活性を示し得るか否かを検討した。実験方法は、文献「Costas et al., Journal of Biological Chemistry, 2001, 276, 17429-17436」に記載の方法に従った。以下に、簡単に実験方法を説明する。
【0119】
100μLの100mM MOPS−KOH(pH7.25)、50μLの10mM NAD、5μLの5mM 亜リン酸塩、50μLの40mM 各種阻害剤(亜ヒ酸塩(Arsenite)、硝酸塩(Nitrate)、硫酸塩(Sulfate)またはNaCl)、294μLのH
2O、および、1μLの0.5mg/mL タンパク質含有液(PtxD
4506含有液、PtxD
Pst含有液、または、タンパク質を含有しない液体(ネガティブコントロール))を混合して反応液を生成した。
【0120】
上記反応液を、60分間反応させた。なお、PtxD
4506については、45℃にて反応を行い、PtxD
Pstについては、30℃にて反応を行った。その後、OD
340を測定した。タンパク質を含有しない液体(ネガティブコントロール)のOD
340の値を100として、各サンプルのOD
340の相対値を算出した。なお、各実験を4回以上行い、当該4回または5回の実験における相対値の平均値も算出した。
【0121】
実験結果を、下記表2に示し、表2の数値データをグラフ化した図面を
図6に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
表2および
図6から明らかなように、PtxD
Pstの活性は、亜ヒ酸塩、硝酸塩、硫酸塩またはNaClの存在下で阻害されることが明らかになった。
【0124】
一方、PtxD
4506の活性は、亜ヒ酸塩、硝酸塩、硫酸塩またはNaClの存在下であっても、高く維持されることが明らかになった。
【0125】
<9.形質転換植物の解析>
<4.アグロバクテリウムの形質転換>にて得られた形質転換されたアグロバクテリウムを用いて形質転換植物(形質転換したシロイヌナズナ)を作成し、当該形質転換植物の性質を解析した。
【0126】
形質転換植物の作成は、周知の方法(floral dip法)に従った(Steven J. Clough et al., The Plant Journal(1998), 16(6), 735-743参照)。以下に、当該方法を簡単に説明する。
【0127】
まず、<4.アグロバクテリウムの形質転換>にて得られた形質転換されたアグロバクテリウムを、フラスコ内のLB培地(培地1Lあたり、10gのトリプトン、5gの酵母エキス、5gのNaClを含有している)に加え、当該フラスコを25℃〜28℃にて、250rpmで攪拌しながら培養した。
【0128】
その後、培養物を、室温にて20分間、5500gの遠心分離処理にかけ、アグロバクテリウムを回収した。当該アグロバクテリウムを、OD
600が約0.80になるように、感染用培地(infiltration medium)へ懸濁した。
【0129】
本実施例では、5.0%スクロースおよび0.05%Silwet L−77(OSi Specialties, Inc., Danbury, CT, USA)を含む、改変された植物浸漬用の接種培地(Floral dip inoculation mediumu)を用いた。なお、標準的な接種培地(Bent, A.F. and Clough, S.J. (1998) Agrobacterium germ-line transformation: transformation of Arabidopsis without tissue culture. In Plant Molecular Biology Manual(Gelvin, S.B. ed.). Netherlands: Kluwer Academic Publishers, B7, 1-14)は、1/2 strength Murashige and Skoog Basal Medium(Sigma Chemicals, #M-5519, St. Louis, MO, USA)、5.0%スクロース、44nMベンジルアミノプリン(Sigma Chemicals, #B-3274)、0.005%Silwet L−77からなり、pHは5.7に調節されている。
【0130】
材料(上述したアグロバクテリウムの懸濁液、および、シロイヌナズナ)を混合機へ加え、地面よりも上に存在するシロイヌナズナの全ての組織が、改変された植物浸漬用の接種培地中に浸るように、混合機中の材料を混合した。
【0131】
3秒〜5秒間、緩やかに混合した後、シロイヌナズナを回収した。
【0132】
真空にてアグロバクテリウムをシロイヌナズナ中へ浸透させるために、植物浸漬用の接種培地中に浸したシロイヌナズナを、真空条件下に置いた後、当該真空条件を急速に大気圧条件へ戻した。
【0133】
シロイヌナズナを回収した後、当該シロイヌナズナをプラスチックトレイへ移し、湿度を保つために、プラスチックのドームにて覆った。
【0134】
シロイヌナズナを弱い照明の下で一昼夜置いた後に、プラスチックのドームを取り外して3〜5週間培養し、その後、種子を回収した。
【0135】
回収した種子の表面を滅菌した後、当該種子を、滅菌した0.1%アガロースへ懸濁し、当該懸濁液を、カナマイシンを含む選択培地上に播いた。なお、当該選択培地の組成は、1/2× MS medium(Sigma Chemicals #M-5519)、0.8%アガー(Sigma Chemicals #A-1296)、50μg/mLのカナマイシンであった。
【0136】
当該選択培地上でも生育し得るシロイヌナズナを、形質転換植物として回収し、当該形質転換植物から得られた種子を用いて、以下に記載する更なる試験を行った。
【0137】
野生型のシロイヌナズナの種子および形質転換植物の種子を、リン酸をリン源として含有するMS培地または亜リン酸をリン源として含有する選択培地(MS培地のKH
2PO
4をKH
2PO
3へ変えた培地)にて培養し、その成長の差異を観察した。
【0138】
MS培地は、原液I〜原液Vを用いて、以下のように作製した。なお、原液I〜Vの具体的な組成については後述する。
【0139】
まず、1Lの三角フラスコに、約500mLの蒸留水、20mLの原液I、各々10mLの原液II〜原液V、および、30gのショ糖を加え、これらを攪拌した。このとき、必要に応じて植物ホルモン(例えば、BA(ベンジルアデニン)、NAA(ナフタレン酢酸)、2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸))も加えた。
【0140】
三角フラスコに更に蒸留水を加えて、全量を1Lとした。
【0141】
三角フラスコ内の培地のpHを、5.7〜5.8へ合わせた。
【0142】
三角フラスコ内へ8g〜10gの寒天を加えた後、当該三角フラスコを加熱して、寒天を溶かした。
【0143】
三角フラスコ内の培地を試験管または三角フラスコへ分注した後、これらの試験管または三角フラスコに蓋をした。
【0144】
蓋をした試験管または三角フラスコを、オートクレーブにて、120℃、15分間滅菌した。
【0145】
滅菌終了後は、蓋をした試験管または三角フラスコを室温にて放置し、寒天が固まった後で、これらの培地を実際の試験に使用した。
【0146】
以下に、原液I〜Vの具体的な組成を示す。
【0147】
原液I :165gのNH
4NO
3、190gのKNO
3、17gのKH
2PO
4、620mgのH
3BO
3、2230mgのMnSO
4・H
2O、860mgのZnSO
4・7H
2O、83mgのKI、25mgのNa
2MoO
4・2H
2O、2.5mgのCuSO
4・5H
2O、および、2.5mgのCoCl
2・6H
2Oを蒸留水に溶かすとともに、最終的な体積を2Lとして原液Iとした。
【0148】
原液II :44gのCaCl
2・2H
2Oを蒸留水に溶かすとともに、最終的な体積を1Lとして原液IIとした。
【0149】
原液III:37gのMgSO
4・7H
2Oを蒸留水に溶かすとともに、最終的な体積を1Lとして原液IIIとした。
【0150】
原液IV :2.78gのFeSO
4・7H
2O、および、3.73gのNa
2−EDTAを蒸留水に溶かすとともに、最終的な体積を1Lとして原液IVとした。
【0151】
原液V :20gのミオイノシトール、100mgのニコチン酸、100mgの塩酸ピリドキン、20mgの塩酸チアミン、および、400mgのグリシンを蒸留水に溶かすとともに、最終的な体積を2Lとして原液Vとした。
【0152】
図7に、培養を開始してから3週間後の野生型のシロイヌナズナおよび形質転換植物を示し、
図8に、培養を開始してから4週間後の野生型のシロイヌナズナおよび形質転換植物を示す。
【0153】
図7および8から明らかなように、野生型のシロイヌナズナは、リン酸を栄養源として利用することはできたが、亜リン酸を栄養源として利用することはできなかった。
【0154】
一方、
図7および8から明らかなように、形質転換植物は、リン酸を栄養源として利用することができるのは勿論のこと、亜リン酸も栄養源として利用することができた。
【0155】
本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。