特許第5988278号(P5988278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988278
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】生分解可能なポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20160825BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20160825BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20160825BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20160825BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20160825BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20160825BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
   C08J5/18CFD
   C08L67/02ZBP
   C08L67/04
   C08K3/34
   C08K3/26
   C08J3/22CFD
   !C08L101/16
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-509717(P2014-509717)
(86)(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公表番号】特表2014-517103(P2014-517103A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012058519
(87)【国際公開番号】WO2012152820
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】11165413.3
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フランツィスカ フレーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ロース
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ケック
(72)【発明者】
【氏名】イェアク アウファーマン
(72)【発明者】
【氏名】シン ヤン
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−264478(JP,A)
【文献】 特表2011−505400(JP,A)
【文献】 特開2007−119730(JP,A)
【文献】 特開2005−281978(JP,A)
【文献】 特開2007−231154(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0162630(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
3/00−3/28
C08K 3/00−3/40
C08L 67/00−67/04
101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解可能なポリエステルフィルムであって、
i)ポリブチレンアジペートテレフタラート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタラート(PBSeT)およびポリブチレンスクシネートテレフタラート(PBST)からなる群から選択された脂肪族−芳香族ポリエステルを、成分i〜iiの全質量に対して、80〜95質量%、
ii)ポリ乳酸を、成分i〜iiの全質量に対して、5〜20質量%、
iii)炭酸カルシウムを、成分i〜vの全質量に対して、10〜20質量%、
iv)タルクを、成分i〜vの全質量に対して、5〜10質量%、
v)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとする、エポキシ基を含むコポリマーを、成分i〜vの全質量に対して、0〜1質量%、
vi)2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールを、成分i〜vの全質量に対して、0〜2質量%
含有する、前記ポリエステルフィルム。
【請求項2】
充填剤iiiおよびivの総和が、成分i〜vの全質量に対して、15〜30質量%である、請求項1記載の生分解可能なポリエステルフィルム。
【請求項3】
vi)2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールを、成分i〜vの全質量に対して、0.1〜1.5質量%含有する、請求項1または2記載の生分解可能なポリエステルフィルム。
【請求項4】
v)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとする、エポキシ基を含むコポリマーを、成分i〜vの全質量に対して、0.01〜0.5質量%含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の生分解可能なポリエステルフィルム。
【請求項5】
ショッピングバッグ、堆肥用バッグまたは生分解可能な廃棄物用容器のためのインライナーを製造するための、請求項1または2記載のポリエステルフィルムの使用。
【請求項6】
マルチフィルム、カバーフィルム、サイロ用フィルム、フィルムストリップ、織物、フリース材料、クリップ、編織布、撚糸、漁網、ラッピング、ヘビーデューティーバッグ、植木鉢からなる群から選択された農業用品を製造するための、請求項3記載のポリエステルフィルムの使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
i)脂肪族ジカルボン酸および/または芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとする生分解可能なポリエステルを、成分i〜iiの全質量に対して、75〜100質量%、
ii)ポリ乳酸を、成分i〜iiの全質量に対して、0〜25質量%、
iii)炭酸カルシウムを、成分i〜vの全質量に対して、10〜25質量%、
iv)タルクを、成分i〜vの全質量に対して、3〜15質量%、
v)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとする、エポキシ基を含むコポリマーを、成分i〜vの全質量に対して、0〜1質量%、
vi)2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールを、成分i〜vの全質量に対して、0〜2質量%
含有する生分解可能なポリエステルフィルムに関する。
【0002】
さらに、本発明は、前記ポリエステルフィルムの使用および次のもの:
i)脂肪族ジカルボン酸および/または芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物、ポリマー乳酸をベースとするポリエステルからなる群から選択された生分解可能なポリエステルを、前記成分の全質量に対して、75〜95質量%;
vi)2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールを、前記成分の全質量に対して、5〜25質量%含有するマスターバッチ、
ならびに前記マスターバッチを使用して、規定された「分解時間」を有する、有利に透明なマルチフィルムの製造法に関する。
【0003】
前記マスターバッチにおいて使用される吸収剤(vi)は、トリアジンの種類に属しかつ著しい吸収能をもっている、極めて安定した発色団を基礎としている。前記UV吸収剤は、当該吸収剤の極めて高い吸収度ならびに極めて幅広い吸収曲線によって、290〜350nmの波長範囲の点で、現在使用されている全ての別のUV吸収剤よりも優れている。さらに、前記UV吸収剤は、卓越した光安定性および僅かな揮発性をもち、それによって吸収能は、時間の経過中にほとんど変化しない。
【0004】
充填剤を備えた、生分解可能なポリエステルフィルムは、WO 2002/016468から公知である。前記刊行物には、充填剤の炭酸カルシウム(成分iii)とタルク(成分iv)との組合せについて、指摘されていない。WO 2002/016468から公知のポリエステルフィルムは、当該ポリエステルフィルムの加工特性(低いフィルム発泡安定性)および引裂き強度の点について必ずしも納得させることができない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、確実に発泡フィルムに加工されうる、改善された引裂き強度を有するポリエステルフィルムを開発することであった。
【0006】
生分解可能なポリエステルフィルムは、例えばマルチフィルムとして使用されうる。ここで、高い引裂き強度の要求の他に、殊に透明マルチフィルムにとって、直射日光に対する安定性が重要である。
【0007】
黒(カーボンブラック)に着色されたマルチフィルムは、既に、UV吸収する効果をもつが、しかし、熱放射も吸収し、それによってほとんど熱が土壌にまで通過せず、ひいては少なくとも一定の農作物、例えばメロン、トウモロコシに対して、より僅かな収量/時期尚早の収穫を達成しうる。
【0008】
WO 2009/071475から、ヒドロキシフェニル−トリアジンを安定剤として含有する、例えばポリエチレンをベースとするマルチフィルムが公知である。PMMAをベースとするポリエステルフィルムもWO 2009/071475中に同様に述べられている。生分解可能なポリエステルフィルムは、WO 2009/071475中には明確に記載されていない。脂肪族ジカルボン酸および/または芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物からなる生分解可能なポリエステルをベースとする、生分解可能な透明マルチフィルムは、実地において、しばしば、肉厚に応じて2週間だけの短すぎる寿命を有する。マルチフィルムのUV安定化のためには、通常、光安定剤、例えばUV吸収剤およびHALS安定剤またはこれら双方の組合せが推奨されている。UV吸収剤は、前記光から紫外線成分を吸収して濾波し、それによって吸収された光のエネルギーは、熱に変換される。HALS安定剤を使用することによって、ポリマー中で光酸化的に形成される分解生成物の反応は、阻止される。記載された材料の組合せによって、2つの異なる損傷機構の抑制に対する相乗効果が達成される。商標Ecoflex(登録商標)(BASF SE)の部分芳香族ポリエステルに対する研究は、ヒドロキシ−フェニル−トリアジンをベースとしたUV吸収剤、例えばTinuvin(登録商標)1577は、HALS安定剤、例えばTinuvin(登録商標)111またはベンゾフェノンをベースとするUV吸収剤、例えばUvinul(登録商標)3008との組合せでも、或る程度の安定化作用を生じるが、しかし、この作用が殊に僅かな肉厚を有する透明マルチフィルムに対して、十分には程遠いことをもたらした。
【0009】
さらに、前記マルチフィルムは、とりわけ薄手の実施態様(30μm未満)において、当該マルチフィルムの引裂き強度の点で満足のいくものではない。
【0010】
それに応じて、本発明の目的は、畑でのより長い寿命およびより高い引裂き強度を有する、生分解可能な、有利に透明のマルチフィルムを提供することであった。
【0011】
それに応じて、次のもの:
i)脂肪族ジカルボン酸および/または芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとする生分解可能なポリエステルを、成分i〜iiの全質量に対して、75〜100質量%、有利に80〜95質量%、特に有利に85〜95質量%、
ii)ポリ乳酸を、成分i〜iiの全質量に対して、0〜25質量%、有利に5〜20質量%、特に有利に5〜15質量%、
iii)炭酸カルシウムを、成分i〜vの全質量に対して、10〜25質量%、有利に10〜20質量%、特に有利に12〜17質量%、
iv)タルクを、成分i〜vの全質量に対して、3〜15質量%、有利に5〜10質量%、特に有利に5〜8質量%、
v)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとする、エポキシ基を含むコポリマーを、成分i〜vの全質量に対して、0〜1質量%、有利に0.01〜0.8質量%、特に有利に0.05〜0.5質量%、
vi)2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールを、成分i〜vの全質量に対して、0〜2質量%、有利に0.1〜1.5質量%、特に有利に0.5〜1.2質量%
含有する生分解可能なポリエステルフィルムが開発された。
【0012】
前記成分viの使用は、持続的に太陽光に晒されているフィルム、例えばマルチフィルムにとって単に意味を持つにすぎない。
【0013】
第4表の結果と第5表の結果との比較は、成分i〜iiの全質量に対して、5〜20質量%、特に有利に5〜15質量%のポリ乳酸割合を有するフィルムが特に高い引裂き強度を有することを示す。
【0014】
さらに、成分i〜viを有する、請求項3記載のマルチフィルムは、有利であり、このマルチフィルムは、当該マルチフィルムの引裂き強度ならびに畑での寿命の点で改善されている。
【0015】
以下、本発明を詳説する。
【0016】
原理的に、本発明による生分解可能なポリエステル混合物を成分iとして製造するために、脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとする全てのポリエステル、いわゆる部分芳香族ポリエステルまたは脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなる脂肪族ポリエステルがこれに該当する。前記ポリエステルは、当該ポリエステルがDIN EN 13432に従い生分解可能であることが共通している。勿論、かかる幾つかのポリエステルの混合物も成分iとして適している。
【0017】
部分芳香族ポリエステル(成分i)とは、本発明によれば、ポリエステル誘導体、例えばポリエーテルエステル、ポリエステルアミドまたはポリエーテルエステルアミドおよびポリエステルウレタンであるとも解釈されるべきである。直鎖状の鎖長延長されていないポリエステルは、適当な部分芳香族ポリエステルに属する(WO 92/09654)。鎖長延長された部分芳香族ポリエステルおよび/または分枝鎖状の部分芳香族ポリエステルが好ましい。後者の分枝鎖状の部分芳香族ポリエステルは、冒頭に記載された刊行物、WO 96/15173ないしWO 96/15176、WO 96/21689ないしWO 96/21692、WO 96/25446、WO 96/25448またはWO 98/12242から公知であり、当該刊行物の記載内容は、参照のために本明細書に援用される。様々な部分芳香族ポリエステルの混合物は、同様にこれに該当する。興味深いかなり新しい開発は、再生可能な原料を基礎としている(WO−A 2006/097353、WO−A 2006/097354ならびにWO−A 2010/034710参照)。殊に、部分芳香族ポリエステルとは、製品、例えばEcoflex(登録商標)(BASF SE)およびEastar(登録商標)Bio、Origo-Bi(登録商標)(Novamont)であると解釈できる。
【0018】
基本的成分として、
A)次のもの:
a1)少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体、またはその混合物を30〜99モル%
a2)少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体、またはその混合物を1〜70モル%
からなる酸成分および
B)少なくとも1つのC2〜C12アルカンジオールまたはその混合物から選択されたジオール成分Bを、酸成分Aに対して、98〜102モル%
および
C)
c1)エステル形成能を有するかまたはアミド形成能を有する、少なくとも3個の基を有する化合物、
c2)ジイソシアネートまたはポリイソシアネート、
c3)ジエポキシドもしくはポリエポキシド
またはc1〜c3)からなる混合物
から選択された成分Cを、成分AおよびBに対して、0.01〜3質量%
を含むポリエステルは、特に好ましい部分芳香族ポリエステルに属する。
【0019】
脂肪族酸および相応する誘導体a1として、一般に、2〜18個の炭素原子、特に4〜10個の炭素原子を有する脂肪族酸および相応する誘導体a1がこれに該当する。前記の脂肪族酸および相応する誘導体a1は、直鎖状であってもよいし、分枝鎖状であってもよい。しかし、原理的により大きな数の炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸が使用されてもよい。
【0020】
例示的に次のものを挙げることができる:シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、α−ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸(コルク酸)、ジグリコール酸、オキサロ酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、イタコン酸およびマレイン酸。その際に、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、個別的に使用されてよいし、その2つ以上からなる混合物として使用されてもよい。
【0021】
好ましくは、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸またはこれらのそれぞれのエステル形成誘導体、またはその混合物が使用される。特に好ましくは、コハク酸、アジピン酸もしくはセバシン酸またはこれらのそれぞれのエステル形成誘導体、またはその混合物が使用される。その上、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸およびブラシル酸は、これらが再生可能な原料から入手可能であるという利点を有する。
【0022】
殊に、次の脂肪族−芳香族ポリエステルが好ましい:ポリブチレンアジペートテレフタラート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタラート(PBSeT)またはポリブチレンスクシネートテレフタラート(PBST)。
【0023】
芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体a2は、個別的に使用されてよいし、その2つ以上からなる混合物として使用されてもよい。特に好ましくは、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体、例えばジメチルテレフタル酸が使用される。
【0024】
一般に、ジオールBは、2〜12個の炭素原子、有利に4〜6個の炭素原子を有する分枝鎖状または直鎖状のアルカンジオール、または5〜10個の炭素原子を有するシクロアルカンジオールから選択される。
【0025】
適当なアルカンジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、殊にエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよび2,2−ジメチル−1,3−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールである。1,4−ブタンジオール、殊に成分a1)としてのアジピン酸との組合せの1,4−ブタンジオールおよび1,3−プロパンジオール、殊に成分a1)としてのセバシン酸との組合せの1,3−プロパンジオールは、特に好ましい。その上、1,3−プロパンジオールは、これが再生可能な原料として入手可能であるという利点を有する。様々なアルカンジオールの混合物が使用されてもよい。
【0026】
好ましい部分芳香族ポリエステルは、1000〜100000の範囲内、殊に9000〜75000g/molの範囲内、有利に10000〜50000g/molの範囲内の分子量(Mn)および60〜170℃の範囲内、有利に80〜150℃の範囲内の融点によって特徴付けられている。
【0027】
脂肪族ポリエステル(成分i)とは、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とからなるポリエステル、例えばポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンスクシネートセバケート(PBSSe)、ポリブチレンセバケート(PBSe)または相応するポリエステルアミドもしくはポリエステルウレタンであると解釈される。脂肪族ポリエステルは、例えばShowa Highpolymers社によってBionolleの名称で市場で販売され、およびMitsubishi社によってGSPIaの名称で市場で販売されている。新規の開発は、WO−A 2010/034711に記載されている。
【0028】
成分iにおけるポリエステルは、脂肪族−芳香族ポリエステルと純粋な脂肪族ポリエステルとからなる混合物、例えばPBATとPBSとからなる混合物を含んでいてもよい。
【0029】
成分iiとして、殊にポリ乳酸(PLA)がこれに該当する。
【0030】
次の特性プロフィールを有するポリ乳酸が有利に使用される:
0.5〜、特に2〜30ml/10分、殊に9ml/10分のメルトボリュームフローレート(ISO 1133に従い190℃および2.16kgでのMVR)、
240℃未満の融点;
55℃を上回るガラス転移温度(Tg)、
1000ppm未満の含水量、
0.3%未満のモノマー残留含量(ラクチド)、
80000ダルトンを上回る分子量。
【0031】
好ましいポリ乳酸は、例えばNatureWorks(登録商標)6201 D、6202 D、6251 D、3051 Dおよび殊に4020 Dまたは4043 Dである(NatureWorks社のポリ乳酸)。
【0032】
成分iiは、成分iおよびiiに対して、0〜25質量%、特に5〜20質量%、殊に有利に5〜15質量%で使用される。
【0033】
成分iiiとして、炭酸カルシウムは、成分i〜vの全質量に対して、有利に10〜25質量%、特に有利に12〜18質量%使用される。とりわけ、Omya社の炭酸カルシウムは、適していることが証明された。炭酸カルシウムは、たいてい、0.5〜10μm、有利に1〜5μm、特に有利に1〜2.5μmの平均粒度を有する。
【0034】
成分ivとして、タルクは、成分i〜vの全質量に対して、3〜15質量%、有利に5〜10質量%、特に有利に5〜8質量%使用される。とりわけ、Mondo Minerals社のタルクは、適していることが証明された。タルクは、たいてい、0.5〜10μm、有利に1〜8μm、特に有利に1〜3μmの平均粒度を有する。
【0035】
興味深いことに、炭酸カルシウムiii(白亜)の添加によって、前記商品の生分解可能性は、さらに改善されうることが明らかになった。他方で、タルクivを用いると、効果的に弾性率は上昇されうる。
【0036】
充填剤iii)と充填剤iv)との総和は、成分i〜vの全質量に対して、たいてい、13〜40質量%、特に15〜30質量%、殊に有利に18〜25質量%である。
【0037】
前記ポリマー混合物、殊にポリ乳酸含有混合物には、スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとする、エポキシ基を含むコポリマー(成分v)が成分i〜vの全質量に対して、0〜1質量%、有利に0.01〜0.8質量%、特に有利に0.05〜0.5質量%添加されてもよい。エポキシ基を含む単位は、特にグリシジル(メタ)アクリレートである。コポリマー20質量%超、特に有利に30質量%超、殊に有利に50質量%超のグリシジルメタクリレート割合を有するコポリマーは、好ましいことが証明された。前記ポリマーにおけるエポキシ当量(EEW)は、特に150〜3000g/eq、殊に有利に200〜500g/eqである。前記ポリマーの平均分子量(質量平均)Mwは、特に2000〜25000、殊に3000〜8000である。前記ポリマーの平均分子量(数平均)Mnは、特に400〜6000、殊に1000〜4000である。多分散度(Q)は、一般に1.5〜5である。上記タイプのエポキシ基を含むコポリマーは、例えばBASF Resins B.V.社によってJoncryl(登録商標)ADRの名称で販売されている。Joncryl(登録商標)ADR 4368が特に適している。成分vは、殊にPLA含有ポリエステル混合物において使用される。
【0038】
成分viとして、2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールは、成分i〜viの全質量に対して、0〜2質量%、有利に0.1〜1.5質量%、特に有利に0.5〜1.2質量%使用される。UV吸収剤viの製造および性質は、WO 2009/071475から公知である。これに関連して、WO 2009/071475が明らかに指摘される。
【0039】
さらに、本発明によるポリエステルフィルムは、当業者に公知のさらなる添加剤を含むことができる。例えば、プラスチック工業において通常の添加剤、例えば安定剤;成核剤;滑剤および離型剤、例えばステアリン酸塩(殊に、ステアリン酸カルシウム);可塑剤、例えばクエン酸エステル(殊に、アセチルトリブチルシトレート)、グリセリン酸エステル、例えばトリアセチルグリセリンまたはエチレングリコール誘導体、界面活性剤、例えばポリソルベート、パルミテートまたはラウレート;ワックス、例えばエルカ酸アミド、ステアリン酸アミドまたはベヘン酸アミド、ミツロウまたはミツロウエステル;帯電防止剤、UV吸収剤;UV安定剤;アンチフォグ剤または染料。前記添加剤は、本発明によるポリエステルに対して、0〜5質量%、殊に0.1〜2質量%の濃度で使用される。可塑剤は、0.1〜10質量%で本発明によるポリエステル中に含有されていてよい。
【0040】
本発明の範囲内で、物質または物質混合物に対して「生分解可能な」の特徴は、前記物質または前記物質混合物がDIN EN 13432に相応して、少なくとも90%の百分率での生分解度を有する場合に満たされている。
【0041】
一般に、生分解性は、ポリエステル混合物が適切に検出可能な時間間隔で分解することを生じる。前記分解は、酵素的に、加水分解的に、酸化的に、および/または電磁線、例えばUV線の作用により行なうことができ、かつ多くの場合に大部分は、微生物、例えば細菌類、酵母、真菌類および藻類の作用によって引き起こされうる。生分解可能性は、例えばポリエステルを堆肥と混合し、かつ一定時間貯蔵することによって定量化されうる。例えば、DIN EN 13432(ISO 14855に関連して)によれば、CO2不含の空気は、堆肥化中に熟成された堆肥を通過して流れさせることができ、この堆肥は、規定された温度プログラムに掛けられる。その際に、生分解可能性は、試料から放出されたCO2の正味量(CO2放出量から試料なしの堆肥を差し引いた後)対試料から放出されたCO2の最大量(試料の炭素含量から算出した)の比により、百分率での生分解度として規定される。生分解可能なポリエステル(混合物)は、たいてい、既に堆肥化の数日後に明らかな分解現象、例えば真菌類の成長、亀裂形成および孔形成を示す。
【0042】
生分解可能性を測定する別の方法は、例えばASTM D 5338およびASTM D 6400−4に記載されている。
【0043】
冒頭に記載された生分解可能なポリエステルフィルムは、ネットおよび織物、吹込フィルム、チルロールフィルムを、配向をもたせるかまたはもたせずに、さらなる方法の工程で、金属化またはSiOx被覆を用いてかまたは用いずに、製造するために適している。
【0044】
殊に、成分i)〜v)またはi)〜vi)を含有する、冒頭に規定されたポリエステルフィルムは、吹込フィルムおよびストレッチフィルムに適している。ここで、考えられうる用途は、ベース フォールディングバッグ、ラテラル シームバッグ、ホールグリップを備えたキャリヤーバッグ、シュリンクラベルまたはベストスタイルキャリヤーバッグ、インライナー、ヘビーデューティーバッグ、フリーザーバッグ、堆肥用袋、農業用フィルム(マルチフィルム)、食品包装のためのフィルムバッグ、剥離可能なクロージャーフィルム −透明または不透明− 、溶接可能なクロージャーフィルム − 透明または不透明− 、ソーセージケーシング、サラダ用フィルム、果実および野菜用の新鮮さを保つフィルム(ストレッチフィルム)、肉および魚用の新鮮さを保つフィルム(ストレッチフィルム)、パレットラッピング用のストレッチフィルム、ネット用フィルム、スナック用、チョコレートバー用およびムースリバー用の包装フィルム、酪農用包装容器(ヨーグルト、クリーム等)用、果実用および野菜用の剥離可能なリッドフィルム、スモークドソーセージ用およびチーズ用の半硬質包装容器である。
【0045】
成分i〜vi)を含むポリエステルフィルムは、成分ii〜v)なしの混合物と比較して、単層または多層の吹込フィルム、注型フィルムまたは圧縮フィルムへの押出後に、明らかにより高い引裂き強度(EN ISO 6383−2:2004による)を有する。この引裂き強度は、特に、例えば生分解可能な廃棄物のためのバッグ用または肉厚の薄いキャリヤーバッグ(例えば、ベストスタイルのキャリヤーバッグ、フルーツバッグ)用の薄手の(吹込)フィルムの範囲内の極めて重要な製品特性である。同時に、前記引裂き強度は、農業範囲におけるマルチフィルムの場合にも特に重要である。
【0046】
光安定剤vi)を備えたポリエステルフィルムは、殊に、戸外に定められている用途、例えば建築分野において使用され、および殊に農業用品に定められている用途に使用される。農業用品とは、マルチフィルム、カバーフィルム、サイロ用フィルム、フィルムストリップ、織物、フリース材料、クリップ、編織布、撚糸、漁網、ラッピング、例えばヘビーデューティーバッグ、例えば泥炭用、肥料用、セメント用、植物保護剤用、種子用または植木鉢用のヘビーデューティーバッグであると解釈される。
【0047】
農業用品は、たいてい、風および天候、殊に太陽光に晒されている。畑での規定された寿命を保証するために、前記農業用品は、安定化されていなければならない。これに関して、成分vi)は、特に効率的であることが証明された。マスターバッチは、次のもの:
i)脂肪族ジカルボン酸および/または芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとする生分解可能なポリエステルを、成分i〜vの全質量に対して、75〜95質量%、
vi)2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールを、成分i〜vの全質量に対して、5〜25質量%
含有し、
特に透明または半透明のマルチフィルムの製造に特に有用であることが証明された。
【0048】
殊に、次のもの:
i)脂肪族ジカルボン酸および/または芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとする生分解可能なポリエステルを、成分i〜iiの全質量に対して、75〜100質量%、
ii)ポリ乳酸を、成分i〜iiの全質量に対して、0〜25質量%、
iii)炭酸カルシウムを、成分i〜vの全質量に対して、10〜25質量%、
iv)タルクを、成分i〜vの全質量に対して、3〜15質量%、
v)スチレン、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをベースとする、エポキシ基を含むコポリマーを、成分i〜vの全質量に対して、0〜1質量%、
vi)2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールを、成分i〜vの全質量に対して、0.1〜1.5質量%
含有する半透明のマルチフィルムの製造法が見い出された。
【0049】
マルチフィルムの層厚およびマルチフィルムが使用されるべき気候帯に依存して、マスターバッチにより、規定された寿命は調節されうる。ここで、DIN EN ISO 4892−2による耐候試験は、基準コードとして使用されうる。前記フィルムは、250時間に亘ってキセノンアークランプに晒される。これは、南欧の気候帯において戸外で貯蔵した際の3ヶ月間の耐候試験に相当する。
【0050】
使用技術的測定:
部分芳香族ポリエステルの分子量MnおよびMwをDIN 55672−1により、溶離剤 ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)+トリフルオロ酢酸Ka塩0.05質量%を用いて測定し;較正は、狭く分布されたポリメチルメタクリレート標準を用いて行なった。粘度数は、DIN 53728第3部、1985年1月3日、毛細管粘度測定法に従って測定された。ミクロ型ウベローデ粘度計、型式M−IIを使用した。溶剤として、混合物:50/50の質量比のフェノール/o−ジクロロベンゼンを使用した。
【0051】
弾性率および破断点引張伸びをISO 527−3:2003により約420μmの厚さを有する圧縮フィルムに対する引張試験により測定した。
【0052】
引裂き強度をEN ISO 6383−2:2004によるエルメンドルフ試験によって、ProTear社の機器を用いて一定の半径(引裂き長さ43mm)を有する試験体につき試験した。
【0053】
貫入抵抗試験において、420μmの厚さを有する圧縮フィルムにつき、前記ポリエステルの最大の力および破壊エネルギーを測定した:
使用された試験機は、2.5mmの直径を有する球頭パンチ(kugelfoermiger Stempel)を装備したZwick 1120である。試験片、測定すべきフィルムの円形断片を、前記試験用パンチに対して垂直に締め付け、当該試験用パンチを、50mm/分の一定の試験速度で、締付装置によって締め付けられた平面を通して移動させた。この試験の間、前記力ならびに前記伸びを記録し、こうして貫入エネルギーを測定した。
【0054】
生分解可能なポリエステル混合物の分解速度および比較のために製造された混合物の分解速度を次のように測定した:
生分解可能なポリエステル混合物および比較のために製造された混合物から、190℃での圧縮によって、30μmの厚さを有するフィルムを製造した。このフィルムを2×5cmの辺を有する方形断片に切断した。前記フィルム断片の質量をそれぞれ測定し、かつ「100質量%」として規定した。4週間に亘って、前記フィルム断片を乾燥キャビネット内で、湿らせた堆肥土壌で充填されたプラスチック容器中で58℃へ加熱した。一週間間隔でそれぞれ前記フィルム断片の残留質量を測定し、かつ質量%に(試験開始時に算出されかつ「100質量%」として規定された質量に対して)換算した。
【0055】
マスターバッチの製造(光安定剤)
I.使用された材料:
A1)ポリブチレンアジペートテレフタラート
ポリエステルA1の製造のために、ジメチルテレフタラート87.3kg、アジピン酸80.3kg、1,4−ブタンジオール117kgおよびグリセリン0.2kgを、テトラブチルオルトチタネート0.028kg(TBOT)と一緒に混合し、その際にアルコール成分と酸成分とのモル比は、1.30であった。前記反応混合物を180℃の温度へ加熱し、この温度で6時間反応させた。引続き、温度を240℃へ上昇させ、過剰のジヒドロキシ化合物を真空下に3時間に亘って留去した。引続き、240℃でヘキサメチレンジイソシアネート0.9kgを1時間内で供給した。
【0056】
こうして得られたポリエステルA1(成分i−1)は、119℃の融点および23000g/molの分子量(Mn)を有していた。
【0057】
B1〜B13)第1表による光安定剤、UV吸収剤(UVA)およびUV安定剤(HALS)
【表1】
【0058】
II.マスターバッチMB1およびV−MB2〜V−MB13の配合
A1 9000g、およびB1〜B13 それぞれ1000gを型式Werner & Pfleiderer MC−26の押出機において約220〜260℃のメルト温度で配合した。A1をコールドフィード法で帯域0中に供給し、B1〜B13を側方供給により帯域4中に供給し、かつ導入した空気を真空脱気によって後方へ帯域3中に除去した。
【0059】
こうして製造されたマスターバッチは、MB1およびV−MB2〜V−MB13の名称を維持した。
【0060】
III.フィルムの製造
吹込フィルム用装置1
冷却された、溝付き供給帯域を装備しかつマドック(Maddock)剪断ミキサーおよびクロスホール型ミキサーを有するバリヤースクリューを装備した、75mmのスクリューを用いて、長さ30Dの押出機を備えた吹込フィルム用装置を動かした。帯域温度を、メルト温度が170〜190℃であるように選択した。ダイ温度は、165〜170℃の範囲内にあった。ダイ直径は、225mmであり、間隙幅は、1.5mmであり、処理量は、140kg/hであり、メルト温度は、188℃であり、かつ篩の前方の材料圧力は、185バールであった。
【0061】
4.0:1のブローアップ比は、1400mmの吹込フィルムの折り径をもたらした。さらなる装置構成要素は、次のとおりであった:
− 4成分用の重量式計量供給ステーション(バッチミキサー)
− 容量式厚さ測定部
− 冷却リングセグメントによる厚さ調整部
− 二重リップ冷却リング
− 冷却された空気での内部冷却部および外部冷却部
− 2個の巻取ステーション。
【0062】
吹込フィルム装置2
溝付き供給帯域を装備しかつ剪断部および混合部を有するスリーゾーンスクリューを装備した、45mmのスクリューを用いて、長さ25Dの押出機を備えた吹込フィルム用装置を動かした。供給帯域を最大の処理量の際に冷水で冷却した。前記帯域温度を、メルト温度が170〜190℃であるように選択した。ダイ温度は、165〜185℃の範囲内にあった。ダイ直径は、75mmであり、間隙幅は、0.8mmであった。3.5:1のブローアップ比は、412mmの吹込フィルムの折り径をもたらした。
【0063】
IV.光安定剤の作用形式
使用される材料
1−i)部分芳香族ポリエステルA1
2−i)バッチA:ポリエステルA1中のエルカ酸アミドの10質量%のマスターバッチ
2−ii)バッチB:ポリエステルA1中の炭酸カルシウムの60質量%のマスターバッチ
2−iii)バッチC:ポリエステルA1中の顔料ブラックの25質量%のマスターバッチ
3−i)MB1およびV−MB2〜V−MB13:ポリエステルA1中の光安定剤の10質量%のマスターバッチ。
【0064】
前記材料を引続きフィルム用装置2において成分1−i、2−i、2−iiおよび3−iのブレンドとして(押出機に対してコールドフィード法で(per Cold Feed))処理し、厚さ12μmのフィルムにした。それぞれの光安定剤マスターバッチMB1およびV−MB2〜V−MB13を10%の濃度で供給し、このことは、フィルム中での10000ppmの活性物質濃度に相当した。さらに、幾つかの選択された、黒に着色されたフィルムに対して、HALS安定剤またはHALSとUVAとからなる組合せを、成分2−iii)を添加しながら使用した。前記フィルム試験体を引続きDIN EN ISO 4892−2、方法Aによる人工的な耐候試験(キセノンアークランプ)に、250時間に亘って掛け(これは、南欧の気候帯において戸外で貯蔵した際の3ヶ月間の耐候試験に相当する)、前記耐候試験後にISO 527−3による引張試験を行なった。この結果を耐候試験をしていない参照フィルムと比較した。前記耐候試験後のフィルム機構を次のように評価した:前記耐候試験期間後に50%を上回る破断点引張伸びにおける減少を示すフィルムは、一般的に少なくともシミュレートした時間後にもはや使用することができなかった。
ΔL[%]=L1/L2
ΔL:残留する破断点引張伸び
L1:参照フィルムのISO 527−3による破断点引張伸び、ここでは耐候試験をしていないフィルム(334%)
L2:耐候試験をしたフィルムのISO 527−3による破断点引張伸び。
【0065】
試験No.1〜14からの12μmのフィルムにつき、引張試験において算出された破断点引張伸びの結果を、成分1−i 97%+2−i 1%+2−ii 2%をベースとする、耐候試験をしていないフィルム(透明フィルム)の破断点引張伸びと比較した。前記の配合および結果は、第2表中にまとめられている。
【0066】
【表2】
【0067】
この結果は、明らかに、ベンゾトリアゾールをベースとするUV吸収剤が製造されたフィルムに対して或る程度の光安定作用を有するが、しかし、この光安定作用は、殊に、その上、敷設の際に伸張されかつさらに薄手にされる、極めて薄い透明マルチフィルムには不十分である。HALS安定剤は、UV吸収剤と組み合わせても、UV線に対して安定化を示さない。
【0068】
既に冒頭に記載したように、部分芳香族ポリエステルA1に対するベンゾフェノンUV吸収剤の安定化作用は、確認されている。250時間の人工的な耐候試験後も、さらに参照フィルム(耐候試験をしていない)に対して70%の破断点引張伸びが達成されるが、しかし、引張伸び曲線は、目立つ降伏点を示す(延性挙動)。また、引裂き強度は、約34MPaを有する参照フィルムの引裂き強度を明らかに下回る、10MPaにすぎない値を達成する。
【0069】
光安定剤2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールを含有する、本発明によるマスターバッチ(MB1)を用いると、格別に良好なUV安定が達成されうる。250時間の人工的な耐候試験後でも、破断点引張伸びは、参照フィルムの測定値にほとんど相当する。また、引張伸び曲線は、降伏点を示さない。それゆえに、トリアジンをベースとする発色団は、部分芳香族ポリエステルA1をベースとする、極めて薄いフィルムの極めて確実な安定化を提供する。UV吸収の強さは、活性物質濃度およびフィルムの肉厚に依存する。12μm未満のさらにより薄いフィルムは、十分にUV安定性を装備されうることが見込まれる。さらに、より厚手のフィルムの場合には、活性物質濃度は、ベンゾフェノンと比較して減少されうる。光安定剤は、既述したように、ベンゾフェノンと比較して独自の光安定性および僅かな移行傾向を示す。2つの性質は、前記フィルムの確実な安定化に貢献する。
【0070】
本発明によるMB1で達成されうる、極めて良好で再現可能な結果は、第1に、層厚および平均的な太陽放射に依存して、畑でのマルチフィルムの寿命をまさしく調整しうる方法を可能にする。それによって、農作物のより長い植生期間に基づいてこれまで受け入れることができなかったかまたは経済的に受け入れることができなかった、農作物のための、生分解可能な透明または半透明のフィルムの使用が可能になる。
【0071】
黒に着色されたフィルムの場合、本発明による光安定剤マスターバッチMB1は、より低い濃度の場合でも極めて良好な光安定作用を示した。HALS化合物、例えばChimasorb 944(B8)は、単独で使用されるかまたは本発明による光安定剤との組合せで使用され、最適なUV安定性を示した。
【0072】
光安定剤の作用形式を証明する例:
使用される材料:
i−1)部分芳香族ポリエステルA1
ii−1)Naturworks LLC社のポリ乳酸(PLA)タイプ4043D
iii−1)OMYA社の5μmのトップカット(d98%)を有する炭酸カルシウム
iv−1)Mondo Minerals社の8μmのトップカット(d98%)を有するタルク
v−1)バッチA:ポリエステルA1中のJoncryl ADR 4368の20質量%のマスターバッチ(製造はEP−A 1838784参照)
vi−1)バッチMB1:ポリエステルA1中の光安定剤B1の10質量%のマスターバッチ、光安定剤B1は、WO 2009/071475の実施例Aに相応する。
vi−V2)バッチV−MB8:ポリエステルA1中の光安定剤B8の10質量%のマスターバッチ。
【0073】
i−1 670kg、ii−1 75kg、iii−1 180kg、iv−1 70kg、v−1 5kgを型式Werner & Pfleiderer MC−40の押出機において約220〜260℃のメルト温度で配合した。i−1、ii−1およびv−1をコールドフィード法で帯域0中に供給し、iii−1およびiv−1を側方供給により帯域4中に供給し、かつ導入した空気を真空脱気によって後方へ帯域3中に除去した。
【0074】
前記配合物をフィルム用装置2に引き続き成分vi−1またはvi−V2を添加して処理し、12μm、20μm、50μmおよび100μmの厚さを有する吹込フィルムにした。引続き、前記フィルム試験体を、前記マスターバッチフィルムに類似して、DIN EN ISO 4892−2、方法Aによる人工的な耐候試験(キセノンアークランプ)に、250時間に亘って掛け(これは、南欧の気候帯において戸外で貯蔵した際の3ヶ月間の耐候試験に相当する)、前記耐候試験後にISO 527−3による引張試験を行なった。
【0075】
【表3】
【0076】
また、第3表中の結果は、光安定剤2−(4,6−ビス−ビフェニル−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−エチル−(n)−ヘキシルオキシ)フェノールをベースとする、本発明によるマスターバッチのプラスの効果を明らかに示す(第1表:No.B1;第3表:vi−1)。また、成分i−1、ii−1、iii−1およびiv−1をベースとする本発明による配合物において、本発明によるマスターバッチMB−1(vi−1)で安定化されたフィルムは、比較系V−MB8(vi−V2)で安定化されたフィルムよりも明らかに機能する。UV吸収の強さは、活性物質濃度およびフィルムの肉厚に依存する。50μmから出発する厚さを有する透明フィルムは、既に光安定剤vi−1の約3000ppmの濃度で安定化されうる。前記配合物をベースとする極めて薄い透明フィルムは、上記の試験において、光安定剤vi−1 約10000ppmの活性物質濃度を必要とする。
【実施例】
【0077】
本発明によるフィルムの改善された引裂き強度を証明する例:
実施例1:
46のL/D比を有する、60mmのライストリッツ押出機において、i−1 720kg(ポリエステルA1)、ii−1 80kg(PLA)、iii−1 140kg(炭酸カルシウム)およびiv−1 60kg(タルク)を約220〜260℃のメルト温度で配合した。充填剤iii−1および充填剤iv−1を、帯域3中および帯域6中に供給し、残りを、コールドフィード法で帯域0中に供給した。導入された空気または低分子量成分を、真空脱気によって帯域10中に逆方向に除去した。前記配合物を引続きフィルム用装置1においてvi−1 7質量%(マスターバッチMB1)(溶融押出機に対してコールドフィード法で)を添加して処理し、56m/分の装置速度で厚さ12μmおよび幅1400mmのフィルムにした。前記フィルムは、問題なしに処理されることができ、吹込フィルムの安定性は、良好として評価された。
【0078】
実施例2:
46のL/D比を有する、60mmのライストリッツ押出機において、i−1 715kg(ポリエステルA1)、ii−1 80kg(PLA)、iii−1 140kg(炭酸カルシウム)、iv−1 60kg(タルク)ならびにv−1 5kg(Joncryl Masterbatch)を約220〜260℃のメルト温度で配合した。充填剤iii−1および充填剤iv−1を、帯域3中および帯域6中に供給し、残りを、コールドフィード法で帯域0中に供給した。導入された空気または低分子量成分を、真空脱気によって帯域10中に逆方向に除去した。前記配合物を引続きフィルム用装置1においてvi−1 7質量%(マスターバッチMB1)(溶融押出機に対してコールドフィード法で)を添加して処理し、56m/分の装置速度で厚さ12μmおよび幅1400mmのフィルムにした。前記フィルムは、問題なしに処理されることができ、吹込フィルムの安定性は、極めて良好として評価された。
【0079】
比較例1:
46のL/D比を有する、60mmのライストリッツ押出機において、i−1 720kg(ポリエステルA1)、ii−1 80kg(PLA)、iii−1 200kg(炭酸カルシウム)を約220〜260℃のメルト温度で配合した。充填剤iii−1を、帯域3中に供給し、残りを、コールドフィード法で帯域0中に供給した。導入された空気または低分子量成分を、真空脱気によって帯域10中に逆方向に除去した。前記配合物を引続きフィルム用装置1においてvi−1 7質量%(マスターバッチMB1)(溶融押出機に対してコールドフィード法で)を添加して処理し、56m/分の装置速度で厚さ12μmおよび幅1400mmのフィルムにした。前記フィルムは、最初に極めて不安定であるが、安定化(例えば、較正バスケットの下降)のための幾つかの手段後に初めて前記厚さに処理することができた。従って、吹込フィルムの安定性は、まさに十分であるとしか言いようがない。
【0080】
実施例1および実施例2ならびに比較例1の引裂き試験の結果は、第4表中にまとめられている。本発明による実施例1(充填剤iii−1とiv−1との組合せ)および実施例2における特に好ましい実施態様(iii−1とiv−1との組合せならびにv−1の添加剤)は、機械の縦方向(機械方向 Machine direction=MD)に、ならびにとりわけ機械の横方向(横方向 Cross direction=CD)に比較例1(もっぱらiii−1の添加剤)よりも著しく良好な引裂き強度を有することが明らかに識別される。
【0081】
【表4】
【0082】
実施例3:
i−1 9720g(ポリエステルA1)、ii−1 2160g(PLA)、iii−1 2250g(炭酸カルシウム)、iv−1 750g(タルク)およびv−1 120g(Joncryl Masterbatch)を型式Werner & Pfleiderer MC−26の押出機において約220〜260℃のメルト温度で配合した。前記成分i−1、ii−1およびv−1をコールドフィード法で帯域0中に供給し、前記充填剤iii−1およびiv−1を側方供給により帯域4中に供給し、かつ導入した空気を真空脱気によって後方へ帯域3中に除去した。
【0083】
前記配合物をフィルム用装置2において引き続き処理し、30μmの厚さを有する吹込フィルムにした。
【0084】
比較例2:
i−1 9690g(ポリエステルA1)、ii−1 2160g(PLA)、iii−1 3000g(炭酸カルシウム)およびv−1 150g(Joncryl Masterbatch)を型式Werner & Pfleiderer MC−26の押出機において約220〜260℃のメルト温度で配合した。前記成分i−1、ii−1およびv−1をコールドフィード法で帯域0中に供給し、前記充填剤iii−1を側方供給により帯域4中に供給し、かつ導入した空気を真空脱気によって後方へ帯域3中に除去した。
【0085】
前記配合物をフィルム用装置2において引き続き処理し、30μmの厚さを有する吹込フィルムにした。
【0086】
比較例3:
i−1 24.3kg(ポリエステルA1)、ii−1 5.4kg(PLA)およびv−1 0.3kg(Joncryl Masterbatch)を型式Werner & Pfleiderer MC−26の押出機において約220〜260℃のメルト温度で配合した。全ての原料をコールドフィード法で供給した。
【0087】
前記配合物をフィルム用装置2において引き続き処理し、30μmの厚さを有する吹込フィルムにした。
【0088】
実施例3ならびに比較例2および比較例3の引裂き強度の試験は、第5表中にまとめられている。本発明による実施例3は、機械の縦方向(機械方向 Machine direction=MD)において、機械の横方向に若干少ない値を過剰補償する比較例2および比較例3よりも著しく良好な引裂き強度を有することが明らかに識別される。
【0089】
【表5】
【0090】
さらに、第4表と第5表との結果の比較は、類似した充填剤濃度の際に、第5表中に記載されたフィルム(ポリマーマトリックス中に成分ii−1(PLA)のより高い割合を有する)が第4表からのフィルムよりも明らかに劣悪な引裂き強度を有することを示す。引裂き強度は、フィルムの厚さと線形相関を有さず、かつ厚手のフィルムの場合には、通常、比例限度を超えて増大するので、前記差異は、純粋な数値の比較で推測されうるよりもむしろさらに著しく顕著である。従って、本発明による実施例1および実施例2におけるii−1のより少ない割合は、高い引裂き強度を有するフィルムを達成するために、特に好ましい。